台湾を挟んで北側が東シナ海、南が南シナ海。
東シナ海には中国の対抗勢力になる軍事力を秘めた日本が居座って睨みを効かせている。
尖閣を使って揺さぶりをかけたが、逆に軍事強化の方向に動き始めるキッカケを作っただけになり、これまで中国に友好であった日本を、中国嫌いの国家国民に変えてしまった。
中国の進出を明確に拒否する国家日本
を生んでしまったわけである。
いまの日本を強行突破できるだけのものを中国はもっていない。
やむえず、南シナ海へ転出せざるをえなくなった。
そしてそこでは人工島建設という形で領有権を宣言して、東シナ海のウサを晴らしをして、してやったりと歓喜することになった。
作戦大成功、というわけである。
このウラにはオバマという大統領の存在がある。
安倍さんは中国を強力に突っぱねた。
しかし、オバマは中国に至極弱腰であった。
防空識別圏設定時にみられるように中国を受け入れた。
これで「よし、これならいける」と読んだ中国がとった手段が人工島建設という国際常識的にみて無謀と思える作戦である。
踏み込み過ぎた感じで、周辺諸国の警戒感が一気に上がり、警報が鳴り響いてしまった。
ここまでくるとオバマとしてもオチオチしていられなくなる。
「無能の大統領というレッテル」を貼られて状態でその席を退くことにもなりかねない。
そこで打った手が、ベトナムを引っ張り込むという戦略である。
自分では中国にはなにもしない、
その代わりに将来に対して手を打っておこう、というわけである。
「中国対アメリカ」ではなく「中国対周辺諸国」という構図に置き換えようというわけである。
自分の手は汚さずに、手柄をいただこうという寸法である。
セコイといえばセコイ、外交的といえば外交的な作戦である。
『
BBC News 5月23日(月)18時54分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160523-36356870-bbc-int
オバマ米大統領、ベトナム武器禁輸解除を発表
22日夜からベトナム訪問中のオバマ米大統領は23日、
ベトナムへの武器禁輸を完全解除する
と発表した。
ハノイで記者会見し、「未だに残る冷戦の残滓(ざんし)」を取り除くための措置だと説明した。
1984年に導入された武器禁輸措置は2014年に部分的に解除されたが、ベトナム政府は完全解除を求めていた。
米政府は、ベトナムの人権状況改善が解除の条件だと示唆していた。
23日午前にチャン・ダイ・クアン国家主席らベトナム首脳と会談したオバマ氏は、
「(武器取引は)今後も人権関連を含む厳しい条件を満たさなくてはならないが
、この変化によって、ベトナムは自国防衛に必要な装備を入手できるようになる」
と述べた。
ベトナムは南シナ海で中国と領有権をめぐり争っており、2014年にはパラセル(中国名・西沙)諸島周辺で中国が石油掘削装置(リグ)の設置を強行したことから両国関係が緊迫。両国の漁船同士が衝突し、ベトナムで反中デモが相次いだ。
中国が南シナ海における領有権を主張する一方で、米国は自由航行権を主張するなど、周辺諸国との関係改善に力を入れている。
ただしオバマ氏は、武器禁輸解除は米国の対中政策とは無関係だと述べ、
「ベトナムとの関係正常化に向けた長いプロセスを終わらせたいという気持ちから来るものだ」
と話した。
オバマ大統領のベトナム訪問は初めて。ベトナム戦争終結から41年目の訪問で、オバマ氏は反体制派と面会するほか、ベトナムも参加する環太平洋経済連携協定(TPP)の推進のため協議するとみられる。
オバマ氏の訪問とは別に、ベトナム当局はBBCのジョナサン・ヘッド記者の記者資格を取り上げた。
許可なくインタビューを行ったからというのが理由だが、ヘッド記者は否定している。
オバマ氏は25日夜には日本を訪れ、G7伊勢志摩サミットに出席する。1945年に米国の原爆投下で少なくとも14万人が死亡した広島も訪問する予定。
(英語記事 Barack Obama to lift US arms embargo on Vietnam)
(c) BBC News
最終更新:5月23日(月)18時54分
』
『
CNN.co.jp 5月23日(月)17時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160523-35083070-cnn-int
オバマ米大統領、ベトナムへの武器禁輸解除を表明
