2016年6月30日木曜日

中国に騙されるドイツ人の政治家:ハーン空港買収劇、「お宅も詐欺にあったの?」

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●フランクフルト・ハーン空港


Record china配信日時:2016年6月29日(水) 7時10分
http://www.recordchina.co.jp/a143179.html

ウェブサイトすらなし!
ドイツの空港を買収した中国企業の「異常さ」―独メディア



 2016年6月28日、独フランクフルト郊外のハーン空港を買収した中国の上海益謙貿易の「異常さ」が現地メディアで報じられている。

 現地メディアARDドイツテレビのウェブサイトによると、上海益謙貿易には公式ウェブサイトが存在しない。
 また、ネット上には関連情報も掲載されていないという。
 商業登記はされており、住所は上海市閘北区のビルの21階とされている。
 同区はかつて工場や倉庫が連なった場所で、現在では住宅街に変わっている。

 ARDドイツテレビの記者が訪れると、ビルの中には上海益謙貿易の事務所があることを示す看板や広告などは一切なく、事務所内の床に置かれた段ボールには生活用品が詰められていた。
 事務所にいた若い女性職員は、ここは間違いなく上海益謙貿易だと証言したが、会社の運営モデルや関係者の情報については口を閉ざした。
 同社の代表は現在海外にいるため、質問があれば帰国後に伝えるとだけ話したという。

 このほか、同社の大株主である人物が法定代理人を務める上海国青投資管理公司についても情報がなく、中国経済界に明るいドイツの専門家もこの投資会社は聞いたことがないと話している。
 こうした「異常」な状況に、ハーン空港のあるラインラント・プファルツ州の依頼を受けた国際会計事務所KPMGが上記の2社に関する調査を行ったが、結果はいずれも「信用できる」というものだった。
 同州の議会ではこの報告の妥当性を検討するという。



Record china 配信日時:2016年7月1日(金) 16時40分
http://www.recordchina.co.jp/a143576.html

中国の「怪しすぎる」会社のドイツ空港買収に待った、
対抗の中国2社との買収交渉は継続か―海外メディア

  2016年6月30日、環球時報によると、負債を抱える独フランクフルト・ハーン空港の買収に中国企業3社が名乗りを上げ、その1つの上海企業について、「ウェブサイトも連絡手段も不明だ」と各国メディアが疑念とともに報じ話題となったが、この買収が独当局から中止を命じられた。

 米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、ハーン空港のあるラインラント=プファルツ州政府のフォルカー経済大臣は、買収側に対する信頼性に疑惑が生じたことから、同空港の売却が中止されたと明らかにした。
 6月初旬、州政府は株式の82.5%を上海にあるとされる益謙貿易公司に売却することを発表したが、野党から
 「この会社はウェブサイトもなければ、会社のロゴもなく、電話番号もメールアドレスも不明だ」
と反対に遭い、計画は頓挫となった。

 独国際ラジオ放送ドイチェ・ヴェレもこの事案について報じたが、内容はやや異なる。
 州ドイツ政府は7月に予定していた同空港の売却を延期したが、益謙貿易公司以外の2社との間では協議を継続する計画だと伝えている。

 フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングによると、益謙貿易公司以外の2社は、海南航空の親会社である海航集団(HNAグループ)と国有企業の河南民航発展投資有限公司(HNCA)。国際会計事務所・KPMGは州政府から依頼を受け、この2社を調査。
 その結果、2社の信頼性が確認された。


現代ビジネス 2016年07月08日(金) 川口マーン惠美
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49133

ドイツの空港を「爆買い」しようとした、
中国人投資家の正体


〔PHOTO〕gettyimages

■お荷物空港売却のニュース

 フランクフルト国際空港から120キロも離れたところに、もう一つ空港がある。
 フランクフルト・ハーン空港。
 昔、米軍が空軍基地として使っていたもので、戦闘機の発着の多さに、一時はドイツ国の航空母艦とまで言われた。

 その後、東西冷戦が終わり、米軍は去った。
 90年の終わりからは、アイルランドの格安航空会社ライアン・エアが利用し、あまりお金のない旅行客を運んだ。
 ちなみに、ライアン・エアはヨーロッパで最大の利用客を誇る航空会社だ。
  信じられないほど格安のチケットを出すからだが、その経営方針がまた凄まじい。
 スーツケースは、空港ビルから飛行機までゴロゴロ自分で引きずって行かなければならないし、座席は自由席でエコノミーだけ、リクライニングはできない。

 飲み物もなければ(頼む時は有料)、座席の前のポケットもテーブルもない。
 たいていの空港はアクセスが悪く、したがって、基本的に乗り継ぎ客は存在しない。
 つまり、遅延によって乗り継ぎが出来なかったケース、あるいは、荷物が乗り継ぎ便に乗らなかったケースの保証は生じない。

 フランクフルト・ハーン空港は、このライアン・エアが使っていた不便な空港の一つだった。
 空港の所有者は、95年よりラインランド−プファルツ州(82.5%)とヘッセン州(13.5%)に変わったが、経営自体はずっと赤字だったようだ。
 そのうち、ライアン・エアが離れ、いくつかの貨物輸送会社も離れ、空港は深刻な経営難に陥った。

 しかたなく州の税金を注ぎ込んだら、州民の抗議が始まり、まずいことに空港関係者の汚職も明るみに出た。
 ラインラント・プファルツ州が、こんなお荷物は早く売り払ってしまいたいと思ったのは、ごく当然の成り行きだった。

 空港売却のニュースが流れたのが今年の6月6日。
 買主は中国のSYT社(Shanghai Yiqian Trading)。
 本社は上海。

 SYT社の全権代表のChou氏が、州の内務大臣レヴェンツ氏と大喜びで握手をしているおめでたい写真が出た。
 空港の値段は1300万ユーロ。

■部屋に積み上げられた段ボール箱

 Chou氏によれば、SYT社は中国でも有数のホールディングカンパニーで、多くの子会社を持つという。
 資金を提供するのは、傘下のゼネコンGuo Quig社。
 こちらは20万人の従業員を抱える建設会社で、アジア全体にプロジェクトを展開している。
 資本金7200万ユーロ、本社はやはり上海。

 Chou氏は何者かというと、それがよくわからない。
 見た目は40歳ぐらいの大男で、本職は医者なのだそうだ。
 フランクフルト・ハーン空港を、中国人旅行者のメッカとするとか、独中貿易に特化した空港として大開発をするとか、勇ましい限りだ。
 これが実現すれば雇用も増え、地域の活性化に役立つだろう。

 ただ、
 「SYT社、あるいはGuo Quig社に、空港運営の経験はあるのか?」
と聞かれると、
 「自分はパイロットの免許を持っており、以前、フランクフルト・ハーン空港に、最初の輸送機を操縦してここに着陸したのは自分である」と答えた(信じた人がいたかどうか・・・)。 

 いずれにしても、とにかく商談は進行(正式な成立は州議会の承認を待ってから)。
 州によると、SYT社、およびGuo Quig社の信用度は、KPMGというコンサルティング会社が太鼓判を押しているということだった。
 KPMGは確かに、世界的に有名なコンサルティング会社である。
 日本にもある。

 ところが、一週間も経たないうちに、どうもおかしいという話が出てきた。
 第一回目の支払いがなされなかったのだ。
 そこで調べると、SYT社のことを、中国では誰も知らない。
 中国の商工会議所さえ知らない! 
 KPMGは何を調査したのだろう?

