2016年4月20日水曜日

オーストラリア(2):次期潜水艦の共同開発はフランスに、背景に中国の反対圧力か

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TBS系(JNN) 4月20日(水)2時8分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160420-00000002-jnn-int

海自潜水艦がオーストラリアに初寄港、共同訓練へ

 オーストラリアの港に、海上自衛隊の潜水艦が初めて入りました。
 次期潜水艦の共同開発相手の選定を進めているオーストラリア軍との共同訓練を、同行した護衛艦2隻とともに行います。

 シドニー湾に面したオーストラリア海軍基地に停泊しているそうりゅう型潜水艦です。
 日本の海上自衛隊の潜水艦がオーストラリアに寄港するのは、今回が初めてだということです。

 シドニー湾周辺海域でオーストラリア軍と共同訓練を行うのは、海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」と護衛艦2隻です。
 中国の海洋進出で南シナ海の緊張が高まる中、今回、オーストラリア軍と共同で戦術訓練を行い、海上自衛隊の技量の向上と通信などで相互の連携強化を図ります 。

 「(今回の共同訓練で)日豪両国の関係はさらなる一歩を踏み出すことでしょう」(海上自衛隊・酒井良 護衛艦隊司令部幕僚長)

 現在、オーストラリア政府は日本円にしておよそ4兆1000億円(約500億豪ドル)とされる次期潜水艦12隻の調達計画を進めており、ドイツやフランスとともに建造受注を競っている日本は、そうりゅう型潜水艦の能力の高さを今回の訓練で直接アピールします。

 「日本が潜水艦を携えて来てくれました。
 これで本当に素晴らしい二国間訓練が行えます。」(オーストラリア海軍・シュレーゲル大佐 )

 一方、中国政府は「平和憲法により日本の武器輸出には厳しい制約がある」として、日本とオーストラリアの潜水艦の共同開発をけん制していて、大詰めを迎えているオーストラリアの次期潜水艦発注先の決定に注目が集まっています。



毎日新聞 4月21日(木)12時49分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160421-00000025-mai-asia

<豪州>新潜水艦「日本除外、仏独有力」 海外メディア報道

 【ジャカルタ平野光芳】
 オーストラリア政府が導入を計画している次世代潜水艦の共同開発相手について、各国メディアは相次いで「日本案が採用される可能性は低い」と報じた。
 参入を競うフランスもしくはドイツが有力で、ターンブル首相が近く正式に発注先を発表する見通しとしている。

 有力紙オーストラリアンは21日、豪政府が既に関係閣僚らによる選定会議を進めていることを紹介したうえで「日本が最も可能性が低く、フランスが最有力」と報道。
 ABCテレビも「日本はほとんど除外された」と伝えた。

 また、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、関係者の話として
 「日本が国外向けの海洋装備品を製造する経験が乏しいことから、リスクが大きいと判断された」
と報道。
 最終判断は下されていないが、「日本案は事実上除外された」と報じている。

 計画では、500億豪ドル(約4兆円)以上をかけ、新型艦12隻を建造し、2030年代から順次運用する。

 日本は世界最高水準の性能と技術をアピールしているが、武器の輸出・共同開発の経験に乏しいことなどが懸念材料。
 さらに昨年9月、日本案に積極的だったアボット首相(当時)が与党内の政変で降板したことも不利な要因となっている。



jiji.com (2016/04/23-08:48)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042300100&g=soc

「日本脱落」報道で捜査
=潜水艦選定情報漏えい容疑-豪警察

 【シドニー時事】
 日独仏が建造受注を競うオーストラリア政府の次期潜水艦調達計画をめぐり、「日本は候補から脱落した」と報じられたのを受け、連邦警察は機密情報漏えいの疑いで捜査に乗り出した。
 公共放送ABCが23日報じた。
 ABCによると、連邦警察は
 「国防省から非承認情報の流出について(捜査)依頼を受けた」
と確認した。

 複数の現地メディアは先に、主要閣僚らで構成する国家安全保障会議(NSC)が開かれ、潜水艦12隻の発注先を協議したと報道。
 武器の輸出や海外現地生産の経験に欠ける日本は「重大なリスクがある」と除外され、候補は独仏に絞り込まれたと伝えた。
 豪政府は月内にも最終候補を決め、公表する見通し。



ブルームバーム 2016年4月26日 11:26 JST 更新日時 2016年4月26日 13:04 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-26/O67YS46JIJUW01

豪州、次期潜水艦の共同開発国にフランスを選定
-日独は落選
Jason Scott、Angus Whitley

 オーストラリアは総額500億豪ドル(約4兆3000億円)の次期潜水艦12隻の建造事業について、フランスのDCNSグループに発注した。
 ドイツと日本は選定されなかった。

  ターンブル豪首相は26日にアデレードで記者団に対し、DCNSが豪州で潜水艦を建造すると述べた。
 DCNSと受注を争っていたのは三菱重工業・川崎重工業と独ティッセンクルップ。
 
 フランスはルドリアン国防相が2月に1週間近く豪州に滞在したほか、オランド大統領主催で豪連邦総督を招く公式夕食会を26日に計画するなど、受注に向けなりふり構わず攻勢をかけた。
  豪州はフランスを選んだことで、最大の貿易相手国である中国との関係複雑化を回避できる見込みだ。
 中国政府は日本の軍事力強化を懸念しており、これまでも豪州に対し、南シナ海の問題に関わらないよう求めていた。
 
  シンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の国防経済アナリスト、マーク・トムソン氏は
 「日本との関係強化がもたらす地政学的利点が、フランス案の商業・技術上の利点を上回れなかった」
と説明。
 豪州は今後、
 「日本との建設的かつ戦略的な関係を維持する何らかの方法を見いだす」
必要があると指摘した。

原題:France Wins $39 Billion Contract to Build Australian Subs (1)(抜粋)



BBC News 4月26日(火)19時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160426-36140209-bbc-int

オーストラリア潜水艦、仏が受注

 オーストラリアのターンブル首相は26日、記者会見で同国が選定を進めていた次期潜水艦の共同開発をフランスが受注すると発表した。
 同じく受注を競っていたドイツと日本は敗退した。

