2016年4月6日水曜日

「パナマ文書」の衝撃(1):中国「赤い貴族の資産隠し」、共産党政治局常務委員7人のうち3人の親族が巨額の資産を

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● ロイター


Bloomberg News 2016年4月5日 17:10 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-05/O55GZE6KLVR501

パナマ文書流出の「背後に強大な力」、
得するのは米国
-中国が見解

世界の一部富裕層のオフショア口座が詳しく記された文書1100万件余りが流出したことについて、中国共産党系の新聞である環球時報は5日、文書流出の「背後に強大な力」があり、今回の暴露で最も得をする立場にあるのは米政府だとする論説を掲載した。

論説は「パナマ文書」と呼ばれる同文書に対する中国政府の最初の公式な反応となった。
文書には政治家やその親族ら約140人の海外口座が記されており、中国の習近平国家主席の義理の兄弟の名前も登場する。
だが論説はロシアのプーチン大統領について大きく取り上げる一方で、
中国人の例には一切触れていない。
環球時報は共産党機関紙の人民日報が発行している。
論説は
「こうした文書の山が出てくるときは毎回、欧米メディアがその解釈を主導し、米政府が特別の影響力を行使してきた」
とし、
「米国に不利な情報は常に最小限に抑えられ、プーチン大統領のような欧米以外の指導者を一層大きく取り上げる状況が起こり得る」
と指摘した。

原題:China State Paper Sees ‘Powerful Force’ Behind Panama Leak(抜粋)



BBC News 4月6日(水)15時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160406-10000887-bbcv-int

習主席の親族も
パナマ文書が暴露した資産運用




ニューズウィーク 2016年4月5日(火)19時12分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4838_1.php

著名人巻き込む「パナマ文書」の衝撃、
各国政府が調査開始
中米の小さな法律事務所が各国指導者や著名人を巻き込んだ疑惑の震源に


●4月4日、租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の金融取引に関する過去40年分の内部文書が流出。
各国政府は、各国指導者や著名人による脱税など不正取引がなかったか調査を開始した。
写真は同事務所の看板。
パナマ市で撮影(2016年 ロイター/Carlos Jasso)

「パナマ文書」と呼ばれる機密文書にはロシアのプーチン大統領の友人のほか、英国、パキスタンなどの首相の親類、ウクライナ大統領やアイスランド首相本人に関する記載があり、波紋は世界中に広がっている。
一部報道によると、サッカーのスペイン1部、バルセロナのリオネル・メッシ選手の名前も挙がっている。

世界各国の顧客向けに24万のオフショア企業を立ち上げたとするパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は、不正行為を否定。
自身のウェブサイトに4日、メディアは同事務所の仕事を不正確に報じているとのコメントを掲載した。

同事務所の1977年から昨年12月までに及ぶ同文書は、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が公表、世界中の100以上に上る報道機関に流出した。

オフショア企業に資金を保有すること自体は違法ではないが、流出した同文書を入手したジャーナリストは、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)、制裁破りや麻薬取引、その他の犯罪に使われる隠し財産の証拠となり得るとみている。

パナマ文書流出を受け、米司法省報道官は、米国の法律に違反する汚職などの行為がなかったかどうか司法省が調査に着手したとし、
「米国、もしくは米金融システムに関連がある可能性のある汚職をめぐるすべての疑惑を司法省は非常に深刻に受けとめる」
と述べた。
ただこれ以上の詳細については明らかにしなかった。

ホワイトハウスのアーネスト報道官は、米国は国際的な金融取引の透明性に多大な価値を置いているとし、財務省、および司法省は調査を実施するための専門家を抱えていると指摘。
専門家による調査で文書に記載されている金融取引が米国が導入している制裁措置や国内法に違反するものかどうか判明すると述べたが、詳細については語らなかった。

フランス政府は、パナマの法律事務所から多数の金融取引文書が流出したことを受け、脱税に関する予備調査を開始した。
金融専門の検察官が、流出文書から、フランスの納税者が悪質な脱税に関与しているかどうかを調べるとしている。

ドイツ財務省報道官も「仕事を始める」ことを明らかにしたほか、オーストラリア、オーストリア、スウェーデン、オランダも1150万枚以上に上る膨大なパナマ文書に基づく調査を開始したとしている。

過去に父親のビジネスに関連するオフショア企業のディレクターを務めたことのあるアルゼンチンのマクリ大統領は、野党から説明するよう追及されているが、テレビのインタビューで、父親の会社は合法であり、いかなる不正も否定した。

汚職危機に揺れるブラジルでは、7党の政治家がモサック・フォンセカのクライアントに名を連ねていると、「エスタド・ジ・サンパウロ」紙が報じた。
そのなかには、ルセフ大統領率いる労働党の議員は含まれていなかった。
 同国の税当局は、パナマ文書にある脱税情報を確認するとしている。

■疑惑否定に躍起

ロシアのペスコフ大統領報道官は、パナマ文書にプーチン大統領とオフショア投資家との数十億ドル規模の取引が記載されていたとの報道に関して、2年後の選挙を控えて大統領の信用を失墜させる目的だと非難した。

同報道官は記者会見で「今回の虚偽情報の主な標的は大統領だ」と言明。
「『プーチン嫌い』が広がったせいで、ロシアやその業績について良いことを言うのはタブーになっている。
悪いことを言わなければならず、何も言うべきことがなければでっち上げられてしまう。
今回の事件がその証拠だ」
と述べた。

英紙ガーディアンによると、プーチン大統領の幼なじみでチェリストのセルゲイ・ロルドゥギン氏を含む同大統領の友人たちに関連する秘密のオフショア取引やローンは20億ドル(約2218億円)相当に上る。
ロイターはこうした詳細について確認していない。

裕福な株式ブローカーだった亡父とオフショア企業とのつながりについて記載されていたキャメロン英首相の報道官は「個人的問題」だとし、それ以上コメントするのを差し控えた。
「パナマ文書」の顧客リストには、首相率いる保守党メンバーも含まれており、英政府は流出したデータの内容を調査すると発表した。
税逃れを批判してきたキャメロン首相にとって打撃となりそうだ。

パキスタンは、同国のシャリフ首相の子供たちがオフショア企業とのつながりが記載されていたことについて、いかなる不正も否定した。

ウクライナのポロシェンコ大統領は、税金逃れのために租税回避地の企業を使っていたとの疑惑について、説明責任を果たしているとして自身を擁護した。
ウクライナの議員らは疑惑を捜査すべきだと訴えている。
パナマ文書によればポロシェンコ氏は、ウクライナの東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘がピークを極めていた2014年8月、自身の菓子会社「ロシェン」を英領バージン諸島に移すため、オフショア企業を設立していた。

