2016年5月31日火曜日

シンガポール:アジアで中国をもっとも敵視している国

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● クラ運河


サーチナニュース 2016-05-30 22:15
http://news.searchina.net/id/1610948?page=1

アジアで中国をもっとも敵視している国は
・・・「日本に非ず」=中国

 中国メディアの網易はこのほど、アジアの国々のなかで中国をもっとも敵視しているのは「日本ではない」と主張する記事を掲載。
 その国は「シンガポール」だと記事は説明しているが、
 何を以ってシンガポールが日本以上に中国を敵視する国だと主張しているのだろうか。

 記事が注目しているのは「マラッカ海峡」だ。
 シンガポールの発展はまさにこの天然の海峡がもたらしたものだと指摘、積み替え港としてのシンガポールの役割がこの国に発展をもたらした。

 しかし、もし中国がマレー半島のクラ地峡に「クラ運河」を建設し、各国の船がシンガポールを経由せずにクラ運河を航路にとり、上海を積み替え港として利用するなら状況は変わるだろう。
 中国は莫大な利益を得ることができる一方でシンガポールを利用する船は「80%減少する」と記事は指摘。
 シンガポールにとってはまさに致命的な打撃になることは容易に想像ができる。

 また記事は「中国の石油備蓄は7日分に過ぎない」と指摘、もしシンガポールがマラッカ海峡を封鎖し中国の原油輸入を阻止した場合、中国にとって致命的な打撃になる。
 いざという時、この措置を「米国が支持、また指示するだろう」と指摘する。

 しかし、もし中国がクラ運河を建設するなら、米国にとってシンガポールは戦略上の重要性を失い、シンガポールは「米国の保護を失う」と記事は説明。
 そうなればマレーシアやインドネシアといったイスラム教国の犠牲になるだろうと主張し、それゆえシンガポールは中国のクラ運河建設に「死にもの狂いで抵抗する」と説明した。

 中国にはクラ運河建設のための十分な理由がある。
 積み替え港としての上海や周辺港の利益を飛躍的に向上させることができるだけでなく、マラッカ海峡封鎖による致命的な打撃を回避できるからだ。
 しかし、もしそうするならシンガポールにとっては大打撃となる。こうした理由により、記事はアジアで中国を敵視する最大の国はシンガポールだと論じた。




2016年5月30日月曜日

文化影響力の浸透をはかる日本(3):日本人が触れるものは文化になる!、「小さな子どもを連れて」訪れるべき国!

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 軍事から戦後は経済へ。
 そしていま、日本は「文化」に力点をかけている。
 軍事>経済>文化
という歩み、大きく言えば「歴史の流れ」は何を物語っているのだろうか。
 「経済から文化へ」
と大きく舵を切っている日本はこれから何処へ向かおうとしているのか。
 その先に待っているものとは何なのか。

サーチナニュース 2016-05-30 14:19

さすがデザイン大国・日本、
「世界で最も美しいパスポート」を発行へ=中国メディア 

 2020年の東京五輪開催に向け、日本国内において様々な変化が起こりつつある。
 中国メディア・界面は27日、日本政府が「世界で最も美しいパスポートを作る」計画であると報じた。

 記事は、パスポートが
 「出国の際に必要な身分証であり、一般的に厳粛なイメージ。
 ロマンティックなムードを帯びさせるのは難しい」
と説明。
 そのうえで、
 「デザインを熱愛する日本人が、
 厳粛な身分証にアート性を添え、
 より『日本の味』を出そうとしている」
とし、20年の東京五輪開催を前に外務省がパスポートのデザイン変更を発表、
 中のページに葛飾北斎の「富嶽三十六景」の柄をプリントした紙を採用することとなった
と伝えた。

 そして、葛飾北斎が江戸時代に活躍した、日本を代表する浮世絵師であることを紹介するとともに、
 パスポートでは「富嶽三十六景」から24点の作品
が選ばれ、左右のページで異なる図柄になるよう配置される予定であること、
 19年には使用が開始される見込みであることを併せて紹介している。

 記事はまた、アート性のあるパスポートのデザインとして、ノルウェーが14年10月に同国の美しい山河のイラストをページに採用、紫外線のライトに当てると月や星、オーロラといった夜景に様変わりするとうロマンティックなデザインとなっていることを紹介。
 「しかし、ノルウェーのパスポートはどうやら日本のパスポートに負かされてしまったようだ」
と評した。

 パスポートは、単に身分証としての役割のほかに、国外における自国の「顔」にもなるものと言える。
 各国に入国する際、あるいは現地のホテルにチェックインする際などに、日本の伝統文化を代表する絵画作品を見てもらうというのは、日本文化の更なる宣伝にもつながるし、日本人としても誇らしいことではないだろうか。
 これから、世界各国のパスポートがそれぞれの文化や芸術をふんだんに盛り込んだデザインに変わっていけば、各国のパスポート比較がより楽しくなる。


サーチナニュース 2016-06-01 14:35
http://news.searchina.net/id/1611117?page=1

駅弁が1つの文化に昇華
・・・世界広しと言えども「日本ぐらい」=中国

 伊勢志摩サミットの開催を記念し、東京駅で21日から27日にかけて「駅弁サミット」が行われた。
 日本の駅弁は種類が豊富であるうえ、各地の特産品を活かした特色ある内容となっているため、多くの駅弁ファンがいる。
 駅弁を食べながら移動するのは、日本の鉄道旅行の醍醐味の1つでもある。

 中国メディアの好奇心日報はこのほど、鉄道の車内で弁当を食べることは特に驚くに値するものではないとしながらも、
 「駅弁が1つの文化に昇華しているのは世界広しと言えども、日本ぐらいではないか
と論じる記事を掲載した。

 記事はまず、日本の駅弁の歴史から紹介し、
 「日本に鉄道が建設された明治時代には簡素なものではあったが、すでにおにぎりが駅弁として販売されていた」
と紹介。
 さらに戦後の高度経済成長に伴い、新幹線が開通し、駅弁も飛躍的な発展を遂げたことを紹介する一方、駅弁メーカーの数が年々減少していることを指摘し、
 日本の駅弁メーカーは今後、どのようにして生き残ろうとしているのだろうか
と問題を提起した。

 続けて、日本は駅弁の生き残る道を海外に見出したとし、日本料理の人気が高いフランスにおいて、JR東日本の子会社が駅弁販売店を出店したことを指摘。
 フランス人の鉄道利用客から人気だったため、期間限定の店舗は営業期間を延長するほどだったと紹介した。
 2015年に日本を訪れた外国人旅行客の数は1973万7000人に達したが、記事は
 「美味しいうえにデザインも楽しい駅弁は外国人にとっても関心の的」
だと伝え、すでに一部メーカーは英語のメニュー表も作成していると紹介した。

 鉄道の車内で何かを食べることは、どの国でも見られることであり、特に文化といえるものではないが、日本の駅弁は間違いなく日本の文化だ。
 キャラ弁が海外で大きな注目を集めたように、日本は新幹線を輸出すると同時に駅弁文化もあわせて輸出するのも面白いかも知れない。



サーチナニュース 2016-06-03 10:57
http://news.searchina.net/id/1611266?page=1

「駅弁」分野で不動の地位にある日本、
食いしん坊の究極の夢を・・・=中国

 中国メディアの国捜はこのほど、日本の駅弁を絶賛する記事を掲載した。
 また中国の駅弁にも少しずつ良い変化が生じていることを紹介している。

 記事は日本の駅弁を「正統派」と呼び、その質において不動の地位にあることを称賛。
 「弁当」という語彙でさえ日本で生じたうえで、中国に輸入された言葉だと指摘した。

 さらに「日本の駅弁は日本文化の特色の1つと言えるほどにまで発展を遂げた」と説明、駅弁に日本各地の特色が色濃く反映されていることや非常に手が込んでいることを指摘。
 旅を楽しみつつ、地元の素材を活かした弁当を楽しめることを高く評価し、
 「食いしん坊の究極の夢を日本の駅弁がかなえてくれた」
と絶賛した。

 記事はいくつかの日本の駅弁を写真付きで紹介している。
 山形県の米沢駅で買える「牛肉どまん中」については「見るだけで食指が大きく動く」、
 富山駅や金沢駅で販売されている「ますのすし」については「新鮮なマス、お米、竹のとても良い香りがする」と説明した。

 また兵庫県の明石駅で販売されている「ひっぱりだこ飯」は食べた後も容器を記念として利用できると指摘し、
 「日本の駅弁は盛り付けから包装に至るまで非常に美観を強調している」
と指摘、日本の駅弁の特色を高く評価した。

 一方で記事は中国人から酷評されていた中国の駅弁に良い変化が生じていることを紹介。
 いくつかの路線で車内販売される駅弁の種類が増えており、味に対する乗客の評価も上々のようだ。
 中国鉄路総公司が駅弁改善に着手し始めたことを意味する変化だ。

 しかし日本と中国の駅弁にはまだまだ大きな差があり、
 その1つは記事が言及した「美観」だと言える。
 中国の駅弁の盛り付け方が雑だということではなく、消費者に駅弁を「楽しんでほしい」という、より質の高いサービス精神があるかないかが盛り付け方や包装の質にはっきり現れている。

 この点、記事が日本の駅弁に対して「見るだけで食指が大きく動く」とか「とても良い香りがする」と指摘しているように、日本の駅弁は口に入れる前から人々を楽しませることができる品質を有している。
 記事は日本を「駅弁先行者」と呼んでいるが、消費者の視覚、聴覚、味覚すべてを楽しませることができる駅弁作りを目指すとき、中国も独自の駅弁文化を打ち立てることができるだろう。



サーチナニュース 2016-06-02 15:23
http://news.searchina.net/id/1611216?page=1

訪日前の印象とは全然違う
・・・中国人の目に映る「真実の日本」

 日本を訪れる中国人旅行客が急増し、こうした人びとがネット上に日本の旅行記を綴っているとはいえ、中国国民の大半はまだ真実の日本を知らない状況にあると言って良いだろう。
 「日本人は親切で、訪日前の印象とは全然違った」
という訪日中国人も少なくないことから、いかに中国で日本や日本人が誤解されているかが見て取れる。

 中国メディアの網易はこのほど、中国人の目に映る「真実の日本」を紹介する記事を掲載し、中国におけるステレオタイプの「日本」との違いを指摘した。

 記事は、多くの日本人が中国を理解していないのと同様に、中国人もまた日本を理解できていないとし、「政治や敵対心を取り除いて見た日本」を紹介。
 特に中国と大きく違う点を中心に取り上げており、まず
 「日本では今でも和服を着ている人をよく見かける」
と紹介、「とっても優美だ」と伝えている。

 中国の国民の大半を占める漢民族の伝統衣装と言えば漢服だが、現代において漢服を着ている人はまず見かけない。
 チャイナドレスはレストランなどで着用している店員を見かけるが、チャイナドレスはもともと満州民族の衣装であり、漢民族の衣装ではなかった。
 日本では伝統衣装が今なお大切にされていることが珍しいのであろう。

 また記事は、日本人は誰もが法律と道徳を守ろうとするとしたほか、日本は貧富の格差も小さい国であり、公正さと正義が最大限守られている国だと主張。
 確かに中国は人治国家と揶揄されるケースもあるほか、社会主義国であるのに日本よりも貧富の格差は大きい。
 日本は民主主義国家だが、世界でもっとも成功した社会主義国は日本と言われることもあるのは、こうした点が理由なのかもしれない。

 そのほかにも、日本の店では海賊品や偽物が販売されていないこと、街が清潔で「野良猫」すらきれいであることなどを挙げ、日本は訪日したことのない多くの中国人が思っているような悪い国ではないと指摘している。



サーチナニュース 2016-06-04 06:32
http://biz.searchina.net/id/1611332?page=1

中国の若い富裕層、
「美食を堪能」するためなら日本、
買い物はフランス

 中国メディアのFT中文網はこのほど、中国の富裕層の若者たちが海外旅行先に選ぶのは美食目的であれば日本、買い物であればフランスであると伝えている。
 記事は「胡潤百富 (Hurun Report)」が525名の中国の若年富裕層を対象にした調査内容を紹介、胡潤百富によれば美食を楽しむためであれば日本、買い物を楽しむためであればフランスを旅行先として選ぶ人が多いことが分かった。

 また今回の調査対象となった525名が毎年旅行に消費する金額は6万4000ドルだったと記事は紹介。
 また彼らにとって関心があるのはファッション、ハンドバッグ、ブランド時計、装飾品であり、
 地方特産品、電子産品や酒類にはあまり興味はないという点も紹介している。

 今回調査対象になった人々の旅行の楽しみ方には「質を重視する」という共通点がある。
 胡潤百富の調査結果をより詳しく分析した資料によれば、
 美食は日本、
 買い物はフランス、
 友人訪問のために英国、
 ビジネス目的で米国、
 心身リラックスのためにオーストラリア
と、彼らは目的に応じて旅行先を変えることがわかっている。
 従って日本の美食は中国ミレニアム世代の富裕層に非常に高く評価されていることが分かる。

 また今回の調査から、彼らの買い物が日本で爆買いを楽しむ中国人たちと内容の点で異なっていることにも注目できる。
 電子製品などよりもファッションにお金をかける傾向が強いということだが、富裕層は服装にお金をつかう傾向にあるのは事実だ。
 富裕層の持つ富は衣食住という人間の基本的な欲求により注意を向けるように働きかけ、それらの質を向上させるよう駆り立てるのかもしれない。



人民網日本語版  配信日時:2016年6月6日(月) 14時0分
http://www.recordchina.co.jp/a140258.html

中国人の日本観光、
「ショッピング」から「体験型」へ変化―中国メディア

  2015年、日本を訪問した中国人観光客は前年比2.1倍の約500万人に達した。
 そして、その消費額は800億元(約1兆3600億円)を突破。
 1人当たりの消費額は1万7000元(約29万円)で、どちらの額も日本を訪問する外国人のうちトップを走る。
 これらの数字で中国人の日本旅行の情熱の高さや日本における豪快なショッピングぶりが浮き彫りになっている。

 では、中国人が冷静に消費するようになり、日本の「おもてなし」に新鮮味を感じなくなれば、日本はどのようにして中国人観光客を呼び込むのだろう?
 そうなると、日中間の観光交流はどのような動向になるのだろう。
 これらの話題をテーマに、日本貿易振興機構(JETRO)は26日午後、北京で「第1回日本観光ビジネスフォーラム」を開催。
 日本旅行専門の月刊誌「行楽」の創始者袁静さんや、日本へのオーダーメード医療観光サービスを提供する「北京安諾至美健康科技」の李春鵬会長らが、参加したゲスト数十人を前に、「日本観光の動向」や「日本の先端医療の状況」について講演した。
 人民網が伝えた。