 受注額は500億豪ドル(約4.3兆円)に上り、オーストラリアが発注する防衛関連プロジェクトとして史上最高額になる。
 ターンブル首相は、新たに開発される「バラクーダ級」の潜水艦はオーストラリアで生産された鉄鋼品を使用し、同国南部アデレードで建造されると述べた。
 また、2800人の新たな雇用が生まれるという。

 受注競争でこれまで最有力とみられていた日本の中谷元防衛相は同日、「大変残念だ」と述べ、オーストラリアに対して「選ばれなかった理由の説明を求めていく」と語った。
 ターンブル首相は1年3カ月にわたる選定を経た決定は、「オーストラリア海軍の将来を何十年にもわたって確実なものにする」と語った。

 同国のペイン国防相は、政府の選定過程では、さまざまな専門家が一致してフランスの提案を支持したと語った。
 日本が当初の有力候補だった理由として、ターンブル首相の前任者であるアボット前首相が安倍晋三首相と緊密な関係にあったことが挙げられる。

  しかし、日本が防衛装備品の輸出の経験に乏しいために今回の受注獲得に失敗したとの指摘もある。
  日本は2014年に武器禁輸策を転換する「防衛装備移転三原則」を閣議決定している。
 多額の利益をもたらす潜水艦の受注は政策変更後初めての大型受注となり、安倍政権にとって大きな勝ち点となるはずだった。
 さらに、日本政府は中国の台頭に対抗する方策のひとつとしてオーストラリアとの軍事的な連携強化を狙っているとみられている。
 潜水艦の共同開発によって、装備で互換性を持たせることが期待されていた。

日本の受注敗退が日豪関係に影響を及ぼすとの見方もある。

 ターンブル首相は、安倍首相に連絡したと明らかにし、
 「日ごとに強まるオーストラリアと日本の特別な戦略的関係を維持する強い決意」
を共有したと述べた。

(英語記事 France wins A$50bn Australia submarine contract)



時事通信 4月27日(水)15時50分配信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042700655&g=pol

豪現地建造は選挙対策? 
=潜水艦計画で首相に批判


●仏造船大手DCNSが豪政府に提案した「バラクーダ」級潜水艦のイメージ図(DCNS提供)

 【シドニー時事】
 オーストラリアのターンブル首相が次期潜水艦12隻全てを豪南部で現地建造する方針を決めたことが、波紋を広げている。

 建造費拡大が必至なだけに、選挙対策の「人気取り」(オーストラリアン紙)と批判する声もある。

 首相は26日、共同開発相手として仏造船大手DCNSを選定したと発表。
 日本とドイツは落選した。
 豪州は人件費が高いため、現地建造は海外建造に比べコストが3割も割高になるとの試算がある。
 DCNSも海外と現地建造の折衷案を勧めたが、首相は現地建造にこだわった。

 背景には、7月2日に想定される両院解散総選挙への危機感があるとみられる。
 不況に苦しむ豪南部では雇用創出につながる「潜水艦特需」への待望論が強く、与党議員も「海外建造なら再選できない」と訴えていた。

 シンクタンクCISの研究者サイモン・カウアン氏は、12隻の現地建造は「税金の無駄遣い」と非難。
 公共放送ABCも「国でなく議席を守るための潜水艦か」と否定的に報じた。 



Record china 配信日時:2016年4月27日(水) 19時20分
http://www.recordchina.co.jp/a136639.html

日本が敗れた潜水艦受注争い、
勝者・フランスは「世紀の巨大受注」と歓喜―仏メディア

 2016年4月26日、仏RFI中国語版サイトはオーストラリアの潜水艦受注に沸くフランスの様子を報じた。
 ターンブル豪首相は26日、新たに導入する12隻の潜水艦の共同開発相手として仏造船大手DCNSの名を挙げた。
 受注競争は日独仏の3カ国で争われていたが、日本とドイツはフランスに敗れた。

 豪首相の発表を受けたフランスのオランド大統領、ドリアン国防相、カズヌーブ内相はDCNS本部を訪れ祝意を表明。
 地元メディアは「世紀の巨大受注」という表現で報じ、政治評論家の間からは「経済が低迷し、大統領に対する支持が弱まる中での受注は大きい」「大統領の『フランスは良くなってきた』との言葉に人々は半信半疑だったが、このニュースが説得力を与えた」などの指摘が上がった。
 受注によりフランスは少なくとも80億ユーロ(約1兆円)を獲得するとの分析も出ている。

 次期潜水艦は2027年から運用が開始される見通しで、フランスは50年間にわたって保守サービスを提供する。
 ドリアン国防相は近くオーストラリアを訪れ、正式契約を結ぶ方針だ。



ニューズウイーク 2016年4月27日 13時6分配信 遠藤誉
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-5004.php

日本、潜水艦受注逃す
――習近平とオーストラリア(豪州)の深い仲

 日本がオーストラリアの潜水艦受注を逃した原因はさまざまあるだろうが、習近平とオーストラリアとの戦略的な深い仲を見逃してはならない。
 今月にも首相のターンブルが訪中して習近平と会談しただけでなく、習近平の弟はオーストラリア国籍だ。

◆4月15日に訪中したターンブル首相

 オーストラリアのターンブル首相が北京の釣魚台国賓館に姿を現して習近平国家主席と熱い握手を交わしたのは、今年4月15日のことである。
 オーストラリアが潜水艦の共同開発国に関して発表した26日のわずか10日ほど前だ。

 二人は会談で中豪の戦略的発展関係を強調し、それぞれ概ね次のように述べた。

習近平:
 「中国の一帯一路構想とオーストラリアの北部大開発」、
 「中国のイノベーション駆動発展戦略とオーストラリアの国家イノベーション科学戦略」
の連携を強化し、中豪自由貿易協定を推進していく。
 またビザの緩和と利便化などを通して観光や留学などの交流を強化する。
 中国はオーストラリアがG20やアジア太平洋経済協力(APEC)、東アジアサミット(EAS)およびAIIB(アジアインフラ投資銀行)などの構築内で緊密な協力を深めていくことを望んでいる。
 (筆者注:オーストラリアは2015年4月にAIIBに加盟している。
 オーストラリアにおける留学生の22%強が中国人。
 昨年オーストラリアに行った中国人観光客は1.25億人に達しており、2020年には2億人に達する目標を立てている。
 中国は観光客数によって相手国が「親中」となることを狙う戦略を国策の一つとしている。)

