2016年6月6日月曜日

「裏切りのオバマ」終末の大変身(5):強引さ増す中国、中立国も警戒心が、マレーシアそしてベトナム

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 相当前に
 「中国のバブル崩壊は2015年に始まる」
と、予言したのはソロスであった。
 その後を見てみると、それがいつのまにか
 「2014年中国バブル崩壊説」
になり、その年はなにもなく過ごして、メデイアは
 「中国のバブルは崩壊しない」
というヨイショにすり替わった。
 「2015年」がなぜ「2014年」に変化してしまったのだろう。
 2014年というのは唐突にでてきて、それが一般化した。
 ウソも言い続ければ本当になる、ということなのだろうか。
 一体、「2014年中国バブル崩壊説」というのは、誰が流したものだろう。
 ソロスの予言がいつも当たるわけではないが、この時はなぜ「2014崩壊」が巷にあふれたのであろうか、疑問に思っていた。
 いまの中国経済は誰が納得するほどに悪い。
 2015年の株式市場から始まった不安状況はしばらくは続くとみたほうがいいだろう。
 過剰生産と在庫、地方経済の債務、環境問題など、ど一つとってもまともなものはない。
 国内の視線をそらすために、南シナ海で揉め事を起こすという政策を実行しているが、そこまでしないといけないほどに悪くなっているということだろう。


読売新聞 6月6日(月)10時45分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160606-00050013-yom-int

強引さ増す中国、中立国も警戒…アジア安保会議



 【シンガポール=池田慶太、蒔田一彦】
 中国軍の孫建国・統合参謀部副参謀長は「アジア安全保障会議」最終日の5日、
 南シナ海問題を巡る常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判断を無視すると宣言
した。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)では、この問題で中立の立場を保ってきたインドネシアなどが、強引さを増すその手法に警戒を強め、距離を置き始めている。

 「中国は紛争を平和的な話し合いで解決する知恵と忍耐がある」。
 孫氏は5日の演説で、野太い声を一段と張り上げた。
 3日間で15以上の国・機構と会談し、領有権問題は当事国で解決すべきだと説いて仲裁を無視する環境構築に奔走した孫氏。
 演説では、「平和的解決」を何度も強調した。

 だが、演説後の質疑応答では、「昨年も『行動で示す』と言ったはずだ」と、むしろ海域の緊張を高めてきた言行不一致への指摘も出た。



日本テレビ系(NNN) 6月5日(日)19時36分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160605-00000034-nnn-int

アジア安保会議閉幕 中国に“焦り”も

 日本など各国の防衛トップらが参加した「アジア安全保障会議」が5日、閉幕した。中国は南シナ海の領有権をめぐって、仲裁裁判所の判断には従わないと強気の姿勢を示す一方で、国際社会の理解を得ようと活発な動きをみせた。

 最終日に演説した中国軍の高官は、フィリピンの申し立てに基づき国際的な司法機関である仲裁裁判所が審理している南シナ海の領有権問題について、いかなる判断も受け入れないと強調した。

 中国・孫建国副参謀長:
 「仲裁裁判所の審理はフィリピンの違法な要求に基づくものであり、(裁判所に)管轄権限はない」

 こうした強気の一方で、国際社会での世論作りにも余念がなかった。
 会議期間中には領有権をめぐって対立するベトナムも含め、15か国と二国間会談を行ったほか、各国の報道関係者には自らの主張を英語で記した冊子まで用意する周到ぶりだった。
 しかしアメリカは批判の手を緩めなかった。

 アメリカ・カーター国防長官:
 「海洋進出が続けば、中国は自らを孤立させる『万里の長城』を築きかねない」

 この発言に対して、中国はすぐさま「孤立はしていない」と反論した。

 仲裁裁判所の判断が近く出されるとの見通しの中、今回の会議は強気の一方で、国際社会の圧力を少しでもかわそうとする中国のいわば「焦り」のようなものが垣間見えるものとなった。