 中国の旅行サイト・携程旅行網が今年の春節(旧正月、今年は2月8日)の後に発表した「春節」をテーマにした報告書によると、
 中国人に人気の旅行ジャンルは、
★.健康物理療法(17%)、
★.ハイキング(16%)、
★.スキー(15%)、
★.自然探索(8%)、
★.座禅(7%)、
★.ゴルフ(7%)、
★.ダイビング(6%)、
★.高度な撮影(5%)、
★.観光ウエディング(4%)、
★.サイクリング(4%)
だった。

 袁さんは、「これら中国人が好きな観光ジャンルは、国内から少しずつ海外へと移行するだろう。
 つまり、中国人の日本観光の目的も、『ショッピング』から『体験』へと少しずつ変わるということ」と予測した。
 また、中国人観光客の体験型旅行に言及した際、沖縄の民宿での体験を紹介し、
 「観光客は、沖縄の村民の家に寄宿する形で泊まり、
 一緒にサツマイモパイやゴーヤスープなど、地元ならではの料理作りを体験させてもらえる。
  現地の村民と深く触れ合うことができる旅行は、新鮮味があると同時に、充実した時間を過ごせ、温かみも感じることができる」
とした。
 また、
 子供が自然に触れたり、
 農業を体験したりできる親子旅行や、
 石川県の金箔工芸体験、
 福島県の人形、 
 染物の製作、
 茶道の体験
など、それぞれの地域の特色ある文化に深く触れることができる旅行、
 カヌーなど自然の中でのアウトドアスポーツ体験
なども挙げた。

 中国で日本観光がブームになる中、体験型旅行が人気になっているほか、
 日本の先端医療設備や
 快適な医療環境、
 早期発見によるがん患者の治癒率、
 生存時間向上
などをうたう各種PRも、健康を一層重視するようになっている中国人の注目を集めている。
 同フォーラムでは、李会長が日本の先端医療の優位性を詳しく説明し、日本の国際医療の今後の発展に言及した際、各大手病院の国際医療部を増設することや医療ビザの発行要件緩和、遠隔医療をめぐる法律制定の加速、医療通訳者の育成などを提案した。
 フォーラム終了後、中国人が日本に行って医療を受ける現状について、李会長は
 「当社の業務からすると、現在、同分野のニーズは大都市だけに限らず、地方都市でもニーズが高まっている。
 特に、治療が難しい病気の患者が日本に行って治療を受けるというケースが日に日に増加し、そのニーズは『体験型』の旅行を上回る状態」と紹介した。

(提供/人民網日本語版・編集/KN)



サーチナニュース 2016-06-09 08:43
http://news.searchina.net/id/1611657?page=1

日本は「小さな子どもを連れて」訪れるべき国!
その理由は・・・=中国

 多くの中国人旅行者が日本を訪れるようになったが、現在は買い物が主要な訪日目的となっている。
  だが、これからはただ旅行するだけではなく、
 こどもたちに異文化を体験させる目的で日本を訪れる中国人も増えるかも知れない。
 中国メディアの今日頭条はこのほど、日本は「小さな子どもを連れて」訪れるべき国であるとの記事を掲載した。

 子どもを連れて海外旅行をしようと思う場合、大人だけの旅行とは勝手が異なる。
 それでも日本を旅行先に選ぶべき理由について、記事はまず「安全」であることを指摘。
 日本の治安の良さや交通の安全性は中国国内や、他のアジア諸国とは比較にならないことを挙げ、安心して旅行できる国であることを指摘した。

 さらに日本が「衛生的」で、なおかつ「何をするにも利便性の高い」ことを挙げている。
 日本が清潔な国であることは中国人にとっても周知の事実であり、24時間開いているコンビニエンスストアが至る所にある日本は非常に便利な旅行先と言えるだろう。
 特に子どもを連れての旅行では、すぐに飲み物を買えてトイレに行くこともできるコンビニエンスストアは強い味方になる。

 ほかにも
 「交通の便の良さ」、
 「中国文化が残っていること」
 「子どもの旅行費用が安い」
などの点を挙げている。
 だが、子どもを連れて日本を訪れるべき、最大の理由は
 「子どもに総合的な民度教育を体験させることができる」
点であると伝えている。

 子どもに日本を観察させ、日本人が他人に敬意を払う姿などを見せることこそが、日本旅行の「最重要の理由」だと指摘した。
 つまり、中国では絶対に学べないことが日本では旅行という短期間でも学ぶことができるということだ。
 中国人にとって、それだけ日本は啓発の多い国だという意味であろう。

 世界的に見て、子ども連れでも安心して訪れることのできる国はそれほど多くはない。
 記事で列挙されている日本を訪れるべき理由を見ていると、日本人としても「日本の良さ」を再確認することができるのではないだろうか。
 

サーチナニュース 2016-06-09 11:38
http://biz.searchina.net/id/1611676?page=1

中国の富裕層の目に映る日本「印象深かった」、
日本は富裕層にも人気=中国

 中国人にとっての人気の海外旅行先としては日本やタイなどを挙げることができる。
 日本を訪れる中国人旅行客が年々増加の一途を辿っていることからも、日本旅行の人気の高さが分かるだろう。

 中国メディアの環球時報の電子版はこのほど、韓国の朝鮮日報の報道を引用し、胡潤研究院がまとめた報告として、
 「中国の若い富裕層が2015年に訪れた国のなかで、
 もっとも印象深かった国は日本だった」
と伝えている。

 胡潤研究院は1980年以降に生まれた525人の若い富裕層を対象に面接調査を行い、報告書をまとめた。
 同報告書によれば、調査対象者の平均資産は3877万元(6億3246万円)で、彼らの家庭の平均旅行支出は年42万元(685万円)で、うち22万元(約359万円)は現地での買い物費用だった。

 記事は、若い富裕層たちに
★.もっとも人気の旅行先はフランスで40%、
★.次いで日本が39%、
★.オーストラリアが28%
となった。
 韓国は25%で13位だったと紹介。
 さらに、
★.もっとも印象深かった国は日本が24%、
★.フランスが10%、
★.韓国は8%
だったと伝えた。

 多くの中国人旅行客が日本を訪れるなか、胡潤研究院の報告書からは中間層だけでなく、富裕層にとっても日本は魅力的な旅行先であることが見て取れる。
 「もっとも印象深かった国」で日本が1位となったことについて、記事は「何が、どのように」印象深かったのかは伝えていないものの、恐らくは中国国内で伝えられている日本の「悪い」イメージと、実際の日本は大きく異なっていたということではないだろうか。



サーチナニュース 2016-06-24 11:33
http://news.searchina.net/id/1612806?page=1

モノを極める日本の「職人精神」 
実は「オタク文化」にも表れているのだ! =中国メディア

 中国にも数多のファンが存在する、日本のサブカルチャー。
 今や世界に誇る日本の一大産業となっており、世界に数え切れないほどの「オタク」を生み出している。
 しかし、もはやもともとの「オタク」とは性質が異なるものとの見方もある。
 中国メディア・人民日報海外版は20日「『オタク』はもう死んだのか?」とする記事を掲載した。

 記事は、ACG(アニメ・マンガ・ゲーム)産業の、日本の国内総生産に占める割合が農業・林業・水産業をはるかに超えており、
2013年までに国内のアニメ市場の総生産額が2428億円に達したと紹介した。
 また、ACG文化の発展は1970年代以降の「虚構の時代」を背景としており、物資不足を経験していない新世代の台頭で消費主義が盛り上がり、社会のムードが退廃的になっていったことが影響しているとも説明した。

 そのうえで、「オタク界の教祖」とされる岡田斗司夫氏の「オタク論」を紹介。
 日本には児童に対する自由で寛大な文化的伝統があったために、マンガやアニメが社会から容認されるとともに、大人もこれらを愛好する文化ができたとし、児童に対する管理や教育を重視する米国のような社会では「児童化」された文化の発展は難しかったとの論理を伝えた。

 さらに、
 「オタク」の文化にはしばしば日本文化の特徴とされる「職人の精神」が存在しており、
 彼らの創造性、楽しみ方などの極め方が「過剰、さらには常人と比べて異常なほど」になる

のだと論じていることを紹介した。
 その一方で、この文化が世界各国で人気を集めているものの、極致を追求する「オタクの精神」を継承することはもはや難しくなっていると指摘、
 「何日間か家にいて、アニメ作品をいくつか見て『自分はオタクだ』と言う人がいる昨今、『オタクはすでに死んでいる』」
との結論を出したと説明している。

 その分野の文化が広く認知される、あるいは、何らかの理由で敷居が低くなることにより、「にわか」、「なまかじり」といったレベルの愛好者が増えるのは致し方ない部分もあるように思える。
 それが、その文化の退廃とみなされるのか、それとも大衆化、成熟とみなされるのかは、立場によって異なるのだろう。
 マイナーな頃からその文化に親しみ、極致を目指してきた愛好者たちにとっては、その大衆化の状況は往々にして受け入れがたいものとなる。
 一部には「この程度の知識や経験で、この文化を語るな」と憤る人も出てくるかもしれない。

 確かに、時として「変態」呼ばわりされる、極致を目指そうとする姿勢は、いかにも日本人らしいものであり、外国ではそこまではなかなか理解されないかもしれない。
 ただ、「オタクはすでに死んでいる」という見方はあくまで「オタク論」の1つに過ぎず
 「オタク」の定義次第では「オタクは進化した」という見方もできる
のではないだろうか。


サーチナニュース 2016-07-11 22:19
http://news.searchina.net/id/1613950?page=1

日本による中国への「文化的侵略」、
「日本製」の言葉こんなにあるとは!=中国

 日本の文化のうち、中国に源を発するものは少なくない。
 それほどかつての中国の影響力は強かったわけだが、近年はインターネットが発達したからか、日本から中国に「輸出」され、中国に定着した文化も少なくない。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、中国文化はこれまで日本に大きな影響を与えたのは事実だとしながらも、
 「日本による中国文化への侵略もある」
と伝え、特に言語面での「侵略」について焦点を当てて紹介する記事を掲載した。

 記事は、中国人が日常的に使用している言葉のなかには「日本製」が数多く存在すると伝え、その一例として、「科学」、「幹部」、「指導」、「市場」、「人権」、「特権」などの単語を紹介。
 さらに中国にとって重要かつ特別な言葉であるはずの
 「社会主義」という単語ですら「日本製」である
ことを指摘した。

 また、「日本製」の言葉は中国語そのものにも影響を及ぼしているとし、例えば
 「~化」、「~力」、「~法」、「~観」、「~性」という言葉の使い方は日本語からの影響によるものだと指摘。
 例えば、「多元化」、「大衆化」、「生産力」、「想像力」、「分析法」、「主観」、「世界観」、「可能性」、「創造性」といった言葉がそれに該当すると紹介している。

 一方、中国のネットスラングにおいても日本の影響を感じることができる。
 中国のネット上では「萌」という言葉を見かけることがあるが、これは日本でしばらく前に流行した「萌え」という言葉が中国で定着したもので、中国でも「かわいい」という意味で使用されている。
 また、「ぶりっこ」、「可愛い子ぶる」という意味で、「売萌」という言葉も派生系として使用されている。
 かつては中国から文化的に大きな影響を受けた日本だが、近年は中国も日本文化の影響を受けていることが見て取れる。







「外交を知らない中国」(3):中国は外交を重視していない、中国の外交は世界中で失敗、中国にとって周辺国は野蛮人

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サーチナニュース 2016-05-30 10:49
http://news.searchina.net/id/1610871?page=1

日本はどうして「中国へのけん制」という言葉を好むの? =中国メディア

 日本と中国の関係を巡って、交流や友好に関する内容よりも相手を脅威とみなす論調が両国メディアにおいて目立つのは、なおも変わっていない印象を受ける。
 中国メディア・環球網は27日、日本のメディアにおいて「中国へのけん制」がホットな頻出ワードになっているとする評論記事を掲載した。

 記事は、日本のメディアにおいて「中国へのけん制」が頻出ワードになっており、この言葉の持つ「ニュース価値」が近年急上昇したと紹介。
 他にも「中国崩壊」など中国に対するネガティブな言葉が日本のメディアにおいて好んで使われていると伝えた。

 そのうえで、中国のシンクタンクである日本企業研究院の陳言・執行院長が
 「中国へのけん制」という言葉が集中的に出現したのは、安倍晋三首相が就任して以降、ここ4、5年の事であると解説したとしている。
 また、日本の指導者は
 「中国が領海問題の現状を武力で変えようとしているため、
 中国をけん制する必要がある」
と堅く信じているほか、東南アジアのインフラ開発プロジェクト、さらには
 「中国とは関係のないオーストラリアへの潜水艦売り込み問題」
においても
 日本メディアがはっきりと「目的は中国へのけん制」と論じている
と解説した。

 また、中国社会科学院日本研究所の学者が
 「日本の世論には『中国へのけん制』という理念に対して疑念や批判を示すものもあるが、
 総じて中国への警戒や敵視が主流となっている」
と説明するとともに、世論やオピニオンリーダーが政府の意向や民衆に阿って中国を貶める言論を続ければ、一般市民の中国に対する偏見や嫌悪感がさらに深まり、日中関係の改善、さらに長期的には日本の国益にも悪影響を及ぼすことになると論じたことを紹介している。

 中国が急速な成長に伴い、地域や世界における存在感を増したことで、日本は中国に対する態度や位置づけを再考する必要に迫られている。
 かつての認識が通用しなくなりつつあるなか、その焦りが一部で中国に対して恐怖感を煽り立てる風潮につながっているとも言える。
 一方、安倍政権に嫌悪感を示す傾向のある中国でも、日本を脅威としてあおる言論が根強く存在する。
 どちらが先、どちらの一方的な責任、と押し付けることなく、新たな時代における両国の距離感や立ち位置を互いに模索していく必要があるだろう。



朝日新聞デジタル 5月29日(日)20時24分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160529-00000049-asahi-int

ベトナム、
海自艦へ異例の厚遇 2度目の寄港、
中国牽制

 海上自衛隊の掃海母艦「うらが」と掃海艇「たかしま」が29日、ベトナム中南部カムラン湾に寄港した。
 同湾はベトナムの最重要軍事拠点。
 政府は外国船の入港を厳しく制限してきたが、海自艦の寄港は今年2度目。
 異例の厚遇で日本への信頼を示し、中国と領有権を争う南シナ海問題で連携を図る狙いだ。

 2隻はバーレーンでの国際掃海訓練に参加後、補給のために寄港した。
 同湾は中国とベトナム、フィリピンなどが領有権を争う南シナ海の南沙諸島や西沙諸島に近い。
 冷戦時代は旧ソ連軍が使用した。
 