 6月22日には、南西ドイツ放送(SWR)の上海特派員がSYT社の本社であるはずの場所を訪ねてみた。
 しかし、ビルには会社の名前さえなく、ようやく辿り着いたのは17階の小さな部屋で、積み上げられた段ボール箱の間に5人の従業員が座っていた。
 しかし、後で明らかになったところでは、彼らもSYT社の従業員ではなかった。

 こうなると、SYT社はペーパーカンパニーに限りなく近いが、部屋に積み上げられた段ボール箱にちなんで、ドイツの新聞は同社を「段ボールカンパニー」と名付けた。

 次に特派員は、空港の出資者であるGuo Quig社も訪ねた。
 20万人の従業員を擁するというゼネコンだが、こちらはさらにいかがわしかった! 
 粗末な雑居ビルには、7200万ユーロの資本金を持つ企業の面影すらない。

 それどころか、お隣のタイヤ会社に尋ねたところ、
 「お宅も詐欺にあったの?」
という答えが返ってきたという。

■ドイツ人の琥珀商人まで現れて……

 これらの報道が始まると、本国のラインラント−プファルツ州では大騒ぎになった。
 内相は、議会での承認に向かって進めていた準備に、慌てて「ストップ」をかけた。

 しかし、Chou氏は一向に悪びれず、
 「中国政府が外国送金の許可を出すのが遅れているだけ。
 許可はもうすぐ出るので、もしも、そんなにご心配なら、あとの支払い分も前倒しで払いましょう」
と言ったとか。
 大風呂敷を広げる人の発想だ。
 そもそも、こんな(些細な?)ことが、これほど大きなニュースになるとは思わなかったそうだ。

 粗末な事務所のことを尋ねられときは、
 「同じような名前の会社がたくさんあるので、混乱しているのではないか」
と答えた。

 一方、不思議なのは、ドライアー州首相の態度だった。
 6月末の時点でも、彼女は、あくまでも中国側を信用していると表明していた。
 KPMGの調査では、支払い能力には問題がないので大丈夫というわけだ。

 ところが7月4日、調査を依頼されたKPMG社が、実はいくつかの疑問点を報告していたということがわかった。
 こうなると、州政府の立場は丸つぶれ。KPMGの報告が、なぜ、どこで消えてしまったのか?

 そもそも、SYT社もGuo Quig社も、ダミー会社であることは間違いない。
 ドイツの政治家が、医者兼パイロット(?)であるChou氏の大言壮語を本気で信じていたとも思えない。
 それどころか今では、20万の従業員を抱え、アジア全土でプロジェクトを展開しているはずの大企業Guo Quig社は、実は去年の11月に初めて登録された会社だということもわかっている。

 では、州のトップたちが、なぜそれでも大丈夫と言い張ったのか? 
 ダミー会社の後ろにはいったい誰がいるのだろう?

 そうこうするうちに、おかしな話はますます増えた。
 この商談において、SYT社に代わってサインをしたのが、ドイツ人の琥珀商人であることもわかった。
 この琥珀商人は、レヴェンツ内相と長年親しかった人間で、しかも、Chou氏は彼のところで琥珀を仕入れたこともあるという。
 わけがわからない。

 7月5日、遅ればせながらも、州の内務次官が調査のために大慌てで上海に飛んだ。
 SYT社の社長Wang氏、および中国政府の役人と会い、事情を聞くためだ。
 現在、SYT社の事務所には、まだ会社名の看板はないが、ドアに張り紙がされ、
 「用事のある人はここへ電話してください」
とWang社長のケータイの電話番号が書いてあるそうだ。
 冗談みたいな話だ。

 しかし、そのWang社長、自分の会社についての情報を提供するつもりはないという。
 「州との契約が正式に結ばれ、動かぬものとなったなら、そのときには自社についての情報を開示する」
と主張しているらしい。
 世界の常識とは、順序が逆だ。

■疑り深いドイツ人が、なぜ?

 7月6日になって、数日前は「心配していない」と言っていたドライアー首相が意見を180度転換、今回の取引に対して重大な懸念を表明した。

 詳細はいまだ定かではないが、州側に重大な過失があったことは確かだろう。
 入札の不正も考えられる。
 野党は、ドライアー氏を厳しく追及する構えだ。

 Chou氏やWang氏は、単なるペテン師だったのか? 
 それとも、中国政府による資金規制で、現在、本当に外国送金の許可が出なかったのか?

 実は、中国の投資家がドイツの空港に狙いを定めたのは、これが最初ではない。
 2014年には、倒産したあとのリューベック空港を中国人投資家が買っている。
 この時の大風呂敷は、「同空港を、中国からドイツへの医療ツアーの一大拠点とする」というものだった。
 しかし、その翌年、空港は再び倒産した。

 ふだんは疑り深いドイツ人が、
 なぜ中国に対しては、こんなに無防備なのだろう?

 7月7日、SYT社との取引が白紙に戻されることがほぼ決まったというニュースが流れた。
 これ以後、州政府は、入札で2位、3位につけた投資家と新たに交渉を始める。
 しかし、少なくともそのうちの1社は、また、中国企業である。



Record china配信日時:2016年7月9日(土) 15時10分
http://www.recordchina.co.jp/a144240.html

“空港爆買い”の中国企業はペーパーカンパニー、
取引はお流れに―独メディア

 2016年7月6日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレは記事「中国企業によるフランクフルト・ハーン空港買収はお流れに」を掲載した。

 独南西部ラインラント・プファルツ州政府は6月6日、同州が保有するフランクフルト・ハーン空港の株式の82.5%を中国企業・上海益謙貿易公司(SYT)に1000万ユーロ(約11億円)で売却すると発表した。
 「中国は空港まで爆買いするのか!」
と世界を驚かせたニュースは意外な展開を見せている。

 SYT社は複数回に分けて支払いをすると発表していたが、第1回目の支払いから届かなかったのだ。
 そもそも中国では誰もSYT社について知らない。
 独メディアがSYT社の本社を訪ねると、雑居ビルの一角に小さな部屋があるだけ。ペーパーカンパニーだったという。
 この異常事態にラインラント・プファルツ州政府も取引に問題があると声明を発表、SYT社に対する空港売却はお流れになることが決まった。


Record china 配信日時:2016年7月10日(日) 6時50分
http://www.recordchina.co.jp/a144342.html



ウソの空港買収案に州政府が激怒、
“中国人詐欺師”を提訴へ―ドイツ

 2016年7月7日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレは記事
 「ラインラント・プファルツ州政府、中国人詐欺師を提訴へ」
を掲載した。

 南西部ラインラント・プファルツ州は今、“中国人詐欺師”の話題で持ちきりだ。
 6月6日、中国企業・上海益謙貿易公司(SYT)がフランクフルト・ハーン空港を買収すると発表されたが、ほどなくしてSYT社が実態のないペーパーカンパニーだと判明したためだ。

 ラインラント・プファルツ州政府は取引中止を発表したが、野党は州トップの辞任を要求するなど政治問題にまで発展している。
 この許し難い詐欺師に賠償を求めて州政府は提訴する方針を固めている。
 州政府のバカとしかいいようがない。



【2016 異態の国家:明日への展望】


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選挙応援にかけつける中国海軍(5):やはり事実だった中国軍機のチョッカイ行動

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TBS系(JNN) 7月5日(火)2時12分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160705-00000005-jnn-int

中国国防省「挑発行為を行ったのは日本の戦闘機」と非難



 先月、東シナ海の上空で中国軍の戦闘機が、日本の航空自衛隊の戦闘機に接近し、攻撃動作を仕掛けたとされる問題で、中国国防省は4日
 「挑発行為を行ったのは日本の戦闘機の方だ」
と非難しました。

 これは先月、東シナ海の上空で中国軍の戦闘機が航空自衛隊の戦闘機に対して攻撃動作を仕掛けてきたと、航空自衛隊のOBがインターネットのニュースサイトで明らかにしたものです。
 中国政府は当初この報道を「事実無根だ」と否定していましたが、4日になって国防省が記者の質問に答える形で
 「先月17日、中国の戦闘機が通常のパトロールを行っていたところ、
 日本のF15戦闘機2機が高速で接近し、射撃用のレーダーを照射した。
 それに対応するために中国機が攻撃動作を取り、日本機は退避した」
と主張しました。

 「日本機による挑発行為は空中での不測の事態をもたらしやすく、地域の平和と安定を脅かすものだ」と日本側を批判しています。
 そのうえで、不測の事態を防ぐためにも、日中の防衛当局間で協議が行われている「海上連絡メカニズム」が必要だとして、運用開始に向けて条件を整えるよう求めています。

 この件について、日本政府は「6月17日に自衛隊機がスクランブル発進をしたことは事実」としながらも「中国機から攻撃動作を受けた事実はない」と説明していました。(04日21:27)


 では何故日本政府は「なかったもの」にしようとしているのか。
 ここで認めれば、選挙の争点が憲法改正へ移っていく。
 おそらくこれを嫌っているいるのではなかろうか。
 政府は選挙が絡まない形でもっていき、国民投票で決を取りたいのではないだろうか。







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東南アジアの「盟主」インドネシア: 中国の横暴に毅然と抵抗宣言、南シナ海紛争に加勢

