2016年4月30日土曜日

中国経済のハードランディングリスクが高まっている(9):中国は日本のように「中所得国の罠」を回避できるか?

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サーチナニュース 2016-04-30 06:34
http://biz.searchina.net/id/1608762?page=1

中国はかつての日本のように
「中所得国の罠」を回避できるか?

 2015年における中国の国内総生産(GDP)に占める第3次産業の割合は50.5%に達した。
 中国の経済成長に対する第3次産業の貢献度は年々大きくなっているが、中国メディアの張家口新聞網はこのほど、
 中国は第3次産業の発展だけでなく、
 やはり製造業を経済成長の柱として発展させるべきだ
と論じている。

 記事は中国国内には何でも米国と比較したがる人が多いと指摘し、
 「米国は金融を中心とした第3次産業によって世界一の経済大国の座に君臨している」
という見方が存在することに言及。
 米国企業も近年は製造業の国内回帰を進めているが、米国は決して第3次産業だけの国ではなく、自動車をはじめとする製造業も強い国だ。

 続けて、中国はそもそも製造業によって発展し、多くの労働者に就業の機会をもたらしてきた国であると指摘。
 中国という「大国」の経済成長は第3次産業だけでは支えきれるものではないとする一方、近年は多くの企業が製造業に携わろうとせず、IT分野などでの創業が増えていることは残念との見方を示した。

 中国は現在、「中所得国の罠」を回避できるかどうかの瀬戸際にあると言われる。
 「中所得国の罠」とは、1人当たりGDPが中所得の水準に達した後に、それまでの成長パターンの転換に失敗し、成長率が低迷することを指す。
 中国ではすでに政府高官からも
 「中国は中所得国の罠に陥る可能性が高い」
との見方が飛び出している。

★.日本が「中所得国の罠」に陥らずに、
 高所得国のレベルにまで経済発展できた1つの理由は、
 製造業における持続的なイノベーションにある
と言える。
 そうしたイノベーションを通して製造業の高度化を実現した。
 中国が中所得国の罠を避けるためには、製造業と既存の基盤のもとでの持続的なイノベーションが必要であり、研究開発を重視する企業を増やしていくことが重要になってくる。
 このようにしてイノベーションを生み出す地力を着実に養っていくなら、「中所得国の罠」を回避することも可能かもしれない。



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年05月12日(Thu)  塚崎公義 (久留米大学商学部教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6602?page=1

意外にも心配無用? 
中国経済失速が日本に与える影響とは

 急成長を続けて来た中国経済に変調が見られるようです。
 悪くすると不良債権が積み上がって90年代の日本経済のようになるという人もいます。
 世界第二の経済大国であり、米国と並んで日本の最大の貿易相手国である中国の経済が万が一失速するような事になったら、日本経済はどうなるのでしょうか?

■中国進出企業は大打撃だが……

 日本企業は、中国の安価で豊富な労働力を利用するため、積極的に工場進出を進めて来ました。
 最近では、現地の旺盛な需要に応えるべく、現地で作って現地で売るための工場の進出も活発化しています。
 そうした状況下、中国経済が失速することになると、進出している日系企業にとっては大きな打撃です。

 しかし、日本経済に対する打撃としては、心配するほどの事はないでしょう。
 現地に進出している日系企業は、資本こそ日本資本ですが、中国の企業です。
 彼等が仮に倒産したとしても、失業するのは中国人です。
 日本企業は、出資金を失うことになりますが、それが直ちに日本の景気に影響するものではありません。

■中国向けの輸出が激減したら……

 日本から中国に向けては、巨額の輸出が行なわれています。
  中国経済が失速して中国人が物を買わなくなったら、日本の輸出企業が大打撃を受けるでしょう。
 それが日本の景気を腰折れさせる事が懸念されます。

 しかし、中国経済の失速の度合いにもよりますが、日本経済への影響は、人々が心配しているほどは大きくならない可能性が高そうです。
 リーマン・ショックの再来といった事にはならないので、過度な懸念は不要です。

 日本から中国に輸出された物は、中国国内で消費される物もありますが、
 3割程度は加工されて米国等に輸出されていく物

です
 日本製品は品質は良いが値段が高いので、
 心臓部の部品だけは日本から輸入して、
 それ以外はアジアで調達して
 中国で組み立てて米国に輸出する、
という企業が中国には数多くあるからです。

 つまり、
 中国人が消費を減らしても、
 米国人の消費が減らなければ、日本から中国への輸出の一部は無傷だ
という事になります。
 リーマン・ショックの打撃が大きかったのは、
 米国の不況で日本の対中国輸出が減った事も一因でしたが、今回は逆のことが起きるわけです。

■人民元安になっても影響は小

 リーマン・ショックが日本経済に大打撃となった一因は、ドル安円高を招いたことです。
 リーマン・ショックで米国が不況になると、FRB(米国の中央銀行)が金融緩和をしました。
 米国の金利が低下したのです。
 これにより、日本の投資家が米国国債を買わなくなりました
 従来は
 「米国国債への投資は、為替リスクがあるから望ましくないが、
 日本国債より遥かに金利が高いことを考えれば実行する価値がある」
と考えた投資家たちが、円をドルに換えて米国債投資を行なっていましたが、そうした投資家が消えてしまうと、ドル買い需要が減少し、ドル安円高になってしまったのです。

 米ドルは基軸通貨であり、日本の貿易の多くはドル建てで行なわれていますので、ドル安円高は日本の輸出企業にとって大きな打撃となります。

 しかし、仮に中国経済が失速して、中国の中央銀行が金融を緩和して、円高人民元安になったとしても(日本と中国の間の投資には規制が大きいので、円高人民元安になるか否か、わかりませんが)、日本の貿易には大した打撃にならないでしょう。
 これもリーマン・ショックとの大きな違いの一つです。

■中国経済の失速は資源安を通じたメリットも

 中国経済はGDPこそ米国より小さいですが、
 資源消費量としては圧倒的に世界第一
です。
 その中国の経済が仮に失速すれば、
 世界中の資源価格が暴落する
ことは間違いありません。

 日本は資源に乏しく、その多くを輸入に頼っていますから、資源価格の暴落は日本経済にとって非常に大きなプラスになります。

 今回の原油価格の下落だけでも、
 「消費税の3%分を上回る輸入金額減」
となったわけで、アラブの王様が消費税増税分を返してくれたくらいのプラス効果があったわけです。

 以上を総合的に考えると、中国経済が仮に失速したとしても、失速の程度にもよりますが、日本経済への打撃はそれほど大きくならないと考えて良いでしょう。
 少なくとも、米国経済が失速した場合とは比べ物にならないほど小さな影響だ、
という事は覚えておきたいものです。

■そもそも中国経済は失速するのか

 そもそも中国経済は本当に失速するのでしょうか? 
 筆者は中国経済の専門家ではありませんが、中国経済の専門家たちの話を聞く限り、日本のマスコミで懸念されているほど中国経済は悪くない、という印象を持っています。

 おそらく、中国経済のウエイトが製造業や建設業からサービス業にシフトしつつあるのでしょう。
 これは、ペティ=クラークの法則に沿った自然な動きです。
 それにより、工業生産等は減っていますが、それによる雇用の減少分はサービス業がカバーしているので、それほど失業者が溢れているというわけでは無さそうです。

 中国のGDP統計等は信頼性が低いため、輸出入統計や貨物輸送料統計など、製造業関連の数字から中国経済の状況を推測しようとする場合が多いのですが、そうした試みでは製造業からサービス業へのウエイトシフトが起きている時に実態を見誤る可能性があります。

 今後も、中国経済の動向には要注目ですが、過度に悲観的な観測に惑わされない事が必要なのかも知れませんね。 



ロイイター 2016年 05月 16日 14:47 JST
http://jp.reuters.com/article/china-private-idJPKCN0Y707D?sp=true

焦点:中国、頼みの綱の民間投資が不振 
景気回復見通せず

[北京 16日 ロイター] -
  中国政府は、重工業中心の国有企業からサービス業中心の民間セクターへと経済の軸足を移したい考えで、民間企業の投資促進を期待している。
 ところが当の民間企業は景気改善を見通せず、投資を抑えているのが実情だ。

 中国東海岸の輸出基地である浙江省で衣料品企業を経営するブルーノ・チェン氏は
 「わが社は事業の拡大ではなく縮小を計画している。
 景気拡大の実感がまったく得られない」
と語る。
 上海から400キロメートルの土地にある衛生用品企業のゼネラルマネジャー、Xia Xiaokang氏も
 「昨年来、固定資産投資をほとんど行っていない。
 工場ビルが大きすぎるので一部を賃貸に出す計画だ」
と言う。

 3月の中国経済指標では景気がようやく持ち直したかに見えたが、14日に発表された4月の指標は、固定資産投資、鉱工業生産、小売売上高の伸びがすべて予想を下回った。
 1─4月の民間投資は5.2%の伸びにとどまり、
 中国国家統計局(NBS)が2012年に集計を始めて以来で最低となった。
 2013年には25%近く増加していたが、昨年は10%増と、減速ぶりが著しい。

 政策当局者が民間投資の減速を憂慮するのは、固定資産投資全体に占める割合が6割超と大きいからだ。
 国営メディアによると、
 民間セクターは中国の雇用の3分の1を担っており、
 都市部の新規雇用では90%を占める。
 NBSは14日の統計発表後、
 「民間投資総額は比較的大きいため、減速が続けば安定的な成長の足かせとなりかねず、高度の警戒を要する」
と指摘した。
 エコノミストによると、無数に存在する中国の民間中小企業は投資、イノベーション、生産性伸び率の主な源泉だ。
 国有企業に比べて資本効率が良いと見られているため、当局も重視している。

 中国国家発展改革委員会(NDRC)の調査官は
 「民間投資の弱さは根本的な問題だ。
 経済を安定させるため、中小企業と製造業の活力を解き放つ必要性がある」
と述べた。

 民間調査によると、製造業は人員削減を行っており、賃金にも低下圧力がかかっている。
 繊維業界は世界的な需要不振に直撃され、それを国内の需要増で補うことができていない。
 チェン氏の衣料品企業は従業員160人で、主に欧州向けに製品を輸出している。
 Xia氏は、ロシアとベネズエラの顧客が自国通貨の下落に苦しんでいる上、中東の一部では紛争によって顧客の態度が慎重化している、と説明した。
 欧州は横ばい状態で、東南アジアには期待が持てるという。
 「金利は低いのに投資は減少している。
 これは国内外を問わず、市場全体の状況が良くないことの証左だ」
とXia氏は語った。

■<景気対策も効かず> 

 政府は昨年来、景気刺激策を実施してきたが、エコノミストによると刺激策は自ずと公共セクターが対象で、民間企業の課題解決には結びついていない。
 特に、民間企業が最も苦しんでいる製造業の不振には手を打てていないという。

 事実、国有セクターの固定資産投資は1─4月に前年同期比23.7%も増えている。
 政府はインフラプロジェクトへの民間投資を奨励してきたが、使えない資産を民間に押し付ける口実にすぎないとの指摘もある。

 中国国家情報センターの首席エコノミスト、Zhu Baoliang氏は
 「(民間企業は)収益性の高いプロジェクトが見つからず、将来に自信を持てないでいる」
と述べた。

(Kevin Yao記者)


中央日報日本語版  5月20日(金)13時45分配信 アン・ヒョンシル論説・専門委員/経営科学博士
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160520-00000028-cnippou-kr

韓経:【コラム】中国の成長が止まる日=韓国

  「中国の成長が止まれば…」。
 単なる想像ではない。
 米国家情報会議(NIC)が4年ごとに大統領に対し、5年単位の「グローバルトレンド」を報告することはよく知られている。
 このグローバルトレンドの執筆責任者マシュー・バロー氏が在職中には明らかにできなかったとして、
 今後世界を変化させるかもしれない4つの波乱要因
の一つに中国の破綻を含めた。

◆中国の「民主化のない革新」に限界

 バロー氏が明らかにした内容には目を引くものが少なくない。
 「中国からはiPhoneが出てこない」
 「歪んだ経済成長」
 「共産党も抑制できない人民の欲求」
 「中国共産党も民主化を望む」
など。
 結局、中国が個人の自律と創意を基礎とする「革新主導経済」に移行するには民主化が避けられないというメッセージだ。
 中国の制度的アキレス腱に触れたのだ。

 これは「18世紀の産業革命がなぜ中国で起きなかったのか」に対する視点を思い出させる。
 当時の中国の主要発明を考えると、こうした疑問が出てくるのも無理はない。
 いわゆる「ニーダムパズル(Needham puzzle)」だ。
 
 謎を解くための多様な分析が出てきたが、その解答も制度的な問題に探す人が少なくなかった。
 科学に対する視点、高等教育制度、知識の拡散体制、特許制度のような経済的誘引制度、知識と情報の中心である都市の役割などが、英国と中国の運命を変えたということだ。
 石炭の発見や植民地など歴史的偶然を排除した西欧優越的な視点だと罵るかもしれないが、中国が高度成長過程で採択した制度を見るとこれを否認するのも難しい。

 中国共産党指導部で供給側の構造改革をめぐり内紛が生じているという分析だ。
 習近平主席、また匿名の人物が人民日報を通じて一斉に供給側の構造改革を強調するのがおかしいということだ。
 少し振り返ってみると、中国共産党が2014年に「新常態(中国版ニューノーマル)」を持ち出して人民日報にシリーズで明らかにした内容と特に変わらない。
 にもかかわらず、これを繰り返すというのは、何か内部で路線闘争がある傍証という解釈が可能だ。
 これは供給側の構造改革が思い通りに進んでいないことを示唆する。

 中国がニューノーマルを叫んで成長動力を転換するというのは、革新主導経済に進むということだ。
 しかし生産要素の投入や投資主導経済とは違い、革新主導経済でも「共産党+市場経済の組み合わせ」が通用するかが問題だ。
 習主席は供給側の構造改革について西欧の新自由主義とは違うというが、革新を強調するほど従来の政治体制との衝突は避けられない。
 もしかすると中国共産党は経済が崩壊する場合に備えて、捕まえる犠牲の羊や人民への弁解を探しているのかもしれない。

◆韓国はどんな対応をしているのか

 中国も中国だが、心配なのは韓国だ。
 中国の成長率が半分になれば韓国はチリ、台湾に続いて世界で3番目に大きな打撃を受けるというのがスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の予想だ。
 そうでなくとも韓国経済は「不況の沼」に陥ったという診断もある。
 韓国経済こそ革新主導型に進めなければ何もできず沈み込んでしまいそうだ。
 しかし数日前の大統領主宰の規制改革長官会議では、大統領の一場の訓示(?)に続き、改革対象者が経済が崩壊する場合に備えて抜け出す穴ばかり探すという感じだった。
 このままでは韓国の成長が止まる日が先にくるのではないか心配だ。

※本記事の原文著作権は「韓国経済新聞社」にあり、中央日報日本語版で翻訳しサービスします。


サーチナニュース 2016-05-26 11:36
http://biz.searchina.net/id/1610640?page=1

まだ減るのか・・・日本製造業の対中投資、
さらに減少の恐れ=中国

 中国で人件費が上昇しており、メーカーにとって最大のメリットであったコストメリットが失われつつある。
 ただでさえ日本企業にとって中国は政治的リスクのある国であるうえ、コストメリットが失われれば、中国から撤退もしくは移転を選択するメーカーが増えるのは当然だ。

 中国は世界の工場としての立場を失う一方で、人件費の上昇に伴って人びとの消費能力は上昇しており、市場としての魅力は増している。
 だが、メーカーとしては中国で生産し続けるよりも、人件費の安い東南アジアで生産し、中国に運んで販売したほうが利益率が高くなるということだろう。
 事実、世界的なメーカーの一部はすでに中国での生産を減らし、東南アジアでの生産比重を高めてきている。

 中国メディアの一財網はこのほど、中国社会科学院日本研究所や全国日本経済学会がこのほど、研究成果をまとめた報告書を発表したことを伝え、
 「今後、日本メーカーの対中投資規模はさらに減少する可能性がある」
と分析したことを紹介した。

 記事は、中国経済の減速や人件費、さらには各種調達コストの増加、激化する競争に伴う売上高の減少といった要素により、中国から撤退もしくは対中投資を抑える日本企業が増えつつあることを指摘。
 中国商務部によれば、2015年1-10月における日本の対中投資は前年同期比25.1%減と大幅に減少したが、報告書では日本の対中投資は今後さらに減少する可能性があり、日本の対中輸出にも影響が及ぶ恐れがあると伝えた。

 中国の地方部は今なお製造業が経済の柱という地域も多い。
 製造業が多くの雇用を現地にもたらしているわけだが、製造業以外の産業が育っていない地域にとっては企業の撤退は雇用の喪失を意味するため、そう簡単に諦めることはできない状況だ。

 中国メディアの捜狐は3月、中国の地方政府関係者が日本を訪れ、日本企業に対して中国へ投資するよう呼びかけるのに必死になっていると伝えている。
 中国の各地方政府にとっては、雇用を創出し、技術も導入してくれる日本企業の力が今なお必要なのだ。


熊本地震:余震続く「熊本地震」 震源はどのように広がっていったのか?

