『
ロイター 2016年 04月 8日 22:53 JST
http://jp.reuters.com/article/panama-tax-china-idJPKCN0X51ME
中国外相「まずは明確な情報把握が必要」、
パナマ流出文書で
● 4月8日、中国の王毅外相は「パナマ文書」をめぐり、まずは明確な情報の把握が必要との立場を示した。共同会見する王外相(右)とシュタインマイヤー独外相。(2016年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
[北京 8日 ロイター] -
中国の王毅外相は8日、パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)に関する内部文書「パナマ文書」をめぐり、中国はまずは明確な情報の把握が必要との立場を示した。
流出文書では、習近平国家主席など中国の新旧指導部の親戚に関連したオフショア企業の存在が判明。
中国外務省は文書流出をめぐる疑惑について、これまで根拠がないと非難している。
王外相は、パナマ政府が独立委員会を設置して実態調査に乗り出す方針を表明した経緯を念頭に、同国が真相を解明する取り組みを行なっていると認識していると指摘。
「まずは明確かつ正確な情報を理解する必要がある」
とした。
中国を訪問しているドイツ外相との共同会見で述べた。
パナマ政府と連絡を取っているのかなど詳細には言及しなかったが、
「中国国民の幅広い支持と共に、われわれは汚職撲滅への取り組みを続ける」
と言明した。
中国の国営メディアはおおむね、パナマ文書に関する報道を避けている。
』
『
TBS系(JNN) 4月9日(土)7時9分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160409-00000015-jnn-int
パナマ文書、中国外相が初めて言及
いわゆる「パナマ文書」で、習近平国家主席ら中国最高指導部メンバーの親族の税金逃れ疑惑が浮上している問題で、王毅外相が初めて言及し、「まずは問題をはっきりさせる必要がある」と、今後の進展を見守る考えを明らかにしました。
「我々は、まずそれをはっきりさせる必要がある。
一体どういうことなのか」(中国 王毅外相)
中国の王毅外相は8日に行われたドイツの外相との共同記者会見で、パナマ文書について初めて言及し、今後の進展を見守る考えを明らかにしました。
パナマ文書をめぐっては、パナマのバレラ大統領が実態を調査する独立委員会を設けること発表したほか、文書が漏えいした法律事務所がハッキングによってデータが流出したと被害を訴えています。
王毅外相は、中国最高指導部の親族の名前が挙がっていることについては直接触れず、文書の内容の真偽についても言及しませんでした。
また、習近平主席が進める「汚職取締り」に影響が出るのかとの問いに対しては、
「人民の幅広い支持のもと、中国の反腐敗闘争は進行中だ」
と述べ、影響がないことを強調しました。
』
ロイタービデオ
中国人が最大の顧客
世界中の富裕層や政治家らと、タックスヘイブン(租税回避地)との橋渡し役を務めてきたとされるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」。同事務所から流出した、いわゆる「パナマ文書」で、その最大の顧客は中国であり、同事務所の香港支社がオフショア企業設立の重要な拠点となっていた可能性が浮かび上がってきた。
』
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レコードチャイナ 配信日時:2016年4月9日(土) 11時50分
http://www.recordchina.co.jp/a132753.html
パナマ文書スキャンダルの火消し
躍起の共産党幹部に中国ネット民が皮肉の「応援エール」、
中国ネットで広がる情報封鎖批判―仏メディア
8日、パナマ文書報道を「根拠が無い」として封殺しようとする当局に対し、中国ネット民は皮肉や冗談も交えてさまざまな手法で共産党指導層を批判した。
2016年4月8日、仏国際放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語サイトは、パナマ文書の封殺を目論む中国当局を暗に批判する中国ネット民のさまざま反応を伝えた。
パナマ文書はパナマの法律事務所モサック・フォンセカが作成していた機密文書で、この文書の流出により世界各国の政財界の要人らがタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用し、資金隠しのために設立したペーパーカンパニーや資金洗浄などの実態が浮き彫りになっている。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席らの親族も資産隠しに関わったという報道がなされているが、中国外交部は「根拠が無い」と否定している。
これらの報道に対し、中国ネットにはパナマ文書の火消しに躍起になる中国指導部をやゆするネット民たちからのさまざまコメントが寄せられた。
今回の事件では李鵬(リー・ポン)元首相の娘・李小琳(リー・シャオリン)氏にも資産隠しの容疑がかかっている。
中国版ツイッター・新浪微博(ウェイボー)のユーザーは、町中である人が
「李小琳さんに応援エールを!パナマ文書を非難する」
と書いた紙を掲げる写真を投稿。
さらに
「同胞たちよ、団結しよう。
共に下心のある敵対勢力を非難しよう」
と皮肉交じりに書き込んだが、直ちに削除された。
また別の微博ユーザーは
「欧米の邪悪な連中どもはやるな!
