2016年6月18日土曜日

選挙応援にかけつける中国海軍(2):下降局面に入った中国のアセリ? 日本政府としては、願ったりかなったり

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 中国の一連の動きで、外交の目は中国に向けられている。
 選挙の争点になれば、政府は万々歳にになる。
 でなくても、この中国の動きに反応して日本の海自の行動が正当化されていく。
 積極的に尖閣を守るくべく、行動が承認されてくる。
 日本がこの中国の動きに連動して、軍事的にフリーハンド化されていくことは疑いようがない。

 この日本に防衛行動のレベルップを促すような中国の動きは少々解せない。
 海軍に引っ張られていると見られる習近平周辺がガタガタしはじめた、と見るのは至極普通になってくる。
 なにしろこのところの中国は外交的には孤立化を深めている。

 経済的にも旧来のように財政投融資でGDPアップをねらわなければならないほどに打つ手がない。
 構造改革もできずに国営企業は過剰生産に踏み切っているし、国内に投資先を見つけられないお金はどんどん海外に利潤を求めて出ていっている。
 海外企業の買いあさりが金融的に利益を生むとは思えないし、一朝一夕で技術の習得ができるとも思えない。
 ただ海外でお金をドブに捨てているようにしか見えない。
 銀行債務もふくれあがり、地方政府も借金漬けになっているようだ。
 失業者は4%だというが、本当はその3倍はいるという報道もある。 
 このところの中国関連のニュースにいいものはほとんどない。

 2010年までの輝ける中国はもはや微塵もなくなっている。
 ピークを過ぎて下降局面に入ってきたとしか思われない。


フジテレビ系(FNN) 6月17日(金)20時59分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160617-00000959-fnn-pol

中国軍艦の領海侵入など相次ぐ 
岸田外相「中国がエスカレート」



 「中国が行動をエスカレートさせている」として、懸念を示した。
 岸田外相は
 「一方的に、わが国周辺海域での行動を、中国がエスカレートさせている。こうしたことに対して、懸念を中国に申し入れた」
と述べた。
 岸田外相は17日、中国の軍艦による日本の領海侵入や、接続水域での航行が相次いでいることについて懸念を示し、16日夜に、中国側に懸念を伝えたことを明らかにした。
 同時に、「いたずらに事態をエスカレートさせないように、冷静な対応を継続しつつ、わが国の領土、領海、領空を断固守り抜くため、万全を期す」と強調した。


夕刊フジ 6月17日(金)16時56分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160617-00000004-ykf-int

習主席の誕生日と中国軍の領海侵入の気になる関連 
孤立化鮮明、焦りで暴走も

 東シナ海情勢が緊迫している。
 中国海軍の艦艇が15日未明、鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)周辺の領海に侵入したのだ。
 9日にはフリゲート艦を沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域に侵入させるなど、挑発行為をエスカレートさせていたなかでの暴挙。
 15日に習近平国家主席が63回目の誕生日を迎えたこともあり、東シナ海での中国海軍の動きとの関連を指摘する声もある。

 「今後も中国艦艇の動きに十分注目し、警戒監視に万全を期す」
 中谷元・防衛相は15日、中国軍艦による領海侵入についてこう語った。

 これに先立つ9日には、ロケット砲や艦対空ミサイルを装備する最新型戦闘艦「ジャンカイI級フリゲート艦」が尖閣諸島・久場島北東の接続水域に侵入し、緊張が高まっていた。
 度重なる挑発に岸田文雄外相は「状況をエスカレートさせている最近の中国軍の動きを懸念する」と危機感をあらわにした。
 防衛省によると、15日午前3時30分ごろ、口永良部島西方の領海に侵入したのは中国海軍の「ドンディアオ級情報収集艦」1隻。
 全長130メートルで電子情報の収集が主な任務とされる。

 沖縄周辺海域では海上自衛隊と米国、インド両海軍の共同訓練「マラバール」が実施中で、中国軍艦は、同訓練に参加していたインド艦船2隻の後方を航行
 こうしたことから訓練の模様を監視していた可能性がある。
 2004年に沖縄県先島諸島周辺の領海に原子力潜水艦が侵入して以来2度目となる中国軍の暴挙。
 しかし、軍事衝突の危機は当時よりも格段に高まっている。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は
 「中国軍は、9日の接続水域への侵入から1週間もたたずに仕掛けてきた。
 04年の潜水艦による領海侵入と違って、今回は堂々と水上航行している。
 それに中国軍の情報収集艦は情報収集が主任務と言えども、機関砲を装備しており、戦闘にも対応できる。
 海上警備行動が発令されていれば交戦状態になった可能性がある」
と指摘する。

 習氏は国家主席のポストを手中に収めて以降、「反腐敗運動」による腐敗官僚の撲滅を名目に政敵を次々と追い落とし、自身への集権体制を強めてきた。
 今年3月の全国人民代表大会(全人代)では、20年までの経済戦略を示す「第13次5カ年計画」の策定のかじ取り役が、党序列ナンバー2の李克強首相率いる国務院から習氏直轄の党中央全面深化改革領導小組に移行していたことが明らかになった。
 経済政策を主導してきた李首相から実権を奪った格好で「習氏への集権を象徴する出来事」として注目を浴びた。
 習氏の独裁化に拍車がかかっているだけに、15日の習氏の個人的な“記念日”と東シナ海での中国軍の動きとの関連もささやかれている。

