『
サーチナニュース 2016-05-29 07:09
http://news.searchina.net/id/1610820?page=1
中国がスケープゴートとなっている!
鉄鋼の生産能力の過剰をめぐる問題で
中国経済の成長が鈍化し、生産能力の過剰という問題が深刻化している。
中国は世界金融危機の際に4兆元規模の景気対策を行ったが、成長鈍化が鮮明になった今になってその弊害が現れている。
中国で生産能力の過剰が特に深刻なのはセメントや鉄鋼といった産業だ。
これらの産業は中国の不動産価格が上昇し、各地で不動産開発が積極的に行われていた際は大きな問題はなかったが、不動産価格の伸びが鈍化し、不動産開発投資の伸びが鈍化するにつれて生産能力の過剰が顕在化してきている。
中国は国内で捌き切れないだぶついた鉄鋼製品を安価で輸出に回しているが、それによって国外の鉄鋼メーカーが打撃を受けている。
中国メディアの華爾街見聞はこのほど、米国に中国製の鉄鋼製品が大量に流れ込んでいることに対し、
米国が一部の鉄鋼製品に最高450%の反ダンピング関税を課すことを決めた
と伝え、中国商務部が反発していると伝えた。
報道によれば、
中国の鉄鋼輸出量は世界全体の輸出量の約半分を占めるが、
オーストラリアや英国、米国などでは多くの鉄鋼メーカーが倒産に追い込まれている。
記事は、こうした状況に対して、「中国がスケープゴートとなっている」と主張し、
欧米は中国が高額の補助金のもとで世界に向けて「生産コストを下回る」価格で大量に鉄鋼を輸出し、
世界の鉄鋼価格の下落を招いていると批判している
ことを伝えた。
続けて、26日に始まった伊勢志摩サミットでも鉄鋼に関する問題が焦点となったと伝え、
「中国が出席していないにもかかわらず、生産能力の過剰が経済にマイナスの影響を与えている」
と明確に示されたと主張。
中国と欧米の鉄鋼をめぐる問題は日増しに深刻化していると主張、
欧米側の見解や行動に対して苛立ちを示した。
』
『
サーチナニュース 2016-06-02 07:11
http://news.searchina.net/id/1611154?page=1
「3つの奇跡」につながった日本のバブル崩壊は「賢明」な策だった=中国
中国経済が直面している現在の状況は、日本がかつて体験した「バブル崩壊」前の時期に非常に似ているとする見方があるが、中国メディアの中国経済網はこのほど、日本が自ら進んでバブルを弾けさせる政策を選択したことは日本の「3つの奇跡」につながったと説明、賢明な判断を絶賛している。
記事は
★.当時の日本が膨らんだ風船に自ら針を刺して破裂させるかのように、
「自ら不動産および資本市場バブルを破裂させた」
と指摘。
当時日本が用いた針とは総量規制であり、大幅な緊縮政策だとし、
その結果、日本の不動産市場や株式市場は大暴落したと記事は説明した。
では、その後日本はどんな「3つの奇跡」を成就させたのだろうか。
★.1つ目の奇跡は日本に莫大な海外資産をもたらしたことだ。
急激な円高は日本企業の輸出に「壊滅的な打撃を与えた」と記事は指摘、
「新たな発展方向を探し求める必要に迫られた」日本企業は海外投資に打って出る戦略を採用するようになり、
日本政府の支持もあって国内に莫大な資産を築くに至ったと伝えた。
2015年末時点で、日本は25年連続で世界一の債権国となったが、記事は
「日本は海外にもう1つの日本を造り出した」
と日本の莫大な対外資産に驚嘆を示している。
★.2つ目の奇跡は「世界的な影響力と競争力を持つ国際企業を造り出した」ことだ。
トムソン・ロイターの「Top100 グローバル・イノベーター 2015」は日本から世界最多の40企業が選出されたが、これは米国の35企業を上回る。
★.そして3つ目の奇跡は「老齢化社会のための完全な社会保障制度を造り上げた」ことだという。
「不破不立」、つまり古いものを破らなければ新しいものを打ち立てることはできないと記事は日本の政策の成功を絶賛。
この絶賛には、
ハードランディングを恐れる中国に勇気や知恵を与えることができる極めて貴重な先例という認識も含まれている
のだろう。
記事はバブル崩壊後の日本は「失われた20年」などと言われるが、日本が自らバブルを破裂させる政策を選択したことをとにかく絶賛。