あの文書は中国以外の部分については全部真実だ。
世界中では大スキャンダルなのに、ここの民衆たちはおとなしいもんだな!」
と述べた。
さらに
「パナマ文書流出事件では世界中の民衆が行動を起こしている!
民衆のデモによってアイスランド首相は今朝辞任した。
これこそ民主主義の政府だ。
しかし例外が一つある。
ある国(中国)では、この事件が国際的にどんなに大きな反響を引き起こし、民衆が騒いでも、政府レベルではまるで何もなかったかのように振舞っている。
首相が辞任した国もあるのに、この国の外交部はまだ『根拠が無い』なんて言っている!」
というユーザーも。
賈慶林(ジア・チンリン)元政治局常務委員の孫娘の資産隠し容疑について、ある微博ユーザーは
「北京にいた人はみんな賈慶林が超大金持ちだと知っている。
反腐敗をどうするのか静かに見ておこう」
とコメント。
極め付きは習主席の姉の夫・トウ家貴(デン・ジアグイ)氏までもがパナマ文書に名を連ねていることだ。
そのため、中国最大のポータルサイト・百度(バイドゥ)では「姉の夫」という言葉がNGワードになっている。
現在百度で「姉の夫」と検索してみると、姉の夫に関わる色恋話や小説ばかりが出てくる事態となっている。
』
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現代ビジネス 2016年04月11日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48394
習近平大ピンチ!? 「パナマ文書」が明かした現代中国の深い“闇”
習近平一族の資産移転も載っていた
■異例の対応
4月1日夜、一本の「微信」(WeChat)が私のスマホをピンと鳴らした。
確認すると、北京のインテリ中国人からで、こう記されていた。
〈 今日は「愚人節」(エイプリル・フール)だった。
日頃、中国社会で騙され続けている私は、今日は一体どんな詐欺師が騙しに来るかと、警戒感を強めていた。
だが午前中は何もなかった。
午後になっても警戒を解かなかったが、やはり何も起こらなかった。
こんな奇跡のような日もあるのかと思っていたら、とうとう夜7時になって、『新聞聯播』が始まった……〉
このアネクドート(政治小咄)を読んで、思わず腹を抱えて笑ってしまった。
『新聞聯播』とは、中国中央テレビの夜のメインニュースで、いまや共産党政権の「宣伝放送」と化している。
そのことに対するイヤミを綴ったのだ。
先週、世界中で大きな話題を呼んだ「パナマ文書」では、習近平主席の義兄をはじめとする何人もの中国人の名前が挙がった。
そこで私も、「巴拿馬文件」「巴拿馬泄密」「巴拿馬档案」など、関連する中国語でバイドゥ(百度)に検索をかけてみた。
だがいずれも、
「相関する法律法規と政策に照らして、一部の検索結果は提示できません」
という表示が出るばかりだった。
中国共産党中央機関紙『人民日報』系の国際ニュース紙『環球時報』(4月5日付)が、
「パナマ文書を出した背後に大きな力が働いており、このようなものを暴露して一番得をするのはアメリカだ」
という評論を出したというニュースが、日本で流れた。
ところが、私が『環球時報』のホームページで確認した時には、すでにこの評論は消えていて、中国のネット上からも跡形もなく消えていた。
中国外交部の定例会見でも「パナマ文書」について2日にわたって質問が出たが、報道官は2度とも、
「その件についてはコメントしない」と、一言のもとに打ち切った。
このような対応は異例だ。
■中国人だけが無関係なはずはない
だが中国で、世界中を賑わしている「パナマ文書」自体が抹殺されているのかと言えば、そういうわけでもない。
インターネット上では、中国人を除く外国人の登場人物に関しては、隠し資産が暴露されて辞任第1号となったアイスランドのグンロイグソン首相をはじめ、ロシアのプーチン大統領から、バルセロナFCのメッシ選手に至るまで、つらつらと出てくるのだ。
そして中国のネット上では、中国人だけが、「パナマ文書」とさも関係ないかのように見せている。
これはたいした技術という他ない。
私は先日、日本に対して海外から仕掛けられているサイバーテロの取材を行う中で、大手ネット・セキュリティ会社「カスペルスキー」の川合林太郎社長に話を聞いた。
私の疑問は、インターネットやSNSの技術が、日進月歩で発達していくと、現在、中国政府が行っているような、