 世良氏は
 「中国軍と中国共産党政権は密接に結びついている。
 東シナ海での中国軍の動きに、政権側の何らかの思惑が絡んでいる恐れは十分ある」
と指摘する。

 中国事情に精通する評論家の宮崎正弘氏は
 「習氏は最近、清廉潔白な人物の代名詞として語られる戦国時代の政治家・屈原と自身を重ね合わせるような言動をしている。
 自分を神格化させようとしているようだ。
 現政権の権威を高めるため、東シナ海での軍事的成果を利用する思惑もあるのではないか」
と語る。

 国際法を無視し蛮行を続ける中国。
 世界から孤立化する焦りも習氏の暴走を助長している可能性がある。


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年06月17日(Fri)  本多カツヒロ (ライター)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7045

中国は共産党がすべてではない 
社会を動かす「民」の力を信じて
『中国 消し去られた記録』  城山英巳記者インタビュー


● 『中国 消し去られた記録:北京特派員が見た大国の闇』(城山英巳著、白水社)

 「またも中国ではこんな信じられない事態が起こっている」
 「理解に苦しむ国ですね」
などという主旨のニュース番組をよく目にする。
 その中国社会の中で一般の人たちはどう行動し、共産党政府にどんな戦いを挑んでいるのか。
 そんな彼らを取材し、2度の中国総局特派員経験をもとに現在の中国を描いたのが時事通信社、城山英己記者が上梓した『中国 消し去られた記憶 北京特派員が見た大国の闇』(白水社)。
 城山記者に政府と戦う民間の人たちの動きや国内での対立、そして今後の中国について話を聞いた。

――城山さんは、02年から07年と11年から今年までの2度の中国赴任を経験されていますが、
 ご自身と中国社会はどう変化したと感じますか?

城山:
 最初の赴任時は、当時の小泉純一郎首相が靖国神社を参拝した影響などがあり、日中関係が良くない時期でした。
 また私自身もチャイナウォッチャーとして特ダネを取り、読者に新たな事実を提示したいという気持ちが強かったですから、共産党の対日戦略や日中関係など大きく扱われるニュースに関心が高く、共産党の権力中枢に近い人たちに積極的に接触していました。

 2度目の11年からの赴任時には、前年に劉暁波さんがノーベル平和賞を受賞し、彼が中心となった「零八憲章」のような民主化の道筋を示すようなムーブメントがちょうど起こっていた時期でした。

 また、同年に温州市で起きた高速鉄道の事故では、中国の調査報道記者が事故の背後にあった鉄道省の歪んだ閉鎖的な体質を暴いたりと、人権派弁護士や改革派の大学教員、調査報道記者が社会に影響力をより持ち始めた時期です。

 こうした民間の動きに対し、12年に発足した習近平体制は弾圧を行っていきます。
 1度目の赴任では、このような人たちの動きはどうしても共産党政府や日中両政府の動きほど大きなニュースになりにくいため、注視していませんでしたが、2度目には民間の動きを見ていかないと、これからの中国を理解は出来ないと思い取材し始めました。

 要するに、1度目の赴任では共産党政府の動きを見ていれば中国を理解出来る、またそれだけで日本の新聞が成り立つだろうという間違った自己認識を持っていたのに対し、2度目はその裏側で権力に対抗し、監視したり社会を変革しようという民間の人たちに注目しようと私自身の取材のやり方も変化しました。
 また中国社会もそうした民間の動きが盛り上がり、それを抑えつけようという具合に変化していったのです。

――本書から、中国では未だに毛沢東という人物を巡る対立が大きいのかなという印象を受けました。

城山:
 そうですね。
 中国というのは未だに1949年の新中国建国以降の歴史に縛られている国なんです。
 だからこそ、新たな政治体制や民主化が進まない。
 その最たる例であり、タブーでもあるのが「毛沢東」や「天安門事件」です。

 毛沢東が行った文化大革命では約1億人の被害者が出て、1000万人以上が死亡しました。
 少しでも政府に反することを言えば死刑になってしまう時代で、家庭内ですら、母親が何か毛沢東を批判すれば紅衛兵と呼ばれた毛沢東を崇拝している実の子供の密告により、母親が死刑になってしまうような状況でした。

 また毛沢東は、核実験や反米闘争などに代表されるような強硬な外交を展開しましたし、1972年の日中国交正常化までは、日本に対してもこのような外交を展開していた。
 毛沢東を支持する人たちは、だからこそ世界に馬鹿にされなかったと言います。

 さらに、78年以降の鄧小平の改革開放後、自由主義経済が浸透していくにつれ社会には腐敗が浸透していきます。
 しかし「毛沢東時代には、社会に腐敗はなく、貧しかったけれど比較的平等な社会であった」と支持者たちは主張します。
 ある種の理想郷であった毛沢東時代に戻るべきだと言うのです。

 その一方で、毛沢東や天安門事件といった歴史を乗り越えることなしに、中国の進歩や改革はあり得ないと主張する人たちが毛沢東に否定的で、先ほどお話した人権派弁護士や改革派の大学教員など知識人に多い。
 彼らは、対日関係でも暴力ではなく、理性的に向きあおうと主張します。

 つまり、中国の保守派は毛沢東を支持し、抗日戦争の歴史を重視して日本に対し強硬な姿勢に出ようという人たちで、毛沢東を否定し、日本と理性的に向きあおうという人たちが改革派と大きく分類出来ると思います。

――現在の習近平主席は毛沢東に対してどのような態度でしょうか?

