2016年3月31日木曜日

習近平は中国共産党「最後の指導者」になるのか(2):習主席辞任求める手紙めぐり、党員の直接選挙を経ない党中央を承認しない

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BBCニュース 2016年03月25日 ジョン・サドワース北京特派員
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35898266

中国、20人拘束と 習主席辞任求める手紙めぐり
中国メディアは失踪を伝えていない

 中国のウエブサイトが習近平国家主席の辞任を求める匿名の手紙を掲載したことに関連して、
 中国当局がこれまでに20人を拘束したことがBBCの取材で分かった。
 辞任要求は3月4日、政府系のニュースサイト「無界新聞」に掲載された。
 当局がただちに削除したが、キャッシュされたものがまだオンラインに残っている。
 手紙の内容は他のほとんどの国ではありふれた政治論争の域を出ない。
 「親愛なる習近平同志、我々は忠実な共産党員だ」
と始まる手紙はすぐに、
  「あなたに党と国家指導者としてのすべての職を辞任してもらうよう、この書簡を記す」
と続ける。
  しかし中国ではもちろん、特に政府系のサイトとなればなおさら、
 このような物言いは前例がなく、当局はすでに厳しく対応する兆しを見せている。

■「全権を掌握」

 著名コラムニストの賈葭氏は、この書簡に関係していると広く伝えられている。
 賈葭氏の友人たちは、手紙をネット上で目にした賈葭氏は「無界新聞」の編集長に電話で問い合わせただけだと話す。

 しかしBBCが匿名を条件に「無界新聞」スタッフに取材したところ、ほかにサイト関係者16人が「連れ去られた」という。
 消息筋によると、16人の内訳は、サイトのマネージャーと編集幹部を含むサイトのスタッフ6人と、関連技術企業の10人。
 加えて、米国在住の著名な中国反政府活動家、ウェン・ユンチャオ氏は、広東省に住む自分の家族3人が、辞任要求書簡の関係で拘束されたと話している。
 ウェン氏は自分に情報を提供させようとする当局が、両親ときょうだいを拘束したが、自分は何も知らないとBBCに話した。

■沈黙するマスコミ

 辞任要求の手紙は、習主席が一手に「全権を掌握」していると怒り、経済政策や外国政策で大誤算を重ねていると批判。
 さらに主席が、言論の自由に対する規制を強めることで「国を委縮」させていると攻撃している。
 言論の自由規制批判は特に、習主席が2月に国営テレビや新聞のオフィスを鳴り物入りで訪問し、記者としての仕事は何よりも共産党に従うことだと訓示したのを念頭においている。

 この書簡はまず最初に、
 中国共産党の検閲から遠く離れた中国外の中国語サイトに掲載
された。
 最大の疑問は、それがいったいどうやって政府系の「無界新聞」に転載されたのかだ。
 中国の編集者が正気のままこのような文書を確信犯的に掲載するとは、とても考えにくい。
 そのため、一部の中国人記者たちは内々に、
 「無界新聞」がハッキングされたか、
 あるいは「無界新聞」が何かの自動記事転載ソフトを使っていたのではないか
と推測している。
 技術協力会社のスタッフが10人拘束されたのも、この推測と結びつく。
問題の手紙が削除されてからしばらく、「無界新聞」サイトは閲覧できなかったが、今では再開している。

 「無界新聞」スタッフによると、残る記者たちは独自記事の執筆を中止。
 サイトは新華社や人民日報の記事を掲載して続いている。
 「無界新聞」はSEECメディア(「財経」誌も発行)と中国電子商取引最大手アリババ、新疆ウイグル自治区の行政府が共同所有する。
 手紙が本物かどうか疑いは残るが、外国メディアの注目は集めた。
 そして予想通り、中国国内では一切報道されていない。

 習主席のマスコミ政策については、いくつか表立った批判がされており、これもその一環ではないかという意見もある。
 ソーシャルメディアの「微博(ウェイボー)」で大勢のフォロワーがいる中国の不動産王、任志強氏は、自身のアカウントで習主席のマスコミ各社訪問を激しく批判。
 主席が国民の利益よりも党の都合を優先させていると示唆した。
 しかしそのアカウントはまもなく削除され、共産党系メディアからは「おぞましい影響を発している」と非難された。
 北京大学法学院の張千帆教授は、一連の動きは過去の不穏な時代を連想させると懸念する。
 「文化大革命で毛沢東が知識人や政敵に駆使した方法をいくつか使い、
 時代を逆行させようとする動きが常にある」
と張教授は言う。
  しかし今は当時と異なり、こうした抑圧に対抗する手段をもつ人の数が増えているとも教授は指摘する。
 「人をむりやり黙らせるのは、
 インターネットが発達するほどずっと難しくなる」

■マスコミの綱引き

 政府の言論統制に対抗した最近の事例としてはもうひとつ、比較的リベラルな「財新」誌の例がある。


●検閲を取り上げた3月7日付の「財新」記事はそれ自体が検閲されたが、キャッシュを読むことができるImage copyrightGoogle Cache / Caixin
記事が検閲されたと伝える3月7日付の「財新」記事はそれ自体が検閲されたが、キャッシュを読むことができる

 毎年恒例の全人代がものものしく開会した3月初め、「財新」は自社記事をサイトから削除するという政府判断に公然と反抗し、口にテープを張られた写真と共に論説を掲載した。
 中国の古い毛沢東的政策と、リベラルな改革推進を支持する人たちとの綱引きはもう長いこと続いている。
 あまり表だって目立つことはないが、時にはこうして公然と行われる。
 とはいえ、国家主席の辞任を声高に要求するなど、誰にとっても異例中の異例だ。
 中国当局は紛れもなく、書簡の真相を探るためにあらゆる手を尽くすだろうし、拘束される人数は増えるかもしれない。
 しかしその真相が外国にまで伝わることはないのかもしれない。
 書簡が本物だろうと偽物だろうと、確かなことがある。
 習近平主席が規制を強める一方で、それに反対する声は規制を潜り抜ける方法を見つけ出している。

(英語記事 China 'detains 20 over Xi resignation letter')



ニューズウィーク 2016年3月30日(水)16時00分 ルーシー・ウェストコット
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4792.php

中国有力紙の編集者が抗議の辞任、
痛烈な辞職届をネットに公開
メディア規制が強化される中、
「南方都市報」編集者が挑戦的な辞職届をネットに公開

 中国の有力紙の編集者が中国共産党のメディア規制に反発して辞職した。
 29日、広東省にある「南方都市報」の文化面編集者である余少鐳(ユィ・シャオレイ)が、マイクロブログの新浪微博(シンランウェイボー)に自らの辞職届を撮影して投稿。