当時もし日本が不動産バブルの状態を「継続させる」政策を取っていたなら、今の日本の成功はあり得なかったという見方を示している。
かつての日本と同じようにバブルに直面している中国はどのような政策を選択するだろうか。
』
『
ブルームバーグ 2016年6月6日 11:24 JST Kyoungwha Kim、Bonnie Cao
http://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-06-06/O8BR6W6JTSEQ01
世界で最も激しく売られた中国株式市場、
買い手探しがいまだに困難
中国株式市場を底値拾いの買い手が殺到する場所にするには、世界的にも最も激しい相場急落以上の何かが必要そうだ。
上海総合指数は過去1年間に40%下落したが、中国本土で取引される人民元建て株式のいわゆるA株のバリュエーション(株価評価)は
世界の主要株価指数と比較して3倍の高さだ。
本土の証券取引所での株価収益率(PER)は中央値で59と、2000年のドットコムブームさなかの米テクノロジー株よりも高い。
中国株のバブルがはじけて1年が経過したが
企業利益が縮小する中でも政府が介入して株価が高止まりしているため、バリュエーションは落ちない。
昨年の中国株急落を正しく予想したシルバークレスト・アセット・マネジメントやブラックフライアーズ・アセット・マネジメントの運用担当者からみると、中国は経済成長も弱い上に投資家センチメントも脆弱(ぜいじゃく)で、6兆ドル(約639兆円)規模の同国株市場で投資再開するのは時期尚早だ。
ブラックフライアーズの株式責任者、トニー・ハン氏(ロンドン在勤)は「A株をわれわれは保有していない」と語る。
同社のオリエンタル・フォーカス・ファンドは今年これまでに同種のライバルファンドの83%の運用成績を上回った。
「さらに高い水準で誰かに転売できるので私は現水準のPERで株式を購入できるというのが強気シナリオのようだが、最大のリスクは中国本土での投資家心理の変化だ」
と付け加えた。
投資家が不安に思う要因は多々ある。
中国の経済成長率は昨年、1990年以来の低水準となり、回復の兆しがほとんどない。
上海総合指数の構成銘柄企業の利益は昨年6月以降に13%減少。
企業のデフォルト(債務不履行)は増え、人民元は5年ぶり安値付近だ。
もちろん、証券会社のアナリストらはもう少し楽観的だ。
ブルームバーグが集計した目標株価に基づくと、証券アナリストらは上海総合指数の構成銘柄が向こう1年で13%上昇するとみている。
MSCIがA株を世界的指数に組み込む決定を今月中に下す可能性や、開始が見込まれる香港と深圳の証取接続が背景だ。
強気派からはまた、政府の介入で株価の下落余地は限られるなどの指摘もある。
とはいえ、中国で割安な銘柄を見つけるのは難しい。
すでに激しく売られた企業には問題があることが多く、見通しが最も良い部類の銘柄はすでに高いと、BNPパリバ・インベストメント・パートナーズのシニア投資ストラテジスト、ダニエル・モリス氏は指摘した。
例えば、中国最大の銀行である中国工商銀行のPERは5.6倍だが、不良債権急増が収益性に響くとの懸念で同行株は過去1年に16%下落した。
一方で2015年に売上高が90%以上増えて昨年の有望株の1つだった楽視網信息技術のPERは175倍。
モリス氏は「市場の一部は安くなっているが、それにはそれなりの理由があるのだろう」とし、
「成長の可能性があり選好する銘柄には、それなりの価格を支払うことになる」
と述べた。
香港に重複上場する銘柄が恐らく、本土とそれ以外の市場との間に根強い株価ギャップを最も明確に示唆している。
同じ銘柄でも本土株は平均して香港上場株を93%上回り、その格差はガラスメーカーの洛陽玻璃で634%に達する。
シルバークレストのチーフストラテジスト、パトリック・ホバネツ氏は「中国株には下がる余地が多々ある」とし、「ファンダメンタルズは貧相で恐らく悪化している」と語った。
原題:World’s Most Battered Market Is the Worst Place to Find Bargains(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