城山:
 まず習近平の生い立ちについてお話しすると、彼の父親はとても開明的な政治家でした。
 それ故に文化大革命以前から16年に渡り迫害の対象となり、そのうち8年間は独房での生活を強いられた人物です。
 しかし、文化大革命が終わり、鄧小平の改革開放路線が始まると広東省の第1書記に抜擢されるなど重用され、改革開放をリードしていきます。
 また、異論を唱えられる社会でなければならないとして異論保護法の制定を進めました。

 そうした父親を持つ習近平は、若い頃自らも貧しく苦難に満ちた生活を強いられた経験があるにもかかわらず、毛沢東の言葉を演説で多用するばかりか、言論を弾圧して異論を述べた人の自由を奪ったり個人崇拝を進めたりしている。
 習近平がなぜ、自分や家族を苦しめた毛沢東を真似るのかというのは、私にとってどうしても理解しがたいテーマでありました。

――他にもそうした政治家は多いんですか?

城山:
 例えば、重慶市のトップだった薄煕来はその典型です。
 彼は毛沢東時代の歌を歌ったり、黒社会(マフィア)の人達を摘発したり、これは良いことですが、格差の是正を目指し、弱者に対し温かい政策を行いました。

 この「毛沢東を真似る」というのは、中国の政治的な特色をよく表しているように思います。
 共産党指導者は毛沢東の権威を借り、自らを毛沢東型の指導者であるとアピールすれば、国民から求心力を得やすく、権力基盤を固められるという複雑な事情もある。
 要するに、未だに毛沢東を引き摺っているのです。

――どうして未だに毛沢東を乗り越えられないのでしょうか?

城山:
 毛沢東がそれだけ偉大だからです。
 「毛沢東=中国」と言っても過言ではないくらい、皇帝そのものに近いと考える支持者たちが多いからです。

 それに対し、私も何度も取材し、本書の第1部に登場する改革派の人権派弁護士である浦志強さんは、毛沢東が未だに政治、経済、社会と全てを支配している状況を変革しようと、毛沢東の生前の遺志に従い、毛主席記念堂に安置されている遺体を火葬することを提案し、社会を変えようと狙いました。

――その浦さんの提案は、中国社会では支持されているのでしょうか?

城山:
 中国社会全体ではそれほど支持されていません。
 しかし、浦さんは提案を実現させることよりも、問題提起をすることが狙いなのです。
 提案後、浦さんのもとには、毛沢東支持者から引っ切り無しに抗議の電話があったそうですが、彼はその電話一つひとつに対し、議論し論破していきます。
 そうやって否定はタブーであり、普通では議論にならない毛沢東という存在を、問題提起することで議論を巻き起こしていく。

 また改革派の人たちは、文化大革命が起きてからちょうど50年目にあたる今年、ネット上に文化大革命に関する文章を発表していますが、政府によりすぐに削除されている状況です。
 ただ、削除される前に転送される。
 こうしたネット上の広がりによって文化大革命に対する反省や議論を巻き起こしているのです。

 つまり、民間の改革派の人たちは小さな力ではあるけれども、文書を書いたり、浦さんのようにネットで発信して問題提起をすることにより、全く何も考えていない人にも、毛沢東を崇拝している人にも玉を投げることで議論を起こしている。
 北京特派員として見ていてこのやり方は非常に面白いと思いますね。
 党の見解ばかり載せる新華社や人民日報だけを読んでいても決してわからない動きですからね。

――毛沢東支持者は日本に対し強硬な政策を取るべきだと主張する人が多いわけですが、
 一方で東京など外国人観光客が多い土地で暮らしていると、爆買いに代表されるように中国人観光客をよく目にします。
 中国の方々は現在日本に対しどのようなイメージをもっているのでしょうか?

城山:
 これまで中国の人はほとんど日本に来ませんでした。
 しかし豊かになり、日本を訪れる人は増えていますが、今でも軍国主義国家だと思っている人も多いのです。

 中国の共産党にとって抗日戦争に勝利したことで新中国が成立したため、
 「抗日」は今も正統性を保つ大きな柱になっています。
 共産党の正しさを宣伝するため抗日を利用し、その利用価値は高いと認識している。
 日本の軍国主義がかつて行った乱暴な行為を歴史教育で強調することにより愛国感情を高めることも出来ます。
 また、反日デモを容認して「日本」を「悪」として照準を合わせれば、一般の若者はデモに参加することで、彼らが普段から持っている社会に対する不満のガス抜きにもなります。

 日中関係で何か問題が起きれば、人々が一番接触する機会の多いテレビ、特に中央テレビでは、日本の軍国主義を強調した内容や、日本人からすればやり過ぎではないかという報道もしょっちゅうありますね。
 事実を無視した抗日ドラマが今でも多く放送され、中国人の対日感情に非常にマイナスに働いています。
 こうしたプロパガンダや対日宣伝の影響で未だに日本は軍国主義だと思っている人たちがいる。
 それがなくなれば、あるいは弱まれば日本に対するイメージは格段に良くなるでしょう。

 一方、日本の一部の政治家によるかつて日本が戦争で行った行為に対する配慮の足りない発言が、中国の民間の人たちの怒りに火をつける場合もあります。
 私はこういう民間に残り続ける気持ちも大切にして取材していたつもりです。

――観光客の方々は、中国で教育されたり、報道される日本と
 実際に訪れて触れる日本ではやはりかなりの違いを感じるのでしょうか?

