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毎日新聞 4月30日(土)2時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160430-00000012-mai-sctch
<熊本地震>半月 地震、やまぬ連鎖 回数は1000回超
◇M5可能性、今後も
熊本地震から半月。
地震回数は既に1000回を超え、29日には大分県で震度5強の地震があり、被災者は不安を募らせている。
地震はいつまで続くのか、さらに広域化するのか、阿蘇山噴火への影響は--。
専門家によるこれまでの調査から「連鎖地震」の姿を追った。
「徐々に地震の回数は減っており、終息する方向にあると思う。
ただし、少し大きな地震と小さな地震が起きながら収まっていくので、今回よりもう少し大きい地震が発生することはあり得る」。
佐藤比呂志・東京大地震研究所教授(構造地質学)は、大分県側の地震について説明する。
熊本地震は14日に日奈久(ひなぐ)断層帯でマグニチュード(M)6.5、16日には隣接する布田川(ふたがわ)断層帯でM7.3の地震が起き、いずれも最大震度7を観測した。
その後、阿蘇地方や大分県側にも「飛び火」のように拡大し、16日に同県中部でM5.4、最大震度5弱の地震が起きた。
大分側の地震について産業技術総合研究所の石川有三・招聘(しょうへい)研究員(地震学)は、別府-万年山(はねやま)断層帯の一部の由布院断層で起きた可能性が高いと指摘。
その上で
「29日の地震でも震源域は広がっていないようだ。
新たな地震活動の誘発を心配することはない」
と話し、M7級の地震が起きる可能性は低いとみる。
熊本、阿蘇地方を含めた今回の震源域全体の地震活動は今後どうなるのか。
石川研究員は
「2004年の新潟県中越地震では本震の2カ月後にもM5級の地震が起きている。
現在の震源域内でもM5級の地震が起きるかもしれない」
と警戒を呼びかける。
一方、日奈久断層帯について、林愛明・京都大教授(地震地質学)は
「南西区間約30キロが割れ残っている」
と説明。
全体で長さ約81キロとされる同断層帯の南西部分で、今後も大きな地震の可能性があると注意を促している。
◇震源域の広域化 「沖縄トラフ」に注意
地震の震源域がさらに広域化することはあるのか。
西日本に甚大な被害が想定される南海トラフ地震との関連には、多くの専門家が懐疑的だ。
山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大教授(地震学)は
「(南海トラフ地震の前に)内陸で地震が活発化するのは、西は中国地方まで」
と、熊本地震が南海トラフ地震の前兆との見方を否定する。
むしろ、関連が指摘されるのは、九州西方沖から台湾の北方に広がる海底盆地「沖縄トラフ」だ。
トラフの地盤には南北に引っ張られる力がかかっており、熊本地震が起きた別府-島原地溝帯はその延長線上にある。
昨年11月14日には、同トラフ領域の薩摩半島西沖でM7.0の地震が発生。
鹿児島・佐賀両県で最大震度4を観測した。
古村孝志・東大地震研教授(地震学)はこの地震を「一連の地震活動と捉えられる」として、熊本地震の「前触れ」だった可能性に言及。
松島健・九州大准教授(固体地球物理学)も
「熊本地震と地盤のずれ方が似ている。
同じ別府-島原地溝帯に位置する島原半島をはじめ、沖縄トラフにかけての広い地域で大きな地震が起きる可能性がある」
と指摘する。
一方、中村衛・琉球大教授(地震学)は
「熊本に近い領域での影響はあり得るが、遠い沖縄には及ばない」
とみている。
九州東部には四国から近畿に及ぶ国内最大級の断層群「中央構造線断層帯」が伸びる。
16世紀末に別府湾で起きた大地震の4日後に近畿でも大地震があり、関連性が指摘されているが、熊本地震の影響が中央構造線に及ぶかについては、専門家の間でも意見が分かれている。
松島准教授は
「一連の地震は中央構造線の延長線上で起きており、連鎖してもおかしくない」
と指摘。
これに対し、古村教授は
「別府-島原地溝帯は中央構造線と力のかかり方やできた経緯が異なり、力は及ばないのではないか」
と連鎖に否定的な見解を示す。
◇阿蘇山への影響 マグマ圧力低下か
阿蘇山への影響はあるのか。
防災科学技術研究所の藤田英輔・総括主任研究員(火山物理学)の解析により、本震を引き起こした布田川断層帯に最も近い火口直下のマグマだまりが、南西方向に40センチほど引っ張られて「ラグビーボール状」に変形した可能性があると分かった。
中岳火口周囲の地盤が最大約30センチ沈下したとする国土地理院の解析結果とも一致し、マグマだまり内部にかかる圧力が地震前に比べ数%下がった可能性があるという。
阿蘇山は一昨年、21年ぶりにマグマ噴火が起きるなど近年、活発な火山活動が続いている。
本震後の16日には小規模噴火があった。
だが、火山噴火予知連絡会副会長の石原和弘・京都大名誉教授(火山物理学)は
「地表近くのマグマだまりが伸びて内部の圧力が下がったのなら、火山活動の勢いがそがれる可能性が高いのではないか」
と指摘する。
一方、阿蘇、大分の両震源域間の「空白域」に位置する活火山の九重山(くじゅうさん)について、東大地震研の中田節也教授(火山学)は「熊本地震により、熱水がたまった浅い地盤の強度に影響が及んだ可能性がある。
過去にも水蒸気噴火が起きており、今後の火山活動に注意が必要だ」と注視する。
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THE PAGE 4月29日(金)17時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160429-00000002-wordleaf-sctch&p=1
余震続く「熊本地震」 震源はどのように広がっていったのか?