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毎日新聞 4月30日(土)2時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160430-00000012-mai-sctch

 <熊本地震>半月 地震、やまぬ連鎖 回数は1000回超 

◇M5可能性、今後も

 熊本地震から半月。
 地震回数は既に1000回を超え、29日には大分県で震度5強の地震があり、被災者は不安を募らせている。
 地震はいつまで続くのか、さらに広域化するのか、阿蘇山噴火への影響は--。
 専門家によるこれまでの調査から「連鎖地震」の姿を追った。

 「徐々に地震の回数は減っており、終息する方向にあると思う。
 ただし、少し大きな地震と小さな地震が起きながら収まっていくので、今回よりもう少し大きい地震が発生することはあり得る」。
 佐藤比呂志・東京大地震研究所教授(構造地質学)は、大分県側の地震について説明する。

 熊本地震は14日に日奈久(ひなぐ)断層帯でマグニチュード(M)6.5、16日には隣接する布田川(ふたがわ)断層帯でM7.3の地震が起き、いずれも最大震度7を観測した。
 その後、阿蘇地方や大分県側にも「飛び火」のように拡大し、16日に同県中部でM5.4、最大震度5弱の地震が起きた。

 大分側の地震について産業技術総合研究所の石川有三・招聘(しょうへい)研究員(地震学)は、別府-万年山(はねやま)断層帯の一部の由布院断層で起きた可能性が高いと指摘。
 その上で
 「29日の地震でも震源域は広がっていないようだ。
 新たな地震活動の誘発を心配することはない」
と話し、M7級の地震が起きる可能性は低いとみる。

 熊本、阿蘇地方を含めた今回の震源域全体の地震活動は今後どうなるのか。
 石川研究員は
 「2004年の新潟県中越地震では本震の2カ月後にもM5級の地震が起きている。
 現在の震源域内でもM5級の地震が起きるかもしれない」
と警戒を呼びかける。

 一方、日奈久断層帯について、林愛明・京都大教授(地震地質学)は
 「南西区間約30キロが割れ残っている」
と説明。
 全体で長さ約81キロとされる同断層帯の南西部分で、今後も大きな地震の可能性があると注意を促している。

◇震源域の広域化 「沖縄トラフ」に注意

 地震の震源域がさらに広域化することはあるのか。
 西日本に甚大な被害が想定される南海トラフ地震との関連には、多くの専門家が懐疑的だ。
 山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大教授(地震学)は
 「(南海トラフ地震の前に)内陸で地震が活発化するのは、西は中国地方まで」
と、熊本地震が南海トラフ地震の前兆との見方を否定する。

 むしろ、関連が指摘されるのは、九州西方沖から台湾の北方に広がる海底盆地「沖縄トラフ」だ。
 トラフの地盤には南北に引っ張られる力がかかっており、熊本地震が起きた別府-島原地溝帯はその延長線上にある。
 昨年11月14日には、同トラフ領域の薩摩半島西沖でM7.0の地震が発生。
 鹿児島・佐賀両県で最大震度4を観測した。

 古村孝志・東大地震研教授(地震学)はこの地震を「一連の地震活動と捉えられる」として、熊本地震の「前触れ」だった可能性に言及。
 松島健・九州大准教授(固体地球物理学)も
 「熊本地震と地盤のずれ方が似ている。
 同じ別府-島原地溝帯に位置する島原半島をはじめ、沖縄トラフにかけての広い地域で大きな地震が起きる可能性がある」
と指摘する。
 一方、中村衛・琉球大教授(地震学)は
 「熊本に近い領域での影響はあり得るが、遠い沖縄には及ばない」
とみている。

 九州東部には四国から近畿に及ぶ国内最大級の断層群「中央構造線断層帯」が伸びる。
 16世紀末に別府湾で起きた大地震の4日後に近畿でも大地震があり、関連性が指摘されているが、熊本地震の影響が中央構造線に及ぶかについては、専門家の間でも意見が分かれている。
 松島准教授は
 「一連の地震は中央構造線の延長線上で起きており、連鎖してもおかしくない」
と指摘。
 これに対し、古村教授は
 「別府-島原地溝帯は中央構造線と力のかかり方やできた経緯が異なり、力は及ばないのではないか」
と連鎖に否定的な見解を示す。

◇阿蘇山への影響 マグマ圧力低下か

 阿蘇山への影響はあるのか。
 防災科学技術研究所の藤田英輔・総括主任研究員(火山物理学)の解析により、本震を引き起こした布田川断層帯に最も近い火口直下のマグマだまりが、南西方向に40センチほど引っ張られて「ラグビーボール状」に変形した可能性があると分かった。
 中岳火口周囲の地盤が最大約30センチ沈下したとする国土地理院の解析結果とも一致し、マグマだまり内部にかかる圧力が地震前に比べ数%下がった可能性があるという。

 阿蘇山は一昨年、21年ぶりにマグマ噴火が起きるなど近年、活発な火山活動が続いている。
 本震後の16日には小規模噴火があった。
 だが、火山噴火予知連絡会副会長の石原和弘・京都大名誉教授(火山物理学)は
 「地表近くのマグマだまりが伸びて内部の圧力が下がったのなら、火山活動の勢いがそがれる可能性が高いのではないか」
と指摘する。

 一方、阿蘇、大分の両震源域間の「空白域」に位置する活火山の九重山(くじゅうさん)について、東大地震研の中田節也教授(火山学)は「熊本地震により、熱水がたまった浅い地盤の強度に影響が及んだ可能性がある。
 過去にも水蒸気噴火が起きており、今後の火山活動に注意が必要だ」と注視する。



THE PAGE 4月29日(金)17時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160429-00000002-wordleaf-sctch&p=1

余震続く「熊本地震」 震源はどのように広がっていったのか?

 いまだ余震が続く熊本地震。今回の一連の地震では、本震の震源断層の周辺で地震が起こるだけではなく、熊本、阿蘇、大分と連鎖的に飛び離れた地域に地震活動が広がっています。
 前震や本震のメカニズムは断層の「横ずれ型」とされていますが、活断層はどのようにずれ、地震活動はどのように広がっていったのでしょうか。
 静岡大学防災総合センター客員教授・石川有三氏に解説してもらいました。


[図1]熊本県の主な地震・火山の分布。茶色長方形は、地下の震源断層(大分の長方形は1975年大分県西部地震)、赤色×印は主な震源で一つだけ大きい×は本震の震源。本震は震源断層の南西端から破壊が始まり、北東へ広がった。茶色線は地表活断層線、ピンク色△は活火山(参照:東大出版会「新編、日本の活断層」)

■「前震・本震型」か「群発型」か

 2016年4月14日午後9時26分ごろ、マグニチュード(M)6.5の地震が熊本県益城町(ましきまち)の地下で起きました。
 この地震(※注1)では、益城町で震度階級の最大震度7が観測されました。
 震源断層は南西側へ延び、宇城市直下まで達したようです(図1参照)。
 その後、15日午前0時3分ごろにM6.4の地震が起き、熊本県宇城(うき)市で震度6強を観測しました。

 一般的に、大きな地震は「本震」が飛び抜けて大きく、マグニチュードは最大の「余震」より1以上大きくなります。
 神戸が特に大きな被害を受けた兵庫県南部地震(阪神大震災)では、本震がM7.3ですが、最大の余震は本震の4分後におきたM5.2(本震との差2.1)でした。
 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でも、本震がM9.0で、茨城県沖で起きた最大余震はM7.6(差1.4)でした。

 このように大きな本震の後に、小ぶりの地震が多数続いて起きる場合は、「本震・余震型」と呼ばれます。
 大半の地震がこの型に当てはまります。
 しかし、ときどき本震のマグニチュードに近い余震が起きるケースがあります。
 2004年の新潟県中越地震の場合がそうです。
 このときは本震がM6.8でしたが、余震がM6.5、6.3、6.1、6.0と本震のマグニチュードと近い地震(最小差0.3)がいくつか起きました。
 こういう場合は、本震・余震型とは言わず、「群発型」と呼んでいます(※注2)。

 このほかに、最初にやや小さい地震が起き、その後に最大の地震、本震が起き、余震が続く場合もあります。
 このような場合は、「前震・本震・余震型」と呼ばれています。
 実は東日本大震災はこの型でした。
 ただ「前震」の中で3月9日に起きた最大地震はM7.3と大きいものでした。
 そのため、これが前震であとにもっと大きな地震が続いて起きると考える人は多分いませんでした。

 今回の熊本地震も、M6.5(当初6.4)の地震が起きた後、その2時間37分後にM6.4(当初6.1)の地震が起きました。
 その時点で、群発型の活動か?
と思った研究者も多かったと思います。
 前震かも知れないと考える人も中にはいたかも知れませんが、これが前震活動だと推定出来る根拠はありませんでした。
 残念ながら、今の学問のレベルでは起きている地震活動が前震であると断定できる手法はありません。

(※注1)地震は、押されている地下の岩石が耐えきれなくなって断層面を境に急にズレが起き、そのためまわりに震動が伝わる現象
(※注2)群発地震の代表例は、長野県松代町(現・長野市)で起きた松代群発地震が有名。
 主な活動は1965年から1967年だが、その間、最大M5.4の地震が2回、M5以上が20回、有感地震は6万2826回と地震が頻発した

■2つの大地震と2つの活断層

 そして、最初の地震から約28時間後の16日午前1時25分ごろにM7.3の地震が最大前震の北西側で起きました。
 この地震では、関東地方を含め山形県までの広範囲にわたり有感地震になりました。
 韓国でも釜山や済州島で有感でした。

 この地震の震源断層は、長さは約30キロで熊本市と嘉島町(かしままち)の直下から東は阿蘇山麓まで達し、北側の地盤が南側の地盤に対して東へずれる右横ズレ断層(※注3)でした。
 これは阿蘇外輪山の西側斜面から熊本市の南部を北東から南西へ横切り、宇土(うと)半島の先端に至る布田川(ふたがわ)断層帯と呼ばれる活断層に地表で一致していました。
 断層面は、北側へ約80度で傾斜し、その面上で最大約3.5メートルのズレが生じたと推定されています。
 観察された地表でのズレは最大で約2メートルに達したと報告されています。

 一方、M6.5の最大前震は、布田川断層の途中の益城町から南西へ分岐した日奈久(ひなぐ)断層帯の一部の活断層が右横ズレをおこしたものです。
 このため、震源断層の真上に位置した益城町では震度7という非常に激しい震動でした。
 日奈久(ひなぐ)断層帯は、南西方向に延び八代海南部に至ります。

 布田川断層と日奈久断層の位置関係は、カタカナの「イ」の文字を右に少し回転させたような配置で、縦棒が日奈久断層にあたります。
 どちらも右横ずれの動きをしています。

(※注3)右横ズレ断層とは、断層を境にして自分が手前に立ち、相手が断層の向こう側に立っていたとき、断層のズレがおきたとき、相手が右側へ移動した場合です。
 反対に相手が左側へ移動すると、断層は左横ズレ断層になる



●[図2]防災科学技術研究所Hi-net自動震源による4月14日から23日までの震源分布。深さ30キロまでのすべての震源。
 本震や最大前震の震源断層付近だけでなく、広い範囲で地震が起きていることが分かる。
 茶色長方形とピンク△は図1と同じ

■なぜ余震活動がここまで活発なのか

 M7.3の本震後、地震活動が震源断層周辺の余震活動だけでなく、飛び離れた地域まで広がりました。

 一つは、本震の震源断層の北東延長にあたる阿蘇市です。
 本震から約1時間半後の16日午前3時03分ごろにM5.8の地震が阿蘇市直下で起き、震度5強が観測されました。
 そのわずか約50分後に産山(うぶやま)村直下で同じくM5.8の地震が起きました。
 これらは、本震との相乗作用もあって阿蘇地方に大きな地滑り被害をもたらしてしまいました。

 地震活動の拡散はこれだけに収まらず、阿蘇地方の地震の約4時間後に、九重火山や1975年M6.4大分県西部地震の震源域を飛び越え、大分県湯布市直下でM5.4の地震が起きました。
 こちらも最大震度5弱が観測され、被害をもたらしました。
 このように本震の余震域から連続して広がるのではなく、飛び離れた場所に地震活動が誘発された例は余りなく、非常に珍しいことです。

 余震活動は南西側へも広がり、宇城市で16日午前1時30分ごろにM5.3の余震が起きました。
 もっと小さな地震は八代(やつしろ)市にも広がり、水俣市の沖でも起きています(図2参照)。

 余震の回数も日本の内陸および沿岸で近年発生した地震の中では特に多く、最多だった2004年中越地震を上回りました。
 これは群発的だった前震群と本震が別の断層で起きている上、阿蘇地方の地震活動、大分県の地震活動と離れた場所の地震活動を引き起こしたので、合計して回数が多くなっています。

 そして、2004年中越地震の例では、本震から2か月余り経ってもM5.0の余震が起きています。
 震源域から少し離れた場所では約10か月経ってM5.0の地震が起きています。
 ですから今回もまだしばらく注意が必要です。

■内陸地震の後に噴火誘発の例はないが……

 九州の内陸で起きた地震で過去最大として知られているのは、1911年に起きたM7.1の桜島地震です。
 ただ、これは大正の桜島噴火に伴ったものなのでやや他の地震と性格が異なるものです。
 沿岸部に起きたものとしては、2005年のM7.0福岡県西方沖地震です。

 すると、今回の熊本地震は、過去最大の「内陸地震」であったわけです。


 図3に過去の震央や震源断層を一緒に示しました。
 これを見ると九州内陸直下でM7を超える地震は今回が初めてです。

 この地震によって火山噴火が誘発されることを心配される方もおられますが、これまでの九州内陸地震の直後に火山噴火が誘発されたことはほとんどありません。
 例外的に1922年12月8日M6.9橘湾の地震の約1か月後に阿蘇山の噴火が起きたことがあるくらいです。

 ただ、今回の地震は、内陸で過去最大のマグニチュードの地震であったことと、震源断層が阿蘇の外輪山まで達しており、これほど火山の近くで大きな地震が起きた例は少ないので、その影響ははっきりと分からないところもあります。

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■石川有三(いしかわ・ゆうぞう) 京都大学理学研究科博士課程中退、中国地震局地球物理研究所に1年留学、気象庁入庁後、気象研究所地震火山研究部主任研究官、研究室長、精密地震観測室長、地磁気観測所長を歴任。1990年運輸大臣賞受賞。現在は、国立研究開発法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門招聘研究員。静岡大学防災総合センター客員教授も兼務。専門は、地震学・地震予知




【2016 異態の国家:明日への展望】


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2016年4月29日金曜日

チャイナマネーは何処へいく(5):越境EC(電子商取引)、ネットショッピングでの個人輸入、10兆円を超える巨大市場

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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年04月29日(Fri)  高口康太 (ライター・翻訳家)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6670?page=1

「メリーズが買えない!」
中国人のネット爆買いを追う
口コミ作りのステマも横行する越境EC

 自国製、自国民の検品に対する不信感から、
 国境を超えたECでも〝爆買い〟している中国人。
 個人を中心に急拡大してきたことで、メーカーだけでなく物流企業も動き始めた。


©辣椒

■10兆円を超える巨大市場

 2015年の新語・流行語大賞に選ばれた「爆買い」。 
 日本への買い物旅行を意味する言葉だが、中国でもう一つの「爆買い」がブームとなっている。
 それが越境EC(電子商取引)だ。
 ネットショッピングを通じた海外製品の個人輸入を意味するが、10兆円を超える巨大市場になっている。
 ブームの影響は個人による輸入代行から企業まで広がってきた。

 「ドラッグストアを車で回ってオムツを買い占めていました。
 花王のメリーズです」

 そう話すのは20代前半の中国人留学生。
 15年初頭までドラッグストアなどの小売店を回って、中国人に人気のオムツや化粧品を購入、ブローカーに転売する仕事に従事していたという。

 ドラッグストアの紙オムツのコーナーでメリーズの棚だけ空っぽになっている光景を見たことはないだろうか。
 その理由は彼らのような越境ECの買い付け代行業者にある。

 「オムツの場合だと1パッケージあたり200~300円をプラスして買い取りしてくれました。
 友人の車でドラッグストアを回っていましたが、1日に30軒、150パッケージを買ったこともあります。
 1日あたり3万円以上の収入です。
 友人と2人で分けても割りのいいアルバイトでした」
と話す。

 貿易商社を営む孟建軍さん(仮名)は買い付け業者が小売店を回って買い集めた商品を買い取り、中国へと送っていた。
 孟さんは
 「最盛期には集まったメリーズ1万2000パッケージを3つのコンテナに詰め込んで中国に送っていたこともある」
と語る。

 メリーズを製造する花王の広報部は、
 「一時期に比べれば買い占めは減り、増産で空っぽになることもなくなっている」
とする。
 花王の15年12月期連結決算はメリーズの売り上げが好調なことも一因となり、純利益988億円と最高益を更新した。
 今期も1000億円の大規模な設備投資を計画し、紙オムツの国内生産を増強する方針だ。

 小売店では中国人に人気がある大型のサイズで品薄が続く。
 ドラッグストア大手「くすりの福太郞」の営業担当者は
 「中国人の買い付けでメリーズの一部品種に欠品が出ないよう、販売を規制して調整している」
と語る。

 日本人の中にも越境EC事業を営む人々がいる。
 中国でベビー用品のネットショップを経営していた内田信さんは、ブームを受け中国EC企業向けの卸売企業を設立。
 初年度の14年だけで5億6000万円を売り上げた。

 個人で取り組んでいるのが増山智明さんだ。
 15年1月からECサイト「淘宝網(タオバオ)」で本格的に個人ショップ運営に取り組んだが、初年度の1年間で2000万円の売り上げをあげた。
 「チャットで1日に20~30件くらいの問い合わせに対応している。
 10元まけろという相談から、日本を訪問するのにあわせたSIMカードの販売まで、細かいニーズに応じて顧客を増やしてきた」
と語る。