ベトナム・ハノイ(CNN) ベトナムを訪問中のオバマ米大統領は23日、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席との共同会見に臨み、長年にわたり実施してきた同国に対する武器禁輸措置を完全に解除する方針を表明した。
オバマ大統領はベトナムへの武器輸出の解禁について、両国の防衛協力をより深める取り組みの一環と説明。
「今回の会見が象徴するのは過去数十年かけて築いてきた新たな両国の提携関係であり、私の任期を通じ作り上げた包括的な協力体制だ」
と強調した。
オバマ大統領はまた、ベトナム戦争で使用された地雷や枯れ葉剤について、ベトナム側が除去・除染作業に継続的に取り組んでいることに対して感謝の意を示した。
今回のオバマ大統領のベトナム訪問には、東アジア地域で影響力を強める中国を戦略的に牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。
ベトナムと中国は国境を接し、共産主義のイデオロギーを共有するが、近年は南シナ海の領有権をめぐって関係が緊迫化している。
米国によるベトナム向け武器禁輸の完全な解除は、同国内の人権状況などを理由にこれまで実現が見送られてきた。
ただ反体制派の投獄や政治改革の遅れといった従来からの懸念の多くは、現在もなお改善されていないのが実情だ。
』
『
読売新聞 5月24日(火)22時9分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160524-00050117-yom-int
米越、経済も関係強化
…オバマ氏「転換点」強調
【ハノイ=児玉浩太郎】
ベトナム訪問中のオバマ米大統領は24日、首都ハノイで演説し、
「(米越両国は)戦争よりも平和がいかに素晴らしいかということを、世界に向けて示すことができる」
と述べ、両国の関係改善を改めてアピールした。
オバマ氏は今回の訪問で、安全保障分野にとどまらず、経済など広範な分野で関係強化を図った。
ベトナム戦争終結から40年余を経て、米越関係が転換点を迎えたことを印象づけた。
「過去20年にわたり、ベトナムは非常に大きな進歩を達成してきた」。
オバマ氏は演説で、社会主義に市場経済の仕組みを取り入れる「ドイモイ(刷新)」政策で経済成長を遂げたベトナムをたたえた。
その上で、ベトナムも参加している環太平洋経済連携協定(TPP)について「繁栄と安定のために成し遂げなければならない」と述べ、早期発効を目指す必要性を強調した。
ベトナムにとって最大の貿易相手国は中国だが、米越両国の経済的結びつきは今後、TPPなどを通して強まる見通しだ。
』
『
BBC News JBpress 2016.5.24視聴時間 02:13
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46934
「冷戦の残滓」取り除く――オバマ米大統領が訪越
オバマ米大統領が今週、ベトナムを訪問し、1975年のベトナム戦争終結後に同国を訪問した3人目の米大統領となった。
オバマ大統領はベトナムに対する武器輸出の全面解禁を発表。
一党独裁が続き、人権侵害を問題する向きもあるなかで、米国が禁輸解除を決めた背景には、中国が覇権を強めようとする南シナ海の情勢がある。
現地で取材するジョナサン・ヘッド記者がリポートする。
』
『
ハンギョレ新聞 2016.05.16 06:33
http://japan.hani.co.kr/arti/international/24152.html
南シナ海で中国が埋め立てた人工島は13平方キロメートル
米国防総省が報告書で「強圧的戦略」分析

●米国防総省が議会に提出した年次報告書「2015年中国の軍事活動」//ハンギョレ新聞社
中国が周辺国との領有権紛争を続ける南シナ海スプラトリー諸島(中国名、南沙諸島)に、最近2年間でソウルの汝矣島(ヨイド)の面積の4倍に及ぶ約13平方キロメートルを埋め立て軍事施設を拡充していると、米国防総省が13日明らかにした。
(注:ほぼ皇居と同じ面積)
米国防総省はこの日の議会に提出した年次報告書「2015年中国の軍事活動」で、
「中国が南シナ海で領有権主張のために一層攻撃的になっている。
中国が武力衝突とも言える強圧的戦略を使っている」
と分析した。
報告書によれば、中国が昨年末までスプラトリー諸島で埋め立てた人工島の面積は3200エーカー(12.9平方キロメートル)で、これは汝矣島の面積(2.9平方キロメートル)の4倍を超える。