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朝鮮日報日本語版 6月24日(金)8時14分配信

東南アジアの「盟主」インドネシア、
南シナ海紛争に加勢

 インドネシアのジョコ大統領は23日、南シナ海のナトゥナ諸島を急きょ訪問した。
 今回の訪問は中国外務省がナトゥナ諸島周辺海域について、「両国の海洋権益が重なる」と主張してから4日後のことだ。
 2014年に就任したジョコ大統領がナトゥナ諸島を訪れるのは初めてで、南シナ海での領有権紛争でこれまで後手に回っていたインドネシアが紛争の前面に出てきたと受け止められている。

 インドネシアは人口2億5000万人を抱える大国で、東南アジアの「盟主」の役割を担う国で、中国がこれまで領有権紛争を繰り広げてきたフィリピン、ベトナムとは異なり、手ごわい相手になる見通しだ。

 AP通信と現地メディアによると、ジョコ大統領は同日、ナトゥナ諸島のインドネシア海軍基地で艦船に乗り、周辺海域を視察し、安全保障・外交関係閣僚と艦上で会議を開いた。
 乗船した船は17日に中国漁船に発砲し、乗組員を拿捕(だほ)した艦船だった。

 今回の訪問について、ルフット・パンジャイタン政治・法務・治安担当調整相は
 「(インドネシアの主権を守る意思について)明確なメッセージを伝えたものだ。
 歴史的にインドネシアは(中国に)これほど強硬だったことがない」
とした上で、
 「大統領が南シナ海問題を軽視しないことを示すものだ」
と説明した。

 プラモノ・アヌン内閣秘書も
 「政府のトップであり、国家元首として、大統領はナトゥナ諸島がいつまでもインドネシアの一部であることを明確にした」
と指摘した。


★.ナトゥナ諸島海域には、インドネシアが排他的経済水域(EEZ)を設定している。
★.中国はナトゥナ諸島海域の相当部分が自国が主張する「南シナ海(南海)九段線」と重なるとの立場だが、
 表面的には「中国の伝統的な漁場」という表現を使ってきた。
 インドネシアとの直接的な領有権争いを避けてきた形だ。

 19日の中国政府の発表はナトゥナ諸島海域をめぐる両国の神経戦の発端となった。
 中国外務省の華春瑩副報道局長は、中国漁船が17日にナトゥナ諸島海域で拿捕された過程で、インドネシア海軍が発砲に及んだことをついて、
 同海域は「中国漁民の伝統的な漁場であるほか、中国とインドネシアの海洋権益が重なる場所だ」
と述べた。
 華副報道局長はまた、
 「インドネシアの艦船が武力を乱用し、中国漁船を襲撃し、発砲したことは国連海洋法条約を含む国際法に大きく違反したものだ」
と主張した。

 この発言にインドネシア政府は猛反発。
 レトノ・マルスディ外相は22日、
 「インドネシアの領海のどこも中国と領有権は重なっていない」
と反論した上で、
 「ナトゥナ諸島周辺のインドネシアのEEZは国連海洋法条約によって国際的に認められている。
 今回の問題は法執行の問題であって、政治問題ではない」
と主張した。
 違法操業漁船の取り締まりを正常な法執行と位置づけた上で、領有権紛争の対象とはなり得ないと主張した格好だ。
 ユスフ・カラ副大統領も
 「今後ナトゥナ海域で強硬に排他的権利を主張していく」
と発言した。

 インドネシアは人口が世界4位(2億5000万人)、経済力が16位、軍事力が12位で東南アジアの最強国だ。
 ナトゥナ諸島周辺での中国漁船の違法操業にも武力を行使し、遠慮なく中国に圧力をかけてきた。
 今年5月にインドネシアの駆逐艦が中国の底引き網漁船に発砲したのをはじめ、年初来2回にわたり、中国漁船に銃撃を加えた。
 また、ナトゥナ諸島にF16戦闘機5機の配備も進めている


JB Press 2016.6.30(木)  北村 淳

インドネシア大統領、中国の横暴に毅然と抵抗宣言

南シナ海でインドネシアにも及び始めた中国の海洋拡張政策

 中国が受注したインドネシアの高速鉄道建設プロジェクトが難航していると伝えられているが、その一方で、両国の間に領海および海洋権益をめぐる問題がにわかに勃発し、緊張が高まっている。

 6月23日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、南シナ海・ナトゥナ諸島沖のインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」上で主要閣僚や軍首脳とともに閣議を開き、同海域の防衛を強化し、インドネシアの主権を維持することを明言した。

■インドネシア海軍コルベットが中国漁船を拿捕

 閣議の前の週の6月17日、ナトゥナ諸島北方沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に12隻の中国漁船が許可を得ずに侵入し、操業しようとしている現場を、インドネシア海軍が発見した。
 インドネシア海軍艦艇が警告を発しながら、中国漁船群に接近したところ、11隻の中国漁船は逃走したが、すでに網を入れていた1隻はインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」に捕捉された。
 その中国漁船はインドネシア軍艦の警告を無視して逃走をはかったため、「イマムポンジョル383」は警告射撃を実施して追跡し、中国漁船を拿捕した。

 今回の事件が発生した水域を含むインドネシアのEEZ内において漁業活動をするには、インドネシア当局の許可が必要である。
 中国船に限らず、このような許可なき漁船が操業することはできない。
 そのため、インドネシア海軍による中国魚船拿捕は主権国家にっては何ら問題のない行動である。

 しかし、中国漁船を拿捕した「イマムポンジョル383」に対して中国海警局巡視船2隻は
 「中国漁船は中国の伝統的な漁場で操業していたのであり、何ら違法性はない。
 直ちに解放せよ」
と威嚇的に警告を発した。
 また、中国政府当局も
 「インドネシア軍艦の発砲により中国漁民が負傷した。
 このような武力の行使は国際法に違反する」
とインドネシア側の行動を強く非難した。

 実は、今年の3月にも、同海域で違法操業中の中国漁船をインドネシア当局が拿捕しようとした事件が発生している。
  このときは、取り締まりに当たっていたインドネシア巡視船の取締官が、拿捕して連行しようとした中国漁船に移乗したところ、中国海警局巡視船2隻が急行してきて、拿捕された中国漁船に体当たりを始めたため、取締官たちはインドネシア巡視船に脱出せざるをえなくなってしまった。
 その結果、インドネシア側が一時拿捕した漁船と違法操業していた乗組員たちは、中国側に奪還されてしまったのである。

 その後も、この海域での中国漁船の違法操業が頻発したため、ジョコ大統領は、それまで海軍艦艇が常駐していなかったナトゥナ諸島周辺海域に海軍コルベットを展開させて、中国漁船に目を光らせる方針に転じたのであった。

■ナトゥナ周辺海域も“中国の海”

 中国当局は、以前には明確に
 「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアに属しており、中国がこれに対して異議を申し立てたことはない」
と明言していた。
 ところが中国政府は、6月17日の拿捕事件の発生を受けて19日、
 「ナトゥナ諸島周辺海域は、中国の伝統的な漁場であるだけでなく、中国とインドネシアの海洋権益が重なり合う場所である」
と表明するに至った。

 この中国当局の新しい立場は、さすがにナトゥナ諸島の領有権まで主張するものではないものの、「ナトゥナ諸島周辺海域は“中国の海”に属する」という主張を開始し始めたものであるとみなすことができる。

 南シナ海における“中国の海” とは「九段線」という極めて曖昧な領域概念で示されている。
 その九段線は連続線ではない九つの断片的な線であるため、南シナ海の“中国の海”の境界線が明示されているわけではなく、おおよその範囲が示されているに過ぎない。

 そのように大雑把な九段線から類推すると、ナトゥナ諸島はこれまで中国政府当局が明言して来たように“中国の海”の外側に位置していると考えるのが自然である。
 しかしながら、今回中国政府が主張し始めたように、ナトゥナ諸島周辺海域の北東部は“中国の海”とオーバーラップしている水域が存在しているとも考えられなくもない。

 もちろん、ここで言う“中国の海”とは、中国共産党政府が勝手に主張している九段線という、極めて大雑把な境界線に基づいた、中国だけが正当性を主張している概念である。
 インドネシアはじめ中国以外の国が受け入れなければならない国際法的根拠は全く存在しない。

 しかし中国は、自らが勝手に作り出した九段線や“中国の海”などを振りかざして、国際社会に幅広く受け入れられている(そして中国にとって都合の良い部分は中国も援用している)国際海洋法秩序を部分的に否定しようとする海洋権益拡張政策を推し進めている。