城山:
 対日宣伝の影響で未だに軍国主義国家だと思って来日すると、実際には全くそんな国でないことが分かる上に、物は円安で安く品質も良く、ブランド力もあるということでたくさん買い物をして帰る。
 日本は、我々が宣伝や教育で受けた国とは違うということで、日本に対する考えを改める人がほとんどです。

 買い物について言えば、最近は質が変わってきたと思います。
 初めはそれこそ爆買いという言葉が流行ったように電化製品を大量に買い求める人が多かったですが、薬や服などもっと安くて良い物の購入にシフトしてきている。

 また、これまでの来日では買い物が中心だったのが、地方の風情のある温泉地に行ってみたいという人が増えているようです。
 もっと日本の伝統文化や社会の仕組みを知りたいという変化があるわけですね。

 私がよく取材している知識人の中には、日本に家を購入したいという人も多いです。
 定期的に来日して、日本の中で生活をし、日本の文化をもっと知りたいと。

 爆買いでも良いとは思いますが、このように来日してもらって、中国での宣伝や教育とは全く違うということを理解するのが日中関係改善に繋がるのではないかと思います。

 ただ、一番の問題は日本人の対中感情です。
 我々メディア側の問題も大きいのではないかと思いますね。

――といいますと?

城山:
 中国では、日中政府間関係が悪化した際、国営メディアが日本は軍国主義国家だという報道をしている一方、
 日本のメディアは中国の面白おかしい部分を取り上げたり、中国共産党の強硬な面だけを批判的に報道しています。
 中国共産党は民主国家ではないわけですから、我々からすれば彼らのやることの多くは首をかしげるものであり、当然、批判の的になる。
 今回の本の目的の1つは、中国は共産党・政府が全てではないと伝えることです。
 中国には先ほど紹介した浦さんを始め、社会を良くして前進させようと権力と戦う勇気のある民間の人たちもたくさんいます。
 そういう視点で中国を見ることで、新たな中国が理解できるのではないかと考えこの本を書きました。

 また、日本のメディアは日本政府の動きを報じるときには主語を
 「日本政府は」
 「安倍政権は」
 「安倍内閣は」
 「政府・与党は」
とするにもかかわらず、中国政府の場合には「中国は」と報じることが多い。
 本来ならば
 「中国政府は」
 「中国共産党は」
 「中国の習近平指導部は」
と書くべきです。
 中国政府は政府、民間は民間とわけて考えるべきと、個人的には考えています。

――確かにそうですよね。
 話は習近平指導部に戻りますが、
 習近平体制になり、改革派の動きに対して弾圧をしていると。
 現体制の現状はどうなんでしょうか?

城山:
 中国には、土地の問題から失業問題、食品の安全問題と数えきれないほどの社会問題があります。
 その問題は共産党一党独裁体制そのものに起因するものが多いのですが、一方で被害者の権利意識を高める動きが改革開放以降高まっています。
 そうした動きに一役買っているのが、被害者の当然の権利を守ろうと立ち上がる人権派弁護士や改革派の大学教員で、彼らがネット上で実態を伝えたり、解説したりすれば共産党やその体制に対し批判的な声があがります。
 その動きに対し、中国共産党・政府は、報道統制や逮捕をしたりしていますが、逮捕そのものがおかしいと分かる人が確実に増え、抑圧すればするほど、それを恐れない人たちが民間に増えてきており、支援の動きも広まっています。

 一方、共産党指導部内に目を移すと、経済政策を巡る李克強首相との矛盾や言論統制を巡る対立、さらに腐敗を巡る江沢民派の反発もあり、決して一枚岩ではありません。
 そうした党内の対立要因と共産党に対する外部の不満が結びつけば、大きなムーブメントになってしまうのではないかという危機感は強いと思います。

――そうした動きに対し、今後習近平はどのように動くのでしょうか?