中国は特に、スプラトリー諸島の人工島のうち3カ所にそれぞれ長さ3キロメートルの滑走路と大型船舶用停泊施設を備える港や水路を建設した。
報告書は中国が人工島埋め立て作業を昨年10月頃に概略終えて、基盤施設を用意することに努力を集中していると主張した。
http://www.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/2015_China_Military_Power_Report.pdf
また、報告書は2015年の中国の軍事費支出規模を1800億ドルと集計した。
中国政府は2015年の軍事予算を約1440億ドルと発表したが、実際にはこれより20%以上多い費用を支出したと見ている。
オバマ政権は来年度の米国国防予算を5830億ドルとして議会に申請した。
依然として中国より国防費支出が3倍以上多い。
中国国防部の楊宇軍報道官は
「(米国の報告書に)強い不満と確固たる反対を表明する」
として
「中国は防御のための国防政策を追求してきた」
と反論した。
ワシントン/イ・ヨンイン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
』
『
人民網日本語版 配信日時:2016年5月27日(金) 21時40分
http://www.recordchina.co.jp/a139838.html
南シナ海における米軍事力強化は、
火薬庫に火をつける恐れ―中国外交部
中国外交部(外務省)の華春瑩報道官は25日の定例記者会見で
「米国が南シナ海で軍事力配備を強化し続けていることこそが軍事化であり、火薬庫に火をつける恐れがある」
と表明した。
【記者】:
報道によると
「米国が地域の国々を抱き込んで中国を封じ込めることは、南シナ海情勢を複雑化し、地域衝突の火薬庫に火をつける恐れがある」
との中国メディアの指摘に対して、米国のケリー国務長官は24日
「東シナ海と南シナ海における中国の行動こそが火薬庫に火をつける恐れがある。
一方的な埋め立てによる島造成、島・礁の軍事化という行為に中国側が慎重になることを希望する」
と述べた。
これについてコメントは。
【華春瑩報道官】:
報道に留意している。
米国は2010年に「アジア太平洋リバランス戦略」を開始した。
フィリピンは2012年に黄岩島(スカボロー礁)事件を引き起こし、2013年1月には南シナ海仲裁裁判を一方的に申し立てた。
一方、中国の島・礁建設は2013年末にようやく始まったものだ。
しかも、他国が不法に侵略・占領した中国の島・礁上で建設を行なっているのと異なり、中国は最後の国であり、しかも自らの島・礁上で建設を行なっているのだ。
中国の行動は完全に自らの主権の範囲内の事であり、筋が通っているので正々堂々としており、損なわれることのないよう自らの主権と正当な合法的権益を守るため以外のなにものでもない。
米側は南シナ海で軍事力配備を強化し続け、先進的艦艇・航空機を派遣して中国に対して高頻度の接近軍事偵察を行なっているうえ、同盟国やパートナーを誘って南中国海でターゲット性の極めて強い「合同軍事演習」「合同巡航」を再三行なっている。
これこそが軍事化であり、火薬庫だ。
米国はすでに世界各地で少なからず面倒を起こしてきた。
アジアの国々と人々はいずれも地域の平和・安定・発展維持という良好な情勢を望んでおり、いかなる者が、いかなる目的でアジアを乱すことも望んでいないと私は信じる。
米側が平和・安定維持を口先だけのものにせず、しっかりと責任を担い、アジアの平和・安定に真にプラスとなることを行ない、建設的な役割を発揮することを希望する。
(提供/人民網日本語版・編集/NA)
』
オバマのこの大変身に苛立つ中国という感じがする。
中国は太平洋をアメリカと中国で二分して支配しようという目算があった。
だが、南シナ海にアメリカを引き込んだことにより、南シナ海から目がはなせなくなり、ここから出られなくなってしまった。
アメリカがこの海域にプレッシャーをかけ続ける限り、
アメリカがこの海域にプレッシャーをかけ続ける限り、
「中国はアメリカに南シナ海に釘付けにされた」
ということになる。
アメリカ側からみれば「中国を南シナ海に抑え込んだ」ということになる。
アメリカ側からみれば「中国を南シナ海に抑え込んだ」ということになる。
『
ロイター 2016年 05月 27日 23:28 JST
http://jp.reuters.com/article/g7-summit-china-idJPKCN0YI10Y