14億の国民のネット生活を丸ごと監視したり、規制するようなことが、技術的に不可能になっていくのではないか
というものだった。
すると川合社長は、一笑に付した。
「それは逆ですね。
技術が進歩すればするほど、取り締まる側に有利になります。
取り締まる側の技術も同様に進歩していくので、いまよりもっと楽に、全国民を監視できるようになるのです」
返ってきたのは、中国政府が聞いたら喜ぶような回答だった。
まさにジョージ・オーウェルが描いた『1984』のような時代が、21世紀のかの国に、到来するかもしれないということだ。
■習近平一族の資産移転が明らかに
ともあれ、中国のネットを検索しても、これ以上「パナマ文書」について調べようがなかった。
そのため、今回の震源地であるICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)のホームページから、「パナマ文書」と中国の関係について確認してみた。
すると、あまり似ていない習近平主席の似顔絵とともに、習一族の資産移転に関して、次のように記されていた。
〈 鄧家貴は、不動産開発で財を成し、1996年に斉橋橋と結婚して、「紅い貴族」となった。
斉橋橋は、かつての革命の英雄でトップ・オフィシャルにいた習仲勲の娘だ。
斉橋橋の弟が、中国国家主席で中国共産党トップの習近平である。
ブルームバーグ・ニュースは2012年、鄧夫妻が何百万ドルもの不動産を保有していて、他の資産も保有しているという調査レポートを暴露した。
「モサック・フォンセカ」の内部資料によれば、義理の弟が政界の出世街道を駆け上がっていった2004年に、鄧家貴は英国領ヴァージン諸島に、オフショア・カンパニーを設立した。
その会社名は、シュープリーム・ビクトリー・エンタープライズで、鄧家貴が唯一の取締役で株主である。
だがこの会社は2007年に、英国領ヴァージン諸島の登記から削除された。
2009年9月、鄧は別の二つの英国領ヴァージン諸島の「転売用会社」の単独の取締役兼株主となった。
会社名はそれぞれ、ベスト・エフェクト・エンタープライズと、ウェルス・ミング・インターナショナル・リミテッドである。
「モサック・フォンセカ」は、鄧がそれらの会社の「判子」を得るのを手助けした。
これら2社が、何のために利用されたのかは不明だ。
時を経て、習近平は中国を統治する党中央政治局常務委員のトップ9入りした。
習が2012年の共産党大会で総書記に、また2013年に国家主席に選ばれた時までに、この英国領ヴァージン諸島の2社は、休眠状態となった 〉
この記述を読むだけでは、この習近平主席の姉夫婦が実際に行った行為が、分かったようで分からない。
姉夫婦は香港在住で、現在は習近平主席とはまったく別の動きをしているものと思われる。
そのため、この姉夫婦が迂回させた資金が、習近平を出世させるための政治資金として使われたかどうかは、判断がつかない。
ちなみに習近平主席は、胡錦濤前主席から権力を委譲される直前の2012年6月29日、
ブルームバーグに「鄧家貴・斉橋橋夫妻が3億7,600万ドルも蓄財している」とスッパ抜かれた過去がある。
それだけに、今回も突然のスキャンダル噴出に蒼くなったであろうことは、容易に想像がつく。
何と言っても、習近平主席が2012年12月に、「八項規定」(贅沢禁止令)を華々しくブチ上げて以降、「トラもハエも同時に叩く」と宣言して、汚職幹部を次々に摘発していったことは、記憶に新しい。
「海外に逃亡した幹部100人リスト」まで公表して、不法な資産の移転を取り締まってきたのだ。
それなのに自分の親族が、怪しげな資産の移転行為を繰り返していたとなれば、政権の求心力が弱まることにつながりかねない。
つまり、中国国内では、どんな権力を行使してでも、隠し通しておく必要があるのである。
■新旧幹部がずらり
ちなみに「パナマ文書」には、習近平主席の他にも、中国共産党の新旧幹部たちの親族のケースを暴露している。
ICIJのホームページから、その要旨を訳出する。
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【現役幹部】
〈劉雲山〉
共産党トップ7の劉雲山(序列5位)の義理の娘である贾Liqingは、2009年に英国領ヴァージン諸島に登記されたウルトラ・タイム・インベストメントの取締役兼共同経営者だった。
〈張高麗・常務委員、筆頭副首相〉