ターンブル:
 習近平主席が2014年に歴史的なオーストラリア訪問をしたことは豪中関係を強める意味で非常に大きな効果をもたらした。
 オーストラリアは中国経済の明るい見通しと世界経済に与える大きな影響力と発展性を深く信じている。
 密接な豪中関係のさらなる強化と両国間の戦略的発展を加速させていくことを心から期待する。

 どの国を選ぶかを発表する寸前に、ターンブルを釣魚台国賓館でもてなす習近平の戦略が目に見えるようだ。
 二人は実は2015年11月にもトルコで会談している。
 その時も中国の一帯一路とオーストラリア北部大開発計画の連携強化を誓い合っている。
 アボット(元)首相との会談も何度か行っており、2014年4月には当時のアボット首相が人民大会堂で習近平国家主席と熱い握手を交わしている。 
 アボット首相は同年4月には李克強首相とも会談しており、その返礼に李克強首相が訪豪してアボット首相と会談している。 
 習近平国家主席もまた2014年11月にオーストラリアでアボット首相と会談している。 

 たしかにアボット元首相は安倍総理と親密で、熱烈な親日派として知られているが、一方では中国にもかなりいい顔をしており、なかなかの「やり手」であったことが、このことからもうかがわれる。
 オーストラリアがAIIBに加入したのはアボット首相時代であったことを見逃してはならない。
 以上から、必ずしもターンブル首相に変わったために日本への風向きが急変したとも言いにくい現実が見えてくる。
 そして習近平もまた、オーストラリアを囲い込もうと、非常に戦略的に動いていたことが、ご理解頂けるだろう。
 ただそれでもなお、外交関係以外にターンブル首相と習近平国家主席との間には、さまざまな個人的関係もあるのは確かだ。

◆習近平の弟・習遠平はオーストラリア国籍を持っている
 
 中国とオーストラリアとの関係は、こういった豪中外交関係だけに終わらない。
 実は習近平国家主席の2歳年下の弟、習遠平氏は、オーストラリア国籍を持っており、オーストラリアに住んでいる。
 もちろん北京にある国際節能環保(省エネ環境保護)協会の会長でもあるので、北京にいることも多いが、習遠平は90年代から香港に移り、そこからオーストラリアへと移り住んでいる。
 結婚した相手が徐才厚の元愛人と噂されていた女性だったということもあり、習近平国家主席とは仲が悪い。
 しかし、表面的には習遠平が習近平国家主席の弟であることに変わりはない。
 こういった、やや危ない個人的理由もあって、豪中関係を親密にしておくことには非常に重要なのである。

◆ターンブル首相の、中国との浅からぬ因縁

 ターンブル首相にしたところで、中国とは1990年代から浅からぬ因縁がある。
 実はターンブル氏は1994年に実業家として河北省の鉱山に投資して「河北華澳鉱業開発有限公司」を設立していた(澳は中国語のオーストリアの最初の文字)。
 ターンブル氏はこの会社の運営に最近までたずさわっていた。
 そんなわけでターンブル氏の息子アレックスは、北京で中国語の学習をした経験がある。
 のちに中国人女性と結婚していると、オーストラリアの“The Australian Financial Review”が報道している。
 二人は香港に住んでいたが、今はシンガポールに移り住んでいるとのこと。
 この中国人女性の父親は、文革終了後、コロンビア大学に留学し、帰国してから中国社会科学院に就職。
 その後、香港に移り住んでIKEAなどの事業を展開した。
 この男性が江沢民と親戚関係にあるという噂があるが、「それは違う!」と、アレックス自身が表明しているので、違うものと判断していいだろう。
 ただ、いずれにしてもターンブル首相と習近平国家主席の関係は、一般的外交関係の域を出ているので、日本は国家戦略を練るときに頭の片隅に置いておいた方がいいのではないだろうか。

追記:
 中国としては「米・日・豪」が提携して対中包囲網を構築するような形になるのを何としても避けたかった。
 そのため少なくとも日本を選ばせないようにオーストラリアを抱き込んだものと思う。
 上記の状況は、中国の戦略性に個人的利害関係が加わって、中豪両国の緊密さをさらに強固にさせたものと解釈できる。



朝鮮日報 記事入力 : 2016/04/28 08:12
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/04/28/2016042800615.html

豪次期潜水艦で日本が受注失敗、
背景に中国の反対か  

 オーストラリア政府は26日、500億オーストラリアドル(約4兆2300億円)規模の次世代潜水艦12隻の共同開発相手としてフランス国営のDCNSを選定した。
 これをめぐり、オーストラリア最大の貿易相手国である中国の影響力が背景にあったのではないかとの見方が浮上している。
 同潜水艦事業は昨年から日本、ドイツ、フランスなどが受注競争を展開し、当初は世界最大のディーゼル潜水艦建造能力を保有する日本の三菱重工業、川崎重工業のコンソーシアムが有力な受注候補となっていた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは27日、
 「事業者の選定過程で最も影響を与えたのは、日本の応札に反対してきた中国だ」
と指摘した。
 中国の王毅外相は今年2月、北京でオーストラリアの外相と会談した際、
 「第2次大戦を記憶し、アジア各国の感情を考慮してもらいたい。
 日本の兵器輸出の野心は平和憲法と一致しない」
と述べた。
 朝日新聞は、オーストラリア政府内に日本を選べば、中国との関係が悪化しかねないとの声があったと伝えた。
 昨年9月に対日関係に積極的だったアボット前首相が退任し、「中国通」として知られるターンブル首相が就任したことで、オーストラリア政府が中国を意識し、日本に事業権を与えなかったとの見方だ。

 オーストラリアの決定で、日本とオーストラリアによる長年の安全保障協力も打撃を受けた。
 日本はオーストラリアとの潜水艦共同開発で米国を含む3カ国の安保協力を強化し、南シナ海などで海洋進出を強める中国をけん制する狙いだったとみられている。