南シナ海めぐるG7声明に強い不満=中国外務省
[北京 27日 ロイター] -
中国外務省の報道官は27日、定例記者会見で、同国が数カ国と領有権をめぐり争っている南シナ海に関する主要7カ国(G7)の声明について、非常に不満であると語った。
26日のG7首脳会議では、南シナ海問題について討議された。
G7首脳は、西太平洋の領有権問題について強いメッセージを送ることで合意した。
』
『
Record china 配信日時:2016年5月29日(日) 7時0分
http://www.recordchina.co.jp/a139763.htm
南シナ海が米中チキンゲームの舞台に
=中国機が米機に異常接近、
米軍3回目の「航行の自由作戦」
2016年5月27日、南シナ海を飛行中の米軍機に中国の戦闘機が異常接近し、米軍は3回目の「航行の自由作戦」を決行―。
米中両国は相手方の行動の非難を繰り返し、南シナ海は朝鮮半島と同様に、チキンゲームの舞台になりつつある。
米国防総省は「中国がさらに緊張を高める行動に出る可能性がある」
などとも懸念を示している。
米メディアなどによると、国防総省は18日、南シナ海を飛行中の米海軍の電子偵察機EP3に
中国空軍の主力戦闘機・殲(せん)11が「危険な方法で」接近したと発表した。
米CNNなどは
「双方の距離は約15メートル以内だった。
EP3は衝突を避けるため降下せざるを得なかった」
とも報道。
同省のデービス報道官は声明で「危険な事案として調査を始めた」と述べ、
「今回の事件は外交、軍事ルートを通じて懸念を伝える」
とした。
これに対し、中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は19日の記者会見で、米国の発表は「事実ではない」と否定。
米軍機が海南島付近の海域に近づいたため、中国軍機は法規に基づいて追跡、監視したと主張し、危険な行動はしていない、と反論した。
さらに、米メディアは米海軍の駆逐艦「ウィリアム・P・ローレンス」が10日、「航行の自由作戦」の一環として、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島にあるファイアリー・クロス(永暑)礁の12カイリ(約22キロ)内を航行したと伝えた。
米軍が南シナ海の中国の人工島周辺で同作戦を実施したのは、昨年10月、今年1月に続いて3回目。
中国国防部の楊宇軍(ヤン・ユージュン)報道官は
「米艦が中国政府の許可を得ずに違法に南沙諸島の関係島しょ付近の海域に入ったことは著しい挑発行為だ」
と非難した上で、戦闘機やミサイル駆逐艦などを現場海域に派遣し米軍側に離れるよう警告したことを明らかにした。
中国の海洋進出をめぐって米国防総省は13日、中国の軍事力に関する年次報告書を発表。
中国が南シナ海のスプラトリー諸島で占拠する拠点「7カ所」で、
過去2年間に約1300ヘクタールの土地を新たに造成したほか、拠点のうち最大3カ所では、約3キロの滑走路が設置される見通しだなどと指摘し、
東シナ海を含めた今後の行動に警戒感を示した。
中国国防部は
「中国の合法的な行動を勝手に歪曲(わいきょく)している」
と反発している。
南シナ海で米国と歩調を合わせるフィリピンのアキノ大統領は退陣間近にもかかわらず、
「中国がスカボロー礁を開発するのであれば、
米国には軍事行動を起こす義務がある」
と発言。
「米国はフィリピンを守らなければ地域からの信頼を失う」
と言及し、
「中国のいかなる行動にも対応する準備ができている」
とも語った。
一方、中国メディアによると、過激発言で知られる中国の軍事評論家・戴旭(ダイ・シュー)氏はこのほど、南シナ海での軍事衝突を想定した準備を整えるべきだと強調。
「米国は今後5〜10年の間、北アフリカや中東情勢の泥沼から抜け出せない。
中国はこの機会を利用し、特にベトナムを直接かつ現実的な敵と想定し、
軍事衝突を想定した準備を整えるべきだ」
と主張した。
』
ロイター 2016年 05月 30日 19:00 JST
http://jp.reuters.com/article/us-vietnam-china-headache-idJPKCN0YL0FP?sp=true
焦点:米越の関係改善、南シナ海狙う中国の「頭痛の種」に
[香港/北京 27日 ロイター] -
米国とベトナムの関係強化は、南シナ海をめぐる中国の戦略見通しを一気に複雑化してしまった。