共産党トップ7の張高麗(序列7位)の義理の息子である李Shing Putは、英国領ヴァージン諸島に登記された3つの会社の株主である。3社とは、ゼンノン・キャピタル・マネジメント、シノ・リライアンス・ネットワーク・コーポレーション、グローリー・トップ・インベストメントである。
【引退幹部】
〈李鵬・元首相〉
李鵬は、1987年から1998年まで首相を務めた。李鵬元首相の娘である李小琳と彼女の夫は、コフィック・インベストメントという1994年に英国領ヴァージン諸島に編入された会社のオーナーである。この会社のファンドは、産業部品をヨーロッパから中国に輸入するのをサポートするためのものだと、李小琳の弁護士たちは述べている。その所有権はは長年、いわゆる「無記名株」(日本では1991年に廃止)という手法で保管されてきた。
〈贾慶林・元中国人民政治協商会議主席〉
2012年まで中国共産党序列4位だった贾慶林元常務委員の孫娘であるジャスミン・李紫丹は、スタンフォード大学に入学した2010年、ハーベスト・サン・トレイディングという名のオフショア・カンパニーのオーナーになった。以来、ジャスミン李は、20代のうちに、驚嘆すべき巨額のビジネスを行った。彼女の英国領ヴァージン諸島にある二つのペーパー・カンパニーは、北京に30万ドルの資本金の会社を創立するのに使われた。この二つのペーパー・カンパニーを使って、彼女は自分の名前を公表せずにビジネスを行うことができた。
〈曽慶紅・元国家副主席〉
2002年から2007年まで国家副主席だった曽慶紅の弟、曽慶輝は、チャイナ・カルチュラル・エクスチェンジの取締役を務めていた。この会社は当初ニウエに登記され、2006年になってサモアに移された。
【死去・失脚幹部】
〈胡耀邦・元総書記〉
1982年から1987年まで中国共産党のトップを務めた故・胡耀邦元総書記の息子、胡徳華は、フォータレント・インターナショナル・ホールディングスの取締役であり、実質上のオーナーだった。この会社は2003年に、英国領ヴァージン諸島に登記された。胡徳華は、父親が総書記だった時代に使っていた中南海の公邸の住所で登記していた。
〈毛沢東・元主席〉
1949年の建国から1976年の死去まで中国共産党のリーダーだった毛沢東の義理の孫息子である陳東昇は、2011年、英国領ヴァージン諸島に、キーン・ベスト・インターナショナル・リミテッドを登記した。生命保険会社と美術品オークション会社のトップを務めている。陳は、キーン・ベストの唯一の取締役であり、株主である。
〈薄煕来・元中央政治局員、重慶市党委書記〉
失脚した薄煕来元中央政治局員の妻、谷開来は、英国領ヴァージン諸島にペーパー・カンパニーを所有し、その会社を経由して南フランスに豪華な別荘を購入していた。2011年に、愛人だった英国人ネイル・ヘイウッドに、このペーパー・カンパニーのことを暴露されそうになり、ヘイウッドを殺害。その2週間後に、ペーパー・カンパニーのオーナーから退いた。
=======
以上の9人である。
これからマネーロンダリングの額を始めとする具体的な情報が、どんどん出てくるに違いない。
特に、現役の習近平(序列1位)、劉雲山(序列5位)、張高麗(序列7位)の動向に注目である。
■中国人が海外不動産を「爆買い」するワケ
「パナマ文書」に関する世界各国のニュースにも目を通してみたが、英BBCが、中国と関連した興味深いレポートを流していた。
〈 多くの中国人は、社会的に不安定な中国から、自分の資産を移そうと、四苦八苦している。
中国共産党の幹部さえ、自分の財産を海外に移している。
今週明らかになったモサック・フォンセカ社から流出した「パナマ文書」は、その実態の一端を明らかにした。
同社の最大の顧客が中国で、1万6000社にも上る中国系企業の資産を管理していたのだ。
資産をこっそり移しているのは、政府幹部ばかりではない。
多くの中国人富裕層が、香港を経由して、資産をこっそり海外に移していた。
そして移した資産の多くを、不動産に変えていた。
中国人は昨年、およそ350億ポンドもの海外不動産を購入した。
中国人は、国内の法律により、年間3万5,000ポンドしか海外送金できない。
だが、減速する中国経済の影響で自分の貯蓄が消えることを恐れる人や、当局から財産を隠したい人にとって、資産を密かに国外に持ち出すことは、必要なリスクなのだ。
中国政府は資金の国外流出を、間違いなくとても不満に思っているが、これを完全に阻止するのは難しい。