いまだ余震が続く熊本地震。今回の一連の地震では、本震の震源断層の周辺で地震が起こるだけではなく、熊本、阿蘇、大分と連鎖的に飛び離れた地域に地震活動が広がっています。
前震や本震のメカニズムは断層の「横ずれ型」とされていますが、活断層はどのようにずれ、地震活動はどのように広がっていったのでしょうか。
静岡大学防災総合センター客員教授・石川有三氏に解説してもらいました。
[図1]熊本県の主な地震・火山の分布。茶色長方形は、地下の震源断層(大分の長方形は1975年大分県西部地震)、赤色×印は主な震源で一つだけ大きい×は本震の震源。本震は震源断層の南西端から破壊が始まり、北東へ広がった。茶色線は地表活断層線、ピンク色△は活火山(参照:東大出版会「新編、日本の活断層」)
■「前震・本震型」か「群発型」か
2016年4月14日午後9時26分ごろ、マグニチュード(M)6.5の地震が熊本県益城町(ましきまち)の地下で起きました。
この地震(※注1)では、益城町で震度階級の最大震度7が観測されました。
震源断層は南西側へ延び、宇城市直下まで達したようです(図1参照)。
その後、15日午前0時3分ごろにM6.4の地震が起き、熊本県宇城(うき)市で震度6強を観測しました。
一般的に、大きな地震は「本震」が飛び抜けて大きく、マグニチュードは最大の「余震」より1以上大きくなります。
神戸が特に大きな被害を受けた兵庫県南部地震(阪神大震災)では、本震がM7.3ですが、最大の余震は本震の4分後におきたM5.2(本震との差2.1)でした。
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でも、本震がM9.0で、茨城県沖で起きた最大余震はM7.6(差1.4)でした。
このように大きな本震の後に、小ぶりの地震が多数続いて起きる場合は、「本震・余震型」と呼ばれます。
大半の地震がこの型に当てはまります。
しかし、ときどき本震のマグニチュードに近い余震が起きるケースがあります。
2004年の新潟県中越地震の場合がそうです。
このときは本震がM6.8でしたが、余震がM6.5、6.3、6.1、6.0と本震のマグニチュードと近い地震(最小差0.3)がいくつか起きました。
こういう場合は、本震・余震型とは言わず、「群発型」と呼んでいます(※注2)。
このほかに、最初にやや小さい地震が起き、その後に最大の地震、本震が起き、余震が続く場合もあります。
このような場合は、「前震・本震・余震型」と呼ばれています。
実は東日本大震災はこの型でした。
ただ「前震」の中で3月9日に起きた最大地震はM7.3と大きいものでした。
そのため、これが前震であとにもっと大きな地震が続いて起きると考える人は多分いませんでした。
今回の熊本地震も、M6.5(当初6.4)の地震が起きた後、その2時間37分後にM6.4(当初6.1)の地震が起きました。
その時点で、群発型の活動か?