 まさに、今回の
 「ナトゥナ諸島周辺海域の一部は中国の伝統的漁場であり、すなわち“中国の海”に属している」
という中国政府の主張は、これまで差し控えていた南シナ海最南端での中国の権益を拡張しておこうという中国政府の姿勢の表れに他ならない。

■やがては領有権の主張も


 今回、中国政府は「ナトゥナ諸島周辺海域の一部が中国とインドネシアの権益がオーバーラップする水域である」という主張をし始めたが、ナトゥナ諸島の領有権自体については疑義を呈してはいない。

 しかし、ナトゥナ諸島の領有権と同じく、その周辺海域に関しても、かつては“中国の海”に属しているといった主張はしていなかった。
 したがって、将来的には「ナトゥナ諸島周辺は、伝統的に中国の漁場であっただけではなく、ナトゥナ諸島も歴史的には中国の領域であった」と主張し始める可能性も否定できない。

 実際に、中国では
 「明朝滅亡後に満州族の支配に抵抗した広東省潮州周辺の漢族が、ナトゥナ諸島に王国を建てて、19世紀にオランダに占領されるまでナトゥナ諸島を支配した」
といった“歴史”がまことしやかに語られている。

 そこで、ジョコ大統領は閣僚を率いて、中国共産党政府の先手を打つ形でナトゥナ諸島を訪れて、問題となっている海域内の軍艦上で「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアにある。
 その周辺200海里内はインドネシアの排他的経済水域であって、中国の主権が及ぶ水域とオーバーラップする海域は存在しない」というアピールを身をもって成した。
 このアピールは、今後インドネシアがナトゥナ諸島とその周辺海域での国益を保持していくために必要不可欠な行動であったと言えよう。

■日本とは対照的な毅然とした姿勢

 ただし、インドネシアの海洋戦力は中国人民解放軍と比較すると極めて貧弱ではるかに劣勢である。
 中国側がジョコ大統領の対中強硬姿勢をどのように評価し、どのような「次の一手」を繰り出して来るかは分からない。

 とはいうものの、ジョコ大統領はじめインドネシア政府・軍首脳は、中国の横やりに対して毅然として領土領海そして海洋権益を防衛する意思を示したのである。
 その姿勢は、「尖閣諸島は自国の領域である」と口先で言い立てているのみで、何ら具体的行動に打って出ず、相変わらず「アメリカ頼み」の姿勢から脱却していない日本とは好対照と言わざるをえない。

 ちなみに、インドネシア政府は、中国による海洋侵攻戦略の脅威に対抗するために、ナトゥナ諸島並びに周辺海域の軍備を増強するとともに、国防費を100兆ルピアから250兆ルピアに増額するという。






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南シナ海問題で来月仲裁判断:中国拒否なら「無法国家」の声も、強気の姿勢が招いた「中国離れ」

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ロイター 2016年 06月 30日 16:40 JST
http://jp.reuters.com/article/china-philippines-idJPKCN0ZG03P?sp=true

南シナ海問題で来月仲裁判断、
中国拒否なら「無法国家」の声も

 [北京/アムステルダム 30日 ロイター] - 
 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は29日、南シナ海の約90%に主権が及ぶとする中国の主張に反発してフィリピンが提訴した仲裁手続きについて、7月12日に判断を下すと発表した。

 これに対し、中国外務省の洪磊報道官は「仲裁裁判所はこの問題で裁判権を持たず、審理を開いたり、裁定を下したりすべきではないことをあらためて強調する」と反発。「フィリピンが一方的に提訴したことは国際法に反している」と述べた。

 また、「海をめぐる領域や紛争の問題について、中国は第三者による解決策、強制された解決策はいかなるものであっても受け入れない」と表明した。

 一方、フィリピンのコロマ大統領府報道担当官は「地域の平和と安定を促進する、公正かつ公平な判断を期待している」と述べた。

 米国務省のリッチー・アレン報道官は、米国は仲裁裁判所を支持すると強調。「われわれは平和的な南シナ海の紛争処理を支持する」とした。

 中国国営メディアの新華社は、仲裁裁判所について「法の侵害」だとし、今回のケースは南シナ海の領有権問題を悪化させるだけだと主張。「フィリピンは、そのような仲裁が南シナ海でさらなる問題を引き起こし、当事国の利益に少しもならないということを理解していない」としている。

 <九段線>

 中国は、いわゆる「九段線」を基準に自国の領有権を主張している。九段線は東南アジア中心部の海にまで広がっており、その範囲内には各国が領有権を争う多くの島嶼(とうしょ)や岩礁、豊かな漁場、石油やガスの鉱床が存在する。

 中国に不利な裁定は「中国から主張の法的根拠を奪う」ことになると、フィリピン側の主任弁護士であるポール・ライクラー氏はロイターに語った。

 さらに同氏は、仲裁裁判所による裁定を拒否することは、中国が法の支配を尊重しない「無法国家と宣言しているようなもの」との見方を示した。

 フィリピンは2013年、中国の主張が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反し、同条約で認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う自国の権利が制限されているとして、仲裁裁判所に提訴した。

 しかしフィリピンにとって南シナ海の領有権問題が重大である一方、優先事項は国内のイスラム武装勢力の壊滅だと、同国の新国防相に就任したデルフィン・ロレンザーノ氏はロイターに語った。

 同氏の発言は、南シナ海問題をめぐるドゥテルテ次期大統領の方針に対する不透明感をさらに増すものだ。ドゥテルテ氏は中国と相対すると語る一方で、対話を通じて関与するとも述べている。

 米当局者らは、中国に不利になるとみられている裁定に対し、同国が2013年に東シナ海で行ったように、南シナ海でも防空識別圏を設定するというような反応を示すことを懸念している。また、南シナ海で人工島の建設や要塞化を強化するような態度に出ることも考えられる。

 そのような中国の動きに対し、米国は、外交的圧力に加え、東南アジア諸国への防衛支援とともに、米艦船による「航行の自由」哨戒作戦や米戦闘機による上空通過を、さらに加速させて対応することが可能だと、米当局者らは語る。

 仲裁裁判所の判断を控え、南シナ海をめぐる緊張が広がっている。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、同国領ナトゥナ諸島付近の海域での海底油田探査や商業的漁業の拡大を命じた。ナトゥナ諸島では、インドネシア海軍の艦艇と中国漁船との間で衝突が発生している。



日本テレビ系(NNN) 6月30日(木)14時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160630-00000033-nnn-int

南シナ海領有権 来月“裁定”に中国が反発



 南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を提訴している仲裁裁判の最終判断が来月12日に出されることを受け、中国側は談話を発表し、強く反発している。

 南シナ海で人工の島を埋め立て領有権を主張する中国をフィリピンが提訴している問題で、国際的な司法機関・仲裁裁判所は29日、裁定を来月12日に出すと発表した。
 南シナ海での中国の海洋進出の動きに関して初めて国際的な司法判断が出されることになる。

 これを受け、中国外務省の報道官は談話で「仲裁裁判所に判断を下す権限はない」として改めて裁定を受け入れない立場を強調した。
 さらに「領土・領海に関しては第三者によるいかなる強制的な解決策や決定も受け入れない」と強く反発している。



読売新聞 2016年06月09日 16時03分 北海道大学公共政策大学院専任講師 西本紫乃
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160609-OYT8T50050.html
 
習政権の大誤算、
強気の姿勢が招いた「中国離れ」

  このところ中国外交は失点続きである。
 中国のあまりに強引な姿勢が嫌気を誘い、台湾に独立志向の強い民進党の 蔡英文 ツァイインウェン 政権が誕生した。
 5月に日本で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では南シナ海における中国の海洋進出問題が取り上げられ、首脳宣言に「懸念」が盛り込まれた。
 欧州ではこれまで親中派と見られていた国々が距離を置き始めている。
 今月7日には東シナ海で中国軍機が米軍機に異常接近した。
 国際社会の「懸念」には耳を貸さず、強硬姿勢を続けてきた中国だが、世界のあちこちで静かに「中国離れ」が進行している。
 この背景を中国事情に詳しい北海道大学公共政策大学院専任講師の西本紫乃さんに分析してもらった。