そのため、中国の最も裕福な人々は、今日も資金を国外に持ち出して使っている。
これは彼らにとって自己保身行為と言えるが、それによって中国は、より危うくなっているのだ 〉
実際、昨今の中国人及び中国企業の海外での不動産投資は、まさに「爆買い」とも言えるものだ。
昨年12月19日付『中国青年報』によると、中国ナンバー1の富豪として知られる王健林・万達集団総裁は、ロンドンのバッキンガム宮殿のすぐ近くに建つヴィクトリア朝時代の豪邸を、8,000万ポンド(約144億円)で購入したという。
さらに改装費として、5,000万ポンド(約90億円)を投じる予定だという。
このお屋敷の売買は、印紙税だけで950万ポンド(約17億円)に達し、ロンドンの不動産取引として過去最高額だという。
こうしたことも、ある意味「パナマ文書」と同様で、資産を安全な海外に移す行為である。
イギリスでは巨額投資と騒がれたが、当の王健林総裁にしてみれば、いつ没収に遭うか知れない中国に財産を置いておくより、イギリスで投資した方がベターだという判断なのだ。
この点、単純な投機的マネーゲームに明け暮れた1980年代の日本のバブル時代とは、似て非なるものだ。
■現代中国が抱える深い闇
こうして、政治指導者や富裕層たちが好き放題する一方で、中国政府は4月8日、ついに庶民に対して「爆買い禁止令」を施行した。
これにより中国人が海外旅行で買った腕時計の関税は、30%から60%へ、化粧品やアルコール類に関しては、50%から60%へと引き上げられた。
「爆買い」を防止し、国内消費を高めようという措置である。
それでも「爆買い」が止まらなければ、この関税率を今後、もっと上げていく可能性がある。
本来なら、中国製品の品質を向上させたり、偽物をなくしたりすれば、「爆買い」など自ずとなくなるはずなのに、本末転倒の措置である。
いまの中国政府のキャッチフレーズは、「中国の夢」である。
だが、庶民のささやかな夢は、そうやってどんどん制限されていく。
一方で、「中国の夢」を実現した中国人は、ペーパー・カンパニーを作ったり、不動産投資などで、資産を海外に移転させるようになった。
「パナマ文書」は、そのような現代中国が抱える深い闇を、図らずも世界に露呈させたのだった。
』
『
JB Press 2016.4.15(金) 黒瀬 浩一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46592
パナマ文書と中国政治がハードランディングするリスク
経済のハードランディング懸念が和らいだ中国だが、今度は、政治のハードランディング懸念が生じつつある。
きっかけは急に勢いがついた習近平国家主席に対する批判だ。
習近平は、毛沢民の絶対権力と鄧小平の改革開放思想を足して2で割ったリーダーだと極めて高く評価されてきた。
確かに新シルクロード構想や反腐敗運動は、経済発展のキャッチアップ段階を終え、「中進国の罠」の克服が最大の課題である中国にとって、正しい方向だ。
その決断と実行は、世界のどの政治家もまねができないものだと高く評価して良いだろう。と
ころが、風向きが変わりつつある。
3月の全人代では、檀上で後ろから習近平の肩をたたいて呼び止めるなど国家主席の権威をないがしろにする行動を王岐山がした。
王岐山は、習近平とは幼少時代からの友人で、下放の経験を共有する盟友とされ、党中央規律検査委員会書記として反腐敗運動を陣頭指揮するトップ7の1人だ。
また、習近平が自らを「同志」ではなく毛沢東以来の「革新」と呼ばせようとした目論見は失敗した。
更に、一部メディアに全人代開催期間中に出た
習近平に辞任要求する論文、
国営通信社が流した「中国の最後の指導者」が「最高指導者」の誤字だとする記事、
など1年前ならあり得なかったことが現実に起きている。
背景はパナマ文書である可能性が高い。
パナマ文書は、パナマの有力な法律事務所の顧客名簿やオフシェ勘定を使った蓄財の内容などがサイバー攻撃で流出したもので、2015年にその存在が知られるようになった。
中身が中身だけに、ワシントンに本部のある非営利団体である国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists)が内容を精査して、一部が4月3日に発表された。
各国のメディアはトップニュースの扱いで報道した。
膨大な量の完全版は5月に正式に発表される予定だ。