サーチナニュース 2016-04-28 14:07
http://news.searchina.net/id/1608605?page=1

日本は豪潜水艦を受注できず、
豪メディア「中国は喜ぶな」=中国メディア

 オーストラリア(豪州)政府は27日、次期潜水艦の共同開発先にフランスのDCNS社を選んだことを発表した。
  日本は受注の可能性が高いと見られていたが、受注を逃した理由は何なのだろうか。

 中国メディアの観察者はこのほど、ここ2年ほど、豪州の次期潜水艦をめぐる報道で、もっとも受注の可能性が高いとされていたのは日本のそうりゅう型潜水艦であったとし、豪州がフランスのDCNSを選んだのは「多少なりとも驚いた」と伝えている。

 また、中国国内では豪州がそうりゅう型潜水艦を選ばなかったのは、中国との関係を考慮したためとの見方があるが、中国メディアの新浪は豪州メディアが「中国の勝利でも何でもない」とし、「中国はそうりゅう型潜水艦の失注を喜ぶな」と報じたことを伝えている。

 新浪は、日本は豪州の決定に対して「明らかに失望している」と伝える一方、豪州国内では、そうりゅう型潜水艦の導入という日本との取引が「対日関係」や、「日本との貿易協力」に影響ができるのではないかという声があったと紹介。
 さらには日本から潜水艦を購入することで、
  「豪州も日中のエスカレートしつつある関係に巻き込まれるのではないか」
と懸念もあったと伝えた。

 さらに、中国国内では豪州の決定について、「中国の圧力が日本拒絶につながった」と喜ぶ声があるとする一方、豪州メディアが
 「どの国から潜水艦を購入しようと、その意図は実力と自信を高め続ける対中国を視野に入れた長期的な戦略に基づくもの」
と指摘。
 潜水艦は軍事力を高めるものであり、豪州に最先端の潜水艦が導入されることは中国政府にとっては「決して喜ばしいことではないはずだ」と報じたことを伝えている。



ロイター 2016年 04月 28日 20:38 JST
http://jp.reuters.com/article/submarine-australian-navy-idJPKCN0XP1BX?sp=true

焦点:日本敗れ潜水艦「ごうりゅう」幻に、仏勝利の裏側

[東京/パリ/シドニー 28日 ロイター] -
 初の大型武器輸出として日本が目指したオーストラリア向け潜水艦「ごうりゅう」の受注は、幻に終わった。
 首脳同士の絆のもとで日本は勝利を疑わず、途中で変わったゲームの流れについていけなかった。
 勝利したフランスは自分たちが劣勢にあることを認識し、現地の事情に通じた人材を獲得、弱点を地道に克服して勝負をひっくり返した。

■<本格的な国際競争へ>

 2014年11月、フランスのル・ドリアン国防相は初めて豪州を訪れた。豪州の次期潜水艦の受注を獲得しにいくことを決めた仏政府系造船DCNSのトップ、エルベ・ギウ氏に促されての訪豪だった。
 国防相が飛んだのは、首都のキャンベラやシドニーではなく、南西部の都市アルバニー。
 そこは第1次世界大戦中、西部戦線に展開したフランス軍の応援に、豪軍が兵士を送り出した場所だった。

 ル・ドリアン国防相は豪政府の主要閣僚とともに、100年前の悲しい出来事を称えた。
 「国防相はその重要なイベントに参加することを切望した。
 そこで豪州のジョンストン国防相、アボット首相と話す機会を得た」と、同行した仏関係者はいう。
 過去を共有することで、潜水艦の協議に向けた扉が開いたと同筋は振り返る。

 豪政府は当時、自国建造は技術的リスクが高いとして、海軍の要求性能に近い海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦を輸入する方向で日本と話を進めていた。
 日豪は首脳同士の仲が緊密で、中国けん制のために防衛協力を強化したいとの思いも共有しており、日本が受注することは確実とみられていた。
 日本の政府内では、豪州向けのそうりゅうをもじり、「ごうりゅう」プロジェクトと呼ばれていた。

 ちょうどこのころ、豪州では政治の風向きが変わり始めていた。
 自国の造船会社はカヌーを造る能力もない、などと発言したジョンストン国防相が12月に辞任。
 強権的との批判や景気減速などでアボット政権の支持率は低下した。

 日本が受注すると豪州に経済効果がないとの声が高まり、「競争的評価プロセス(CEP)」という名の競争入札に切り替えざるを得なくなった。

 15年2月19日、日本の安倍晋三首相はアボット首相から電話を受けた。
 次期潜水艦建造の支援先を決めるに当たり、日本、ドイツ、フランスを対象にCEPを実施したい──。
 アボット首相はそう告げた。
 20日に発表するという。

 安倍首相は「トニー」、「シンゾウ」と呼び合うアボット首相の苦境を理解し、入札への変更を承諾した。
 武器市場に参入したばかりの日本が、準備のないまま本格的な国際競争に放り込まれた瞬間だった。

■<安保法案への影響を懸念>

 ところが、政府・三菱重工業(7011.T)・川崎重工業(7012.T)で作る日本の官民連合は、独造船ティッセンクルップ・マリン・システムズ、DCNSとの競争になったことの意味を理解していなかった。
 「豪州が本当に欲しいのは日本の潜水艦。
 勝っているのだから、余計なことはしないというムードだった」
と、日本の関係者は振り返る。

 翌3月に豪州で開かれた潜水艦の会議に日本から参加したのは、海上自衛隊の元海将2人。
 豪国防相が出席したにもかかわらず、日本が現役の政府・企業関係者を送らなかったことは、豪国内で驚きを持って受け止められた。
 ティッセンとDCNSは、この場で自社の潜水艦建造能力を大いにアピールした。

 同月には豪政府からCEPへの招待状が届いたが、 日本は5月まで入札への参加を正式決定しなかった。
 大型の武器輸出の入札に手を挙げることで、国会の予算審議、その後に控える安全保障法案の議論に影響が出ることを懸念した。