Record china 配信日時:2016年5月31日(火) 19時20分
http://www.recordchina.co.jp/a140194.html

米国防長官、中国を22回名指し批判
=中国反発「物語をでっち上げ、世界各地で敵を作り出している」―中国メディア

 2016年5月30日、中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は定例記者会見で、カーター米国防長官が米海軍士官学校での演説で、中国の南シナ海での軍事拠点化を名指しで批判したことについて、
  「米側のある人は21世紀にいながら、頭だけは冷戦時から抜けていない。
 物語やニュースをでっち上げ、世界各地で敵を探し作り出している」
と述べた。
 新華社が伝えた。

 カーター米国防長官は演説で、
 「中国は拡張的で前例のない活動を南シナ海でしてきた」
 「自らを孤立に追いやる万里の長城を築くことになりかねない」
などと述べ、中国を22回にわたって名指しで批判した。 

 華報道官は
 「中国は米軍のある人が脚本を書き、監督したハリウッド大作に出演する気はない」
とした上で、米国に対し
 「中国と同じ方向に向かい、アジア太平洋地域の国々とともに、この地域の平和と安定、繁栄を促すよう希望する」
と述べた。
 22回も名指しで非難したということは、これまでのアメリカのスタンスからは考えられないことである。
 ということは、オバマ政権はその気になっているということでもある。
 アメリカは南シナ海に入ってくる可能性が相当おおきくなっているということでもある。
 ただ、あたらしい大統領がどういう動きをするかである。
 オバマはまちがいなく舵を切ったようである。

ロイター 2016年 06月 4日 21:23 JST

焦点:南シナ海で態度を硬化、
マレーシアは「親中国」返上か

[ミリ(マレーシア) 1日 ロイター] -
 マレーシアのサラワク州沖で3月、同国の沿岸警備艇が大型の船舶を確認した。
 乗組員たちは仰天した。
 その船が警告のサイレンを響かせながら、高速でこちらに突き進んできたからだ。
 その後、同船が針路を変えると、船腹に「中国海警局」の文字が刻まれているのが見えた。

 マレーシア海上法令執行庁(MMEA)の当局者によれば、油田で潤うミリ市沖合の南ルコニア礁付近では、以前にも中国海警局の艦艇が何度か目撃されている。
 だが、今回のように攻撃的な遭遇は初めてだという。
 「私たちからは、恐らくこちらをどう喝するために突進しようとしているように見えた」
とある当局者は言う。
 この人物は、公的に発言する資格はないものの、ロイターの取材に対して、これまでに報道されていなかった同事件を記録した動画を見せてくれた。

 この事件の他にも、同じ時期に当該海域に100隻ほどの中国漁船が現れたことに刺激されて、マレーシア国内の一部では、強大な隣国である中国に対し、従来は控えめだった批判を強めつつある。
 ある上級閣僚は、南シナ海で領有権をめぐる対立が起きている岩礁・島しょの周辺で中国が力を誇示しているなかで、マレーシアはこうした領海侵犯に対抗しなければならない、と話している。

 フィリピン、ベトナムなど、南シナ海での領有権紛争に関与している諸国は、以前から中国の強引な姿勢への警戒心を強めていた。
 米中間の対立も高まっており、この2つの大国は、年間約5兆ドル(約540兆円)もの貿易を支える重要な水路を軍事化しているという非難を応酬している。
 だがマレーシアの場合、中国との「特別な関係」を掲げ、また貿易と投資への依存度が高いため、従来、この地域での中国の活動に対する対応は、西側諸国の外交関係者から「控えめ」と表現される程度のものだった。

 サラワク州から50カイリも離れていないジェームズ礁で2013年・2014年の2回にわたって中国が実施した海軍演習についても、マレーシアは重要視しなかった。
 さらに2015年には、中国海警局の艦艇の武装船員による威嚇行為があったとしてミリ市のマレーシア漁民が懸念する声を挙げたが、おおむね無視された。

■<漁業紛争>

 ところが3月に多数の中国漁船が、領有権が争われている南沙(スプラトリー)諸島の南方にあり、豊かな漁場の広がる南ルコニア礁付近に侵入した際には、マレーシアは海軍艦艇を派遣し、中国大使を召喚して説明を求めるという異例の動きを見せた。
 中国外務省は、「関連の水域」において自国の漁船が通常の漁業活動を行っていただけであるとして、事態を重要視しなかった。