城山:
 おそらく個人崇拝や集権を強め、反体制勢力を抑える政治を展開するのではないでしょうか。
 しかし、それが果たしてどこまで通用するのか。
 指導部内が分裂するような事態が起こる可能性も否定できませんし、その時に人権派弁護士などネット上で影響力を誇る知識人たちが、一般市民の支持を集める事態となれば、今の体制への疑問が吹き出して不透明な時代となるでしょう。

 この本で描いたように、現在の中国は共産党だけを見ていればわかるという社会ではもはやありません。
 民間の人たちや知識人といった共産党と戦っている人たちも見ておかないと、今後「中国」がどのように進むのかが見えてこないのではないかと思いますね。


Record china 配信日時:2016年7月3日(日) 9時50分
http://www.recordchina.co.jp/a142583.html

<書評>共産党が中国の全てではない
=13億の一般人にスポットを!
城山英巳著『中国 消し去られた記憶・北京特派員が見た大国の闇』

  中国は複雑怪奇な国である。 
 各種国際機関の中期予測によると、世界全体のGDP(国内総生産)に占める中国の割合は2014年の13%から24年には20%に拡大、「米国を抜き世界一の経済大国になる」という。一方で、環境悪化や労働災害、深刻な経済格差と腐敗汚職など高成長の「負の遺産」が噴出、乗り越えるべき高い壁が立ちはだかっている。

 日本メディアの中国関連情報には、固定観念に基づいた表層的なものが多く、隔靴掻痒の感を免れないが、本書には時事通信中国総局特派員として、通算十数年にわたって現場をウオッチしてきたスクープ記者ならではの情報が満載だ。

 「中華の夢」を掲げる習近平国家主席が目指すのは、経済・軍事両面における世界的発展。その大前提として共産党一党支配体制の維持を優先しているが、13億の一般の人たちはどう見て、共産党政府にどう対応しようとしているのか。

 城山特派員は2回目となる北京駐在期間(11年から16年5月)に、彼ら民間の動きをフォローしなければ、これからの中国理解は不可能と考え、取材し始めた。
 インターネット空間が広がる中で、
 民間の改革派知識人や調査報道記者たちが共産党体制に「ものを言う」ようになり、
 人権派弁護士が法を武器に社会制度を変革しようと行動するようになった。
 習近平執行部が危機感を強めれば強めるほど、中国社会の「官民の攻防」は年々、緊張を増しているという。

 本書は、言論の自由や法治の空間を少しでも広げ、庶民の権利を守ろうと、様々に行動している人たち49人について、実名入りでスポットを当てる。
 インターネットで積極的に発信して問題を提起し、当局に拘束された人権派弁護士の浦志強、許志強氏ら改革派と当局の攻防が克明に記録され、読者は思わず息をのむ。

 政治社会の問題点を追及し発信している改革派の人たちに対する、夥しい直接取材を通じて、著者は「彼らの理念や行動力が中国の進歩にとって必要」と確信するに至る。
 「世界第2の経済大国・中国で、習近平指導部が体制維持のために展開している有罪判決や言論弾圧に対して失望を感じる日々が続いている」
と吐露。
 「度々拘束され、迫害を受けながらも、強靭に信念を曲げずに祖国の発展を信じている人々」
に共感する。

 12年9月の日本政府による尖閣諸島国有化とこれに反発した反日デモについても、著者の見聞きした情報を絡め詳述している点も興味深い。
 中国共産党にとって抗日戦争に勝利したことで新中国が成立したため、「抗日」は今も正統性を保つ大きな柱になっている、と指摘。
 日本の軍国主義がかつて行った行為を歴史教育で強調することにより愛国感情を高めることができる。
 反日デモを容認して「日本」を「悪」として照準を合わせれば、一般の若者はデモに参加することで、彼らが普段から持っている社会に対する不満のガス抜きにもなるという。

 一方、日本のメディアについても、中国の面白おかしい部分をことさら取り上げたり、中国共産党の強硬な面だけを批判的に報道していると問題視。
 日本人の多くは
 「中国は共産党・政府が全てと考える傾向にあるがそうではない」
との指摘も傾聴に値する。

 中国の知識人は、自分の目で確かめ「本当の日本を見たい。そして真実を発信したい」という気持ちを逆に強くしている、と強調。
 急拡大する中産階級や一般移民も同じだという。
 中国人の日本観光は爆発的ブームとなり、「爆買い」が15年の流行語大賞になった。
 未だに軍国主義国家だと思って来日すると、実際には全くそんな国でないことが分かる。
 商品は安価で、品質が良いため大量に買い物をして帰る。
 多くの中国人観光客が来日し、日本を正しく理解すれば日中関係改善に繋がると訴える。

 中国には社会を良くして前進させようと権力と戦う勇気のある民間人も多い。
 その視点で中国を見ることで、新たな中国が理解できると問題提起。
 「『日本』に対し理性的に向き合える独立した中国民間人との交流が重要だ」と記し、
 「中国の政府は政府、民間は民間と分けて考えるべきだ」
と強調する。

 2段組500頁を超える力作は読み応え十分。
 
  現代中国の実像と将来を探り、日本人としてどう向き合うべきかを考えるための「必読書」といえよう。

 著者はすぐれた国際報道に与えられるボーン・上田賞やアジア・太平洋賞を受賞。評者の時事通信時代にスクープを連発し、度々編集局長賞を授与したことが想起される。(八牧浩行)

<城山英巳著『中国 消し去られた記憶・北京特派員が見た大国の闇』(白水社刊、3600円税別)>



JB Press 2016.6.21(火)  筆坂 秀世
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47147

若者は変化を望むのか、現状を変えたくないのか
18歳選挙権、
野党統一候補、見どころ満載の参院選が始まる

 いよいよ明日(6月22日)から参院選が始まる。
 投票は7月10日だ。
 今回の参院選は、日本の政治史上でも初のことが行われる。
★.1つは、18歳選挙権の導入である。
 もう1つは、4野党が統一候補を立てることだ。
 これが選挙戦にどのような影響をもたらすのか、興味深いところだ。