と思った研究者も多かったと思います。
前震かも知れないと考える人も中にはいたかも知れませんが、これが前震活動だと推定出来る根拠はありませんでした。
残念ながら、今の学問のレベルでは起きている地震活動が前震であると断定できる手法はありません。
(※注1)地震は、押されている地下の岩石が耐えきれなくなって断層面を境に急にズレが起き、そのためまわりに震動が伝わる現象
(※注2)群発地震の代表例は、長野県松代町(現・長野市)で起きた松代群発地震が有名。
主な活動は1965年から1967年だが、その間、最大M5.4の地震が2回、M5以上が20回、有感地震は6万2826回と地震が頻発した
■2つの大地震と2つの活断層
そして、最初の地震から約28時間後の16日午前1時25分ごろにM7.3の地震が最大前震の北西側で起きました。
この地震では、関東地方を含め山形県までの広範囲にわたり有感地震になりました。
韓国でも釜山や済州島で有感でした。
この地震の震源断層は、長さは約30キロで熊本市と嘉島町(かしままち)の直下から東は阿蘇山麓まで達し、北側の地盤が南側の地盤に対して東へずれる右横ズレ断層(※注3)でした。
これは阿蘇外輪山の西側斜面から熊本市の南部を北東から南西へ横切り、宇土(うと)半島の先端に至る布田川(ふたがわ)断層帯と呼ばれる活断層に地表で一致していました。
断層面は、北側へ約80度で傾斜し、その面上で最大約3.5メートルのズレが生じたと推定されています。
観察された地表でのズレは最大で約2メートルに達したと報告されています。
一方、M6.5の最大前震は、布田川断層の途中の益城町から南西へ分岐した日奈久(ひなぐ)断層帯の一部の活断層が右横ズレをおこしたものです。
このため、震源断層の真上に位置した益城町では震度7という非常に激しい震動でした。
日奈久(ひなぐ)断層帯は、南西方向に延び八代海南部に至ります。
布田川断層と日奈久断層の位置関係は、カタカナの「イ」の文字を右に少し回転させたような配置で、縦棒が日奈久断層にあたります。
どちらも右横ずれの動きをしています。
(※注3)右横ズレ断層とは、断層を境にして自分が手前に立ち、相手が断層の向こう側に立っていたとき、断層のズレがおきたとき、相手が右側へ移動した場合です。
反対に相手が左側へ移動すると、断層は左横ズレ断層になる
●[図2]防災科学技術研究所Hi-net自動震源による4月14日から23日までの震源分布。深さ30キロまでのすべての震源。
本震や最大前震の震源断層付近だけでなく、広い範囲で地震が起きていることが分かる。
茶色長方形とピンク△は図1と同じ
■なぜ余震活動がここまで活発なのか
M7.3の本震後、地震活動が震源断層周辺の余震活動だけでなく、飛び離れた地域まで広がりました。
一つは、本震の震源断層の北東延長にあたる阿蘇市です。
本震から約1時間半後の16日午前3時03分ごろにM5.8の地震が阿蘇市直下で起き、震度5強が観測されました。
そのわずか約50分後に産山(うぶやま)村直下で同じくM5.8の地震が起きました。
これらは、本震との相乗作用もあって阿蘇地方に大きな地滑り被害をもたらしてしまいました。
地震活動の拡散はこれだけに収まらず、阿蘇地方の地震の約4時間後に、九重火山や1975年M6.4大分県西部地震の震源域を飛び越え、大分県湯布市直下でM5.4の地震が起きました。
こちらも最大震度5弱が観測され、被害をもたらしました。
このように本震の余震域から連続して広がるのではなく、飛び離れた場所に地震活動が誘発された例は余りなく、非常に珍しいことです。
余震活動は南西側へも広がり、宇城市で16日午前1時30分ごろにM5.3の余震が起きました。
もっと小さな地震は八代(やつしろ)市にも広がり、水俣市の沖でも起きています(図2参照)。
余震の回数も日本の内陸および沿岸で近年発生した地震の中では特に多く、最多だった2004年中越地震を上回りました。
これは群発的だった前震群と本震が別の断層で起きている上、阿蘇地方の地震活動、大分県の地震活動と離れた場所の地震活動を引き起こしたので、合計して回数が多くなっています。
そして、2004年中越地震の例では、本震から2か月余り経ってもM5.0の余震が起きています。
震源域から少し離れた場所では約10か月経ってM5.0の地震が起きています。
ですから今回もまだしばらく注意が必要です。
■内陸地震の後に噴火誘発の例はないが……
九州の内陸で起きた地震で過去最大として知られているのは、1911年に起きたM7.1の桜島地震です。
ただ、これは大正の桜島噴火に伴ったものなのでやや他の地震と性格が異なるものです。
沿岸部に起きたものとしては、2005年のM7.0福岡県西方沖地震です。
すると、今回の熊本地震は、過去最大の「内陸地震」であったわけです。
図3に過去の震央や震源断層を一緒に示しました。
これを見ると九州内陸直下でM7を超える地震は今回が初めてです。
この地震によって火山噴火が誘発されることを心配される方もおられますが、これまでの九州内陸地震の直後に火山噴火が誘発されたことはほとんどありません。
例外的に1922年12月8日M6.9橘湾の地震の約1か月後に阿蘇山の噴火が起きたことがあるくらいです。
ただ、今回の地震は、内陸で過去最大のマグニチュードの地震であったことと、震源断層が阿蘇の外輪山まで達しており、これほど火山の近くで大きな地震が起きた例は少ないので、その影響ははっきりと分からないところもあります。
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■石川有三(いしかわ・ゆうぞう) 京都大学理学研究科博士課程中退、中国地震局地球物理研究所に1年留学、気象庁入庁後、気象研究所地震火山研究部主任研究官、研究室長、精密地震観測室長、地磁気観測所長を歴任。1990年運輸大臣賞受賞。現在は、国立研究開発法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門招聘研究員。静岡大学防災総合センター客員教授も兼務。専門は、地震学・地震予知
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【2016 異態の国家:明日への展望】
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