 わずか数週間後、マレーシアはミリ市の南にあるビントゥル付近に海軍の前進基地を設ける計画を発表した。
 マレーシアの国防相は、この基地にはヘリコプター、無人機、特殊部隊を配備し、過激派組織「イスラム国」に同調する勢力が自国の豊かな石油・天然ガス資産を攻撃する可能性に対処することが目的だと強調している。
 しかし、そうした勢力が拠点としているのは、北東方向に何百キロも離れたフィリピン南部だ。

 一部の当局者や有識者は、この基地の設置に関してもっと大きな要因となっているのは、サラワク州沖における中国の活動だと話している。
 「石油・天然ガス資産の安全保障を強化する場合、国家・非国家双方の脅威に対して防衛することになる。
 だから、国防相の発言にもいくばくかの説得力はある」
と語るのは、シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)で南シナ海問題を専門とするイアン・ストーリー(Ian Storey)氏。
 「だが、ダーイシュ(イスラム国の別称)対策が本来の動機だろうか。
 私にはそうは思えない」
とストーリー氏は言う。

 マレーシアの態度硬化を裏付けるように、上級閣僚の1人はロイターの取材に対し、
 「領海侵犯には断固たる行動を取らなければならない。
 さもなければリスクが容認されたことになってしまう」
と話している。
 デリケートな問題だけに匿名を希望しつつ、この閣僚は、3月にマレーシアが見せた対応と、その数日前に隣国インドネシアで起きた同様の事件との対比を強調した。
 「インドネシアの水域に侵入した中国漁船は、ただちに追い払われた。
 しかし中国の船舶がわが国の水域に侵入しても何も起きない」
とこの閣僚は言う。

 マレーシア議会では先月、副外相が他の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と同様にマレーシアも中国の主張する悪評高い「九段線」を認めていないことを繰り返した。
 中国は「九段線」を掲げて、南シナ海の90%以上の水域について自国の権利を主張している。

<限られたオプション>

 MMEA当局者の説明する事件について、中国外務省は、中国・マレーシア両国は対話と協議を通じた海事紛争の処理について「高いレベルのコンセンサス」を共有している、と述べている。
 同省の華春瑩報道官は、「この件については引き続きマレーシアと緊密な連絡を取る予定だ」としている。

 マレーシア政府がさらに強硬な姿勢を取ることに及び腰なのは、マレーシアが中国に大きく依存していることからある程度説明できるかもしれない。
 中国はマレーシアにとって最大の輸出先であり
 マレーシアはASEAN10カ国のなかで中国からの財・サービスの輸入が最も多い。
 また複数の中国国有企業は昨年、マレーシアの政府系投資ファンド1MDBから数十億ドル相当の資産を購入している。
 1MDBは債務超過に苦しんでおり、ナジブ首相にとって大きな悩みの種になっていた。

 マレーシアの国内問題への中国の影響力も、マレー人が多数を占める国家にとって常に懸念事項となっている。
 マレーシアの中国系住民は人口の約4分の1を数える。

 昨年9月、中国・マレーシア両国の外交関係に緊張が走った。
 マレー系住民によるデモに先立って駐マレーシア中国大使が首都クアラルンプールにあるチャイナタウンを訪れ、
 「中国系住民の権利に影響するような行動に対しては、中国政府は遠慮なく批判させてもらう」
と警告したのである。
 大使は召喚され、発言について説明を求められたが、中国外務省は大使を擁護している。

 マレーシアは、監視・防衛能力を強化する一方で、2002年に中国とASEAN諸国のあいだで調印された行動規範の履行を推進するなど、経済と安全保障のバランスを模索しつつ、さまざまな戦略を進めている。

 さらに注意を要する選択肢としては、米国との軍事提携の強化がある。
 ある政府高官はロイターに対し、
 「マレーシアは、中国政府を刺激しないようひそかにではあるが、情報収集に関する支援と沿岸警備能力の強化に向けて米国に打診を行っている」
と話した。

 前出のストーリー氏は、中国に対して強引な領有権の主張を控えるよう説得を試みるソフト外交と合わせて、米国との軍事提携の強化を確保する動きがあるかもしれないが、それでも問題解決は困難だろうと話す。
 「こうした戦略のどれも、大きな成功を収めているわけではない。
 だが他に何ができるだろうか」
とストーリー氏は言う。
 「この領有権をめぐる争いは非常に長引くだろう」