 辞職の理由欄には「あなたたちの姓は名乗れない」と書かれていた。
 これは2月に習近平(シー・チンピン)国家主席が、
 中国メディアの「姓は"党"である
と言ったことを指している。
 すなわち、親である共産党に忠誠を尽くし、その意向に従えという意味だ。

 余少鐳の投稿は2時間ほどで消去されたが、BBCがそのウェブ魚拓(キャッシュとして保存されたもの)にリンクを張っている。
 BBCによると、余は投稿の中で
 「私も年をとった。
 長年(党に)跪いてきたが、これ以上は膝が持たない」
と書いていた。

【参考記事】党を批判したとして編集担当者を解雇――中国「南方都市報」

 余の投稿には微博の検閲に関する言及もあった。
 「私の微博を監視し、どの投稿を消すかを上司に報告している人へ。
 もう安心していい。
 この数年、心労をかけてしまっていたのなら申し訳ない。
 あなたの新しい仕事がうまくいきますように」

■神経をとがらせる当局

 広州の地方紙である「南方都市報」は、南方日報グループの発行。
 共産党に許容され得るギリギリのラインを見極めながら報道を続けてきた同グループは、中国で「有数の挑戦的な媒体をいくつも抱えている」とニューヨーク・タイムズは評している。
 アジャンス・フランス・プレスによれば、余少鐳はこの新聞で16年勤務してきた。

【参考記事】公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?――中国のコラムニスト

 中国ではこのところ、当局が神経をとがらせ、メディア規制を強化している。
 3月上旬、全人代(全国人民代表大会)の前日に、
 「習近平は辞職せよ」と勧告する謎の書簡が「無界新聞」に掲載された。
 無界新聞は新疆ウイグル自治区主管のニュースサイトだ。
 この書簡を誰が書いたかはわかっていないが、「忠実な共産党員」と署名し、
 習を独裁者と呼んで、経済運営の失敗を批判
していた。
 この件で20人以上が逮捕され、その家族も身柄を拘束されている。

 米NPOのジャーナリスト保護委員会によれば、中国では49人のジャーナリストが投獄されており、昨年は世界最多だった。
 また、キューバや北朝鮮、イランと並んで、ジャーナリスト保護委員会の選ぶ「最も検閲が厳しい国10カ国」にもランクインしている(8位)。

 27日には、ドイツ在住の中国人ジャーナリスト、長平が自身の弟2人と妹1人が四川省で身柄を拘束されたことを発表した。
 ジャーナリストの逮捕と家族の拘束は、今年も続いている。



時事通信 4月1日(金)7時23分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160401-00000037-jij-cn

中国、批判文章発表に圧力
=海外民主派の国内家族連行
―習氏辞任要求書簡で危機感か

 【北京時事】
 中国の習近平国家主席に辞任を要求する公開書簡が国内のニュースサイトに掲載された問題で、
 共産党・政府が海外に居住する中国人民主派知識人の中国国内の家族に圧力を強めている。

 この手法は、家族を通じて海外の知識人を黙らせようとする「連座」方式。
 四川省の家族が一時拘束されたドイツ在住の著名ジャーナリスト長平氏は電話取材に
 「彼ら(党・政府)の目的ははっきりしている。
 私に中国批判の文章を発表させないことだ」
と語った。

 家族が圧力を加えられたのは、長氏のほか、米国在住の社会活動家、温雲超氏。
 長氏の場合、村の伝統的な焼香儀式で森林火災を起こしたとして、27日に父親や弟らが拘束されたが、29日に保釈処分となった。
 広東省に住む温氏の両親と弟は22日に連行され、30日に釈放された。

 中国当局は、温氏らが公開書簡の発信などに関わった可能性があるとみて調査したが、両氏は関与を否定した。
 この問題では、著名コラムニスト賈葭氏が11日間拘束され、書簡を掲載した政府系ニュースサイト「無界新聞」関係者ら十数人が調査を受けている。
 長氏は賈氏の拘束を受けて、独メディアに論評を発表していた。

 温氏は電話取材に対し、公開書簡に対する党・政府の反応について
 「習近平が自身の権力と統治に対して危機感を持っている表れだろう」
と解説した。

 長氏は30日に声明を発表。
 「(家族の)連行や脅しがあっても私は屈せず、交渉や取引はしない」
と表明した。
 また「
 時事評論執筆は私の職業であり、表現する権利がある。
 私の言論の自由を実践し、中国人を含む人類社会の独立した思想の権利を提唱し続ける」
と訴えた。

 一方、29日には「171人の中国共産党員」を差出人として習主席に辞任を要求した新たな公開書簡が米国の中国語サイトに掲載された。
 書簡は
 「われわれは8000万人の党員の直接選挙を経ない党中央を承認しない」
と主張している。 


AFP=時事 4月1日(金)21時22分配信

中国国営通信、
エープリルフール「笑いごとではない」

【AFP=時事】
 中国国営の新華社(Xinhua)通信は1日、「エープリルフール」は笑いごとではないと述べ、春到来の時期の欧米の伝統を非難した。

 新華社通信はマイクロブログ「新浪微博(Sina Weibo)」への投稿で、
 「本日は欧米で言うところの『エープリルフール』だ」
と述べ、そのような日は
 「わが国の文化的伝統にそぐわないし、社会主義の中核的価値観とも合わない」
と続けた。

 「うわさを信じるな、うわさを作るな、うわさを広めるな」
と新華社は述べ、投稿をスマイルマークで締めくくった。
 うわさを作ったり広めたりすることは中国では違法行為だ。

 新華社の投稿に対し、中国のインターネットユーザーたちは嘲笑で応じ、
 中国では毎日がエープリルフールだ
と遠まわしに言った。

 新浪微博のあるユーザーは
 「あなたは毎日うそをついている。
 政府の政策やデータを使って、あらゆる方法で人々をだましている。
 何が上で、何が下か?
 何が間違いで、何が正しいのか?
 われわれはあなたをよく分かっている」
と述べた。
 【翻訳編集】 AFPBB News

サーチナニュース 2016-04-01 19:37

中国で最もウケた「エイプリルフールネタ」との声も 
国営メディアが「渾身の一発」!?