■口コミを作る難しさ? パワーブロガーを詣でる

 人気なのはメリーズに加え、資生堂の日焼け止め「アネッサ」、MTGの美顔器「リファカラット」、花王のホットアイマスク「めぐりズム」などだ。
 現在売れている商品のほとんどは口コミやネット情報によって人気を得たもので、偶然の要素が強い。

 ブランディング戦略の主流となるのが「パワーブロガー」を使ったSNS広告だ。
 現在、中国では「網紅経済」(ネット有名人エコノミー)という言葉が流行している。
 テレビや新聞、雑誌などの伝統メディアよりも、SNSや動画サイトで数十~数百万のフォロワーを持つパワーブロガーのほうが消費者に強い影響力を持つとされる。
 ベンチャーファンドがブロガーに融資する事例も相次いでおり、16年1~3月だけで5830万元(約10億円)がパワーブロガーに融資されたと中国メディア・投資界は報じている。

 日本では中国進出支援のコンサルティング企業が乱立しており、「まずは50万元かけましょう」などの言葉で、いずれもこのSNSマーケティングを推奨している。

 しかしネット有名人を使ったマーケティングは多くの企業が行っており、そう簡単に効果はでない。
 フォロワー数や閲覧回数の偽装も横行している。

 日本でもステマ(ステルスマーケティング)が問題になっているように、仲介企業やネット著名人の真贋を見分けるのは至難の業。
 日本在住の著名SNSユーザー「林萍在日本」さんも
 「私自身が良いと思った商品だけだが、日本企業に頼まれて微博(ウェイボ)で広告を〝つぶやいた〟ことがある。
 ただ粗悪品の宣伝をするパワーブロガーが多く、
 中国人消費者がSNS広告に反応しなくなる日は近い」
と語る。

■いまだぬぐえぬ?中国国内製品への不信感

 「子どもにはお金がかかっても仕方がないですよ」
 と話すのは昨年出産したばかりの王亜男さん。
 「最近も温度管理されていないワクチンが流通していたという事件がありましたが、中国にはニセモノや粗悪品が多すぎます。
 子どもにはちゃんとしたものを与えたいんです」。

 越境ECで紙オムツ、ベビー服、哺乳瓶、さらには妊娠中に着用する電磁波遮断エプロンまで買いそろえたのが孫毅さんだ。
 ほぼすべて日本製でそろえたが、福島原発事故の影響を恐れて粉ミルクだけはドイツ製にしたという。
 確かに値段は中国製よりも高いが、中国に進出している日本の百貨店と比べればリーズナブルだと語った。

 中国製品、とりわけベビー用品に対する不信感を募らせたのが08年のメラミン混入粉ミルク事件だ。
 樹脂の原料となるメラミンを生乳に添加することで、タンパク質含有量が高く検出されるようごまかしていた事件だ。
 5万人もの乳幼児が腎結石などの健康被害を受けた。
 事件後、粉ミルクをはじめ海外製のベビー用品の需要は一気に高まった。

 日本製の人気に、日本の物流企業も目をつけ始めた。
 ヤマトホールディングスは5月から中国EC大手「京東集団」と提携した越境EC支援サービスを開始する。
 これまでも中国郵政集団傘下の企業と提携して、日本メーカーから中国消費者までを直通する物流サービス「ヤマトチャイナダイレクト」を提供していた。

 今後は自前では越境ECサイトに出店できない企業向けに、京東集団の運営する越境ECサイト「京東全球購(JDワールドワイド)」で商品だけ出品する場を提供して、「ヤマトチャイナダイレクト」の更なる収入増を狙っている。
 一方日本郵政はファミリーマートと提携、ファミリーマートの海外店舗を拠点とする越境EC支援を実施する。

 中国国家統計局によると、13年の越境EC輸入額は3658億元(約6兆2200億円)。
 これが14年には1・5倍近い5320億元(約9兆500億円)へと跳ね上がっている。
 今後も成長が続き、17年には1兆2960億元(22兆300億円)に達すると予測されている。

 急成長を実現させたのが中国EC最大手アリババの「天猫国際(Tモール・グローバル)」、2位の京東集団のJDワールドワイドなど大手EC企業による越境ECサイトの開設だ。
 彼らが目をつけたのは保税区を使った越境ECのスキーム。
 保税区に海外から商品を持ち込む時点では関税がかからないことを利用し、各EC企業は、ネットショップを通じて注文を受けると、保税区の倉庫から宅配便で発送する。

 消費者から見れば、越境ECとはお手軽かつ比較的安価に信頼性の高い海外商品が購入できる仕組みだ。
 海外企業にとっても低コストで中国向けビジネスを展開できるというメリットがある。
 輸入販売や物流にかかわる新興企業が続々誕生し、新たな雇用を生み出す効果もある。

 一方で越境ECは中国企業、小売り業の需要を奪う存在でもある。
 中国の李克強首相は3月の全国人民代表大会政府活動報告で越境ECは成長スポットとして言及しつつ、あくまで輸出促進という観点にとどまり、輸入については触れなかった。

■中国政府が狙う「インターネット・プラス」

 中国政府は新たな成長分野として「インターネット・プラス」を提唱し、ITを活用した新たな産業の保護、育成に努めている。
 越境ECもその一つだ。
 しかし業界関係者は保護から規制へと政府の方針が急変する可能性もあるとの不安感をぬぐいされないできた。

★.転売を目的として大量に商品を仕入れても関税を逃れていること。
★.越境ECによる輸入が昨今問題となっている資本流出につながること、
★.そして中国小売業の売り上げを奪っていること。
 この3つの理由があるだけに規制に転じても不思議ではないと考えられてきた。

 実際に中国国家外貨管理局は1月から、中国国内に口座を持つ人々が持つ「銀聯カード」で、海外において外貨を引き出す際の上限額を、最高10万元(170万円)までと規制。
 ついに引き締めが始まったとの警戒感が高まった。
 そして4月8日、越境EC業界に大きな反響を呼んだ新規定が導入された。
 財政部、税関総署、国家税務総局連名の通達だ。
 まず行郵税が従来の10~50%から15~60%に改訂された。 
 保税区スキームを使った越境ECにおいて、今後は行郵税を適用せず、国内取引同様に増値税、消費税(奢侈税)を支払うことが求められる。
 ただし税率は国内取引の70%と低く抑えられたため、12~33%程度となる。

 影響が大きいと見られるのは付帯条件で、税額50元以下の商品への非課税措置が撤廃された。
 これまでは税額20%の品種の場合、売値250元までの商品は非課税となってきた。
 撤廃によって人気であるの日用品の価格が10%以上上がることになる。

 またポジティブリストが導入され、保税区スキームが適用できるのはリストに記載された品種のみと規定された。
 加えて化粧品に関しては事前に当局への登記が義務づけられたため、海外で販売されている商品をそのまま輸入できるという「手軽さ」が失われてしまった。
 煩雑な登記を避けて、日本からの直送が再び主流になる可能性もある。

■抜け穴はいくつでもある

 「越境EC壊滅の危機」と報じる中国メディアもあるが、前出の貿易商社を営む孟建軍さんは
 「銀聯カードは中国国内のあらゆる銀行、家族の名義などを使えばいくつでも作れる」
と意に介さない。
 別の業界関係者も
 「化粧品登記の問題でも抜け穴はある」
と発言した。

 規制がかかっても抜け穴を必ず見つける中国人たち。
 突発的な政策変更によって一時的な混乱はあったとしても成長のチャンスはあると確信しているようだ。
 中国政府系機関の中国インターネット情報センターの報告書『中国インターネット発展状況統計報告』(16年1月)でも越境ECは今後年60%のペースで成長を続けると予測している。

 大きく人民元安にでも振れない限り、中国人による越境ECブームに終わりは見えない。

2016年4月25日月曜日

上海で住宅バブル再燃の怪(2):各地でゴーストタウンが生まれた中国、 在庫解消にかかる時間は4年から5年

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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年05月11日(Wed)  高田勝巳 (株式会社アクアビジネスコンサルティング代表)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6731

上海の不動産が大変なことになってます!(その2)
売り手と買い手の認識のギャップ

  本年3月5日にアップさせていただいた、「上海の不動産が大変なことになってます!」の後日談がまた面白いので紹介したい。

 不動産価格の上昇も早かったが、今回当局の対応も早かった。
 3月24日は上海市政府が、不動産の急上昇を抑える対策を発表した。
 主な政策は、今回の不動産の急上昇の原動力になっていた主要な買い手である上海市以外の戸籍を持つ買い手に対する制限だ。

■上海市以外の人が上海の不動産を欲しがる理由

 なぜ上海市以外の人が買いたがるかといえば、上海の不動産を買えば、上海戸籍は取れなくとも、上海の居住証と子息に上海の公立学校で教育を受けさせることができる権利を取得できるからだ。
 中国には、上海に居住したい中国人が数億人単位でいると言っても差し支えないであろう。

 そこで、元々は上海の不動産を購入する前の2年間に合法的な納税と社会保険納付の記録があれば、上海の不動産を購入できたものを、今回の政策で5年延長した。

 これにより、多くの外地の人が上海の不動産を欲しくても、買えないことになり、上海の不動産は一気に落ち着きを取り戻した。
 反対に言えば、5年以上合法的に収めてきた人が多くないということになるが。

 と言っても値段が下がったわけではなく、
 ほぼ上がったままの価格で落ち着いたということ。
 ただ、上海の不動産仲介会社によると、その政策後は市場の雰囲気が売り手市場から買い手市場に一気に変わったとのこと。
 今回の相場で大きく売買が動いたのは3月の政策発表前までで、高めの売り出し価格を付けて、売れ残った物件はなかなか買い手がつかないと。

 ちなみに、中国の毎日経済新聞によるとこの政策が発表されて前日に駆け込み需要が集中し、上海の一日の新築物件の販売件数が、なんと1700件、総面積で20万平方メートルを超えたとのこと(こうした情報が事前に漏れるところが中国らしくて面白い)。
 少なくとも、これまで在庫物件に苦しんでいた不動産デベロッパーを救い、さらなる土地の仕入れを促進したいという政府の目論見は見事に成功したといえる。

■賃貸物件も値上がりし、日本人にも影響

 とはいえ、今回の上げ相場、中国房地産協会発表のデータで見ると、平均で前年同期比30%程度の上昇となっている。
 ただ、人気のある上海中心部では50%超、上がったところもあるほどの過熱であったわけだが、これにより一時取得者のハードルはより上がり、また賃貸価格も急上昇している。
 日本の駐在員も契約更新による値上げで更新できず、より条件の悪い物件に移るケースも出てきているようだ。

 また、値上がりを見込んだ業者が一棟もののサービスアパートを買収し、リノベーションした上で高値で分譲したり、さらに高級なサービスアパートにしたりして、より高値で賃貸する動きも活発になっている。
 日本人が多く住む虹橋地区でも同様の事例があり、
 日本人の世帯が百数十単位で追い出されるケースも出ており、同地区の賃貸市場の高騰に拍車をかけている。

 同じく中国房地産協会発表のデータで見ると、上海の賃貸料は平均で前年同期比20%近くの上昇となっており、日本人が多く住む虹橋地区の人気物件の賃料の上げ幅はそれを上回るケースも多いようだ。

■シンガポール、香港の投資家が売り逃げた?

 さて、今回私は複数の不動産仲介業者や最近不動産を買った友人と話をしていて面白い点に気がついた。
 どうも今回の相場で売り手に回っていたのは、香港、台湾、シンガポールなどの 華人投資家と、その他の外国人投資家が多かったということ。
 私の友人である上海で工場を経営する奥様が中国人のフランス人ファミリーも5、6軒の不動産を所有していたが、昨年から今年にかけて全て売却し、今は豪華な賃貸マンションに住んでいる。

 これには、最近世界で言われている中国経済のハードランディング懸念も影響されているようで、
 ここが売り時と感じた投資家が一気に売りに出た模様だ。
 その背景には、これまで多くの不動産投資をしてきた香港財閥の李嘉誠が中国不動産のポジションをほぼ売却し終わったという話や、ジョージ・ソロスが今年1月に語った中国経済のハードランディング懸念が根拠になっている模様である。

 前者が売却した原因は、中国の先行きに対する懸念も確かにあるが、それよりもこれまでのようなおいしい思いを中国でさせてもらえなくなったからではないかと、私は想像している。
 後者については世界的な影響力は強すぎる大物であるので、どこまでが本音でどこからがプロパガンダなのか疑ってみたくなる気持ちも正直ある。

 これに対し、買いを入れたのは、上記の通り、上海以外の中国人と売りに出た優良物件を拾いに来た上海の富裕層のようだ。
 5月の連休中にいつも情報交換している中国のエコノミストとゴルフに行った。
 ゴルフをしながら不動産の話になったら、なんと彼も今回の相場で優良物件を手に入れたと。
 自分が住んでいる高級マンションの1LDKを香港のオーナーが手放したので投資用に買ったとのこと。

 上海の銀座通りと言われる南京西路まで歩いて10分くらいの一等地で、占有面積40平方メートル程度、30数階南向きの高級マンションの価格が約1億円。
 いつも、中国経済に対して極めて厳しい見方をする彼に「今こんな高値で買って大丈夫なのか?」と聞いたら、以下の回答だった。

■上海の投資家はまだまだ強気

 ⒈]  現在中国経済が厳しい局面にあるのは確かだが、上海の不動産はこれからもまだまだ上がるとみている。
 ⒉] 今回の売り手の香港人は多分香港の李嘉誠を見て今が売り時と思ったのかもしれない。
 ⒊ ] しかしながら、政策が緩和されれば、まだまだ上海の不動産を買いたい外地の人が控えているし、中国経済が本当に厳しくなれば中国政府は、まだまだ経済を立ち直すカードを持っている。
 ⒋] それでもハードランディングはあるかもしれない、ただ、歴史的に見て、中国が危機に陥れば陥るほど中国人は上海に避難しようとして、上海の不動産はもっと上がる可能性だってある。
 日中戦争の混乱時にだって多くの中国人が上海に逃げてきたのと同じこと。

 また、連休中、金融業で大成功している若手事業家にも話を聞いた。
 彼はバンドを見渡す浦東の金融センターに位置する3億円は下らない高級マンションに住んでるが、近くで5億円くらいの優良物件が売りに出ているので購入を検討していると。
 彼も上海の不動産がまだまだ安いとみており、香港の最高級の物件の単価は10倍するそうなので、上海もいずれ同程度になると見ていると。
 ただ、彼も中国経済はこれから波を繰り返すので、下振れたときは必ず買いを入れて優良物件を拾ってゆきたいとのことであった。

 ここで私が言いたいのは、売り手と買い手の認識のどちらが正しいか? ということではない。
 外から見る中国と中から見る中国、また同じく中国で生活している人でさえ実際これほどの認識のギャップがあるということである。
 この認識の違いも一つのファクトとして認識しておくべきではないか。



サーチナニュース 2016-04-22 06:32
http://biz.searchina.net/id/1608025?page=1

各地でゴーストタウンが生まれた中国、
在庫解消にかかる時間は・・・

 中国で不動産バブルが生じしていると指摘されて久しい。
 現時点ではまだ崩壊はしていないが、中国各地でゴーストタウンが生じるなど、不動産市場が健全でないことは事実といえる。

 中国メディアの東方財富網は18日、国際通貨基金(IMF)副専務理事の朱民氏が17日の記者会見で明らかにした中国の不動産在庫問題に対する見解について紹介。
 朱民氏は中国の不動産市場に現在2つの問題が存在しているとし、
★.1つは価格が高すぎることであり、
★.もう1つは在庫が多すぎること
だと指摘した。

 さらに朱民氏は2015年に行われた調査を紹介、その調査によれば
 中国には10億平方メートルの不動産在庫が存在し、
 当時の中国がこの在庫を消化するには4年から5年かかる計算だったと説明。
 短期間では到底さばききれないほどの在庫が積み上がっている現状を指摘した。

 一部調査によれば北京、上海、広州、深センなどの1級都市の不動産在庫の消化期間の平均は約9カ月だが、
 2級都市は約12カ月
 3級都市になると19カ月になる。
 一般的に中国の住宅販売在庫の健全な消化期間は10カ月と言われる。
 従って特に3級都市において不動産在庫は深刻な問題になっていることがわかる。

 北京や上海などで生じている不動産価格の急騰は供給不足によるものであり、
 一方で3級都市の不動産在庫は需要不足や購買力不足によるもので、
 3級都市においては不動産在庫問題が大きな圧力になっている。
 3級都市に存在する不動産在庫問題を解決するため、中国政府は農民工に向けて住宅を購入するよう奨励しているが、収入の低い農民工が不動産を購入などできようか。

 不動産投資は中国の国内総生産(GDP)への貢献度が大きいうえに、
 建設に関連する他産業への影響も大きいだけに、中国としては何としてもこの問題を解決したいところだが、道のりは決して平坦ではなさそうだ。



現代ビジネス 2016年04月25日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48518

中国でキケンな「不動産バブル」が再燃中! 
消費低迷でも「6.7%成長」のカラクリ
焚きつけているのは中国政府だ

■国家統計局長の「突然の失脚」

 中国の国家統計局が発表する第1四半期(1月~3月)の各種主要統計が出揃った。

 統計の解説の前に、まずは国家統計局の「顔」である王保安局長(大臣)が、1月26日に忽然と消え、2月26日から、国家発展改革委員会の寧吉喆副主任が、局長に天下った一件から述べよう。
 王局長は1月19日に記者会見を開き、内外の記者団を前に、
 「2015年の中国のGDPの成長率は6.9%だった」
と胸を張った。
 その二日後の1月21日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、ブルームバーグのインタビューに応じたジョージ・ソロス氏が、こう言い放った。

