2016年6月9日木曜日

選挙応援にかけつける中国海軍(1):中国と日本の息の合った二人三脚、どっちもドッチの持ちつ持たれつの関係

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 これまでの例をみればわかるように、選挙が近づくと中国が意図的に日本に圧力をかけてくる。
 選挙を盛り上げるための行動であり、自民党政権応援のデモンストレーションでもある。
 日本政府は中国の行動を大きく報道して危機を煽って票稼ぎを目論む。
 中国政府と日本政府の息の合った二人三脚のような感じがする。
 「ヤラセ」であろう。
 もし、中国政府が自民党を落とそうとするなら、選挙前ならびに選挙中は静観している方が利がある。
 ところが、こういうときに限ってウロチョロする。
 そして自民党政権はそれをあたかも「いま、そのにある危機」のごとく宣伝する。
 日中コンビの表と裏の選挙運動にしか見えない。
 なんともすばらしい連携である。
 でも、ミエミエである。
 これからも自民党が苦戦になると、中国がウロチョロすることだろう。
 自民党が中国に頼み込んでいるような気がしてならない。
 特に今回は連れションでロシアも加わっている。
 日本政府としては、というより自民党政府はホクホクだろう。
 「乳母車が車椅子に追い出された」
と言われる消費税の10%アップが消えたいま、争点はせいぜいアベノミクスかマイナス金利ぐらいしかない。
 でもこれ現内閣を追い詰めるほどの迫力がない。
 そこに中国の脅威が見える形で現れれば争点はそこに集中し、万々歳になる。
 今夜は祝杯をあげたいところだが、そうはいかず、笑い裏に隠してシカメっ面をしないとなるまい。

  中国としては日本政府がギャーギャー騒ぐようなことを行っている、と国民にアピールできこれも人気取りになる。  
 どっちもドッチの、持ちつ持たれつの関係
のようである。
 中国としては日本が大いに騒いでくれた方がありがたい。
 それは選挙前、選挙中が最も効果的というわけである。
 アウンの連携プレーといったところか。

  ちなみに言うと、中国は外交を知らない。
 中国という盟主があってあとはどうでもいい諸国があるだけである。
 中国はそう思っている。
 よってここには外交はない。
 あるのはくだらない小国群への恫喝だけである。
 中国は外交で何とかやっていく気はまるでない。
 ザコは力で抑え込めれば十分と思っている。
 数の脅威を見せつければ怯えてひれ伏すと考えている。
 中国の権力構造はよって、軍事が第一中枢であり、外交外務はカヤの外なのである。
 外務省とおぼしき機関には力はない。

 さらに言うと、習近平は軍事力を海軍に求めようとしている。
 陸軍を削って、それを海軍に回している。
 陸軍の力を抑えて、海軍を持ち上げることで自己の権力基盤をつくろうとしている。
 それを知っている海軍は増長して、外務とは無関係にやりたい放題にやっている。
 しかし、それの無謀さがどこまで続くかは不明である。
 陸軍は悔しさで唇を噛んでいる。
 今は時を待つ、という姿勢にある。
 ガマンガマンの忍従の時に入っている。
 中国は基本的に大陸国家である。
 陸軍の権力歴史は長いが、海軍は新興勢力である。
 このまま不満を募らせた陸軍が黙っているわけがない。
 どんな行動に出るかという懸念が発生する。 
 海軍に足場を作ろうとする習近平と、それに対抗する陸軍とそれを支持する旧来勢力が、どのような攻めぎ合いをするかである。
 ちなみに、解放軍とほぼ同等の予算で運営されている公安武装警察は共産党の支配下にある。
 今は習近平が抑えているが、どう転ぶかはこれもわからない。 

 日本は昨年だったか、中国の軍船が尖閣領域に入ったら海自を送ると表明している。
 これまでは公船といっても巡視監察船で警察公安船であった。
 よって、海自は控えていた。
 今回の動きで、海自が尖閣へ出ていく可能性に火がついたことになる。
 つまり、中国は日本政府に大義名分を提供したようなものである。
 その名分を強くアピールするために、日本政府はしつこく、大声で中国に圧力をかけている。
 名分の正当化を計っているということである。
 そうなることくらい中国も分かっている。
 なのに何故そうしたか?
である。
 中国政府は日本政府が動きやすいように動きやすいように動いている。
 そうすれば、日本の行為に対する国内アピールを盛り上げることができる。
 やはりどっちもどっちである。


ロイター 2016年 06月 9日 13:31 JST
http://jp.reuters.com/article/china-frigate-senkaku-idJPKCN0YU2NF?sp=true

中国軍艦が尖閣周辺の接続水域入り、
日本はロシア艦との関連分析

[東京 9日 ロイター] -
  尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺の接続水域に9日未明、中国海軍の艦艇が初めて入った。
 領有権問題は存在しないとの立場の日本は、駐日中国大使を呼んで抗議した。
 同時間帯にロシア軍艦も同じ海域を航行するのが確認されており、防衛省は関連を分析している。

 安全保障の専門家は中国の動きについて、ロシア艦を追尾するため尖閣諸島近くへ向かった海上自衛艦を監視する意図があったのではないかとみている。

■<中国大使を呼び抗議>

 日本の防衛省によると、海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」が9日午前0時50分ごろ、沖縄県尖閣諸島にある久場島の北東の接続水域に入った中国海軍ジャンカイⅠ級フリゲート艦1隻を確認した。
 外務省の斎木昭隆事務次官は午前2時ごろ、中国の程永華駐日大使を呼んで抗議。軍艦の退去を要求した。

 せとぎりが無線で呼び掛けるなど監視を続ける中、フリゲート艦は午前3時10分ごろに大正島の北北西の接続水域を離れ、北へ向けて航行した。
 菅義偉官房長官は同日午前の会見で、
 「緊張を一方的に高める行為であり、深刻に懸念している」
と語った。