(Joseph Sipalan記者、翻訳:エァクレーレン)

ニューズウィーク 2016年6月2日(木)16時00分 ショーン・クリスピン
 

旧敵国ベトナムに塩を送る武器禁輸解除の真意

<ミャンマーの民主化を成果として誇るオバマが、
ベトナムでは人権問題に目をつぶって武器禁輸を解除したのは、
南シナ海での対中戦略を最優先したからだ> 

 オバマ米大統領は先週ベトナムを公式訪問し、現地の市民団体のメンバーと会談した。
 草の根の民主化活動家と、アメリカの連帯を示す象徴的な会談だったが、会場の半分は空席だった。
 数時間前、招待されていた参加者のうち3人が治安当局に身柄を拘束されていたのだ。

 その前日にオバマは、長年にわたり実施してきたベトナムに対する武器禁輸措置を完全に解除する方針を表明。
 中国が南シナ海の係争水域において戦略的立場を強める今、武器禁輸措置はこれまでになく重くベトナムにのしかかっていた。

【参考記事】南シナ海の中国を牽制するベトナム豪華クルーズの旅

 禁輸解除によって、かつて戦火を交えた両国が「イデオロギー上の相違」を水に流すことができたとオバマは主張した。
 だがこれでアメリカは、アジアで最も民主化が遅れていて、最も人権侵害が横行している国の1つに見返りを与えたことになる。

 オバマが共同会見を行ったクアン国家主席はつい最近まで、民主化運動の活動家らを弾圧し、投獄している公安省の大臣を務めていた人物だ。

 なぜオバマは、ベトナムの人権問題に譲歩したのか。
 今回の方針転換は南シナ海において攻撃性を強めている中国への牽制、という見方をオバマ自身は否定している。
 だがオバマの決断には、南シナ海で安全保障上の力学が急速に変化し、アメリカの優位性が脅かされている現状が織り込まれていることは確かだ。

【参考記事】ベトナムの港に大国が熱視線「海洋アジア」が中国を黙らせる

 ベトナムは軍備の大部分をロシアに依存しているが、アメリカの監視技術と装備があれば、中国に対する抑止力を大幅に向上させられるだろう。

■対タイ政策との矛盾も

 だがオバマの決断には明らかに、哨戒機などをベトナムに売り付ける以上の意図がある。
 今年は米大統領選が行われ、オバマはレームダック同然。
 イラクやアフガニスタン、シリアの紛争が一向に終結しないなかで、自らの外交政策の遺産を補強するため、アジアで功を成し遂げたがっているとの指摘もある。
 「アジア回帰」「リバランス」とも呼ばれるオバマの政策は、アジアを外交政策の中軸に据えることを目指していた。

 オバマ政権は、ミャンマー(ビルマ)で進行中の軍事政権から民主政権への移行をアジア回帰の誇るべき成果としている。
 一方、軍事独裁政権による抑圧が続くタイについては、毎年行ってきた多国間軍事演習への米軍の参加規模を縮小するなどの対抗措置を取っている。

 政治犯を100人以上収監し、反体制派を弾圧しているベトナム政府にオバマが折れたのは、政策の一貫性という点では矛盾して見える。
 タイの場合、民主化に逆行はしているものの、その軍事政権はベトナムの共産政権ほど抑圧的ではない。
 オバマはベトナムとの戦略的な関係を維持するため、最近新しく成立した政権に大幅に譲歩せざるを得なかったという見方もある。

 ベトナム戦争という不幸な歴史から、米政府の中にはベトナムとの関係正常化や貿易協定、戦略関係を追求するために、この国の人権侵害などを大目に見る者も多い。
 一般的には、オバマのベトナム訪問と武器禁輸措置解除を「過去に折り合いをつける歴史的な一歩」と歓迎する声が多いだろう。

 しかし、オバマがミャンマーに要求したのと同じレベルの民主化を政府に求めることを期待していたベトナムの若い世代は、ソーシャルメディア上に失望と諦めの言葉を書き込んでいる。
 それは、ベトナムに対するアメリカの関わり方について彼らがずっと抱いてきた感情だ。