アイスランドのグンロイグソン首相夫妻が租税回避地の企業とつながりがあると同文書にされていたことを受け、首相は辞任要求に直面。
野党は不信任決議案を提出した。

パナマ文書の波紋はサッカー界にも広がっている。

バルセロナのメッシ選手が納税を逃れるためにパナマに法人を設立していた疑いがあるとのスペインメディアの報道を受け、同選手の家族は、
「メッシはこのような疑惑に一切関与しておらず、報道は誤りであり有害」
との声明を発表。
報じたメディアに対して法的手段を取ることも検討すると述べた。
同選手が所属するバルセロナも声明で、
「メッシの家族が公にした反論を信頼している」
と、同選手を支持する立場を明らかにした。

■中国は報道規制、検索も制限

パナマ文書流出を受け、中国当局は報道規制をかけている。
オンラインニュースの一部の記事を削除したり、検索も制限しているようだ。
ICIJによると、文書には中国の習近平国家主席など、同国の現職・旧指導部の一族に関連したオフショア企業が入っているという。
中国政府からはパナマ文書について、公式な発表などはない。
ロイターは国務院広報室にコメントを求めたが、現時点で回答はない。

中国国営メディアはパナマ文書をほとんど報道していない。
中国の検索エンジンで「パナマ」をサーチすると、この件に関する中国メディアの記事が出てくるが、リンクの多くは機能しないか、もしくは、スポーツスターをめぐる疑惑に関連した記事に飛ぶようになっている。

経済協力開発機構(OECD)は4日、パナマが他国と情報共有を行うという合意を守っていないとし、税務の透明性に関する国際基準を満たすよう同国に求めた。
グリア事務総長は声明で
「パナマの税務の透明性が国際基準に沿っていないことの結果が、公の場で明るみに出た」
と指摘。
「パナマは直ちに同基準に合わせる必要がある」
と述べた。



TBS系(JNN) 4月6日(水)0時33分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160406-00000000-jnn-int

流出文書にトップ周辺の名前、
中国外務省「コメントしない」



世界の著名人が“節税”対策としてタックスヘイブン=租税回避地で巨額の金融取引を行っていたとの内部文書が流出した問題で、中国外務省は「コメントしない」と述べ、取り合わない姿勢を示しました。

この問題は、中米・パナマの法律事務所の内部文書についてICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合が調査し、明らかになったもので、サッカー・アルゼンチン代表のメッシ選手など世界の著名人が節税対策のためタックスヘイブンを利用していたとしています。

この資料には、習近平国家主席の姉の夫が取締役を務めた企業の名前や温家宝前首相の息子、李鵬元首相の娘などの名前も上がっています。

「このような雲を掴むようなものについて、我々はコメントしない」(中国外務省・洪磊報道官)

中国外務省の洪磊報道官は5日の記者会見でこのように述べ、問題について一切コメントしませんでした。
また、中国共産党機関紙「人民日報系」の「環球時報」は、社説でこの報道について
「非西側世界の政治エリートや重要組織をたたく新たな手段だ」
と指摘、一部欧米国の意図的な情報操作だとしています。



サーチナニュース 2016-04-06 14:11
http://news.searchina.net/id/1606688?page=1

メッシは習近平の義兄? 
「パナマ文書」規制も中国ネット上に集まる皮肉

パナマの法律事務所から流出した内部情報である「パナマ文書」が波紋を広げている。
同内部情報には同国のタックスヘイブン(租税回避地)を利用した者が記載されており、中には大物政治家や有名スポーツ選手、人気俳優などの名前があったことから注目を受けた。
脱税の可能性があることなどからも反発の声が高まり、名前が記載されていたアイスランド首相は同問題を受けて辞任の意向を明かしている。

中国では同文書について報道・情報が規制された。
中国の習近平国家主席の親族が同リストにあがったことが原因とみられており、同親族とは姉の夫とされている。
習近平国家主席の姉は以前にも巨額の資産を有していることが発覚し、
 習近平国家主席が進める反腐敗運動に影響を与えるとして問題視されていた。

なお6日12時時点では、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)上で「Panama」と検索すると中国語で
「法律と政策に基づきPanamaの検索結果は表示されません」
とのメッセージが表示される。

一方で規制にかからなかった記事もある。
   スポーツニュースを扱う新浪体育は5日、ウェイボー上でFCバルセロナ所属のリオネル・メッシの名前が同リストにあったことを伝えた。
続けてメッシの家族と所属するクラブチームが疑惑を否定していることも合わせて紹介した。

同投稿には中国ネットユーザーらからコメントが集まった。
ユーザーらは規制にかからないように、
「presidentXiが 『いいね!』 しました」
 「プーチンが『いいね!』しました」や、
 「メッシの“姉の夫”って誰だっけ」、
 「姉の夫?」
などとコメントを投稿している。

最も「いいね」が集まったのは
  「中国“四つのリーダー”もそろって『いいね』しました」
というコメントだ。
「四つのリーダー」とは習近平国家主席ならびに中国共産党中央紀律検査委員会などが反腐敗運動のさいに掲げた
「終始不忘“四個得益于”(常に4つの利益を目指すことを忘れず)、
 牢固樹立“四个意识”(4つの意識を揺るがずに打ち立てる)」
の標語に由来する言葉だろう。

習近平国家主席の進める反腐敗運動と経済成長に向けた政策は政権運営に必要な支持を集める材料としては不可欠な存在だ。
経済成長率が鈍化した今、反腐敗運動の重要性はさらに高まっている。
一方で情報が流出したことで今後の反不腐敗運動に影響を与えることは必至だ。
流出による影響が反腐敗運動にとどまらず、どこまで及ぶかに注意が必要だ。



ロイター 2016年 04月 6日 11:07 JST
http://jp.reuters.com/article/panama-papers-law-firm-interview-idJPKCN0X305J

「パナマ文書」流出は外部からのハッキング
=法律事務所幹部

[パナマ市 5日 ロイター] -
  世界各国の指導者ら多数を困惑させている機密文書、いわゆる「パナマ文書」流出スキャンダルの渦中にある、法律事務所の共同設立者は5日、同事務所は外部からのハッキングの被害者だと主張し、告訴したことを明らかにした。

世界各国の顧客向けに24万のオフショア企業を立ち上げたとするパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の共同設立者、ラモン・フォンセカ氏は、ロイターとのインタビューで、同事務所が法を犯しておらず、すべての業務は合法だと強調した。