 4月1日はエイプリルフールと呼ばれ、この日だけは嘘をついても許されるとの風習がある。
 フランスから始まったとの説もあるが、起源は諸説ある。
  エイプリルフールの風習は日本でも理解が進んでおり、一部企業などはこの日のためだけに特設サイトを作り、ユーザーは「嘘」を楽しむなんてことも珍しくない。

  同風習は中国にも伝わっている。
 「愚人節」と呼び一部の若者には受け入れられ、お祭りのように楽しんでいるという。
  一方で中国国営メディアの新華社は中国版ツイッター・微博(ウェイボー)の公式アカウントで1日、
 「愚人節はわが国の伝統文化にそぐわず、社会主義の核心的な価値観にも合わない。
 みなさんは嘘をつかないようにお願いします。」
とのコメントを投稿した。

 新華社の同投稿は様々な媒体やユーザーにウェイボー上で共有されて拡散した。
 中国メディアの頭条新聞も公式アカウントで
 「あなたは今日誰かに騙されましたか?」
と添えて紹介、同投稿にはコメントが殺到した。
 その多くは国営メディアに対する“反論”だった。

 最も「いいね」を集めたコメントはこう述べている。
 「共産党メディアは毎日がエイプリルフールで、
 我々は4月1日のみ遊んでいるだけだ。
 社会主義の核心的な価値観に最も合わないのは一体誰なんだろうか。
 これからはこんな間抜けな文章は書かないように。」
 そのほかにも
 「中国の人々を67年間騙しがって」、
 「『社会主義の核心的な価値観』っていうのがエイプリルフールで一番笑えたジョークだ」
などのコメントが寄せられ「いいね」を集めた。

 これら一連のコメントからは中国の多くのネットユーザーが情報統制されている現状を理解し批判的にとらえていることが分かる。
 そんな彼らにとって国営メディアのコメントは現状に文句をいう格好の材料だったにちがいない。

 しかし一方でこんな恰好な材料を中国国営メディアが発信するだろうかとの疑念も残る。
 もしこれが国営メディアの「エイプリルフールのネタ」であるとするならば、
 そこらの特設サイトでは敵わないほど体を張った“渾身の一発”だった
と言っても過言ではない。


CNN.co.jp 4月2日(土)16時22分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160402-35080583-cnn-int

「エープリルフール」は中国文化に背反、国営通信社

 ニューヨーク(CNNMoney) 中国国営の新華社通信は1日、
 「エープリルフール」は中国の信仰体系にはなじまない慣習
になっていると主張する論評を伝えた。
 中国版ツイッター「微博」に掲載した。

 同通信はこの中で
 「1日は西側世界ではいわゆるエープリルフールの日になっている」
と指摘。
 しかし、「これは中国の文化伝統や社会主義の核となる価値と相いれない」と断じた。

 その上で国民がうわさを広めたりせず、信じもしないことを望むと要望した。
 微博への書き込みには、ほほえんだような顔の絵文字と漫画が付けられ、漫画には困惑した表情の携帯電話2個が登場し、「再送信」「うわさ」の添え書きがそれぞれある。
 3つ目の添え書きには「違法」の言葉が書かれていた。

 習近平(シーチンピン)国家主席率いる中国指導部は最近、国内メディアの締め付けを強化している。
 同国のメディアは既に当局の強い管理下にあるが、同主席の下で編集権などはさらに圧力を受けているとの見方もある。

 最近では、新聞「南方都市報」の編集者が、国営メディアは共産党指導部の指示に厳密に従うべきとの統制に反発して辞職する一幕もあった。


JB Press 2016.4.4(月)  阿部 純一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46476

習近平はどこまで権力を手に入れたら気が済むのか?
血眼で「辞任要求」の犯人探し、
もはや裸の王様の習近平

 今年(2016年)は中国で毛沢東が「プロレタリア文化大革命(文革)」を発動してから50周年であり、毛沢東の死去から40周年である。

 10年続いた文革が中国に与えたダメージは空前絶後と表現しても過大ではない。
 中国人民の誰も、子供が親を告発し、学生が教師を吊るし上げ、既成の価値観や秩序を崩壊させた文革の再来を望むものはいないはずだ。
 しかし、文革とは言わないまでも、毛沢東を崇拝し、その権威に近づくことを目標とする習近平にとって、中国人民が文革を連想せざるをえないような個人崇拝は「悪くない」選択肢なのかもしれない。

 2016年になって、地方指導者を中心に、習近平を中国政治における「核心」と位置づける発言が相次いだ。
 習近平の意思が働いた動きであることは間違いない。
 中国で「核心」という表現は、毛沢東や鄧小平といった誰もがその権威を認めざるをえないトップリーダーにだけ付与されてきた。
 その基準が変化したのが、鄧小平が江沢民に付与したときである。
 1989年6月の天安門事件で当時の党総書記であった趙紫陽が失脚すると、鄧小平は江沢民をその後任に抜擢し、政治実績のない江沢民をサポートするために「第三世代指導者の核心」として権威付けた。
 江沢民の後を継いだ胡錦濤については、最後まで「第四世代指導者の核心」と呼ばれることはなかった。

 習近平は、2012年の第18回党大会で総書記となり、以来、数多の領導小組を作り、そのトップに座ることによって権力の集中を図ってきた。
 その権力の集中の度合いは、江沢民、胡錦濤といった前任者たちをはるかに凌駕しているといって間違いない。

■狙いは後継者指名の権限確保?

 その習近平がいまさら江沢民をなぞるような「核心」に自らを位置づけようとする意図はよく分からない。
 ただ単純に、毛沢東、鄧小平と比肩しうる高みに立ったことを誇示したいのかもしれない。
 それでもあえて習近平にとって「核心」と呼ばれることを正当化しうる理由を想像すれば、習近平自身が後継者を擁立できる「キングメーカー」のポジションを目指しているということが想定できる。
 江沢民は「核心」と呼ばれはしたものの、鄧小平が、ポスト江沢民の指導者として胡錦濤を指名していたため、実際は自分に最も近かった曽慶紅を後継にしたかったがそれも叶わず、キングメーカーになりそこねた事実がある。

 胡錦濤もまた、キングメーカーになれなかった。
 意中の後継候補者・李克強は2007年の第17回党大会で政治局常務委員会入りを果たしたが、序列は7位であり、6位には習近平が入った。
 引退後も隠然たる影響力を持っていた江沢民が、胡錦濤による李克強の後継者指名を阻止するために当時上海市党委書記だった習近平を強引に押し込んだのである。
 そして習近平は、胡錦濤がトップになる前のポストであった中央書記処常務副書記となり、翌年3月の全人代で国家副主席となって、胡錦濤の後継者としての位置を確保することとなる。
 李克強は同じく全人代で国務院常務副総理となって、温家宝総理の後継者となった。

 こうして見ると、江沢民、胡錦濤の2代にわたるトップリーダーが後継者指名を行えなかった中で人事抗争が展開されてきたことになる。
 それを、自らも当事者として目の当たりにしてきた習近平が、後継者指名の権利獲得を目指したとしてもおかしくはない。
 ポスト習近平の人事は今のところはとりあえず「白紙」であり、胡錦濤にとっての共産主義青年団(共青団)のような固有の人脈を持たない習近平が、自らの権威を高めることによって後継者指名の権限を確保したいがために、「核心」と呼ばれたいのであろう。