 建造に必要な部品や素材を供給する現地企業の発掘にも苦戦した。
 豪企業の参画をできるだけ高めるのが入札の条件だったが、武器の禁輸政策を取ってきた日本の防衛産業は同国内に足掛かりがなかった。
 現地企業向けに説明会を開いても、当初は計画を具体的に説明せず、日本は前向きではないとみられるようになった。

 さらに、日本は豪国内で建造しない、最先端の鋼材を使うつもりがないなどの現地報道が相次いだ。
 「独が情報戦を仕掛けてきた。
 日本の欠点を徹底的に叩いてきた」
と、別の日本の関係者はいう。

  同年9月には、安倍首相の盟友だったアボット首相が退陣。
 ライバルのターンブル首相が就任し、入札は完全な自由競争となった。
 「日本は受注確実の取引に招待されていたのに、気が付けば経験のないまま国際入札になっていた」
と、豪防衛産業の関係者は指摘する。
 「ポールポジションから、窮地に立たされることになった」と、同筋は話す。

■<連絡あれば日本を支援した>

 どの国の案にも弱点はあった。
 2000トンの既存艦を2倍の大きさにする提案をしたティッセンは、技術的なリスクが大きかった。
 日本のそうりゅうは静粛性には優れているが、リチウムイオン電池による航続距離が疑問視された。
 DCNSは5000トンの原子力潜水艦の動力をディーゼルに変更するという誰も手掛けたことのない提案をしていた。

 仏にとって重要な節目は、15年4月にショーン・コステロ氏を現地法人のトップに据えたことだった。
 辞任したジョンストン豪国防相の側近で、豪海軍で潜水艦に乗っていた。
 豪政府系の造船会社ASCの幹部だったこともある。
 受注に向けて現地のチームを率いるには適任だった。

 もし日本がコステロ氏に声をかけていれば、彼は日本の支援に応じていただろうと、同氏をよく知る関係者は言う。
 「しかし、日本は電話をかけてこなかった」と、同関係者は話す。

 DCNSの現地チームは、受注獲得に必要な課題をすべて洗い出した。
 最大の懸案は、豪潜水艦に武器システムを供給する米国企業が、仏との協業を敬遠しているとの噂があることだった。

 しかし、システムの入札に参加しているロッキードとレイセオンとの協議で、これも解決した。
 そして今年3月、仏はダメ押しとして政府・財界の一団が大挙して訪豪し、DCNS案を採用した場合の経済的なメリットを訴えた。

■<日本の巻き返し>

 日本も昨年夏、経済産業省から防衛省に送られた石川正樹審議官がチームを率いるようになってから、巻き返しを図った。
 1隻目から豪州で建造する具体案をまとめ、現地に研修所を作って技術者を育成することを10月に発表した。

 資源価格の低迷に苦しむ豪経済の浮揚につながる産業支援策を準備し、現地にリチウムイオン電池工場を建てることも検討した。
 そして最終局面の今年4月、三菱重工がようやく現地法人を設立、海上自衛隊が豪軍との共同訓練にそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」を派遣した。

 しかし、はくりゅうがシドニー港を離れた4月26日、ターンブル首相はDCNSに発注することを発表した。
 ル・ドリアン仏国防相が自国の勝利を知ったのは、前日の25日。
 14年11月のアルバニーへの訪問を思い出しながら、仏で戦没した豪軍兵士の追悼式に参加していた。

 「仏の動きには注意を払っていなかった」と、日本の関係者は言う。
 「日独が情報戦で互いを叩き合っている間に、仏はうまく浮上した。
 地道に根回しをし、冷静だったと思う」──。

(久保信博、ティム・ケリー、シリル・アルトメイヤ、コリン・パッカム 編集:田巻一彦、リンカーン・フィースト)


時事通信 4月29日(金)17時20分配信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042900409&g=int

巨大牧場売却に「待った」
=中国の影響拡大懸念―豪

 【シドニー時事】
 オーストラリアのモリソン財務相は29日、中国企業による豪国内の巨大牧場買収を承認しないとの仮決定を下した。

 牧場は国土の1%超を占め、広大な土地が中国の影響下に入るのは「国益に反する」と強調した。
 外資誘致を重視する豪政府が外国投資案件を拒否するのは異例だ。

 S・キッドマン社が売り出した牧場の総面積は10万平方キロと、韓国の国土に匹敵。
 中国の上海鵬欣集団の傘下企業などが3億7070万豪ドル(約310億円)で落札した。

 兵器試験場に近い牧場を対象から除外するなど配慮したが、安全保障上の懸念を拭えなかった。
 国内には、買収後の軍事利用や、牛肉を全て中国に出荷することへの警戒論がある。

 ターンブル政権では「親中」ととれる政策が続いていたが、今回は厳しい態度で臨んだ。
 次期潜水艦建造計画では今週、仏企業を選定し、本命視された日本は受注を逃した。
 「日本製採用に反対する(最大貿易相手の)中国に配慮した」
と分析する専門家もいる。 


新潮社 フォーサイト 5月3日(火)21時39分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160503-00010000-fsight-pol

豪潜水艦受注競争「敗北」の本質

 日本、フランス、ドイツが競い合ったオーストラリアの次期潜水艦受注競争が一応の決着を見た。
 ターンブル豪首相は4月26日、「2030年代以降に導入する潜水艦はフランスと共同で開発する」と発表したのである。
 当初圧倒的に有利と言われていた受注競争に、日本はなぜ負けたのか。
 これまでの経緯をたどりながら分析を試みたい。

■必要に迫られた豪州の次期潜水艦

 発端は、豪州海軍のコリンズ級潜水艦の更新計画だった。
 コリンズ級は水中排水量3300トンの通常動力型潜水艦で、スウェーデンのコックムス社が設計。
 オーストラリアの国営造船会社(ASC)で建造され、1996年から現在まで6隻が就役している。
 だが、この潜水艦は優れたものではなかった。
 水中での騒音がひどく、特に船体構造と足回り(ディーゼル発電機や推進装置等)が弱かった。
 豪海軍は2000年代後半から、中国の積極的な海洋進出による南シナ海を含めたアジア海域の緊張の高まりも鑑み、後継潜水艦についての検討に入る。
 結局、遠距離での作戦行動も可能な4000トン級の通常動力型潜水艦12隻を導入することを決めた。
 当初は、通常動力型で輸出実績のあるドイツやスペインの潜水艦が調査対象だったとされるが、2011年、日本が武器輸出3原則を緩和したことで風向きが変わった。
 海上自衛隊が2009年から運用を開始している最新鋭潜水艦・そうりゅう型もその対象として急浮上することになったのだ。