■香港、台湾に現れた変化

 6月4日、天安門事件から27年のこの日、香港では今年も事件で犠牲になった人々に対する追悼集会が開かれた。
 参加者の数は12万人にも上ったが、昨年と比べて1割近く減った。
 これまでこの集会の主要な参加グループだった学生たちが今年は参加を見合わせたためだ。

 香港の若い世代が今回の天安門事件追悼集会に参加しなかったのは、中国の民主化に対する期待が薄れたこともあるが、それ以上に、彼らの目指す方向が香港における民主の実現という、より密接に自分たちの将来にかかわる問題になったからだ。
 「香港は香港、中国は中国」と割り切った考え方をする人が若い世代を中心に増えている。

 中国離れは香港だけの現象ではない。
 台湾でもまた、若い世代を中心に「台湾は台湾、中国は中国」と、中国と自分たちを切り離して考える人が増えている。
 蔡総統は5月20日に行われた就任式での演説で、
 「台湾は民主を宗旨とし、人権や自由という普遍的な価値を大切にしてきた。
 この価値観を共有できる米国や日本、欧州各国との友好関係を大事にする」
と明言した。
 蔡総統の言葉には、彼女を総統に押し上げた台湾の人々の気持ちが反映されている。

 中国発の問題がいち早く顕在化するのが、香港や台湾だといわれる。
 天安門事件の追悼集会、蔡政権の誕生、一見関係なさそうな二つの出来事だが、習近平シージンピン政権下の中国とは距離を置くという点でつながっている。

 目覚ましい経済発展で中国は豊かになった。
 国が豊かになれば、個人の意見がより尊重されて多様性が受け入れられるようになっていく。
 ところが、習政権下では、情報統制や伝統的な道徳観念を押し付ける政治宣伝など、政治権力が人々の生活の身近なところにまで介入し、全体的な社会統制の強化がなされている。

 つまり、時代の流れに逆行しているのである。
 そうした中国の現政権の強権的なやり方への反発が、香港や台湾の人々の「中国離れ」となって現れているのだ。

■崩れ去った「穏健な大国」イメージ

 中国の強引なやり方は外交にも及ぶ。
 強硬姿勢をとり続ける中国とそれに対抗しようとする国々が火花を散らしているのが、南シナ海問題である。
 6月3日から5日にかけて、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催、シャングリラ・ダイアローグ)では、米国のカーター国防長官と中国の孫建国スンジェングオ・統合参謀部副参謀長との間で
 「孤立するぞ」、
 「孤立などしていない」、
 「ルールを守れ」、
 「押し付けのルールなど受け入れない」
という激しい応報が繰り広げられた。

 孫副参謀長はこの会議で強気の姿勢を崩さず、中国の立場を強く主張し、舌戦では負けてはいない。
 しかし、米中対立の構図が国際社会の中で強く印象付けられてしまうことは、大局的な目で見れば中国にとって不利に働く。
 中国はこれまで「穏健な大国」というイメージを盛んに宣伝してきたが、そうした自己イメージとの矛盾が明らかになってしまう。
 それだけではない。
 他国にとっては、経済的なパワー以外の魅力に欠ける中国と米国との対立構造が鮮明になってしまうと、米国への配慮から中国との関係に及び腰となる事態を招きかねないからだ。

 6、7日に北京で行われた第8回米中戦略・経済対話では、開幕式に習主席が出席し、
 「目の前の問題に目を奪われて戦略的な判断を誤らないようにすべき」
 「意見の相違や敏感な問題を適切に扱わなければならない」
などと述べた。

 南シナ海問題を中心とした米中対立をこれ以上、悪化させたくないとの中国側の思惑がうかがえる。
 この一方で、7日には東シナ海で中国軍機が米空軍の偵察機に異常接近している。
 国家のメンツにこだわる中国が海洋主権に関する問題で簡単に妥協するとは考えにくいが、今年の米中戦略・経済対話での習主席の発言が、単なる祝辞ではなく「重要講話」とされていることは、注目すべきかもしれない。

 前回、中国で開催された2014年の米中戦略・経済対話の時も、習主席は開幕式で挨拶したが、この時は祝辞の扱いで「重要講話」ではなかった。
 今回、「重要講話」の位置付けになっているということは、米国との対立を避け、問題の落としどころを探ろうとする今後の外交方針を示す国内向けのメッセージの意味があるのではないだろうか。

 5月26、27の両日に開催された主要国首脳会議の首脳宣言では、名指しは避けながらも、中国による鉄鋼の過剰生産と海外での廉価販売に「懸念」が表明された。
 この問題は米中戦略・経済対話でも取り上げられ、米国は中国に減産措置を取るよう要求した。
 中国がもたらす鉄鋼市場の混乱は欧州各国をも巻き込む問題であり、これまで経済関係を重視して中国寄りの立場をとってきた欧州でも「中国離れ」を招きかねない。
 中国にとっては新たな頭痛のタネだ。

■習政権の外交、三つの柱

 習政権の外交スタイルは、習主席自らが各国に赴き中国の力をアピールするアグレッシブな姿勢が特徴だった。
 しかし、ここにきて成果が上がらないばかりか、各国の「中国離れ」のリスクを招く要因になっている。

 習政権の外交方針には
(1):主権を堅持する毅然きぜんとした姿勢を貫く
(2):責任ある大国として振る舞う
(3):新たな国際秩序の構築へのチャレンジ
――という三つの柱があると思う。

 (1)は執政党としての共産党の正統性に関わるテーマで、国民に向けたアピールの思惑が強い。
 今日、(1)に関する習近平政権の妥協のなさが香港・台湾の人々の「中国離れ」を加速させ、南シナ海問題の解決を難しくしている。
 この方針を貫くことができなければ中国国民に弱腰と見られかねない。
 だが、あまりに強硬過ぎて中国の国際社会での立場が気まずくなるようだと、中国国民もそれを批判的に見るようになり、政権にとってはむしろ負の影響しかもたらさない。
 そういったジレンマを抱えているのだ。

 (2)も(1)同様に、習近平政権が国家をまとめるために打ち出している大きな物語「偉大な中華民族の復興」の延長線上にある外交方針だ。
 「一帯一路」構想や「シルクロード基金」などスケールの大きな計画を打ち出し、中国が積極的に周辺の国々に対して開発の援助を行っていくことが、地域をリードする大国の役割責任だとしている。
 ただ、こうしたプランは中国側の思惑が先行して進められることもままあり、相手国の財政状況などによっては中国から融資を受けたとしても開発計画の実行や資金返済ができるか、という点で実現可能性に疑問符が付くことも多い。

 (3)は習政権が打ち出した第2次世界大戦の戦勝国が国際社会をリードしていく資格があるとする国際秩序観で、昨年5月のロシアの戦勝70周年軍事パレードに習主席が出席したことや、昨年9月に中国が華々しく実施した抗日戦争勝利記念日軍事パレードに象徴される。
 ただ、欧米との間の「大国関係」が微妙な雰囲気になってきたことから、最近はあまり持ち出されなくなった。
 既存の秩序への挑戦は先進各国の警戒感を招きかねないが、新興国のリーダーとしての役割は中国の強みを打ち出せる外交方針でもあると思う。

 例えば、昨年1月にパリでイスラム過激派によるシャルリー・エブド襲撃事件が起きた際、欧州では事件をきっかけに「言論の自由」と「テロ反対」を訴える世論が大いに高まったが、中国はこれに異論を呈した。
 ウイグル問題を抱える中国も、テロには反対だが「言論の自由」があれば他の宗教を侮辱してよいのか、欧米列強の中東支配がイスラム過激派を生み出す根本原因になったのではないか、と世界のムスリムの言葉を代弁する立場をとった。
 これは国内に4000万人のイスラム教徒を抱える中国ならではの視点である。
 先進国以外の国々の意見や要求を代弁することが中国にはできるのだ。

■9月のG20サミット、成功のカギは……

 中国の外交方針の三つの柱のうち、
 (1)と(2)は中国の自国の都合が強く押し出されている印象が強い。
 しかし、(3)についてはそれが他の国々のためであり、中国の影響力獲得という思惑や自国のみの利益を確保するという狙いが排されているのであれば、国際社会はむしろ積極的に中国に期待すべきなのかもしれない。