また、いかなる文書を破棄したことも、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)を助けたこともないと同氏は語った。

また、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)や他の報道機関の調査によって公表された同法律事務所の電子メールは、「文脈を無視して抜き出され」、誤って解釈されているとフォンセカ氏は述べた。

同法律事務所から流出した「パナマ文書」は1150万枚以上に及ぶ。
世界中の富裕層や有力者たちによる資産隠しや税金逃れ疑惑は、多くの人々が緊縮策や困難に耐えるなかで、一般市民の激しい怒りを呼び起こしている。



朝日新聞デジタル 4月7日(木)5時6分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160407-00000006-asahi-int

パナマ文書に習近平氏の親族も 
租税回避地で会社株主


●中国の現旧指導者の親族が関係するタックスヘイブンの会社

 中国の最高指導部である
 共産党政治局常務委員7人のうち習近平(シーチンピン)・国家主席ら3人の親族がタックスヘイブン(租税回避地)にある会社の株主に名を連ねていたことが、非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)の調べで明らかになった。

 中米パナマの法律事務所から流出し、南ドイツ新聞を通じてICIJが入手した膨大な電子ファイル「パナマ文書」の中に資料が含まれていた。

 習主席の義兄は、カリブ海の英領バージン諸島の「エクセレンス・エフォート不動産開発」の役員だったことがすでに知られている。
 ICIJによると、義兄は同諸島にある別の3社の株主でもあったことがわかった。
 いずれも何を行う会社かは不明。
 1社は2007年に解散し、残る2社も休眠状態となっている。

 同諸島では、最高指導部で序列5位の劉雲山(リウユンシャン)・党政治局常務委員の義理の娘が役員を務める会社が1社、
 序列7位の張高麗(チャンカオリー)・筆頭副首相の義理の息子が株主の会社が3社見つかった。

 このほか、故・毛沢東氏を含む5人の元常務委員の親族の関係会社も、同諸島や南太平洋の島国サモアにあった。
 李鵬(リーポン)・元首相の娘夫婦が実質的に所有していたのが「コフィック投資」。
 パナマの法律事務所宛てに送られたメールによれば、同社は欧州からの産業機器の輸入の支援で利益を得ているという。
 娘は現在、中国の電力業界で要職を務める実力者でもある。



テレビ朝日系(ANN) 4月6日(水)22時57分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20160406-00000059-ann-int

中国「パナマ文書」検索禁止? 
習主席親族“関係



 パナマの法律事務所から大量の内部文書が流出し、租税回避地を利用した取引で各国首脳らの関与が疑われている問題で、中国ではインターネットで「パナマ文書」という単語を検索することができなくなりました。

 中国では、6日昼までに「パナマ文書」という単語が検索できなくなりました。
 流出した文書には、中国の習近平国家主席の親族が関係する会社も含まれているとされていて、中国政府が影響の拡大を恐れて規制を強めたとみられます。
 今回の流出事件について、中国外務省は「雲をつかむような話にはコメントできない」としています。



テレビ朝日系(ANN) 4月7日(木)23時17分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20160407-00000054-ann-int

“パナマ文書”流出 中国・習主席以外にも拡大



 「タックスヘイブン」と呼ばれる租税回避地の取引状況などが書かれた、いわゆる「パナマ文書」が流出した問題で、新たに中国の最高指導部2人の親族に関する記載があることが明らかになりました。

 ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)によりますと、流出した文書を調べた結果、中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員と序列7位の張高麗副首相の親族がタックスヘイブンとして知られるイギリス領バージン諸島の企業の株主になっていたことが分かりました。
 文書には、習近平国家主席の親族が関係する会社についても記されていますが、中国外務省は「コメントしない」と繰り返しています。


ロイタービデオ 2016年 4月 6日 Wednesday - 01:26
http://jp.reuters.com/video/2016/04/06/%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E6%8C%87%E5%B0%8E%E9%83%A8%E3%81%8C%E3%80%8C%E3%83%91%E3%83%8A%E3%83%9E%E6%96%87%E6%9B%B8%E3%80%8D%E3%81%AB%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%82%92%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%9B%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%AD%97%E5%B9%95%E3%83%BB5%E6%97%A5?videoId=368007087

習近平指導部が「パナマ文書」に神経をとがらせる理由とは





ロイター 2016年 04月 5日 11:31 JST  Robert Cyran and Kevin Allison
http://jp.reuters.com/article/column-panama-paper-idJPKCN0X204C?rpc=122&sp=true

コラム:「パナマ文書」はどこまで不正浄化できるか

[ニューヨーク/シカゴ 4日 ロイター BREAKINGVIEWS]
  - いわゆる「パナマ文書」によって各国の富裕層や有力者による租税回避地利用の実態が明らかになったが、不正浄化には限りがある。

 パナマの法律事務所モサック・フォンセカから1100万件もの文書が流出し、世界的に海外での課税逃れを追及する動きが始まった。
 既に指導者1人が批判にさらされ、ほかにも数人が打撃を被る可能性がある。
 だが民主主義から最も遠い政治体制においては、おのずと効果は限られるだろう。

 海外の口座を使った課税回避は場合によっては完全に合法だが、問題含みで無節操なケースも少なくない。
 例えばアイスランドのグンロイグソン首相は妻と共に租税回避地に保有していた法人を通じて、アイスランドの銀行と利益相反につながる関係があったと批判を浴びている。
 野党は首相に辞任を要求した。
 ほかにも何人かの政治家は海外口座の残高の規模について説明に窮するかもしれない。

 ハイテク技術が内部告発者の側に特に強力なパワーを与えた。
 1971年に米国の数十年にわたるインドシナ政策を暴露した「ペンタゴン・ペーパー」には数千件の文書が含まれていた。
 パナマ文書のデータ量は2.6テラバイトに上り、1971年当時ならばトラック1000台分になっただろう。

 しかしその膨大な量にもかかわらず、パナマ文書には限界がある。
 そこそこ堅固な法制度と権力者に対する複数のチェック機能を備えた国はパナマ文書を手掛かりに、名前の挙がった人物に対する調査に動くだろう。
 政治体制が不透明で汚職の蔓延する国ではそうはいかない。

 例えばオーストラリアは既にこの文書で名指しされた数百人を調査すると発表した。
 ウクライナのように政情が混沌とした国でもある程度の動きがあるかもしれない。
 一方、高官の関与が指摘された中国はインターネットのサイトをブロックしてきた歴史を持ち、国民の耳にはモサック・フォンセカの名前すら聞こえてこないかもしれない。
 ロシアでも、パナマ文書が大きな波紋を広げればそれこそ驚きというものだ。