■浮上した“そうりゅう型”

 ドイツやスペインの潜水艦の排水量は2000トン前後だから、4000トンの潜水艦を造るには、大型化に伴う新たな建造技術が必要となる。
 簡単そうに見えるがこれが実際にはなかなか困難で、コリンズ級の失敗もそれが原因といわれている。
 一方そうりゅう型は水中排水量4200トン、通常動力型潜水艦として世界最高の性能を持つとされ、豪海軍の要求にはうってつけだった。

 そこに、武器輸出3原則の緩和である。
 オーストラリアはそうりゅう型の「技術」に大きな関心を寄せるようになった。
 2014年になって、追い風はさらに強まった。
 まずは4月、従来の「武器輸出3原則」に代わり、「防衛装備移転3原則」が新たな政府の方針として制定された。
 これによって武器・装備品の輸出や国際共同開発が、基本的に可能になったのである。
 続く7月に行われた安倍首相とアボット豪首相(当時)の会談後、両首脳は「日豪防衛装備品・技術移転協定」に署名した。
 これは防衛装備品・技術の共同研究、開発及び製造を通じて日豪間のより深化した協力を容易にするというものだ。
 この頃から「技術協力」という話が、「そうりゅう型輸出」という話に変わっていく。

 豪軍は米軍との相互運用性が非常に高いこともあり、
 コンピューターや武器管制システム、ソナーなど頭脳にあたる部分は米国製、
 船体と足回りは日本製、
 運用は豪海軍
という、日米豪が共同して建造する潜水艦の誕生が検討され始めたのである。
 当時の日本側としては「豪州が日本に依頼した案件」との認識だった。
 オーストラリアに輸出されることになるであろうそうりゅう型潜水艦を「ごうりゅう(豪龍)」と呼称する日本側関係者も散見されたほどだった。

■痛かったアボット退陣

 だが、この日本にとって追い風かつ「受け身」でよかった話は長くは続かなかった。
 まずはオーストラリアの製造業の不振だ。
 自動車メーカーの撤退が相次ぎ製造業が急速に縮小する中、「潜水艦までも“完成品”を輸入するという事態になれば、雇用不安はますます増大する」との声が国内で上がりだした。
 潜水艦建造なら、評判が悪いとはいえ、「建造実績を持つASCがあるではないか」と。

 アボット首相は“完成品”の輸入については地元経済の影響よりも軍事的な観点から判断するとしていたが、結局2015年2月、
 「調達先は日本、ドイツ、フランスの中から選ぶ」
 「建造や保守管理にはオーストラリアの企業が最大限加わり、地元の雇用を維持する」
と言明せざるを得なくなってしまった。
 そして、同年9月のアボット首相退陣である。
 代わって登場したターンブル首相は、雇用問題を重視したといわれる。
 日本のライバルとなったフランスとドイツはここにつけ込み、「潜水艦はオーストラリア国内で建造する」を標榜して積極的な売り込みを展開したのだった。

■体制作りが後手に回った日本

 これらの状況変化に対して、日本は後手に回ってしまったと言わざるを得ない。
 当初の“完成品”を豪州に輸出するとされていた時期も、実際には種々の問題が整理されていなかった。
 例えば日本の潜水艦は造船会社2社で建造されているが、仮に他国用の潜水艦を造るとなると、海自潜水艦以外の生産ラインが必要となる。
 会社としては、「この新たな設備投資は本当にペイするのか」となる。
 その後のロジスティックサポートも含め、当初から官民間の微妙な距離感が存在したのだ。

 さらに、オーストラリア側のニーズが変わり“売り込み競争”に状況が変化したことへの対応だ。
 そもそも日本以外の先進国においては、武器輸出は国家の安全保障政策のみならず経済政策の一部としても位置付けられている。
 フランスやドイツも、それぞれ年間19億ドル、12億ドル(2014年資料)の武器輸出額を誇っており、“売り込み競争”への参加は、ある意味得意分野といえるのだ。
 それに比べて日本の防衛省に装備品の開発や管理を一元化するための機関である防衛装備庁が発足したのは2015年10月のこと。
 実際に官民一体となった“売り込み競争”に臨む体制が作られたのは、昨年秋だったのである。
 オーストラリアから見ると、この段階で勝負あった、のかもしれない。

■トップクラスの技術をどう守る

 潜水艦の優秀さを表す特徴としてよく知られるのは静粛性である。
 そこに関わる重要ポイントの1つは頑丈なボディ、船体構造だ。

 潜水艦は潜航して高速航行するため、水圧がかかる船体の内殻(耐圧殻)と呼ばれる部分は円筒形で、その断面は真円でなければならない。
 また深度変化による縮小・膨張の繰り返しに堪える材質・構造が必要だ。
 硬いが柔らかい特殊鋼を真円に曲げて溶接するという極めて高度な技術だ
 日本の建造会社2社は、世界でもトップクラスの技術を誇っており、しかもその技術は特許法で厳しく管理された、いわば“秘中の秘”なのだ。

 完成品の輸出の場合、これらの技術をブラックボックスにすれば、外国企業に移転する必要はない。
 しかし現地生産となった場合、どこまでこれを保全できるのかという懸念が生ずる。
 今回この点をフランスはどうするか。
 日本同様、こうした技術は秘密であり、技術流出を防止しつつ現地生産を行うということならば、場合によってはスペックダウンした技術を使うことも考えられるのだ。

 “売り込み競争”に参加するためには、こういった法的側面も含め、総合的・戦略的にあらゆる対応を考える必要がある。
 例えば、防衛装備庁に他省庁、民間企業及び防衛省・自衛隊OBなどの知見を持った人材を集め、「防衛装備品・技術移転専門組織」を作ることも一考の価値があるのではないか。