 9月には中国がホスト国となり、杭州でG20サミットが開催される。G20は先進国以外の国々も交えた話し合いの場であり、中国にとってはこれまで重ねてきた外交上の失点を帳消しにする絶好のチャンスでもある。
 ただ、このチャンスが生かせるかどうか、各国の「中国離れ」を食い止めることができるかどうかはまだ分からない。
 中国がG20を成功に導くカギは、自国の都合優先の外交を見直し、国際ルールを尊重して各国の利害に歩み寄れるかどうかにかかっている。
 問題は中国がそれに気付くかどうか、である。







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2016年6月29日水曜日

選挙応援にかけつける中国海軍(4):今度はひ弱な空軍が、「憲法改正の実現ははひとえに中国の脅威にかっかっている」

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 ひ弱な空軍が出てきた。
 というより中国としては出ざるを得なかった、という事情があるのだろう。
 日本政府としては尖閣が中国に追い詰められれば追い詰められるほど選挙が有利になり、同時に憲法改正のハズミがつく。
 ただ「憲法改正」叫んでも国民はついてこない。
 公船が海域を横切った、と言っても「ア、ソー」で終わってしまう。
 海軍船が領海に入るとなれば構えがちがう。
 しかし、それでもインパクトが弱い。
 遠い海域のことだよ、で終わってしまう。
 しかし、空軍機が領空を侵犯したとしたら、大いなる衝撃をもたらす。
 スパーマンではないが、「ひとっ飛び」で日本列島が軍事攻撃の視野に入る。
 となれば、のんびりもしていられない。
 そこが船と飛行機の違いである。
 一気に憲法改正論議が選挙の争点になる。
 日本政府としては
 「アリガタヤ中国空軍様」
である。
 これをきっかけに、日本の動きが活発になっていくことは避けられない。
 しばらくは中国の出方を見るということで静かだが、それを過ぎると憲法改正は具体的な視野に入ってくる。
 「シルバー民主主義からシニヤ民主主義へ」
と変わっていくことになるだろう。
 今回の選挙はその一歩としての「選挙権18歳」が試されるものになる。
 大統領制ではない日本の政治システムではジワリジワリとゆっくり動いていく。
 そのかわりに大きな失敗もない。
 そしてその動きは確実に重いものになる。
 イギリスのEU離脱にみられる政治的な歴史的動きは、日本にも発生してくる。
 時代は大きく政治の枠組機を換えようとしている。
 地球自然気象が安定期から変動期へ移っているように、
 人間社会の中でも安定期から変動期への動きが始まっている
といういことである。
 歴史はウエーブする。
 日本にとって、この中国空軍の動きは、
 これをきっかけとした大きなドラマを引き起こす
ような気がする。
 日本はなによりも憲法改正を優先させている。
 憲法が改正されれば状況はひっくり返る。
 憲法が改正されれば、
 核兵器という一事を除けば、日本はアジア最強の軍事力を持つことになる。
 そのためには、いまは中国の暴虐を見て見ぬ振りをしているしかない。
 「ガマンガマン」で忍従している。
 なによりも 優先させるのは憲法改正だ
と思っていることだろう。
 そのためには、中国空軍がもっと尖閣上空で暴れてくれることを望んでいる。
 そしてついにじっとガマンの限界を超えたとして
 「堪忍袋の緒が切れた」
という状況を作り出したい、というのが日本政府の本音であろう。
 そのことを考えるなら「アリガタヤ中国」である。
 「憲法改正の実現は
 ひとえに中国の脅威にかかっている」
ということである。
 中国の脅威がないなら、憲法改正は絶対に日の目を見ない
ということが確実であることは日本政府は熟知している。
 

時事通信 6月29日(水)17時9分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160629-00000089-jij-pol

中国軍機と近距離で「やりとり」=空自機が東シナ海で

 萩生田光一官房副長官は29日の記者会見で、中国軍機が17日に日本に向けて南下し、航空自衛隊機が緊急発進(スクランブル)していたことを明らかにした。

 その際、「近距離のやりとりがあった」と説明した。
 防衛省によると、こうした緊急発進が長時間化することもあり、中国海軍艦艇による領海侵入と併せて警戒を強めている。

 政府関係者によると、中国軍機が接近したのは東シナ海上空。萩生田氏は会見で、
 「やりとり」の詳細については明らかにせず、今回の中国軍機の動きは「特別な行動ではない」
との認識を示した。 



読売新聞 6月29日(水)12時23分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160629-00050134-yom-pol

空自機、中国軍用機と上空近距離で「やり取り」

 萩生田光一官房副長官は29日午前の記者会見で、今月17日に東シナ海上空を南下した中国軍用機に対し、航空自衛隊機が緊急発進(スクランブル)した際、「上空で近距離でのやり取り」が発生していたことを明らかにした。

 萩生田氏は記者会見で、
 「上空で中国機との近距離でのやり取りは当然あったのだと思う」
と述べる一方、
 「攻撃動作をかけられたとかミサイル攻撃を受けたという事実はない」
と語った。

 空自機の緊急発進に関しては、航空自衛隊の元空将が28日、インターネットのニュースサイトで、東シナ海上空で中国軍戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛けた」とする記事を公表した。

 防衛省は他国軍機が特異な行動を取った場合は原則公表している。
 萩生田氏は今回の事案については「特別な行動ではないと判断をしている」と述べた。


 その「航空自衛隊の元空将」の記事とは下記になる。


JB Press 2016.6.28(火)  織田 邦男
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47196

東シナ海で一触即発の危機、
ついに中国が軍事行動
中国機のミサイル攻撃を避けようと、
自衛隊機が自己防御装置作動

 6月9日、中国海軍ジャンカイ級フリゲート艦1隻が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。
 これまで公船(海警)が接続水域や領海に侵入してくることは、しばしばあったが、中国海軍が尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは初めてである。
 その6日後の15日、今度は中国海軍ドンディアオ級情報収集艦が口永良部周辺の領海を侵犯した。
 2004年、中国海軍漢級原子力潜水艦が先島諸島周辺の領海を侵犯して以来、2回目の事案である。

 中国国防省は「トカラ海峡は『国際航行に使われている海峡』で、自由に航行できる」と正当性を主張している。
 だが日本政府「屋久島や奄美群島付近のトカラ海峡は国際的な船舶航行がほとんどなく、国連海洋法条約で定める『国際海峡』には該当しない」と反論し懸念を示した。    
 国際法上、領海内の無害通航は認められている。
 ただ中国は自国の領海においては、「無害通航」についても事前承認を求めている。
 今回はダブルスタンダードの非難を避けるために、あえて「国際海峡」を主張したものと思われる。

■一触即発の東シナ海上空

 この時、日米印3カ国の共同訓練に参加するインド軍艦が航行しており、中国軍は共同訓練を監視する目的があったことは確かである。
 その翌日の16日、今度は沖縄・北大東島の接続水域に同じ中国海軍情報収集艦が侵入している。

 これら海上の動きと合わせるように、東シナ海上空では、驚くべきことが起こりつつある。
 中国空海軍の戦闘機が航空自衛隊のスクランブル機に対し、極めて危険な挑発行動を取るようになったのだ。
 東シナ海での中国軍戦闘機による米軍や自衛隊の偵察機への危険飛行は、これまでにもしばしば生起している。
 他方、中国軍戦闘機は空自のスクランブル機に対しては、一定の抑制された行動を取ってきたのも事実である。

 武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内でまみえると、一触即発の事態になりかねない。
 そういうことに配慮してだろう、中国軍戦闘機は空自戦闘機とは一定の距離を保ち、比較的抑制された行動を取ってきた。
 これまで中国軍戦闘機は東シナ海の一定ラインから南下しようとはせず、空自のスクランブル機に対しても、敵対行動を取ったことは一度もなかった。

 だが今回、状況は一変した。
 中国海軍艦艇の挑戦的な行動に呼応するかのように、これまでのラインをやすやすと越えて南下し、空自スクランブル機に対し攻撃動作を仕かけてきたという。

 攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、
 自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという。

 筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。
 まさに間一髪だったと言えよう。
 冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった。

 日中共に戦闘機はミサイルを搭載し、機関砲を装備している。
 武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内で遭遇するわけである。
 戦闘機同士がいったん格闘戦に陥ると、空中衝突やミサイル発射に至る可能性は十分にある。
 規律の厳格な空自戦闘機操縦者が先にミサイル発射することはまずあり得ない。
 だが中国空軍の戦闘機パイロットは経験も浅く、何をするか分からない。

 2001年、海南島沖の公海上空を飛行中の米海軍EP-3電子偵察機に対し、中国空軍J-8戦闘機がスクランブルをかけ、挑発行動を取った挙句衝突したことは記憶に新しい。