 尖閣諸島は日中ともに領有権を主張。
 日本は領有権問題は存在しないとの立場で、周辺12カイリ(22キロ)を領海、その外側の12カイリを接続水域としている。
 密入国や伝染病の流入防止に規制を設けることができる接続水域を、外国軍の艦艇が航行するのは国際法上問題ない。
 しかし、中国の軍艦がこれまで尖閣付近の接続水域に入ったことはなかった。

■<ロシア軍艦は5時間滞在>

 一方、8日午後10時ごろから9日午前3時ごろにかけ、ロシア軍の駆逐艦や補給艦など3隻が、久場島と大正島の間を南から北へ抜けていくのも確認された。
 ロシア軍艦がこの接続水域を航行するのは初めてではないものの、防衛省は中国軍艦の動きとタイミングが重なったことから関連性を分析している。

 中国の安全保障政策に詳しい専門家は、ロシア軍艦が先に接続水域に入った点に注目。
 「中国が領有権を主張する海域近くに、ロシア軍艦に続いて海自の護衛艦が向かった。
 中国はそこに反応したのではないか」
と、北京の日本大使館に駐在した元海上自衛官で、現在は東京財団研究員の小原凡司氏はみる。

 菅官房長官は、ロシアに対して外交ルートを通じて注意喚起したことを明らかにした。

 中国、ロシアの軍艦とも領海侵入はなかった。



日本テレビ系(NNN) 6月9日(木)7時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160609-00000108-nnn-pol

接続水域航行 外務省、中国大使に抗議



 政府は9日未明、沖縄県尖閣諸島付近の接続水域に中国海軍の艦艇が入ったと発表した。
 海軍の艦艇が接続水域を航行するのは初めてのこと。

 政府によると、9日午前0時50分頃、尖閣諸島久場島北東の接続水域に中国海軍の艦艇「ジャンカイ1」級フリゲート艦、1隻が入った。艦艇はすでに接続水域を出ていて、日本の領海への侵入はなかったという。

 安倍首相は
 「不測の事態に備え、関係省庁が緊密に連携して対処すること」
など3点の指示を出した。

 また、外務省の斎木事務次官は、中国の程永華・駐日大使を外務省に呼び、抗議した。政府関係者によると、
 中国海軍の艦艇が接続水域を航行するのは初めてという。

 一方、アメリカの国防総省はNNNの取材に対し、「艦艇は国際水域を航行したもので、特にコメントはない」としている。



サーチナニュース 2016-06-09 11:55
http://news.searchina.net/id/1611679?page=1

中国軍艦が尖閣の接続水域に侵入、
「正当な行為」と主張する中国メディアも

 防衛省は9日、中国海軍の艦艇が尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺の接続水域に侵入したことを確認したと発表した。
 発表によれば、中国海軍の艦艇が日本の接続水域に侵入したのは9日午前0時50分ごろで、9日午前3時10分ごろに日本の接続水域から出域した。
 中国海軍の艦艇は出域した後に北に向けて航行したという。
 なおロシア海軍の軍艦艇も同日同時刻に侵入し、出域している。

 中国海軍による侵入に対し、外務省は、「齋木昭隆外務事務次官が9日午前2時ごろに程永華(てい・えいか)駐日中国大使を外務省に召致し、重大な懸念を表明して抗議した」と発表。
 さらに日本の接続水域から「直ちに出域するよう」求めたと発表した。

 中国海軍の艦艇が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した意図は現時点で不明で、中国外交部や中国国防部などの公式サイトにおいても、9日午前11時時点で当件に対する公式な見解等は掲載されていない状況だ。

 また、中国の各メディアは日本国内の報道を引用、紹介するにとどまっている。
 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)は9日、日本国内の報道を引用して伝えつつも、中国外交部の従来からの見解として「釣魚島は中国固有の領土である」と主張。

 さらに、「釣魚島の主権が中国にあることには、歴史的、法的な根拠がある」としたうえで、中国海軍の艦艇が尖閣諸島周辺を航行するのは「正当な行為」であるとの見方を示した。



読売新聞 6月10日(金)7時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160609-00050169-yom-pol

午前2時、即座の抗議…政府が中国大使呼び出



 中国軍艦が9日、沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内に初めて進入したことについて、政府は未明に駐日大使を呼び出し、抗議するなど異例の対応で中国に自制を求めた。

 政府は尖閣諸島の領有権を主張する中国がさらに行動を活発化させる可能性があるとみて、米国などと連携して対応する考えだ。

 「私が夜中に呼ぶのは初めてだが、それだけ重大な事態だと思っているからだ。
 そのことを認識してほしい」

 斎木昭隆外務次官は、中国軍艦が接続水域に入ってから1時間余りの9日午前2時、中国の程永華(チョンヨンフア)駐日大使を外務省に呼び、強く抗議した。
 未明の呼び出しは、進入が偶発的な衝突につながりかねないと懸念したためだ。程氏は「エスカレートは望んでいない。北京に伝える」などと応じたという。

最終更新:6月10日(金)7時33分



2016年06月10日 12時06分 勝股秀通 日本大学危機管理学部教授 
http://www.yomiuri.co.jp/matome/archive/20160610-OYT8T50016.html

中国艦、尖閣接続水域へ
…上がる「現状変更」のステージ

 政府は9日、中国軍艦1隻が同日午前0時50分頃から約2時間20分間、沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内を航行したと発表した。
中国軍艦が尖閣周辺の接続水域内に入ったことが確認されたのは初めてだ。
中国はなぜ、このタイミングで行動に出たのか。
防衛問題や安全保障に詳しい日本大学の勝股秀通教授に分析してもらった。

■ロシアは借りを返した?