オバマ米大統領は、ベトナムへの武器禁輸措置を全面解除するという歴史的な政策転換により、任期最後のアジア歴訪における同国訪問を飾ったが、それは直接中国に向けられたものではないと繰り返し強調した。
しかし、かつて敵国だったベトナムと米国が完全に関係を正常化したことは、中国にとって短期的にも長期的にも戦略的な頭痛の種になるだろうと、同地域の軍事筋や安全保障専門家は指摘する。
専門家によれば、運用面において中国は短期的に、ベトナムが中国軍への監視を強化するために米国からレーダーやセンサー、偵察機やドローンを手に入れる可能性に直面することになる。
長期的には、オバマ政権のアジア重視戦略において、ベトナムが主要な役割を担うことを意味する。
米軍事産業は、ベトナムへの高額な兵器販売をロシアと張り合うことになる。
また、南シナ海でベストな自然港であるカムラン湾を使用するという米海軍が長年抱いてきた願いがかなう可能性があると、軍事筋はみている。
外交筋によれば、たとえベトナムが軍事同盟に向けた正式ないかなる措置を避けたとしても、中国の領有権主張をめぐり、政治的な協力や情報共有の拡大がなされる可能性があるという。
このような動きは、ベトナムの軍事戦略家の目的と一致するものだ。
彼らは急速に近代化する中国軍が再度べトナムを攻撃することに対する代償を高めたいとロイターに語っていた。
1980年代に中国との国境で起きた紛争や88年の南沙(英語名スプラトリー)諸島における海戦よりも、
今後に起きる中国との戦いははるかに困難なものとなることをベトナムは理解している。
■<外交に依存>
中国当局は今のところ、反応を示してはいない。
だが中国はベトナムが近代兵器を入手し、それらを南シナ海に配備することを注視していると、元外交官で、中国国際問題研究院の阮宋澤氏は指摘。
「これが中国とベトナムの領有権問題に影響する可能性はない、とは言えない」
と述べた。
中国本土の安全保障を専門とする嶺南大学(香港)の張泊匯教授は、ベトナムの政策立案者たちは
近代的な中国軍には勝てないと分かっている故、
中国と安定した関係を維持するためには外交に頼らざるを得なかった
との見方を示した。
オバマ大統領がベトナムを訪問した後でも、このような状況は今後も続くとみられると、張教授は指摘。
同大統領のベトナム訪問を「最も安上がりな防衛手段」と評し、
「ベトナムは米国を抑止戦力の強化に組み入れようとしている。
中国との関係を深めるには、米国というカードを使わなければならない」
と語った。
■<カムラン湾>
米海軍当局者は、ベトナムへの寄港を徐々に増やしたいが、中国に圧力をかけ過ぎることに対するベトナムの懸念を承知していると話す。
ベトナム当局は、カムラン湾に外国艦船の寄港を受け入れる新たな国際港の開港を3月に発表した際、ベトナム軍の報道資料によれば、中国軍は正式な招待を受けた最初の外国軍の1つに含まれていた。
米海軍の入港は現在、長年計画されてきた正式な業務事項だが、米艦船がカムラン湾に定期的に寄港できるようにするには、提供協定が長期的な選択肢の1つだと、米軍当局者は語る。
安全保障専門家によると、例えば寄港が少し増えるだけでも、南シナ海における中国の活動を複雑化するという。
中国は現在、スプラトリー諸島に建造した7つの人工島で進める軍民両用の施設建設に重点を置いている。
中国は自国の領土として、南シナ海の80%を主張。
一方、台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイも、世界で最も重要な航路の1つである同海域の一部で、領有権を中国と争っている。
武器禁輸措置の解除は、米国の武器製造業者にベトナムだけでなく、急速に開発が進む他の東南アジア諸国でも商機を与えることになると、タイのプラウィット副首相兼国防相の軍事顧問は指摘する。
「米国には、ラオスやカンボジアのような、ロシアや中国の武器を使っているさまざまな国において機会と需要が開かれている。
こうした国々の経済は拡大しているが、武器は古いので商機はある」
(Greg Torode記者、Megha Rajagopalan記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
』
ダイヤモンドオンライン 2016年5月31日 真壁昭夫 [信州大学教授]
http://diamond.jp/articles/-/92145
中国の脅威で米越接近、
南シナ海に日本はどう関与すべきか
■米国のベトナムへの武器輸出解禁
