2016年5月27日金曜日

バングラデシュ:贈収賄という商習慣が深く根を下ろしている

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JB  Press 2016.5.31(火)  姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46962

賄賂で攻めるも苦戦するバングラデシュの中国企業
地元経済界のトップリーダーたちは日本に期待

 「一帯一路」構想を進める中国が、陸に囲まれた中国南西部からベンガル湾やインド洋への出口を確保すべく、南方への進出を図っている。
 “インドの裏庭”と言われるバングラデシュでも、近年は中国がインドを差し置いて触手を伸ばし、影響力が拡大するようになった。

バングラデシュでは2006年に、最大の輸入相手国がインドから中国に替わった。
 中国商務部によれば、その後、中国とバングラデシュの貿易額は2ケタ成長の伸びを示し、2014年の両国間の輸出入総額は125億4600万ドルに達した。
 同年の日本との輸出入総額は20億3700万ドルだから、その規模はざっと6倍だ。

 また、インフラ建設など中国からの直接投資も日本をしのぐ。
 2014年、日本からバングラデシュへの投資は4140万ドルと前年よりも半減したが、中国からの直接投資は1億6000万ドルにまで伸びた。

■バングラデシュ人と中国人の共通点とは

 二国間の経済の結びつきを支えるのが、中国の民間企業のバングラデシュへの進出だ。
 特に縫製企業の進出が目立つ。
 バングラデシュの中国系縫製業の中には7000人の労働者を抱える大きな工場もある。
 縫製業以外にも、窯業、内装業、医療、養殖業、印刷業などの分野に中国資本が続々と入り込んでいる。

 近年の中国系企業の進出は、現地の日系企業にも影響を及ぼしている。
 三十数年前にバングラデシュに進出した日系工場の経営者は
 「契約済みの土地を中国系企業に持っていかれた」
と明かす。
 バングラデシュには現在8つの輸出加工区があるが、バングラデシュ国内で製品を販売する場合はこれらの加工区は使えず、それ以外の土地に工場を建設する必要がある。
 だが、バングラデシュの土地は洪水が起きやすく、安定して利用できる土地が少ない。
 そのため条件のいい土地はすぐに争奪戦になってしまう。

 またバングラデシュではビジネス関連の法令が十分に整備されているとは言えず、行政の事務処理のスピードも遅い。
 そこで横行するのが「賄賂」である。
 バングラデシュでは贈収賄という商習慣が深く根を下ろしている。

 そうなると、むしろ縦横無尽に立ち回れるのが中国人である。
 「相手を贈賄漬けにする中国流の役人への対応は、日本人には逆立ちしてもできない」(同)。
 習近平政権が腐敗撲滅運動に力を入れていることから明らかなように、中国が筋金入りの“汚職国家”であることは言うまでもない。
 中国とバングラデシュは、ある意味、互いに組みやすい相手なのだ。

■中国語の教育にも熱心

 中国がバングラデシュに及ぼす影響は、経済分野だけにとどまらない。
 中国企業はすでに1980年代からバングラデシュで事業展開している。
 「中国企業の進出が、当時のバングラデシュで女性の社会進出をもたらし、それまで外出すらできなかった女性を解放した」(前出の日系工場の経営者)
という。

 また、2006年にダッカ市内のノースサウス大学内に開設された「孔子学院」が、目下、中国語人材の育成に力を入れている。
 孔子学院とは主に中国語の学習機会を提供する中国政府系の教育機関だ。
 南アジアでは初めてバングラデシュに設立された。
 バングラデシュの孔子学院はこれまでに1万人を超えるバングラデシュ人に中国語学習の機会を提供してきた。
 語学学習以外にも、頻繁に文化行事に参加させたり、中国に招いて交流に参加させるなど、積極的な活動を行っている。

 中国商務部は進出企業に対し、「進出の際は中国の文化を広めることを念頭に入れよ」と呼びかける。
 人的交流のみならずビジネス交流の場でも「中国の伝統文化を発揚せよ」とし、中華思想の普及に熱心だ。

■日本企業への期待は大きい

 だが、中国企業のビジネスがすべてうまくいっているとは限らない。
 5月初め、「新華日報」が、バングラデシュに進出した中国の衣料メーカーの奮闘記を掲載した。
 経営者は2012年にバングラデシュへの進出を決意し、縫製工場を建設した。
 しかしその後の4年間は赤字の垂れ流しだったという。
 記事はその間の苦労を伝える。
 「営業許可書をもらうのに2年かかった。
 中国ならたった2か月で済む」
 「せっかく押さえた工場用地は、半年後に退去を求められた」――。

 当初、中国人経営者はバングラデシュに住む華僑を工場長として採用した。
 だが、これが失敗だった。
 工場長はことあるごとに本社と対立し、最後は「華僑といえども、現地の者には任せられない」として工場長の座を外された。
 経営者は中国から人材を派遣して、どうにかこうにか操業を維持したという顛末である。

 中国商務部が編纂するバングラデシュの投資指南書からも、バングラデシュにおけるビジネスの厳しさが伝わってくる。
 ページをめくると、
 「進出は慎重に」
 「十分な事前調査を」
との呼びかけがある。
 中国商務部もバングラデシュへの進出や投資の難しさを認識しているのだ。

 「中国企業が、利益が見込めなくなった時点で契約を反故にし、
 途中で事業を投げ出してしまうという話もしょっちゅうある」(日本人経営者)
という。
 中国企業が土木工事を破格で落札したものの、結局資金ショートで行き詰まり、工期が大幅に遅れてしまうことも少なくない。

 中国以上に「生き馬の目を抜く」バングラデシュでのビジネスだが、日本への期待は極めて大きい。
 日本企業が出遅れていることを歯がゆく思う地元経済界のトップリーダーたちは決して少なくことを、ぜひ知っておいていただきたい。




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