 「緊張を一方的に高める行為であり、深刻に懸念している」――。
  中谷防衛相は9日、中国海軍のフリゲート艦が沖縄・尖閣諸島の接続水域内に入ったことに対し、中国を厳しく非難した。
 前任の小野寺防衛相時代から、何度同じような言葉が発せられただろうか。

 政府は中国海軍の意図などについて詳しい分析を進めている。
 今回の中国海軍の行動について、現時点では二つの推測が成り立つだろう。
 その一つは、6月3日から5日にかけて、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(英国・国際戦略研究所主催)におけるカーター米国防長官と中国の孫建国・統合参謀部副参謀長とのやり取りが伏線になったという見方だ。

 人工島建設など南シナ海問題で、「自らを孤立させる『万里の長城』を築くことになりかねない」と警告したカーター米国防長官。
 すぐさま孫副参謀長が「中国は孤立していない」と大声で言い返した。
 米中対立を鮮明にした場面だ。その言葉を証明するかのように、ロシアの軍艦と歩調を合わせながら尖閣諸島の接続水域内を航行したと考えても不思議ではない。

 周辺国だけでなく国際社会からも中国への非難が集中している南シナ海においては、いくら一緒に行動してくれと頼んでも、ロシアも首を縦には振らないだろう。
 しかし、日中が対立する東シナ海であれば、各国の関心は低い。
 まして接続水域内の航行は国際法で認められた行為であり、ロシアが中国の頼みを受け入れたという見方もできる。

 なぜなら、中露両国は2012年以降、毎年のように日本海や東シナ海で海軍による合同演習を行っている。
 しかし、昨年は突然、中国にとっては縁遠い地中海で実施した。
 これは、ロシアがウクライナ情勢で対立するNATO(北大西洋条約機構)加盟国をけん制するためだったといわれる。
 ロシアは地中海の借りを東シナ海で、中国に返したのかもしれない。

 もう一つは、尖閣諸島の南方海上で警戒監視中の海上自衛隊の護衛艦が、北上する3隻のロシア艦隊を発見、追尾している途中で、尖閣諸島の北方海上に展開する中国艦隊がそれに気づき、1隻のフリゲート艦を接続水域内に差し向けたという見方だ。
 「ここは中国の海だから、ロシア艦隊を監視せよ」という命令が出てもおかしくはない。
 フリゲート艦と所属する艦隊司令部などとの交信内容が公表されることはないので、今後も臆測の域を出ないが、フリゲート艦の単独行動というレベルではないことだけは確かだろう。

■いずれ領海内にも侵入してくる可能性が高い

 だが、国際法上問題がないとはいえ、軍艦は偶発的なトラブルを避けるためにも、他国の接続水域内を航行することを避けるのが一般的であり信義だ。
 ロシア海軍の行動も極めて遺憾だが、今回の中国の行動は極めて意図的で、力による現状変更のステージを1段階引き上げたと認識しなければならない。
 同時に、中国海軍の行動エリアが、次第に尖閣諸島に近づいているという事実を認識しなければならない。

 尖閣諸島をめぐっては、12年9月、日本政府が島の一部を国有地化した。
 中国はその“報復”として、海警局など治安機関に所属する公船を領海内に侵入させ、既成事実を積み上げてきた。
 この間、海警局の航空機が尖閣諸島の領空を侵犯し、海軍艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射するなどの挑発行為を繰り返してきた。

 中国海軍も、当初は尖閣諸島の北方100キロ以上離れた海域に展開し、その周辺海域で警戒行動を続けていた。
 変化が表れたのは、東シナ海に防空識別圏を設定した13年末以降だ。
 海上自衛隊幹部によると、展開する隻数が常に4隻や5隻に増え、次第に航空機などと連動した海空軍の共同訓練なども実施、活動海域は広がった。
 現在は、尖閣諸島の接続水域まで10キロ程度の海域にまで近づいてくることも珍しくないという。

 それでも中国海軍は、尖閣諸島の領海はもとより、接続水域に入ることだけは避けてきた。
 接続水域は、沿岸国の主権が及ぶ領海(12カイリ=約22キロ)の外側に隣接する幅12カイリの海域を指す。
 国際法上は公海の扱いだが、犯罪の取り締まりなど、沿岸国には一定の権限行使が認められている。事態がエスカレートする危険があるからだ。

 東シナ海に展開する艦隊とは別に、中国海軍の艦艇はこの2、3年、台湾東方海域を北上し、日本最西端の与那国島と台湾との間を航行して東シナ海に入ってくることが多いという。
 海上自衛隊幹部は
 「地図を見れば明らかだが、そのまま直行すれば尖閣諸島に近づいてしまうため、中国海軍は西寄りに針路を変え、尖閣から離れて航行していた」
と説明する。

 だが、過去の中国の行動パターンを当てはめれば、今回の行動を機に、中国海軍は今後、接続水域内の航行を何度も繰り返し、既成事実を積み重ねることで、いずれ領海内にも侵入してくる可能性が高いだろう。

 政府は現在、中国海軍の軍艦が尖閣諸島の領海に侵入した場合には、自衛隊に海上警備行動を発令し、護衛艦を派遣して速やかな退去を促す方針だ。
 だが、海上警備行動は「警察官職務執行法」の範囲内の活動だ。
 国内の治安維持を目的とする「警察権」は、外国の軍艦や公船には適用できない。
 海上警備行動が発令されたとしても、ほとんど何もできないのだ。
 中国が接続水域内での航行を既成事実化する前に、その後に想定される中国海軍の領海侵入に対してどのような効果的な手立てがあるのか、政府は米国とも連携しながら早急に知恵を絞る必要がある。


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年06月10日(Fri)  小泉悠 (財団法人未来工学研究所客員研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7008

尖閣諸島接続水域に中露艦艇が初めて進入 
中国がロシアを利用したのか
ロシアの視点から考える

 2016年6月8日から9日にかけて、尖閣諸島周辺の接続水域にロシア及び中国の艦艇が相次いで進入した。
 これまでも中国は接続水域内に国家海警局(沿岸警備隊)の巡視船を恒常的に進入させてきたが、軍艦はこれが初めてである。
 一方、
 ロシア海軍について、防衛省は「過去にも例がある」としており、接続水域内に軍艦を進入させたのはこれが初めてというわけではないようだ(後述)。