対中国で利害が一致
5月23日、ベトナムを訪問していたオバマ米大統領は、ベトナムに対する武器輸出を全面解禁すると発表した。
ベトナムは世界で唯一、米軍に勝利した国だ。
そのベトナムが、今、米国から武器を購入することが可能になった。
その背景には、南シナ海で領有権を巡って紛争が鮮明化する中国との関係がある。
ベトナムとすれば、中国の最大のライバルである米国と親密化を図ることで、中国を牽制する意味がある。
今回の決定は、そうしたベトナムの思惑と、対中国の抑止力強化という米国の利害が一致したことを示している。
米国がベトナムの人権問題などに懸念を示しつつも、米国が歩み寄ったことで、アジア地域の安全保障にとって大きな一歩が踏み出されたことになる。
中国は、南シナ海のスプラトリー諸島、パラセル諸島などで埋め立てを進め、軍事拠点を設営してきた。
中国はベトナムの排他的経済水域に石油探査リグを設けるなど、他国の資源をも手中に収めようとしている。
そうした中国のスタンスは、国際法あるいは倫理的な観点からも容認されるものではない。
一方、中国は世界第2位の経済大国だ。
ベトナムは真正面から中国と対立し、中国市場へのアクセスを失うことは避けたいはずだ。
今までベトナムは軍事面でロシアとの関係が強かった。
その中で、今回、米国の武器輸出の全面解禁という米越間の関係強化が進んでいることは、今後の同国を巡る情勢を大きく変化させることになるだろう。
当然、わが国にも相応の影響があるはずだ。
これまで中国は、南シナ海で埋め立てを行って領有権を主張し、拡張主義を進めてきたが、これは国際法上の観点からも容認されるべきものではない。
それは、ベトナムやフィリピンなどの諸国との対立を生んだ。
そうした行動は、他国の主権を無視しており、明らかに誤った政策だ。
長い目で見ると、近隣諸国との関係悪化などを通して、いずれ中国自身が不利益を被る可能性が高い。
すでにフィリピンは、中国の領有権主張が国際法に違反しているとオランダ、ハーグの仲裁裁判所に提訴した。
■“アメとムチ”を使い分け
アジア新興国に恭順を求める中国
中国の海洋進出を経済的な観点から考えると、同国の“一帯一路(シルクロード経済圏構)”の提唱が一つの鍵になる。
中国はアジア、中東、ロシア、北アフリカ、そして欧州経済へのアクセスを確立し、経済基盤を強化しようとしている。
中国は、アジア新興国等に対して “アメとムチ”を使い分け恭順を求めている。
アメの部分は、アジア新興国に対するインフラ開発の支援だ。
中国は世界各国に対してAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を呼びかけた。
これは、各国に対して、中国の意向を尊重すれば恩恵を享受できる、とのメッセージだ。
一方、中国の意に沿わない国に対して、力の論理をもって圧力をかけている。
それがムチの部分だ。
中国はベトナムに対して、水面下で海洋資源の共同開発を呼びかけたといわれている。
しかし交渉が難航すると、中国はベトナムの排他的経済水域に進出し、無断で石油掘削装置を設置した。
軍事施設の設営も、中国を尊重せよとの圧力の表れとみられる。
中国の国内事情を考えると、海外経済の需要を取り込み、自国の成長を支える力を民衆に示すことが必要なのだろう。
それは中国・習近平政権の威信にかかわる問題だ。
共産党の影響力が弱まっていると民衆からみなされれば、国内政治の安定にも影響が出かねない。
そのため、中国は自らの意を尊重しない国に対して高圧的な行動をとり、結果として領土問題を引き起こしてきた。
しかし、そうした高圧的なスタンスは、長期的に見れば国際社会からの非難を浴びるなど限界が露呈するはずだ。
習近平政権は、ある意味で危険な賭けを行っているともいえる。
そうした中国の拡張主義に対して、ベトナムはこれまでも一定の抵抗を示してきた。
ただ、ベトナムの置かれた状況は単純ではない。
■極力、中国との衝突は避けたいベトナムの事情
世界第2位の中国経済へのアクセスを確保することは、ベトナム経済の成長を支えるためには欠かせない。
「極力、中国との衝突は避けたい。
しかし、中国が海洋進出を強く進めるのであれば、自国を守る準備も必要」
というのがベトナムの本音だろう。
今まで、ベトナムは中国に抵抗するために、自国の軍事力の増強を進める一方、経済面でもTPP協定に参加を表明してきた。
ベトナムは、中国の動きを牽制するために米国との関係を改善、強化するスタンスを示してきた。