From thediplomat.com
[2016年6月 7日号掲載]


サーチナニュース 2016-06-15 15:07
http://news.searchina.net/id/1612070?page=1

日本が「タイとわが国の仲を裂き、
両国の軍事交流阻止を画策」と批判=中国

 中谷元防衛相は7日、バンコクでタイのプラウィット国防相と南シナ海問題を中心議題として会談したが、中国メディアの環球網は11日付の記事で、日本は中国とタイの仲を裂き両国の軍事交流を阻止しようとしていると主張している。

 記事は、日本の一部メディアが「日本は中国とタイとの軍事交流を阻止しようとしている」と報道したことを紹介し、
 「タイは日本のP-1哨戒機とUS-2水陸両用飛行艇に関心があり、日本にはタイとの軍事協力を強化する意志がある」
と説明した。

 報道によれば、中谷元防衛相は7日の会談後に記者団に対してタイとの防衛装備品・技術移転について、いずれは協定を結ぶことが必要という見方を示している。
 また、中谷元防衛相とプラウィット国防相は今回の会談で自衛隊によるタイ軍の能力向上支援の点で合意した。

 また記事は、
 「日本が中国とタイの仲を裂き両国の軍事交流を阻止しようとしている」
と主張した別の根拠として、今回の会談で
 「日本とタイ両国が南シナ海における航行の自由と上空飛行の自由を保障することの必要性を確認した」
という点も指摘。
 記事はタイに対する日本側の一連の行動に対する強い警戒感を示している。

 2014年に生じたクーデターを機に米国はタイから距離を置いているため、中国はこの混乱に乗じてタイへの影響力を強めている。
 またタイも外交・安全保障面で中国に接近しているため、中国からすれば日本が「中国とタイの仲を裂く」行為と映るのだろう。


JB Press 2016.6.8(水)  末永 恵

アジアの橋頭保ベトナム、
強き外交に磨きかける
中国の海洋進出でラブコール送る米ロを巧みに差配

 「したたか」「二枚舌」「ズル賢い」――。

 (その国の人の)小柄で華奢でおとなしそうな外見とは裏腹に実は、大国・中国に、そう言わしめるほどの小国がアジアにある。
 したたかな朝貢外交を展開し、中国のみならず、米国、フランス、ロシアに至ってまで、「山椒は小粒でもピリリと辛い」と知らしめているのが、実はベトナムだ。
 1000年にもわたる中国の侵略や支配、約70年にも及ぶフランス下での植民地支配に屈せず、さらには20年続いた米国とのベトナム戦争、その後は中越戦争を経験した。

■何度も痛い目に遭わされてきた中国

 「China and Vietnam: The Politics of Asymmetry(中国とベトナム、その非対称な政治)」の著者で、米国における中国政治外交の専門家、ブラントリー・ウォマック博士は、
 「中国の力は、再三、ベトナムという岩の上で砕け散ってきた」
と言う。
 ベトナム戦争でロシア軍や米軍が置きざりにした戦闘車など、お古の兵器を駆使して中国に勝利してきたのである。

 ベトナムの強さの秘密は、
★.強靭な忍耐力と精神力に裏づけられたべトコン戦術の「硬」と、
★.朝貢外交で至れり尽くせりの「軟」を、
 1つのコインの裏表のようにして巧みに使い分けながら、超大国を翻弄させる戦略
にある。
 また、
★.戦争で1つの大国と戦う一方で、同時に別の大国を引き込むしたたかな戦術
も強さの秘訣と言える。
 ベトナム戦争では、中国と旧ソ連の超大国を激突させ、一方で米国との闘いのための後ろ盾として両国の支援を引き出した。
 日本などより、ずっと外交上手と認めざるを得ない。

 そんなベトナムが、日本の伊勢志摩開催のG7サミット(主要国首脳会議)では拡大会合で初デビュー。
 4月に就任以来、初来日を果たしたグエン・スアン・フック首相が安倍晋三首相と初の首脳会談で国際舞台で日越の蜜月を演出した。
 G7開催前には、米国のバラク・オバマ大統領がベトナムへの歴史的訪問を実現。