■外交手段を取らない日本政府

 今回の事例は極めて深刻な状況である。
 当然、政府にも報告されている。
 だが、地上ではその深刻さが理解しづらいせいか、特段の外交的対応もなされていないようだ。
 だからニュースにもなっていない。
 問題は、こういった危険な挑発行動が単発的、偶発的に起こったわけでなく、現在も続いていることだ。
 これら上空での状況は、海上での中国海軍艦艇の動きとは比較にならないくらい大変危険な状況である。
 政府は深刻に受け止め、政治、外交、軍事を含めあらゆる観点からの中国サイドに行動の自制を求めるべきである。

 しかしながら、参議院選挙も影響してか、その動きは極めて鈍い。
 なぜ今、中国は海上、航空の2つの領域でこういう挑発的な行動に出てきたのだろう。
 現段階で確たることは言えないが、偶発的事案とは言えないことだけは確かだ。

 危機管理の要諦として「最悪」のシナリオを考えておく必要があるが、最悪のシナリオは、一言でいうと「中国が一歩踏み込んだ」ということだろう。
 これまで中国は決して軍艦を尖閣諸島周辺の接続水域に侵入させたことはなかった。
 尖閣諸島の国有化以降、公船(海警)を侵入させて既成事実を積み上げてきた。
 毎月3回、1回3隻の公船が尖閣諸島の領海を侵犯し、2時間居座った後、退去するという定型パターンを繰り返してきた。
 「3-3-2フォーミュラ」と言われるゆえんである。

 「サラミ・スライス戦略」「クリーピング・エキスパンション」と言われるように、中国はこれまで、国際社会の批判を回避すべく、軍艦を出さずに、公船でもって既成事実を積み重ね、少しずつ少しずつ実効支配を我が物にしようとしてきた。

■狙いは空自戦闘機の駆逐

 上空でも中国軍戦闘機によって抑制されてはいるが接近行動を繰り返してきた。
 だが、戦闘機による尖閣諸島の領空侵犯は一度もなかった。
 ただこれを繰り返しても、国家の象徴たる軍艦や戦闘機を出さない限り、実効支配を完結することはできない。

 いずれは、軍艦を尖閣諸島の領海に居座らせ、空自戦闘機を駆逐して中国戦闘機を自由に領空に留まらせることによって実効支配を完結させたいと機会を伺っていた。
 今回、その第1歩を踏み出す絶好のチャンスが到来したと判断したのではないだろうか。

 G7が終わり、シャングリラ対話、そして米中経済戦略対話も終了した。
 いずれも南シナ海の埋め立てや領有権問題で中国は非難の矢面に立たされ、国際的に孤立した。
 この後、9月に北京で実施されるG20にはしばらく時間がある。
 この間を絶好のチャンスと捉えた可能性がある。
 9月までに評判を回復すればいいのであって、今しばらくの間は、さらに国際的に非難されるような行動を取っても、大勢に影響はない。

 また、フィリピンが提訴した国際常設仲裁裁判所の判断がまもなく示される予定である。
 中国はこの判断には従わない旨を既に公言している。
 だが、裁定が下されればさらに国際社会から糾弾を受けるだろう。

 だが、100度の湯に100度の熱湯を加えても200度にはならないように、地に落ちた評判はそれ以上落ちることはない。
 失うものはないのであり、これは逆に絶好のチャンスでもある。
 まさにピンチはチャンスとばかりに軍による領海侵犯、領空侵犯を常態化させる「最初の一歩」として、行動を開始したと考えたとしても不思議ではない。

 もしこの最悪のシナリオが事実なら、今後、9月までの間、東シナ海の海上および上空で日中の小規模紛争が起きる可能性は極めて高い。
 事実、上空では毎日のように危険極まりない挑発的行動が続いているという。

 自衛隊は引き続き毅然と対応しなければならない。
 だが、中国軍の挑発に乗ってはならない。
 また中国軍へ武力行使の口実を与えてはならない。

■中国の思う壺にならないために

 さりとて、余計な刺激を避けようと、こちらが引くだけでは日本の弱腰を見透かされ、中国軍の行動はさらにエスカレートし、軍による実効支配が進んでしまう。
 まさに中国の思うつぼである。

 2010年、中国漁船が海保巡視艇に衝突した際、時の民主党政権は漁船の船長を法律で裁くことなく国外退去させた。こ
 の結果、さらに中国の傍若無人な行動はエスカレートしたことを見れば分かる。

 中国は今回、間違いなく一歩踏み出した。
 今、中国はこれらの動きに対する日本政府の反応を見ている。
 上空での熾烈な戦いは今もなお続いている。
 もはや空自による戦術レベルの対応だけでは限界かもしれない。
 上空での中国軍の危険な挑発行動は、いち早くこれを公表し、国際社会に訴え「世論戦」に持ち込むことが必要である。

 ことは急を要する。
 政治家はまず、ことの深刻さ、重要さを認識すべきである。
 今のまま放置すれば、軍による実効支配が進むだけでなく、悲劇が起きる可能性がある。

 政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきである。
 英国のEU離脱への対応や参議院選挙も重要であろう。
 だが、この問題はそれと同等またはそれ以上に深刻なのだ。



Record china 配信日時:2016年6月29日(水) 18時30分
http://www.recordchina.co.jp/a143394.html

「東シナ海上空で中国軍戦闘機が空自機に攻撃動作」報道は事実無根
=中国大使館公使が記者会見、
「人為的に煽るのは中日友好に悪影響」


●29日、駐日中国大使館の薛剣・公使が記者会見し、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し攻撃動作を仕掛けたとの一部報道を「事実無根」と否定した。写真は会見する同公使。

2016年6月29日、駐日中国大使館の薛剣・公使が記者会見し、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し攻撃動作を仕掛けたとの一部報道を「事実無根」と否定した。

 元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田邦男元空将が、インターネットのニュースサイトで、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表、これを防衛庁が認めたと一部メディアが大きく報じていた。

 同公使はこの報道について、「事実無根であり、日本政府も(否定の)公式見解を出している」と全面的に否定した。
 その上で、
 「一部のメディアが建設的な報道ではなく、人為的に誇張し煽るのは下心があると思う。
 中日間の友好にも悪影響を与える」
と厳しく批判した。

 同公使はこれに関連、先に中国の軍艦が尖閣諸島周辺の接続水域を航行し、日本政府が深夜に駐日中国大使を呼びだして抗議したことについて、「接続水域の航行は国連海洋法で認められている当然の権利である」と反論。
 中国艦船がトカラ海峡周辺を航行したことについても、「国連の海洋法条約上の国際海峡であり、あらゆる国の船舶が通過権を持っており、通過権を行使しただけだ」と日本政府の姿勢に強く反発した。

  どうなっている?
 中国では外交部は力がない。
 解放軍の方が上位にあり、勝手きままにやることが多く、外交部はカヤの外に置かれる。
 そのうち、政府上層部から発表があって内容が覆される可能性もある。
 王毅外相などは序列ではペイペイにすぎず、保全のためにごますりまでしないといけないレベルになる。
 事実はどうなんだ!
ということになるのだが、火のないところに煙は立たないとすれば、
 なにかがあったことは事実だろう。
 それを日本が過大評価して発表したか、それとも中国が過小評価したかであると思う。
 

j-cast ニュース 2016/6/29 15:20
http://www.j-cast.com/2016/06/29271029.html

中国機が空自機に「攻撃動作」と空将OB 
政府は「事実ない」と反論

   元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田(おりた)邦男・元空将が2016年6月28日、ニュースサイト「JBPRESS」で、中国機が東シナ海で空自の戦闘機に対して攻撃動作を仕かけてきたとする記事を発表した。

   共同通信や産経新聞は、防衛省幹部が「大筋で事実関係を認めた」と報じているが、萩生田光一・官房副長官は6月29日午前の会見で、「攻撃動作をかけられたという事実はない」などと話し、情報が錯そうしている。

■「近距離でのやり取りというのは、当然あったと思う」
 
   織田氏の記事は「東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動」と題して掲載された。
 記事中では事案が発生した時期は明らかにされていないが、空自スクランブル機に対し中国機が攻撃動作を仕かけてきたといい、その様子を