 これに対して日本政府は、安倍首相を議長とする国家安全保障会議を開催するなど極めて緊迫した反応を見せ、日本のマスコミでも大きく取り上げられた。
 どちらかというと、これはロシアというより中国の行動に対する反応であったと見られる。

 そもそも接続水域とは領海の外側12カイリの水域であり、国家の領域ではないが関税や出入国管理などの管轄権は及ぶとされる。
 軍艦の航行については、無害航行が認められているため、本来はロシアや中国の軍艦がこの海域を通過することには法的問題はない。

 だが、中国は尖閣諸島を自国領であると主張して日本政府と対立し、日本側の抗議にもかかわらず、巡視船その他の公船を恒常的にこの海域に進入させ続けてきた。
 こうした経緯があるために、今回の中国艦進入には大きなインパクトがあったのだろう。
 一方、ロシアは尖閣問題に関しては中立を維持しており、日本政府ともこの点では対立していないため、軍艦が通るといってもその意味するところはかなり異なる。

 日本の外務省が午前2時に中国大使を呼びつけて抗議を行うという強硬な姿勢に出たのに対し、ロシアに対しては「外交ルートを通じた注意喚起」(菅官房長官談話)に留めたのも、こうした経緯の違いが大きく影響していたと言える。

■最初に進入したのはロシア艦

 では、今回の事態はどのようにして生じたのだろうか。

 時系列で見ると、接続水域に最初に進入したのはロシア艦である。
 これは今年3月にウラジオストクを出港し、東南アジアでの国際対テロ演習に参加した太平洋艦隊の駆逐艦アドミラル・ヴィノグラートフ以下3隻の艦艇グループと見られる。
 報道によると、ヴィノグラートフ以下の艦艇は8日午後9時50分ごろに久場島と大正島の間の接続水域に南側から進入した。
 一方、中国艦はその3時間後にあたる9日0時50分ごろに北側から同接続水域に進入している。

 中露艦艇が接続水域を出たのはほぼ同時で、9日午前3時5-10分ごろ。
 ともに接続水域を北側へと抜けている。
 したがって、ロシア艦がそのまま北への進路を維持したのに対し、北から進入してきた中国艦は接続水域内でUターンして再び北へ抜けたことになる。

 以上を見るに、ロシア艦に政治的意図があったかどうかは今ひとつ判断しがたい。
 ロシア艦が日常的に接続水域を通過しているのであれば特に政治的な意図はなく母港への最短ルートを取ったということになろうが、我が国の統合幕僚監部は南西諸島付近におけるロシア艦の通過状況をほとんど明らかにしていない。
 そこで筆者が独自に関係筋へ確認してみたところ、
 ロシア艦はこれまでにも東南アジア方面との往復で同じようなルートをたびたび通過している
とのことだった。

 一方、昨年11月には、太平洋艦隊の巡洋艦ワリャーグがインド洋で演習を実施した帰路に南西諸島付近を通過し、「数日間に渉る往復航行、錨泊」を行ったほか「一部我が国接続水域内での航行」があったことを統合幕僚監部が発表している(統合幕僚監部が南西諸島におけるロシア艦の活動を公表したのは、確認できた範囲ではこれが唯一)。
 つまり、ロシアは最近になって単なる通過とは異なる動きも見せていたわけで、これも判断を難しくする要因であろう。

■中国がロシアを利用したのか

 もうひとつの問題は、仮に何らかの政治的意図があったとして、それは何かということである。
 この場合、領土問題を巡って日露関係が大きく動き出しそうな中で、ロシアが対日牽制に出たという見方がまず考えられよう。
 ロシアの対外政策において、対話と軍事的牽制を組み合わせるというパターンは一般的に見られるものであり、実際に北方領土や千島列島では軍事施設近代化の動きなどが進んでいる
(ただし、これらについても一般的な軍事力整備を対日牽制策としてプレイアップしている側面もあり、一概に全てを「対日」で捉えられるものでもない)。

 しかし、これまでロシアが展開してきた牽制策はあくまでロシア単独のものである。
 中国はこれまでにも、台湾海峡問題や尖閣問題に関してロシアを自国側に引き込もうとしてきたものの、ロシアは極力中立を維持しようとしてきた。
 領土問題で中国側に立ったところでロシアのメリットは薄く、むしろ日米との対立に巻き込まれるというコストが極めて大きいためである。

 では、今回、中露の艦艇が同じ時間帯に同じ接続水域を航行したことをどう捉えるべきか。
 中露が連携して今回の行動に出たのであれば、ロシアの対日牽制は新たなフェーズに入ったことになり、今後の領土交渉にも極めて不利に働くことが予想される。
 しかし、現状ではその可能性はあまり高くなさそうだ。

 すでに述べたように、中国艦はロシア艦の接続水域進入後に北から進入し、ロシア艦とほぼ同時に水域を出ている。
 この動きを見るに、中国は事態の推移を見て後追いで行動を決定したのではないか。

 だが、これまで軍艦の接続水域進入を手控えてきた中国が初めて軍艦の侵入に踏み切った理由は何か。
 これについても真相はいまだはっきりしないが、やはりいくつかの可能性が考えられる。

★.第1に、ロシア艦の接続水域進入を見た現場の艦長が独断で決めた可能性がある。
 中国側にしてみれば尖閣は自国領であり、ロシア艦またはこれを追尾している海自艦船が接続水域を通ることは認められないとしてこうした決断を下したのではないかという見方である。
 ただし、ロシア艦が平素からこの海域を通っているのだとすると、今回に限って軍艦が出てきた理由がはっきりしない。
 また、このような政治的影響力の大きな決断を現場の艦長が勝手に下せるのかという問題もある。

★.第2の可能性としては、中国側がロシアを利用したという考え方も成り立つ。
 ロシア艦の通過に便乗し、中露が尖閣諸島問題で共同歩調を取ったかのように中国が見せかけた、というのがこの種の見方で、たしかに一定の説得力はあろう。
 ただ、この場合、利用される格好のロシアとの関係性を中国側がどう計算したか、という疑問は残る。