』
『
Bloomberg 2016年6月11日 13:24 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-06-11/O8L9276JIJUO01
IMF、中国は企業債務膨張へ早急な対応を
-「危険な回り道」の恐れ
国際通貨基金(IMF)のナンバー2であるリプトン筆頭副専務理事は中国に対し、企業債務の膨張に早急に対応するよう求めた。
さもなければ同国が消費主導の経済に移行する中で「危険な回り道」をする恐れがあると指摘した。
リプトン氏は11日、深圳の経済会議で講演。講演原稿によると、
「企業債務は引き続き深刻かつ拡大している問題であり、
真剣な改革へのコミットメントをもって早急に対応しなければならない」
と述べた。
また、企業債務や企業再編への対応において、中国の「進展は限られている」と指摘。
中国の債務総額は国内総生産(GDP)比で225%、
企業債務は対GDP比で145%
に上るとの試算を示し、
「これはどの基準でみても非常に高い」
と述べた。
リプトン氏は
「2015年と16年前半の与信の急増や、高水準の投資が続いていることに伴い、問題は拡大している」
と指摘した上で、
「中国には間違いなくこの問題に対処する能力がある。
また、中国が早急に取り組むことが重要だ」
と語った。
この問題への早急な対応に加え、中国は企業と銀行のバランスシートを改善しなければならないほか、新たな債務バブルの発生を防ぐために企業統治(ガバナンス)を向上させる必要があるとの見解を示した。
リプトン氏らIMFのスタッフは中国経済の年次審査の一環として、中国の当局者と会合を行っている。
原題:IMF Urges China to Tackle ‘High’ Corporate Debt Immediately(抜粋)
』
『
ロイター 2016年 06月 16日 16:58 JST
http://jp.reuters.com/article/angle-china-vicious-cycle-debt-idJPKCN0Z20QB?sp=true
アングル:中国景気対策の「悪循環」、
改革遅れ債務も増大
[北京 15日 ロイター] -
中国では民間投資が落ち込んでいるため、政府が経済成長を支えるためにインフラ投資を強化している。
この結果、債務が積み上がり、非効率な公的セクターの改革がさらに先送りされるとの懸念が高まっている。
中国政府は4兆元(6100億ドル)の景気対策によって重債務を背負った2008─09年の繰り返しを避け、財政支出を民間投資の促進につなげたい狙い。
このため民間投資の減速をことさらに心配している。
政府系主要シンクタンクの有力エコノミストは
「われわれは成長支援をインフラ投資に頼っているが、過度な依存は禁物だ。
民間の投資を促す必要がある」
と語る。
1─3月の固定資産投資伸び率は2000年以来初めて10%を割り込んだ。
内訳を見ると、民間投資の伸びが過去最低の3.9%にとどまった半面、国有企業の投資は23.3%も増え、二極化が鮮明だ。
中国指導部は、成長を押し上げて雇用を増やし、デフォルト(債務不履行)と工場閉鎖を避けようと努める一方、厳しい構造改革により過剰生産能力を減らすよう迫られており、綱渡り状態にある。
政府は今年、6.5─7%の成長率目標を達成するため財政赤字を国内総生産(GDP)の3%まで拡大するとしている。
5月の政府支出が17.8%と4月の4.5%から急増したため、一部のアナリストは財政赤字が目標を上回ると予想している。
アナリストによると、官民パートナーシップにより民間資本をインフラプロジェクトに呼び込む試みは、ほとんど成果を挙げていない。
収益率が低く、投資家保護の仕組みも欠いているからだ。
しかし公共投資頼みでは、政府が掲げる債務削減は覚束ない。
債務削減は政府が掲げた今年の優先課題トップ5に入っており、第12次5カ年計画でも長期目標に据えられているが、大半のエコノミストの予想では債務はさらに拡大する見通しだ。
全国人民代表大会(全人代)の経済顧問を務める人物は
