「欲に目が眩んだ」ということなのだろうか?
ドイツ銀行が中国投資に失敗?
『
マネーポストWEB 6月21日(火)17時0分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160621-00010001-moneypost-bus_all
ドイツ銀行 対中投資の不良債権化で1兆円超の純損失か
欧州の金融危機は収束しつつあるが、ロンドンの銀行間取引での不正操作やマネーロンダリングなどドイツ銀行の経営問題はくすぶり続けている。
さらにここに来て「パナマ文書」がらみでさらなる火種が発覚したという。
海外金融機関の動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。
* * *
今、『パナマ文書』が世界を揺るがしている。
タックスヘイブン(租税回避地)の会社設立や運営などを手がける、中米パナマの法律事務所『モサック・フォンセカ』から流出した内部文書だ。
世界中の法人や個人に関する、1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類が含まれている。
その中に、ユーロ圏のユニバーサルバンク(預金や融資に加え証券や生損保、信託業務も手がける銀行のこと)の不正取引関与が窺われる文書があるとして、一部の海外投資家が注目している。
実際、パナマ文書を契機として、米銀行監督局や英金融行動監視機構からユニバーサルバンクの大手数行が警告を受けている。
その内容は、タックスヘイブンを含む租税環境を優遇するオフショア市場での、中国に対する投資についてだ。
世界の主要金融機関のオフショアにおける、資産保有状況の情報収集および分析を手がけるオフショアリークス社によると、
★.ユーロ圏のユニバーサルバンクの対中投資は、日本や米国の大手行に比べて突出しており、
特にドイツ最大手のドイツ銀行の投資額が膨らんでいる
という。
オフショア市場に限っても、
★.ドイツ銀行の対中投資額は約5兆円相当と推定
されている。
ドイツ銀行を含む
★.欧州のユニバーサルバンクが、中国投資に傾斜し始めたのは、2012年頃から
のようだ。
当時、ギリシャの財政危機に影響でユーロ圏経済は低迷していた。
欧州中央銀行(ECB)による健全性審査(ストレステスト)が終了した段階で、ユニバーサルバンクは中国に収益機会を求めたのである。
特にドイツは、メルケル首相が温家宝首相(当時)とトップ会合を繰り返し、航空機大手エアバスからの旅客機の大量購入や、ユーロ国債の継続的な購入の約束を取り付けている。
ドイツの金融機関は、そうした国の意向を受けて、中国への投資を拡大していったとみられる。
だが、昨年から、風向きが変わり始めた。
中国の金融当局が、経営基盤の弱い企業について、破綻を容認するスタンスに転換しつつあり、実際に破綻処理をされる企業が出てきている。
その影響で、ユニバーサルバンクの対中投資の不良債権化が観測されている。
前述したオフショアリークス社の試算によると、ドイツ銀行のオフショア市場での残高約5兆円の内、16%程度が50%以上の確率で債務不履行(デフォルト)となる可能性があるという。
つまり、8000億円相当の損失を出す恐れがあるのだ。
予測が現実となった場合、ドイツ銀行の2016年の最終損益は、同行が抱えるロンドンの銀行間取引市場(LIBOR)での不正操作や、マネーロンダリング関連の多数の訴訟費用および制裁金支払い負担が重なることにより、1兆円を超える純損失を計上する可能性があるという。
そして、この対中投資資産の不良債権化は、これまで伝えられている同行の膨大なデリバティブ投資の焦げ付きと同様か、それ以上の現実的な脅威として海外投資家に意識されつつある。
※マネーポスト2016年夏号
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現代ビジネス 2016年06月24日(金) 川口マーン惠美
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48994
ドイツと中国の"蜜月"に走り始めた亀裂
〜メルケル首相が見せた冷徹な手のひら返し
記者会見で首脳同士が激しく応酬
〔PHOTO〕gettyimages
■これまでで一番困難な訪中
6月12日、メルケル首相が南京の中国科学院大学の名誉博士号を授かった。
授与式は北京で行われ、赤と黒のマントを着たメルケル首相が、同じくマント姿の学長(?)と並んだツーショットが、ドイツのニュースで派手に流れた(メルケル首相は博士帽を被ることだけは強硬に拒否したとか)。
博士号授与の理由は、メルケル氏の
「決然とした意思と英知による世界平和への貢献と、彼女が実践してきた実務的な中国外交」
を讃えるものであるという。
しかしながら、ケチをつけるわけではないが、はっきり言って、今、世界平和は第二次世界大戦以後最大の危機に陥っている。
また、「実務的な中国外交」というのは、ドイツが中国の人権問題などに口を挟まず、商売第一でやってきたということだ。