 一方、日本政府は今回の事案を中露で別個に取り扱い、中露vs日本という構図で捉えられることを極力避けようとしているようであり、この意味では2つ目の可能性が強く懸念されているのではないかと思われる。



Record china 配信日時:2016年6月12日(日) 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/a141122.html

領有権主張、南シナ海けん制の“一石二鳥”狙う?
中国軍艦,尖閣接続水域を初航行、
日中対立、新たな局面に

 2016年6月11日、東シナ海の沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)諸島の接続水域に9日未明、初めて進入した中国海軍の軍艦。
 これは、尖閣をめぐる日中対立が新たな局面に入ったことを意味する。
 中国側には尖閣の領有権主張に加え、南シナ海問題で対中包囲網を敷く日本や米国をけん制しようという“一石二鳥”の狙いもあるとみられる。 

 国連海洋法条約では、自国の沿岸から12カイリ(約22キロ)までを領海、24カイリ(約44キロ)までを接続水域と定めている。
 接続水域内では沿岸国に通関、財政、出入国管理、衛生などの規制が認められているが、本質的には公海とされ、外国軍艦が入っても国際法上の問題はない。

 海上保安庁によると、中国海警局公船の尖閣領海侵犯は今年になってから8日までに15回を数える。
 日本の実効支配に対抗して領有権の既成事実化を図るためだ。
 当初、漁船だったが領海侵犯は公船にエスカレートした。

 今回、中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦は接続水域にとどまったが、そのまま進めば領海にまで入りかねなかった。
 その場合、監視中だった海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」などが領海侵入を阻止する「海上警備行動」を取る可能性もあった。

 外務省の斎木昭隆事務次官が中国の程永華(チョン・ヨンホア)駐日大使を同省に呼び、重大な懸念を伝えて抗議するとともに中国軍艦が接続水域を出るよう求めたのは、進入確認から約1時間後の9日午前2時ごろ。
  日本政府の異例の対応は、中国艦の行動に対し、強い危機感を抱いたためだ。

 菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で
 「緊張を一方的に高める行為で深刻に懸念している。
 領土、領海、領空は断固として守り抜く強い意志のもと、毅然(きぜん)と冷静に対応する」
と強調。
 領海侵犯すれば海上警備行動を発令したかについては
 「その時々の事態で判断する。
 一概に答えるべきでない」
と述べた。
 さらに9日夜には、安倍晋三首相を中心に「国家安全保障会議」(NSC)を開催。
 これまでの情報分析などの報告を受けるとともに、不足の事態に備え、米国とも連携して警戒・監視に万全を期すことを確認した。

 中国艦の動きと合わせ、8日夜から9日未明にかけ、ロシアの軍艦3隻が接続水域を南から北へ抜けていくのも確認された。
 ロシア艦がこの接続水域を航行するのは初めてではないものの、防衛省は中国艦の動きとタイミングが重なったことから、関連性を分析している。

 中国共産党系の環球時報によると、中国国防部は9日、進入に関する見解を発表。
 この中で
 「釣魚島と付属島しょは中国固有の領土だ。
 中国の軍艦が自国の管轄海域を航行することは合法であり、他国がとやかくいう権利はない」
などと日本側の抗議を一蹴した。

 中国は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や6月初めのアジア安全保障会議などの国際舞台で、日本が米国と並んで南シナ海問題を主導的に取り上げることに強く反発している。
 東シナ海では7日にも、中国戦闘機が米軍の偵察機の飛行を妨害した。
 9日の進入劇は東シナ海でも、あえて緊張を高め、南シナ海同様に領有権の主張は譲らないとする中国の強硬姿勢が見て取れそうだ。


ダイヤモンドオンライン 田岡俊次 [軍事ジャーナリスト] 2016年6月16日
http://diamond.jp/articles/-/93104

中国軍艦の接続水域航行への抗議
自分の首を絞める行為

 今月9日未明、中国軍艦が尖閣諸島付近の接続水域に入ったことに対し、日本政府は午前2時に中国大使を外務省に呼び抗議するなど激しい反応を示した。

 だが領海の外側に設けられる接続水域は公海であって、どの国の軍艦も自由に航行できる。
 日本政府の対応はまるで自宅の前の公道を他人が通行したのに怒って、深夜にどなり込むクレーマーじみた行動だ。
 もしこれが先例となれば、日本の艦船が他国の接続水域を通ることを妨げられても文句は言えなくなる。
 政府要人もメディアも海洋法条約に関する知識を欠き、それを知っているはずの外務官僚は政治家に諫言せず、胡麻すりで保身をはかるから、こうした騒ぎになるのだろう。


 接続水域(Contiguous Zone)は元は1920年に禁酒法を制定した米国が酒類の密輸入を防ぐために設けたものだ。
 当時の慣習的国際法では領海は3海里(5.5km)だったから、当時英国自治領だったカナダなどから酒を積んだ船が来て、海上では目と鼻の先の3海里沖に投錨し、買い手の小船を待っていても米国沿岸警備隊は手を出せない。
 そこで海岸線から12海里(22km)を「接続水域」と宣言し、密輸の取り締まりを行うことにした。
 だが領海外で警察権を行使することは本来できないから、例外的措置として英国など関係国の了承を得て行った。

 英国、日本などの「海洋国」にとっては航海や漁業を自由に行えることが望ましいから、18世紀の大砲の最大射程を根拠とした領海3海里の慣行が保たれたが、そうでない「沿岸国」にとっては他国の漁船が沿岸に来て乱獲したり、軍艦が目の前の海で我が物顔に振る舞うのは不利、不愉快だから領海を拡大したり海上の管轄権を求めようとし、第2次世界大戦前から論争が起きていた。

 この戦争で海洋の覇者となった米国は大海軍国ではあっても漁業、海運など民間の海上活動はさほど振るわず「沿岸国」に近いから、終戦直後の1945年9月にメキシコ湾の海底油田を開発するため、一方的に領海幅を3海里から12海里に拡大し、米国領土から海底にのびる「大陸棚」の管轄権を宣言した。