 「中国経済は、ハード・ランディングに向かっている。
 グローバルなデフレ圧力を悪化させる急落だ。
 それが株価を引き下げ、アメリカ国債を引き上げる。
 この中国のハード・ランディングは、現実問題として、避けられないものだ」

 この不気味な予言が世界を駆け巡ったことで、中国に対する不信が、一気に広がった。
 そこで、このソロス発言を打ち消そうと、1月26日、王保安局長が再度、記者会見に臨んだのである。
 王局長は、いつもの強気の口調で、こう述べた。
 「中国経済のプライオリティと、V字回復の勢いはまったく変わっていない。
 ソロスのうわごとのような中国経済の予測は、起こりようもない。
 中国の株価が多少下がったからといって、それが中国経済全体に与える影響は微々たるものだ。
 中国の株式市場は、これからも自信を持って進んでいく」

 だが、王局長の防戦虚しく、この日の上海市場は6.4%、深圳市場は6.9%も暴落したのだった。
 それはそうと、この会見の直後、思わぬ展開になった。
 国家統計局の内部事情に詳しい中国の経済関係者が明かす。

********
 「王保安局長の記者会見が始まったのが、午後3時だった。
 4時頃に会見を終えた後、王局長は夜7時半から、国家統計局の幹部たち全員に招集をかけ、『国家統計局活動会議』を行うとしていた。
 国務院を統括する李克強首相の新たな講話を学習するというのが、会議の目的とされた。
  幹部たちは、『なぜ夜に会議なんか開くのか?』と訝りながらも、待機していた。

 だがその実、王局長は局長専用車の運転手に、会見が終わったら、北京首都国際空港に向かうよう指示していた。
 同日夜7時発のパリ行きエールフランスと、夜9時発のフランクフルト行きルフトハンザのファーストクラスを、それぞれ2枚ずつ予約していた。
  身の危険を察した王局長は、何と愛人とヨーロッパに亡命するつもりでいたのだ。

 会見が終わった後、王局長は隣の控え室に移り、そこに置いてあったカバンとコートを取って出ようとした。
 その時、党中央紀律検査委員会副書記と助手、それに二人の特警(特殊警察)が控え室に踏み込み、王局長を引っ捕らえた。
 王局長のカバンの中からは、『黄国安』『丁毅』という名義の2枚の偽造公用パスポートが見つかった。
 愛人は、北京首都国際空港の貴賓室にいるところを引っ捕らえられた。

 王局長には、古巣の財政部時代に、数億元を不正蓄財し、それらをアメリカとヨーロッパに隠匿していた容疑がかかっている」
********

 このような無様な大臣が、「中国のGDP成長は6.9%」と胸を張っていたのだ。
 中国内外の多くの経済専門家が、「中国GDP虚偽論」を唱え始めている。
 私も昨年、6回訪中したが、「肌感覚」として6.9%も成長しているようには、とても思えない。

■新局長となった寧吉喆という男

 ともあれ、そんなわけで2月26日、国家発展改革委員会の寧吉喆副主任が、新たに国家統計局長に就任した。
 寧局長は1956年、安徽省合肥市生まれで、合肥工業大学電気システム学科を卒業。
 中国人民大学で経済学の修士号と博士号を取った。
 1988年に、国家計画委員会(現在の国家発展改革委員会)に入省し、主に西部大開発を担当してきた。
 西部大開発というのは、江沢民時代後期の2000年から現在まで続く、発展の遅れた西部地区を発展させていこうという国家プロジェクトだ。

 その後、国務院研究室に移り、習近平政権が発足して間もない2013年8月に、国務院研究室主任に就任した。
 昨年8月に、古巣の国家発展改革委員会に、副主任として戻ったが、1月末の「王保安事件」で国家統計局が大揺れとなったため、急遽、国務院を統括する李克強首相に送り込まれたのだ。
 李克強首相と寧局長が話す時は、安徽省方言を使うほど、李首相から信任を得ている。

 その寧局長になって初めての経済統計発表が、4月15日に行われ、4月19日に寧局長自身が、「中国政府ネット」で解説した。
 まず、1月から3月までの第1四半期のGDPは、15兆8526億元(1元≓16.9円)で、6.7%の成長率だったという。
 寧局長のコメントは、以下の通りだ。

 「中国経済の総量はすでに巨大だが、その巨大な中にあってこれだけ成長しているのだから、これは他の主要国と較べてもベストの展開だ。
 わが国の経済成長の速度は、アメリカ、日本、ドイツなどよりも、はるかに高速なのだ」

 今回、発表された経済統計で、ひときわ目を引いたのが、不動産の動向だった。
 3月の主要70都市の不動産調査で、新築商品住宅(マンション)価格が2月から上昇したのは、62都市に上った。
 また、中古住宅(マンション)価格が上昇したのも、54都市に達した。
 前年同月比で見ると、北京の新築マンションは116%、上海は125%、深圳に至っては161%にハネ上がった。
 同様に中古マンション価格は、北京が135%、上海が127%、深圳が160%に上昇した。
 第1四半期の全国不動産開発投資額は1兆7677億元で、名目で6.2%(物価要素を控除すると9.1%)伸びている。
 昨年通年の伸びが1.0%だったことを鑑みれば、まさにV字回復しているのだ。

■あまりにも場当たり的な経済政策

 このカラクリは、
 中国政府が固定資産投資を増加させ、「政府主導型の不動産バブル」を演出
しているからに他ならない。
 2013年に習近平政権になってから、「八項規定」(贅沢禁止令)と腐敗防止を徹底させ、都市部のマンション購入の規制も強めたため、不動産バブルは崩壊した。

 習近平政権は、不動産バブルを崩壊させた代わりに、株式バブルを演出した。
 新築不動産は日本円で1000万円超からしか買えないが、株なら5万円からでも買えるため、より広範な庶民の支持を得ようとしたのである。
 それによって2014年後半から2015年前半にかけて、株式バブルが起こった。
 だが昨年6月に、株式バブルも崩壊してしまった。
 そこで再び、不動産バブルの「演出」を始めたのである。

 そうしたら、北京、上海、深圳と、どんどん上がり出した。

 「もはや危険水域に達した」と見た上海市は、3月25日に突然、新たな規制を発表した。
 それは、上海市の都市戸籍を保有していない中国人は、社会保険料を5年以上払っていなければマンションを買ってはならない(それまでは2年だった)。
 2戸目のマンション購入は、マンションの種類によって、最低頭金を5割もしくは7割に引き上げるというものだ。
 あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、ジグザグと場当たり的に進むのが、習近平政権の経済政策の一大特徴である。
 よく言えば、中国人的な「走りながら進む」臨機応変の方法だが、あまりに朝令暮改で、政策が変わるたびに国民は振り回されている。
 要は経済に対する理念・哲学といったものが欠如しているのである。

 不動産に関しては、寧局長はこう語っている。
 「第1四半期の商品型不動産の売り上げ面積は3割強伸び、売上高は5割強伸びた。
 不動産価格も伸びている。
 不動産というのは、あらゆる産業の支柱となる産業だ。
 今後は不動産価格が過度に上がるのを防ぐことと、同時に多くの人がマイホームの夢を実現できるようにしてやることが大事だ」
 あっちも取りたいし、こっちも欲しい。
 まさに習近平政権の新たな国家統計局長らしい言い草である。

 寧局長は、こうも述べている。
 「野菜を買う消費者は、最近物価が上がって大変だという。
 だが野菜を作る生産者は、最近物価が下がって大変だという。
 政府はさらに努力して政策を磨き、いち早く問題点を改善していかねばならない」

 何だか煙に巻いたような結語である。
 日本の国会にも「官僚答弁」というものがあるが、中国式の「官僚答弁」なのかもしれない。
 もっとも国家統計局は、決して権限の強い官庁ではないので、彼らにも悲哀があるのだろう。

■「消費の転換」は起こってるかもしれないが…

 ところで、気になる統計データもあった。
 第1四半期の固定資産投資の伸びが、10.7%に達したのだ。
 こちらは、ありがたくないV字回復である。

 中国は、リーマン・ショック後に4兆元(当時の邦貨で58兆円)もの緊急財政支出を宣言して、世界経済復活の牽引役となった。
 この時に主導したのが、固定資産投資だった。
 日本で言う公共投資である。
 だが固定資産投資が過ぎたために、鉄鋼業や石炭業などが生産過剰に陥り、全国に「鬼城」(ゴーストタウン)が溢れた。かつて日本で、誰も通らない高速道路や誰も行かない公民館などを、どんどん作っていったようなものだ。

 そこで習近平政権になってからは、このゾンビのような固定資産投資を減らしていき、国民の消費が主導する健全な経済発展を目指したのだった。
 昨年の第1四半期で13.5%まで減らし、昨年通年では、ついに10.0%まで落とした。
 さらに減らしていき、その分、消費が増えていけば、晴れて中国経済復活の暁光が見えてくる。
 ところが、今年第1四半期の民間の固定資産投資は、5.7%まで落ちた。
 そこで再び、政府による固定資産投資の増加という「悪癖」が始まったのだ。

 国家統計局が3ヵ月ごとに発表する経済統計を見ていて、多くの専門家は、GDPの数値が虚偽ではないかと指摘する。
 だが私が思うに、もっと信用できないのが、消費額が常に二ケタ成長していることである。
 3月の小売消費額は10.5%も伸びている。
 総額7兆8024億元も消費したという。

 昨年4月から今年3月までの一年間の数値は月ごとに、
 10.0%、10.1%、10.6%、10.5%、10.8%、10.9%、11.0%、11.2%、11.1%、10.2%、10.5%
である。

 だがこの間に、
 株式バブルは崩壊して、
 1億8000万人の「股民」(個人投資家)が多大な損失を出し、
 地方経済は崩壊し、
 工場は閉鎖され、
 デパートやレストランはバタバタ潰れ……。
 繰り返しになるが、私は昨年6回、訪中し、大都市から地方の農村まで回ったが、消費が年に10%も伸びているとは、とても思えなかった。
 それでも無理やり肯定しようと思えば、物価が上がった影響で、消費額が上がっているということだ。

 私は中国へ行くたびに、セブンイレブンに入って、商品価格を定点観測しているが、
 今年1月の時点で、おにぎり、弁当、缶コーヒー、カップラーメンなど、だいたい日本の8割から9割の間くらいの価格まで来ている。
 しかも毎年1割分くらい、価格が上昇している。
 つまり、消費額の上昇分と合致するのである。

 消費動向について、寧局長は、次のように説明している。
 「私はエンゲル係数に着目している。
 過去には消費のうち5割は食品だったが、現在のエンゲル係数は3割程度まで下がってきている。
 これは経済が好転している証左だ。
 今年に入って、旅行の消費やSNS消費、ネット消費などが、3割近く増えている」

 確かに、ネット通販が消費を牽引していることは認める。
 ただ第1四半期のネット通販は、前年同期比27.8%増の1兆251億元に上り、消費全体の10.6%となったとはいえ、まだ消費全体の1割である。
 かつ肌感覚では、ネット通販が増えた以上に、店舗販売額は減っている。

 寧局長が言うように、「消費の転換」は起こっているかもしれないが、それによって全体の消費量は下がっている印象なのだ。
 実際、消費に直結する輸入額は、昨年13.2%も減少している。

■65歳以上が総人口の1割を突破

 さて、国家統計局は4月20日、もう一つ興味深い統計データを発表した。
 それは、「2015年全国1%人口ピックアップ調査主要データ公報」である。
 中国は10年に一度、西暦で末尾がゼロの年に、人口調査を実施している。
 だが最近は中国社会の変化が激しいので、中間にあたる
 西暦の末尾が5の年(2015年)にも、人口調査を行ったというのだ。
 予算や人員の関係から、人口の1%をメドに行ったのだという。
 実際には、総人口の1.55%にあたる2131万人を調査した。

 この「公報」によれば、2015年11月1日午前0時現在の中国大陸の総人口は、13億7349万人で、5年前の13億3972万人よりも3377万人増加したという。
 増加率は、2.52%で、年換算すると、0.50%だ。

 また、家庭数は4億947万戸で、平均家族数は3.10人。
 男性は7億356万人で51.22%、女性は6億6993万人で48.78%。
 女性を100とすると、男性は105.02で、これは5年前の105.20に較べると、改善が見られる。

 民族別に見ると、漢族が12億5614万人で、91.46%。
 55の少数民族は、計1億1735万人で、8.54%である。
 漢族はこの5年で3021万人増え、少数民族は356万人増えた。

 注目すべきは、年齢別人口である。
 65歳以上が1億4374万人と、日本の総人口を上回る数だ。
 しかもその比率が10.47%と、5年前の8.77%から1.60%も上昇し、初めて総人口の1割を突破したのだ。
 これは中国社会が、ものすごいスピードで老齢化社会に向かっていることを意味する。
 このペースで進めば、20年後には深刻な社会問題と化すだろう。

 だが大卒も、1億7093万人もいて、こちらも日本の総人口を5000万人も上回っている。
 豊富な「人材」に、中国の将来を託すしかない。

 ちなみに前回、2010年の人口調査の時には、私も北京に住んでいたので経験している。
 その時、私が住んでいたアパートにも調査員のオバサンがやってきて、性別、生年月日、民族、学歴などを聞いてきた。
 私は、
 「自分は日本から来た駐在員であって、中国人ではない」
と説明した。
 するとオバサンは逆ギレして言った。
 「そんなの、私の知ったことではないわ。
 一人あたり2元もらえるんだから、あなたを数えたっていいでしょう」

 首都・北京でさえ、こんな調子だった。
 それからしばらくして山西省の僻地の村へ行った時、地元の人にどうやって人口調査をやったのか聞いてみた。
 すると、こう答えた。
 「各村の村長や党書記に電話をかけ、だいたいの人数を聞いて終わりだよ。
 だってそうした方が、調査費が浮くではないか」

 こうした経験をしたため、なぜ大仰に全国で人口調査なんかやるのかと思った。
 そもそも中国には、15ケタか18ケタからなる身分証が全国民に与えられているので、身分証発行元の公安部は、正確な人口を把握しているはずではないか。
 当時、少なからぬ中国人にこの疑問を投げかけ、帰ってきた回答も多岐にわたったが、
 その中で納得できたものが二つあった。

★.一つは、一人っ子政策などのため、身分証を持たない「無戸籍者」(こっそり産んだ二人目以上の子供)が数千万人単位でいるというのだ。
 だからきちんと対面して調査を行う必要がある。

★.もう一つは、公安部が掴んでいる正確な人口は、すでに15億5000万人を超えている。
 そんな数は国家が養えないから、人口調査をやって、わざと少ない統計が出るようにしているというのだ。

 いずれにしても、中国で正確な統計データを取るのが難しいこと、及び
 中国の統計データには多くの場合、「目的」がある
ということを、理解したのだった。



現代ビジネス 2016年04月26日(火) 高橋洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48521

中国「GDP世界二位」の大嘘を暴く!
~デタラメな数字を産む統計偽装のカラクリが分かった

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 元財務官僚で、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)などを歴任した高橋洋一氏の新著『中国GDPの大嘘』。
 発売即重版となった話題の一冊を特別公開する。
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■あまりに悲観的な中国の未来

 2016年に入って世界経済が混沌としてきた。
 そして、この混乱はしばらくおさまりそうにもない。
 その震源地の一つに中国経済の崩壊がある。
 中国の株式市場は2015年夏に始まり、
 2016年春の段階で立ち直りの兆しは見えない。
 株式市場の混乱は実体経済を脅かし、それがさらに株式市場を混乱させる「負のスパイラル」は今後も続く可能性大である。
 さらにいえば中国経済の崩壊は、まだ序章に過ぎず、これから本格化すると私は見ている。
 それはあたかも、ソビエト連邦崩壊を想起させる状況であり、これは偶然の一致ではない。

 法政大学に日本統計研究所という研究機関がある。
 ここが興味深い研究レポートをまとめてくれた。
 ソ連の崩壊の原因にもつながった統計偽装について、その実態を生々しく伝えてくれているのだ。
 ソビエトが崩壊したのは、その経済停滞が大きな要因だが、ソビエトを間違った方向に導いたのが統計偽装である。
 統計偽装はソ連崩壊まで続けられ、その日まで公にならなかた。
 白日のもとにさらされるようになったのは、ソ連が崩壊し、関係者がようやく自由に発言できるようになってからである。
 中国は、ソ連をまねて中央集権的な統計組織を構築。現在では中国国家統計局として、各種統計を集中管理している。
 当然、統計の算出方法もソ連から指導を受けていると推察される。
 現在の中国は、情報公開の面で国際機関による調査団を受け入れないだろう。
 ということは、しばらくの間、中国の統計は信用できない。

 そこで私は、中国経済の実態に迫るとともに、中国統計の偽装についても調べてきた。
 そこから導き出された答えは、あまりにも悲観的な中国の未来である。
 今後、さらに混乱を招く中国情勢が、世界に波及する
 ――この事態にどう対処したらいいのか。
 その解を求めるのはかなり困難かもしれない。
 しかし看過しておけば、中国人民のみならず、日本を含めた諸外国まで災禍に巻き込むことになる。
 最悪の事態だけはなんとか避けられないものか。
 どこかに処方箋がないものか。いまからでも間に合うのではないか――。
 そんな思いから、私は中国経済に関する新著を上梓した。
 その一部を、二回に分けて公開したい。