 ベトナムは同湾に今年3月、国際港を開港。
 日本やシンガポールなどの友好国を招き、間接的に中国を牽制(けんせい)している。
 4月には日本の艦船として戦後初めて、海自護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が寄港した。

 ベトナムのグエン・スアン・フック首相は28日、東京で安倍晋三首相と会談。
 日本からの巡視船提供など、南シナ海問題で協力することを確認した。



Wedge 5月31日(火) 8時20分配信 西本紫乃 (北海道大学公共政策大学院専任講師)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160531-00010000-wedge-cn

習近平の意向がすべて 八方ふさがりの中国外交

 5月27日、オバマ大統領が広島を訪問した。
 個人的なことを少し申し上げるなら、祖父母から原爆の話を聞いて育った私は、すでに他界した被爆者の親族を想いつつオバマ大統領のメッセージに胸が熱くなった。
 私と同じような思いを抱いた人もたくさんいるだろう。

 オバマ大統領の訪問について広島ではほとんどの人が「謝罪を求めない」
のは、原爆を直接体験した人が少なくなっていることも一つの要因だろう。
 今を生きている私たちにとって、オバマ大統領の広島訪問を機に、世界で反核の機運が高まることへの期待の方がはるかに大きい。
 原爆投下から71年後のオバマ大統領の広島訪問、それは原爆をめぐる
 「具体的な戦争の記憶とそれに対する謝罪」を求める声が
 「抽象的な平和という理念の追求」に転換した歴史的瞬間
であった。

★.「具体的な記憶」は特定の集団内で共有されるストーリーで「主観的に語られるもの」であるが、
★.「抽象的な理念」は世界中の誰もが受入れることが出来る「普遍的な価値」
である。
 ぜひ日本政府には今回のオバマ大統領の広島訪問を弾みとして、「核兵器のない世界」と平和に向けた積極的な行動を期待したい。

■中国では事実が歪められて報道

 「核兵器のない世界」と平和を歓迎する広島の民意について、残念ながら中国では事実が歪められて伝えられた。
 新華社や人民日報は、訪問を反対するグループの街頭活動やインタビューがことさら大きく伝え、オバマ大統領の広島訪問を日本国民があたかも歓迎していないかのような報道ぶりだった。
 27日、王毅外相も記者からの質問に対して
 「広島も重視すべきだが、南京も忘れてはならない。
 被害者は同情に値するが、加害者は永遠に自らが背負う責任から免れることは出来ない」
と答え、オバマ大統領の広島訪問が評価されることに釘を刺した。
 「普遍的な価値」に理解を示すのではなく、南京事件という「具体的な記憶」を改めて持ち出したのだった。
 いわば自国の「主観的な語り」を貫こうとしている。

 「南京も……」と語った王毅外相の発言は、特に準備されたものというよりは地方政府のグローバル化推進のイベントの場で記者の質問にその場で答えたものだ。
 なので、そこだけを大きく取り立てるのも、バランスを欠いてしまうかもしれないが、
 紋切り型の歴史認識問題を持ち出して言い捨てるかのように日本を牽制せざるを得ない、
 中国の外交の当事者らの手詰まり感がにじんでいる
ようにも感じられる。

 王毅外相だけでなく、最近の中国の外交の当事者やメディアの報道では、
 外交に関する話題でこれまでになくバッサリと相手を切って捨てるかのような表現が増えている。

■英国首相も台湾総統も切って捨てる

 今回の伊勢志摩サミットについていえば、南シナ海問題が議題に上ったことについて、27日、外交部の華春えい報道官は「G7は自分たちのことだけ話し合えばよく、よその国のことに口出ししたり手出しすべきでない」と発言。
 また、英国のキャメロン首相が南シナ海問題について
 「ホワイトハウスは北京にやりたいようにやらせすぎた」
と発言したことについて、『環球時報』は
 「自分たちがいまだに日の沈まない帝国だと思っている英国のキャメロン首相の思い上がりも甚だしい」
と舌鋒鋭くキャメロン首相を批判する論評を出した。

 キャメロン首相個人を批判するなら
 「パナマ文書の一件で国民からの批判にさらされているから、中国に対して攻撃的に出るのだ」
とでも言いたいところだろうが、パナマ文書の「パ」の字も触れてはいけないほどの今の中国ではさすがにNGだ。

 最近の中国の国際関係についての「切って捨てる型」の厳しい言いぶりは、G7やオバマ大統領の広島訪問だけにとどまらない。

 5月20日の台湾での蔡英文が総統に就任したが、それについて『国際先駆導報』が、蔡英文総統の家族は台湾の植民地時代から日本とのつながりが深いので、抗日の意識の台湾の人にとって受け入れられないとか、独身で子供もいないので政治スタイルは感情が入りやすいだとか、甚だしく誤解と飛躍に満ちた書きぶりの論評を出している。

 これほどまでに舌鋒鋭く他国に対する「切って捨てる型」の批判が、最近中国で増えているのには、
 「中国外交の手詰まり感」と「国内メディアの硬直の表れ」
ではないだろうか。

■南シナ海問題では四面楚歌

 特に南シナ海問題では、中国はまさに四面楚歌だ。
 昨年10月に南シナ海の領有権についてフィリピンがオランダのハーグにある国際裁判所に仲裁を求めた件について、まもなく最終的な裁定が下される見通しで、大方の見方では裁定では中国にとって不利な裁定になるだろうといわれている。
 ベトナムもまた米国との関係改善に動き出し、5月23日のオバマ大統領との会談後、ベトナムのクアン国家主席は「昨日の敵が今日の友になった」とベトナムと米国との関係強化を印象づけて中国を牽制した。

 また、25日にラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の国防相会議でも、南シナ海問題を域内の問題とする共同宣言が採択された。
 さらに今後、6月3日にはシンガポールでアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)も開かれる予定で、ここでも中国の南シナ海進出が焦点の一つになることは確実だ。

 アジアだけでなく欧州でも、中国の鉄鋼の過剰分の海外での廉価販売の問題について、欧州を中心として中国に対する非難の声が高まっている。
 国内経済ともリンクするだけに、これも中国にとっては舵取りが難しい問題だ。

■行政組織に蔓延する茶坊主

 他方で、
 中国国内の行政は腐敗の取り締まりによる綱紀引き締め、
 習近平への権限集中と「頂層設計(トップレベル・デザイン)」といわれる習近平自身によるトップダウンでの政策決定によって、
 行政組織の主体性が失われて
 最小限のことだけやっておく公務員の不作為や
 習近平の意向を忖度して過剰なパフォーマンスを行う権力への追従
が蔓延している。
 メディアもしかりで、2月に習近平が中国中央電視台など主要メディアを視察した際に、各社が率先して党への服従を表明したことも記憶に新しい。

 例えば、昨年10月には習近平は英国を訪問し関係が冷え込んできた米国に代わる「大国関係」を欧州先進国とのあいだに新たに築こうとした。
 しかし、中国経済の先行きの不安から世界各国の中国に対する関心は急速に薄れてしまった。
 今年1月には中国はいきなり「これからは中東だ」と中東各国との関係重視の方針を打ち出し、
 習近平主席がサウジアラビア、エジプト、イランを訪問し、今後の対アラブ諸国政策の方針を示した公式文書を発表した。
 中国で外交に関してこのような文書が発表されるのは異例だ。
 習近平の外交は「これからは中東の時間が始まる」と高々と宣伝されたが、
 それ以降、中国外交の「中東時間の時計」は止まってしまったかのようだ。

 まさに習近平の意向がすべて」な空気が中国の政治やメディアを支配している
といっていい。
 強いリーダーの「主観的に語る」各国との関係のあり方によって、
 中国の外交は振り回されている
かのようだ。
 そして
 リーダーがデザインする理想の自国像を忠実に描くため、
 メディア各社は極端な自国肯定と他国否定を繰り広げている
のだ。

 さて、周辺国や欧州先進国との関係がますます気まずくなってきている中国だが、アグレッシブな外交姿勢を見せた昨年、一昨年に比べると、今年はずいぶん静かだ。
 2014年の春のシーズンには習近平主席はオランダ、フランス、ドイツを訪問しているし、2015年春にはカザフスタン、ベラルーシ、ロシアを訪問し、モスクワで第二次大戦の戦勝70周年記念パレードに参加している。
 習近平主席はロシアから帰国した直後にはインドのモディ首相を中国に迎え、中印の結び付き強化を印象付けた。
 また、昨年の同じ時期には、李克強首相も中南米を訪問し、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)で演説を行い、これまで中国とのつながりが薄かった中南米地域に存在感を示した。

 今年はどうかというと、3月に習近平主席がチェコを訪問し、その後ワシントンで開かれる核安全保障サミットに出席するために米国を訪れオバマ大統領と会談した。
 この時の米中首脳会談は南シナ海問題などでの米中の意見対立をめぐりかつてないほど気まずい雰囲気の中で行われた。
 各国の中国に対する不信感が高まるなか、今年の春はこれ以外に特に目立った外交活動は行っていない。

■習近平の関心は、外交<国内<党内

 「習近平の意向がすべて」であるので、現状の打破も習近平主席の腹案次第だが、習近平主席自身は今、外交よりも国内のこと、それも党内のことにより関心が向いているのかもしれない。

 中国は来年秋に5年に一度の党大会を控えている。
 第19期の中央政治局委員の人選をめぐる人事の駆け引きは今年から水面下で始まり、様々な思惑が入り乱れる中で「政治」が展開していくことが予想される。
 つまり、これから来年にかけて中国の政治の世界で外交は二の次になってしまう可能性が高い。

 中国の外交の担当者や論客らが各国を「切って捨てる型」で批判するのは、自国の国際社会における立場の悪化とそれ対する打開策がない中で、それでも習近平主席の意向に沿った行動が求められているというジレンマからもたらされているのではないだろうか。

 南シナ海について中国は「古来より中国の領海だった」と「主観的に語る」ことを続けている。
 また、経済的なパワーを武器に昨年、一昨年は世界中に影響力を拡大しようとしてきた。
 これもまた経済的な魅力があれば相手も自分の側につくという主観的な見方にもとづいて各国との関係構築を行ってきたわけだが、経済の雲行きが怪しくなってきた今、かつてほどの勢いは失われつつある。

 「責任ある大国」を自らもって任ずるのが習近平政権の外交スタイルだが、
 「責任」がなにかはリーダーの主観で決まる。
 「力のあるリーダーのいうことがすべて」というのは中国国内の常識かもしれないが、
 こうした価値観は世界の常識とは相いれない。
 中国の現政権と国際社会との価値観のズレが中国の国際社会における立場をますます気まずいものにしている。



JB Press 2016.6.7(火)  川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47010

エリザベス女王に嫌われてもどうでもいい中国の本心
周辺国は野蛮人、
大事なのは外交より内政

 厳戒態勢の中で行われた伊勢志摩サミットは大きな混乱もなく無事に閉幕した。
 G7=主要7か国の首脳会議は、世界の経済や平和について話し合う会議であり、第1回会合はG5として1975年にフランスのランブイエで開かれた。
 その後、イタリアとカナダが加わってG7になり、1998年からはロシアが加わってG8となった。
 ただ、ウクライナ問題が原因でロシアの参加は2014年から停止されている。

 一度はロシアもメンバーになったくらいだ。
 世界第2位のGDPを誇る中国にも十分に参加資格がある。
 正式メンバーになりたい。
 中国は心の底ではそう考えているはずである。
 また、現在G7のメンバーだって世界経済について話し合うのであれば、中国を仲間に入れた方がよい。
 そう思っているはずだ。

 だが、それは今のところ表立った動きにはなっていない。
 そして、習近平が主席になってから、中国を正式メンバーに加えようとする動きはどんどん弱くなっているように思える。
 その最大の原因は南シナ海を巡る問題だろう。

 今回の会合では南シナ海での中国の動きに対して国際法を順守するように苦言を呈したが、中国はこれに対して強く反発している。
 これでは先進国会議の正式メンバーになるどころが、一時は招待されていたように、客人として迎えられることも難しいだろう。

■不思議なキャンペーン「中国の夢」

 中国を見ているとその発想に古さを感じることが少なくない。
 そして習近平政権になってから、その度合いは加速しているように思える。
 その良い例が「中国の夢」と言う不思議なキャンペーンである。
 「夢」が具体的に何を指すのか明らかにされていないが、清朝以来の屈辱の歴史を晴らして、世界に冠たる大国として振る舞うことを「夢」と称していることは確かなようだ。
 南シナ海の環礁の埋め立てもその延長上にあると思ってよい。

 だが、少し冷静に考えれば、その「夢」は帝国主義が跋扈した19世紀の発想であることは明らかである。
 人やモノや情報が自由に行き来する21世紀に、領土拡張を目的に南の環礁を埋め立てて軍事基地を作るなどという発想は尋常ではない。
 現代社会では、無人島を無理やり占領して軍事基地を作っても、得られるものはほんの僅かだ。
 海底油田の領有を強調する向きもあるが、南シナ海から得られる石油や天然ガスは僅かなもの。
 そして、原油価格が低迷する昨今、海底から石油を生産することは現実的ではない。
 遠い将来を考えても、南シナ海を領有する経済的なメリットはほとんどないと言わざるを得ない。
 経済的なメリットがないのに、中国はなぜこのように世界から嫌われる行動をとるのであろうか。

 現に、多くの国が中国を嫌い始めている。
 日本だけではない。
 ベトナムやフィリピン、そして穏健な外交政策を推し進めていたオバマ大統領でさえも、南シナ海の環礁埋め立てに怒り、軍艦を派遣する事態にまで発展した。
 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明し、良好な関係が喧伝されていたイギリスも、エリザベス女王が先の習近平の訪問を非礼と酷評したように、中国を嫌い始めている。
 中国の外交は世界中で失敗している。

■中国にとって周辺国は野蛮人

 なぜ、このようなことになってしまったのであろうか。
 その答えは中国の歴史にあると考える。
 それはアヘン戦争以来の屈辱の歴史ではない。
 東洋の大国として君臨してきた3000年の歴史である。

世界は中国とその周辺の小国から成り立つ──これが中国人の世界観だ。
 周辺の国は小さくてかつ野蛮だ。
 時に西域や北方の国が武力で中国を侵略することがあったが、そのような強国でさえ文化を持たない国として馬鹿にしてきた。
 実際、西域や北方の軍事強国も、満州族が中国を乗っ取って清朝を樹立すると満州族自身が中国化してしまったように、文化の面では中国を尊敬してきた。
 そんな歴史を持つ国である。
 中国にとって外交とは周辺の野蛮人との交流を意味する。
 だから、外交を重視していない。