 あるいは、実現の可能性は見当がつかないが、将来的に党総書記を廃止し、党主席に戻そうとしているのかもしれない。
 自ら毛沢東と同じポストに就き、死ぬまでそのポストを守ろうという野心が絶対にないとは言い切れない。

■江沢民に近い人物を次々に摘発

 とはいえ、習近平の個人的な威信を高めようとする行為は、現在の中国の政治スタイルから見て、「逆行」ないし「退行」と受け止められかねない。
 誰も毛沢東式の専制政治の再来など望んでいないからだ。
 しかし、中国政治の現状はその可能性を残している。
 習近平への権力集中が進んだ事実がそれを証明している。

 中国では1989年の天安門事件以降、政治民主化の議論はタブーとなり、いかに共産党による指導体制を堅持するかが政治的最重要課題となった。
 しかし、それでも経済の市場化が進展し、国民生活が豊かになり、人々の発言の自由度は増してきた。
 そうした流れの中で、
 胡錦濤時代の2002年から2012年まで、
 中国共産党は集団指導体制を標榜し、政治局常務委員はそれぞれの担当部署を代表する形態をとって、
 意思決定については合議の上で決定するという「党内民主」のやり方を取った。

 「党内民主」化には、江沢民が「院制」を敷くに当たり政治局常務委員に自分の息のかかった人物を送り込み、多数派を形成し胡錦濤の台頭を抑えこむことを正当化するという意味もあった。
 しかし、その結果が、前政治局常務委員で政法部門のトップであった周永康の腐敗摘発である。
 人民解放軍においては、胡錦濤が権力を掌握しきれない中で利権を弄んだ徐才厚、郭伯雄という2人の前中央軍事委副主席もやはり腐敗の廉で摘発された。

 摘発されたのは、いずれも胡錦濤時代に「院制」さながらの権勢を揮った江沢民に近い人物であった。
 そのため、習近平の腐敗摘発は、江沢民派の殲滅を狙った権力闘争であるという解釈がなされるようになった。

■周りに「正直な助言者」はいないのか?

 腐敗摘発そのものは中国人民の歓迎するものであったろう。
 しかし、反腐敗と同時に権力の集中を図った習近平のやり方は、功罪半ばする。

 腐敗汚職は江沢民、胡錦濤の時代から指摘されてきたが、習近平は聖域なき腐敗摘発に乗り出し、大きな成果を上げたことになる。
 しかし、すでに3年を超える反腐敗キャンペーンはエンドレスゲームの様相を呈し、
 人心を萎縮させ役人の不作為を招いている。

 また、「党の絶対的指導」を強調し習近平への忠誠を誓わせるという「締め付け」は、人民解放軍の改革で顕著に見られたが、2月の春節明けに習近平が視察した新華社や人民日報社、中国中央テレビなどメディアに対しても行われた。
 習近平は「党を姓とすること」(党に帰属すること)を強調し、メディアに対して忠実な「党の喉舌」であることを強く要求した。

 まるで習近平は、周りが全てイエスマンでないと満足できないように見える。

 だが、皮肉なことに腐敗取り締まりの総本山である紀律検査委員会と監察部のホームページに、3月1日付けで
 「1000人のイエスマンは1人の正直な助言者に如かず(千人的諾諾、不如一士的諤諤)」
という記事が掲載された。
 冒頭に、習近平の河北省党委員会での講話が紹介され、そこで習近平が
 「小さな問題は誰も気付かず、大きな問題は誰も批判しない。
 その結果、大きな過ちが引き起こされる。
 まさにいわゆる“1000人のイエスマンは1人の正直な助言者に如かず”ということだ」
と述べたことが引用されている。

 記事は、習近平が引用した言葉の由来を歴史的に解説し、毛沢東の事例も上げて共産党が人民の幅広い意見を聞いて治世にあたっていることを縷々述べたものだ。
 習近平はこの自分の発言を覚えているのだろうか。
 あるいは、習近平を取り巻くブレーンに「正直な助言者」はいないのだろうか。

■ネット上で公開された習近平辞職要求の書簡

 そうした中、全国政協、全人代の会議開催の直前にあたる3月4日、新疆ウイグル自治区政府などが出資する「無界新聞」というメディアサイトに、習近平を批判する挑発的な文章が掲載された。

 「忠誠なる共産党員」の名で書かれた
 「習近平同志の党と国家の指導的職務からの辞職を求める公開書簡」
 (関于要求習近平同志辞去党和国家領導職務的公開信)
である。
 その記事はすぐ削除されたが、香港メデイアなどを中心に原文が出回っており、現在でも読むことができる。

 内容はいたってまともであり、習近平の業績を評価しつつもその誤りを的確に指摘している。
 一節を紹介すると、
 「習近平同志、あなたはあらゆる権力をその手の内に収め、
 自分が直接政策決定するといったやり方を採ってきたため、
 政治経済や思想文化などの各領域で未曾有の問題と危機をもたらしたことを指摘せざるを得ない」
といった率直かつ厳しい物言いである。

 中国の公安当局は現在、犯人探しに躍起になっている。
 著名なコラムニストである賈葭氏が北京空港で香港に向かうところを公安に拘束されたり(すでに解放)、「無界新聞」の関係者が取り調べを受けるなどしているが、真相はいまだ不明のようだ。

 「無界新聞」に載った
 習近平辞職要求の公開書簡は、習近平がすでに「裸の王様」であることを示している。
 習近平は権力の過度の集中によって、自分がそうなってしまったことに気づかないのだろうか。



レコードチャイナ 配信日時:2016年4月8日(金) 13時10分
http://www.recordchina.co.jp/a132862.html

「習国家主席辞任要求の公開書簡」発覚から1カ月、
筆者やネット掲載の経緯はナゾのまま―中国

  2016年4月8日、中国の習近平国家主席(共産党総書記)の辞任を求める匿名の公開書簡がネット上に一時掲載されてから1カ月余。
 共産党トップの辞任を公然と要求する書簡は極めて異例だ。
 中国当局は「犯人捜し」に躍起になっているが、筆者や掲載の経緯などはナゾのままだ。

 米国の中国語ニュースサイトなどによると、書簡は全国人民代表会議(全人代)の開幕を控えた3月4日夜、新疆ウイグル自治区政府系のニュースサイト「無界新聞」に掲載された。

 「忠実なる共産党員」と名乗り、
 「習主席に権力を集中させた結果、あらゆる方面で危機が生じている」
と主張。
 「東シナ海や南シナ海で摩擦を起こし、ベトナムやフィリピン、日本などを対中国で結束させた」、
 「『一帯一路(新シルクロード)』戦略で巨額の外貨準備を使いながら他国から回収できず、人民元の下落も止められない」
などと批判した上で、
 「政治、経済、外交、イデオロギーなど全てにわたり失敗した。
 習主席は辞任すべきだ」
と要求していた。

