2016年5月25日水曜日

台湾、この不思議な有り様(1):今の台湾人は自分たちのことを中国や中国人と認識していない

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 韓国に続いて台湾でも女性大統領(総統と訳す)が誕生した。
 韓国では反日を御旗として掲げ、露骨に中国に擦り寄ったが、最後は何ともミジメな末路を歩んでいるような感じがする。
 台湾ではどうだろうか。
 韓国の失敗を目の前にしているだけに、如何にソロバンを弾くかが腕の見せどころになってくる。
 中国がこのところ人工島建設に見られるように凶暴になり、周辺諸国の警戒心が一気に上昇している現在においては、なるべく中道で行きたいところではないだろうか。

 その後の展開を見てみると中国がやはり台湾締めあげに動いている。
 そして、その隙間を埋めるべく日本が暗躍している。
 韓国は「反日」の旗を高らかにかかげ、自ら中国に擦り寄っていっ。
 だが、最後は惨めな結果を招いてしまっている。
 日本からの技術支援は受けられなくなり、技術向上は旧態の状況でストップしてしまった。
 ところが、そこに中国が速足で追い上げ、その差は1年と言われるまでになってしまった。
 この国「地獄の朝鮮」とまで言われるようになり、将来に対する店望がまったくなくなり、若い人たちは移住を声高々に希望するようになっている。
 FA(自由貿易協定)によって、中国市場を攻略できるとバラ色を描いたのはつかの間、それによって韓国は中国の経済属国に成り下がるのか、とまで言われるほどにもなっている。
 窮地の韓国は中国からアフリカへと矛先を変えている。
 日本というサポートを自ら切ってしまった韓国は迷走状態におちいりつつある、と言ってもいいだろう。

 台湾の新リーダーは中国が締めあげた分を日本との関係強化でうめようとウラで動いているようである。
 韓国は日本と手を切り、中国と組むことで地獄に陥り
 台湾は日本とのつながりを強化することで地獄からの脱出をはかろうとしている
かのようである。


JB Press 2016.5.25(水)  阿部 純一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46922

ステージに新総統が登場、
垣間見えた「中国離れ」
「92年コンセンサス」に触れない台湾の蔡新総統、
中国は反発

 5月20日の台北は穏やかな晴天に恵まれた。
 もちろん、亜熱帯であるため、それなりに蒸し暑さはあるものの、朝夕は意外としのぎやすい。
 筆者は18日に台北入りし、21日に帰国したが、宿泊したリージェントホテルは、台湾と国交のある国々の代表団も宿泊していた関係から、正面玄関を出た駐車場には、中華民国の国旗と代表団の国旗を付けた黒塗りのベンツが整然と待機していた。

 総統就任式は、午前9時ちょうどに総統府内に設けられた中華民国の国旗と国父・孫文の肖像画に正対して宣誓文を読み上げる宣誓式から始まり、国璽の継承式と続き、正式に総統に就任した。

 その後、総統として最初の公文書である林全・行政院長の任命書に署名し、続けて林碧炤・総統府秘書長、呉釗燮・国家安全会議秘書長の任命書に署名した。
 林行政院長ら3名は直ちに就任の宣誓を行い、蔡新総統がこれに立ち会った。
 この最初の公務を終え、いよいよ総統就任演説を迎えることとなる。

 内外の注目を集めた就任演説は、午前11時9分、総統府の前庭に特設されたステージで始まった。
 約6000字の演説テキスト(英文)は出席者に事前に配布されていたが、蔡英文新総統は、演説原稿を見ることもなく、ほぼ正確にテキスト通りの内容の演説を行った。

■日本とも重なる国内の課題

 さて、肝心の就任演説の内容だが、大きく分けて台湾の国内的課題と外交的課題に整理できる。

★.国内的課題については、率直な物言いで次のように語った。

 「年金制度は改革しなければ破産します。
 硬直した教育制度は社会からますます乖離しています。
 エネルギーと資源は限りがあり、経済はモメンタムを欠いており、旧来の受託生産(OEM)モデルはボトルネックに直面しています。
 だからこそ新たな経済成長モデルが切望されるのです。

 人口構成は急速に高齢化しており、高齢者を長期に介護するための制度は整備されていません。
 出生率は下がり続けていますが、保育制度は整備の見通しが立っていません。
 環境汚染は依然として深刻です。
 国家財政は楽観を許しません。
 司法はすっかり人々の信頼を失っています。
 食品安全問題は家庭を悩ませています。
 貧富の格差はますます深刻化し、社会のセーフティネットは穴だらけです。