■ソ連のデタラメ統計を受け継いだ中国

 大きな船が航海に出たとしよう。
 安全な航海には信頼できる海図と、航路を綿密に調べ上げたデータ、そして船の正確な状況認識が必要だ。
 そういった情報なしに出航したとしたら、どうなるだろうか。
 しかも自分のことしか考えない、チームワークの悪いクルーたちによって運航されているとしたら……
 誰がこんな船に乗りたいと思うであろうか。
 知らずに乗っている乗客は、不幸の極みというほかはない。

 この船の航海は、国家の運営にもたとえられる。
 国家の政治・経済の運営に必要な「海図」は、各種統計データということになる。
 正確な統計データがあってこそ、国の進路を誤らない政策が打ち出せるというものだ。
 ところが正確な統計データを出さない、作れない、データを捏造、改竄していたとしたら、どうなるであろうか。
 航海でいえば、いいかげんでデタラメな海図を作り、それを頼りに海に出るようなものである。
 遭難した船は沈没する。

 では、遭難した国家はどうなるか……。

 中国当局が発表する統計データや経済指標は、押しなべて信用できない。
 その解説は後述するとして、
 なぜ統計データがいいかげんに作成されるか、
その理由から説明しよう。
 中国の統計システムは、社会主義国家の「先輩」である旧ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)に学んでいる。
 1949年に誕生したばかりの中華人民共和国は、経済的な大改革を断行した。
 が、その司令塔は、ソ連大使館だった。
 ソ連から一万人もの顧問が北京にやって来て、四万人のロシア語を習得した中国人ともに中国の産業育成に当たった。
 中国の経済は10年以内にイギリスを追い越し、15年以内にアメリカに追い付くという目標を打ち立てて――。
 そのロシア人顧問団が持ち込んだなかに、旧ソ連の統計システムもあった。

 アメリカに追い付くという壮大な目標は達せられなかったものの、それなりに産業は育っていった。
 すると1960年、毛沢東はロシア人の顧問団を追い返し、ソ連式のシステムを中国独特のシステムに改めようとする。
 そうして大躍進政策や文化大革命を経て、鄧小平の改革開放を迎える。
 その間、このソ連式の統計システムだけは脈々と生き残っていたのである。
 その手法はソ連国内で50年間も使用され続け、デタラメ統計を生み出してきた。
 これをもとに国家運営するわけだから、国家が崩壊するのも無理はない。

 問題は、そのデタラメ統計を世界が信じていたということ――。

■捏造は、半端なレベルではなかった

 たとえばアメリカのノーベル経済学賞受賞者のポール・サミュエルソン。
 彼はソ連が出すデタラメ数値を信じて、「ソ連は成長している」と言い切ってしまった。
 サミュエルソンほどの偉人ですら騙されてしまう。
 それだけ、統計データの虚偽を見抜くのは難しいことなのである。

 しかも、ソ連がやっていた捏造は、半端なレベルではない。
 ソ連が崩壊してみて初めてわかったことだが、実は、そのGDPは半分しかなかった。
 1928年から1985年までの国民所得の伸びは、ソ連の公式統計によると90倍となっているが、実際には6.5倍しかなかった。
 平均成長率に至っては、8.3%成長しているとしたのに、実際は3.3%しかなかった……。
 この事実は、ソ連が崩壊して初めて明るみに出た。
 ゴルバチョフ書記長は人がいいので「ペレストロイカ」(改革政策)や「グラスノスチ」(情報公開)をやってしまい、白日のもとにさらしてしまったのだ。
 この統計システムをそのまま引き継いでいる中国が、果たして正確な統計の取り方をしているかどうか。
 「お師匠」がデタラメだったから「生徒」は真面目にやります、ということが果たして起こりえるのか。

 次にその検証を行いたい。

■偽造統計はこうして作る

 まず、ソ連が長年にわたって虚偽の統計を取り続けてきた理由と手法を探ってみよう。
 旧ソ連およびロシアの統計に関して、興味深い研究レポートがある。

 一つは、法政大学日本統計研究所が発行した『ロシアにおける統計制度・政策の改革(Ⅱ)』(1994年)。
 これは経済学博士でロシア科学アカデミー・ヨーロッパ比較社会・経済研究主任のヴァレンチン・ミハイロヴィッチ・クロードフ氏の論文「1991~1993ロシア経済状況の統計と判断」と題された論文などを集めたものだ。

 もう一つは、同じく法政大学日本統計研究所がまとめた『統計研究参考資料 No.32 ペレストロイカとソ連統計』(1989年)。
 これはソ連中央統計局長のエム・エス・コロリョフ氏の論文「統計のペレストロイカの諸課題」などを収録した論文集である。

 いずれも旧ソ連の統計作成に責任者として直接関わった、
 あるいは間近にいた人々の書き記した論文だけに、生々しい実態が明らかにされている。 
 結論からいうと、諸悪の根源は社会主義体制下における官僚主義だ
 計画経済における無理な経済政策も元凶だと断言していい。
 これは社会主義国・ソ連の誕生とも関係している。
 社会主義国の誕生直後は、アメリカを代表する資本主意国家陣営と張り合った。
 そうした構図が世界地図上に描かれた。
 「経済発展において、なんとしても資本主義国家には負けられない」
という意識と自負心がソ連首脳部に強かったことは、これらの論文からもうかがえる。

 当時、統計システムとして有効な手法が現われると、時の書記長、スターリンは「数字の遊び」と批判し、封じている。
 スターリンがなぜ、この有効な手法を封印したか正確な理由は記されていないが、想像はつく。
 このスターリンの仕打ちを批判した経済学者で、ソ連中央統計局を指導したぺ・イ・ポポフが次のような言葉を書き遺している。

 「統計は、それぞれの時点において希望される数字を与え得るものではない
 ……それは現実を表現する数字だけを与えるのだ」

 わかりやすくいうと、国が計画し目標とした数値に統計を合わせるのではなく、現実や実態を表すのが統計だ、というのだ。
 民主主義国家では当たり前のことが、統制経済下では、当たり前ではなかった。

■疑うヤツは人民の敵

 このように正確な統計データを集計しようとした指導的職員は、統計機関から追放された。
 多くの真っ当な統計家は、「人民の敵」というレッテルを貼られ、弾圧されていった。
 わかりやすくいえば、国が立派な経済計画を立てたのだから、どんなことがあっても達成したことにしなければならない、統計はそれに合わせるべきだ、という国家の意志が強く作用している。
 これは企業の粉飾事件にも似た構図がある、
 2015年に発覚した東芝の粉飾事件も同様の構図。歴代の社長が、自分が社長でいる間は好業績でなければならない。
 そこで、数字を操作して部下たちに好業績をでっち上げさせた。
 東芝と社会主義国の統計システムは二重写しになる。

 上場企業の場合、監査法人による監査を受けて決算手続を終える。
 この監査は、企業の役員等とは利害関係のない、あくまで第三者でなければならない。
 独立性が保たれていなければならないのだ。
 つまり、監査に、情実による手心が加わってはならない。

 同様に、統計データを作成する組織にも、独立性がなければならない。
 ソ連の統計システムの欠点は、この自主独立の統計活動が保障されていなかった点にある。

 官僚主義の問題と偽造統計システムの手法は、それをそっくり導入した社会主義国家としての「後輩」である中国にも引き継がれている。
 そう、十分に想像がつくのだ。

後編では、いよいよ中国経済の大嘘を暴いていこう。



現代ビジネス 2016年04月27日(水) 高橋洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48522

 中国経済、調べてみたらやっぱりウソだらけ!
~本当のGDPは、公式発表の3分の1!?

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 発売即重版となった、高橋洋一氏の話題の書『中国GDPの大嘘』。前編ではソ連のデタラメな統計と、その手法を中国が継承してしまったことを指摘したが、後編ではいよいよ中国の「間違いだらけの数値」を暴いていく。
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■中国の首相自身も信用していない経済統計

 「中国の経済統計、指標などまったく信用できない」
 こう公言したのは、のちに首相の座に就く李克強である。
 オフレコではあったが、この発言が飛び出したのは2007年9月、大連で開催された「第一回ダボス会議」でのこと。
 当時、李克強は遼寧省の共産党委員会書記、すなわちトップで、温家宝首相とともにダボス会議のホスト役を務めていた。

 冒頭の衝撃的な発言が飛び出したのは、アメリカ経済界代表団との会食の席だった。
 オフレコという前提で、
 「中国の経済統計、指標は、まったく信用できない。
 遼寧省のGDP成長率も信用できない。
 私が信用してチェックしているのは、わずか三つの統計数値だけ。
 その三つとは電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額。
 この三つの統計を見て、遼寧省の経済成長の本当のスピードを測ることが可能になる。
 他の中国の経済統計、とりわけGDPなどは、ただの『参考用数値』に過ぎない」
と漏らしてしまったのだ。

 同席していたアメリカの駐中国大使、クラーク・ラントは国務省に報告。
 これは部外秘だったが、2010年、機密情報を漏洩させる
 ウィキリークスによって暴露
されてしまった。
 この後、李克強が信用していたとされる三つの指標は「克強指数」とまでいわれるようになり、一部のエコノミストやメディアが信頼する数値となっている。
 克強指数についても後述するが、李克強自身が「参考用数値」と述べたGDPに関しては、参考にすらならないという事実を、説明しよう。 

■中国の「実際の数値」を暴く方法

 経済統計の数値の真贋を見抜くには、複数の統計を合わせてみるとわかる。
 そうして矛盾点があるか整合性があるかを見極め、統計数値の信頼性を計るのだ。
 たとえば前述したGDPと失業率の関係。
 ところが中国は失業率を発表していない。
 社会主義国の「建前」として失業はないということなのかもしれない。

 そこで私が注目したのが貿易統計だ。
 中国が発表する統計のうち、数少ない、というか、
 唯一信用できるのが、この貿易統計。
 貿易統計は外国との関係もあって捏造しにくい。
 相手国の「正しい」対中国貿易量を集計すれば、正確な数値が求められるからだ。

 この事実を踏まえて2015年の中国の貿易統計をチェックしてみると、
 輸出額は前年比8.0%減。
 輸入額たるや14.1%の減少
となっているが、
 中国当局はその原因を資源価格の低下、としている。
 しかし、同年の中国のGDPに対する貿易依存度は「40.25%」
……GDP成長率6.9%を達成したとしたら、内需が異常に上昇した、ということになる。

 中国では、習近平が国家主席に就任すると、最低賃金を引き上げている。
 場所によってまちまちだが、おしなべて3年で四割ほど最低賃金は上昇している。
 それに合わせて物価も上昇。
 コンビニを覗いてみるとわかるが、商品によっては日本の物価より高くなっているケースも珍しくない。

 前に紹介したように、イギリスのBBCニュースが疑問を投げかけているように、「成長率6.9%」という数値にも、大いに疑問が付いて回る。
 そこで、どうしてこの「偽装数値」が出てきたのか、私なりの推測を述べてみよう。


■「2020年にGDPと国民の平均収入レベルを、それぞれ二倍にする」

 二倍の基準は2010年比だ。
 これを達成させるには年平均七%成長が求められる。
 習近平に限らず中国人のメンタリティでは、メンツを重んじる。
 なにより景気が悪くなれば、政権基盤を揺るがしかねない。
 それ以降、七%成長は政権の至上命題になったのだ。

 「公式統計」によれば、2012年の固定資産投資総額はおよそ36兆人民元(610兆円)。
 前年比20%という高い伸びだ。
 投資の伸びで、この年の成長率も、かなり押し上げられている。
 ちなみに、公式発表では2012年のGDP成長率は7.8%になっている。
 「中国の夢」という大風呂敷を広げただけあって、その年はどんなことがあっても高い成長率を維持しなければならなかった、そういう事情が強くうかがえる。

 ところが2013年には景気が息切れしてきた。
 李克強は懸念を示し、
  「経済成長を達成させるための経済刺激、政府の直接投資に頼ろうとしても、その余地は決して大きくはない。
 市場メカニズムに任せなくてはならない」
と発言したのだ。
 無理に成長を維持しようとするなら、もう一段の投資を行わなければならない。
 李克強はそれには限界があるとし、低成長の痛みを受け入れるよう求めたのだ。

■4年間で約2000兆円の景気刺激策を行った結果…

 さらに中国には、2008年の四兆元(約68兆円)投資と、空前の金融緩和による後遺症がある。
 このとき、リーマンショックによる経済の落ち込みを防ぐための大型投資を行なったのだ。
 これが奏功し世界経済は立ち直りのきっかけをつかんだが、中国はその後、過剰設備などに苦しむことになる。
 しかも四兆人民元のはずだった景気刺激策はその後も続き、
 2009年からの四年間で、
 なんと110兆人民元(およそ1900兆円弱)の固定資産投資が行なわれた。
 過剰な投資は、各地にゴーストタウンを生み出すなど、いまだに負の遺産を遺している。
 そのような背景もあって、李克強は経済政策の転換を匂わせた。

 しかし中国政府内でも、これに同調する容認派と慎重派に分かれた。
 特に2014年には、全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の前に、習近平主席と李克強首相との間で衝突があったという。
 その年のGDP成長率7%を提案した李克強に対し、習近平は7.5%を主張して譲らなかったというのだ。
 習近平の「中国の夢」にこだわる一面だった。
 さらに一年後の全人代では「7%前後」と、前年より目標値を下げている。
 しかも「前後」としているところがミソだ。そ
 れだけ自信がなかったかとも受け取れる。
 
 そして2015年のGDPの伸び率は6.9%……かなりゲタを履かせた数字であることは容易に想像がつくが、実は発表前から「発表される数値は6.8とか6.9あたりではないか」という予想が、私の耳にも届いていた。
 別に正確かつ実態を表した数字を予想してのことではない。
 「政治的に装飾された数値」としての数字だ。
 つまり、経済成長が続いている資本主義社会では、成長率7.0%や6.9%の違いは、さほどではない。
 この程度なら統計誤差の範囲であり、ほぼ目標達成と胸を張れる数値だ。

 しかし中国では、これは多分に政治的なメッセージなのである。
 すなわち対外的には、「やや経済成長は鈍化しているけれど、心配しなくてもいい」という、やや願望を込めたメッセージ。
 そして国内的には、「七%達成はなんとしてもやり遂げる」という強い意志の表明なのである。

 が、その中国も、統計のゴマカシもそろそろ限界と見て、今後少しずつ数値を下げてくることは間違いない。
 日本のメディア、特にNHKを代表とする大メディアは、中国当局の発表をそのまま受けて、「7%成長を割り込むのは実に25年ぶり」などと伝えているが、実態はもっとかけ離れたところにある。

■実際のGDPは発表数値の3分の1!?

 ここでもう一度、2015年の「中国GDP成長率7%」について検証してみよう。
 2015年通期の成長率は六・九%だったが、上半期に限っていえば7.0%を達成。
 年初に立てた目標に達したわけで、決して低い成長率ではない。
 その一方で、中国政府は、2014年11月から翌年8月までの間、五回もの金利の引き下げを行なっている。
 さらに公共事業も追加で行うなど、景気刺激策に躍起になっていた。
 7%もの経済成長を達成したとすれば、そこまで景気刺激策を施さなくてもいいはずなのだが……。

 別の角度から見てみよう。
 信用できない中国の経済統計のなかでも、
 農業生産と工業生産に関しては、しっかりデータを取っている節がうかがえる。
 小売や物流といった第三次産業に関する統計には弱点があるものの、計画経済を進めるために、1950年代からしっかり生産量のデータをとっていた。
 この農業および工業の2015年のGDP成長率を産業別のデータのなかから見ると、農林業に畜産と漁業を加えたところで3.6%、工業が6.0%の成長となっている。

 この業種別GDPのほかに、自動車、鉄鋼、電力といった主要二七の工業製品の生産量データも出される。
 これらをチェックしてみると、2015年上半期に六%以上の成長を達成した製品は四製品のみ。
 さらに、13の工業製品は、伸び率がマイナスを記録している。
 工業製品の生産量の伸びは平均で1%程度
 工業製品のデータに関しては割と正確に採取される。
 そうなると、産業別の成長率六%の伸びと、工業製品別の生産量の伸びとが、かなり乖離していることがわかる。
 粉飾の匂いがプンプンするのは工業成長率6%だ。
 こういった数値を積み重ね、重ね合わせていくと、どうしても中国経済GDP6.9%成長というのは、相当にゲタを履かせた数値だということが判明する。

 私は、中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないかと見ている。

(続きは本書をご覧ください)


●中国経済の暗い未来を指摘する話題の書。世界、そして日本への影響は?



現代ビジネス 2016年05月15日(日) 週刊現代,高橋洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48627

中国の成長率は、やはり、とんでもないデタラメだった!!