 さらに
 「現在行われている反腐敗闘争が、ただの権力闘争であり、
 その目標が(習主席への)権力一極集中にあることは、誰の目にも明らかだ」
と指摘。
 「このように党内の権力闘争が激化することは、あなたとあなたの家族の身の安全を脅かすであろうことを、われわれは案じている」
などの脅迫めいた文言も含まれていた。

 無界新聞は昨年春、新疆ウイグル自治区政府と中国の有力経済誌「財経」を発行する財訊集団、通販大手で中国の巨大企業であるアリババが共同で設立した。
 中国国営・新華社通信の配信記事や共産党機関紙・人民日報などの引用は極めて少なく、独自性が「売り物」だった。

 この公開書簡は当局の指示で削除されたが、その前に多くの中国国民が目にしたため、転載されて拡散した。
 ネット時代の特徴でもある。無界新聞側は「ハッキングされた」と釈明しているが、使っていたアリババのコンピューターに形跡はなかったとされる。

 書簡をめぐり、「権力闘争説」「内部犯行説」「外国情報機関の陰謀説」などが飛び交う中、中国当局は北京と香港を中心に活動する中国の著名コラムニストの賈葭氏を香港に向かう途中の空港で身柄拘束したが、その後釈放した。
 無界新聞の関係者は、ニュースサイトの4人が行方不明になっていると明らかにしている。

 中国外交部の洪磊報道官は3月末の記者会見で
 「中国の安定を破壊しようとするいかなるたくらみも実現しない」
と述べ、公開書簡に初めて言及した。
 しかし、外交部のホームページには、このやり取りに関する部分は掲載されていないという。
 公開書簡を機に中国指導部がネット規制をますます強めるのだけは必至だ。



レコードチャイナ 配信日時:2016年4月11日(月) 12時10分
http://www.recordchina.co.jp/a133044.html

中国、英エコノミスト誌と米タイム誌のウェブサイトを遮断
=習主席による政治権力集中と個人崇拝を報道―英メディア

  2016年4月10日、英エコノミスト誌と米タイム誌のウェブサイトに中国からアクセスできない状況が続いている。
 英BBC(中国語電子版)が伝えた。

 米紙ニューヨーク・タイムズが中国国内のサイトブロック状況が分かる「GreatFire.org」の情報を引用して伝えたところによると、エコノミスト誌のサイトは今月2日から、タイム誌のサイトは同5日からアクセスが遮断されている。

 両誌の電子版は先週、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席による政治権力集中と個人崇拝について報じていた。



Record china 配信日時:2016年5月5日(木) 8時30分
http://www.recordchina.co.jp/a137415.html

共産党のメディア支配に異議、
物言う企業家に処分―中国


●2日、物言う企業家として知られる任志強氏はメディアの共産党への絶対服従に異議を唱えて批判されている。
写真は任志強氏の自伝。

 2016年5月2日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレ中国語サイトによると、メディアの党への忠誠を疑問視した任志強(レン・ジーチアン)氏に1年間の観察処分が下された。

 今年2月、習近平(シー・ジンピン)国家主席は中国中央テレビ(CCTV)を視察したが、局内の電子スクリーンに「CCTVの名字は“党”、絶対の忠誠を誓います」とのメッセージが表示されていた。
 中国においてメディアは「共産党の代弁者」と位置付けられているが、「名字は“党”」という新たな言い回しで忠誠心を表明した格好だ。

 “物言う企業家”として知られる任志強氏はSNSで
 「メディアが人民の利益を代表しなければ、人民は捨て去られる」
などと批判。
 官制メディアから激しく批判されていた。
 北京市西城区共産党委員会は厳重に処罰すると表明、このたび処分が発表された。
 「党の路線、方針、政策などに違反する誤った言論があり、
 党の政治紀律に違反している。
 党籍は保持するが1年間の観察処分とする」
との内容だった。






【2016 異態の国家:明日への展望】


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「外交を知らない中国」(2):中国は致命的な間違いを犯した・・・経済力だけでは米国に対峙できず

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サーチナニュース 2016-03-31 14:37
http://news.searchina.net/id/1606226?page=1

中国は致命的な間違いを犯した
・・・経済力だけでは米国に対峙できず

 力はあるが人望がなく、小さな集団のなかで偉ぶる人のことを「お山の大将」などと表現することがある。
 自分の意見に同意する仲間だけを集めて、反対意見は排除するような人を揶揄する言葉だ。

 中国メディアの環境網はこのほど、ロシアの軍事専門家の意見を紹介し、世界における中国と米国の立場の違いを解説する記事を掲載。
 ロシア人の目に中国や中国人はどのように映っているのだろうか。

 記事は冒頭、オーストラリア政府が「過去最大の規模で海軍の軍事力を向上させる計画」
であることを紹介し、その理由として
 「中国が南シナ海の領有権問題において実力行使しているため」
としていることを紹介。
 中国政府はオーストラリアの動きに対して怒りを示すと同時に「冷戦思考」であるとして反対の意向を示している。

 オーストラリアは海軍力を向上させることで、同盟国である米国との軍事的つながりも向上すると解説。
 オーストラリアは日本の同盟国でもあり、日本の潜水艦を採用するのではないかとの報道もある。

 記事は、現在の中国は経済的には発展しているが、
 多くの国と外交上の問題を抱えているとの現状を解説。
 一方、米国には多くの同盟国が存在し、軍事的にも経済的にも関係を強化していると伝え、
 中国は長期にわたって経済力がもたらす影響を過剰評価し、
 軍事や政治がもたらす影響を過小評価し続けたとし、
 これは「中国の間違い」と指摘。
 投資規模や貿易さえ拡大させれば、地域における影響力を拡大させられると認識していたことは中国の致命的なミスであり、現在の中国では米国と対峙することは困難であることを指摘した。

 どれだけ力や資産があっても、信頼できる友人がいなければ幸福とはいえないだろう。
 国家も同様で、信頼できる同盟国が必要だ。
 中国にとって信頼できる同盟国といえば、パキスタンぐらいであり、
 経済的な関係だけで繋がっていても信頼関係は築けない。
 今後中国がお山の大将を卒業して、近隣諸国と友好な同盟関係を築くことはできるのだろうか。



サーチナニュース 2016-03-31 20:25
http://news.searchina.net/id/1606267?page=1

内憂外患を抱えている習近平政権

■米国が次々と「反米国家」と和解の方向に向かっている

 オバマ米大統領は3月20日、現職の米大統領として88年ぶりにキューバを訪問した。
 1959年のキューバ革命以来、「反米国家」をアイデンティティーにしてきた共産国家キューバと宿敵アメリカが和解に向かっている。