 最も重要なこととして強調したいのは、若者の低賃金という境遇です。
 彼らの人生は行き詰まり、未来に対し困惑と無力感で満ちています」

 まるで日本のことを述べているような錯覚を覚えるが、台湾もこうした社会的・経済的・制度的課題に直面していることが分かる。
 演説では、こうした課題に対処するため、経済構造改革、社会のセーフティネットの強化、社会の公正と正義の確立を推進していく決意と抱負を語った。

■「92年コンセンサス」には言及せず

 日本や中国、米国など台湾に関わりの強い外国が大いに注目したのは、
★.外交的課題、とりわけ中台両岸関係について語った部分である。

 特に中国は、馬英九総統の時代に中台関係の進展を実現させた政治的基礎としての「92年コンセンサス」、平易に言えば「一つの中国」を蔡英文政権下でも継承するよう圧力をかけ続けてきた経緯がある。

蔡英文自身、「92年コンセンサス」の存在を認めてこなかったこともあって、
 大方の予想では、就任演説でも「92年コンセンサス」ましてや「一つの中国」に言及することはないだろうというものだった。
 果たして演説ではどうだったのか。

 蔡新総統の言葉は次のようなものだった。

 「両岸の対話と意思疎通では、現有のメカニズムの維持に努めます。
 1992年、両岸をそれぞれ代表する両会(双方の窓口機関。台湾側は海峡交流基金会、中国側は海峡両岸関係協会)が相互理解と求同存異(小異を残し大同に就く)という政治的な考え方を守って協議を行い、若干の共同の認知(acknowledgements)と了解に達しました。
 私はこの歴史的事実を尊重します。

 92年以降、20余年の双方の交流と協議の積み重ねで形成された現状と成果を、両岸は共に大切にし、維持すべきであり、この現存する事実と政治的基礎の上で、両岸関係の平和で安定した発展を推進し続けるべきなのです。

 新政権は、中華民国憲法、中台両岸人民関係条例およびその他関連法規に基づき、両岸の事務を執り行います。
 両岸の2つの政権党は歴史の重荷を下ろし、ポジティブな対話を進め、両岸の人々に恩恵をもたらすべきなのです」

 結局「92年コンセンサス」については言及せず、その代わりに92年に中台の窓口機関の間での協議で一定の成果が生まれた事実を尊重する、としたのであった。

■中国は不満を表明したが・・・

 さらに蔡新総統は、念を押すかのように
 「私が述べた既存の政治的基礎には、いくつかの重要な要素があります」
と続け、次のように述べた。

 「第1に、1992年に両岸の両会による会談という歴史の事実と求同存異という共同の認知です。
 これが歴史の事実なのです。
 第2に、中華民国の現行の憲政体制です。
 第3に、両岸の過去20余年の協議と相互交流による成果であり、
 第4に、台湾の民主主義の原則と普遍的な民意です」

 これは蔡新総統がこれまで主張してきた両岸関係の「現状維持」の基本要素を確認するものである。

 この演説に中国は満足したかといえば、不満であるのは明らかだろう。
 言うまでもなく「92年コンセンサス」を無視しているからである。
 産経新聞の報道によれば、演説の翌日の5月21日、中国の国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、台湾で民主進歩党の蔡英文主席が総統に就任したのを受け、「一つの中国」という原則を明確に受け入れない限り、「台湾側との対話・連絡メカニズムは継続できない」と表明したという。
 2年前に始まった同弁公室と台湾の大陸委員会との定期対話を一方的に中断することを示唆したものであり、当局者同士の交流が当面停止することになれば、中台関係は冷え込むことになる。

 しかし、逆説的に言えば、蔡英文政権への不満を中国がこの程度の「ジャブ」で示すしかないほど中国側も効果的な圧力手段を持ち合わせていないことを露呈したと言える。
 蔡新総統の演説の内容も、中国が許容できない内容なのかといえば、許容できる範囲には収まっているように思える。

■中国とは価値観を共有しない

 その一方で、蔡英文総統の就任演説には、台湾の「中国離れ」を示唆する政策が見られることも指摘できる。

 例えば、経済構造の転換に関連し、
 「改革の第一歩は、
 経済の活力と自主性を強化し、世界および地域との連携を強め、
 環太平洋経済連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を含む多国間および二国間の経済協力・自由貿易交渉に積極的に参加し、
 新南向政策(ASEANやインドとの経済関係強化)を進め、対外経済に対する視野と多様性を高め、
 過去の単一市場に過度に依存していた現象に別れを告げることです」
と述べる中で、
 中国とは言わず「単一市場」と言い換えて、中国に対する経済的依存関係の脱却の必要性を説いている。