そのパナマ文書によると、習近平の親族が巨額の不正蓄財を行っていた可能性が高いことが暴露されている。
中国国内ではパナマ文書は検閲されて見られない模様だ。
今年の秋には6中全会が控えている。
これは、習近平の後任の国家主席が誰になるかを方向付ける極めて大事な会議になるとされている。
昨年8月には天津で爆発事故があり、習近平の後任の国家主席と目されていた共産党幹部が失脚した。
このタイミングでパナマ文書がもとで習近平の権力基盤が大きく揺らぐこととなれば、中国の政治がハードランディングするリスクを意識せざるを得なくなるだろう。
中国からの資本逃避は反腐敗運動の高まりと相関が高く、政治リスクが通貨変動リスクに結びつく可能性もある。
政治の安定があって初めて安定した経済政策運営が可能なだけに、注意が必要な情勢だ。
今のところ中国の金融市場に動揺の兆しは出ていない。
しかし、パナマ文書の暴露から2日後には不適切な蓄財が暴かれたアイスランドの首相が辞任した。
リスク回避のセンチメントが増大すれば、円高など資金フローがリスク資産から安全資産にシフトする可能性があることには、注意が必要だろう。
(*)本記事は「りそな銀行 エコノミスト・ストラテジスト・レポート ~鳥瞰の眼・虫瞰の眼~」より転載したものです。
』
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Record china 配信日時:2016年4月17日(日) 4時50分
http://www.recordchina.co.jp/a133302.html
中国、「パナマ文書」は取りあえず黙殺?
神経とがらせ情報統制に躍起
2016年4月15日、世界の政治家や著名人がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して不正蓄財していることを暴露した「パナマ文書」。
中国では習近平国家主席(共産党総書記)ら最高指導部の親族の名前が登場する。
習主席が掲げる「反腐敗」と逆行するだけに、中国当局は情報統制を強める一方、取りあえず「黙殺」する構えとみられる。
欧米メディアなどによると、中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した1150万点の文書を国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が1年にわたり調査した結果、同事務所が手掛けたペーパーカンパニーの約3分の1、1万6300社以上が香港と中国の拠点を通じて設立されたことが分かった。
香港と中国が最大の顧客だった。
中国関係で文書に名を連ねているのは、「チャイナ・セブン」(共産党中央政治局常務委員7人)中、習主席と党序列5位の劉雲山・政治局常務委員、同7位の張高麗・筆頭副首相の3人の親族ら。
さらに、毛沢東・元国家主席、胡耀邦・元共産党総書記、曽慶紅・元国家副主席、李鵬・元首相らの親族も含まれているという。
これに対し、中国当局は今のところ、「だんまり」を決め込んでいる。
王毅外相は反腐敗運動を継続していくと強調しながら、「まず明確な情報を得て、どういう内容なのかを把握する必要がある」と口を濁した。
外交部の洪磊報道官も記者会見で文書について、「根拠のない非難に対してコメントすることはない」と述べた後は何を聞かれても、「ノーコメント」繰り返すばかりだった。
共産党系の環球時報は「背後に大きな力があり、今回の暴露で最も得をする立場にあるのは米政府」とする論説を掲載。
ロシアのプーチン大統領に触れたが、中国には一切、言及しなかった。
それどころか、中国国内で文書に関する情報にアクセスできないよう厳しい統制を敷いた。
ロイター通信や英BBCによると、中国の検索エンジンで「パナマ」をサーチすると、リンクの多くは機能しないか、もしくは、スポーツスターをめぐる疑惑に関連した記事に飛ぶようになっている。
中国版ツイッター・微博(ウェイボー)やチャットアプリ・微信(WeChat)でも、この問題に関する投稿が削除されている。
また、日本メディアによると、中国でも受信できるNHKのニュース番組が「パナマ文書」を伝えると、画面が真っ暗になり、放送中断が相次いだ。
これも中国当局が外部からの情報流入を規制する際の常とう手段だ。
中国当局がこうしたメディア規制に躍起になるのは、逆に衝撃の大きさを物語る。
しかし、いくら情報を遮断しても要人名などは国内にも広く伝わる。