 また1976年には日本、ソ連などの漁船団のアラスカ沖での操業を防ぐため200海里(370km)の漁業専管水域を設定した。

 海洋の支配者である米国がこんな模範を示したから、多くの沿岸国は「得たりやおう」とそれに続いた。
 英国と日本は3海里の原則を守ろうとしたが多勢に無勢で1982年に作られた国連海洋法条約で、領海は12海里と定められ、さらにその外側12海里が「接続水域」となり、また海岸から200海里の「排他的経済水域」も認められた。

■中国軍艦の行動に抗議する法的根拠はなかった

 この条約は米国が行ってきたことを追認するものだが、米国の石油業界はそれにも難色を示し、米国は署名しなかった。
 米国は中国の南シナ海での人工島造成などを「国際法違反」と非難するが、自国は海洋法条約に加わっていないのだから変な話だ(日本では「米国議会が批准を認めなかった」との記述も散見されるが、米政府が署名を拒否した)。

 この条約第33条の「接続水域」の規程は、元来の目的が酒の密輸防止だから、沿岸国は「自国の領土又は領海内における通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令の違反を防止すること」および自国の領土又は領海内で行われた「法令の違反を処罰すること」ができる、としている。

 日本の接続水域を航行する外国の民間船舶が密輸をはかったり、密航者を運んだり、重大な感染症患者を乗せて日本に向かっている疑いがある場合には停船させて調べることができるが、軍艦に対してはたとえ領海内であっても沿岸国の管轄権は及ばない。

 まして今回のケースでは接続水域に入った中国東海艦隊所属のフリゲート「馬鞍山」(3963t)は領海外の公海で行動していたから、どこをどう走ろうが自由であり、日本に向かって密輸品を運んだり、密航者や伝染病患者を日本に連れて来るような状況ではなかったから、接続水域に入った、として抗議する法的根拠はなかった。

 このとき最初に尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは南シナ海での東南アジア諸国連合(ASEAN)の海軍共同演習と5ヵ国の親善訪問を終えてウラジオストクに戻る途中のロシアの大型駆逐艦ヴィノグラードフ(8500t)と給油艦、航洋曳船各1隻で、8日午後9時50分頃、南から来て魚釣島南東で接続水域に入り北東に進んで9日午前3時5分に大正島北方で接続水域を出た。
 これに対しては護衛艦「はたかぜ」(5900t)が追尾して監視に当たった。

 一方、中国のフリゲート「馬鞍山」は北から南下して来て、9日0時50分頃久場島の北方で接続水域に入り、大きく左にUターンしてロシア艦に接近、併走したが、ロシア艦が接続水域から出ると、3時10分に接続水域から出て去った。
 これには護衛艦「せとぎり」(4950t)が付いて監視した。

 この「馬鞍山」の動きを見ると、中国海軍は無線傍受か何かの偵察手段により「ヴィノグラードフ」などのロシア艦3隻と日本の護衛艦が尖閣諸島付近で行動していることを知り、様子を見るため「馬鞍山」を接近させたが、特に異常はないため反転して尖閣水域を離れたもの、と考えられる。
 ロシア艦が特に速度を落として中国艦と待ち合わせたような様子はなかった。

 ロシア軍艦がウラジオストクと東南アジアを往復する際には、フィリピンの北のバシー海峡と対馬海峡を結ぶ最短距離であるこのコースを取ることはよくあり、接続水域も公海であって外国の艦船が通ることは自由だから、今回もロシアに対しては抗議はしなかった。

■真夜中にどなり込むクレーマーじみた行動

 ところが、中国軍艦が初めて接続水域に入ったことで日本政府は緊張し深夜に「国家安全保障会議」を開いて対応を協議し、外務省の斎木昭隆事務次官は9日午前2時に程永華駐日中国大使を外務省に招いて「一方的に緊張を高める行為だ」と抗議して同水域から直ちに出るように求めた。

 「中国は尖閣諸島の領有権を主張しているから、中国軍艦が接続水域を航行することは緊張を高める行為」という説明だが、どの国が領有していようと接続水域に沿岸国の主権は及ばず、密輸の防止など極めて限定的な目的で管理を許されるだけだから、領有権と接続水域内の航行はほとんど関係がない。
 まるで自宅前の公道を不仲の人が通ったことに怒り、真夜中にどなり込むクレーマーじみた行動だ。

 実はすべての外国艦船が領海内を通ることも国際法で認められており、海洋法条約の第17条から第32条にかけて「無害通航」の規程がある。
 ただし外国の艦船が、武力による威嚇や武力行使、兵器を用いた訓練、沿岸国の安全を害するような情報収集、宣伝、調査活動、測量、漁業、通信妨害などを領海内で行うことは禁じられている。

 また潜水艦は他国領海を通る際には浮上し旗を揚げなければならないし、外国艦船は沿岸国の海上交通の安全のための法令などに従う必要がある。

 「無害航行」が軍艦にも認められるか否かの論議も一部にあるが、この条約の第30条に、軍艦が領海での通航に関する沿岸国の法令を守らず、順守の要請も無視した場合には直ちに退去することを要求できる、など軍艦の通航を前提にした条文があるから、軍艦にも無害通航は認められるという説が有力だ。
 だが国によっては軍艦の領海通航には事前の通知や許可を求めている例もある。

 軍艦は他国の領海内でも沿岸国の管轄権を免除され、「無害航行」と認められない行動をした場合でも直ちに退去を求められるだけだ。

15日午前3時半ごろから約1時間半、中国の情報収集艦と見られる船が鹿児島県の口永良部島と屋久島沖の日本領海を通った。
 当時、日、米、インドが沖縄東方海域で共同訓練中で、中国艦はインド艦を追尾して日本領海に入りこんだ様子だ。