 「攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという」
などと記述している。

    これに対して萩生田氏は
 「6月17日金曜日に、中国軍用機が南下し、自衛隊機がスクランブル発進したことは事実。
 報道にあるような中国軍機による攻撃動作をかけられた、ミサイル攻撃を受けたという事実はない」
などと報道内容を否定。記者の質問に対し、
 「ロックオンの事実もない」
とも答えた。

 接近した事実については、
 「改めて公表するかしないかを含めて現在調査中。
 今日のところはコメントは控えたい」
 「上空で中国機との、ある意味では近距離でのやり取りというのは、
 当然あったと思う」
などと述べたが、

 「今回のことについては特別な行動ではないという判断をしている」
として、中国への抗議の対象には当たらないとの見方を示した。




●《中国空軍暴走》自衛隊機に戦闘行為か:現場の緊張高まる!【福島香織】
2016/06/29 に公開


さてさて、どこまでが真実で、どこまでがウソなのか、それとも想像なのか。
 ここまでは29日までの内容。
 30日以降は下記に。  


産経新聞 6月30日(木)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160630-00000064-san-pol

中国機「前例ない接近」 
東シナ海、空自機を正面から威嚇 
政府関係者認める

 東シナ海の軍事的緊張が、海上のみならず上空でも高まっている。
 中国軍の戦闘機が今月17日など複数回にわたり、航空自衛隊機に対し、これまでにない攻撃動作を仕掛けたことが判明。
 政府関係者は29日、「あれだけの距離に接近したのは前例がない」と指摘した。
 インターネットのニュースサイトで同空域の危険な実態を明らかにした元空自航空支援集団司令官、織田(おりた)邦男元空将は「現場の緊張感は計り知れなかったはずだ」と警鐘を鳴らす。(石鍋圭)

 ◆暗黙のライン越えた

 6月中旬、空自機が那覇空港から緊急発進(スクランブル)した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の公海上空に中国機が接近したためだ。
 空自と中国空軍の間には「北緯××度」という暗黙の了解がある。
 従来、中国機はそのラインまで来るときびすを返すように北上し、空自機と遭遇することはなかった。
 しかし今回、中国機はその一線を初めて越えてきた。

 政府関係者は「珍しい事例」としか説明しないが、実際は現場空域でかつてない緊迫した攻防が繰り広げられていた。

★.スクランブルをかけた空自機は中国機の周囲を大きく回り込み、後方から真横につけるポジショニングを試みた。

★.中国機パイロットの顔が見える位置から信号射撃などを行い、退去を呼びかけるためだ。

 しかし、中国機は想定外の行動に出る。
 大きく回り込もうとする空自機に対し機首を向け、正面から向き合う体勢をとったのだ。
 織田氏は「これはいつでもミサイルを撃てる戦闘態勢で、事実上の攻撃動作といえる」と指摘する。

 ◆攪乱装置で危機脱出

 中国機の挑発的行動はなおも続いた。
★.空自機は不測の事態を避けるため同空域からの離脱を図ったが、中国機はこれを追尾。
★.空自機は敵機のレーダー誘導ミサイルなどを攪乱(かくらん)する装置を噴射しながら危機を脱した。
 織田氏によると、こうした事案は6月に入って複数回発生しているという。

 同じ時期、海上では中国軍艦が尖閣周辺の接続水域や口永良部島(鹿児島県)周辺の領海などに相次いで侵入している。

 織田氏はニュースサイトの記事で、中国側の狙いについて次のように分析している。

 「いずれは軍艦を尖閣諸島の領海に居座らせ、空自戦闘機を駆逐して中国戦闘機を自由に領空にとどまらせることにより、実効支配を完結させたいと機会をうかがっていた。
 今回、その第一歩を踏み出す絶好のチャンスが到来したと判断したのでは」

 ◆「再発防止へ毅然と」

 東シナ海上空で展開される一触即発の事態を明かした織田氏の記事について、日本政府は表向き否定的な立場をとっている。
 萩生田光一官房副長官は29日の記者会見で、
 「17日に中国軍用機が南下し、自衛隊機がスクランブル発進をしたことは事実」
とした上で
 「攻撃動作やミサイル攻撃を受けたというような事実はない」
と説明した。

 また、記事に関し
 「現役(自衛官)の応援の意味も含めての発信だと思うが、国際社会に与える影響も大きい。
 内容については個人的には遺憾だ」
と述べた。

 在日中国大使館の薛剣(せつけん)・代理報道官も29日の記者会見で、
 「内容は事実無根だ」
と述べた。

 これに対し織田氏は、産経新聞の取材に対し
 「日本政府に情報はあがっているはずだが、事の深刻さを理解していない」
と反論した。
 さらに、
 「現場が脅威と感じている事案は即刻公表し、再発防止に向けて毅然(きぜん)とした態度をとるべきだ。
 そうでなければ、中国軍の活動の既成事実化は止められない」
と訴えた。



時事通信  6月30日(木)18時4分配信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016063000772&g=pol

対中国機の緊急発進増加
=統幕長が異例の言及

 自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は30日の記者会見で、4~6月に発生した領空侵犯のおそれのある航空機に対する緊急発進(スクランブル)が前年同期比で90回以上増え、中でも中国機に対する発進は80回以上増加したことを明らかにした。

 自衛隊は緊急発進回数を定期的に発表しているが、統幕長が会見で言及するのは異例だ。


  中国が異常な動きをしていることを遠回しに表現したものであろう。
 でも何故このタイミングで述べるのか?
 ウラがありそうに思える。
 政府が抑えていることを自衛隊が別の形で表現しているようなムードがある。
 おそらく政府は、この選挙に憲法改正を争点にしたくない、ということなのだろう。
 まずは、国会議員を確保して、憲法改正は国民投票でやりたい、ということではないのだろうか。
 戦闘機のドッグファイトなら、これは憲法改正に進んでいく。
 いまは、中国の脅威をアピールすることが肝要で、そこまでは踏み込む時期ではないと判断しているのだろう。
 中国の恫喝は明らかに憲法改正への道筋をつける援護になる
ことは、中国も重々承知であろう。
 日本政府としては
 「やってくれた」方が「やってくれないより」かははるかに利に叶う
ものと判断しているだろう。
 

ロイター 6月30日(木)15時7分配信
http://jp.reuters.com/article/japanselfdefence-china-idJPKCN0ZG0GK

中国軍機への緊急発進ほぼ倍増、
統合幕僚長「空も海も活発化」

 [東京 30日 ロイター] -
 自衛隊の制服組トップの河野克俊統合幕僚長は30日の定例会見で、自衛隊機による中国軍機への緊急発進(スクランブル)が、4─6月期は前年度に比べて80回以上増加したことを明らかにした。
 詳細は来週発表する。

 前年同期は114回。
 ほぼ倍増したことになる。
 6月17日には、中国が領有権を主張する沖縄県尖閣諸島(中国名:釣魚島)方面へ南下した事例もあった。

 河野統幕長は
 「(東シナ海の)海上においても、空においても、中国軍の活動範囲が拡大し、活発化している。
 エスカレーションの傾向にある」
と語った。

 また、河野統幕長は、南シナ海の領有権紛争をめぐる国際仲裁手続きの判決が7月12日に出ることについて、
 「中国は裁判の判決に従わないと言っている。
 判決が出た後、中国側がどういう行動に出るか懸念し、関心を持っている」
と述べた。



読売新聞 7月1日(金)6時6分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160630-00050171-yom-pol

中国機に緊急発進が急増、4~6月は約200回



 自衛官トップの河野克俊統合幕僚長は30日の記者会見で、今年4~6月期の航空自衛隊機による中国機に対する緊急発進(スクランブル)が前年同期の114回から80回以上も増加したと発表した。

 また、中国機が沖縄県・尖閣諸島周辺に向けて接近する例が発生していることも明らかにした。
 6月に入り、中国軍艦が尖閣周辺の接続水域に入るなど中国軍は海空で挑発行動を繰り返しており、政府は警戒を強めている。

 中国機に対する緊急発進回数は、国別の公表を始めた2001年度以降の四半期で最多だった、今年1~3月期と同規模の約200回となる。
 今年1~6月の発進回数は、昨年後半の約1・5倍に増加したことになる。

 河野氏は記者会見で、
 「中国軍機が南下し、尖閣諸島近傍での活動もみられる。
 活動の拡大傾向が見受けられ、中国海軍艦艇の動向とあわせ、中国軍の活動全般について懸念している」
と語った。





【2016 異態の国家:明日への展望】


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