 最も打撃が大きいのは西側の金融機関だろう。
 UBS(UBSG.S)とクレディ・スイスは(CSGN.S)は近年、富裕層の米国での課税回避を手助けしたとした問題で、多額の支払いにより和解した。
 つまり今回のスキャンダルに再び巻き込まれ不正が明らかになれば、厳しい制裁を受ける恐れがあるということだ。
 既にスウェーデン当局は顧客が租税回避地に口座を開き課税を逃れるのを指南したとしてノルデア(NDA.ST)に対する調査に入った。

 パナマ文書で比較的汚れの少ない国や組織のいかがわしい箇所はきれいになるだろう。
 ただ本当に汚れた者たちには、決して鉄槌を下せない。

●背景となるニュース

・パナマの法律事務所モサック・フォンセカの大量の内部文書、いわゆる「パナマ文書」が流出し、数十万人規模の顧客が租税回避地の企業を利用して金融取引を行っていた実態が明るみに出た。
 こうした事態を受けて各国政府は4日、富裕層や有力者などによる違法行為の有無について調査を開始した。

・流出した文書にはロシアのプーチン大統領の友人のほか、英国やアイスランド、パキスタン各国首相の親族、ウクライナ大統領などの名前が含まれている。
 文書は100社以上の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した。

・モサック・フォンセカは不正行為を否定した。
 パナマ文書は世界のエリート層が利益を得ようとして行った複雑な取引の詳細を記しているが、必ずしもすべての取引が違法というわけではない。

・ICIJが入手したパナマ文書については、以下のアドレスをクリックしてご覧ください。

panamapapers.icij.org/

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



ロイター 2016年 04月 6日 15:24 JST John Foley
http://jp.reuters.com/article/column-panama-papers-iceland-idJPKCN0X30GC?sp=true

コラム:不毛なパナマ文書流出、アイスランドが最初の犠牲に

[ロンドン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 金融危機以降8年近くにわたって、いまだ資本規制を行っているとはいえ、アイスランド経済はそう悪くはない。
 同国の消費者信頼感と個人消費の伸びは、2007年以降で最高となっている。
 非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルの「腐敗認識指数」ランキングでは、アイスランドはオーストラリアと共に、世界で13番目に汚職の少ない国として挙げられている。
 だがアイスランドは、パナマの法律事務所から流出した機密の金融取引文書、いわゆる「パナマ文書」で最初に大きな打撃を被った国となった。

 パナマ文書により、アイスランドの破綻銀行が発行した債券を保有するオフショア企業の半分を、同国のグンロイグソン首相がかつて所有していたことが明らかとなった。
 首相は5日、辞任を表明した。
 なぜアイスランドがドミノ倒しの口火を切る羽目に陥ったのか。
 これは単なる偶然ではない。
 グンロイグソン氏率いる進歩党への支持率は低い。
 透明性向上を約束し、2013年に同氏が首相に就任して以来、半分以上低下している。
 アイスランドは危機から回復したが、信頼は依然として低い。
 比較的汚職のない国だが、世論の動向は間違った方向に向かっている、と米保守系シンクタンクのヘリテージ財団は指摘する。

 アイスランド国民が海外に資金を移すのにいまだに制限を余儀なくされるなか、グンロイグソン氏の失墜に海外の隠し財産が絡んでいたということも、怒りを増幅させている。
 とはいえ、アイスランドを脆弱(ぜいじゃく)にさせるものは、パナマ文書を最終的に全く無用にさせるものと同じである。
 同国は強い法の支配の下に成り立ち、国民が敏感に反応する民主主義国家だ。
 アイスランド議会は、世界で最も古い歴史をもつ議会の1つである。
 有権者の期待は高く、もしそれがかなわなければ、自分たちの意見を世に知らしめることができる。

 ここで、中国について考えてみよう。
 パナマ文書によれば、8人の旧・現指導者の家族がオフショア企業を所有していたとされている。
 中国では、同文書流出に関して報道規制が行われている。
 たとえ規制されていなくても、中国の一般市民がそれについてどうするかを知るのは難しい。
 習近平国家主席さえ認めているように、汚職は根深く、染みついている。

 もっと下世話な内容が明らかになるに違いない。
 英国、ウクライナ、パキスタンの指導者の親類もパナマ文書に記載されている。
 しかしアイスランドが早々に見舞われた災難は、スキャンダル全体を方向付けるだろう。
 いかに意図的であれ、流出はおおむね善人と言えるような人物に平手打ちを食らわせ、本当に腐敗した人間を野放しにする傾向がある。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



レコードチャイナ 配信日時:2016年4月7日(木) 14時0分
http://www.recordchina.co.jp/a132815.html

「パナマ文書」めぐる中国の報道規制に米ホワイトハウスが言及―米メディア

  2016年4月5日、中国政府が習近平(シー・ジンピン)国家主席の親族らに関する記載があった「パナマ文書」をめぐり報道規制をしていることについて、米ホワイトハウスのアーネスト報道官は
 「米国は一貫して、中国を含む各国に対し、透明性と報道の自由を強化するよう提唱している」
と述べた。
 米ボイス・オブ・アメリカ(中国語電子版)が伝えた。

 パナマの法律事務所から「パナマ文書」と呼ばれる大量の内部文書が流出し、各国の政治家や著名人らのタックスヘイブン(租税回避地)を利用した不透明な資金運用の実態が明らかになった。

 同文書には、
 習主席の義兄のほか、
 中国共産党政治局常務委員の劉雲山(リウ・ユンシャン)氏と
 張高麗(ジャン・ガオリー)氏、
 李鵬(リー・ポン)元首相、
 賈慶林(ジア・チンリン)前政治局常務委員、
 曽慶紅(ゾン・チンホン)元副主席、
 故・毛沢東(マオ・ザードン)氏、
 胡耀邦(フー・ヤオバン)元総書記
のそれぞれの親族の名前が登場するという。


レコードチャイナ 配信日時:2016年4月8日(金) 2時0分
http://www.recordchina.co.jp/a132892.html

パナマ文書に中国・習主席の義兄の名前も、
香港と中国が最大市場

 2016年4月7日、AFP通信によると、タックスヘイブン(租税回避地)の利用者が暴露された「パナマ文書」について、文書の流出元であるパナマの法律事務所が手掛ける
 ペーパーカンパニーの約3分の1が香港と中国の支所を通じて設立された
ことが分かった。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が1150万点の文書を1年にわたり調査した結果、パナマの法律事務所モサック・フォンセカが手掛けるペーパーカンパニーの1万6300社以上が、同事務所の香港と中国の拠点を通じて設立されたものだという。
 29%を占めている香港、中国が最大の市場であると伝えている。