■安全保障協力体制に影響なし

 今回の日本の敗北について、一部からは
 「日米豪の安全保障面での連携強化につながるという点での、豪側の優先順位が低かった」
 「航行の自由を守る南シナ海戦略にとって誤算」
といった見方がある。
 確かにターンブル首相がきわめて中国寄りなのは知られた話だし、オーストラリア自体も貿易面では中国に大きく依存しているため、日本との共同開発を望まなかったという側面はあるだろう。

 しかし、「日米豪の安全保障面での連携強化よりも中国を選択した」と考えるのは早計であろう。
 今回の選択は、ターンブル政権にとっての優先順位において、国際政治よりも雇用問題等の国内政治が上位にあったということだろう。
 南シナ海戦略にしても同様だ。
 いくらターンブル首相が経済政策で中国を向いているとしても、豪軍と米軍との関係は日本人が想像している以上に強固である。
 特に運用面における両海軍の関係は極めて緊密だ。
 それは日本の海上自衛隊も同様であり、3カ国の安全保障協力体制はいささかも揺らいでいないと言って良い。
 今回も筆者が知る限り、米海軍はその性能からそうりゅう型を推していたし、豪海軍もそうだった。
 現場が本当に納得した上で今回の決定が行われたかどうかは、疑問が残るところだ。

■再浮上の可能性も

 本稿の冒頭で、オーストラリアの次期潜水艦受注競争は「一応の決着を見た」と述べた。
 というのも、これが完全決着ではないかもしれないからだ。
 フランスは、今回豪海軍が要望する4000トン級通常動力型潜水艦の建造経験がない。
 同じトン数となると原子力潜水艦しかないのだ。
 今回の提案も5000トンのバラクーダ級原子力潜水艦の原子炉をディーゼル発電機に変えるものだという。
 しかし大型通常型潜水艦には出力の大きいディーゼル発電機と、原子力潜水艦には必要のない大量の蓄電池が必要だ。果たしてフランスにそれが作れるのだろうか。
 片や日本はそうりゅう型に見られるように、4000トン級潜水艦を航行させるディーゼル発電機と世界初の大型リチウムイオン電池を保有している。
 今後の進展次第では、これらの日本の技術を購入したいという話が出てくる可能性もあるかもしれない。
 いずれにしても、今回の経験をしっかりレビューし、今後も続くであろう「防衛装備品・技術移転」に対応できるオールジャパンの組織作りが急務である。

元海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授、キヤノングローバル戦略研究所客員研究員 伊藤俊幸


サーチナニュース 2016-05-09 19:58
http://biz.searchina.net/id/1609298?page=1

日本の潜水艦が豪州に選ばれなかったのは「技術不足だ」=中国報道

 オーストラリアの次期潜水艦の共同開発事業において、日本は「そうりゅう型」潜水艦をもとにした開発計画を提案した。
 前評判では日本の提案が受注の確率が高いとされていたが、実際に蓋を開けてみると受注したのはフランスだった。

 中国メディアの人民網はこのほど、オーストラリア向け潜水艦の受注を日本が獲得できなかった理由について、
★.ドイツやフランスに比べて日本の技術が劣っていたこと、
また副次的な理由として
★.オーストラリアの決定に米国の影響力が及ばなかった点
を指摘している。

 性能の高さを売りにしていた日本の「そうりゅう」は、ドイツTKMSの「216型」潜水艦及びフランスDCNSの「シュフラン級」との比較にさらされ、「地金が出た」と記事は表現。
 地金が出たとはつまり、性能が見劣りすることが明らかになったという主張だ。

 続けて、日本が受注成功を信じていた重要な理由の1つは、米国の後押しにあると指摘。
 しかしオーストラリアは「大国の軍事戦略の駒あるいは政治の犠牲品に決してなりたくなかった」と主張。
 日米豪の三国同盟に反対する世論もあり、米国によりかかった日本の潜水艦セールスはその目論みが外れたと論じた。

 こうした記事の見解には、日本は大した性能もない潜水艦を優秀であると誇張しつつ、ただ米国の力に頼ってオーストラリアに売り込もうとしていたというニュアンスが含まれており、こうした姿勢が今回の失注の原因になったという見方が示されている。

 周知の事実だが
★.ドイツの「216型」とフランスの「バラクーダ型」は未完成の潜水艦であり、
 これまで製造した経験のないスペックが採用
されているためどちらにも技術的な課題が存在する。
★.ドイツとフランスの潜水艦のカタログスペックが例えどれほど優れていたとしても、
 運用経験のある「そうりゅう」を未完成の潜水艦が信頼性の点で超えることは不可能だ。
 従って技術的な面で「地金が出た」とする記事の指摘はかなり乱暴だといえる。

 しかし、オーストラリアの次期潜水艦プロジェクトには巨額の予算が関係しており、ある資料もオーストラリアの国防戦略における潜水艦の役割は非常に大きいと分析している。
 もちろん今回のオーストラリアの決定には政治的な要因も関係しているが、性能面も十分に考慮されたに違いない。
 オーストラリアの次期潜水艦にどんなスペックが必要であったかについてオーストラリアに説明を求めるなら、今後のセールスに役立つ情報となるだろう。


NNA  5月9日(月)8時30分配信 NNA豪州編集長・西原哲
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160509-00000009-nna-asia

オーストラリア  潜水艦と政治力

 「日本は今後50年間にわたり、穀物と牛肉をオーストラリアだけから調達する『暗黙の合意』をしていた。
 合計数兆円に上る大型契約だ。
 しかし、自民党総裁選で安倍首相が退陣すると、入札で調達先を決めざるを得なくなった。
 そしてわずか半年後、日本は受注を当然視していたオーストラリアを袖にし、強力なロビー活動を展開させた米国に発注した」――。
 今回の潜水艦入札は、立場を変えるとこんな風になるだろう。