■左翼が保守派になっている日本の政党状況

 私自身の記憶を思い返しても、初めて選挙権を得るというのは、それなりのインパクトを持っていたように思う。
 ただ私の場合には、18歳で日本共産党に入党していたので、投票する候補者は決まっており、思い悩むことはなかった。

 だが初めて選挙権を得た若者にとって、誰を選ぶのか、どの党を選ぶのか、そうは簡単に答えを持っていないのが普通だろう。
 通常、若者は高齢者以上に変化を求めるものだと思う。
 だとすれば、現状を打破しようとする野党を支持するのではと思われがちだ。
 だが、日本の政治の現状は必ずしもそうではない。

現状を改革しようとしているのは、実は自民党の側である。
 アベノミクスや集団的自衛権の一部行使を含む安保法制、
 一億総活躍社会、憲法改正など、
 その是非はともかく、すべて現状を改革しようとしているのだ。

 これに対して野党は、アベノミクスは失敗だとして糾弾し、安保法制については、共産党などは「戦争法」だとして廃案を掲げている。
 廃案ということでは4野党が一致している。
 憲法についても、野党は基本的に護憲である。

保守が改革派、民進党が左翼というわけではないが、大雑把に言えば左翼が保守派になっているのが日本の政党状況なのである。

 さて、新たに増える240万人の有権者は、いったい何を基準に選ぶのだろうか。
 選挙の投票率は、年々下がってきている。
 なかでも若い層の投票率が極端に低い。
 2011年の衆院選では、60歳代が一番高く68.28%、一番低いのが20歳代の32.58%だった。
 大半は選挙に行っていないのである。

 これでは、今の政治に不満を持っていても、何も変わりはしない。
 もちろん投票に行ったからといって、簡単に政治を変えられるわけではない。
 しかし、現状に不満を持たない若者などいないだろう。
 であれば、選挙に行くべきだ。
 行かなければ、自分の思いをそもそも政治に反映できるわけがない。
 せっかく得た選挙権を無駄にしないようにしてほしいと願う。

■野党統一候補は成功するのか

 32ある定数1の選挙区すべてで野党の連携が実現した。
 これも戦後政治で初めてのことだ。
 政治を活性化させるうえで大いに結構なことである。

 これに対して、安倍首相ら自民党は「野合」という批判を強めている。
 しかし、「野合」批判は適切ではない。
 政策的にはいろいろな違いはあったとしても、国政の重要課題と思われる問題で一致し、巨大な与党に対抗しようというのは、言ってみれば野党の知恵であり、当然の努力である。
 こういう努力を怠ったとしたら、それこそ野党は、その存在意義そのものを国民から批判されることになるだろう。

 これまでのテレビ討論などを見ていると、安倍首相は今度の選挙の争点を経済一本に絞りこみ、アベノミクスの加速化を訴えているようだ。
 これに対して、民進党の岡田代表は、消費税増税の先送りは、アベノミクス失敗の証明だとして、これへの批判を強めている。
 同時に岡田氏は、憲法改正問題を意識的に争点化しようとしている。
 これに対して安倍首相は、
 「どの条文を改正するか収斂していない。
 選挙で争点化するには至っていない」(6月19日、NHK日曜討論)
として、憲法改正問題を今回の参院選では争点にしないと明言している。

 多くの世論調査では、憲法改正反対論が根強い。
 岡田代表は、これを争点化することによって民進党有利に持ち込もうとしていることは明らかである。
 他方、安倍首相は、争点化しないで自公で3分の2以上の議席の確保を目指している。
 この憲法をめぐる戦いの帰趨は、参院選の結果にも小さくない影響を与えることだろう。

■政党支持率と投票行動は異なる

 今年4月に行われた衆院北海道5区の補欠選挙では、自民党公認候補と野党統一候補が激戦し、自民党候補が勝利を収めた。
 この選挙で面白かったのは有権者の投票行動である。

 まず年齢層別の投票行動だが、
 野党候補が勝ったのは60歳代だけである。
 30歳代から50歳代は、いずれも自民党候補が勝っている。
 ただ最近の選挙では、60歳代がもっとも投票率が高いので、票の総数という点では、さほどの差がなくなることが多い。

 もう1つは、無党派層の投票行動である。
 ここでは野党候補が、約7割の支持を得て圧勝している。

 与党の実績と野党の統一という相乗効果のどちらが勝つのか、今度の選挙の見どころである。
 6月20日付朝日新聞掲載の世論調査によれば、政党支持率は、自民党が32%に対して、民進党は7%、共産党は3%になっている。
 大差がある。
 ところが「比例区ではどの政党に投票するか」という問いには、自民党38%、民進党15%、共産党6%となっている。

“政党支持”と“投票行動”は必ずしも合致しないことがこの世論調査から分かる。
 自民党は支持率から投票行動の間で6%増えている。
 民進党8%増え、共産党は3%増えている。
 これは、比例選挙に限ってのことである。
 事実上、自公対民共の対決となる32の1人区では、また違った投票行動になるであろう。