 現在、中国の外務大臣は王毅だが、彼は中国共産党では約200人いる中央委員の1人に過ぎない。
 China7(政治局常務委員)どころか、18人いる“平(ひら)の政治局委員”でもない。
 そのような軽量級の人物に外交を担当させている
中国が外交を軽視している証拠である
 なお、王毅より序列が上の政治局委員は北京、上海、重慶の市長や広東省の書記を務めており、
 日本でいえば都知事や大阪や京都の府知事、また北海道知事の方が外務大臣より序列がずっと上ということになる。

 外交より内政が大事。
 これが中国政治の現実である。
 共産党が政権を担当しているからではない。
 中国の歴史がそうさせている。
 自国が世界で一番優れていると思い込んでいるから、他国の指図は受けない。
 また、一度言い出したら改めることはない。
  これは広大な国を治める上で考え出された知恵である。
 中国の歴代王朝が周辺の国や民衆に妥協することはなかった。
 論語にある“由らしむべし知らしむべからず”が中国の伝統である。

 世界第2位の経済力を誇るようになった中国は対外関係についても、その伝統を踏襲するようになった。
 そうであれば、エリザベス女王でなくとも、中国の外交使節に接する人びとが中国人をとても非礼な人びとだと思ってしまうのは仕方がないことであろう。

■「中国人」とは仲良くなれても

 本稿は、なにも中国を非難しようと思って書いているわけでない。
 筆者は何人もの中国人留学生を教えてきた。
 その一部とは今も交流している。
 中国人は世界の中で特に変わった人びとではない。

 最近、JBpressで人気を集めている“中国人家族の日本訪問記”(「ここに来て伊勢丹ですか!中国人家族が京都で紛糾」jbpress.ismedia.jp/articles/-/46937 ほか)に見られるように、ごく普通の人たちである。
 たしかに、ちょっとガサツで厚かましいところもあるけれど、微笑ましい家族愛に満ちた人びとだ。
 だが、それが政府となると途端に強硬な態度を取る。
 それに対して、日本だけでなく世界が辟易とし始めた。

 世界は多様である。
 現代の世界で、中国の皇帝だけが天帝の意を受けて即位したのだからその他の国は中国皇帝を敬いその意に沿うべきだ、などといった考えが通じるわけはない。
 外交は妥協の産物である。
 相手の言うことを聞くことは外交的敗北ではない。
 この道理を理解しなければ、中国が国際社会で生きていくことは難しい。

 GDPが世界第2位になったと言っても、1人当たりのGDPは8000ドルに過ぎず、いまだ中進国の域に留まる。
 その段階で歴史意識に目覚めてしまい、“中国の夢”を語り始めたことは、その進路を不安定なものにしている。
 中国では既にバブルの崩壊が始まっている。
 筆者は急激な崩壊はないと考えるが、それでも投資に重点を置いた成長を続けられないことは明らかであろう。

 今後、成長するにはサービス産業を充実させなければならないが、それには世界と交流し、また言論の自由を保障することが欠かせない。
 そのような時期に、自分の論理だけを声高に叫んで南シナ海の問題を悪化させ、G7に入れてもらえないことは、中国の国益を大きく毀損している。

 その行動が短期的な政治的理由ではなく歴史意識に基づいているだけに、中国がちょっとやそっとのことで対外姿勢を軟化させることはないだろう。
 そうであれば、中国は永遠に主要国首脳会議のメンバーになれない。
 そして国際的に孤立してしまえば、今以上の繁栄することも難しい。

 中国は自ら日本の“嫌中派”が喜ぶような道を選択して、それを突き進み始めたようである。



東洋経済オンライン 2016年06月08日 美根 慶樹 :平和外交研究所代表
http://toyokeizai.net/articles/-/121676

中国・王毅外相の「強硬発言」は尋常ではない
権力中枢で深刻な緊張が続いている可能性

 最近、王毅中国外相の強硬発言が際立って目立つようになってきた。
 同氏は誰もが知る知日派であり、駐日大使も務めたことがある。1980年代の中葉、筆者が在中国日本大使館の政治部長であったときに王毅は日本課長であり、同氏が順調に昇進し、今や中国の外相として八面六臂の大活躍をしていることを、尊敬の念をもって見守ってきた。
 しかし、その強硬な姿勢が日本に向けられているとなると、昔の思い出に浸るだけではすまなくなる。

■「日本はケチなソロバンをはじき、小細工をした」

 新聞報道によると、中国外交部は去る4月のG7外相広島会合のころから対日批判を強めていた。
 5月27日に終わったG7首脳会議については、
 「日本は南シナ海問題を大げさに騒ぎ、緊張を宣伝している。
 G7は世界経済を論議する場なのに、日本はそれを利用した。
 徹底的に反対する」
と論評した。
 日本経済新聞6月1日付によれば、中国はさらに
 「日本はそれを利用し、ケチなソロバンをはじき、小細工をした」
とも述べており、同紙の中沢克二編集委員は
 「まるで北朝鮮の宣伝放送なのかと見まごう口調」
と評している。

 このような論評は国家間の儀礼を無視した無礼なものだ。
 王毅外相は表には出ていなかったが、外交の責任者としてこうした論評を承認したのは間違いない。
 王毅外相は4月30日、北京で開かれた日中外相会談でも会談の冒頭で「誠意があるなら歓迎する」と吐き捨てたという。
 このような発言は外相同士の会談では異例であり、けんか腰とも言えるくらい挑発的だ
 G7首脳会議に際し、王毅外相はさらに行動を起こし、26日には北京で記者会見を開いてG20の意義を強調した。
 「G20の100日前」という説明であったが、G7首脳会議にぶつけ、注意をそらす意図であったのはだれの目にも明らかだった。

 この王毅外相の強硬姿勢は日本だけに向けられているわけではない。
 王毅外相は、なぜこのような強硬発言を繰り返すのか。
 その背景など、いくつか考えさせられる点がある。

 第1に、日本だけに強い主張をしているのではないということは、今一度確認しておきたい。
 カナダ訪問時に人権問題について激高しているということは、もはや西側諸国全般を敵視しているのであろう。

 第2に外交部の立場は中国内部で強くないということ。
 南シナ海の問題は外交と不可分の関係にあるが、
 基本的には軍が取り仕切っており、外交部の介入する余地はほとんどないようだ。
 しかも、外交部の振る舞いは、なにかにつけて軍から警戒されている。
 軟弱な外交官が強硬な軍人から睨まれているという構図だ。

■国内で緊張状態が高まっている?

第3に中国において言論は厳しく統制されており、自由な報道は許されない。
 現体制維持のためだ。

 しかるに、人権状況であれ、あるいは日本との関係であれ、中国の考えや方針と異なる相手国の主張に対して理解を示したり、一定限度でも評価したりすれば弱腰だと批判される危険がある。
 中国の指導者として対外的にどのような発言をするかは体制維持にかかわる問題になりうるのだ。
 だから、王毅としては外交の責任者として、かつ国家の指導者の一人として、二重の立場において強い発言をする必要があったと思われる。

第4に王毅が今、強硬な姿勢をとっているのは、国内で緊張状態が高まっている
からではないか、と筆者は考える。

 さまざまな政治的な緊張が考えられる。
 南シナ海における政策問題かもしれないし、
 習近平政権内外のパワーバランスに変化が生じているのかもしれない。
 あるいは王毅外相のさらなる昇進問題が絡んでいる
のかもしれない。

 具体的な理由については、現時点では推測するほかない。
 しかし、いずれにしても、
 中国外相の対外強硬姿勢は、国内との関係と不可分である
ことを知っておく必要がある。











「裏切りのオバマ」終末の大変身(4):オバマ大統領「広島演説」は一大叙事詩だった 出来悪のオバマを手駒としてどう使うか?

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 日本にとってオバマは中国が防衛識別圏を設定したときの対応は、明らかに裏切者だった。
 日本ではその衝撃に驚愕したが、それをテコにせっせっと自国防衛主義を貫いた。
 アメリカ信用できず、中国危険な隣人、韓国まったくダメ。
 それらにはさまれて自国をどう守るかに専念してきたのが、ここ最近であろう。
 ガッチリと尖閣防衛を打ち出し、実行に移してきた。
 結果としてこれによって中国は東シナ海に手を出せなくなってしまった。

 やむえず中国はその代替を南シナ海にもとめた。
 だが、ここで中国はまた大きなヘマをやらかした。
 強力な反日デモをおこなえば「おわびと反省の国」日本はかならず譲歩するであろう、と踏んだ轍を再び南シナ海でもやってしまったのだ。
 ここには日本のような強力は国はない。
 アメリカのオバマも中国寄り姿勢で、これまでアジアには介入しない姿勢を明確にしていた。
 よし、これならいける、
と計算した。
 たしかに順調にいった。
 ところが、そのオバマが任期終了を目前に
 歴史に残る外交成果を求めはじめた
のだ。
 大きく変身してしまったのだ。
 おそらく、彼にまだ十分な任期が残っていたら、オバマはこうはあからさまに心変わりはしなかったろう。
 オバマは歴史に名を残すという、キラキラ欲望に負けてしまった
のだ。
 
 その結果として、
 中国は強くなる前に横暴になり、アメリカを南シナ海に招きこんでしまった
ということになってしまった。
 少々勇み足の感じがする。
 急激な成長によって、自分の力だどれほどだか冷静に判断する能力を欠いてしまったともいえる。
 不安というコマに乗っているにもかかわらず、
 永久に倒れないと自分に言い聞かせ、
 出たとこ勝負で突っ込んでしまった、
といったところだろうか。

 さて、日本は裏切り者にして警戒心の強い
 オバマを、手駒としてどう使うか
に腐心した。
 そして、考えついたのが、
 彼に歴史の花道を与え、そこを歩かせること
だ。
 それが広島訪問である。
 日本は2つの条件を出した。
 アメリカに謝罪を求めずまた非難もしない、
 賠償要求は一切しない、
である。
 それは清々と実行された。
 日本はアメリカを引き込み、オバマは歴史に名を残した。
 最近の言葉いうなら、ウインウインとなった。
 日本は少なくとも同じ民主党のカーターよりも大きな名を彼に与えた。
 

●オバマ大統領 広島演説 広島弁で同時通訳


東洋経済オンライン  2016年05月30日 岡本 純子 :コミュニケーションストラテジスト
http://toyokeizai.net/articles/-/120308

オバマ大統領「広島演説」は一大叙事詩だった
魂をゆさぶる、神がかり的なコミュ力

 米国の現職大統領として初めて広島を訪問したオバマ大統領。
 被爆者を抱きしめる姿や力強く情緒的なスピーチに心を震わせた人も多かったのではないか。

 日本だけでなく、世界中が注目したまさに歴史的な出来事だったわけだが、その意義や重みを人々の心に強く印象付ける一因となったのが、オバマ大統領の圧倒的なコミュ力である。

 もともと、スピーチの巧さでは高い評判を持つ天才的雄弁家であるが、そのカリスマぶりは今回の訪問でも遺憾なく発揮された。
 ケネディ、レーガン、クリントンなど歴代の米大統領の中には優れたスピーカーも多くいたが、オバマ大統領はもはや「神の領域」と言っていい。
 魂をゆさぶる「神がかり」的なコミュ力の秘密は何か。
 そして、今回の広島訪問の真の意図は何だったのか。
 彼の「言葉」と「ふるまい」から読み解いていこう。

■スピーチを書いたのは「文学青年」

 この連載の一覧はこちら
 「71年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変した。
 閃光と炎の壁がこの街を破壊し、人類が自らを破滅に導く手段を手にしたことがはっきりと示された」

 まさに、舞台のオープニングシーンのような鮮やかな情景描写から始まるオバマ大統領のスピーチは、技術的・経済的発展を成し遂げながらも、戦争という愚行を止められない人類の「絶望的運命」を文学的な言葉と巧みなレトリックでつづった一大叙事詩だった。

 人類はその歴史が始まった時から暴力的な衝突を始め、その後も絶え間なく戦争を繰り返してきたことに触れながら、
 「この空に立ち上ったキノコ雲の映像を見た時、私たちは人間の中核に矛盾があることを非常にくっきりとした形で思い起こした」
と、自ら破滅を招く人間の不合理を憂うのである。

 平家物語のようなもの悲しさと不条理観。しかし、ストーリーはここでは終わらない。

 「私たちは、この街の中心に立ち、勇気を奮い起こして爆弾が投下された瞬間を想像する。
 私たちは、目の当たりにしたものに混乱した子どもたちの恐怖に思いを馳せる。
 私たちは、声なき叫び声に耳を傾ける」。
 この悲しい記憶こそが人類の道徳的な想像力をかき立て、希望をもたらす選択を将来にわたって続けようという意志につながるのだ、と説いたのだ。

 だからこそ「核兵器廃絶」という理想を追い求め、広島を「核戦争の夜明けではなく、私たちの道義的な目覚めの地としなければならない」とスピーチを結んだ。

 まさに、壮大な「絶望と希望」のストーリー。
 このスピーチを書いたのは、38歳のベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)と言われている。
 オバマ大統領の側近中の側近だ。
 もともとはニューヨーク大学の修士課程に在籍し、作家を目指す「文学青年」だった。
 その彼を政治の世界に駆り立てたのは2001年のあの出来事だった。

■スピーチの最中に大統領の脳裏によぎったもの

 「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」は、5月初旬にこのベン・ローズの大特集記事を組んだ。
 そこにはあの9月11日、マンハッタンの対岸から旅客機が超高層ビルに体当たりするのを自らの目で見た経験が語られている。
 「その日、すべてが変わった」。
 ショックと恐怖の経験は彼の価値観を根底から覆した。

 オバマ大統領の広島スピーチに出てくる言葉の端々ににじみ出る人間の蛮行、愚行に対する憤り、絶望感は、眼前で何千人もの命が失われるシーンを目撃したローズ氏の原体験に紐づくものでもあるのだろう。
 この演説の中に、
 「どの偉大な宗教も、愛や平和、正義への道を約束するにもかかわらず、
 信仰こそ殺人許可証であると主張する信者たちから免れられない」
といきなり宗教批判のような文言が出てきたことに違和感を覚えたが、これは、まさに9.11とその後のテロを指していると考えると合点がいく。

 そして、あのスピーチを読み上げるオバマ大統領の悲痛さの裏には、
 アメリカが体験した9.11というある種の「敗戦」の悲劇を重ね合わせる心情が少なからずあったのではないか。
 そんな想像も働く。

 同マガジンによれば、「優れた物語の語り手」であるローズ氏は
 「大統領のために考えるのではなく、大統領が何を考えているのか」
がわかるのだという。
 「どこから僕が始まり、どこでオバマが終わるのか、わからない」
とまで言う一心同体の存在にまでなったスピーチライターはまさにオバマ大統領の懐刀。
 ホワイトハウス随一のインフルエンサーとしてツィッターなどで情報を発信し、記者たちのオピニオンにも大きな影響を与える存在だ。