★.軍艦も他国の領海を「無害通航」する権利があるが、その際に「沿岸国の防衛又は安全を害することとなる情報収集を目的とする行為」は海洋法条約19条2のCで禁じられている。
 日本が加わっている共同演習の情報を収集するのはこれに該当する可能性が高く、
 こちらに関しては抗議するのが妥当だろう。

だが、領海外の接続水域で、その趣旨に反する密輸などの行為をしていない外国軍艦に対し「直ちに退去」を求めた9日の事案は、海洋法条約に照らして行き過ぎた行為と考える。

■日本の艦船が将来、同じ憂き目に合う可能性も

 日本政府がこうした行動を取ったことは、他国が将来日本の艦船に対して同じことをしても抗弁できない状況を生むことになる。
 接続水域も排他的経済水域も、沿岸国の主権下になく、ごく限定的な管理権を認められた公海だから、もし他国が日本の艦艇や漁船、商船の航行を妨害しようとし「緊張を高めるから直ちに退去せよ」と要求した場合、こちらは「法的根拠が無いではないか」と抗議すべきだ。
 だが「以前貴国もそうした例がある」と言い返えされれば苦しい立場になる。

 日本船籍の商船は減ったとは言え、日本の船会社の支配下にある便宜置籍船を主とする「用船」を含むと日本の外航商船隊は2500隻以上、1億2000万tを擁し、日本はなお有数の海運国だ。海運による輸入量は8億t、輸出は1.6億tで日本の経済だけでなく、国民の生存が海運にかかっている。
 漁獲高は近年減ったがなお370万tで世界8位、造船は2014年の竣工量が1300万tで第3位だ。

 海洋国である日本にとっては航海の自由が決定的に大事な国益で、公海が広い程好都合だから、英国と共に古来の領海3海里に固執した。
 だが、その抵抗は空しく、領海幅は拡がり、全ての沿岸国が接続水域と排他的経済水域を設けることになった。
 大陸棚の定義も拡大され、海洋権益の分け取りが進み、一部の沿岸国は接続水域や排他的経済水域を領海視する動きも見せる。
 「この形勢では、今世紀中に公海は無くなるのでは」との声も出る。
 今回日本政府も接続水域を領海同様に扱って、外国軍艦に「直ちに退去せよ」と要求したのは、その傾向を助長する先例になる。

 外務官僚たちは接続水域が領海ではないことは十分承知していたろうから、海洋法を知らない政治家が緊張し、興奮しても
 「そこを通るのは合法です。
 抗議をする法的根拠はありません」
と諫言し「航海の自由」という重大な国益保持に努めた方が、外務省の存在価値を高めただろう。

 だが、中央省庁の幹部人事は2014年から内閣人事局が管理し、首相官邸が人事を主導することになったため、官僚は保身、出世第一で権力者に取り入ろうとするから歯止めの役には立たない。
 戦前に国際連盟脱退や、独伊との同盟を推進した外務官僚、「天皇機関説」の排撃に努めた文部官僚たちもこういう心理状況にあったのか、と分かった気がする。

 この接続水域航行への抗議は自民党の選挙政策で行われた意図的行動とみる方がわかりやすい。
 このことによって、どう日本の動きを縛ってしまうかについては、そうもありえると思える。
 
 




【資料】

日本経済新聞 2016/6/12 12:10
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK12H0H_S6A610C1000000/

参院選の議席目標「与党で改選過半数の61」 自民・茂木氏 

 与野党各党の幹部は12日午前のNHK番組で、22日公示―7月10日投開票の参院選に向けて論戦を展開した。

 自民党の茂木敏充選挙対策委員長は獲得議席の目標について
 「国民の信を問う観点から、与党で改選過半数の61だ」
と強調した。
 民進党の玄葉光一郎選対委員長は具体的な議席数を示さず
 「(次の参院選がある)3年後に自公の過半数割れを起こせるような踏み台になる議席をとりたい」
と述べた。

 一方、共産党の小池晃書記局長は「自公とその補完勢力を少数に追い込むのが野党の共通目標だ」と指摘し、野党による改選過半数の獲得に意欲をみせた。
 民進、共産、社民、生活の野党4党は32ある定数1の「1人区」に野党統一候補を擁立している。

 茂木氏は野党の候補者一本化に関して「国民からみて選挙目当てだと受け止められても仕方ない」と批判した。
 玄葉氏は「巨大与党に対する一つの政治の技術として有効だ」と反論。
 社民党の又市征治幹事長は「国民が多く求めている問題については一致している」と同調した。

 参院選での憲法改正の位置づけについて、公明党の斉藤鉄夫選対委員長は
 「争点ではない。国会で案を示す段階に来ていない」
と述べた。
 おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は
 「教育無償化が未来永劫(えいごう)続くように憲法改正を訴えていきたい」
と語った。



フジテレビ系(FNN) 6月15日(水)12時47分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160615-00000687-fnn-pol

中国海軍の情報収集艦、
日本の領海を航行 政府発表



  政府は、中国海軍の情報収集艦が、日本の領海を航行したことを確認したと発表した。
  中国海軍は9日に、尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したばかりだった。
 世耕官房副長官は、
 「6月15日午前3時30分ごろ、海上自衛隊のP-3Cが、鹿児島県の口永良部島西のわが国領海を南東に進む中国海軍、ドンディアオ級情報収集艦1隻を確認をいたしました」
と述べた。
 防衛省などによると、15日午前3時半ごろ、海上自衛隊のP-3Cが、鹿児島・口永良部島の西の領海を、南東方向に航行する情報収集艦1隻を確認した。
 そのあと、午前5時ごろ、この船は、屋久島南から領海を出て、南東方向に進んだという。
 中国海軍は9日に、尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したばかりで、外務省のアジア大洋州局長は、中国側に対して、こうした中国側の一連の動きに対し、懸念を申し入れた。

  これで参議院選挙の自民党の勝利が確定したとみていいだろう。


毎日新聞 6月15日(水)12時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160615-00000047-mai-int