株価が暴落し、失業者が街に溢れてもなお、経済成長をアピールし続ける中国政府。
このほど『中国GDPの大嘘』を上梓したばかりの気鋭のエコノミストが、そのデタラメを看破する。

■国ぐるみの「粉飾決算」

 今年に入って、世界経済が混沌としてきた。
 その大きな要因は、間違いなく中国経済の崩壊にある。
 年明け早々に株価が暴落し、上海株式市場は取引中止に追い込まれた。
 そして株式市場の混乱が、今度は実体経済を脅かしている。

 4月15日、中国が1-3月期のGDP(国内総生産)成長率を発表した。
 前年同期比、6・7%増—。中国政府は今年の成長率目標を「6・5~7%」と、昨年の「7%前後」から引き下げていたが、この範囲内にぴったりと収まる数値。
 今回発表された成長率が、政府によってコントロールされたものであることは明らかだ。

■中国の成長率は、やはり、とんでもないデタラメだった!!
 それどころか、日本はいまでもGDP世界2位の経済大国、
 中国には「失われた100年」が待っている!?

 過去2年間における8つの四半期の成長率の動きは次の通り。

 7・3%→7・4%→7・1%→7・2%→7・0%→7・0%→6・9%→6・8%。

 こうして中国の成長率は「規則正しく」低下しているが、実際には、経済統計がこんな規則的な動きを見せることはあり得ない。

 例えば、直近5年間の先進各国のGDP成長率がどれだけ大きく変化したかを、
 「変動係数」という指数で見てみよう。
 値が大きいほど、変動が大きいということになる。
 日本2・4、アメリカ0・3、イギリス0・3、カナダ0・4、フランス0・9、ドイツ0・9、イタリア2・3。
 原油価格の変動を受けて、世界各国のGDPが大きく変動しているのがわかる。

 そんななか、中国の変動係数はわずかに0・1。
 世界各国の経済変動に比べ、この安定ぶりは異常だ。
 現実にはあり得ないと言える数値なのだ。
 このように、中国が発表する経済統計は、実態というより政府に都合の良い「公式見解」に近い。

 今回に限らず、中国が作成したあらゆる統計データや経済指標は、おしなべて信用できない。
 なぜなら、かつてのソ連がそうであったように、社会主義国で重視されるのは「真実」よりも「メンツ」だからだ。
 国が立てた経済計画は、どんなことがあっても達成したことにしなければならず、統計の数字は、その目標に都合の良い様に作り出すものなのだ。
 いわば、国ぐるみの「粉飾決算」といえる。

 特に、中国には体面を何よりも重んじる国民性がある。
 面白いエピソードをひとつ紹介しよう。
 中国はいま高速鉄道の海外輸出に力を入れているのだが、その売り文句として「中国の高速鉄道は事故を起こしたことがなく安全」と世界中で触れ回っている。
 大抵の人はおや、と思うはずだ。
 '11年に浙江省で起きた脱線事故は死者40人以上(実際には100人を超えるとの情報もある)。
 中国当局が事故後すぐに車両を埋めて隠蔽しようとしたエピソードも相まって、大きなニュースになった。

 だが、中国は今になって「あれは高速鉄道ではなく、特別快速列車だった」というおかしな理屈を立て、死亡事故を無かったことにしようとしている。
 事故を起こしたのは、あくまで「特別快速列車」だから、高速鉄道はいまだに「無事故」というわけだ。

■矛盾だらけの公式データ

 これだけ無茶苦茶な理屈を強弁してまで体面を守ろうとするのだから、統計数字を取り繕うことなど朝飯前だ。
 そして、情報をコントロールするためならば、手段は選ばない。

 私自身、こんな体験をしたことがある。
 まだ財務省に在籍していた'90年代初め頃のことだが、中国のある経済シンクタンクに招かれて訪中し、北京の釣魚台(国賓館)に宿泊した。
 夜、外出先で宴席が催された。
 そこで私の横に接待係として付いたのは、とびっきりの美女。
 「これは、いわゆるハニートラップに違いない」
 即座に危険を察知した私は、「ちょっと用事があるから」と、「二次会」の誘いを断り、そそくさと逃げ出したため、事なきを得た。

 接待以外にも、女性工作員による籠絡の仕方は様々だ。
 私が見聞きした例だけでも、通訳としてあてがわれる場合もあるし、宿泊するホテルにマッサージ嬢として現れることもある。
 このマッサージ嬢は足の指をていねいに洗ってくれるのだが、男性の目には、足元にひざまずいた女性の胸元が嫌でも飛び込んでくる。
 そうなると、どんな男でも理性を失ってしまうものだ。
 女性工作員と「親密な関係」になったが最後、帰りの空港で証拠写真を渡されれば、ほとんどの人間が中国側の操り人形になってしまう。

 冗談ではなく、こうして籠絡され、中国の「公式見解」をそのまま垂れ流す官僚や学者は世界中に少なからず存在する。
 これだけのことを平然とやる国だからこそ、中国の「正しい統計」の実態を探りだすことは、極めて困難だ。

 だが私は、中国経済の実態に独自に迫るとともに、その「偽造統計」についても調査を続けてきた。
 今回は、そこから導き出した中国の「大ウソ」を明らかにしよう。

 たとえば、国家統計局が発行する「中国統計年鑑」を見ると、経済成長率が8%と発表された同じ年の電力消費がなんと10%も落ち込んでいる。
 順調に経済成長をしている国で電力需要が急激に落ち込むなどということがあり得るだろうか。
 この様に、誰が見ても「起こり得ない」と分かる矛盾した統計データが、国が発行する公式資料に堂々と掲載されているのだ。

■習近平は経済オンチ

 地方政府が算出した統計データの積算が、中央政府のものと一致しないということも多い。
 中国では、各地方政府が個別にGDP統計を作成・発表しているが、地方政府すべてのGDPを合算すると、不思議なことに中国全体のGDPを遥かに上回る数値が出てしまう。
 この状況は、中央と地方政府のGDPが分離して発表されるようになった'85年からずっと続いており、しかもその差は年々拡大している。

 原因はもちろん、地方政府がGDP統計を「水増し」しているからだ。
 これは、中国では「注水」と呼ばれており、なかには地方政府主導で、企業が提出した数値を改ざんさせるケースもある。


 そもそも、成長率6・7%という「偽造数値」はなぜ生まれたのか。
 '12年の共産党大会において、習近平が
 「'20年にGDPと国民の平均収入レベルをそれぞれ'10年の2倍にする」
と発言したのが事の発端だ。
 この数字を達成するために必要なのが、年平均7%の成長なのだ。
 国家元首がそう宣言してしまった以上、国家のメンツを守るためには、なんとしても7%前後の成長率を保持しなければならない。

 そもそも、メンツ云々の前に、
 中国では貧困層の鬱憤が溜まりに溜まって、地方では暴動が毎日のように起きている。
 いままで暴動が大きなうねりになるのを押さえ込めたのは、「経済成長している」という名分があったからだ。
 メンツを守るためにも、庶民の暴動を抑えるためにも、経済成長をアピールできる数字をでっち上げることが、習近平政権の至上命題なのだ。
 だが、いまの中国産業の状況をつぶさに見ると、ほころびが随所に顕在化している。

 例えば、自動車産業。
 改革開放以降、中国人民が豊かになるにつれて自動車は売れに売れた
 。かつては自転車で埋め尽くされていた天安門広場前の通りは、今では自動車で溢れかえっている。
 ところが、'15年春、順調に売り上げを伸ばしていた中国国内での新車販売が、前年同月比でマイナスに転じたのだ。
 その後も減少には歯止めがかからず、危機感を抱いた中国政府が10月に減税と補填の措置を打ち出したことで、販売数は一時的に持ち直した。
 だが、それは需要を先食いしただけで、販売数は再び落ち込んでしまった。
 この傾向は、年が改まっても改善せず、'16年の各自動車メーカーの中国工場での稼働率は、前年の半分まで落ち込む見通しだ。

■ゾンビ化する国有企業

 こうした停滞は、自動車メーカーに限ったことではなく、あらゆる分野に及んでいる。
 鉄道貨物輸送量の最新実績は、前年同期比14・1%減と大幅に減少している(グラフ2)。

 さらに国有企業の業績悪化は輪をかけて深刻だ。
 グラフ3を見れば'13年以降、中国の国有企業の業績が悪化の一途をたどっていることが分かるだろう。
 少なからぬ数の国有企業が倒産状態を銀行からの融資でごまかし「ゾンビ化」しているが、中国政府はいまだ有効な手を打てていない。



 こうして、他の数値が軒並み下落を続けているなか、GDPだけが一定の成長率を維持しているというのは、あまりにも不可解だ。
 あらゆる状況を勘案すると、私は、中国の実際のGDPは公表されている67兆6708億元(約1136兆8694億円、1人民元を16・8円として計算)の3分の1程度にすぎないのではないかと考えている。

 そして成長率は、6・7%どころか、恐らくマイナス—。
 中国はまさに手詰まり状態なのだ。

 今は、政府が必死にひねり出す「偽造統計」によって、実態が国民にひた隠しにされている。
 だが、デタラメな実態が表面化すれば暴動が発生し、かつてのソ連のように独裁が崩壊する可能性さえある。

 近い将来、隣国で未曾有の大混乱が起きることを前提に、我々は備えを進めなければならない。

「週刊現代」2016年5月7日・14日合併号より



ロイター 2016年 05月 3日 11:07 JST
http://jp.reuters.com/article/china-local-governments-debt-idJPKCN0XT0DR?sp=true

焦点:中国地方負債が膨張、
不動産バブルや金融安定に赤信号

[上海 29日 ロイター] -
   中国の地方政府は中央政府の借り入れ規制緩和に乗じて、債券発行により大量の資金をオフバランスで調達し始めた。
 調達資金は中国の貧弱な景気回復を下支えするが、一方で地方政府の負債は一段と膨らんでいる。
 不動産やコモディティなど一部資産クラスでバブルの懸念も高まり、金融の安定に赤信号が灯っている。

 エコノミストは、中国の景気回復の背景には公的部門の投資増加があるとみている。
 第1・四半期の国内総生産(GDP)成長率は7年ぶりの低い伸びにとどまったが、他の経済指標は3月に入って成長が上向いたことを示している。
 そして公的部門の投資資金の大半は地方政府が起債により調達したものだ。

 光大証券が民間調査会社WINDのデータを元に推計したところ、地方政府の資金調達プラットフォームである融資平台(LGFV)の第1・四半期の調達額は少なくとも5380億元(830億ドル)に上った。
 前年同期から178%の急増で、四半期としては2014年6月以来の高水準。
 3月の起債額は2870億元(443億ドル)で月間で過去最大だった。

 政府は14年に地方債市場を創設し、LGFV債を地方債のバランスシートに組み込もうとした。
 しかし経済成長が鈍ったため、昨年半ばに軌道を修正して借り入れ規制を緩和した。
 中央清算機関や仲介会社のデータによると、今年第1・四半期のLGFV債の発行は地方債の起債規模の60%程度となり、昨年第4・四半期の37%から上昇した。

 ノムラ(香港)のチーフ中国エコノミストのYang Zhao氏は
 「政府は昨年下半期に、負債によって調達可能なプロジェクトファイナンスの比率を引き上げた」
と指摘。
 この規制緩和がLGFV債の起債増加につながったとみている。
 その上で
 「この流れが続けば、負債の対GDP比は急速に上昇しかねない。
 持続可能な政策とは思われず、
 政府当局者は2四半期以内に(与信)緩和のペースを減速するだろう」
とした。

 LGFV債は、アナリストが懸念を示しているにもかかわらず投資家からの引き合いが比較的強い。
 企業の債務不履行が増えて社債への信頼感が低下しているためだ。

 上海を拠点とする外国のバイサイドの資金運用担当者は
 「運用担当者は社債の信用の質に対する懸念を強めており、
 国債や政府機関債に回帰しつつある」
と話す。

 AA格付けのLGFV債の利回りは昨年半ばには通常の社債より高かったが、今では30ベーシスポイント(bp)低い水準で取引されている。
 このため
 「あらゆるLGFV債は半分国債のようなものだから、LGFV債を通じた調達は容易だ」(中国の市場関係者)
との声も聞かれる。

 地方政府は駐車場から観光客向けアトラクションまで、さまざまな施設向けの資金を起債により調達している。
 27日には貴州省のLGFVが7年物の債券で8億元を調達したが、この資金は欧州最大級のサッカースタジアムの2倍の規模を誇る施設の建設などに充てられる。
 このLGFVの利払いに対する営業収益の比率は急激に悪化しているが、それでもこの債券の格付けは上から3番目の「ダブルA」だ。

(Nathaniel Taplin記者)


Record china 配信日時:2016年5月25日(水) 5時10分
http://www.recordchina.co.jp/a139478.html

中国の深刻な不動産在庫に国営メディアが危機感、
中国ネットは「不動産バブルは庶民のせい?」と反発

 2016年5月23日、中国メディアの人民日報が、過剰な不動産在庫に関する記事を掲載した。

 中国の不動産市場では、長年にわたる急成長で多くの在庫を抱えるようになっている。
 記事では、
★.欧米の持ち家率は60%ほどにすぎず、
 日本では結婚時の持ち家率が14.3%で、
 中国の90%
と大きく異なっていると指摘。中
 国ではみんなが倹約して家を買うため不動産価格は上昇し続け、内需が拡大しないと主張し、賃貸物件の活用が不動産在庫対策になると論じた。

この記事が中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で伝えられると、中国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた。

「住宅価格が高いことを庶民のせいにするのか」
「ほほう、不動産バブルは庶民のせいだといいたいのか。
 なんて革新的な理論なんだ」
「倹約して家を買うような人が不動産価格を押し上げていると?」

「持ち家がないと小学校に入れないからだよ」
「俺は今年に入って2回も大家に追い出された。
 2か月後には家賃値上げだ。
 この気持ちが理解できるか?」
「70年間の使用権を持ち家と呼べるのか?」

「こういう時だけ西側の価値観を押し付けるのか」
「日本も欧米も政治家の資産は100%公開だ。
 選択的な比較はやめてくれ」




【2016 異態の国家:明日への展望】


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チャイナマネーは何処へいく(4):中国による農地の爆買い、ゴーストタウンとなった北海道別荘地の分譲

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Record china配信日時:2016年4月25日(月) 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/a134451.html

中国企業の海外土地買収が論議に、
農地購入は敏感な問題
=国家の長期的発展にかかわる―中国紙

 2016年4月20日、環球時報(電子版)は
 「海外での中国企業による土地買収が論議を呼ぶケースが増えている。
 農地買収の場合は特に敏感な問題になる」
と伝えた。

 フランスでは最近、「正体不明の」中国企業が農地を高値で買おうと試みたと伝えられ、現地で論議を呼んだ。
 オーストラリアでは19日、広大な牧場を購入するために続けられていた中国企業の半年にわたる交渉に終止符が打たれた。
 しかし、まだオーストラリア当局の承認待ちの状態だ。
 「土地問題は国家の長期的発展にかかわることであり、安全保障や資源確保の観点からみても対立の元になる可能性が高い」
と指摘する声もある。
 各国にとって敏感な問題で、中国企業の困惑はさらに拡大するだろう。 

 英大手不動産サービス・サビルズの中国市場研究部は、海外では商業地、住宅用地を買収する場合、環境汚染や違法行為がない限り問題ないが、農地を買う場合は大きな問題が生じると指摘。
 「なぜなら現地では自国の資源や農作物が買われたと受け止められるからだ」
と分析している



Record china 配信日時:2016年4月18日(月) 6時0分
http://www.recordchina.co.jp/a133486.html

中国企業、仏の農地大量買収で物議
=相場の3倍で5000ヘクタール入手!?―仏メディア

  2016年4月14日、仏国際放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(中国語電子版)によると、フランスではこのほど、中国企業が中部アンドル省の農地を相場の3倍以上の価格で買収して物議を呼んでいる。

   問題となっているのは、同省の農地約1700ヘクタール。
  仏メディアによると、中国企業の「ホンヤン集団」が相場の3倍を超える価格でこのほど買収したという。
  同社の詳細は明らかになっていないが、ガソリンスタンド設備関係の企業で、土地の購入基金は香港から調達されたとみられる。
 農業にはまったくない企業という。
 同社はさらに周辺の土地も購入し、合わせて5000ヘクタールを手に入れたとみられる。

 中国企業は現地に農業企業を設立。
 地元農民の負債を肩代わりする代わりに、土地を提供するよう求めているという。
 地元の農業団体は
 「農地が投資に使われる危険信号だ」
と懸念を示している。



Record china 配信日時:2016年4月23日(土) 21時20分
http://www.recordchina.co.jp/a134547.html

10万平方キロ!
浙江省・韓国に相当する巨大牧場を中国企業に売却へ―豪州

 2016年4月21日、参考消息網は記事
 「中国企業が再び豪牧場の入札に参加、浙江省に相当する巨大牧場」
を掲載した。

 オーストラリア放送協会(ABC)によると、豪牧場経営会社S・キッドマンは保有する10万平方キロの牧場を中国企業に売却する方針を決めた。
 政府の認可が下りれば正式契約を進める方針だ。

 10万平方キロといえば浙江省や韓国に相当する広大な面積だ。
 これほどの土地を外資系企業に売却することには国民の不安も強く、昨年末には中国系企業の買収案が政府によって不許可とされている。
 今回は上海鵬欣集団旗下の湖南大康牧業が主導する中国企業が株式の80%、オーストラリア企業が10%を取得する計画となっており、政府の判断に注目が集まりそうだ。