ICIJは5月初旬にも、詳細な分析結果をネット上で公開する予定。
次にどんな「不都合な真実」が飛び出すか。中国指導部は固唾をのんで見守っているに違いない。
』
『
新潮社 フォーサイト 4月18日(月)12時28分配信 ジャーナリスト 野嶋剛
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160418-00010000-fsight-pol
「パナマ文書」で浮かんだ中国
「革命家族」の「巨大利権共同体」
非営利の報道機関『国際調査報道ジャーナリスト連合』(ICIJ)の調査によって、中米パナマの法律事務所から流出した電子ファイルをもとに、世界の政治家たちがタックスヘイブン(租税回避地)を利用している実態が暴かれ、国際社会を騒がせている。そのなかには、中国の最高指導部の現職あるいは元職の顔ぶれが多数含まれており、広く世界の関心を呼んだ。
どのような人物が、どのような形で、租税回避地を利用していたのかを丹念に追いかけてみると、実際には、革命世代の指導者の子孫である「紅二代」「紅三代」と呼ばれる人々が、党・政・財にまたがる巨大な「利権共同体」を構築している実態が、「パナマ文書」からは否が応でも浮かび上がってくる。
■習近平の姉夫婦
パナマ文書には、現職や引退者も含めて最高指導層の党中央政治局常務委員クラス9人に関係する親族がリストに登場するとされるが、現職中最大の大物は、言うまでもなく、国家主席・習近平。
本人の姉である斉橋橋と、その夫のトウ家貴が、カリブ海の英領バージン諸島の3社の役員兼株主であった。
トウ家貴は、深センを中心に不動産業で巨額の財を成し、香港で超高級マンションを開発し、オフショア・カンパニー(租税回避地に設立した法人)も有している。
これらの会社は2007年から2009年にかけて設立されたが、習近平の出世に伴い、会社は解散・休止されたとされる。
習近平の姉夫婦の問題はすでに2014年のICIJの調査やメディアの報道から明らかにされており、この点で新しさはない。
また、パナマ文書によれば、失脚した元重慶市党委書記の薄熙來の妻で、英国人殺害の罪で有罪判決を受けた谷開来がフランスの建築家と共同でオフショア会社を作っていたともされているが、これも今更という話であろう。
張高麗・筆頭副首相の娘、張小燕の夫である李聖キが役員兼株主のオフショア会社も3社あった。
李聖キは香港・中国の有力企業である「信義ガラス集団」の跡継ぎであり、父親の李賢義は、全国政治協商会議の香港代表であり、深セン地区の不動産事業でも財を築いたとされる。
李聖キ自身も、香港だけで十数社の企業で役員をしている。
そのなかにオフショアの会社に関係していたところで、特に不思議はないだろう。
■中国政界では有名な「政略結婚」
興味深かったのが、最高指導部で宣伝などを担当する序列5位の劉雲山・党政治局常務委員の義理の娘である賈麗青が役員兼株主を務める「Ultra Time」という2009年に登記された会社があったことだ。
劉雲山の息子である劉楽飛と結婚している賈麗青は、元最高検察院検察長の賈春旺の娘であり、中国政界では有名な「政略結婚」の1つだとされている。
元国家主席・江沢民系の番頭としていまも隠然たる影響力を誇っている曽慶紅元国家副主席も、その弟の曾慶淮が、サモアに会社を持っていることが分かった。
曾慶淮はかつて中国の文化部香港駐在員を務めたことがあり、香港芸術界の大物だと言われている。
さらに目を引いたのが、毛沢東の孫娘・孔東梅の夫である陳東昇がオフショア会社を有していることだった。
ただし、これにはまったく意外性はなく、また、毛沢東の係累だから、ということも関係ないだろう。
陳東昇は、飛ぶ鶏を落とす勢いで成長を続ける中国のオークションカンパニー「嘉徳国際」を起業した人物であり、ほかにも中国の大手保険会社を経営している富豪だ。
元総書記の胡耀邦の3男の胡徳華もオフショア会社に関係していたというから、基本的には、派閥や対立関係などを超えた、「革命家族」の誰に対しても開かれた世界だったことが分かる。
■強力無比の人間関係
李鵬・元首相の娘である李小琳が夫と実質的に所有していたのが「コフィック投資」。
同社は欧州からの産業機器の輸入支援で利益を得ているという。
電力畑に絶大な影響力を持っていた李鵬の娘であることから「電力一姐(ファースト電力レディ)」などと呼ばれる李小琳は、全国政治協商会議のメンバーなどを経験し、派手な化粧やブランド品を持ち歩いていることでも有名で、中国の電力関係企業で要職を務める。
