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朝鮮日報日本語版 6月24日(金)8時14分配信
東南アジアの「盟主」インドネシア、
南シナ海紛争に加勢
インドネシアのジョコ大統領は23日、南シナ海のナトゥナ諸島を急きょ訪問した。
今回の訪問は中国外務省がナトゥナ諸島周辺海域について、「両国の海洋権益が重なる」と主張してから4日後のことだ。
2014年に就任したジョコ大統領がナトゥナ諸島を訪れるのは初めてで、南シナ海での領有権紛争でこれまで後手に回っていたインドネシアが紛争の前面に出てきたと受け止められている。
インドネシアは人口2億5000万人を抱える大国で、東南アジアの「盟主」の役割を担う国で、中国がこれまで領有権紛争を繰り広げてきたフィリピン、ベトナムとは異なり、手ごわい相手になる見通しだ。
AP通信と現地メディアによると、ジョコ大統領は同日、ナトゥナ諸島のインドネシア海軍基地で艦船に乗り、周辺海域を視察し、安全保障・外交関係閣僚と艦上で会議を開いた。
乗船した船は17日に中国漁船に発砲し、乗組員を拿捕(だほ)した艦船だった。
今回の訪問について、ルフット・パンジャイタン政治・法務・治安担当調整相は
「(インドネシアの主権を守る意思について)明確なメッセージを伝えたものだ。
歴史的にインドネシアは(中国に)これほど強硬だったことがない」
とした上で、
「大統領が南シナ海問題を軽視しないことを示すものだ」
と説明した。
プラモノ・アヌン内閣秘書も
「政府のトップであり、国家元首として、大統領はナトゥナ諸島がいつまでもインドネシアの一部であることを明確にした」
と指摘した。
★.ナトゥナ諸島海域には、インドネシアが排他的経済水域(EEZ)を設定している。
★.中国はナトゥナ諸島海域の相当部分が自国が主張する「南シナ海(南海)九段線」と重なるとの立場だが、
表面的には「中国の伝統的な漁場」という表現を使ってきた。
インドネシアとの直接的な領有権争いを避けてきた形だ。
19日の中国政府の発表はナトゥナ諸島海域をめぐる両国の神経戦の発端となった。
中国外務省の華春瑩副報道局長は、中国漁船が17日にナトゥナ諸島海域で拿捕された過程で、インドネシア海軍が発砲に及んだことをついて、
同海域は「中国漁民の伝統的な漁場であるほか、中国とインドネシアの海洋権益が重なる場所だ」
と述べた。
華副報道局長はまた、
「インドネシアの艦船が武力を乱用し、中国漁船を襲撃し、発砲したことは国連海洋法条約を含む国際法に大きく違反したものだ」
と主張した。
この発言にインドネシア政府は猛反発。
レトノ・マルスディ外相は22日、
「インドネシアの領海のどこも中国と領有権は重なっていない」
と反論した上で、
「ナトゥナ諸島周辺のインドネシアのEEZは国連海洋法条約によって国際的に認められている。
今回の問題は法執行の問題であって、政治問題ではない」
と主張した。
違法操業漁船の取り締まりを正常な法執行と位置づけた上で、領有権紛争の対象とはなり得ないと主張した格好だ。
ユスフ・カラ副大統領も
「今後ナトゥナ海域で強硬に排他的権利を主張していく」
と発言した。
インドネシアは人口が世界4位(2億5000万人)、経済力が16位、軍事力が12位で東南アジアの最強国だ。
ナトゥナ諸島周辺での中国漁船の違法操業にも武力を行使し、遠慮なく中国に圧力をかけてきた。
今年5月にインドネシアの駆逐艦が中国の底引き網漁船に発砲したのをはじめ、年初来2回にわたり、中国漁船に銃撃を加えた。
また、ナトゥナ諸島にF16戦闘機5機の配備も進めている
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JB Press 2016.6.30(木) 北村 淳
インドネシア大統領、中国の横暴に毅然と抵抗宣言
南シナ海でインドネシアにも及び始めた中国の海洋拡張政策
中国が受注したインドネシアの高速鉄道建設プロジェクトが難航していると伝えられているが、その一方で、両国の間に領海および海洋権益をめぐる問題がにわかに勃発し、緊張が高まっている。
6月23日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、南シナ海・ナトゥナ諸島沖のインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」上で主要閣僚や軍首脳とともに閣議を開き、同海域の防衛を強化し、インドネシアの主権を維持することを明言した。
■インドネシア海軍コルベットが中国漁船を拿捕
閣議の前の週の6月17日、ナトゥナ諸島北方沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に12隻の中国漁船が許可を得ずに侵入し、操業しようとしている現場を、インドネシア海軍が発見した。
インドネシア海軍艦艇が警告を発しながら、中国漁船群に接近したところ、11隻の中国漁船は逃走したが、すでに網を入れていた1隻はインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」に捕捉された。
その中国漁船はインドネシア軍艦の警告を無視して逃走をはかったため、「イマムポンジョル383」は警告射撃を実施して追跡し、中国漁船を拿捕した。
今回の事件が発生した水域を含むインドネシアのEEZ内において漁業活動をするには、インドネシア当局の許可が必要である。
中国船に限らず、このような許可なき漁船が操業することはできない。
そのため、インドネシア海軍による中国魚船拿捕は主権国家にっては何ら問題のない行動である。
しかし、中国漁船を拿捕した「イマムポンジョル383」に対して中国海警局巡視船2隻は