 認可の可否は7月の総選挙後に決定する見通しだ。


Record china 配信日時:2016年5月15日(日) 7時40分
http://www.recordchina.co.jp/a129070.html

「北海道の中国人向け別荘地、あっという間に売れるもゴーストタウンに」
の報道に中国ネットが反応、
「日本と中国の決定的な違いは…」

 2016年5月13日、中国人が買った日本の別荘地がゴーストタウンと化しているとの報道に、中国のネットユーザーが反応を示している。

 参考消息網が伝えたのは、日本メディアが報じた北海道千歳市郊外の様子。
 記事によると、別荘地は中国人向けに約6億5000万円を投じて整備され、敷地内には17棟の2階建て住宅が建設されている。
 平均価格は1棟3000万円。
 100人以上が入居を申し込み、すぐに売れたが人が住んでいる様子はなく、ゴーストタウンの様相を呈しているという。

 中国人の海外での不動産購入はかねてよりその勢いが知られており、中国経営報は先ごろ
 「日本の不動産価格はここ2年間で30%ほど上昇しており、
 その要因として中国人の買い手が大量に流入していることが挙げられる」
と報じた。
 今回伝えられた北海道の状況に関し、中国のネット上には
 「世界で最も自尊心がないのは中国人だ」
と批判的な声が上がる一方、
 「3000万円?
 北京の街中ならトイレくらいの面積しか買えないんじゃないか?」
 「人間とはこういうもの。
 環境の良いところに住もうとするのは当然のことだ」
 「東京も丸ごと買ってしまおう」
 「日本で不動産を買うことも悪くない選択だ。
 日本とは違い、中国の不動産バブルはまだはじけていない」
という声や
 「空き物件があるなら自分も買いたい」
 「中国は何もかも値段が高いのに品質は悪い。
 安心感というものがない」
 「日本で別荘を買えば自分の財産になる。
 中国では70年間の使用権しか持てない。
 国民に愛国心を持たせたいなら不動産制度を見直してほしい」
 「日本なら別荘に住まなくても所有権はずっと自分のもの。
 これが重要なんだ」
などの意見が寄せられた。



Record china  配信日時:2016年6月26日(日) 5時30分
http://www.recordchina.co.jp/a134449.html

2015年は3兆円!
中国人の海外不動産“爆買い”続く、
各国では反発も―中国メディア

 2016年6月24日、京華時報は記事
 「中国人投資家、海外不動産購入に300億ドルを投資、
 各国国民は取り締まりを熱望」
を掲載した。

 海外不動産投資仲介企業の万国置地は報告書
 「2016年世界不動産投資展望・万国置地世界不動産投資白書」
を発表した。
 同報告書によると、2015年、中国人投資家の海外不動産購入額は300億ドル(約3兆700億円)に達した。
 資産保有額上位30%の富裕層、上位中産層にとって
 海外不動産投資はリスク分散のために合理的な選択肢であり、
潜在的な投資ニーズは3兆2700億元(約51兆円)に達する。
 それだけに今後も投資は急成長を続けるとみられる。

 一方で中国人投資家による不動産“爆買い”が不動産価格の高騰を招くと各国国民から強い反発を招いている。
 オーストラリアが非居住者による不動産ローンに対する制限を導入したように今後対策が広がっていくことが予想される。



Record china 配信日時:2016年6月29日(水) 1時40分
http://www.recordchina.co.jp/a143084.html

英国のEU離脱が中国不動産企業に打撃、
過去最大の資産縮小リスクに直面―中国メディア

 2016年6月27日、中国メディア・界面によると、ここ数年、リスクの少ない資産移転先として、万達(ワンダ)や万科、緑地、中海、保利など多くの中国の不動産企業がロンドンの不動産を購入してきたが、英国が欧州連合(EU)離脱を決めたことによって、過去最大の資産縮小のリスクに直面している。


 中国国内では投資環境が良好ではなくなり、英国への投資が一種のブームとなっていた。
 中国企業が英国の不動産を次々に買い入れたことで、英国内の不動産価格は上昇し、その賃料などから得られる利益も高まっていた。

 しかし、英国のEU離脱が国民投票で決まり、投票結果を受けてキャメロン首相が辞任を表明。
 今後の先行きは不透明となり、英国の経済は長ければ10年にわたって不安定な時期が続くとも予測されている。

米不動産コンサルタント企業のジョーンズ・ラング・ラサールは報告書で、英国の通貨・ポンドが急落したことで、不動産価格や賃料が大幅に値下がることは確実だと指摘している。







●《中国経済崩壊》海外買占め戦略が大失敗:食料は大丈夫か?
2016/06/25 に公開






【2016 異態の国家:明日への展望】


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2016年4月24日日曜日

ロシア機の米艦への異常接近の意味するものとは:

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ロイター  2016年 04月 23日 16:35 JST
http://jp.reuters.com/article/column-russia-putin-idJPKCN0XJ0VV?sp=true

コラム:ロシア機の異常接近、
プーチン氏がやめさせるべき理由

[21日 ロイター] -
 米ハリウッド映画「トップガン」では、トム・クルーズ演じる天才的な戦闘機パイロット、マーベリックが「F─14トムキャット」に乗って、米海軍の管制官に向かって繰り返す定番の冗談がある。

 何か機上任務を達成するたびに、高速で低空接近飛行の許可を求める。
 いつも却下されるのだが、型破りな主人公は、お構いなしにやってしまう。

 現実には、高速の航空機を飛ばすことは世界で最もリスクの高い職業の1つだ。
 緊張関係にある国家間でよく見られる流血を伴わない示威行為のような、大空での模擬戦闘はパイロットの仕事ではあっても、まったく必要のないリスクは許容されない。

 先週、バルト海を航行中の米イージス駆逐艦「ドナルド・クック」に対して、ロシア空軍のSU24戦闘機が数回にわたり「攻撃のシミュレーション」(米当局者)を仕掛けてきたとき、ユーモアの精神でこれに応じる余裕は米軍にはまったく欠けていたが、それも無理からぬ話だ。

 米軍欧州司令部は報道発表のなかで、こうしたロシア機の行動は「危険でプロフェッショナルではない」と表現し、意図せぬ紛争を引き起こす大きなリスクをもたらしていると警告した。

 現時点で米国が示している怒りや公式の抗議には、やや芝居がかった面がある。
 ケリー国務長官の発言はどうあれ、非武装のロシア空軍機がいくら接近してこようと、少なくともすでに砲火が交わされているのでなければ、米海軍がこれを撃墜することは考えにくい。

 ロシア軍機と同様に、米軍機や米艦船にも、必ずしも歓迎されていない場所で自らの存在を誇示する伝統がある。
 もっともそれは、航行の権利という点で何ら問題のない国際水域・空域での話ではあるが。

 たとえば南シナ海では、米国および同盟国の「航行の自由作戦」のもとで、艦艇や航空機が慎重に派遣されているが、その領域に対しては、中国政府が排他的経済水域その他の権利を主張している。
 とはいえ、中国以外のほぼすべての関係国がその主張に異議を唱えている。

 今年1月には、中国政府からも今回の場合と非常に似通った抗議が行われている。
 中国が支配する島しょから12カイリ(22キロ)の域内に入った駆逐艦「カーティス・ウィルバー」について、「プロフェッショナルではなく、無責任」な通過であると表現したのだ。

 米国や、オーストラリア、フィリピン、インドネシアなどの航空機は、領有権が争われている島しょ周辺で中国が自国の防空圏を主張しているのは違法であるとして、定期的にこの空域への侵入を試みている。

 中国政府も、自国領域に近い国際水域における米軍などの活動を偵察するため、頻繁に軍艦や航空機を派遣している。
 専門家のなかには、こうした作戦が偶発的な衝突やエスカレーションにつながるのではないかと懸念する声もある。

 もっとも、米当局者によれば、米国側とのやり取りにおいて、中国側の行動はこれまでよりもプロフェッショナルなものになってきたという。
 軍の部隊はお互いに遠慮して距離を置き、英語で明確かつ効果的なコミュニケーションを取り、意図せずして危険な状況が生じかねないような接近した距離での航空機や船舶の運用を避ける傾向を示しているという。

 数年にわたって、関係の構築と行動ルールの基本的な理解に努めてきた米軍の司令官にとって、これは大きな安心につながる。
 3月にワシントンで行われた会議で、米海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将は、米中両国の軍艦が緊急時に双方の艦橋どうしで直接コミュニケーションを確立できるようにするという点で、非常に現実的な前進が見られたと述べている。

 公式の議事録によれば、
 「おおむね、われわれが策定を進めてきたルールがますます遵守されるようになっている」
とリチャードソン大将は述べたという。
 「(中国側の)司令官とは良好なコミュニケーションを取ることができた。
 何か疑問が生じるようなことが起きた場合にはお互いに連絡を取ることができる」

 ペルシャ湾でも、イラン軍が分かりやすく効果的に行動する傾向を見せていることについて、米海軍の将校が渋々ながら敬意を(あるいは少なくとも評価を)示している。
 イランの領域に米軍の部隊が接近すると、すぐさま英語で退去するよう警告がある。

 だが、より政治性の強いイラン革命防衛隊の部隊については、予測可能性がはるかに低く、許容範囲を超えてくる傾向があるという。
 今年初め、米海軍の哨戒艇2隻がイラン領海をわずかに侵犯したという理由で拿捕(だほ)された例に見る通りだ。

 一方、海空におけるロシアとの対立に関しては、米国・北大西洋条約機構(NATO)の関係者のあいだには、ロシア政府が(あるいは少なくともその当局者の一部が)あまりにも多くのリスクを冒しているという確かな印象があるようだ。
 米当局者の多くは、ロシア側がそのような行動を取るということは、最上層部からそのように促されているに違いないと考えている。

 駆逐艦「ドナルド・クック」に対する模擬攻撃の場合、抗議の要点とされているのは、ロシア機が接近したスピードと距離そのものである。
 「クック」は当時、艦載ヘリコプターの運用作業を行っていたが、指揮官は作業を中止せざるを得ないと感じた。

 その後まもなく、ロシアの軍用ヘリコプターが米艦隊の周囲を飛行した。
 危険性ははるかに低い動きに見えたが、それでも威嚇を試みているのは明らかだった。

 米当局者によれば、この事件は、ロシア軍機によるバルト3国の空域を中心とする偵察で繰り返し見られる、はるかに広範囲の行動パターンに合致しているという。
 場合によっては、ロシア機が実際に領空の境界を越え、警告が発せられることもある。

 西側当局者によれば、こうした事件がニアミスにつながる場合もあるという。
 スウェーデンは昨年、識別信号を出さずに航行していたロシアの偵察機が民間旅客機に危険な距離まで接近したとして抗議した。

 12月にはNATOが最近のロシアによる行動について、「域内の民間航空に対する脅威」であると述べた。
 米連邦政府によれば、「クック」事件の直後である先週末には、別のロシア軍機が、同じ空域で航行していた米軍の偵察機の周囲で潜在的な危険の伴うバレルロール飛行を行ったという。

 ロシアの軍事的な行動範囲と影響力が、冷戦終結以降見られなかった規模に拡大している今、こうした事件はロシア近傍以外でも発生する可能性がある。
 もっとも、「不当にスケープゴート扱いされている」というロシアの抗議も、場合によっては正論であるかもしれない。

 昨年、北アイルランドの漁船が、船員たちの考えでは国籍不詳の潜水艦と思われるものに漁網を引っかけ、危うく転覆しそうになった。
 英海軍の潜水艦は無関係とされ、専門家のあいだには、ロシアの潜水艦ではないかとの声があった。
 だが9月になって、英当局者が実は英海軍の潜水艦だったことを明らかにした。

 問題の一端は、現在のロシア軍の方針において、ロシア政府による軍事行動の詳細をできるだけ曖昧にしておくことが非常に重視されているように見える、という点にあるのかもしれない。

 2014年のクリミア併合が示しているように、こうした方針にはいくつかの利点がある。
 西側諸国の政府が事態を正確に把握する前に、ロシアの非正規部隊(あるいは少なくとも、明らかに軍属と分かる記章をつけていない勢力)がクリミア半島の大半を確保することができたのだ。

 地上に関しては、現在米国とNATOが、リトアニア、ラトビア、エストニアといった旧ソ連圏諸国において衝突が生じた場合に、クリミア半島に似た状況に対処する方針・戦略の策定を急いでいる。
 バルト3国は現在いずれもNATO加盟国であり、NATO憲章では、加盟国のいずれかに対する攻撃はすべての加盟国に対する攻撃であると定めている。

 海空においては、状況はもっと明確であるはずだ。
 1972年には海上において発生した事件の処理に関する合意が米ソ間で結ばれているだけに、なおさらである。
 しかし先週のバルト海における一件では、この条約への違反があったと米国は主張している。

 ロシアからの挑発的な行動が止まると期待する者はいない。
 実際のところ、米国・西側の当局者の多くは、ロシア政府の立場からすれば、そうした行動が理にかなっている場合が多いことを認めている。
 だが2014年にウクライナ上空でマレーシア航空MH17便が撃墜された件は、軍事的な責任に関する基準をあまりにも曖昧にすることのリスクを明白に物語っている。

 ロシアのプーチン大統領が、自軍の戦闘機パイロットを多少なりとも大人しくさせたいと考えてもよさそうなものだが。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)




【2016 異態の国家:明日への展望】


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中国の環境破壊:高圧力をかけて工場排水を地面に流し込む悪魔の手法、「地下水の死」から「大地の死」へ

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Yahoo ニュース 2016年4月23日 20時38分配信 児玉克哉  | 社会貢献推進機構理事長
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20160423-00056955/

中国の土壌汚染はなぜ起こるのか
~各地で健康被害が顕在化

 中国の大気汚染は目立つのでよく話題になりますが、さらに深刻なのが土壌汚染です。
 土の中に染み込んだ化学物質は長い年月をかけて地下水に入り、農産物を汚染し、身体にも大きな悪影響を与えます。
 それを除去するには巨額の資金と長い年月がかかります。
 ほぼ不可能と考えられるような状態に陥っています。

 読売新聞(2016年4月18日付)が以下の汚染による影響を伝えています。
 「上海紙・東方早報などによると、中国江蘇省常州市の常州外国語学校(中学・高校)で、昨年9月に新校舎に移転後、生徒493人に皮膚炎などの異常が見つかった。
 湿疹や気管支炎を訴える生徒もいるほか、白血病のような深刻な症状も出ている。
 隣接する化学工場跡地の土壌汚染が影響した疑いが強まり、同市当局が調査している。
 化学工場跡地では地下水から基準値の約9万4800倍のクロロベンゼン、土壌からも約7万8900倍の同物質が検出された。
 工場の元従業員によると、作業の手間を省くために廃水を工場外に流したり、廃棄物を地中に埋めたりしたという。
 中国は土壌汚染が深刻で、汚染物質を排出する企業690社の敷地や周辺で行った調査では、調査地点の36%で基準値を超える汚染物質が見つかっている。 」

 非常に酷い状態です。
 これが特別というよりも氷山の一角と見たほうがいいでしょう。
 中国ではこれから長期にわたって、土壌汚染による健康被害が増えると予想されています。
 
 中国の環境保護省は全国的な土壌検査の結果を発表しています。
 それによると、国土の3分の2に当たる約630万平方キロメートルのうち、
 約16%の土地と耕作地の約19%で基準値を上回る汚染が確認
されたことを明らかにしています。

 中国は広大な国です。
 そのかなりの部分で汚染が確認されていることは信じがたいことです。
 工場跡地には、予想できないくらい酷い汚染があります。
 カドミウムやヒ素、クロム、鉛などの重金属が土地に含まれています。
 どうしてこのような事態になったのでしょうか。

 いくつものパターン、要因があります。
 まず、工場排水をほとんど浄化しないで、川などに垂れ流しにしていました。
 中国の川は日本のように急流でないので、重金属は川に淀み、時間をかけてまわりの土地を汚染していきます。
 汚染した川の水をそのまま農業用水として使うなら、農耕地はあっという間に汚染されます。
 工場排水をそのまま農業用水として使うこともあるようです。
 政府は川などへ工場排水をそのまま流すことを規制し始めました。
 費用のかかる浄水装置をつけなければなりません。

 そこで考案されたのが、土地に高圧力をかけて工場排水を流し込む手法です。
 高圧をかければ土地の中に工場排水が入っていきます。
 これがかなりの場所で行われているといいます。
 そうなると工場の土地は凄まじい汚染土壌となります。
 常州外国語学校の建っている工場跡地が大変なレベルでの重金属汚染土壌であることもこうしたことが原因であるのではないかと推察できます。

 それはやがては地下水に入ります。
 中国では地下水が非常に重要な水資源です。
 農業用水としても使われます。
 こうした過程を経て、広大な土地が汚染されているのです。
 土壌汚染が自然に回復するには数百~1000年の時間がかかるといわれます。
 人間が生きている時間よりも長いのです。
 これを解消するには、土地を入れ替えたり、土壌を洗浄するなどしなければなりません。
 ただここまで広大だと、どこから手をつければいいのか、ということになります。
 地下水が汚染されていくと、中国は使える水が足らなくなります。
 地下水の絶対量も減り続けています。
 その質がさらに悪化すると、工業においても農業においても、人々の生活においても大きな問題となります。

 日本の土壌浄化の技術や水の浄化技術は優れたものがあります。
 あまりに広大な汚染なので、どこまで浄化できるのかはわかりませんが、そうした技術を活用することは重要です。さらに汚染させないことが何よりも必要です。

児玉克哉
社会貢献推進機構理事長
三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp



サーチナニュース 2016-05-17 07:55
http://news.searchina.net/id/1609852?page=1

深刻さが増す中国の環境汚染、
日本の琵琶湖の例に学ぶべき=中国報道

 現在の中国では水質汚染が非常に大きな社会問題となっているが、中国メディアの全景網はこのほど、日本の琵琶湖が30年という歳月をかけて水質の回復に成功したことを紹介、中国は琵琶湖をめぐる経験から学ぶことができると説明している。