 約半世紀ぶりになる米国からの全面的な武器輸出解禁合意で、「昨日の敵は、今日の友となった」(チャン・ダイ・クアン国家主席)と、アジアの小国でありながら日越連携に続き「米越同舟」を巧みに演出、中国への牽制を国際社会にアピールした。

 共同声明には明確化されていないが、ベトナムは武器輸出解禁を条件に、米軍がベトナム戦争時、のちには2002年にロシア軍が撤退するまで使っていた東西冷戦時代の要衝で、長年閉鎖されていたカムラン湾への米海軍寄港を認めたとみられる。
 寄港とは言え、南シナ海軍事防衛の戦略的最重要拠点に米海軍が入る意味は大きい。
 中国と陸続きのベトナムは、南シナ海に面した南北に長い約3000キロの海岸線を持ち、多くの港湾を抱え、主要な海洋ルートの交差点にある。
 そのため、経済や安全保障などの観点から、米国の対中戦略において他の東南アジアの国より重要な拠点となり得る。

 さらに、対中強硬路線を敷いてきたフィリピン・アキノ大統領の後を継ぐドゥテルテ次期大統領の親中政策によって南シナ海での中国による軍事拠点化が進む可能性があることから、ベトナムの戦略的価値がこれまで以上に高まっている。

■中国、突然の石油掘削

 ベトナムは、冷戦期では旧ソ連が最大の支援国で、最大の貿易相手国であった。
 しかし、1991年の旧ソ連の崩壊後、かつての敵である中国、米国、フランスなどと国交回復するなど、全方位外交を敷いてきた。
 そんな中、ベトナムに全方位外交の限界を思い知らしめたのが2014年5月の中国の国際法違反と見られる一方的な石油掘削作業開始だった。

 これまで幾度もの中国の軍事的脅威に対し、軍事的直接対決を避け、海軍共同巡視や高官交流などで信頼醸成を築き、「南シナ海は防衛可能」と見ていたベトナムの希望的観測は見事に打ち砕かれた。
 言い換えれば、今後、これまでの全方位外交は修正が迫られる。

 特に、国内の経済システム改革と貿易相手国の拡大を図り、経済失速が顕著になっている中国への過度の経済的依存度を軽減する方策へシフトせざる得ない。
 多国との経済連携は安全保障の強化にもつながる。
 FTA(自由貿易協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を推し進め、さらに米国や日本との外交軍事的連携強化とともに、対中政策でインドなどとの関係強化にも積極的に取り組んでいく必要がある。

 ベトナムは、最大の輸出相手国「米国」と慢性的な貿易赤字に悩まされる最大の輸入相手国「中国」に加え、保有する武器のほぼ100%を調達する最大の軍事武器供与大国「ロシア」という複雑な3大国の狭間に立ちながらも、ラストリゾート(最後の命綱)をこのいずれの超大国には依存しないことを固く誓っているからである。

 現に、カムラン湾には今回の米国との“密約”以前に、実はロシア、インドなどが使用している。
 特定の対中勢力に限定的にカムラン湾を使用させることを避けつつ、米国を巻き込むことで、中国との関係悪化を回避するしたたかな全方位外交が見てとれる。

 しかし、中国の軍事脅威が日増しに強くなっている状況では、ベトナムはかつてない難しい舵取りを迫られている。
 そのため、日本、インド、スリランカ、オーストラリアなど諸外国と包括的な連携を深めている。
 日本にとっても決して対岸の火事ではない。
 この連携が機能しなければアジア太平洋地域全体の発展や安定に影を落とす危険性がある。

■オバマ訪問の真の狙いはロシア対策

 さらに、今回のオバマ大統領の訪越ではメディアは「中国牽制報道」に終始していたが、実は訪越の最大の狙いは、対ロシア戦略にあることを忘れてはならない。
 ロシアはベトナムに武器や兵器を供与し続け、2015年からはカムラン湾でベトナムと共同訓練を実施するとともに、ロシア軍の戦略爆撃機などが同湾の基地を給油拠点とし、アジア太平洋地域で活動を活発化させている。
 ロシアの軍事的な関与拡大が明確になってきており、米国はベトナムに接近することで、ロシアを牽制する姿勢を鮮明にするという狙いがある。