これを中国に褒められたからといって、さして自慢できることでもないだろう。
ドイツと中国は2011年に二国間政府サミットの協定を結んで以来、首脳や閣僚が定期的に差し向かいで協議をしてきた。
今回も、両国合わせて30人近い大臣、副大臣などが顔を合わせたという。
もちろん産業界の大物も必ず同伴して、大型商談をまとめる。
メルケル首相の今回の訪中は、就任以来9回目。
ちなみに、その間のメルケル首相の訪日はたったの3回だ(うち2回はサミット)。
ただ、今回の北京での3日間は、これまでで一番難しかった訪中と言われている。
まず第1日目、これも戦略的なのだろうが、メルケル首相は名誉博士号を受けた後の記念講演で、中国人学生を相手にかなり明確に中国政府批判を展開した。
「創造は、自由と、世界への門戸開放の雰囲気の中でのみ成就する」
などと聞けば、それが政治を指していることは誰の耳にも明らかだ。
これまで商売繁盛という大義名分の下で、異常なまでに友好的に保たれてきた独中関係だったから、中国政府はかなり慌てたのではないだろうか。
■中国での儲けに陰りが出始めたとたん…
中国の人権侵害、商売上のルール違反、軍拡といった問題は、なにも今に始まったことではない。
そのくせ習近平主席は、「中国ほど公平と平和を愛する国はない」と世界で触れ回っていたのだから、その矛盾にドイツ人が気がつかなかったと言えば嘘になる。
ところがドイツ政府は一貫して気がつかない振りをし、毎回の首脳会談でも、お座なりにそれを指摘するだけでお茶を濁してきた。
そのうえ、大手メディアも多かれ少なかれ協力し、中国についてのプラス面を強調した報道を長く続けた。
しかし現実には、中国企業の世界進出が進み、ルール違反があちこちで深刻化し、それに南シナ海での軍事的膨張が相まって、さすがのドイツ国民も「あれっ」と思い始めた。
そんなとき、これまで「中国万歳」であった報道が手のひらを返すようにその内容を変えた。
このごろとみに、中国市場がいかに閉鎖的で、外国企業にとって不利、不公平であるかというようなニュースがよく流れる。
また、最近、産業ロボットの先進技術を持つKUKAというドイツ企業が中国に買収されるかもしれないという話が浮上した途端、ドイツ政府までが異議を唱え始めた。
中国で活動しているドイツのNGOや報道陣にプレッシャーが掛けられている事実にも、ドイツ国内では反発の声が高くなっている。
ドイツ人は、中国での儲けに陰りが出始めたので、
「言うべきことは言おう」という作戦に転じたのか、
今、独中関係は、仕切り直しの感が強い。
経済的にウィンウィンの関係にあるならば多少のことには目を瞑るが、その前提が崩れれば、その限りではない。
ドイツ人のこの「冷徹な手のひらの返し」方は、それはそれで恐ろしい。
中国からしてみれば、まさに“豹変”に近いだろう。
その結果、博士号授与式の翌13日に行われたメルケル首相と李克強首相の共同記者会見は、ニュース映像を見るだけでも、過去のような和気藹々ムードでないことがわかる重苦しいものとなった。
李克強氏はホームグラウンドの強みもあるのか、かなり強引な主張を展開し、それに対しメルケル首相が、一字一句を慎重に選びながら対応していた。
■EUは、中国を「市場経済国」とは認めない
今回の協議で、一番大きな不協和音となったのが、
★.中国が市場経済国であるかどうかという、根本的な定義の問題
である。
中国は2001年、WTO(世界貿易機関)に加盟した。
WTOとは貿易を促すことを目的とし、それに関する様々な国際ルールを決めている機関だ。
中国が加盟した当時、15年後(つまり今年)には中国を正式に「市場経済国」の仲間に入れるということが決められた。
15年あれば、中国市場も西側諸国と同じルールを共有できるようになるだろうという希望的観測がもとになっていたようだ。
ところが今年の5月、EU議会は、中国を市場経済国とするのは時期尚早であるという採択をした。
EUにしてみれば、市場を十分に開放していない国を市場経済国として認めてしまうと、ダンピングをされたときに対応が難しくなるという問題がある。
いまだって、中国の余った粗鋼が安価で出回り、EUの鉄鋼業界は苦境に陥っているのだ。
それに怒った中国は、EUを激しく攻撃し始めた。
そして、このたび李克強首相はメルケル首相に、EUが15年前の約束を果たすよう、ドイツがEUに働きかけよと迫ったのだった。
この共同記者会見の全容が、ドイツ政府のホームページに掲載されている(https://www.bundesregierung.de/Content/DE/Mitschrift/Pressekonferenzen/2016/06/2016-06-13-merkel-mp-li.html)。
「約束は約束だから、守らなければならない」
と執拗に繰り返す李克強首相の姿が印象的だ。
普通、歓迎の意を込めた共同記者会見の場で、相手を横に立たせたまま、このような話し方はしない。
強引さの裏には、焦りがあったのか?