 同時に、台湾の経済的な方向性として、日米主導のTPPなど多国間自由貿易メカニズムへの積極参入の意思を示している。
 日本としてもこうした点で日台の自由貿易協定の実現やTPP参入への支援など協力できる部分は多い。

 また、外交と地球規模の課題を取り上げた部分で、
 「台湾は地球市民社会の模範生です。
 民主化されて以来、平和、自由、民主主義と人権という普遍的な価値を一貫して堅持してきました。
 この精神に則り、地球規模の課題に関する価値の同盟に加わります。
 引き続き米国、日本、欧州を含む友好関係にある民主主義国家との関係を深化させ、共通の価値観の基礎の上に、全方位の協力を推進します」
と蔡新総統は述べた。
 これは台湾が中国とは価値観を共有しないことを婉曲に表現したと解釈できる。

 演説を締めくくるにあたり、蔡英文新総統は、
 「国民同胞のみなさん、2300万人の台湾人民のみなさん、待つのは終わったのです。
 今がその日なのです。
 今日、明日、来るべき一日一日、我々は民主主義を守り、自由を守り、この国を守る台湾人になりましょう。
 みなさん、ありがとう」
と述べた。

 「待つのは終わった」が何を意味するのか。
 演説の文脈からは、新たな民主台湾の時代の到来と捉えるべきなのだろう。
 しかし、それは限りなく中国から「自立」した台湾の実現でもあるのだろう。



現代ビジネス  2016年5月24日 加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/91759

中国共産党は蔡英文総統就任演説をどう受け止めたか?

■蔡英文主席が台湾総統に就任
中台関係は発展するのか?

 2016年5月20日、民進党の蔡英文主席(以下敬称略)が第十四代中華民国(以下“台湾”)総統に就任した。

  「この国の民主メカニズムに感謝する。
  平和的な選挙プロセスを通じて、3回目の政権交代を実現することができた。
 あらゆる不確定要素を克服し、4ヵ月に渡る政権移譲期を順調に過ごし、政権の平和的移行を完成した」

 蔡英文は就任演説の冒頭でこのように語り、かつ「問題解決」こそが国民が新しい総統・政府に期待していることであると主張した。

 本稿では、蔡英文が正式に台湾の総統に就任したことを受けて、それが今後の中台関係にどのような影響を与え得るのかを検証していきたい。

 台湾総統選挙直後に私が書いた連載第68回「蔡英文陣営が大勝した台湾選挙は“中国民主化”に何をもたらすか?」(2016年1月19日)を含め、最近本連載ではしばしば台湾問題を扱ってきた。
 その意図するところとしては、中国共産党にとっての“核心的利益”である台湾において、民進党という中国と比較的距離を置き(国民党と比べて)台湾独自のアイデンティティ・地域戦略・国益などを掲げる傾向の強い政党が再び政権を奪回し、しかも議会でも過半数以上を占めるという“完全執政”を実現したという事実は、中国共産党にとって、対台湾政策だけでなく、その内政発展プロセスにも切実な影響を与える変数と言える。

 中国民主化プロセスを観察対象とする本連載としては、そのような変数には敏感に反応し、その背景や構造を注意深く追っていくべきだと考える。
 具体的過程や方式はさておき、中国民主化を促し得るファクターを見逃すわけにはいかないというのが私の立場である。

 蔡英文の就任演説は
 若者が直面する難題、
 国内の経済改革問題、
 社会のセーフティネット、
 イノベーション、
 政府改革、
 両岸関係、
 対外戦略、
 グローバル問題への対応、
 自由民主主義の在り方と堅持
など、あらゆるテーマにおける新政権の主張と立場を謳った。
 以下、本稿の目的と直接的に絡んでくると思われる3つのテーマを抽出し、そのインプリケーションを整理していきたい。

★.1つ目に、演説を通じて蔡英文が「民主」という言葉に24回言及し、
 台湾が民主主義国家であり、それを守り、育てていくことの重要性と切迫性を主張したことである。

 華人社会として初めて自由民主主義を価値観・制度の両側面で実現した台湾が、それを必死で守り育てようとする姿勢は(外的要因を度外視しても)、本質的なことである。
 私自身、これまで台湾を訪問したり、台湾の人々と交流したりする過程において、彼ら・彼女らが自由民主主義に基づいた生活を愛し、尊重していること、少なくとも私が付き合ってきた人々の中で独裁政治時代に戻りたいと心底願うシティズンは、誰もいないことを感じてきた。

<<以下 有料会員のみ>>




サーチナニュース 2016-06-03 10:01 水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 
http://news.searchina.net/id/1611261?page=1