 実は、4月に就任当時、ベトナムのグエン・スアン・フック首相は初めての外遊を伊勢志摩のG7サミットする予定だったと言われている。
 しかし、実際には、ロシアを初の外遊先に選んだ。
 オバマ大統領の訪越を睨んで、ロシアのプーチン大統領が5月19、20日に開催の「ロシア・アセアン(東南アジア諸国連合)首脳会議」(ロシア・ソチ)で初外遊するよう促したと見られている。

 ロシアでアセアンとの首脳会議が開かれるのは初めて。
 同首脳会議はロシアにとって、アジア地域で米中が覇権を争う中、同地域での「超大国」としての存在感を国際社会にアピールする絶好の機会だった。
 しかし、米国がこれを牽制、
 「フィリピンとマレーシアが米国から欠席を促され、結果的にフィリピン以外の9カ国の首脳が出席」(ロシア政府筋。ロシア・アセアン首脳会議では、今回、プーチン大統領に”忠誠を誇示”したマレーシアのナジブ首相が大統領にピタリと寄り添う姿が世界に配信された)。
 ベトナムはオバマ大統領の訪越、日本でのG7での安倍首相との初の首脳会談を前に、歴史的な友好国で、しかも中国が警戒するロシア訪問でその蜜月ぶりをアピールしたことになる。

 軍事だけでなく経済連携でも再び接近するロシアに仁義を切り、巧みな外交的バランスを取ったと言えるだろう。
 しかも、フック首相は他のアセアン首脳より一足先の16日にロシア入り。
 サミットに先立って、べトナム投資家による約30億ドル(約3250憶円)という大規模プロジェクトの巨大な牛乳加工工場建設の着工式典に出席している。
 アセアンの中でもロシアとの際立った親密ぶりを披露した。
実は、アセアンの中でロシアの最大の貿易相手国がベトナムである。
 2015年の両国の貿易額は約28億ドル(約3100億円)。

■対中依存脱却、ロシアへ急接近

 さらに、ベトナムは、2015年5月、アセアンで初めて、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンなどが加盟するユーラ シア経済連合(EEU)ともFTAを締結した。
 両国の2020年の貿易額は、2014年比で約3倍の100億ドル(約1兆1000億円)に達すると見込まれている。
 対中依存からの脱却、ロシアとの経済面での連携を拡大し、
 安全保障の基盤強化を急ピッチで進めている。

 今回の露越首脳会談の際、プーチン大統領が「ベトナムはロシアにとって、アジア太平洋地域での最重要のパートナー」と二国間関係の重要性を強調する一方、フック首相もチャン・ダイ・クアン国家主席からの伝言として、プーチン大統領にベトナムが主催国で2017年開催のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に合わせ、ベトナムを公式訪問するよう招聘。

 ウクライナ問題で欧米から経済制裁を受けるロシアは、政治・経済両面で中国への依存を拡大させている一方、対アジア外交で戦略的な均衡を図ることが急務とされる。
 同じように中国への経済的依存が大きいベトナムとの関係強化をアピールすることで、ベトナムとの軍事経済的関係を図るオバマ政権に対抗する狙いもある。
 プーチン大統領としては、中国にエネルギー交渉で主導力を誇示される中、さらに軍事外交面でも“中国より劣勢”になることはどうしても避けたい。

 ベトナムを中心に アセアンへの武器輸出を通じて東南アジアへの関与を深め、ひいては南シナ海に進出拡大する中国や、それに対抗し軍備増強を進める米国に警戒させる思惑もある。
 ロシアはベトナム戦争時、戦車や戦闘機を北ベトナム軍に援助するなど、ベトナムが使用する武器や兵器のほぼ全量がロシア製だ。

 ベトナムの過去最大の武器購入も、昨年、総額で数十億ドルに上った6隻のロシア製潜水艦で、米軍の間では「ブラックホールズ」と総称される「キロ級潜水艦(ロシアの通常動力型潜水艦)」だ。
 潜水艦は弱者の兵器とよく言われる。
 海深くに潜んで、相手の艦隊に効率的にダメージを与えられるため、戦力に大きな開きがある場合には特に有効な兵器とされる。
 ベトナム戦争時代のベトコンの地下トンネルのイメージを思い浮かべてもいいかもしれない。