 そんな彼が、ウェブジャーナリズムのプラットフォームとして知られる「Medium」に自ら、広島訪問の意図をこうつづっている。
 「(アメリカが)核兵器を使った決断について触れるのではなく、我々共通の未来に対し、前向きなビジョンを示し、戦争という、とんでもなく、また破壊的な行為が人類にもたらす犠牲にスポットライトをあてる」。
 さらに、
 「核兵器を使用した唯一の国として、核兵器の根絶による平和と安全な世界の実現を推し進める特別な責任がある」
ことを示し、
 「終戦時には想像もしえなかった深く強固な同盟関係を象徴する訪問である」
と明言している。

 ガーディアン紙によれば、このスピーチはローズ氏が起草し、関係省庁などがチェックをした上で、さらにローズ氏が推敲し、オバマ氏が最終的に手を入れたものだという。
 その証拠に、読み上げた原稿の上には彼の手書きのメモがたくさん書き込まれていたそうだ。
 自らの原体験も踏まえ、強い思いがあふれ出るスピーチを紡ぎ出すスピーチライターと、その原稿を自分のものにし、情感をこめて語ることができる話し手。
 この最強のコンビネーションが生み出した歴史的演説だったのである。

■さらなる超絶コミュニケーション技

 筆者はアメリカに在住していた時期がある。
 そのときにオバマ氏のお茶目でチャーミングな側面をたっぷり見てきたため、まごうことなきオバマファンなのだが、今回、さらに新たな超絶コミュニケーションテクニックに気づかされ、感服することがあった。

 まずこのビデオを見ていただきたい。
 これは広島スピーチのほんの数時間前、岩国基地で行ったオバマ氏のスピーチだ。


●原爆ドーム前のスピーチの厳粛さと打って変わった明るさ、陽気さ、面白さだ。
ジョークを交え、とにかく楽しく、聴衆からも笑いが絶えない。

 以前、東京オリンピック招致のプレゼンコーチ役だったマーティン・ニューマン氏にインタビューした際に、プレゼンの要諦は「どのようなムードを作るか」であると教えられた。
 つまり、スピーチやプレゼン、あらゆるコミュニケーションにおいて、最初に考えなければいけないのは、「What mood do you want to create?」(どのようなムードを作っていきたいか)ということで、
 会場をどのような空気で包みたいか? 
 聴衆にどのような印象を持ってもらいたいか?
をコントロールできる人こそが超一流のプレゼンターである、というわけだ。
 そういう意味で、このオバマ氏の「場」の作り方はまさに天才的だ。

 これはまさに、三枚目を演じたかと思えば、次の場面では悲劇のヒーローに転じる「役者」のようなものだ。
 そう、オバマは天才的役者なのである。
 といっても、わざとらしく、自分でない他人の役を演じる、のではない。
 一流の役者はその役に「なり切る」ことができる。

 ストイックなまでの役作りで知られるアメリカの俳優ブラッドリー・クーパーのブロードウェイの舞台を見に行ったことがある。
 「まさに乗り移ったような演技」にすっかり、魅了されたのだが、あるラジオ番組で「けいこをひたすら重ねていると、何かが空から降りてきて、自分にとり付く」と話していた。
 被爆者と自然に抱き合い、握手をするあの姿も、計算されたものではない心の底から湧き出る思いだったからこそ、心動かされたのだ。
 まさに、イタコ、いや、ありとあらゆる自分の分身(アバター)に化身できる。これがオバマ氏の真骨頂である。

 翻って、日本人のプレゼンが面白くないのは「話している」か「読んでいる」からである。
 オバマ氏を目指すのはハードルが高すぎるとしても、グローバル競争に勝ち抜くため、日本の掲げる平和や環境保護のメッセージを世界に伝えていくためにも、国を挙げて、抜本的にコミュ力アップに取り組むべきだ。
 人の心、国そして世界を動かすのは結局のところコミュ力なのだから。



ニューズウィーク 2016年5月30日(月)17時00分 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/05/post-5201.php

オバマ大統領の広島訪問に対する中国の反応

 交戦国同士が友好関係を継続し、戦勝国が敗戦国の犠牲者に祈りを捧げられるのは大きなことだ。
 そこには戦争への反省と平和への願いがある。
 しかし中国はひたすら非難の大合唱に終始している。
 その現状を見てみよう。

■環球網:「安倍とオバマの政治パフォーマンス」

 中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹版、「環球時報」の電子版である「環球網」が「安倍とオバマの政治パフォーマンス」と題した記事を発信したことを、東方網など、数多くのウェブサイトが大々的に伝えている。

 最初に伝えたのは大陸系の香港メディア『大公報』(5月26日付け)のようだが、それを27日に環球網が転載したことから、大陸の多くのウェブサイトが「許可が出た」とばかりに、一斉に報じた形だ。

 それによれば
 「安倍は実に温厚でない。
 アメリカをしっかりと日本の右翼の戦車の上に縛りつけるために、
 まもなく下野するオバマから最後に奪い取れるものをいただき、
 オバマに残っているわずかな利用価値を搾り取っている」
とのこと。

 さらに以下のような批判が続く(原文には敬称はないので、そのママ転載。中国語では一般に呼び捨てだ)。

●G7サミットは安倍とオバマが主人公で、他の首脳はわき役だ。
 ようやく日本でG7サミットを開くことができた安倍は、この機を逃さず、喜び勇んで政治的パフォーマンスを演じ続けた。

●では、どうやってオバマの利用価値を使いこなすか?
 それはオバマに広島を訪れさせることだ。
 オバマは単純だから、「核のない世界」という自分の主張を唱えるために、まんまと安倍の深慮遠謀の計算に乗っかってしまった。
 安倍は日本が「正常な国家」になることに腐心している。

●しかし、安倍がどんなに演技してみたところで、所詮はアメリカの弟分にすぎない。
 オバマの目から見れば、安倍は「死を恐れない兵隊」の一人で、「お先棒かつぎ」にすぎないのである。

●たとえば、南海(南シナ海)問題で、アメリカは当事者ではないのに、どの関係国よりも最も高く跳ね上がり、(中国に)挑戦している。
 そのアメリカに協力するために安倍はただおとなしくアメリカの指示に従うしかない。
 オバマが必要とするときには、安倍は真っ先に突撃して敵陣(中国)に突入するしかない。

●しかしオバマが安倍を必要としない時には、安倍にはいかなる自由もないのだ。
 たとえば、ロシア総統のプーチンとの会見。プーチンが訪日したいと言ってもアメリカが喜ばなければ訪日させることもできない。
 自分からモスクワに行くしかないのだ。
 いったいどこの国に、二度も続けて一方的に片方の首脳が相手国を連続して訪問することなどあろうか?
 国際社会では不平等で礼を失することとされている。
 安倍はオバマとの関係において、傀儡でしかなく、人格を喪失し、国家としての格を失ってしまっているのだ。

■新華網:「来たよ、でも謝罪しない。それで満足なのかい?」

 中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は5月29日、オバマ大統領の広島訪問に関して
 「来たよ、でも謝罪はしないよ。日本はそれで満足なのかい?」
という(趣旨の)見出しで報道した。

 この報道でまず投げかけているのは、
 「オバマの任期末期における政治的パフォーマンスは、安倍が望んでいる"日本の侵略者としての犯罪性を薄めること"を叶えることができるのか?」
という問いである。

 そして韓国側の不満などを例にとって、
 「まるで自分が戦争の被害者の国であるように装い、
 日本が起こした侵略戦争の責任と他国に与えた損害から、目をそむけさせるためのパフォーマンスに過ぎない」
と書き立てている。

 5月27日に王毅外相が言った
 「広島は関心を寄せる価値はあるが、南京(事件)はもっと忘れてはならない。
 被害者には同情するが、しかし加害者は永遠に自分の責任から逃れることはできない」
という言葉を、ここでもまたくり返している。

 新華網は最後に、
 「オバマはこのたびの広島行きによって日米関係を強化し、それによってさらに一段と日本を丸め込んで、アジアのリバランスというアメリカの戦略のために働かせるつもりだ」
で結んでいる。

■哀しき国

 なんという品格のなさだろうか。

 なぜ中国と日本が、日米のようにできないのか、考えてみたことがあるのだろうか?

 ひたすら日本を責めまくることに没頭し、日中国交正常化後に日本人が中国に対して注いだ誠意や厚意(そして金銭まで)を、すべて無にしてしまったのは誰なのか?

 もちろん戦争をしたのは良くない。
 そのため少なからぬ日本軍関係者は戦犯として処刑され、日本は関係国から処罰を受けている。
 サンフランシスコ平和条約で戦後の講話条約も成立した。
 そのときに「中華民国」も「中華人民共和国」も締結国として署名できなかったのは、中国に原因がある。
 日本敗戦後、中国内において国民党と共産党の国共内戦が起きていたからであり、「中華民国」が国連に加盟していたからだ。
 おまけに1950年には北朝鮮の金日成(キム・イルソン)と当時のソ連のスターリンの陰謀があったとはいえ、中国は中国人民志願軍を北朝鮮に派兵して、アメリカと対峙した。
 だからアメリカの占領下にあった日本は、アメリカと共に中国と対峙せざるを得ないところに追い込まれていた。

 戦後の国際関係のバランスを崩したのは、中国自身の国内事情があったからだ。

 それでも毛沢東時代は、南京事件(中国で言うところの南京大虐殺)さえ、教科書に載せることを許さず、教えようとしなかったし、ましていわんや抗日戦争勝利記念日など祝賀したことは一度たりともない。
 南京事件の時に日本軍と戦ったのは国民党軍であることを毛沢東は知っていたし、抗日戦争勝利は、国民党の蒋介石が率いる「中華民国」がもたらしたものであることを最もよく知っていたのは毛沢東自身だからである。

 だから、毛沢東は歴史カードをただの一度も日本に突きつけたことがない。

 なぜ中国がいま歴史カードを必要とするかと言えば、
 それは天安門事件とソ連崩壊によって、一党支配体制が揺るぎ始めたからであり、中国共産党幹部が腐敗によって特権をむさぼり、社会主義国家としての体をなさなくなったからである。

 「加害者は、その責任から永遠に逃れることはできない」
というのなら、建国の父、毛沢東が殺戮した数千万人におよぶ自国民に対する責任からは目をそむけていいのか? 
 毛沢東が日中戦争中、日本軍と共謀して、同じ中華民族である国民党軍を弱体化させたことは許されるのか? 
 国共合作を良いことに、簡単に入手できる国民党軍の軍事情報を日本軍に高値で売り、民族を裏切ったことは、直視しなくていいのか? 
 その責任から逃れることは、許され続けていいのか?

 一党支配を維持するために強化している思想弾圧は、これらの事実から目をそむけさせることと表裏一体を成している。
 その思想弾圧が中国人民の尊厳を傷つけていることと、歴史カードを高く掲げて「社会主義的核心価値観」を人民に押し付けていることは、実は一つの根っこに根差しているのである。

 なにもオバマ大統領が広島で言ったことを全面的に讃えるつもりはない。
 彼もプラハ演説でノーベル平和賞などもらってしまったために、その締め括りに、何としても広島を訪問したかったのだろうことは否定しない。
 核なき世界を主張しただけでノーベル平和賞をもらい、実際には世界一多くの核兵器を所有しながら削減していないのも事実だ。
 しかし自国に反対者もいる中、広島訪問を決行した勇気には敬意を表したい。
 またこのタイミングで思い切って米国の現役大統領に広島訪問を決意させた安倍首相の決断も評価したい。
 それは双方のタイミングがようやく合い、これを逃したら、この人類的現象は実現できなかっただろうからだ。

 人類はいつまでたっても戦争をやめようとしていないし、また戦争の手段は精鋭化するばかりだ。
 それでも戦争を押しとどめようという思いは、誰の胸にもあるだろう。

 その思いのためには、他の要素が混在していたとしてもなお、原爆を落とすという前代未聞の戦争行為をした国が、それによって空前絶後の犠牲を受けた人々が息づいている場所を訪れた意義は大きい。

 そこに共通しているのは、二度と戦争を起こしてはならないという人類の思いであり、絶対に核兵器を使ってはならないという祈りだ。
 オバマ大統領の広島訪問は、その祈りに、わずかではあっても寄与したはずだ。
 北朝鮮が核兵器使用で威嚇している現在にあっては、隣国における「平和への祈り」が、いくばくかの抑止力になることもあり得るだろう。

 それをこのような形で非難することしかできない中国という国を思うと、その品格が哀しい。

 もっと大きな人類的視点に立てるようになるためにも、中国が真実を見つめる勇気を持つ国になれることを願う。



ダイヤモンドオンライン  2016年6月3日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/92394

中国人は「謝罪なきオバマ広島訪問」をどう受け止めたか?