台湾の蔡英文新総統 
中国とは現状維持、
民主主義国とは「全方面の協力」

 2016年5月20日台湾の新総統に就いた蔡英文氏(59)が総統府広場で演説し、対中関係について、「過去を踏まえ、安定的な発展を進める」と誓った。
★.中国が求める「一つの中国」原則や「1992年コンセンサス(合意)」への言及を避ける
★.一方、中台を不可分と定める「中華民国の憲法」に基づいて中台関係を処理するとも発言
した。
 巨大な中国を前にして、玉虫色の表現で中国側の要求を完全に拒否も容認もしない現状維持路線を宣言したのである。

■ 我が国を取り巻くアジア情勢に変化が生じている

 米国が必ずしも以前ほど「世界の警察」としての機能を果たしきれているとはいえない現在、我が国を取り巻くアジア情勢にも変化が生じてきている。
 世界経済に及ぼす中国の影響増大、南シナ海における中国の進出、北朝鮮の一層の独裁強化と核大国への邁進というような事態は、その典型的な事例といえるであろう。
 更には、我が国に米軍駐留経費の全額負担を求め、核保有を容認する米国大統領候補の出現といった予想もしなかった事態も発生している。

■ 日本にとっての台湾の重要性

 現在、日本と中国・韓国との関係は尖閣、歴史認識、慰安婦問題等で冷え切っており嫌中・嫌韓が高まっている。

 一方台湾との関係では1999年の台湾大地震の際、日本の救援隊は真っ先に台湾に入り救援活動を行ったことから、東日本大震災の時にはアメリカに次ぐ150億円もの支援金を民間主導で行うなど親日ムードが高まっているのである。
(編集部追記:台湾からの義援金は総額200億円とも報じられている。)

 その背景には、台湾は50年間、日本の統治下にあったが、その間、新渡戸稲造や後藤新平といった明治の偉人たちが、台湾の農業・工業の振興に尽力し、その結果、台湾経済は発展し、植民地経営の収支が黒字になっていたことが、満州国・韓国・南洋諸島とは異なる点である。

 この時に開発された農地と技術は、戦後も台湾の人々を潤した。
 例えば八田与一氏は、1930年、当時としては東洋一の先進的なダムと膨大な水路を整備し、不毛の土地を台湾最大の米作地帯に変えたことにより、今でも台湾で最も愛され、神様のように崇められ、墓前祭が開かれるほど恩人として慕われているのである。

 このように歴史的にも深い関係にある台湾との交流を深めることは中国の強大化に備えるためにも重要なことに思えるのである。
 経済的な面でも資金難に直面したシャープが台湾の鴻海精密工業に買収されることになり、シャープのブランドや技術力がこの買収によって復活できるかが注目されている。

■ 蔡政権は親日的になると受け止められている

 2015昨年の秋蔡氏が来日した時、安倍晋三首相が接触しており、実弟の岸信夫元副外相が蔡氏を地元の山口県に招くなどの関係を築いてきている。
 岸田文雄外相は蔡氏の当選に祝辞を表したうえで「台湾は基本的価値観を共有する重要なパートナーであり、非政府間の実務関係として協力と交流のさらなる深化を図る」というコメントを発表した。

 就任演説で蔡総統は、中国に対話の継続を呼びかける一方、
 日米や欧州など「共通の価値観」を持つ民主主義国との「全方面の協力」を進める考えを示した
 蔡氏が率いる民進党は立法院でも過半数を占めており、同党としての「完全執政」の船出となっている。

 日本政府は実務関係の協力は当然にしても、特に安全保障面での連携・協力は、東シナ海、南シナ海に海洋進出を繰り広げる中国への牽制にもなることから日台協力の促進が期待されている。



サーチナニュース 2016-06-06 10:51
http://news.searchina.net/id/1611386?page=1

さらに拡大する台湾と日本の鉄道交流 
今度は東京メトロとコラボだ! =台湾メディア 

 双方の観光交流をさらに深めるべく、日本と台湾における鉄道関連のコラボレーションが続々と打ち出されている。
 台湾メディア・東森新聞雲は1日、台湾・台北の鉄道交通システム「台北捷運」が同日、日本の東京メトロと協力して7月よりプレゼントキャンペーンを行うことを発表したと報じた。

 記事は、台北捷運が2014年に東京メトロとコラボレーションキャンペーンを実施し、大きな反響があったことを紹介。
 今年再び東京メトロと手を組み、東京を訪れた台湾人観光客と台湾を訪れた日本人観光客を対象に粗品を進呈する企画を打ち出したと伝えた。

 そして、台北捷運が発表した内容として、7月1日より8月31日までの期間中、東京メトロの公式中国語Facebookページを「いいね」するか、地下鉄乗り換えガイドアプリとダウンロードし、その画面を東京メトロ銀座駅で係員に提示すると、丸ノ内線の車両を象ったパッケージの食品保存フィルムを1個プレゼントすると紹介した。