「むやみにインフラ投資を増やせば再び過剰設備を生み出し、債務問題も再燃する」
と懸念を示す。
■<悪循環>
国際通貨基金(IMF)のリプトン筆頭副専務理事は14日、国有企業の債務増大に迅速に手を打つよう中国側に提言した。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスも先月、中国国有企業の債務は他のいかなる格付け対象国に比べても多いと指摘した。
清華大学のエコノミストで中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員の白重恩氏は4月、公的部門頼みの成長に警鐘を鳴らし、「悪循環が起こっている。潜在成長率の低下、景気対策、効率化の遅れ、さらなる潜在成長率の低下の悪循環だ。われわれはこの罠(わな)に陥る危険がある」と述べた。
(Kevin Yao and Elias Glenn記者)
』
『
ダイヤモンドオンライン 2016年6月15日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
http://diamond.jp/articles/-/93039
岐路に立つ中国と日本はどう付き合っていくべきか
■中国経済の行方は
日本や世界に大きな影響
中国はどこへ向かっているのか。
経済減速の世界への影響は大きく、国内では引き続く反腐敗闘争の一方、国民への強権的措置も目立つ。
対外的には南シナ海での一方的行動を進め、東シナ海では今月に入り尖閣諸島接続水域に軍艦を派遣するなど地域の緊張を激化させる動きが加速している。
このところ、国際社会の中国を見る目も厳しくなっている。
日中関係についても、日中首脳会談や日中韓首脳会談が実現したことで一見、関係は改善されているように見えるが、日中間に信頼に基づく友好関係が確立されているとは到底思えない。
中国の今後の方向性は、高い経済成長率を維持できるか、果たして政治改革が進んでいくのか、そして国内の延長であるかもしれないが、対外政策がどう展開されていくのかで判断されるのだろう。
そして、これらの展開次第で、日中関係の行方も大きく変わっていく。
いまや世界経済の牽引車とみなされる中国経済の行方が注目されている。
日本国内では中国経済崩壊論が声高に叫ばれるが、中国の経済が停滞していけば、日本への直接的影響は大きい。
中国は日本にとって米国と並ぶ最大の貿易相手国であり、対外直接投資残高も2014年には1000億ドルを超え、日本の台湾・香港・韓国・シンガポール4ヵ国・地域(アジアNIES)への投資の合計残高やタイ・マレーシア・インドネシア・フィリピンのASEAN主要4ヵ国への合計残高に匹敵する。
ここ数年、中国人観光客による「爆買い」も日本の消費市場に大きく貢献してきた。
中国の経済の停滞は日本への影響だけではなく、タイやマレーシア等中国と極めて大きな経済依存関係を有するASEAN諸国を直撃し、東アジア地域、ひいては世界経済全体に与える影響が甚大である。
先月のG7伊勢志摩サミットで世界経済のリスクとして新興国経済、なかんずく世界第二の規模を有し大きな成長を続ける中国経済の退潮が議論されたのは記憶に新しい。
中国経済が大きな岐路にあることは間違いがない。
中国は2001年にWTOに加盟して以降、国際社会との経済関係を大幅に拡大し、製造大国として輸出を伸ばし、年平均10%を超える成長を達成してきた。
2008年のリーマンショックで世界経済の需要が急速に冷え込み輸出の拡大を望めなくなった時には、4兆元(約56兆円)という膨大な財政支出(最も多くは地方政府の支出ではあったが)により内需拡大を図り成長を維持してきた。
しかし今日、輸出主導型の経済成長は頭打ちとなり、今年第一四半期の経済成長率は6.7%にまで低下した。
また、不動産バブル・不良債権・過剰生産設備・農村問題、更には環境問題など経済の量的拡大を妨げる課題が山積している。
それでも、習近平総書記が掲げる「中国の夢」の一つの柱は2020年までに2010年比でGDP及び一人当たり所得を倍増することであり、これを実現するためには第13次5ヵ年計画期間中(2016-2020)に最低年6.5%の経済成長を達成しなければならない。