 オバマ米大統領が27日、被爆地の広島を訪れ、17分にわたる演説で核廃絶を訴えた。
 オバマ大統領の広島訪問は中国でも多くの国民が注視したが、中国ではこの訪問がどのように伝えられたのだろうか。

 中国のメディアが一貫して注目していたのは、原爆投下に対するオバマ大統領の「謝罪の有無」だった。
中国では日本以上に「謝罪の有無」に拘泥した。
 もし仮にオバマ大統領が謝罪をすれば、中国も日中戦争時の暴力行為に対し、繰り返し日本に「謝罪」を求めることができるからだろう。

 だが、一方で戦勝国のアメリカが敗戦国の日本に頭を下げれば、日本の「被害国」としての印象を際立たせ、「加害国」としての立場を弱めてしまいかねない。
 訪問を前にオバマ大統領は日本のメディアに「(メッセージに謝罪は)含まない」としたが、これも中国にとっては分が悪い。
 アメリカが謝罪をしないという態度は、
 「日本は中国に謝罪しなくてもよくなった」という暗黙の了解を与える
ことにもなりかねないからだ。
 謝罪してもしなくても、中国にとってその展開は好ましからざるものとなる、アメリカの大統領の広島訪問はそんな複雑さを秘めたものとなった。

 だが、日本の被爆者たちにとっては、謝罪があろうがなかろうが、平和を願う気持ちに揺らぎはなかった。
 周知のように、演説では原爆の投下についての謝罪はなかった。
 だが、広島の多くの被爆者たちは「謝罪の有無」を乗り越えて、「核廃絶をめざす勇気」と述べたオバマ大統領に共感を示した。
 朝日新聞によれば、日本原水爆被害者団体協議会の事務局長を務める田中熙巳さんも、広島を訪ねるオバマ米大統領に送った要望書に謝罪要求を入れなかったという。

 日本のメディアもオバマ大統領の演説に対して「謝罪の有無」よりも「核廃絶への決意」を重点に置いて報道した。

■日本を“第二次大戦の罪人”にし続けたい

 一方、オバマ大統領の広島訪問により、日米関係が「和解」のための新たな歴史の1ページを刻んだことは間違いない。
 新たな歴史のページをめくるには、過去への言及が妨げになることもある。
 オバマ大統領が過去について言及することはしなかったのも、そのためではないだろうか。
 米国では原爆投下が「戦争終結を促した」と言われているが、投下の是非は避けた形だ。

  「和解」のためには、加害者も被害者も互いに前向きでなければならない――オバマ演説は、そんなメッセージをも投げかけたといえるだろう。
 中国がこれをおもしろくないとするのは、
 日本を“第二次大戦の罪人”にし続ける中国の外交カードが、
 今後、国際社会において効力を失う可能性がある
ためだ。

 中国の電子メディアは
 「かつての戦勝国と敗戦国を最も堅固な同盟間関係にする非の打ちどころがないストーリーだ」
と皮肉り、
 「日本の加害国としての罪を弱め、日本が被害国を装う」(中国新聞網)
と警戒したが、中国にとってオバマ大統領による広島訪問は、心穏やかではなかったようだ。
 案の定、中国外交部長の王毅氏は27日、
 「被害者は同情するだけのことはあるが、加害者は永遠に自己の責任を回避することはできない」
とクギを刺した。

■「原爆は身から出た錆」、「安倍が南京に来い」

 一方、インターネット上では
 「日本は先に中国に跪いて謝れ」
 「オバマが広島を訪問する前に安倍が南京に来るべきだ」
とする声が上がった。
 それに対し、「地球市民として平和を希求する」という内容の書き込みは、筆者の見る限りにおいてほとんど存在しなかった。
 オバマ大統領が示した「核廃絶への決意」、この意義についてはほぼ黙殺された形だ。

 広島の被爆者の声を取り上げた中国メディアもあった。
 「広島幸存者:奥巴馬即使不道歉也要承認核武器危害(「広島の被爆者、オバマ大統領が謝罪せずとも核兵器の危害を認めてほしい」)」
というタイトルを掲げた記事は、評論は加えず被爆者のコメントを中心に紹介したものだ。

 記事は
 「私が死ぬ前にオバマ大統領に会いたい。謝罪のためではなく、同じ立場で祈りを捧げてほしい」
という79歳の女性のコメントを紹介し、被爆者たちが望んでいることは、核兵器使用がもたらした災いを認めることだと伝えた。

 中国政府の統制強まる中国メディアにおいても、こうした「市民目線」の良心的な記事があることは好ましいことだ。
 だが、これに対する書き込みは、和訳すら憚られるような日本への痛烈な批判ばかりだった。

  「原爆が落とされたのは身から出た錆」
 「もっと原爆を落とせばよかった」
――無辜の市民の苦しみを無視した、そんな非人道的なコメントである。

 たとえ敵対関係にあろうとも、戦争被害者として一般市民が味わった苦しみは同じであるはずだ。
 かつては敵対した日中両国の一般市民が、共通の感情を持つことができるのは唯一この点にあるはずだ。
 日本と中国、果たしてこの2つの国民は、過去の歴史を乗り越えて、は互いに市民目線で痛みを分かち合えるのだろうか。

 インターネット上の声は必ずしも民意を反映してはいないと思いたい。
 中国で筆者が対話した中国人の中には、「戦争では互いに民衆が苦しんだ」と理解を示す人々もいるからだ。

■謝罪を求めない「曖昧な民族」

 その一方で、戦勝国のオバマ大統領と敗戦国の被爆者が演説終了後に握手を交わし、抱擁を交わしたシーンを、中国人の市民はどう受け止めただろうか。

 日本国内でもオバマ大統領の演説に対する疑問や不満の声もある。
 演出ではないか、と斜に構えた見方もある。
 原爆投下から71年、その後も苦しみを引きずった被害者からすれば、そう簡単に癒える心の傷ではない。

 それでも、日本原水爆被害者団体協議会の代表委員を務める坪井直さんは、オバマ大統領と握手をしながら「原爆を投下した米国を責めてはいない」と伝えたという。
 握手のシーンはテレビを通して全国のお茶の間にも流れた。
 恐らく世界の人々もこれを目にしただろう。

 この映像がもたらしたのは「互いに寛容であること」がどれほど大きな意味を持つか、という無言のメッセージである。
 戦争がもたらした憎しみ、これを乗り越えられるかは人類普遍のテーマである。
 そして乗り越えてこそ到達できるのが「和解」であり、それに必要なのが未来志向の寛容さである。

 謝罪を問わず、握手に応じる日本人――中国人にはそれが「曖昧な民族」と映るかもしれない。
 だが、未来志向にならなければ、永遠に新たな歴史の1ページをめくることはできない。
 謝罪なくとも平和を希求する広島の被爆者、その姿がなぜ中国には伝わらないのかと、歯がゆい思いである。


JB Press 2016.6.7(火)  高濱 賛
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47018

オバマを男にした日本人の以心伝心、
武士の情け
大統領演説を生かすも殺すもスピーチライター次第

■「謝罪」を「核廃絶」にすり替えた高等戦術

 米国内は、バラク・オバマ大統領の広島訪問前には原爆投下について「謝罪するか」「謝罪しないか」で喧々諤々だった。
 ホワイトハウスは躍起になって「謝罪せず」を強調した。

 終わってみれば、日本人の多くは
 「非核世界に誘う伝道師のメッセージ」
 「戦争という愚行を繰り返す人類の絶望的な運命を綴った一大叙事詩」
と褒めちぎった。

 一方、米国内でも識者の中には「これまでのオバマ演説の中で最も重要な演説」と一定の評価をするものも現れた。
 訪問に反対していた退役軍人団体は無視した。
 騒ぎを大きくするかと思ったドナルド・トランプ共和党大統領候補(事実上)も
 「謝罪さえしなけりゃ、誰が問題にするか」
と吐き捨てるように言った。
 むろん日米双方、特に反核活動家は、「核軍縮に向けての具体的提案がなかった」と批判した。

■歯に衣着せぬ一米文化人類学者のコメント

 一夜明けて冷静になったところで、日米関係に詳しい米国人文化人類学者は筆者にこうコメントしている。
 諸般の事情があるのだろう、これまで日米双方の識者たちが触れていない点を鋭く指摘している。

 「元々、演説の巧さで政界でのし上がってきたオバマだし、広島訪問を決めた時点から綿密な準備をしてきたはずだ。
 草案を書いたスピーチライター(ベン・ローズ大統領副補佐官=39)とは2007年以来の仲。
 オバマ大統領にとってはまさに「アルター・エゴ」(一心同体)的存在だ」

 「演説の草稿に際しては、彼は日本人が聞きたい事柄を在日米大使館経由で丹念に集めたらしい。
 演説の中に日本人の琴線に触れる表現を散りばめた」

 「言葉では謝罪せずに謝罪を以心伝心で日本人に伝える。
 特に日本政府サイドから日本人は謝罪を必要としていないという言質を取っていたことも重要なポイントだった」

 「これは日本人の国民性であることをオバマ大統領は肌で感じていたのではないか。
 黒人の父親、白人の母親を持ち、子供の頃にはハワイでも暮らしている。
 日系人との付き合いもあったに違いない」

 「原爆を開発製造したのは白人、原爆投下を決定したのも白人、実際に投下したのも白人。
 黒人は1人として関わり合いを持っていないかった。
 オバマが白人の大統領だったら広島に訪問しただろうか」

 「広島演説のポイントは、米大統領が原爆を投下したことへの日本国民への謝罪をせずに死者と被害者に謝罪の意を示すという難題をどう盛り込むかだった」

 「大統領とスピーチライターは、この難題を核兵器廃絶への願望に巧みにすり替えることで、受け手(日本国民)には米大統領の謝罪だ、と受け止めさせ、米国民に対しては、あくまでも謝罪ではなく、核兵器廃絶への決意だ、と受け止めさせた」

 「その理論構成を貫くことで、オバマ大統領は残りの任期の間に何とか成就させたいレガシー(遺産)作りに成功したのだ」

■今回の陰の立役者は39歳のスピーチライター

 オバマ大統領自身、ハーバード大法科大学院時代から演説文を書かせて右に出るものはいなかったとされる。
 2004年の民主党全国党大会での演説でみなを驚かせたのは知る人ぞ知るエピソードだ。
 演説文には凝りに凝る。
 大統領になった後も、自分の思っていること、感じたことを以心伝心で分かってくれる若いスピーチライターをそばに置いてきた。
 それが、2008年の大統領就任演説は史上に残る名演説となり、2009年のプラハ演説は世界に響き渡った。
 そして今回の広島演説だ。

 プラハ演説を草稿したのは、ジョン・ファヴロ―氏(当時27)。
 2008年に独立するために辞任した。
 その後釜に座ったのが現在のスピーチライター(正式役職名は大統領戦略コミュニケーション担当国家安全保障担当副補佐官)のベン・ローズ氏だ。
 東部名門コルゲート大学を経て、テキサス州のライス大学を卒業。その後ニューヨーク大学クリエイティブ・ライティング(創作作文専攻)修士号を取得している。
 リベラル派のリー・ハミルトン下院議員の補佐官をしたのち、2007年オバマ大統領候補のスピーチライターとなった。
 2009年オバマ大統領がカイロで行った「アラブの春」を賛美した「新たな始まり」(A New Beginning)の草案を書いている。

 ローズ氏は5月17日、ワシントンでの講演後、大統領の広島演説について
 「広島が経験した悲惨な戦争による、とてつもない犠牲について振り返りたい」
と語っていた。
 大統領にとってもスピーチライターにとっても「戦争の悲惨さ」を綴り、語るには疑似体験がなければ、聴くものの琴線に触れることはできない。
 ローズ氏にとって、広島での悲惨さは、2001年9月11日、テロリストに乗っ取られた旅客機がワールドトレードセンターの超高層ビルに体当たりし、何千人もの命が奪われる、あの瞬間をマンハッタンの対岸から目撃した体験にあったという。

 大統領にとって、その「悲惨さ」への悲しみはどこから来たのだろう。
 広島演説寸前の大統領について、ロサンゼルス・タイムズはこう報じている。

 「オバマ大統領は、ベトナムから日本に向かう機中でハーバード時代からの無二の親友、カサンドラ・バッツが急死したことを知らされた。
 貧乏学生の頃から助け合って生きてきた友だった」
 「オバマが上院選に出馬を決めるや、手弁当で選挙運動をしてくれた友だった。
 彼女の死の知らせに大統領は沈み込んでいた。
 伊勢志摩サミットでも他の首脳との写真撮影以外には笑顔は見せなった」

 「大統領が岩国の米軍基地で演説している最中、ローズは大統領が手直した広島演説草稿の箇所を盛り込んでいた。
 作業を終えたのはヘリが71年前に被爆した広島市民が熱と炎から逃れて飛び込んだ震源地の川の上空だった」

 「大統領は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 『私たちは戦争の苦悶を知っているんだ。
 だからこそ、手を携えて平和を世界中に広めなきゃいけないんだ。
 核なき世界を追求するんだ。
 その勇気をみんなで持とうじゃないか』」

 71年前、眼下に出現した地獄絵。
 そこでのたうち回る人々への鎮魂と悲しみ、それが大統領にとっては親友を失った悲しみと重なり合い、大統領の生の悲しみが演説に盛り込まれたのだろう。
 オバマ大統領の広島演説が多くの人たちに感動を与えた舞台裏。
 それは「弁舌さわやかな大統領」と「文章の魔術師・スピーチライター」との一糸乱れる共同作業のなせる業と言えそうだ。

■スピーチライター第1号はハミルトン初代財務長官

 大統領の演説文を草稿するスピーチライターが登場したのはいつ頃からだろうか。
 一説によると、ウォーレン・ハーディング第29代大統領のスピーチライターだったジャスティン・ウィルバー氏が最初だと言われている。
 もっとも非公式な形ならジョージ・ワシントン第1代大統領の演説文を書いていたアレクサンダー・ハミルトン初代財務長官が第1号だったと唱える歴史学者もいる。

 不言実行が尊ばれる日本の内閣総理大臣とは異なり、多民族多文化多言語のアメリカ合衆国大統領にとっては有言実行しかない。
 何をしたいのか、何をするのかを言葉ではっきりと言わねば国民の信頼を獲得することはできない。
 その意味では大統領になったときの就任演説は大統領にとっては最も重要になってくる。
 内閣総理大臣の施政方針演説などとは比較にならない。

 ジョン・F・ケネディ第35代大統領の
 「国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではないか」
のように史上に残るような名演説(1961年1月20日)はそのいい例だ。
 これを草稿したのは、スピーチライターのセオドア・ソレンセン氏だった。
 そのほかにも歴代大統領のスピーチライターとして有名なのは、リチャード・ニクソン第37代大統領のパット・ブキャナン氏、ジミー・カーター第39代大統領のジェームズ・ファローズ氏などがいる。
 オバマ大統領は自他ともに認める演説の名人。
 就任演説はもとより、プラハ演説、「アラブの春」を賛美したカイロ演説、そして今回の広島演説。

 前述のようにファヴロ―氏、ローズ氏といった「文章の魔術師」に演説文の大雑把な構成を伝え、たたき台を基に何度も何度もやり取りしながらドラフトを作成させる。
 最後にはそれに赤ペンを入れて修正し、演説文の完成するというやり方だ。

 ホワイトハウスには10人ほどのスピーチライターがいる。
 外交、内政、経済など各分野に担当が分かれている。
 大統領選挙の時から大統領と知り合い、常に大統領に密着した日常生活を送っている。
 最も重要な条件は「大統領の思っていること」を的確に美しい表現で文章にできるかだとされる。

■「全米で最もクレイジーな州知事」のスピーチライター

 ここで紹介するのは、そのスピーチライターとは何か、を自身の体験に基づいて一般市民に講釈しつつ、米国政治の一断面を鋭く分析した本である。

 『The Speechwriter: A Brief Education in Politics』(ザ・スピーチライター:政治学簡易入門)。

 草稿した演説文を読み上げる政治家がみなケネディ大統領やオバマ大統領のような一級の役者とは限らない。
 例えば小学校3年生程度の英語でしか表現できないトランプ氏のような大統領候補もいる。
 しかも草稿とは全く離れて即席の過激な発言が次から次へ飛び出してしまう。
 むしろ、歴代大統領を見渡してもケネディ氏やオバマ氏のような自らの文章を大切にする大統領の方が稀有かもしれない。
 本書の著者は、そんな政治家に仕えたスピーチライターである。