■兵器のほとんどがロシア製

 アセアンでは最強でも中国に比べれば圧倒的劣勢にあるベトナムにとって、中国を牽制するには最適な兵器であり、これをロシアから調達していることにも大きな意味がある。
 今回、ベトナムの人権問題など障壁があるにもかかわらず、米国がベトナムとの関係改善に踏み切ったのは、こうした背景もある。もちろん、米国の狙いは、東西冷戦時代の要塞で、今では南シナ海の要衝となった、カムラン湾にある。
 同湾から南沙(英語名スプラトリー)や西沙(同パラセ ル)の両諸島までの距離が、各々約600キロと近距離であることから、同湾を活用すれば、南シナ海の偵察・監視能力は大きく高まる。

 日本も4月、戦艦としては戦後初めて、海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」と「ありあけ」をカムラン湾に派遣している。
 ベトナムにとって、南沙や西沙の両諸島など南シナ海の監視能力増強は緊急課題だ。
 昨年、ダナンに日本の海上自衛隊の対潜哨戒機「P-3C」が降り立ったとき、多くのベトナム軍人の関心を呼んだ。
 ベトナムは3月、カムラン湾に軍民共用の「カムラン国際港」を開港。原則、世界のどの国も活用できるが、どの国の寄港を許可するかは、ベトナム政府に選択権があり、戦略的な運用を目指す方向だ。

 その意味では、すでにカムラン湾に定期寄港している事実から、日本もTPPなどの経済的側面以外の安全保障面からもベトナムの期待を背負っているといっても過言ではないだろう。

 南シナ海情勢が、ベトナムや中国、さらにはアセアンや日米などが複雑に絡む段階に発展した今、全方位軍事外交の見直しが迫られるベトナムは、今後さらに難局に直面することが予想され、困難な舵取りが要求されるだろう。

 日本にとって経済、安全保障における戦略的パートナーのベトナムの存在は、その重要性が高まる一方である。
 それは、南シナ海をめぐる国家間の緊張が、予測不可能な新たな局面を迎えていることをも同時に示唆している。


Record china 配信日時:2016年6月10日(金) 22時0分
http://www.recordchina.co.jp/a140947.html

中国が「タブー」だったはずの題材でドラマを製作、
韓国メディアが驚き「米国を恐れなくなった」


●7日、朝鮮戦争を描いたテレビドラマが中国で放映されており、「中国の新たな外交姿勢を反映している」との見方が出ている

 2016年6月7日、米国への抵抗と北朝鮮への支援を描いたテレビドラマ「38線(38度線)」が中国で放映されているが、この中国初の朝鮮戦争を題材にしたドラマが韓国人の議論を呼んでいる。
 中国メディア・観察者網が伝えた。 

 韓国紙・中央日報は3日、「朝鮮戦争をドラマの題材にしないという不文律を中国が破った」と伝えた。
 米国を刺激するような行動を避けるため、これまでは中国では朝鮮戦争に関わるドラマの製作、放送はタブーとなっていたという。 

 従来の方針から一転して、朝鮮戦争を正面から扱うドラマが放送されたことについて、
 「これまでとは異なる、中国の新指導者の米国の顔色をうかがわない外交姿勢を反映している」
との見方が出ている。 

 ドラマ「38線」は、4月に雲南省と陝西省で先行放送された後、5月28日から北京市や遼寧省、安徽省でも次々に放送がスタート。
 衛星テレビで放送されているため、中国全土で視聴できる状態にある。
 北京市と遼寧省ではゴールデンタイムに放送されており、視聴率も高いという。 

 中国では1950〜60年代には朝鮮戦争を扱う映画がいくつかあったが、その後は制作されなかった。
 2000年に制作された「抗美戦争(抗米戦争)」は反対に遭い、翌年予定されていた上映は中止となったが、これは当時、同時多発テロ事件が起きたばかりで、米国を刺激することが懸念されたためだと中央日報は伝えている。