 また、台湾を訪れた日本人観光客に対しても、台北捷運の中山駅を訪れて、17年台北ユニバーシアードのマスコット「熊讃」のパネルと記念撮影し、SNSサイトのタイムラインに掲載、駅員にパスポートと画面を見せることで「高運量381型電聯車」がデザインされた木製ハガキ1つを進呈すると紹介している。

 先日は、京浜急行の「赤い電車」をモチーフにしたラッピング電車が台湾の鉄道に出現して話題となった。
 また、日本の鉄道会社でも台湾の駅弁を再現した弁当が発売して人気を集めた。
 もともと現地の鉄道を見たり乗ったりすることを楽しみに双方を訪れる日本人や台湾人は少なくない。
 このようなコラボレーションが盛んになることで、さらに多くの人を呼び込むことになるはずだ。



Record china  配信日時:2016年6月18日(土) 14時20分
http://www.recordchina.co.jp/a141922.html

<インタビュー> 「台湾とは何か」著者・野嶋剛 



  著書「台湾とは何か」を刊行したばかりのジャーナリスト・野嶋剛氏(朝日新聞元台北支局長)がインタビューに応じた。
 台湾は「米国に後ろ盾になってもらいながら、台頭する中国と経済的に付き合ってビジネスをしなければならない」中で、試行錯誤しながら、現状維持の政策を志向し、悩み抜いて先の総統選挙で蔡英文を選んだと指摘した。
 また米中両大国に挟撃される台湾は「日本の鏡」のような存在になり得る、と語った。
 
 若者を中心に「台湾アイデンティティ」が確立され、「1国2制度」や「平和的統一」を受け入れない時代となっていると指摘。
 その背景に
(1):生まれたときに民主化が既に実現し、自由な選挙が行われており、中華民族としてのアイデンティティが断ち切られた形で、台湾人であり中国人ではないと考えるようになった、
(2):国で改革開放が進み、豊かになれば思想も変わると考えてきたが、習近平体制になってますます民主社会と離れていくと認識されるようになった―などの点を挙げた。

  蔡英文総統はWTO加盟を主導した実務派で、「交渉能力が高い」と評価。
 TPP(環太平洋連携協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、FTA(自由貿易協定)など多国間の枠組みに加わることで、国・地域の枠を乗り越えた発展を目指す、と指摘した上で、
 「産業の製造空間を広げていく路線は成功体験がある」
と期待した。東アジアでかつて浮上したEU(欧州連合)型「東アジア共同体」構想について、
 「中国・習政権の強硬スタンスでは、当然摩擦が増え、
 日本や台湾だけでなく、東南アジアでも中国を警戒する国が増える」
として、
 「共同体の夢は遠のいた」との認識を示した。
(聞き手・Record China主筆八牧浩行)


――5月に上梓した新著「台湾とは何か」(ちくま新書)は
 台湾アイデンティティにスポットを当てつつ、台湾と中国との関係はもちろん、米中関係や日中関係など敏感な問題にまで論を展開していますね。 

 2007年に台湾に特派員として赴任した時から10年ぐらいの取材の成果を本にまとめました。

 08年総統選挙で馬英九が勝利し、独立志向の強い陳水扁からガラッと変わりました。
 当時は台湾が中国と仲良くやっていくことによって生き残っていく路線が続くと思っていました。
 ところが2014年のひまわり運動を境にがらりと雰囲気が変わって、蔡英文新政権が誕生した。
 台湾は中国と違うんだ、台湾は台湾として生きていくという方向に動いていく。
 この二つの変化をジャーナリストとして取材し、体験しました。
 そして、この変化は一体何だろうかということをまず考えました。

 台湾の人たちは現状維持を望んでいると日本ではよく言われますが、日本人が言う台湾の現状維持と台湾人が考えている現状維持はずれがあると思います。
 日本人が言う台湾の現状維持は台湾が何もせずに今のままでいいと思い込んでいるという現状維持です。
 そこに大きな誤解があり、台湾には生身の人たち2300万人が生活し行き来し、真剣に悩みながら自分たちの未来を選択しているという視点が抜け落ちている。
 そうしたところを取り込んだ上で、この10年の大きな変化を論じなければいけないというのが、この本に書いたいくつかあるポイントの一つです。