「中国漁船は中国の伝統的な漁場で操業していたのであり、何ら違法性はない。
直ちに解放せよ」
と威嚇的に警告を発した。
また、中国政府当局も
「インドネシア軍艦の発砲により中国漁民が負傷した。
このような武力の行使は国際法に違反する」
とインドネシア側の行動を強く非難した。
実は、今年の3月にも、同海域で違法操業中の中国漁船をインドネシア当局が拿捕しようとした事件が発生している。
このときは、取り締まりに当たっていたインドネシア巡視船の取締官が、拿捕して連行しようとした中国漁船に移乗したところ、中国海警局巡視船2隻が急行してきて、拿捕された中国漁船に体当たりを始めたため、取締官たちはインドネシア巡視船に脱出せざるをえなくなってしまった。
その結果、インドネシア側が一時拿捕した漁船と違法操業していた乗組員たちは、中国側に奪還されてしまったのである。
その後も、この海域での中国漁船の違法操業が頻発したため、ジョコ大統領は、それまで海軍艦艇が常駐していなかったナトゥナ諸島周辺海域に海軍コルベットを展開させて、中国漁船に目を光らせる方針に転じたのであった。
■ナトゥナ周辺海域も“中国の海”
中国当局は、以前には明確に
「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアに属しており、中国がこれに対して異議を申し立てたことはない」
と明言していた。
ところが中国政府は、6月17日の拿捕事件の発生を受けて19日、
「ナトゥナ諸島周辺海域は、中国の伝統的な漁場であるだけでなく、中国とインドネシアの海洋権益が重なり合う場所である」
と表明するに至った。
この中国当局の新しい立場は、さすがにナトゥナ諸島の領有権まで主張するものではないものの、「ナトゥナ諸島周辺海域は“中国の海”に属する」という主張を開始し始めたものであるとみなすことができる。
南シナ海における“中国の海” とは「九段線」という極めて曖昧な領域概念で示されている。
その九段線は連続線ではない九つの断片的な線であるため、南シナ海の“中国の海”の境界線が明示されているわけではなく、おおよその範囲が示されているに過ぎない。
そのように大雑把な九段線から類推すると、ナトゥナ諸島はこれまで中国政府当局が明言して来たように“中国の海”の外側に位置していると考えるのが自然である。
しかしながら、今回中国政府が主張し始めたように、ナトゥナ諸島周辺海域の北東部は“中国の海”とオーバーラップしている水域が存在しているとも考えられなくもない。
もちろん、ここで言う“中国の海”とは、中国共産党政府が勝手に主張している九段線という、極めて大雑把な境界線に基づいた、中国だけが正当性を主張している概念である。
インドネシアはじめ中国以外の国が受け入れなければならない国際法的根拠は全く存在しない。
しかし中国は、自らが勝手に作り出した九段線や“中国の海”などを振りかざして、国際社会に幅広く受け入れられている(そして中国にとって都合の良い部分は中国も援用している)国際海洋法秩序を部分的に否定しようとする海洋権益拡張政策を推し進めている。
まさに、今回の
「ナトゥナ諸島周辺海域の一部は中国の伝統的漁場であり、すなわち“中国の海”に属している」
という中国政府の主張は、これまで差し控えていた南シナ海最南端での中国の権益を拡張しておこうという中国政府の姿勢の表れに他ならない。
■やがては領有権の主張も
今回、中国政府は「ナトゥナ諸島周辺海域の一部が中国とインドネシアの権益がオーバーラップする水域である」という主張をし始めたが、ナトゥナ諸島の領有権自体については疑義を呈してはいない。
しかし、ナトゥナ諸島の領有権と同じく、その周辺海域に関しても、かつては“中国の海”に属しているといった主張はしていなかった。
したがって、将来的には「ナトゥナ諸島周辺は、伝統的に中国の漁場であっただけではなく、ナトゥナ諸島も歴史的には中国の領域であった」と主張し始める可能性も否定できない。
実際に、中国では
「明朝滅亡後に満州族の支配に抵抗した広東省潮州周辺の漢族が、ナトゥナ諸島に王国を建てて、19世紀にオランダに占領されるまでナトゥナ諸島を支配した」
といった“歴史”がまことしやかに語られている。
そこで、ジョコ大統領は閣僚を率いて、中国共産党政府の先手を打つ形でナトゥナ諸島を訪れて、問題となっている海域内の軍艦上で「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアにある。
その周辺200海里内はインドネシアの排他的経済水域であって、中国の主権が及ぶ水域とオーバーラップする海域は存在しない」というアピールを身をもって成した。
このアピールは、今後インドネシアがナトゥナ諸島とその周辺海域での国益を保持していくために必要不可欠な行動であったと言えよう。
ただし、インドネシアの海洋戦力は中国人民解放軍と比較すると極めて貧弱ではるかに劣勢である。
中国側がジョコ大統領の対中強硬姿勢をどのように評価し、どのような「次の一手」を繰り出して来るかは分からない。
とはいうものの、ジョコ大統領はじめインドネシア政府・軍首脳は、中国の横やりに対して毅然として領土領海そして海洋権益を防衛する意思を示したのである。
その姿勢は、「尖閣諸島は自国の領域である」と口先で言い立てているのみで、何ら具体的行動に打って出ず、相変わらず「アメリカ頼み」の姿勢から脱却していない日本とは好対照と言わざるをえない。
ちなみに、インドネシア政府は、中国による海洋侵攻戦略の脅威に対抗するために、ナトゥナ諸島並びに周辺海域の軍備を増強するとともに、国防費を100兆ルピアから250兆ルピアに増額するという。
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