■構造改革と「一帯一路」構想
過剰生産設備の解消が課題
このためには多分2つの方策が必須と考えられているのだろう。
★.一つには経済構造改革であり、特に供給サイドの改革である。
即ち過剰生産設備を整理し、国有企業の効率化を図らねばならないということなのだろう。
★.もう一つは「一帯一路」構想である。
習近平総書記は海及び陸のシルクロードの再興のためインフラ整備を周辺国と共に行っていくという構想を2013年にカザフスタンおよびインドネシアで提唱した。アジア・インフラ投資銀行(AIIB)もその一環であるが、豊富な外貨資金を提供することにより、周辺国のインフラ需要を高め中国の過剰生産財・労働力を消費することを可能にする。
ただ、構造改革についても「一帯一路」構想についても決して容易な事業ではない。
特に国有企業改革は多くの既得権益を切り捨てるという事でなければならないが、政治的抵抗は極めて強い。
現に現在の方向は国有企業に競争を導入するというより、むしろ国有企業の合併などで独占的な国有企業の体制を強化する方向に向かっていると見られる。
★.「一帯一路」構想についてもAIIBの活動以外には未だ具体的な絵柄は描けていない
と見られている。
■政治改革は進むか
経済減速下では悲観的
ついで国際社会の大きな関心は、
★.共産党の強権体制が緩むような政治改革が行われることになるかどうか
という点である。
経済が発展し中産階級が大きくなれば、必ず政治的自由を求める力も強くなるはずである。
経済が10%を超える大きな成長をしている間は、国民は自分たちにも富の配当があるという希望を持ち、共産党一党独裁体制を突き崩すような力が組織的に蓄積されることはなかった。
しかし、
★.経済が大幅に減速して行った時には、
どんなに強権を用いたとしても、所得不均衡や環境問題と言った社会問題が火を噴き、
国民の不満がデモなどの大衆運動に繋がっていく事態
が想像される。
とりわけ今日のネット社会ではそのような動きは瞬時に起こりうる。
したがって、現状では共産党指導部が国民の自由度を拡大する方向に改革を進めるとは到底考えられない。
一方、習近平政権が進める「反腐敗闘争」は国民の大きな支持を得ている。
腐敗は一党独裁体制の歪みであると見られてきたが、習近平-王岐山体制は2012年の第18回党大会以来「トラもハエも叩く」の掛け声の下、極めて多数の高級幹部を摘発してきた。
これは中央・地方政府の閣僚級幹部に止まらず、共青団と言った派閥や人民解放軍、国有企業などの幹部に及んだ。
そして、この反腐敗闘争は習近平総書記に権力が集中する結果をもたらした。
習近平体制の下ではメディアやNGO、更には知識人に対する締め付けが強化され、時には強権による取り締まりが行われるようになった。
筆者などが参加する知的対話などでも、中国の学者が伸び伸び意見を言う姿勢に印象づけられた時期もあったが、ここ一、二年は特に中国内で行われる会議での発言は極めて慎重になっている。
また、2017年の第19回党大会では7名の政治局常務委員のうち5名が交替することとなるが、ここでも経済を統治の中心課題に据えるのだろうし、政治改革が前面に出るとは考えにくい。
このようなことを勘案すると、共産党政権は求心力を維持するため、過去多くの国で見られたように、今後、対外関係を一層強硬に進めるという方向性を持つのだろうか。
国際社会にとっては、この中国の対外姿勢が最大の懸念である。
近隣国日本にとって、これはとりわけ深刻な問題である。
中国の対外姿勢は国力の増大とともに、一方的で傲慢になってきており、特に海洋戦略においてそうである。
当初は尖閣への公船の頻繁な派遣や東シナ海での防空識別圏の一方的設定宣言など東シナ海での一方的行動が目立ったが、現在は南シナ海での行動も活発となり、地域の大きな不安定要因となっている。
■南・東シナ海問題と傲慢になる対外姿勢
国際社会はどう対応すべきか
南シナ海では、中国は岩礁埋め立てやミサイルの配備等軍事化を進め、おそらく近々、上空に「防空識別圏」を設定するという動きに出ることも予想される。