 少し乱暴な例えになりますが、
★.台湾の人たちは、民進党の陳水扁時代に独立の方向にどこまでいけるか試してみた。
 でもなかなか難しい。
★.国民党の馬英九の時には中国とどこまで仲良くやっていけるか試してみた
 でも中国の政治体制は簡単には変わらないし、台湾の人たちはやっぱり中国の人たちと自分たちは違うんだなと逆に思うようになった。
★.独立と統一のふたつの方向性について2000年以来16年かけて試行錯誤を繰り返した。
 そこでたどり着いたひとつの選択肢が民進党の蔡英文だった、
と私は理解しています。

 台湾の人々がどうやったらうまくいくか、試行錯誤しながら悩み抜いて、最後は現状維持の政策を志向し、蔡英文を選んだこの10年の物語を伝えたいということが執筆の動機のひとつでした。

――台湾は中国との間で苦難の歴史を経験しました。
 民主化をまず実現しましたが、経済面では強大な存在となった中国と結びつかざるを得ないという事情がある。
 さらに軍事や政治では米国と連携しなければならない、という事情もありますね。

 その意味で、台湾は日本の鏡だと思います。
 というのも、台湾は米国に後ろ盾になってもらいながら、台頭する中国と経済的に付き合ってビジネスをしなければならない。
 この中で、自分たちの自主独立の道を歩みたい。
 そんな米中に板挟みとなる厳しい運命は日本人も常に感じていますが、日本より台湾の方が領土も規模も小さく、両岸(中台)関係も極めて複雑であるので、より厳しさの実感の度合いは強いでしょう。

 米中台の三角関係について分析すれば、台湾を見ることで、日本も見ることができる。
 台湾は、日本人にとって学ぶべき価値があります。
 台湾の問題を自分の問題として受け止めてほしいという考え方も、この本に盛り込みました。

――この本の中で「歴史上、台湾は日本に2度捨てられた」と指摘していますね。

 1945年の日本の敗戦時が一回目です。
 確かに台湾人から切り離してほしいと望んだことではなかった。
 ところが日本人は切り捨てたという認識がほぼゼロでした。
 台湾の人たちが50年間「日本人」として生きてきた歴史が、この時に終わってしまった。
 その後の日本は高度成長にまい進して台湾のことに思いが至らなかった。
 戦後は「中華民国」として日本と外交関係がありましたが、72年の日中国交回復後に、日本との関係を切り離されました。
 日本にとっては苦渋の選択という面はありましたが、このことも台湾の人々からすれば「捨てられた」と受け止められても仕方のないものです。

――国連や国際社会の一員だったのが急に排除されたのですね。

 日中国交正常化で、大陸の中華人民共和国は台湾のことは一切触れるなと言い、日本はこの要求を受け入れました。
 そして、台湾はだんだん忘れられた。
 台湾に触れることは中国を刺激するとか、台湾に近付かない方がいいとか、過剰な拒否感のようなものを、政治家も含め知識層が共有してしまった結果、台湾がさらに忘れられていきます。

 私は90年代、朝日新聞入社早々台湾への留学を希望していましたが、結局会社の上層部に強く反対されて中国アモイの大学に行き先を変更しました。
 これも、広い意味でそうした台湾に対する一種の忌避という文脈の中での出来事だったと思います。

――国交正常化当時の中国フィーバーはすごかったですね。
 ジャーナリズムとしても反省もあると思います。

 72年から冷戦終結までは日本も中国も国際的にも厳しい状況に置かれていたので、そのころまではある部分でやむを得なかったとも理解できます。
 ところが、冷戦が終わって台湾が民主化し、中台関係も相互往来できるように改善し、台湾に対して抱く懸念の前提がほぼ消えてしまった後も、近年まで台湾に対する心理的な縛りとか思考停止が続いてしまったことが一番問題だったと思います。
 その時点から徐々に発想を切り替えればよかったが、それができなかった。
 日本の政治、メディア、アカデミズムも含めた知的怠慢という部分は否定できません。
 もっと早く、台湾を単なる中国の付属物ではない等身大の台湾として認識し、向き合う方向に台湾認識を更新していく必要があったのです。

――中国は「平和的統一」と「1国2制度」について言及していますね。
 中国は以前、武力で取り戻そうとしたことがあったが、今は「1国2制度」=現状維持を志向しているように見えます。
 台湾には「天然独」という「根っからの台湾人」だと思う若者が増えているようですね。