 パナマ文書には習近平(シー・ジンピン)国家主席の義兄がカリブ海のバージン諸島に登記されている3社の株主だったことが記載されているが、習近平政権が2012年に発足する前に閉鎖された。
 中国外交部はこの問題についてコメントを拒否している。


yahoo ニュース 2016年4月7日 17時56分配信 遠藤誉  | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
http://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20160407-00056350/

パナマ文書、中国の現状を解剖する

 各国指導層がタックスヘイブンに不正蓄財していることを暴露したパナマ文書が衝撃を与えている。
 その中に習主席の親戚を始め現在や過去の指導層の血縁者の名がある。
 件数は中国が世界一とのこと。
 その真相を追う。

◆パナマ文書の中にある中国指導層関係者

 パナマ文書に関しては、すでに多くのメディアが報道しているので、今さら詳細な説明は必要ないとは思うが、簡単に要点だけをおさらいしておこう。
 パナマ文書とは国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ: International Consortium of Investigative Journalists)が、税金を逃れるためカリブ海のタックスヘイブン(租税回避地)に世界各国の指導層の一部を含めた富裕層が設立した会社などを暴露した機密文書である。
 パナマの法律事務所から漏洩したため、その名がある。
 昨年、匿名人物によってドイツの新聞社「南ドイツ新聞」に通告され、その後ICIJに依頼して、80カ国のジャーナリスト約400名によって分析発表された。

 それによれば、パナマ文書にはオフショア金融センターを利用する21.4万社の会社の詳細が書かれているという。
  問題は、パナマ文書の中には(以下、敬称略)、習近平の親族を始め、張高麗や劉雲山など現役のチャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局教務委員7名)の親族、あるいは曽慶紅、胡耀邦、果ては毛沢東の親族までが名を連ねているということだ。
 「阿波羅新聞網」によれば、それらの関係者の名前は以下のようになる。

1.習近平(国家主席):習近平の姉の夫、トウ家貴が、オフショア会社2社の董事長で株主。
2.劉雲山(チャイナ・セブン、党内序列ナンバー5。イデオロギー担当):息子・劉楽飛の妻・賈麗青(エール大学MBA)が、オフショア会社1社の董事長で株主。
3.張高麗(チャイナ・セブンの党内序列ナンバー7。
 国務院第一副総理):娘婿の李聖溌がオフショア会社3社の董事長および株主。
4.李鵬(元国務院総理、1987年~1998年):
 娘の李小琳がオフショア会社1社の董事長および株主。
5.曽慶紅(元国家副主席、2002年~2007年):
 実の弟・曽慶淮がオフショア会社1社の董事長。

6.賈慶林(元チャイナ・ナイン、党内序列ナンバー4、2002年~2012年):
 孫娘の李紫丹がオフショア会社1社を所有。
7.薄熙来(元中共中央政治局委員、2007年~2012年):
 妻の谷開来がフランスの弁護士(Patrick Henri Devillers)とともにオフショア会社を利用してフランスに別荘を買い、2000年からは代理人を通してオフショア会社を開設していた。
8.胡耀邦(元中共中央総書記、1982年~1987年):
 三男の胡徳華がオフ初夏会社1っ社の董事長で株主。
9.毛沢東(建国の父!):
 孫の娘婿・陳東升がオフショア会社1社の董事長で株主。

 これらを一つ一つ説明すると、一冊の本になるくらい膨大な文字数となる。
 そこで今回はまず、以前から噂されている
 李鵬の娘と習近平の姉夫婦に関してのみ論じる。
 それ以外は、時間が取れれば、徐々に解説していこうかと思う。

◆李鵬の娘・李小琳

 2014年1月1日、中国のネット空間に
 「2013年度 中国人クズランキング」
が現れた。
 筆者はさすがに「クズ」という言葉を使うのがはばかれ、「ワースト」と置き換えて、2014年4月に
 『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』(小学館新書)
を出版した。

 その「クズランキング」の3位に挙げられていたのが電機業界を一手に牛耳る李小琳だ。
 李小琳は、88年から98年まで国務院総理(首相)だった李鵬の娘である。
 李鵬は1989年6月4日の天安門事件では、民主化を訴える若者たちに容赦ない武力鎮圧を指示した強硬派。
 その娘の李小琳は父親の利権をのうのうと受け継いで、その後、
 「国際電力国際発展有限公司」の董事長、
 「中国電力新能源(エネルギー源)発展有限公司」の董事長、
 「澳門(マカオ)電力」の理事、
 「香港中資企業協会」執行理事、
 「中国電力企業聯合会」常務理事、
 「中国工商理事会常務理事」
など、中国の五大電力会社のほとんどを牛耳っている。
 当然ながら巨額の賄賂が動いているはずだ。
 そのためクズランキング3位の地位を獲得したと言っていい。

 それ以外にも李小琳にはスキャンダルがつきまとっていた。
 ことの発端は、中国大富豪の一人である「東方集団」の総裁・張宏偉が元駐米代表の部下(趙)を、2009年12月にアメリカで起訴したことから始まる。
 これは財政部長を巻き込んだ大変な事件へと発展していくが、裁判の過程で明らかになった事実を、裁判をずっと傍聴してきたイギリスの“The Telegraph”が、2013年10月10日にスクープした。 それは、スイスのチューリッヒ保険会社(Zurich Insurance)の中国事業参入に関して、趙のクラスメートだった李小琳が絡み、かつ不正な賄賂が動いたというものだ。

 1996年11月12日にバハマ国にあるオフショア銀行に開設した口座をめぐり、当時の財政部長(薄熙来と関与)や国土資源部部長(周永康と関与)などを巻き込んで、闇の世界が展開していた。
 それらはくすぶったまま、李小琳はまだ泳がされている状況だった。
 彼女に調査の手が伸びるのは時間の問題だと筆者は何度も書いてきたが、李鵬がまだ健在で、激しい睨みを利かしているため遠慮が働いていた。
 こんなに一度に暴露されてしまうと、もう李小琳だけの問題ではなくなるので、手の施しようがなくなったのではないだろうか。
 早めに手を打つべきだっただろう。