 さらに、24日には、およそ20年ぶりにアルゼンチンを公式訪問して中道右派のマクリ大統領と会談し、左派政権の下で冷え込んだ両国関係の改善を印象づけている。

 ブラジルでもルセフ大統領への辞任要求が強まるなど、左派政権が弱体化している。
 中南米ではこれまで、ベネズエラやニカラグアなど各国で左派政権が台頭し、アメリカとの関係が冷え込んできていた。
 しかし、去年からアルゼンチンなど各国で左派政権が勢いを失いつつあり、今回のオバマ大統領のアルゼンチン訪問は中南米でアメリカの影響力の回復を狙う動きと受け止められている。

■米国は「経済情報戦」によって
 中国の武器「チャイナマネー」を奪った

 このような米国の戦略の底流には中国マネーを巡る変化がある。
 南米諸国は2000年代に入り、中国の旺盛な需要による好景気に沸いた。
 ブラジルやアルゼンチンは、鉄鉱石や大豆など中国向け輸出が急増した。
 ところが中国経済の減速による資源安で、その「好循環」が逆回転し始めたのである。

 2015年3月に中国が設立を目指したアジアインフラ投資銀行「AIIB」には、日本以外の親米諸国を含む57か国が、中国主導「AIIB」への参加を決めた。
 この頃の中国はまだ「チャイナマネー」によって、世界の国々を懐柔していた
ということができるであろう。

 そこで米国は、「経済情報戦略」を開始して、1年間ほどで中国経済をドン底へと追い込んだ
のである。
 各国が中国主導の「AIIB」に参加を決めたころには「中国経済の成長は鈍化しているが、まだまだ牽引役だ」という説が主流を占めていた。

 ところが、その後、
 毎日のように「中国経済のハードランディングは避けられない」という論調に変わっていった。
 米国は、このようにして中国の武器である「チャイナマネー」を奪って、
 同時に「反米の砦」キューバを懐柔し、
 中南米取り込みに動いている
のである。
 このような戦略は覇権を目指す中国に対抗するためのものだと見られている。

■習近平国家主席の辞任を求める匿名の手紙

 一方、中国国内に目を転じると、中国の「政府系ニュースサイト」に習近平国家主席の辞任を求める匿名の手紙が掲載され、その後中国の著名なコラムニスト贾葭氏が行方不明になっていることが明らかとなった。
 手紙のサイトは即刻削除されている。

 執筆者は「共産党の忠実な支持者たち」となっているということである。
 日本戦略研究フォーラム・渋谷司先生のブログが伝えているところによると、
 習近平氏が「過大な権力」を手に「個人崇拝」をさせているとして、
 辞任するよう求めたほか、
 外交政策から経済運営にわたり習政権の批判を展開している
としている。

 現在、習主席は、経済担当の李克強首相の権限まで自らが握っており、今や、中国は「共産党一党独裁」ではなく習近平氏が、それを「自分一人の独裁」にしており、そのために様々な問題が生じているというのである。
 特に、対外政策では習近平政権が、
★.東シナ海、南シナ海で強硬策を採り、
 そのため、日本、ベトナム、フィリッピンが「反中」で結束しつつあり、
 米国までも「反中」に向かっていることが最大の問題となっている
ようである。

 香港では「一国二制度」が建前のはずだが、習主席はそれを無視しており、台湾では民進党政権が誕生した。
 このように内憂外患を抱える習近平政権が今後どのような内政外交を進めていくかは全世界の関心事として今後も慎重に見守っていくべきであろう。

(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:大平祥雲) (イメージ写真提供:日本経営管理教育協会。厦門のショッピングセンター)



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年04月08日(Fri)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6479?page=1

援助国として中国の限界

 CIAでアジア情勢分析を担当していたハリントンが、3月2日付のProject Syndicateで、シルクロード構想やAIIBを通じた
 中国の対外援助が注目されているが、
 その多くは中国自身の利益を優先したものであり、
 被援助国は期待するほどの利益は得られないだろう、
と述べています。
 要旨は以下の通りです。

■ビジネス前提の中国援助

 中国経済が失速し、改革が後退する中、
 習近平主席は懸命に中国がより広範な国際的役割を担える大国であることを示そうとしている。
 昨年11月のAPECでは、中国がここ数年で数十億ドルの対外援助・投資を行ってきたことを宣伝した。
 また中東においては、中国企業がテヘランの地下鉄やサウジの高速鉄道建設を請け負っている。
 昨年6月には、エジプトとの間で計100億ドルとなる15のプロジェクトに合意した。
 中国当局は、ラテンアメリカにおいて、2500億ドルの新たなインフラ取引をすると見越している。
 また、シルクロード基金とAIIBは、それぞれ400億ドルと500億ドルを建設に投資することを約束している。

 しかし、中国の援助は主にビジネスを前提としているため、被援助国も中国の支援モデルと動機について半信半疑になっている。
 2013年に行われたランド研究所の調査によれば、
 中国の対外援助と公式ファイナンスの「80%以上」は、原料採取と中国への資源輸送に使われる道路や橋、港湾の建設に投じられている。

 中国による援助の3分の2は金融プロジェクトと原料に対する借款であり、
 その半数以上は中国企業からの調達に使う「紐付き」援助である。
 習主席は昨年9月の国連総会演説で、世界の最貧国のために新たな借款と教育・ヘルスケアのための資金援助をすると強調したが、それらは厄介で、かつ多くは紐付き援助のままである。

 こうした援助によって、中国の影響力が必ずしも拡大するわけではない。
 米AidDataの研究によれば、126カ国300人の政府高官は、
 中国の「アジェンダ設定力」を低く評価している。

■中国経済停滞で援助にも影響及ぶ可能性

 中国の景気減退は、援助の否定的認識をさらに強めそうである。
 ランド研究所の調査は、中国の援助はかなり遅れると結論づける。
 例えば、パキスタンとインドネシアに対する事例では、十数億ドルの援助のうち、
 達成されたのは10%未満だという。
 もちろん、援助プロジェクトにおいて遅延は珍しくないが、中国の場合、経済停滞によって、この遅れがさらにひどくなる可能性がある。

 中国の支援事業は中国市場のリソースを守ることに注力している。
 また、今日の人道危機に際して、中国の存在感はない。
 直近の事例はシリアである。
 中国のシリア難民への援助は、合計6000万ドルに達したが、米国の今年3月までのシリア難民支援は37億ドルである。
 米国は、今後さらに5億800万ドルを提供すると約束している。
 また、欧州全体での貢献は45億ドルに達している。

 もっとも、対外援助は、中国の国際的役割を強化する一手段にすぎない。
 しかし、習近平の対外援助戦略の下では、いかなる政治的見返りもひどく遅れるに違いない。

出 典:Kent Harrington‘China’s Illusory Global Leadership’(Project Syndicate,
March 2, 2016)
http://www.project-syndicate.org/commentary/chinas-illusory-global-leadership-by-kent-harrington-2016-03