一方、米国にとっても、中国との領土問題を抱えるベトナムとの関係を強化することは、対中国政策を強化しアジア地域での存在を確認するために重要だ。
また、ベトナムは歴史的にロシアとの軍事的な関係が強い。
そのため、中国との関係を考えた時、中国以外の国との結びつきを強化することは意味がある。
中国の海洋進出を牽制するために、ベトナムはロシアから潜水艦を購入した。
それと同時に、ベトナムは中国との経済的な関係を重視して、AIIBの創設メンバーにも名を連ねている。
つまり、ベトナムは、中国・米国・ロシアの3大国との関係を利用する一方、それらの国との微妙な距離感を維持してきた。
それが、
(1):安全保障の強化を中心に関係強化を進める米国、
(2):脅威であるとともに無視もできない中国、
(3):社会主義というイデオロギーや軍事的関係の強いロシア
との関係になっている。
ベトナムは米国を後ろ盾に中国を牽制したい。
しかし、米国への歩み寄りが急すぎると、中国やロシアの機嫌をそこねることも懸念される。
特に、米国との緊密化が中国への敵対とみなされれば、中国はさらに強く南シナ海での領有権を主張するかもしれない。
ベトナムを取り巻く状況は一筋縄では行かない。
ベトナムは、米中露のいずれの国との関係も良好に保つ必要がある。
ベトナムがそうした態度を取り続けると、アジア地域の政治・経済・安全保障の問題はさらに複雑化する可能性がある。
★.米国がベトナムに対する武器輸出の全面解禁を決めたことは、
国際的な安全保障が新しい段階に進んだことを意味する。
かつて戦火を交えた米国とベトナムが協力関係を構築することで、
対中包囲網の強化が鮮明になる
からだ。
■中国の海洋進出にかなり脅威を感じている米国
米国は中国の海洋進出をかなりの脅威と考えている。
米国とすれば、中国の台頭を見逃してしまったという焦りもあるだろう。
それが、今回の米国が武器の全面輸出解禁に結びついたと見られる。
今のところ、中国は、今回の米国の決定に好意的とも取れる反応を示している。
しかし本音では、中国がそうした見方をしていないのは間違いない。
今後、中国は「米国がベトナムへの武器提供でアジア地域の安定が損なわれる」と批判することは十分に考えられる。
ただ、中国としても、ベトナムを厳しく批判して、ベトナムがさらに米国寄りになることは避けたいはずだ。
国際社会の注目が米中の対立に集まる中、ロシアのアジア地域への進出の動きも気になる。
ベトナムへの軍事協力などを強化し、情勢が不透明さを増す可能性もある。
こうして考えると、米越間の接近で対中包囲網が強化され、アジア地域の安定が促進されると結論するのは早計だ。
少なくとも、中国は、さらなる影響力の増強を目指して拡張主義を強める可能性もある。
リーマンショック後、米国は景気の低迷や中東政策の失敗が続き、覇権国家としての影響力が低下してきた。
そうした世界情勢を“Gゼロ”、あるいは“多極化”と呼ぶ専門家もいる。
そうした状況下、米国の世論は自国の利害重視という“内向き志向”を強めている。
それは大統領予備選挙の「トランプ現象」を見ても明らかだ。
■米国の影響力が低下、わが国はどうすべきか
問題は、米国の影響力が低下する中、米国に代わる世界のリーダーが見えないことだ。
少なくとも、拡張主義を唱える中国にはその役割は無理だ。
中国の経済成長率が相対的に高い間、各国は中国との関係を重視せざるを得ないだろう。
しかし、中国経済の実力が低下すれば、中国の拡張主義に対する批判はさらに強まるだろう。
長期的に見れば、現在の中国の外交政策は限界に直面し、方針転換を迫られる可能性が高いとみる。
最も懸念されるのは、アジアでの地位をめぐる米中の対立が深まり、軋轢が生じることだ。
わが国にとって重要なことは、冷静にアジア各国のニーズを汲み取り、関係を強化することだ。
今のところ、アジアの多くの国にとって、最も必要なものはインフラ整備だ。
わが国には、それを支えるノウハウや技術がある。
それを生かさない手はない。
南シナ海の領土問題などを巡り、先行きの情勢が不安定になりやすい中、わが国は、国際法の遵守を国際社会に訴えて中国の動きを牽制し、しっかりとした経済外交を通して各国との関係強化を進めればよい。
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【2016 異態の国家:明日への展望】
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