◆習近平の姉・齋橋橋とその夫

 パナマ文書に関する多くの報道の中に書いてある習近平の親族とは、習近平の姉・齋橋橋の夫、トウ家貴のことである。
 しかし齋橋橋が雲南の商人だったトウ家貴と知り合ったのは1990年のころで、結婚したのは1996年。
 そのころ夫のトウ家貴は香港で金儲けをしてリッチになっていた。
 習近平とは全く無関係な場所と時間で富裕になっていたのである。
 このころの習近平はまだ福建省の福州市でウロウロしていて、まったくの無名だ。
 齋橋橋が持っている不動産などの財産は、すべて夫のトウ家貴からプレゼントされたものだ。
 それも1991年とか90年代初期のことで、おそらくなかなかトウ家貴に振り向かない齋橋橋の心をつかもうと、貢いだものと推測される。

 こうしてようやく96年に結婚するが、それでも齋橋橋が商売を始めるのは2003年で、習近平はまだ浙江省の書記に着任したばかりだ。
 齋橋橋は2002年までは父親の習仲勲の面倒を見ており、2002年5月に他界したので、商売を始めたという形である。
 習近平が2007年にチャイナ・ナイン(胡錦濤時代の中共中央政治局常務委員9人)に選ばれると、習近平は突如、姉に「商売から手を引いてくれ」と頼む。
 この頃までに姉夫婦の商売は大きく広がり、二人で10社以上の会社を持っていた。
 その中の一つだけを残して、齋橋橋は商売から手を引く。

 このとき習近平はチャイナ・ナインの党内序列ナンバー6で、李克強はナンバー7。
 5年後の2012年の第18回党大会では、習近平が中共中央総書記に(2013年には国家主席に)上り詰めるであろうことは既に予測されていたからだ。
 ただ、文革時代、父親の習仲勲が投獄されていた間、姉が献身的に一家の面倒を見て苦労していたのを知っているので、習近平は、少しくらいは姉に楽をさせてやろうと思っていたという。
 だから全ての会社を手放してくれとは言わずに、1社だけ残して、と譲歩したと言われている。

 ここまでの事実は、筆者は以前から何度もさまざまな出版物の中で書いてきた。
 今般、パナマ文書で発見されたトウ家貴のオフショア会社の一つは、「阿波羅新聞網」によれば、2012年11月に習近平が中共中央総書記に選ばれたときから、休眠状態にあるという。
 それも実はトウ家貴の才覚により6年間もかけて成長させてきた企業で、手を引かなければ莫大な利益を手にすることができたのに、習近平が総書記などになったために、閉鎖させてしまった。
 そのためトウ家貴は莫大な損失を被ることになり、「習近平の犠牲になってしまった」と書いている。

 こうなると、少なくとも習近平に関しては、この件に対して果たして責任があるのか否か、判定が難しい。
 「パナマ文書に習近平の名が!」というのは、耳目を引く、いいキャッチフレーズになりはするだろうが、自分の親戚が自分と関係ない場所と時期に、何か起こしたことに対して、著名人は責任を負わなければならないのだろうか?
 その著名人が国家指導者であった場合、自分が無名の時に自分と関係なくリッチになった男と自分の姉が結婚し、その結果、姉も裕福になったという情況において、国家指導者に責任があると言えるのだろうか。
 自分の子供(特に未成年)が何か事件を起こしたという場合は、親が責任を取ることもあろうが、この場合は相当しない。
 長くなり過ぎたので、他のケースに関しては、またの機会に譲る。
 なお暴露された1150万件のうち、中国人が世界で最多であるとのことだ。



yahoo ニュース 2016年4月8日 13時45分配信 遠藤誉
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4863.php

パナマ文書、中南海に走る激震
――劉雲山の息子・劉樂飛の巻

 今回はパナマ文書にあるチャイナ・セブンの一人、劉雲山の息子・劉楽飛を解剖する。
 彼は逃れられない。
 複雑な利権と腐敗関係の中、昨年すでに辞職に追い込まれている。
 中南海に走る激震の最も大きな震源地が見える。

◆劉楽飛の複雑な利権関係

 (肩書を明示する必要がある場合以外は、ここでは敬称はすべて省略する。)
 1973年生まれの劉楽飛は、95年に中国人民大学で経済学を学んだあと、中国社会科学院の研究生院(大学院)で学び、工商管理で修士学位を取得。
 2004年から中国人寿投資管理部総経理を務め、2006年から中国人寿主席投資執行官(CEO)に就任している。

 ところで2012年の薄熙来失脚にともなって重慶市書記に任命された孫政才は、吉林省の書記であった時代(2009年~2012年)に、吉林省の大きなプロジェクトを中国人寿に発注し、劉楽飛に儲けさせている。
 そのお礼だろう、当時まだ中宣部(中共中央宣伝部)の部長をしていた劉雲山(劉楽飛の父親)は吉林省を訪問し、孫政才に会っている。
 この時から、劉雲山と孫政才の利権はつながっている。
 中国人寿をスタートとして金権世界でのし上がってきた劉楽飛は、その後「中信産業投資基金管理公司(中信資本)」傘下の投資会社「中心証券」などを掌握してアリババ集団の株主の一人となり、ボロ儲けをした。
 中信資本の運用資産90億元(13億2000万米ドル)。

 2014年9月20日(ニューヨーク時間19日)、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場したアリババ集団には、
 劉楽飛以外に
 江沢民の孫で薄熙来と関係のあった江志成(博祐資本)や、
 元国務院副総理・曽培炎の息子・曽之傑(中信資本)、
 胡錦濤政権時代のチャイナ・ナインの一人で中央紀律検査委員会の書記だった賀国強の息子・賀錦雷(国開金融)、
 守旧派で薄一波と仲良かった元国務院副総理だった陳雲の息子・陳元、
 そして、あの温家宝元国務院総理の息子・温雲松(新天域資本)
などが株主として参入していると、7月21日付の「ニューヨークタイムズ」が報道している
 (詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』)。

 その間、劉楽飛は元最高検察院検察長・賈春旺の娘・賈麗青と結婚している。
 これは不正摘発を逃れるための政略結婚だと言われたものだ。

◆習近平政権の反腐敗運動の網に引っ掛かる

 習近平政権が誕生してから、反腐敗運動が本格化し始めた。
 実は胡錦濤政権の時から反腐敗運動は行っていたのだが、何と言っても集団指導体制の中で多数決議決をしようとするときに、チャイナ・ナイン(胡錦濤政権時代の中共中央政治局常務委員会委員9人)の構成メンバーが良くない。
 ほとんどが江沢民派によって占められ、胡錦濤が出す提案はほぼ毎回否決されて、身動きが取れなくなっていた。