*   *   *

 本論評は、中国の対外援助の限界と問題点を指摘していて、的確な内容となっています。
 中国の対外援助は、約束した内容が果たして守られるかどうか、中国の「紐付き」援助は被援助国の利益にどれほど役立つか、という点に収斂します。

 タンザン鉄道のような特例を除けば、中国が対外援助活動に乗り出したのは1990年代後半以降のことです。
 それまでは、自らを「開発途上国の代表」と位置づけてきたのですから、短期間に主要援助国のメンバーになることは容易ではありません。

■中国援助の限界を認識していない被援助国

 政治的考慮から被援助国に対して約束はするが、
 それを技術的に厳格にフォローするだけの経験もノウハウも欠如している
というのが実態でしょう。
 また、主要先進国が合意しているOECDの対外援助の諸条件を中国は受け入れていないので、それに縛られることはありません。

 ハリントンの指摘するように、今日の中国の借款の半数以上は「紐付き」援助です。
 また、ランド研究所の調査が示すように、中国の対外援助と公式ファイナンスの80%以上が中国への資源輸送のために使われる道路、橋、港湾の建設であるという点は示唆的です。
 中国経済の失速状況は、これら対外援助の限界や問題点を浮き彫りにする可能性があります。

 被援助国がそのような中国援助の限界を十分に承知したうえで中国からの援助を受け入れようとしているとは思えない、というのが今日の実情でしょう。
 その典型的な例の一つが、インドネシアにおける高速鉄道建設の事例です。
 議論の多いAIIBについても、国際金融機関としての責任ある役割を果たしうるかどうかについては、今後の具体的援助プロジェクトの進展ぶりを見てから判断すべきものと思われます。



サーチナニュース 2016-04-24 14:13
http://news.searchina.net/id/1608162?page=1

なぜだ!
こんなに投資してやってるのに
「中国人はなぜか歓迎されていない」

 中国国務院が発表した「中国の対外援助」に関する白書によれば、中国は2010年から12年にかけて、国外で156カ所のインフラ整備を行った。
  そのほかにも企業によるインフラ整備プロジェクトも含めれば、中国は世界各地でインフラ投資を行っていると言える。

 日本もさまざまな形で対外援助を行っているが、開発途上国に対する援助は先進国としては当然の行いであり、その結果として援助を行った国では日本に対する感謝の気持ちも広がっていることだろう。
 一方、中国メディアの観察者はこのほど、中国はこれまで対外援助として多くの国に投資を行ってきたにもかかわらず、一部の国において
 「中国人はなぜか歓迎されていない」
と主張する記事を掲載した。

 記事は、中国にとっての対外援助は
★.「責任を担う大国というイメージ作り」に有利であると同時に、
★.中国の経済的利益にもつながる
と主張。
 当然、相手国にとってのメリットが最優先であることから、双方にとって利益のある行為であると論じた。

 続けて、
★.中国の対外投資ならびにインフラ整備は
 主に経済的利益と外交面の利益を考慮して展開されている
と主張。
 中国国内では需要不足に起因する生産能力の過剰が問題となっているが、対外援助によって過剰な生産能力を活用することができると主張する一方で、
★.外交面の利益については
 「相手国の法律や制度、文化に対する理解が不足しており、
 一部の権力者とだけ話をつけて、
 現地の一般人をないがしろにしているため、
 外交面の利益を損なうケースも多い」
と論じた。

 事実、中国が南米で手がけたプロジェクトでは土地の買収をめぐって現地の人びとと大きなトラブルになり、すでに3年以上の遅れが生じていると指摘。
 すでに現地では中国企業の仕事の進め方は信頼を失っていると伝えたほか、インフラ建設を担当する中国企業にとっての事業は「トラブルなく遂行すべき政治的任務」となっていると主張。
 こうした考え方で事業に取り組んでいる以上、
 中国企業にとっては中国政府のメンツを潰すようなトラブルは避ける必要があり、
 現地の労働者と中国人労働者の衝突を避けるために食堂や宿舎などを分けるなど、
 双方の交流を極力制限している
と指摘し、
 こうした間違った対外投資が中国の外交面の利益を損ない、
 ひいては援助をしているにもかかわらず、
 中国人が歓迎されない事態につながっている
と論じている。



サーチナニュース 2016-05-30 10:33
http://news.searchina.net/id/1610869?page=1

なぜだ!
中国はなぜ東南アジア諸国の敬意を勝ち得ることができないのか



 オバマ大統領は23日にベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席と首脳会談を行い、ベトナムへの武器輸出禁止を全面的に解除する考えを表明した。
 中国の専門家はこの出来事を「中国けん制のための重要な合意」と見ているようだが、中国メディアの新浪はこのほど、
 ベトナムが中国に「喧嘩を売る」のはなぜか
と問題を提起する記事を掲載した。

 周知のとおり、中国は米国のようなリーダーシップを発揮する大国を目指している。
 しかしこうした目標とは裏腹に、ベトナムは中国に敬意を示すどころか米国との関係を強化する意向を示している。
 ベトナムの敬意を勝ち得ている米国と中国との違いはなんだろうか。
 中国が米国のような大国になるためには、どのような特質を身に着ける必要があるのだろうか。

 記事は
 「ボスになろうする者が子分に利益をもたらせないなら、
 当然子分はボスについていかない」
と主張。
 ベトナムは米国との貿易で利益を得ており、両国の貿易は競合関係ではなく、むしろ互いに補い合う関係にあると指摘する一方、「ベトナムの対中貿易赤字は巨大」と指摘、
 その産業の種類も似ているためにベトナムは中国市場で利益を得ることができない状態だと説明する。

 この状況はベトナムに限らず、中国と東南アジア諸国の貿易についても言えると記事は説明。
 「中国改革後の30年余りの間、東南アジア諸国に対する中国の貿易は経常的に黒字だった」
と記事は指摘。

 しかしこれは大国を目指す中国にとって決して望ましい状況ではない。
 「東南アジア諸国に利益をもたらして初めて、東南アジア諸国からの尊重と敬意を勝ち得ることができる」
と主張し、
 これは大国になろうとする国の「責任である」という見方を示した。

 記事は大国である米国と現在の中国の器の違いを謙虚に認めており、その内容にも非常に説得力がある。
 中国がベトナムをはじめとする東南アジア諸国に経済的利益をもたらせば、関係が良好となるという主張は正しいだろう。
 だが、中国が南シナ海に人工島を造成し、軍事拡張を進めていることこそ、東南アジア諸国に警戒感を抱かせる主な要因ではないだろうか。





【2016 異態の国家:明日への展望】


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日本はなぜプルトニウムを保有していたのか:日本はいつでも核兵器をつくれますよ、だから手を出すな!