そして、李小琳の夫である劉智源も「紅三代」の人物として知られており、祖父は革命前に国民党に処刑された劉伯堅という人物で、父親の劉虎生は、同じように革命運動で父親を失った李鵬と同じ時期に人材養成学校に入れられ、少年時代から親しかったとされる。
ここからは、血で結びついた強力無比の人間関係がうかがえる。
賈慶林・元全国政治協商会議主席の孫娘である李紫丹は、スタンフォード大学に在籍していた2010年ごろ、バージン諸島に「Harvest Sun Trading」「Xin Sheng Investment」という2つの会社を保有していた。
前者の会社は、中国の「時計王」と呼ばれる時計チェーン創始者・張瑜平から1米ドルで譲り受けたものとなっている。
さらに今週、香港の『経済日報』が報じたところでは、昨年11月に香港の最高級住宅地である太平山の頂上にある豪邸を3.87億香港ドル(約50億円)で購入していたという。
「Jasmine Li」という英語名で登記されており、身分証番号などから当人であることが確実視されている。
■「織り込み済み」
中国は世界2位の経済大国だが、海外のタックスヘイブンなどに会社を持つことは厳しく規制されているのが建前だ。
しかし、実態は、いわゆる革命エリートの家族を中心に、一般人の目の届かないタックスヘイブンで資産を保有し、利益を得ていることが明らかにされる格好となった。
一部の人間たちが「革命の功労者」という中国での絶対的な功績によって、改革開放では「チャンス」を優先的に享受することになり、経済的利益をたっぷり得たような構図があることは言われていたが、このような情報を目の当たりすると、「やはり、そうだったか」と改めて納得させられる部分は少なくない。
これらの情報に対して、中国の主要メディアやスポークスマンは無視を決め込んでいる。
主要公式メディアや各種SNSで報道管制が敷かれていることは言うまでもない。
検索サイト『百度(バイドゥ)』で「巴拿マ文件(パナマ文書)」と入力しても、「関係法令による、表示されない検索結果があります」と出てくる。
大半の市民は、確かにパナマ文書について、詳しい情報を知り得ない状況にある。
中国外交部の報道官も、外国メディアの問い合わせに「そのような根拠のはっきりしない話にはコメントできない」とだんまりを決め込んだ。
しかし、かといって、メディアや学者、作家などの知識層が知らないかといえば、そんなことはまったくない。
非常に詳しく状況を掴んでいる。
最近、東京で中国の著名なオピニオンリーダーの1人と食事をする機会があったが、パナマ文書について、
「もう全部知っている話。
意外性が全然ないので、仲間内でもちょっと話題になったぐらいで、それで?
という感じだ」
と語るので、いささか拍子抜けした。
この数年の反腐敗闘争で明らかにされた巨額の不正などに比べれば、確かにそこまでのインパクトはない。
しかし、これだけの巨大な利益共同体による構図が明らかになったことをすんなりと「織り込み済み」という感覚で受け止められるところに、中国の病の深さがあると言えるだろう。
中国は、改革開放によって毛沢東時代までの貧困から抜け出し、国家の経済水準は明らかに大きく向上した。
しかし、富の分配については、いまだに大きな問題が残っていることは明らかだ。
その成長過程における富の分配を阻害しているのが、この革命家族による鉄の結束を誇る利権共同体であるとするならば、「反腐敗闘争」を掲げる習近平指導部が立ち向かうべき相手であることは間違いない。
ところが、その相手が自分自身であるということならば、そもそも闘争は成立しないのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。
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●【佐藤優】パナマ文書問題は本当に危険 高嶋ひでたけのあさラジ! 2016年4月7日
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●【佐藤優】パナマ文書問題は本当に危険 高嶋ひでたけのあさラジ! 2016年4月7日
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