 サウスカロライナ大学を経て、英エジンバラ大学で英国流クリエィテブ・ライティングを極め、文学博士号を取得し帰国。
 新聞などに寄稿文を書いているうちにマーク・サンフォード・サウスカロライナ州知事にスピーチライターとして雇われ、3年10か月の間務めた経験を持つ。
 スピーチライターの仕事は演説文の草稿だけではない。
 記者会見での発言やプレスリリースから選挙民への返信まで本人に代わって書く。

 サンフォード知事は2011年、ブラジル人の愛人に会いにブエノスアイレスまで行った不倫旅行がばれて辞任に追い込まれたもののその後2013年には補選で勝って下院議員として政界復帰している。
 その後夫人とは離婚し、愛人を妻に迎え入れるなどすっぱりした善後策に州民は好感すら抱いたようだ。
 政治家にとっては、スキャンダルに対してはきっぱりと謝罪し、職を離れ、きれいに身辺整理し、一から出直すことがいかに必要か・・・。
 どこかの国の知事も他山の石とすべきかもしれない。

 サンフォード氏は、2012年には一時、共和党大統領候補への立候補者に名前が取り沙汰された人物だ。
 不倫騒動を起こしながらも、なお米メディアから好感を持って「全米で最もクレージーな知事」と呼ばれているのもその決断力と政治力のおかげだろう。
 知事の危機に際して、活躍したのが実は、本書の著者だった。
 知事が5日間、姿を見せないことがばれた時、米メディアが騒いだ。
 知事不在の最中行われた発表が振るっている。

 「知事はただ今、アパラチア・トレイルをハイキング中です」(hiking the Appalachian Trail)

 米東部ジョージア州からメイン州まで14州を縦断するアパラチア山脈の嶺に沿って走る3500キロの長距離自然道。
 スピーチライターは、「ブエノスアイレスで愛人と逢引きしている」ことを知りつつ、ウイットに富んだ言い訳を考えついたものだ。
 その後、米国では浮気がばれかけた男性陣たちの間で
 「アパラチア・トレイルをハイキング中」
が常套句として使われたという逸話すらある。

■政治家の身になって、その考えを字にするプロ

 著者はスピーチライターとは何か、についてこう綴っている。

「私は華麗な文章を書くために雇われたわけではない。
 私の仕事は、時間的制約のある知事に代わって、彼が書くとしたらどう書くか、
 それだけを考えて文章を書き続けた」

 「悪いことには、知事は私が書いた文章について何度となく難癖をつけてくることだった。
 気まぐれで短気というだけでなく、自分自身の英語力に対しての自信家だった。
 『文章の初めに前置詞を持ってきてはいけないというルールがある。
 そのルールを破ってはならない』などと自己流の英語術を押しつけようとした」

 「スピーチライターには、文章を書くという苦悩を少しばかり和らげ、痛快に思う瞬間がある。
 特に演説文を読み上げる人物の大言壮語と不正確な発言に反論せねばならない時などはなおさらだ」

 「さらに、スピーチライターの特権は一地方の政治形態を形作っている虚栄、土着の特質、自己正当化、思い込みといったミステリアスな要素を内部から観察できることだ」

 自分のボスが危機に直面した時、スピーチライターはどうすればいいのか。

「秘策は1つしかない。
 合理的な解釈を最大限含む言葉(Words)を最大限使うこと。
 言葉というものは役に立つ。
 だが、時として言葉というものは意味を持たない」

 「自分が分かってもらいたいのは、その中身などではなく、フィーリングだということが往々にしてある。
 言葉そのものの中身よりも温かさとか、思いやりを分かってもらうことの方が大事なことがある」

 「つまり文章とか言葉にはしばしば無用なものが多いことを知っておくべきだ」

■「広島演説」で言葉にしなかった部分の重み

 ローズ氏が書いた「広島演説」に戻って考えてみよう。
 同演説について私がコメントを求めたカリフォルニア大学サンタバーバラ校のダスティン・ライト博士はこう述べている。
 日本での留学経験や英語を教えた体験を持つ知日派若手国際学者だ。

「この演説で、言及しなかった言葉自体が意味を持っている。
 つまり米国民の半数が言い続けている原爆投下によって戦争終結が早まったのだという正当論について一切触れなかったこと。
 そして誰が原爆を落としたのか、という原爆の原点についての言及がなかったことだ」

 本書の著者の言う「言葉というものはしばしば意味を持たない」ということなのだろうか
 しかし、それは誰にでも通用するものなのか。

 話し手がいくら言葉ではなく、フィーリングで伝えようとしても、聞き手がそれを分かろうとしなければ意味はない。

 今回の「広島演説」が日本人の心を震わせたとしたら、それは
 「武士の情け」(the mercy of the brave or samurai-like mercy)とか、
 「以心伝心」(telepathic communiction)
を尊ぶ日本国民だったからではないだろうか。






2016年5月29日日曜日

ピークを過ぎた中国経済の行方(2):中国がスケープゴートとなっている! 「中国株バブルが崩壊して1年」が経過

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サーチナニュース 2016-05-29 07:09
http://news.searchina.net/id/1610820?page=1

中国がスケープゴートとなっている!
鉄鋼の生産能力の過剰をめぐる問題で

 中国経済の成長が鈍化し、生産能力の過剰という問題が深刻化している。
 中国は世界金融危機の際に4兆元規模の景気対策を行ったが、成長鈍化が鮮明になった今になってその弊害が現れている。

 中国で生産能力の過剰が特に深刻なのはセメントや鉄鋼といった産業だ。
 これらの産業は中国の不動産価格が上昇し、各地で不動産開発が積極的に行われていた際は大きな問題はなかったが、不動産価格の伸びが鈍化し、不動産開発投資の伸びが鈍化するにつれて生産能力の過剰が顕在化してきている。

 中国は国内で捌き切れないだぶついた鉄鋼製品を安価で輸出に回しているが、それによって国外の鉄鋼メーカーが打撃を受けている。
 中国メディアの華爾街見聞はこのほど、米国に中国製の鉄鋼製品が大量に流れ込んでいることに対し、
 米国が一部の鉄鋼製品に最高450%の反ダンピング関税を課すことを決めた
と伝え、中国商務部が反発していると伝えた。

 報道によれば、
 中国の鉄鋼輸出量は世界全体の輸出量の約半分を占めるが、
オーストラリアや英国、米国などでは多くの鉄鋼メーカーが倒産に追い込まれている。
 記事は、こうした状況に対して、「中国がスケープゴートとなっている」と主張し、
 欧米は中国が高額の補助金のもとで世界に向けて「生産コストを下回る」価格で大量に鉄鋼を輸出し、
 世界の鉄鋼価格の下落を招いていると批判している
ことを伝えた。

 続けて、26日に始まった伊勢志摩サミットでも鉄鋼に関する問題が焦点となったと伝え、
 「中国が出席していないにもかかわらず、生産能力の過剰が経済にマイナスの影響を与えている」
と明確に示されたと主張。
 中国と欧米の鉄鋼をめぐる問題は日増しに深刻化していると主張、
 欧米側の見解や行動に対して苛立ちを示した。



サーチナニュース 2016-06-02 07:11
http://news.searchina.net/id/1611154?page=1

「3つの奇跡」につながった日本のバブル崩壊は「賢明」な策だった=中国

 中国経済が直面している現在の状況は、日本がかつて体験した「バブル崩壊」前の時期に非常に似ているとする見方があるが、中国メディアの中国経済網はこのほど、日本が自ら進んでバブルを弾けさせる政策を選択したことは日本の「3つの奇跡」につながったと説明、賢明な判断を絶賛している。

 記事は
★.当時の日本が膨らんだ風船に自ら針を刺して破裂させるかのように、
 「自ら不動産および資本市場バブルを破裂させた」
と指摘。
 当時日本が用いた針とは総量規制であり、大幅な緊縮政策だとし、
 その結果、日本の不動産市場や株式市場は大暴落したと記事は説明した。
 では、その後日本はどんな「3つの奇跡」を成就させたのだろうか。

★.1つ目の奇跡は日本に莫大な海外資産をもたらしたことだ。
 急激な円高は日本企業の輸出に「壊滅的な打撃を与えた」と記事は指摘、
 「新たな発展方向を探し求める必要に迫られた」日本企業は海外投資に打って出る戦略を採用するようになり、
 日本政府の支持もあって国内に莫大な資産を築くに至ったと伝えた。

 2015年末時点で、日本は25年連続で世界一の債権国となったが、記事は
 「日本は海外にもう1つの日本を造り出した」
と日本の莫大な対外資産に驚嘆を示している。

★.2つ目の奇跡は「世界的な影響力と競争力を持つ国際企業を造り出した」ことだ。
 トムソン・ロイターの「Top100 グローバル・イノベーター 2015」は日本から世界最多の40企業が選出されたが、これは米国の35企業を上回る。

★.そして3つ目の奇跡は「老齢化社会のための完全な社会保障制度を造り上げた」ことだという。
 「不破不立」、つまり古いものを破らなければ新しいものを打ち立てることはできないと記事は日本の政策の成功を絶賛。
 この絶賛には、
 ハードランディングを恐れる中国に勇気や知恵を与えることができる極めて貴重な先例という認識も含まれている
のだろう。

 記事はバブル崩壊後の日本は「失われた20年」などと言われるが、日本が自らバブルを破裂させる政策を選択したことをとにかく絶賛。
 当時もし日本が不動産バブルの状態を「継続させる」政策を取っていたなら、今の日本の成功はあり得なかったという見方を示している。
 かつての日本と同じようにバブルに直面している中国はどのような政策を選択するだろうか。



ブルームバーグ 2016年6月6日 11:24 JST Kyoungwha Kim、Bonnie Cao
http://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-06-06/O8BR6W6JTSEQ01

世界で最も激しく売られた中国株式市場、
買い手探しがいまだに困難

 中国株式市場を底値拾いの買い手が殺到する場所にするには、世界的にも最も激しい相場急落以上の何かが必要そうだ。
 
 上海総合指数は過去1年間に40%下落したが、中国本土で取引される人民元建て株式のいわゆるA株のバリュエーション(株価評価)は
 世界の主要株価指数と比較して3倍の高さだ。
 本土の証券取引所での株価収益率(PER)は中央値で59と、2000年のドットコムブームさなかの米テクノロジー株よりも高い。


 
 中国株のバブルがはじけて1年が経過した
 企業利益が縮小する中でも政府が介入して株価が高止まりしているため、バリュエーションは落ちない。
 昨年の中国株急落を正しく予想したシルバークレスト・アセット・マネジメントやブラックフライアーズ・アセット・マネジメントの運用担当者からみると、中国は経済成長も弱い上に投資家センチメントも脆弱(ぜいじゃく)で、6兆ドル(約639兆円)規模の同国株市場で投資再開するのは時期尚早だ。

  ブラックフライアーズの株式責任者、トニー・ハン氏(ロンドン在勤)は「A株をわれわれは保有していない」と語る。
 同社のオリエンタル・フォーカス・ファンドは今年これまでに同種のライバルファンドの83%の運用成績を上回った。
 「さらに高い水準で誰かに転売できるので私は現水準のPERで株式を購入できるというのが強気シナリオのようだが、最大のリスクは中国本土での投資家心理の変化だ」
と付け加えた。
  投資家が不安に思う要因は多々ある。
 中国の経済成長率は昨年、1990年以来の低水準となり、回復の兆しがほとんどない。
 上海総合指数の構成銘柄企業の利益は昨年6月以降に13%減少。
 企業のデフォルト(債務不履行)は増え、人民元は5年ぶり安値付近だ。

  もちろん、証券会社のアナリストらはもう少し楽観的だ。
 ブルームバーグが集計した目標株価に基づくと、証券アナリストらは上海総合指数の構成銘柄が向こう1年で13%上昇するとみている。
 MSCIがA株を世界的指数に組み込む決定を今月中に下す可能性や、開始が見込まれる香港と深圳の証取接続が背景だ。
 強気派からはまた、政府の介入で株価の下落余地は限られるなどの指摘もある。

  とはいえ、中国で割安な銘柄を見つけるのは難しい。
 すでに激しく売られた企業には問題があることが多く、見通しが最も良い部類の銘柄はすでに高いと、BNPパリバ・インベストメント・パートナーズのシニア投資ストラテジスト、ダニエル・モリス氏は指摘した。
 例えば、中国最大の銀行である中国工商銀行のPERは5.6倍だが、不良債権急増が収益性に響くとの懸念で同行株は過去1年に16%下落した。
 一方で2015年に売上高が90%以上増えて昨年の有望株の1つだった楽視網信息技術のPERは175倍。
  モリス氏は「市場の一部は安くなっているが、それにはそれなりの理由があるのだろう」とし、
 「成長の可能性があり選好する銘柄には、それなりの価格を支払うことになる」
と述べた。
  香港に重複上場する銘柄が恐らく、本土とそれ以外の市場との間に根強い株価ギャップを最も明確に示唆している。
 同じ銘柄でも本土株は平均して香港上場株を93%上回り、その格差はガラスメーカーの洛陽玻璃で634%に達する。
  シルバークレストのチーフストラテジスト、パトリック・ホバネツ氏は「中国株には下がる余地が多々ある」とし、「ファンダメンタルズは貧相で恐らく悪化している」と語った。


原題:World’s Most Battered Market Is the Worst Place to Find Bargains(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中



Bloomberg 2016年6月11日 13:24 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-06-11/O8L9276JIJUO01

IMF、中国は企業債務膨張へ早急な対応を
-「危険な回り道」の恐れ

 国際通貨基金(IMF)のナンバー2であるリプトン筆頭副専務理事は中国に対し、企業債務の膨張に早急に対応するよう求めた。
 さもなければ同国が消費主導の経済に移行する中で「危険な回り道」をする恐れがあると指摘した。
  リプトン氏は11日、深圳の経済会議で講演。講演原稿によると、
 「企業債務は引き続き深刻かつ拡大している問題であり、
 真剣な改革へのコミットメントをもって早急に対応しなければならない」
と述べた。
  また、企業債務や企業再編への対応において、中国の「進展は限られている」と指摘。
 中国の債務総額は国内総生産(GDP)比で225%、
 企業債務は対GDP比で145%
に上るとの試算を示し、
 「これはどの基準でみても非常に高い」
と述べた。

  リプトン氏は
 「2015年と16年前半の与信の急増や、高水準の投資が続いていることに伴い、問題は拡大している」
と指摘した上で、
 「中国には間違いなくこの問題に対処する能力がある。
 また、中国が早急に取り組むことが重要だ」
と語った。
  この問題への早急な対応に加え、中国は企業と銀行のバランスシートを改善しなければならないほか、新たな債務バブルの発生を防ぐために企業統治(ガバナンス)を向上させる必要があるとの見解を示した。
  リプトン氏らIMFのスタッフは中国経済の年次審査の一環として、中国の当局者と会合を行っている。