以下は、その一部の和訳だ(川口訳)。
「中国の考えは、EUは15年前の約束を守る義務があるというものだ。
中国とEUはそれに合意した。
つまり、取り決め通り、合意した日時を守り、その義務を果たさなければならないということだ」
「私たちは、EUが義務を行使するよう、ドイツ側が今まで通りポジティブな役割を演じてくれることを期待する」
そして氏は最後にこう言って、スピーチを終えた。
「簡潔に言うなら、中国とドイツはこれまで通り、誠実に付き合うことになるだろう。
互いに歩み寄り、さらに合意を広めていくことになる。
その上で、注意深く、適当なやり方で、争点を、といってもそれはごくわずかな割合でしかないが、争点を取り除かなければならない。
そうすれば、今ある戦略的なパートナーシップは、常に新しいレベルに達することができるだろう。
どうもありがとう」
■記者会見でも「李克強vsメルケル」の応酬
ドイツがこういう事態に陥ってしまったのには、理由がある。
一昨年、中国の太陽光パネルのダンピングでEUが困り果て、関税制裁をかけたとき、中国に頼まれて、その内容を骨抜きにすることに尽力したのがドイツだった。
だから中国は、今度もドイツにその役目を果たしてもらおうと期待しているのだ。
メルケル首相もそこらへんは弁えていて、李克強氏のプレッシャーをのらりくらりとかわしつつ、中国を褒めたり、人権問題を突いたりしながら、あまり中身はないが立派な文脈を紡いでいた。
15年前に結ばれたEUと中国の約束については「とてもはっきり覚えており、それを白紙に戻すつもりはない」が
「ドイツはEUの中の一国なので、これについてはEU委員会が交渉と対話を行う」
とか。そもそも、一党独裁の国が真っ当な市場経済国でありえないということは、わざわざEUの議会で討議しなくてもわかるはずだが……。
この後、記者の質問があったが、これが面白かった。
初っ端から、李克強氏がメルケル首相に向けられた質問を奪い取ってしまったのだ。
それもそのはず、質問内容は、
“中国企業はドイツのハイテク企業を買収できるが、中国市場は閉鎖的でそのようなことは許されていないのをどう思うか”
とか、
“南シナ海で起こっている事態を見て、ドイツでは、中国は間違った方向に進んでいるという声があるが、それをどう思うか”
などという、中国にとって不都合なものだったからだ。
李克強氏は奪った質問に長々と答え、最後に質問した記者に向かって、
「メルケルさんに代わって私がお答えしました。
でも、誤解しないでください。
私はメルケルさんのためにしたのです」
と言い、次にメルケル首相に向かい、
「メルケルさん、私のことを誤解なさることはありませんね。
悪く思わないでください。
どうもありがとう」
と締めた。
メルケル首相はそれに対して、
「もちろん悪く思ったりはしませんが、でも、私も発言する自由をいただくことにして…」
と、また、あまり中身のない、絶対に揚げ足を取られない、立派なことを喋った。
しかし、次の記者が二つの質問をしたときには、ちょっとした押し問答になった。
1問目はメルケル首相にと言っているにもかかわらず、李克強氏が
「それは私が両方まとめてお答えします」
と言い出したのだ。
それにはさすがのメルケル首相も引っ込まず、
「いえ、私が答えます。第1問目は…」
と言いかけたところで、またもや李克強氏が割って入った。
「じゃあ、あなたは1問目をお答えください」。
するとメルケル氏いわく、
「2問目は私にではない? 両方とも私への質問だと思いますよ!」
そして一瞬、
「でも、もし、2問目が中国の首相へのものなら…」
と戸惑った末、突然、
「もう、どっちでもいいわ。私は言いたいことを言います!」
と居直って、泰然として話し始めたので、さすがの李克強も黙ってしまった。
■斬新なメルケル話術
そんなわけで、おそらくその場にいたら、結構スリルに満ちた記者会見だったと思われる。
とはいえ、中国の政治家が、記者会見で他人の質問を取ってしまうのは、よくあることだそうだ。
日本の岸田外相もそれをやられて、呆れかえり、「やれやれ」と首を振っておしまいになったことがあったという。
だが、そういう意味では、“取られたものは取り返す”ドイツ人に学ぶべきところは多いかもしれない。
特に、「約束を守っていないではないか!」と責められた時、「その約束についてははっきり覚えています」と堂々と言ってのけるメルケル話術は斬新だった。
私生活でも大いに利用できそうだと、私は一つ賢くなった気がしている。
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【2016 異態の国家:明日への展望】
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