 この場合、オーストラリアの政府やメディアは、日本に対して政治的にどう反応するだろうか。
 潜水艦入札で日本敗北が伝えられたのは、4月20日のリーク報道だった。
 くしくも海上自衛隊の潜水艦「はくりゅう」がシドニーに停泊していたこともあり、当時はまだ、日本側関係者の多くが受注を疑っていなかっただけに衝撃が広がった。
 ターンブル首相がフランスへの発注を正式に発表したのは26日昼。
 はくりゅうはその数時間前にシドニーを発って日本に向かっていた。
 まるではくりゅうが帰るのを待っていたか、追い出されたかのような非常にバツの悪いタイミングで、日本の潜水艦の威厳もメンツもつぶされた形になった。

 振り返ると、日本側がアピールで重きを置いていたのは、「世界最高水準の性能」は言うに及ばず、「米国をバックにした日豪の安全保障協力」と、「受注後に訪れる日本企業の投資」だ。
 性能は各国共にアピールしたが、後者の2点は日本の優位が突出しているものと思われた。
 
 ■重要人物がトップに
 
 ところで、オーストラリアとフランスは近年、良好な関係を保ってきたわけではない。
 フランスが南太平洋で核実験を実施してきたことで、90年代にかけて両国の外交関係は劇的に悪化した時期がある。

 96年に核実験を再開した時には、フランスに対する激しい抗議活動が全国に広がったほどだ。
 そんな過去を持つフランスが潜水艦を受注したのは、先の2つの優位性が覆されるほど、フランスの外交力と政治力がものをいったと感じている。
 日本が一番苦手とする部分である。

 中でも、フランスの勝利に最も貢献したと言われるのは、フランス政府系造船会社DCNSが15年4月に、豪保守政権でジョンストン元防衛相の主任補佐官を務めたショーン・コステロ氏を、豪現法のトップに起用したことである。
 コステロ氏は、豪政府系造船会社オーストラリアン・サブマリン・コーポレーション(ASC)の幹部を務めた経験もあり、旧式のコリンズ型潜水艦を新調するよう声高に提言した、潜水艦の第一人者である。
 コステロ氏の周辺によると、もしもこの時日本が先に声をかけていたら、コステロ氏は日本のために働いていたはずだという。
 だが日本はその当時、アボット首相と安倍首相の昵懇の間柄から酒宴の気分でおり、豪防衛省に影響力のある有力者を前面に立てようなどという戦略も危機感もなかっただろう。
 日仏独3カ国の入札実施が決まると、コステロ氏のチームは直ちに受注実現のために果たす12項目を提げる。
 最も重要だったのが、米有力議員に働きかけることと同時に、潜水艦に搭載する戦闘システムを製造する米軍事メーカー、ロッキードとレイセオンの2社に接触し、フランスの潜水艦への支持を取り付けることだった。
 最大のライバルと見ていた日本には、ターンブル首相が日本を訪問した日を見計らい、中国を刺激するリスクや日本の潜水艦技術批判を堂々とメディアで公開する「ルール違反」も平然とやってのけた。
 そして最後の総仕上げは、フランス政府高官と大規模経済団を引き連れて、発表1カ月前にアデレードを訪問することだった。
 日本が圧倒的に優位とされた「米国のバック」や「受注後の投資」は、日本が全く気付かぬうちに、日本だけのものではなくなっていた。
 
 ■仏優位の出来レース?
 
 コステロ氏の影響力はそれだけではない。
 最もフランス勝利を決定づけたとみられるのは、コステロ氏がかねてから、太平洋を広範囲に潜航する必要上、原子力潜水艦が必要だと主張していたことである。
 原潜は酸素を必要としないために長期間の連続潜航が可能で、海面浮上せず一気に中国にまで到達できるためだ。
 今回の入札では、ディーゼルエンジンでの最新型潜水艦が基準だった。
 だが新型潜水艦が計画通りディーゼルのままであっても、最初の一隻が進水するのが2035年、
 12隻目はほとんど2060年になるとみられている。
 半世紀近い期間がある以上、ターンブル政権は最初から原潜の可能性を考慮していたことが、メディアに暴露されているのだ。
 つまり、3カ国による入札が決まった時点で、原潜を唯一持つフランスが有利な出来レースになる可能性が高かったということである。
 
 ■傷ついた外交的威厳
 
 最後までオーストラリアを信じた日本は、外交的威厳が傷ついたのは否定しようがない。
 それでも日本は「日豪関係の重要性は変わらない」と、物分かりのいい姿勢を見せている。
 だが、今回の決定プロセスが極めて政治的なものであった以上、今後日本も、威厳回復や実利を求めて、オーストラリアに対して水面下で政治的に動いてもよさそうなものだと感じている。


NNA 5月31日(火)8時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160531-00000009-nna-asia

豪次期潜水艦、決め手は静粛性だった?

 オーストラリア連邦政府が次期潜水艦の共同開発相手として、日本やドイツを選ばなかった理由は、フランスが提案する潜水艦の方が静粛性が高いと見られたため――。
 30日付全国紙オーストラリアンによると、オーストラリアの代表が今月、日本とドイツを訪問し、そのような説明を行ったという。
 特に、ドイツに対しては「特定の周波数で受容しがたい水準の騒音を伴う」と伝えたとされる。
 ドイツ側はオーストラリアの説明に納得していないようだ。

 ドイツ側は「どの場所から過剰な騒音が発生すると考えたか」と質問したが、オーストラリアの代表は回答しなかったという。
 関係者は
 「ドイツはオーストラリア側から事前に問題をより明確に指摘されていれば、入札前に容易に解決できた可能性があった」
と話した。
 一方、フランス政府系造船会社DCNSは日本やドイツ案との静粛性の比較や同社のポンプジェット推進器を強調していた。
 また、DCNSは日本やドイツのリチウムイオン電池採用案の危険性を警告しており、これも決定を左右したという。
 さらに、ドイツの造船企業ティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)は、これまで2,000トンの潜水艦しか建造実績がないことや、コスト見積もりが楽観的すぎたことも影響したとされる。
 
 ■潜水艦契約の締結はまだ
 
 29日付オーストラリアンによると、
 DCNSはオーストラリアの次期潜水艦に関する契約を依然として締結していない
ようだ。
 6月末日までに包括契約の交渉完了を目指している。
 南オーストラリア州政府は、アデレードで12隻すべてが建造される確定を待ち望んでいるとされる。




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