 記事は1960年代の高度経済成長期に琵琶湖は水質汚染の危機に直面したと紹介。
  工場や家庭の廃水に含まれる大量の薬品、化学合成品、重金属などの物質が水質を破壊。
 1962年には農薬が漁業に与えた損害は4億円、さらに1973年の滋賀大学の調査によれば約14%の魚に脊椎異常が見られたと説明した。

 そこで日本政府は1972年に琵琶湖総合開発特別措置法を制定、またこの法律に基づいて「琵琶湖総合開発」と呼ばれる国家プロジェクトを実施したとは紹介。
 これは生活廃水による汚染、工業廃水による汚染、農業廃水による汚染というさまざまな汚染ルートそれぞれに徹底的な汚水処理対策を講じるというプロジェクトだ。

 さらに記事は1977年に琵琶湖に赤潮が発生した際、水質改善のために「滋賀県民は非常に大きな力を発揮した」と説明。
 当時の市民運動が1979年の「富栄養化防止条例」の制定につながったことに記事は言及、水質保全に対する住民一人一人の意識の高さに注目している。
 これらの取り組みの結果、琵琶湖の水質は好転し現在は6メートル以上の透明度があると伝えた。

 琵琶湖の水質管理について、記事は「厳格」という言葉を何度も用いて、中国の読者に向けて日本の取り組みについて紹介している。
 様々な法律を「厳格」に制定、琵琶湖汚水処理場における規制値を「厳格」に実施、また政府が定めた基準よりも「厳格」な規準などの表現から、環境汚染対策は厳格さをもって臨まなければ決して成功しないという記事の見方が表れている。
 それと同時にこの表現は水質管理において自分を律する強さを発揮した日本社会に対する敬意も含まれていると言えよう。

 記事は最後に非常に重要な事実を伝えている。
 琵琶湖の水質を回復させるために日本は
 30年という歳月と莫大な金額
を投じたということだ。
 「汚染が生じてから管理する」というやり方の代償はとてつもなく大きい。
 中国では水質汚染のみならず、土壌、大気、あらゆる環境が深刻な水準にまで汚染されてしまっている。
 中国が環境を回復させるためには琵琶湖の例よりもはるかに莫大な資金と長い時間がかかると予想される。



JB Press 2016.5.17(火)  姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46841

ここでも締め付け、公害と戦えない中国の市民団体
民間組織の管理が強まり、暗黒社会にまっしぐら

 今年(2016年)は水俣病の「公式確認」から60年の節目だ。
 ゴールデンウィーク中の5月3~5日には東京大学の安田講堂で「水俣病公式確認60年記念 特別講演会」が開催され、多くの聴講者が集まった。
 公演会を主催したのは、水俣病の悲劇を風化させまいとする「水俣フォーラム」というNPO法人だ。

 PM2.5に汚染された空、カドミウムに汚染された土壌・・・、中国もかつての日本と同じ公害問題を抱えている。
 日本で公害問題を突き動かしたのは、被害者の抗議運動であり、専門家による分析であり、ジャーナリズムだった。
 水俣フォーラムのような市民団体も活発に活動している。

 では、中国ではどうだろうか。
 残念ながら、思想弾圧や言論統制の厳しい中国で市民団体が公害反対運動などを展開するのは極めて難しい。
 公害反対運動どころか、民間の自発的な活動自体が政府の監視下に置かれているのが実態だ。

■半官組織が担う中国の環境活動

 中国で環境活動を展開する市民団体には海外のNGOや中国人によるボランティア組織などがあるが、活動の歴史はまだ浅い。
 「中国でNGOという言葉が広がったのは1992年の地球サミットから」(中国の環境問題の専門家)とも言われ、1990年代は海外のNGOが先行して活動を展開していた。
 中国人による活動が見られるようになるのは2000年代に入ってからのことだ。
 しかし、中国国内の市民団体は今も「勝手に組織できず、申請しても受理されない」(同)のが現状だ。
 草の根的な組織は民政部が登録を受け付けないため、「政府非公認」という存在にとどまる。
 そのため活動は自由に行えず、社会への影響力も限定されてしまう。

 中国で民間組織に代わって活発に環境活動を展開するのが「政府系の非政府組織」(GONGO)だ。
 西側先進国では民間組織が担う社会活動を、中国ではこうした半官組織が中心になって行う。
 GONGOの中身は、言ってみれば政府機関からの天下りが仕切る組織である。
 結局、その活動は一般の公共事業と変わらないと言ってよい。

■「ボランティア」という言葉も定着してきたが・・・

 中国ではすでに国家計画のもとにさまざまな環境対策プロジェクトが進行している。
 そのため、大気汚染や水質汚染の対策を政府任せにする市民は少なくない。
 市民が自発的に環境活動を展開しようという機運も生まれにくい。
 各地で散発的に反公害運動が起こっているようだが、大きなうねりになることはない。

 それでも近年は、環境問題に目覚めた新世代がアクションを起こすようになってきた。
 五輪や万博など国家イベントを契機として、あるいは四川大地震がエポックメイキングとなり、「ボランティア」という言葉も一般の若者の間に定着するようになった。

 上海の外資企業に勤務する中国人女性のHさん(27歳)もそうした世代の1人だ。
 最近、環境ボランティアに関心を持ち、上海で活動する民間グループをインターネットで探し始めた。
 ところが、参加できる団体が見当たらない。
 「活動内容も十分に開示されていない。
 会員を募集している様子もない。
 民間の環境ボランティアは厚いベールにくるまれている」
とHさんは驚く。
 草の根の市民団体はあるにはある。
 だが、必ずしも市民にとって身近な存在であるとは言い難いのが実情だ。

■まだまだ自立できない民間組織

 筆者の中国の友人に、ある「草の根NGO」の創設者がいる。当
 時は“金持ち”だった日本人から募金を集め、これを元手に細々と活動をしていた。
 だが、2000年代後半から全国組織の非営利公益法人との連携を強めるようになった。
 連携とはいえ、実態は民間組織が国の組織の傘下に組み込まれたという構図に近い。
 上述したように、中国では民間組織が立ち上がっても活動は限定的だ。
 また世間も、その組織が政府機関でもなく非合法な存在であれば「怪しげな反政府分子」と疑うだけだ。
 だとすれば、主宰者が「寄らば大樹」に傾くのは仕方がない。

 国の組織と「連携」してから国営メディアは盛んにこの民間組織を取り上げるようになった。
 結果的にこの組織は知名度が上がり、その後の活動に大きく弾みがついたのである。
 逆の言い方をすれば、民間組織はまだまだ自立できる状況ではないというわけだ。

■「暗黒社会」の到来か

 4月末、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、中国国内における海外NGOの活動を規制する法律が成立した。
 対象となるのは、主に国家の安全に影響をもたらす人権団体などのNGOだと言われている

 だが、中国が統制しようとしているのは人権団体だけにとどまらない。
 中国共産党は、海外NGOのみならず国内の民間組織やボランティア組織、学会や協会など(これらを中国では「社会組織」と呼ぶ)もますます強力に統制する方針を打ち出している。
 上海出身で東京在住のPさんは
 「社会を良くするためには市民の参加が不可欠だ。
 しかし、中国では民間組織の活動がますます衰退していると言わざるをえない」
憂慮する。

 民間には、国や政府の枠組みとは異なる民間ならではの運営モデルがある。
 ここから新たな知恵や工夫が生まれ、ひいては中国が最も必要とする経済の構造改革につながる可能性もある。
 しかし、中国はますます統制が強化され、暗黒社会の様相を強めている。
 衣食足りた中国社会の向かう先が案じられる



Record china  配信日時:2016年5月31日(火) 9時10分
http://www.recordchina.co.jp/a140043.html

年30億トンの固形ごみ!
汚染に苦しむ中国は
海外企業のビジネスチャンスに―仏メディア

 2016年5月28日、RFI中国語版サイトによると、中国は工業汚染に苦しんでおり、海外企業のビジネスチャンスになっている。

 汚染に苦しむ中国。
 さまざまな汚染源があるが、主要汚染源の一つが工業だ。
 2014年時点で
★.年30億トンの固体ごみ、
★.数百万トンの有毒ごみ
が生み出されている。
 また、
★.工業用排水のうち30%は未処理のまま排出
されている。

 深刻な問題だが、汚染処理企業にとっては途方もないビジネスチャンスとなる。
 フランスのVeoliaグループは現在、中国に6カ所の有毒ごみ焼却場を保有し、さらに4カ所を建設中だ。
 中国の有毒ごみ市場で25%のシェアを握るとの目標を掲げている。
 Suezグループは上海化学工業区をはじめ10カ所以上の工業区で排水処理を受注している。
 今後も中国の経済成長率と同じく、年6.5%ペースで売り上げを伸ばしていきたいと意欲を示した。


CNN.co.jp 6月27日(月)11時14分配信
http://www.cnn.co.jp/fringe/35084911.html?tag=top;topStories

北京で深刻な地盤沈下、
年間11センチも 地下水枯渇原因か

香港(CNN) 
 中国の北京で地盤沈下が進み、最も被害が大きい地区では年間11センチも沈下していることが27日までに分かった。
 中国を拠点とする国際調査団が調査結果を発表した。
 沈下の原因は地下水の枯渇にあると指摘している。

 研究チームは衛星画像やGPS(全地球測位システム)のデータを解析し、2003~10年にかけての地理的動向を調べた。

 その結果、北京の地盤沈下は急速に進んでいることが判明。
 特に朝陽区、昌平区、順義区、通州区は沈下の程度が大きく、最も被害が深刻だった東部の昌平区は年間11センチのペースで沈んでいた。

 北京は世界の都市の中で5番目に「水ストレス」が高いと研究チームは解説し、都市化の進展に伴い地下水に対するストレスは一層悪化すると予想する。

 北京は工業用水から家庭用の飲料水まで水の3分の2を地下水に依存する。
 地元メディアによると、北京で必要とされる水の量は年間35億リットルに上る。
 地下水のくみ上げ量が増えるほど乾燥した土壌は圧縮され、急速な地盤沈下は建物や鉄道などの公共プロジェクトにも影響を及ぼしかねない。

 中国では何年も前から水の大量消費に伴う問題が深刻化していた。
 5年前には南部を記録的な干ばつが襲って農作物に多額の損害をもたらし、何百万人もの人や動物が飲料水不足に見舞われた。

 水不足を補うために、特に中国北部では大規模なインフラ整備が進む。

 今回の調査は中国国家自然科学基金委員会の助成で実施され、このほど発表された。



yahooニュース 2016年6月27日 15時6分配信 児玉克哉  | 社会貢献推進機構理事長
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20160627-00059341/

水で栄えた中国が水に苦悩する
~減少し、汚染される地下水

  世界四大文明としてあげられるのは、メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、中国文明である。
  そのどれもが大河の近くで誕生し、発展した。
  メソポタミア文明にはチグリス川とユーフラテス川、エジプト文明にはナイル川、インダス文明にはインダス川、中国文明には黄河、長江があった。
  水は人間の活動にはなくてはならないもの。
  水とともに文明は発展してきたのである。

  この四大文明の一つの地域である中国で、「水」が問題となっている。
 CNN香港(2016年6月27日)は
 「中国の北京で地盤沈下が進み、最も被害が大きい地区では年間11センチも沈下していることが27日までに分かった。
 中国を拠点とする国際調査団が調査結果を発表した。
 沈下の原因は地下水の枯渇にあると指摘している。 」
と報じている。
 北京では、工業用水や生活用水の3分の2を地下水でまかなっているという。
 中国全体でも3分の1を地下水でまかなっている。
 つまり、中国では地下水は重要な水の供給源なのである。

 中国は国全体で見ると、水資源総量は 23258.5億m3 (2011年現在)で大きく、 世界の第4位に位置する。
 しかし中国の人口は大きく、全国の1人当たりの水資源量では1730.4m3となり少ない。
 これは世界的にも非常に少ない方に入る。
 しかも、水資源は地域によって偏っている。
 一般的に、北西にあたる東北地域や華北地域、西北地域は乏しい。
 北京は華北地域に入っている。
 中南・華南地域や西南地域は豊富である。

 そして困ったことに、水資源が少なくなる傾向にあるのに対して、水の使用量は増えている。
 特に中国の北西においては、慢性的な水不足が問題化しているのである。
 工業化のためには水の大量消費が必要になる。
 洗ったり、冷やしたり、様々な用途に使われる。
 水をあまり使わない産業はサービス業など一部である。
 経済発展を遂げた中国は大量の水を消費する国にもなったのである。

 また、家庭においても大きな変化が起きている。
 トイレが水洗化した。
 中国では今でも田舎では昔ながらのぼっとん型のニーハオトイレがあり、話題になるが、都市部では水洗化した。
 中国トイレ革命である。
 当然のことながら水の消費量は高まる。
 また清潔を保つことが求められるようになった。
 風呂やシャワーの回数は増えるし、洗濯の回数も増える。
 日本でもヨーロッパでもそうだが、以前は洗濯はあまりしなかったのである。
 それが毎日のように選択をするようになった。
 中国もその流れがきている。
 水の消費は文化的生活を保つのに不可欠なのだ。

 また全体的な水資源不足は中国の砂漠化を進めている。
 昨年は河南省、吉林省などで大干ばつが発生した。
 水問題は中国の最大の問題ともなりつつある。

 中国が苦悩しているのは、水の量だけではない。
 水の質が極度に悪化しているのである。
 2016年1月、中国水利部が公表した『地下水動態月報』によると、2015年に東北の松遼平原や内陸部の江漢平原などにある約2103の井戸に対して水質観測調査を行ったところ、地下水の8割が深刻な汚染で飲めないレベルであるという。
 特に中国の水の乏しい地域では地下水の汚染が深刻であるという。
 よく中国の川の水の色が変わるほどの汚染の写真が見られる。

 ただ、川の場合は対策をとれば、比較的短期間に浄化できる。
 中国の川は日本の川よりも流れるスピードが遅いので、日本よりは時間がかかるだろうが、それでも流れる水の浄化は可能だ。
 地下水が広域に汚染されると浄化は非常に難しい。
 中国の場合は、土壌汚染と一体化した問題だ。
 工場排水を地下に流し込んだり、産業廃棄物を地下に埋めたりしている。
 中国の水汚染は、大腸菌型だけでなく、重金属型でもある。
 深刻だ。

 まずは、これ以上、地下水を汚さないことが大切だ。
 汚れた排水を浄化させて、再利用できる仕組みを作ることが必要だ。
 また汚染された地下水を浄化し、「使える」水としてキープすることも考えなくてはならない。
 節水の技術も求められる。
 日本は水には敏感であった。
 安全で清潔な水は当然のもととして文化に溶け込んだ。
 それだけに日本の浄水技術は世界でもトップクラスである。
  節水技術もトップレベルだ。
 この分野での日中の協力は可能だ。
 将来的には水資源が経済の発展の最大の要件になるだろう。
 日本は水の分野での最重要技術を持っている。
 水による共栄ができれば素晴らしい。


Record china配信日時:2016年7月9日(土) 6時0分
http://www.recordchina.co.jp/a144245.html

中国で土壌汚染が深刻に、
河北省の村では謎の奇病が多発―スペイン紙

 2016年7月7日、中国で土壌汚染が極めて深刻な状況にあり、河北省の村々では謎の奇病まで多発している。
 中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。

 スペイン紙エル・パイスによると、河北省の大営村は「皮の都」と呼ばれる皮革・毛皮産業の一大都市・辛集市に隣接しており、村内には周辺の工場から出た大量の産業廃棄物が山積みにされ、ひどい悪臭が漂っている。
 また、工場で生産に使われた化学物質が川に捨てられ、ここからも異臭がしており、飲用水が汚染された村人は何度も苦情を申し入れているという。

 ある村人は
 「よくわからない病気にかかっている人がたくさんいる。
 まだ若いのにがんになってしまう人もいる」
と話す。
 さらに、2年前に植林した200本ほどの楊の木はすべて枯れ果てた。
 のそばで農業を営んでいる村人も、
 「家計のすべてを支える小麦はまったく収穫できなくなった。
 水が汚染されたからだ」
と涙ながらに訴えている。

 しかし、こうした事例は大営村に限ったことではない。
 土壌汚染は大気汚染と同様、中国各地に見られる深刻な問題となっている。

 中国国土資源部は2005年から2013年に調査を行い、2014年調査結果を発表した。
 それによると、中国全土の観測地点で土壌汚染が基準を超えているのは16.1%。
 耕作地では19.4%に上り、農業用水が汚染された田畑は330万ヘクタールに達している。
 汚染の原因は工場排水も含めさまざまだが、殺虫剤の過剰な使用も原因になっているという。

 中国政府は5月31日、3年かけて整備した「土壌汚染防治行動計画」を公布した。
 2020年までに土壌汚染を基本的に抑制し、
 2030年までに土壌環境を徐々に改善させ、
 2050年までに全面的に改善させる
というものだが、この計画にはすでに問題が指摘されている。

 必要な関連法の整備ができておらず、計画の実施そのものが不可能な上、
 中国環境保護部の専門家は
 「2014年に発表された調査の信頼性も低く、確実な統計データをより多く集める必要がある」
とし、2018年内にすべての耕作地の汚染状況を調べることを目標にしていると話している。
 また、高いコストも問題となっている。



【2016 異態の国家:明日への展望】


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