 台湾の人たちが中国大陸を祖国と思ったり、中華民族としてつながっていると思ったりしている間は、平和的統一とか1国2制度とかはまだ構想として現実味がありましたが、
★.今の台湾人は自分たちのことを中国や中国人と認識していないので、
 1国2制度などそもそも興味を持ってもらえない時代となりました。
 なぜそうなったかと言うと、一つには、もう生まれたときに民主化が既に実現し、自由な選挙が行われ、メディア上で皆が言いたいことを言っていた。
 しかも中国とほとんど往来がない。
 そうなると中華民族としてのアイデンティティは断ち切られた形で、台湾人であり中国人ではないと考えるようになった。
 しかも中華民国体制のまま独自の選挙を行って指導者を選ぶようになった。
 つまり「台湾化した中華民国」の中で生きているので、中国とのつながりを持ちえない。
 独立を敢えて宣言しようとは思わないほど、自然に事実上の独立を経験してきた人たちが育ってきており、彼らは「天然独」と呼ばれていて、台湾社会で無視できない勢力となってきました。

 もう一つは、改革開放が進めば中国はいい国になる、豊かになれば思想も変わり、少しずつ我々と近い国になっていくという前提で、日中関係も中台関係も考えられてきた。
 ところが習近平体制になって近づくどころかどんどんその方向から離れていくように見える。
 となると対中認識でも、中国との距離感が徐々に広がっていきました。

 自己認識と対中認識の2つの変化を背景に、今の台湾は成り立っています。
 そうした傾向が表面化した起爆点として浮かび上がったのは14年の「ひまわり運動」であり、今回の選挙結果でもそのことが如実に表れました。

――中国が経済中心に国力を増す中で、ホンハイや食品メーカーなど台湾の大手企業が大陸で商売していますね。
 失業率、経済観光の問題などもあり、微妙な面があるのでは?

 経済的な中国の台頭があって、うまく中国と付き合いながら台湾の主体性の維持とどう両立させるかの問題はあるが、台湾をずっと見てきた私の感想で言うと、「お金で人の心は買えない」というのが基本にあると思う。
 主体性か中国との経済的付き合いかどちらかを最後に選べと言われれば、台湾の人たちは主体性を選びます。
 ただあえてケンカしたいとも思わない。
 なるべくなら中台関係が良好のままで、中国と存分ビジネスをしてお金を稼ぎたいという考えは台湾の人たちには当然あると思う。

 そのなかで、出した答えの一つが、蔡英文が提案した「現状維持」だと思います。
 馬英九の「現状維持」とどう違うかというのは難しい問題であり、頭を悩ますところですが、
★.馬英九は「いつか中国と一緒になることも排除しない形での現状維持」であり、
★.蔡英文は「中国とはいつか離れることも視野にいれた現状維持」
と言えるでしょう。
 表面上言っていることはほぼ同じだが、人々が感じているニュアンスは大分違う。
 それが第三者として私が観察した印象です。


――蔡英文についての評価と政権の行方についてどう見ていますか。
 蔡氏のロンドン留学時代(LSE)、私も同時期に同じ地域に住んでいたので、とても学究的な環境で真面目によく勉強したのではと、推測がつきます。

 蔡英文は今まで台湾にいなかったタイプだと思います。
 従来台湾の指導者は価値観を語り理念を語るタイプの指導者が多かった。
 ところがそうしたことに彼女はあまり関心がない。
 自由主義的な考えは持っていますが、理想を実現するために中国とケンカすることはせずに、対話しながら事実上の独立状態を維持する一方、台湾内部の経済社会問題とかをどうやって解決するのかを優先して考えています。
 中国や米国と外交で渡り合うより、内政をきちんとやりたいと考えている。
 経済をはじめとする内政問題をやらない限りひたすら台湾は衰退していく一方だという危機感がある。
 彼女は本質的には学者であり、高級官僚であり、問題解決のためにはどうしたらいいかを常に考えています。

――WTO(世界貿易機関)加盟交渉では責任者としてジュネーブに乗り込み、実務面で実力を発揮しましたね。

 非常に実務能力の高い人だと思います。
 これまでは台湾のリーダーはキャラクターがはっきりしていて、記者として原稿を書きやすい面白いタイプが多かったが、彼女は誰ともあてはまらない。
 常に静かで安定しており、波風立てないようにやっていこうという現実派だと思います。
 先の就任演説でも、中国が安心することを結構言っている。
 中華民国憲法のもとで向き合っていくとか、かなり譲歩しているようにも見えます。
 中国としても決して悪くない演説内容でした。

――中国が露骨な嫌がらせを出来ないよう配慮しているのでしょうか。

 批判しにくい演説になっており、中国もやりにくいと思う。
 彼女を批判している中国のメディアは、「独身で結婚したことがないから極端な意見に走るのではないか」とか関係ないことを書きたてるぐらいしかできていません。
 「一つの中国」原則を受け入れなかったことへの中国の対抗措置も今のところ想定の範囲内です。

――隙がないのでしょうね?
 メルケルを尊敬していると言っていますね。

 そうですね。
 最初首相になった時、メルケルは目立たなかったが、今はEUの顔になった。
 仕事ができるからです。
 彼女が目指しているのはメルケルのような仕事師的な政治家だと思います。

――経済発展に力を入れるようですが、成功するでしょうか?