 政党支持率だけでは選挙結果は分からないということだ。
 野党にも十分なチャンスがあるように思える。

■安倍政権を倒したら民共は連立政権を組むのか

 ただ野党には、弱点がある。
 それは民進党と共産党との間で連立政権の合意がないことだ。
 参院選は政権選択選挙ではないので、政権構想の合意は不要である。
 だが野党が掲げる「安保法制廃止」という大目標を実現するためには、衆院で多数を握ること、すなわち政権の座に就くことが不可欠である。
 ところが、このための合意が民共間でなされていないのである。

 6月19日放映のフジテレビ「報道2001」でも安倍首相と共産党の志位委員長との間で次のようなやりとりがあった。

安倍首相:
 おそらく志位さんは、おなかの中では、民進党は必ず自分たちを必要としてくる、政権を共に担うことにしてみせると、おそらく思っておられると思いますよ。
 そうでなければ、党の候補者を降ろしませんよ。
 安倍政権を倒すということで一本化しているんであれば、もし倒したあとはどうするんですか。

志位委員長:
 私たちは、倒した後に「国民連合政府」を作ろうということを提案しております。
 この国民連合政府というのは、「安保法制の廃止と立憲主義を取り戻す」ということが中心課題ですが、それ以外の暮らしの問題でも「共通政策」を実行する。
 そして、この大命題をやりとげたら、ずるずる続けないで、解散・総選挙をやって(国民の)審判を仰いで、次の進路を決めていくということを言っているわけです。

安倍首相:
  志位さんは、私が言った通りのことをおっしゃったんですよね。
 (民進党などと)一緒に政府を作っていくと言ったじゃないですか。

志位委員長:
 私たちはそういう展望をもっているけれど、いま合意がないものを押し付けていません。

 さすがに政権構想と言いながら共通の政策が「安保法制廃止」だけではあまりにも無責任なので、共産党は暮らしの問題でも共通政策を作るとしている。
 これに対して、民進党の岡田代表は、まったく否定するという態度はとっていない。
 「今後の話し合い」だとして含みを残している。

 確かにこれは、参院選の結果次第ということになろう。参院選である程度の成功を収めれば、民共政権樹立という方向での合意もあり得ることである。

 この点でも今回の参院選を大いに注目したい。



フジテレビ系(FNN) 6月20日(月)20時38分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160620-00000175-fnn-pol

自衛隊と中国軍の衝突「懸念する」7割超 
FNN世論調査



 自衛隊と中国軍との衝突を、「懸念する」と答えた人が、7割を超えている。
 FNNが、19日までの2日間実施した世論調査で、中国の軍艦による領海侵入や、尖閣諸島周辺の接続水域の航行に関して尋ねたところ、7割を超える人(74.9%)が、近い将来、自衛隊と中国軍との間で、衝突が起こることを「懸念する」と答えた(「懸念しない」21.9%)。

 集団的自衛権を限定的に認めた安全保障関連法ついて尋ねたところ、廃止すべきだと「思う」が3割台後半(37.6%)で、廃止すべきだと「思わない」が半数を超えている(51.5%)。
 
 安倍政権の外交・安全保障政策については、「評価する」が5割(50.0%)、「評価しない」は4割(40.9%)だった。


TBS系(JNN) 6月24日(金)13時26分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160624-00000026-jnn-pol

参院選序盤の情勢分析、
「改憲勢力」3分の2に迫る勢い



 来月10日に投票が行われる参議院議員選挙です。
  JNNが序盤の情勢について分析したところ、自民党と公明党に加え憲法改正に前向きな政党を加えたいわゆる「改憲勢力」が非改選も合わせると参議院で3分の2に迫る議席を獲得する勢いです。

 JNNでは公示日の22日と23日に毎日新聞と共同で情勢調査を実施し、JNN系列局の独自調査や取材情報などを加味して序盤の選挙情勢を分析しました。

 今回の選挙では全国で32ある1人区で民進、共産、社民、生活の野党4党が統一候補を立てましたが「自民党」は22の選挙区で優位に戦いを進めています。
 また、複数区でもそれぞれ確実に1議席は獲得できる見通しで20議席に迫る勢いの比例代表も合わせると自民党は参議院で27年ぶりに単独での過半数、122議席の確保も視野に入ってきました。

 連立を組む「公明党」は候補者をたてた7つの選挙区のうち、6つの選挙区で優位な戦いを進めています。
 比例代表でも7議席前後を獲得しそうで、自民・公明を合わせると安倍総理が掲げた「与党で改選議席の過半数」という目標は大きく上回りそうです。
 そして、野党で憲法改正に前向きな「おおさか維新の会」は選挙区で3議席、比例代表でも3議席をうかがう情勢で、この結果、自民・公明を入れたいわゆる改憲勢力で非改選も合わせると参議院で憲法改正の発議に必要な3分の2に迫る議席を獲得する勢いです。

 一方、32の1人区で統一候補を立てた野党4党ですが、民進党はおよそ10の1人区で自民党候補をリード、もしくは激しく議席を争い、多くの複数区でも確実に議席を獲得しそうですが比例代表は11議席前後で、改選前の46議席から議席を減らすことになりそうです。
 「共産党」は選挙区と比例代表合わせて9議席をうかがう情勢ですが、
 「社民党」は比例で1議席と伸び悩んでいます。
 「生活の党」や「日本のこころを大切にする党」「新党改革」は議席を獲得できるか微妙な情勢です。

 今回の調査では、およそ3割の有権者が投票態度をまだ、明らかにしておらず、今後、情勢が動く可能性も残されています。
 このほか、今回の参院選では比例代表で国民怒りの声、幸福実現党、支持政党なしも候補者を届け出ています。(24日10:58)


ニュースソクラ 6月24日(金)13時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160624-00010000-socra-pol

中国、日本への対応を軍レベルに引き上げ?