原題:IMF Urges China to Tackle ‘High’ Corporate Debt Immediately(抜粋)



ロイター 2016年 06月 16日 16:58 JST
http://jp.reuters.com/article/angle-china-vicious-cycle-debt-idJPKCN0Z20QB?sp=true

アングル:中国景気対策の「悪循環」、
改革遅れ債務も増大

[北京 15日 ロイター] -
  中国では民間投資が落ち込んでいるため、政府が経済成長を支えるためにインフラ投資を強化している。
 この結果、債務が積み上がり、非効率な公的セクターの改革がさらに先送りされるとの懸念が高まっている。

 中国政府は4兆元(6100億ドル)の景気対策によって重債務を背負った2008─09年の繰り返しを避け、財政支出を民間投資の促進につなげたい狙い。
 このため民間投資の減速をことさらに心配している。
 政府系主要シンクタンクの有力エコノミストは
 「われわれは成長支援をインフラ投資に頼っているが、過度な依存は禁物だ。
 民間の投資を促す必要がある」
と語る。

 1─3月の固定資産投資伸び率は2000年以来初めて10%を割り込んだ。
 内訳を見ると、民間投資の伸びが過去最低の3.9%にとどまった半面、国有企業の投資は23.3%も増え、二極化が鮮明だ。
 中国指導部は、成長を押し上げて雇用を増やし、デフォルト(債務不履行)と工場閉鎖を避けようと努める一方、厳しい構造改革により過剰生産能力を減らすよう迫られており、綱渡り状態にある。

 政府は今年、6.5─7%の成長率目標を達成するため財政赤字を国内総生産(GDP)の3%まで拡大するとしている。
 5月の政府支出が17.8%と4月の4.5%から急増したため、一部のアナリストは財政赤字が目標を上回ると予想している。

 アナリストによると、官民パートナーシップにより民間資本をインフラプロジェクトに呼び込む試みは、ほとんど成果を挙げていない。
 収益率が低く、投資家保護の仕組みも欠いているからだ。
 しかし公共投資頼みでは、政府が掲げる債務削減は覚束ない。
 債務削減は政府が掲げた今年の優先課題トップ5に入っており、第12次5カ年計画でも長期目標に据えられているが、大半のエコノミストの予想では債務はさらに拡大する見通しだ。

 全国人民代表大会(全人代)の経済顧問を務める人物は
 「むやみにインフラ投資を増やせば再び過剰設備を生み出し、債務問題も再燃する」
と懸念を示す。

■<悪循環>

 国際通貨基金(IMF)のリプトン筆頭副専務理事は14日、国有企業の債務増大に迅速に手を打つよう中国側に提言した。

 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスも先月、中国国有企業の債務は他のいかなる格付け対象国に比べても多いと指摘した。

 清華大学のエコノミストで中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員の白重恩氏は4月、公的部門頼みの成長に警鐘を鳴らし、「悪循環が起こっている。潜在成長率の低下、景気対策、効率化の遅れ、さらなる潜在成長率の低下の悪循環だ。われわれはこの罠(わな)に陥る危険がある」と述べた。

(Kevin Yao and Elias Glenn記者)



ダイヤモンドオンライン 2016年6月15日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
http://diamond.jp/articles/-/93039

岐路に立つ中国と日本はどう付き合っていくべきか

■中国経済の行方は
日本や世界に大きな影響

 中国はどこへ向かっているのか。
 経済減速の世界への影響は大きく、国内では引き続く反腐敗闘争の一方、国民への強権的措置も目立つ。
 対外的には南シナ海での一方的行動を進め、東シナ海では今月に入り尖閣諸島接続水域に軍艦を派遣するなど地域の緊張を激化させる動きが加速している。
 このところ、国際社会の中国を見る目も厳しくなっている。
 日中関係についても、日中首脳会談や日中韓首脳会談が実現したことで一見、関係は改善されているように見えるが、日中間に信頼に基づく友好関係が確立されているとは到底思えない。

 中国の今後の方向性は、高い経済成長率を維持できるか、果たして政治改革が進んでいくのか、そして国内の延長であるかもしれないが、対外政策がどう展開されていくのかで判断されるのだろう。
 そして、これらの展開次第で、日中関係の行方も大きく変わっていく。
 いまや世界経済の牽引車とみなされる中国経済の行方が注目されている。
 日本国内では中国経済崩壊論が声高に叫ばれるが、中国の経済が停滞していけば、日本への直接的影響は大きい。

 中国は日本にとって米国と並ぶ最大の貿易相手国であり、対外直接投資残高も2014年には1000億ドルを超え、日本の台湾・香港・韓国・シンガポール4ヵ国・地域(アジアNIES)への投資の合計残高やタイ・マレーシア・インドネシア・フィリピンのASEAN主要4ヵ国への合計残高に匹敵する。
 ここ数年、中国人観光客による「爆買い」も日本の消費市場に大きく貢献してきた。

 中国の経済の停滞は日本への影響だけではなく、タイやマレーシア等中国と極めて大きな経済依存関係を有するASEAN諸国を直撃し、東アジア地域、ひいては世界経済全体に与える影響が甚大である。
 先月のG7伊勢志摩サミットで世界経済のリスクとして新興国経済、なかんずく世界第二の規模を有し大きな成長を続ける中国経済の退潮が議論されたのは記憶に新しい。

 中国経済が大きな岐路にあることは間違いがない。
 中国は2001年にWTOに加盟して以降、国際社会との経済関係を大幅に拡大し、製造大国として輸出を伸ばし、年平均10%を超える成長を達成してきた。
 2008年のリーマンショックで世界経済の需要が急速に冷え込み輸出の拡大を望めなくなった時には、4兆元(約56兆円)という膨大な財政支出(最も多くは地方政府の支出ではあったが)により内需拡大を図り成長を維持してきた。

 しかし今日、輸出主導型の経済成長は頭打ちとなり、今年第一四半期の経済成長率は6.7%にまで低下した。
 また、不動産バブル・不良債権・過剰生産設備・農村問題、更には環境問題など経済の量的拡大を妨げる課題が山積している。
 それでも、習近平総書記が掲げる「中国の夢」の一つの柱は2020年までに2010年比でGDP及び一人当たり所得を倍増することであり、これを実現するためには第13次5ヵ年計画期間中(2016-2020)に最低年6.5%の経済成長を達成しなければならない。

■構造改革と「一帯一路」構想
過剰生産設備の解消が課題

 このためには多分2つの方策が必須と考えられているのだろう。
★.一つには経済構造改革であり、特に供給サイドの改革である
 即ち過剰生産設備を整理し、国有企業の効率化を図らねばならないということなのだろう。

★.もう一つは「一帯一路」構想である
 習近平総書記は海及び陸のシルクロードの再興のためインフラ整備を周辺国と共に行っていくという構想を2013年にカザフスタンおよびインドネシアで提唱した。アジア・インフラ投資銀行(AIIB)もその一環であるが、豊富な外貨資金を提供することにより、周辺国のインフラ需要を高め中国の過剰生産財・労働力を消費することを可能にする。

 ただ、構造改革についても「一帯一路」構想についても決して容易な事業ではない。
 特に国有企業改革は多くの既得権益を切り捨てるという事でなければならないが、政治的抵抗は極めて強い。
 現に現在の方向は国有企業に競争を導入するというより、むしろ国有企業の合併などで独占的な国有企業の体制を強化する方向に向かっていると見られる。
★.「一帯一路」構想についてもAIIBの活動以外には未だ具体的な絵柄は描けていない
と見られている。

■政治改革は進むか
経済減速下では悲観的

 ついで国際社会の大きな関心は、
★.共産党の強権体制が緩むような政治改革が行われることになるかどうか
という点である。
 経済が発展し中産階級が大きくなれば、必ず政治的自由を求める力も強くなるはずである。

 経済が10%を超える大きな成長をしている間は、国民は自分たちにも富の配当があるという希望を持ち、共産党一党独裁体制を突き崩すような力が組織的に蓄積されることはなかった。
 しかし、
★.経済が大幅に減速して行った時には、
 どんなに強権を用いたとしても、所得不均衡や環境問題と言った社会問題が火を噴き、
 国民の不満がデモなどの大衆運動に繋がっていく事態
が想像される。
 とりわけ今日のネット社会ではそのような動きは瞬時に起こりうる。
 したがって、現状では共産党指導部が国民の自由度を拡大する方向に改革を進めるとは到底考えられない。

 一方、習近平政権が進める「反腐敗闘争」は国民の大きな支持を得ている。
 腐敗は一党独裁体制の歪みであると見られてきたが、習近平-王岐山体制は2012年の第18回党大会以来「トラもハエも叩く」の掛け声の下、極めて多数の高級幹部を摘発してきた。
 これは中央・地方政府の閣僚級幹部に止まらず、共青団と言った派閥や人民解放軍、国有企業などの幹部に及んだ。

 そして、この反腐敗闘争は習近平総書記に権力が集中する結果をもたらした。
 習近平体制の下ではメディアやNGO、更には知識人に対する締め付けが強化され、時には強権による取り締まりが行われるようになった。
 筆者などが参加する知的対話などでも、中国の学者が伸び伸び意見を言う姿勢に印象づけられた時期もあったが、ここ一、二年は特に中国内で行われる会議での発言は極めて慎重になっている。

 また、2017年の第19回党大会では7名の政治局常務委員のうち5名が交替することとなるが、ここでも経済を統治の中心課題に据えるのだろうし、政治改革が前面に出るとは考えにくい。

 このようなことを勘案すると、共産党政権は求心力を維持するため、過去多くの国で見られたように、今後、対外関係を一層強硬に進めるという方向性を持つのだろうか。

 国際社会にとっては、この中国の対外姿勢が最大の懸念である。
 近隣国日本にとって、これはとりわけ深刻な問題である。
 中国の対外姿勢は国力の増大とともに、一方的で傲慢になってきており、特に海洋戦略においてそうである。
 当初は尖閣への公船の頻繁な派遣や東シナ海での防空識別圏の一方的設定宣言など東シナ海での一方的行動が目立ったが、現在は南シナ海での行動も活発となり、地域の大きな不安定要因となっている。

■南・東シナ海問題と傲慢になる対外姿勢
国際社会はどう対応すべきか

 南シナ海では、中国は岩礁埋め立てやミサイルの配備等軍事化を進め、おそらく近々、上空に「防空識別圏」を設定するという動きに出ることも予想される。
 米国は航行の自由作戦(FON)を続けているが、もし防空識別圏の設定という事態になった時には、中国の行動を阻止するような方策があるだろうか(米国知識人の一部は南シナ海への防空識別圏の設置は「レッドライン」、すなわち、これを越えれば軍事的行動も辞さないという姿勢になるだろう、と述べていた)。

 また、今月あるいは7月中に、常設裁判所が南シナ海の領有権に関するフィリピンの提訴への審決を行うとされているが、中国はこれに従わないという立場を鮮明にしている。
 国際社会はこれを強く非難することになるのだろう。
 また6月9日には、尖閣諸島周辺の接続水域に中国軍艦が初めて侵入し、中国は尖閣周辺でも段階的に行動をエスカレートさせていく構えであるように見える。

 今月6日から7日に行われた米中戦略経済対話でも明らかになっているが、中国は環境や中東などのグローバルな課題では米国との協力を推進しつつも、南シナ海では対立し続けることを辞さない姿勢である。
 中国の対外姿勢は時として国内政治の延長であるとしても、国際社会が中国の行動を見逃さず、その都度正しい反応をしていくことによってその対外姿勢も変わりうる。

 米国は東南アジア諸国との安全保障の結びつきを強化している。
 フィリピンは新大統領の政策は未だ不透明ながら、趨勢的には2014年に締結された米国との新軍事協定の下で米軍のプレゼンスを増す方向にある。
 ベトナムについても先月オバマ大統領が歴史的な訪問を行い、米国の武器禁輸措置は完全に解除された。

 一方、米国はこれから本格的に大統領選挙戦に突入していく。
 これまでの予備選挙での主張からは、共和党トランプ候補が大統領に選ばれた時には、これまでの予備選挙での主張からは、アジアでの米軍の前方展開とリバランシングの概念の下での積極的な関与政策は大きく見直される可能性もある。
 中国はこれを注視しているのだろう。

 それでは、日本はどう向き合っていけば良いのだろうか。

 中国は米国との関係が維持されていれば日本との関係は重視する必要はないと考えているようである。
 米中間では南シナ海問題などはあっても、先日の戦略経済対話をはじめ多くの対話のチャネルが活用されている。
 対話のチャネルが極めて限られている日中間との差異は大きい。
 そのような状況を踏まえた上で日本は幾つかの基本的方向性を打ち出すべきなのだろう。

■日米同盟の役割分担と国際世論作り
日中協力を進めるべき分野とは

 まず、中国の無法な一方的行動を牽制しうるのは日米同盟であることをしっかり認識し、日米間の対中認識を擦り合わせるとともに、役割分担を行うべきなのだろう。
 また、米国のみならず韓国・豪州・インド・ASEAN・欧州などの諸国との協調を担保し、国際社会の世論を作る努力を倍加させるべきだろう。

 さらに南シナ海や東シナ海の問題に領土問題としてではなく、海洋の安全の問題として関係国に協議を呼びかけるべきであろう。
 これは中国の行動を非難するためではなく、海洋の安全のための信頼醸成措置を構築しようということであり、中国を含む枠組み、例えば東アジアサミット(ASEAN・日中韓・豪・NZ・インド・米・露の18ヵ国)の枠組みを使うのが最適かもしれない。

 中国の拡張的行動は牽制しつつ、地域のためにも日中は安定的関係をつくらねばならず、日本も米中間のように「利益が相反する問題をマネージし、協力できる分野を拡大する」ことを基本的方針とするべきである。
 日中間の相互信頼は著しく欠けており、日中間や地域で協力プロジェクトを本気で進めていく必要があるのではないか。

 中国の深刻な環境問題、とりわけ空気・水の汚染問題への協力強化は必要である。
 また、日本はルールを尊重する社会へ中国を引き込む努力を強化していくべきだし、環太平洋経済連携協定(TPP)に中国を巻き込むことや東アジア経済連携協定(RCEP)の早期締結などを進めていくべきであろう。
 AIIBについてもその透明性を担保していく意味でもADBとの協力関係を強化していくべきだろう。

 これから一年程度、米国は政権の交代期で対外関係でもイニシアティブをとりにくい時期となる。
 中国は経済の動向如何で国内政治は動くだろうし、対外関係にも大きな影響を与えるのだろう。
 このような時期にあってこそ日本は理性的で能動的な外交を心がけていかねばならない。