 TPP(環太平洋連携協定)とRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、FTA(自由貿易協定)など多国間の枠組みに加わることで、台湾経済の発展を目指していくでしょうね。
 国連に戻るのは不可能だが、経済的な枠組みなら入れる。
 実際APECとかWTOに入っている。
 彼女は過去のキャリアのなかでそうやって台湾経済の生存空間を広げていく路線の成功体験を持っています。

――僕の友達の大会社の社長連中は
 国や国境考えてういたら商売できませんよと言います。
 国とか国境を超越してガラガラポン見たいな時代になるとの期待もありますが?

 対中関係は多少細くなるでしょう。
 民進党はどうしたって「一つの中国」原則は受け入れられないので。
 その分日本など周辺国が台湾を支えることも必要だと思う。

 中国はそう簡単に変わらない。
 台湾と中国は今後10年、これ以上は近づかないと思います。
 今後は調整期に入っていく。
 民進党政権が少なくとも2期8年は続く可能性は高い。
 日本における自民党のような長期政権になるかもしれない。
 そうすると、国民党は公明党レベルぐらいの規模の小党化してしまう。
 中台関係は壊れることはないが、緊張をはらみながら推移していくでしょう。
 台湾にとって価値観において日本や米国の仲間としてやっていくことが自然なので、日台、東南アジアとの関係強化を進めるでしょう。

 日本が中国と向き合う上で、台湾は戦略的な材料となります。
 日台間の相互感情は極めていい。
 互いに7〜8割が好きと言っている国同士の関係がうまくいかないわけはありません。
 今、日中は国民の7〜8割が好感を持っていないのとは対照的です。
 日台関係は今後さらに良好になるのは間違いないところです。
 しかし、中国はイデオロギー的に日台の接近を嫌う。
 中台関係がいい時代には日台の接近を大目に見る余裕がありましたが、これから厳しいスタンスを取る可能性が出てくるでしょう。

――馬英九国民党政権が敗れた要因として経済目標を達成できなかったことを挙げる見方もあるが?

 中台関係が劇的に改善され、貿易が拡大し、中国からの観光客も入ってきたが、GDPの成長率などは変わらなかった。
 対中接近が台湾にとって劇的な経済振興にはならなかった。
 となると過剰な期待を持つのも必要ない。
 台湾の人々も、そんな冷静な判断ができるようになったということも言えると思います。

――東アジア地域では領土問題が燻っています。
 尖閣海域では経済的に日中台が共同開発して経済発展を優先させるべきだとの見方がありますが、どう見ていますか。

 中国が事実上平和的な台頭をあきらめたので難しいですね。
 習近平政権の強硬なスタンスでは、
 当然摩擦が増え、日本や台湾だけでなく、東南アジアでも中国を警戒する国が増える。
 アジアが一体になっていく夢は消えてはいませんが、遠のきました。
 EU型の東アジア共同体などが語られましたが、今の状況ではなかなか進められるものではありません。

――中国は米中戦略・経済対話を推進し、AIIB(アジアインフラ投資銀行)、シルクロード構想など対外的経済協力にも力を入れているようです。
 メルケル独首相も訪中してさらなる協力を働き掛けています。

 中国が東アジアの強国として影響力を広げることはあり得ます。
 ただアジアや世界全体に拡大できるかどうかはわかりません。
 中国は中国で経済成長が鈍化し、都市部と地方との格差が広がりすぎるなど、まだまだ国内で未解決の課題が多く残っています。

 習近平が提唱する「中華の復興」や「中国の夢」を力だけでアジアに築けるかと言えば実力はそこまではない。
 アメリカもまだ強いのでしばらく東アジアは一つにはならないでしょう。
 もちろん台頭する存在である中国が豊かになることは、貿易・投資など経済的なやり取りも増えるのでチャンスになる。
 そういう中で、周辺国は特に緊張をはらみながら中国とどう付き合うのか悩む時代が続くと思います。

 その意味でも台湾の存在は大きい。
 我々が外から中国を見る上で、台湾は役に立つ存在だと思います。
 中国を一番近くで見ている人たちなのでその視点や知識は重要です。
<完>

野嶋剛
1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。最新刊に「台湾とは何か」(ちくま新書)と「故宮物語」(勉誠出版)。著書の多くが中国・台湾でも翻訳・刊行されており、現地でも高い評価を受けている。







【2016 異態の国家:明日への展望】


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