<中国海軍>日本領海を航行 
口永良部島周辺


●口永良部島の位置

 防衛省は15日、中国海軍の情報収集艦1隻が同日午前3時半ごろ、鹿児島県屋久島町の口永良部島西の日本領海を航行しているのを確認したと発表した。
 外務省は同日、在日中国大使館に対し、中国軍の活動全般に関する懸念を伝えた。

 防衛省によると、日米印3カ国の海上共同訓練に参加しているインド海軍艦船2隻が付近を航行したところ、中国艦船が同じルートで領海に入ったという。
 中国艦船は南東に航行し、午前5時ごろ、屋久島の南側から領海を出た。

 9日にも中国海軍の艦船が沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に入ったばかり。政府は、今回のケースが日本の安全や秩序を乱さない無害通航に当たるかどうかを確認している。
 海上警備行動は発令していない。【



読売新聞 6月17日(金)7時16分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160617-00050010-yom-pol

中国側に反論
「自由に航行できる海峡ではない」

 日本政府は16日、中国軍艦が鹿児島県沖の領海に侵入した問題を巡る中国政府の説明について、「受け入れられない」と申し入れた。

 中国国防省は15日、中国軍艦が航行した
 トカラ海峡は「国際航行に使われている海峡」で、自由な航行が認められている
どと主張。
 これに対し、日本政府は
 「自由に航行できる国際海峡には当たらない」
と反論した。

 申し入れは在中国日本大使館の公使が中国外務省の担当者に行った。
 日本政府は、屋久島や奄美群島付近のトカラ海峡は国際的な船舶の航行がほとんどなく、国連海洋法条約で定める「国際海峡」には該当しないとしている。



ニューズウィーク [嘉手納町(沖縄県) 15日 ロイター] 2016年6月16日(木)10時25分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/post-5335.php

中国艦、領海侵入した日に日米印の共同軍事訓練で米空母を追尾

  中国の軍艦が日本領海に侵入した15日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。
 3カ国は対潜水艦戦などの訓練など通じ、海洋進出を強める中国をけん制しようとしているが、中国は情報収集艦を派遣して米空母を追尾した。

■<南シナ海から後を追う>

 共同演習は10日に開始、15日に報道陣に公開された。熱帯の蒸し暑い洋上に浮かぶ米原子力空母、ジョン・C・ステニスから、F18戦闘機が次々と離陸。
 敵味方に分かれ、対空戦の訓練を行った。
 敵の戦闘機や巡航ミサイル役となったF18を、もう一方の戦闘機群と米艦が警戒、探知し、海上自衛隊、インド海軍と連携しながら対処した。

 しかし、ステニスの周囲に米軍艦、海自の護衛艦、インド軍艦の姿は見当たらない。
 電波や通信を拾う中国の情報収集艦から追尾されているため、ステニスは訓練に参加する他の艦艇から距離を取っているのだという。
 「中国の船がここから7─10マイル離れたところにいる。
 南シナ海からずっと(空母を)追いかけてきている」
と、ステニスのハフマン艦長は記者団に語った。

 この日は、未明に中国軍艦が鹿児島県口永良部島沖の日本領海に侵入。
 この船も情報収集艦で、日本政府は中国の意図の分析を急いでいる。関係者によると、佐世保港からマラバール訓練海域に向かうインド艦艇を追尾していたとみられる。

■<フィリピンに立ち寄ったインド海軍>

 日、米、インドがマラバールを実施するのは3年連続。
 前回は昨年10月にインド洋に接するベンガル湾で行った。
 今回は2年ぶりに日本近海、しかも沖縄本島の東方沖という、中国軍が西太平洋に出るのをふさぐような海域で実施している。  

 マラバールはもともと米、インド海軍の2国間訓練だった。
 中国との経済関係が揺らぐことを懸念したインドは、日本を含めた3カ国の演習に拡大することに乗り気ではなかったが、中国が中東への海上交通路(シーレーン)確保にインド洋への進出を強めると、3カ国は急速に距離を縮め始めた。

 インドは今回の訓練に、フリーゲート艦など4隻を派遣。
 南シナ海で領有権をめぐって中国と争うベトナムのカムラン港、フィリピンのスービック港に立ち寄っている。
 「南シナ海は中国の海ではない、インドは中国と係争するフィリピンやベトナムとも友好関係にある、というメッセージだろう」
と、日本の防衛研究所アジア・アフリカ室長の伊豆山真理氏は言う。

■<中国の潜水艦を警戒>

 日、米、インドが特に警戒しているのが、中国の潜水艦の動き。
 2006年10月、沖縄付近で中国のソン級潜水艦が米空母キティホークのすぐ近くに浮上。
 10年4月にはキロ級潜水艦が沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋に進出した。

 インド洋でも13年ごろから中国潜水艦が動きを活発化させており、14年9月には沿岸国のスリランカのコロンボ港に寄港してインドをいらだたせた。
 いずれ核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が、南シナ海や西太平洋、インド洋を自由に動きまわることを3カ国は恐れている。

 今回の訓練でも、潜水艦を探知して追尾する対潜水艦戦に力を入れている。
 米海軍は最新の哨戒機と原子力潜水艦を、海上自衛隊は対潜能力を備えたヘリコプター空母と哨戒機を投入。
 インドも対潜ヘリコプターを参加させた。

 自衛隊の幹部は
 「マラバールは単なる親善訓練ではなく、実際の戦術、技量を向上させるためのもの。
 これを見た中国は、作戦や戦術を見直す必要があると考えるだろう」
と話している。

(久保信博 編集:田巻一彦)
 中国艦や潜水艦がちらつくというのは、いい模擬訓練になるのでははないだろうか。
 

TBS系(JNN) 6月17日(金)16時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160617-00000083-jnn-pol

【政治クリップ】相次ぐ中国軍艦の動き、日本政府の反応は



 今月に入って相次いだ中国軍艦による日本の接続水域や領海での航行について、国会記者会館から政治部・樋口記者の報告です。(17日16:21)






【2016 異態の国家:明日への展望】


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