 習近平政権になってからは、チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7人)のほとんどが習近平の息がかかっている上、チャイナ・セブン入りする際に、反腐敗運動に賛同するか否かの誓約を要求されている。
 その上で第18回党大会の初日である2102年11月8日に胡錦濤が最後のスピーチで
 「腐敗問題を解決しなければ党が滅び、国が滅ぶ」
と叫び、中共中央総書記に選ばれた11月15日、就任の挨拶で習近平も胡錦濤とまったく同じ言葉を使って反腐敗運動を誓った。

 反腐敗は胡錦濤政権から習近平政権に移るときの最も大きな約束事であった。
 二人とも、腐敗問題が解決しなければ、これで共産党による一党支配体制は崩壊することを知っていたのだ。
 そこで習近平政権が誕生するや否や凄まじい反腐敗運動が始まった。
 その業務は「中共中央紀律検査委員会(中紀委)」が担う決まりがあるので、チャイナ・セブンの中の王岐山(党内序列ナンバー6)が中紀委・書記として大鉈(おおなた)を振い始めた。
 中紀委は定期的に中国の全ての組織や機関を巡回し、不正がないかを調べている。

 2015年9月、その一環として金融界にメスが入った。
 特に株の乱高下があまりに不自然で激しいので、捜査当局は背後に空売りをしている犯人がいると見定めていた。
 フォーカスが絞られたのが、中国証券最大手である「中信証券」だ。
 程博明・総経理や中国証券監督管理委員会の張育軍・主席補佐などが取り調べを受け、中信証券の副理事長・劉楽飛にフォーカスが絞られた。
 その父親で、チャイナ・セブンの党内序列ナンバー5でイデオロギー界に君臨する劉雲山は、チャイナ・ナイン時代にやはりイデオロギー担当として君臨していた李長春(党内序列ナンバー5)の腹心で、李長春はいうまでもなく江沢民派。

 習近平自身、江沢民の後ろ盾があってこそ、こんにちの地位を獲得できた経緯がある。
 しかし反腐敗運動は、腐敗のトップにいる江沢民の安全を脅かす。
 そこで捜査当局は、株式市場の乱高下の裏には、元をたどればこれら江沢民から派生する派閥の結託による株式市場の弱点への攻撃に原因があると見ていた。
 具体的にはインサイダー取引や情報漏洩(ろうえい)である。中信証券は、表向きは株式市場の危機に対処する救済機構を標榜しながら、裏では空売りをして株式市場を乱していたのだ。
 結果、劉楽飛はこれらを操ったとして辞職へと追い込まれている。

◆チャイナ・セブンに走る激震の震源地は劉雲山

 実は、劉雲山自身もまた株式市場の情報操作による利益を手にしているという噂もある。
 劉楽飛は言うにおよばず劉雲山も十分にクロだと筆者は思っているが、ぐらつく一党支配体制をイデオロギーで引き締めようとしている習近平が、そのお膝元で、イデオロギー担当の劉雲山が一党支配を危うくするような動きに出ているとなれば、出発時点におけるチャイナ・セブンの結束は望みようもない。
 パナマ文書で、最も危ないのは、実はこの劉雲山の存在と動きである。
 他の震源地に関しては、追ってまた考察したい。


ニューズウイーク  2016年4月11日 7時0分配信 遠藤誉  | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4873.php

パナマ文書、国務院第一副総理・張高麗の巻

 パナマ文書には張高麗(チャイナ・セブン党内序列ナンバー7)の娘婿・李聖溌がオフショア会社3社を所有しているとある。
 張高麗の関与がどれくらいあるのかを考察する。
 中国の恐るべき金権政治の世界が見えてくる。
 (チャイナ・セブンとは「習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7名」を簡略化していうために筆者が命名した呼称。
 なお、本稿では肩書を明示する必要に迫られた場合以外は全て敬称を省略する。)

◆張高麗、出世への道――江沢民の愛護を受けるきっかけ

 1946年、福建省晋江(しんこう)市で生まれた張高麗は、1970年から1984年まで石油部「広東茂名(もめい)石油公司」におり、言うならば「石油閥」の一人である。 
 広東省茂名市党委員会の副書記や広東省副省長などを経て、1997年に広東省深セン市(中国共産党委員会)書記になるなど、ひたすら広東で31年間にわたって仕事をしてきた地味な前半生だった。
 しかしこれが出世のきっかけを作ったのだから、人の運命はわからないものである。

 2000年2月、国家主席だった江沢民が広東省茂名市に来て、ここで「三つの代表」論を初めて公開した。
 「三つの代表」論は「中国共産党は無産階級(プロレタリアート)の先鋒隊を代表する」という伝統的な中国共産党理論を真っ向から否定するものであり、
 「有産階級(資本家階級)を入党させる」という「金持ちと権威」を結び付けるものとして、北京では保守派長老や伝統を守ろうとする党員たちから激しい反対を受けていた。
 そこで江沢民はこの「三つの代表」の最初の意思表明を、北京から遠い改革開放発祥の地、広東省に来て、しかも本丸の「深セン市」を避けて、ちょっと離れた「茂名市」で行なおうとしたのである。
 この選択によって張高麗の運命が決まる。
 このとき広東省の副書記をしていたのは張高麗。
 深セン市の書記でもあり、特に茂名市には70年から85年まで15年間もいた。
 したがって江沢民の「三つの代表」講話の主たるお膳立てと接待はすべて張高麗が担った。
 張高麗はすっかり江沢民に気に入られ、やがて山東省書記、天津市書記へと、出世階段を上っていくが、そこには後半で述べる李嘉誠との関係が絡んでいる。

◆張高麗と習近平の関係――これも「深セン市」

 習近平との関係において決定的だったのは「深セン市」。
 習近平の両親は、習仲勲の政界引退後の80年代末、風光明媚な広東省の珠海市に住もうと決めていた。
 ところが珠海市の書記は、そこは一等地だとして、当時はまだ田舎だった深センに習近平の両親を追いやった(詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』)。
 習近平はその頃まだ無名で、福建省寧徳市の副書記などをしており、どこにでもいる普通の地方幹部に過ぎなかった。
 97年から深セン市の党委書記となった張高麗は、深セン迎賓館に習仲勲夫妻が住んでいることを知ると、早速自宅を訪問し、
 「なにかご不便なことがあったら、なんでも申し付けていただきたい」
と挨拶に行っている。
 春節や中秋節など、季節の折々にも必ず習仲勲夫妻のもとを訪れ、何くれとなく世話をした。
 習近平が出世するかどうか分からない時期に、すでに政界を引退している習仲勲に敬意を表して足しげく訪れた張高麗を習近平は非常に信頼し感謝したため、張高麗の現在の地位があるという側面も否めない。
 なんとも「美談」に見える。
 ところが――、張高麗には別の顔があった。