米国は航行の自由作戦(FON)を続けているが、もし防空識別圏の設定という事態になった時には、中国の行動を阻止するような方策があるだろうか(米国知識人の一部は南シナ海への防空識別圏の設置は「レッドライン」、すなわち、これを越えれば軍事的行動も辞さないという姿勢になるだろう、と述べていた)。
また、今月あるいは7月中に、常設裁判所が南シナ海の領有権に関するフィリピンの提訴への審決を行うとされているが、中国はこれに従わないという立場を鮮明にしている。
国際社会はこれを強く非難することになるのだろう。
また6月9日には、尖閣諸島周辺の接続水域に中国軍艦が初めて侵入し、中国は尖閣周辺でも段階的に行動をエスカレートさせていく構えであるように見える。
今月6日から7日に行われた米中戦略経済対話でも明らかになっているが、中国は環境や中東などのグローバルな課題では米国との協力を推進しつつも、南シナ海では対立し続けることを辞さない姿勢である。
中国の対外姿勢は時として国内政治の延長であるとしても、国際社会が中国の行動を見逃さず、その都度正しい反応をしていくことによってその対外姿勢も変わりうる。
米国は東南アジア諸国との安全保障の結びつきを強化している。
フィリピンは新大統領の政策は未だ不透明ながら、趨勢的には2014年に締結された米国との新軍事協定の下で米軍のプレゼンスを増す方向にある。
ベトナムについても先月オバマ大統領が歴史的な訪問を行い、米国の武器禁輸措置は完全に解除された。
一方、米国はこれから本格的に大統領選挙戦に突入していく。
これまでの予備選挙での主張からは、共和党トランプ候補が大統領に選ばれた時には、これまでの予備選挙での主張からは、アジアでの米軍の前方展開とリバランシングの概念の下での積極的な関与政策は大きく見直される可能性もある。
中国はこれを注視しているのだろう。
それでは、日本はどう向き合っていけば良いのだろうか。
中国は米国との関係が維持されていれば日本との関係は重視する必要はないと考えているようである。
米中間では南シナ海問題などはあっても、先日の戦略経済対話をはじめ多くの対話のチャネルが活用されている。
対話のチャネルが極めて限られている日中間との差異は大きい。
そのような状況を踏まえた上で日本は幾つかの基本的方向性を打ち出すべきなのだろう。
■日米同盟の役割分担と国際世論作り
日中協力を進めるべき分野とは
まず、中国の無法な一方的行動を牽制しうるのは日米同盟であることをしっかり認識し、日米間の対中認識を擦り合わせるとともに、役割分担を行うべきなのだろう。
また、米国のみならず韓国・豪州・インド・ASEAN・欧州などの諸国との協調を担保し、国際社会の世論を作る努力を倍加させるべきだろう。
さらに南シナ海や東シナ海の問題に領土問題としてではなく、海洋の安全の問題として関係国に協議を呼びかけるべきであろう。
これは中国の行動を非難するためではなく、海洋の安全のための信頼醸成措置を構築しようということであり、中国を含む枠組み、例えば東アジアサミット(ASEAN・日中韓・豪・NZ・インド・米・露の18ヵ国)の枠組みを使うのが最適かもしれない。
中国の拡張的行動は牽制しつつ、地域のためにも日中は安定的関係をつくらねばならず、日本も米中間のように「利益が相反する問題をマネージし、協力できる分野を拡大する」ことを基本的方針とするべきである。
日中間の相互信頼は著しく欠けており、日中間や地域で協力プロジェクトを本気で進めていく必要があるのではないか。
中国の深刻な環境問題、とりわけ空気・水の汚染問題への協力強化は必要である。
また、日本はルールを尊重する社会へ中国を引き込む努力を強化していくべきだし、環太平洋経済連携協定(TPP)に中国を巻き込むことや東アジア経済連携協定(RCEP)の早期締結などを進めていくべきであろう。
AIIBについてもその透明性を担保していく意味でもADBとの協力関係を強化していくべきだろう。
これから一年程度、米国は政権の交代期で対外関係でもイニシアティブをとりにくい時期となる。
中国は経済の動向如何で国内政治は動くだろうし、対外関係にも大きな影響を与えるのだろう。
このような時期にあってこそ日本は理性的で能動的な外交を心がけていかねばならない。
』
0 件のコメント:
コメントを投稿