■中国軍艦、日本周辺で活動 偶発的衝突の危険も

 中国海軍の情報収集艦が連日不穏な動きをしている。
 15日には鹿児島県・口永良部島西の日本の領海に侵入、16日にも同じ情報収集艦が沖縄県・北大東島の接続水域を一時航行した。
 日本政府は中国側の意図を分析しているが、日本への海上での対応が、これまでの警察(海警局)から軍(人民解放軍)にレベルアップされたのではないかと警戒する見方も出ている。
 中国側は今後も日本の周辺で、同様の行動に出る可能性が高く、偶発的な衝突を心配する声も上がっている。

 問題になっているのは、中国海軍のドンディアオ(東調)級情報収集艦と呼ばれる船。
 巨大なゴルフボールのような円球観測機を船の上に載せており、無線やレーダーを使って戦術弾道ミサイルや長距離対艦ミサイルの試験発射に合わせ、各種測定を行なう。

 また、海底の地形に関する情報収集や、他国の軍艦が行う無線を傍受、分析する活動も行っているようだ。英語では、ずばり「スパイ船」と呼ばれている。

 軍事関係のウェブサイト(Globalsecurity.org)によれば、中国製で、1999年に就航し、改造を重ねてきた。

 長さは130メートル、約6000トン。
 250人の乗員とヘリ1機を乗せ、20ノットで進むことができる。
 機関砲も装備している立派な軍艦だ。
 沖縄周辺海域では17日まで米国、インド両海軍の共同訓練「マラバール」が行われており、中国の情報収集艦は、インド艦艇の後を航行していた。
 インド艦艇は、補給艦、フリゲート艦、駆逐艦2隻の計4隻だったが、どの艦の情報を集めていたかははっきりしないという。

 防衛庁によれば、こういった情報艦が、日本の周囲に来ることは過去にもあった。

 昨年末には、同じ型の中国情報収集艦1隻が、房総半島南東の接続水域外側の海域を往復するのが確認されている。
 9日には海軍艦艇が沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に入っている。
 2012年に日本が尖閣諸島を国有化して以来、中国は中国海警局の船が、この周辺海域で活発な活動を続けている。

 国連海洋法条約は、外国船舶が秩序や安全を害することがない限り、他国の領海を通行する権利(無害通航権)を認めており、中国政府も、「この権利を行使しただけ」と、今回の行動を説明している。

 日本政府も「無害通航権」は認めている。
 今回問題視しているのは、
 「15日に領海を通過した時に中国側に注意を申し入れたのに、
 翌日も同じ船が接続水域に入った。
 緊張を高める行為だ」(防衛省関係者)
という点だ。

 中国側の狙いについては、
1:、演習への単なる妨害や嫌がらせ。
2:、演習に参加していた米原子力空母「ジョン・C・ステニス」の情報を収集。
3:、領有権問題のある尖閣周辺で、中国軍の活動を活発化させる準備。
4:、南シナ海における中国の一方的な海洋進出に厳しい姿勢を取っている安倍政権を牽制
―などの見方がある。
 日本側が恐れているのは「3」だ。

 ただ、今のところ中国情報艦の活動は、どこの国でも行っている範囲に留まっている。
 米国防省スポークスマンも記者会見で、今回の事態について聞かれ、「詳しい状況は日本政府に聞いて欲しい」と述べる程度で、踏み込んだ発言を避けている。

 「中国はいったん始めた行動を簡単にやめない」(軍事評論家・古是三春さん)
ため、同じ事態が続くことが予想され、偶発的な軍事衝突につながる危険性もある。

 緊急事態に連絡を取り合う軍同士のホットラインが重要だが、日本は、隣国である中国、韓国とも結んでいない。
 韓国とは、関係改善の動きを受けて、今年になってホットライン設置で基本的に合意したが、韓国内での反発もあり、いつ設置するか未定だ。

 中国との間で「海上連絡メカニズム」を作る交渉は、昨年二年半ぶりに再開された。
 早期運用開始で双方が合意しているものの、細部で意見が合わず、足踏みを続けている。

 中国側の行動を見極める一方、軍事衝突回避への粘り強い努力が必要だ。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。


 日本政府としては、願ったりかなったり、になりつつある。
 中国の脅威が高まれば高まるほど、動きやすくなる。
 日本が下手にでたからといって中国もそれに順応するわけではない。
逆に嵩に来て横暴さを増してくるのは明らかであろう。
 とすれば、日本としては中国の脅威もどきから如何に日本国民を守るかが、政府の責務になる。
 そういう舞台を中国が自体が作ってくれるとなるなら、こんな運のいいことはない。
 まさに、棚ボタであろう。




【2016 異態の国家:明日への展望】


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