◆張高麗と娘婿・李聖溌との「金権関係」

 張高麗は妻との間に子供に恵まれず、父方のいとこが70年代にフィリピンで他界したので、その娘・張暁燕(ちょう・ぎょうえん)を引き取って養女として育てた。
 1989年になってようやく男の子が生まれはしたが、張高麗は養女の張暁燕を可愛がっている。
 やがて彼女が年頃になった1997年、張高麗は張暁燕を香港商人で同郷(隣り村)の李賢義の息子・李聖溌(り・せいはつ)と結婚させた。
 1952年生まれの李賢義は、貧乏から逃れるために香港に渡り、ゼロからたたき上げてそれなりの成功を収めていた。
 1989年には、深センに「信義集団有限公司」を設立している。
 自動車の窓ガラスを中心として成長し、香港の大陸への返還が実現しそうだという「政治の風」を読み取り、深センに渡る。
 香港商人として大陸に進出したのだ。
 そして香港の大陸返還が実現した1997年、張高麗は深セン市の書記に赴任してきた。
 このときには、李賢義の工場は37万平方メートルに広さ、累計資金10億元、2000人の社員を抱える大企業に発展していた。
 車のガラスだけでなく、ビルのガラス窓のガラスや防弾ガラスなども生産し、「ガラス大王」と呼ばれるようになっていた。
 深セン市の書記と深セン市の大企業のオーナーが接触を持つのに時間はかからなかった。
 同郷のよしみが加わり、結婚は一瞬で決まった。
 金と権力。
 まさに金権関係による婚姻だ。
 中国では「官商婚姻」と言っている。
 香港の中国返還に伴う香港商人への優遇策という大きな流れの商機を、二人は見逃さなかった。
 ここから江沢民を巻き込んだ闇の世界が広がり始める。

◆華人としての世界最大の資産家・李嘉誠を仲介として

 小さいころに福建や広東から香港へと逃れた華人華僑は多く、中でも有名なのが李嘉誠(り・かしん)だ。
 彼は1928年に広東省潮州市に生まれたが、1940年、香港へと逃れた。
 香港フラワーと呼ばれた造花で大成功し、その後、香港最大の企業グループ長江実業を創設している。
 華人としては世界最大の資産家だったが、最近ではアリババの馬雲(ジャック・マー)や大連万達(ワンダー)集団の王健林などが頭角を現し、やや陰りが見えてきた。
 しかし当時は絶大な財力を誇っていた。
 香港で成功した大陸生まれの商人の一人として、張高麗の娘婿の父親・李賢義は、李嘉誠とも仲がいい。
 そこで李嘉誠を張高麗に引き合わせ、張高麗はすぐさま李嘉誠を江沢民に引き合わせた。
 
 江沢民が喜んだこと、喜んだこと!
 李嘉誠は、江沢民の息子・江綿恒の「中国網絡(ネットワーク)通信集団公司」に500億元を投資した。
 すると江沢民はそのお礼に、北京の王府井(ワンフージン)周辺にある一等地を李嘉誠に提供し、「東方広場」なる巨大な商店の地を提供している。
 お蔭で昔の情緒豊かな「汚い」王府井は姿を消してしまった。
 その陰には張高麗がいたのである。

◆パナマ文書に名前が載るまで

 江沢民と李嘉誠を結びつけたキューピットが娘婿・李聖溌の父親・李賢義だとすれば、パナマ文書に名前が載るまでに李聖溌を成長させたのは張高麗であるということができよう。
 張高麗は江沢民の覚えめでたく、2001年に山東省の副書記に、2002年11月には書記に昇進。
 2007年に天津市の書記に抜擢されている。
 それに伴って、娘婿の李聖溌は香港に17社もの上場企業を持つに至り、不動産業に手を付け始めたので、父子が得た莫大な利益は尋常ではなく、フォーブスの中国富豪ランキングに名前が載ったほどである。
 李聖溌は、張高麗が李嘉誠と江沢民を結びつけたことから、李嘉誠から投資を受けるようになり、2001年に「匯科(かいか)系統」というIT関係の会社を共同で深センに設立した(李嘉誠側が70%の株)。
 しかし2008年になると、「匯科系統」の株の70%を「信義科技集団」の董事長になっていた李聖溌が持つようになり、同時に李聖溌は「匯科系統」の董事長にもなった。
 さらに「民潤」というスーパーマーケットのチェーン店を運営するようになる。

 「匯科系統」にしても「信義科技集団」にしてもコンピュータのソフトウェア関係を主たる製品として生産するだけでなく販売、サービス分野においてもマーケットをつかんでいたため、李聖溌は総合的なハイテク科学産業で活躍する存在となっていく。
 張高麗と江沢民が背後にいれば、怖いものなし。
 張高麗が天津市書記として力を発揮するにつれ、信義科技集団の顧客は個人から「中共公安系列」へとシフトしていき、
 「公安情報化と監視カメラ」
 「人相識別技術」
 「バックグラウンド・チェックシステム(学歴の真偽、犯罪歴の有無、過去の就職先における問題発生の有無などをチェックするために入力されているソフト。
 身分証番号を入れると一瞬で出てくるようになっている)」
 「ネット上の作戦シミュレーション」
 「財富(財産)分析システム(腐敗問題における犯罪摘発のため)」
など、数多くのソフト開発を行うようになった。
 これらのソフトは、
 「公安、武装警察、軍隊、金融、石油、飛行場、監獄、電力、通信、学校のキャンパス」
など、非常に広範な領域をカバーするに至る。

  残念ながら、自らの会社が開発した
 「財富分析システム」は、自分自身の情報を入力しない「特殊な」システムになっていたのだろうか。
 このたびパナマ文書によって、タックスヘイブンに少なくとも3社ものオフショア会社を持っていることが明らかになった。
 チャイナ・セブンのうち、3人もの最高指導層の名前がひっかかり、
 そのうち劉雲山と張高麗は、詳細に見れば見るほど「アウト!」
だという実態が浮かび上がってくる。
 反腐敗を叫び党紀粛正をアピールすることによって人民の求心力を何とかつなぎとめようとしてきた習近平政権だが、これまで説明してきた部分だけでも、いかに一党支配体制の危機が迫っているかが見えてくる。
 そこに広がっているのは、金権政治の巨大な闇だ。
 中国のネット空間でパナマ文書が厳しい規制を受けているのも、当然のことだろう。




【2016 異態の国家:明日への展望】


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