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 日本に手をだすな!
といった脅しがプルトニュウムの保有だろう。
 いうなれば抑止力である。
 中国にとっては日中開戦すれば、日本が核兵器の製造に着手する理由を提供することになる。
 2012年の尖閣反日デモは完全に眠りこけていた日本の軍事力を呼び覚ましてしまった。
 これまで、
 「お詫びと反省の国」で通してきた日本を戦う国へと変貌させてしまったのはこのデモの大きなミスである。
 中国は脅しをかければ日本が引っ込むと思ったのだろう。
 そういう計算の上で大々的な官製デモを企画したのだろう。
 ところが、日本は引っ込むどころか、「待ってました」とばかりそれまでのお詫びと反省をやめて「普通の国:新常態」へと舵を切ってしまった。
 眠れる竜のシッポをふんでしまった、ということになる。
 安保法制の施行はこの「ニューノーマル」の典型的な象徴である。
 これまでなら、こういう法制は国民の大反対にさらされるのだが、中国の最近の動きを見ている日本人にとってもはや「反対などしていられない」といった雰囲気になってきている。
 「暴力はいけません」などと叫んでも暴力で向かってくるものには言は無力である。
 「ドロボウはいけません」とノドをからしてもドロボウは入ってくる、のである。
 ちゃんと「カギをかけ」ドロボウにはいられないようにするのがノーマルだということである。
 抑止力というのはそういうことである。


サーチナニュース 2016-03-31 10:03
http://news.searchina.net/id/1606171?page=1

日本はなぜプルトニウムを保有していたのか、中国メディアの考察

 米欧が数十年前に日本に提供した「331キロ」の研究用プルトニウム
を積んだ輸送船が22日、茨城県東海村の東海港を出発し米国に向かった。
 中国メディアの網易はこのほど、プルトニウム返還を要求した米国の意図について説明、一部メディアが報道している「日本による核兵器製造を防ぐ」という目的は決してないと論じている。

 ある分析によれば331キロのプルトニウムは核弾頭50発分に相当、しかしこの他に
 日本は「約47トン」ものプルトニウムを保有している。
 記事は一部のメディアにおいて
 「米国の返還要求には日本による核兵器製造を防ぐ意図がある」
という論調があると指摘、しかし事実に照らせばそれは間違った分析だと主張した。

 続けて、日本が大量にプルトニウムを保有していた理由について説明。
 米国は使用済み核燃料を直接廃棄する「ワンススルー方式」を採用しているが、
  日本は使用済み核燃料をリサイクルする方式を採用している。
 使用済み核燃料を再処理してMOX燃料に成形し再び軽水炉で使用する方法を「プルサーマル」と呼ぶ。
 日本は欧米が断念した高速増殖炉の研究開発を今でも続けているが、高速増殖炉はプルサーマルよりもはるかに効率よく使用済み核燃料に含まれるプルトニウムを利用することができる。

 資源の少ない日本にとって核燃料をリサイクルすることは非常に重要だが、こうした政策があるために日本は大量のプルトニウムを保有していると記事は指摘、決して核兵器の製造を意図したものではないと論じた。

 また記事は日本には非核三原則の方針や国民の「核アレルギー」が存在しており、日本で核兵器が製造されるのはほぼ不可能だと指摘。
 記事はこの2つの要因が非常に強力な抑制力として働いていることを強調している。

 例えば非核三原則の実効性について記事は、朝鮮戦争の際に米国が沖縄に核弾頭搭載可能なミサイルを配備しようとしたとき、当時の鳩山一郎首相が非核三原則の精神からそれを断固として許さなかったことに言及。
 また日本人の核アレルギーは広島、長崎、第五福竜丸の被爆という強烈な自己体験に起因していることも記事は指摘している。

 また米国自身が懸念しているのはテロリストに核燃料を悪用されることであり、日本による核兵器製造を防ぐ意図はないと記事は説明。
 ただし日本に核兵器製造の意図がないとしてもテロリストに悪用される可能性は十分にあることを強調している。
 もし保有する大量のプルトニウムの一部がテロリストに盗難されるなら、それは日本が核兵器を製造するよりはるかに深刻な脅威となることは明白だ。


サーチナニュース 2016-03-14 10:13

中国「日本には核武装の意図がある!」、
その気になれば短期で製造可能=中国報道

 核兵器を作らず、持たず、持ち込ませないとする非核三原則を国の方針とする日本だが、中国メディアの新華網はこのほど、こうした国家方針とは裏腹に
  日本には核武装する明確な意図がある
と主張し、その根拠について論じている。

 日本に核武装する意図があると記事が述べる根拠には、
 現在日本が「47.8トン」の分離プルトニウムを有していることがある。
 これほどの量のプルトニウムは平和利用に必要とされる量をはるかに超えており、しかもこの量で
 「1350発の核兵器」を製造できる
と記事は指摘する。
 ある分析によれば日本が有している「47.8トン」のプルトニウムは
 全世界のプルトニウムの10%の量
に相当する。

 また日本の保守勢力のなかには、
 「日本が核兵器製造にすぐ着手できるほど多量のプルトニウムを有していることは、潜在的脅威に対する抑止力になるという考えが存在している」
と主張。
 「たった1発の核兵器でさえ外交に強力な影響を与える」
とする考え方も存在しているとし、日本には核武装に対して積極的な態度を示す勢力が存在し、核武装の有効性を認める人びとがいるとの見方を示した。

 この点に関して、ある日本人有識者が
 「日本に核武装の意向があることを疑うべきではない。
 核武装のために犠牲を払う準備が日本にはまだできていないだけだ」
との見解を示していることを紹介。
 当然、これは日本を代表する考え方ではないが、記事はこうした見解が日本に存在すること自体を、日本が核武装を考えている根拠の1つとして取り上げている。

 さらに記事は日本には核兵器を製造するための原料だけでなく能力もあると指摘。
 ロシアのある軍事専門家が
 「日本は短期間に核兵器を製造する能力を持ち、実験をせずともコンピューターを使って核実験をシミュレーションできる」
と述べていることや、米国、英国の専門家たちも日本には核兵器を短期間で製造する能力があると認めていると説明している。

 多くの日本人は日本の核武装に対して反対であろうが、こうした記事は中国の読者に対して「日本には核武装の意志がある」と誤解させることにつながりかねない、世論をミスリードする可能性のある主張だ。



サーチナニュース 2016-03-31 20:45
http://news.searchina.net/id/1606269?page=1

中国はまだ戦争の準備はできていない」
むしろ日本に学べ=中国

 安全保障関連法が29日に施行された。
 日本が集団的自衛権を行使できるようになったことで、中国ではこれまで以上に日本に対して警戒すべきとの論調が高まっている。
 中国メディアの人民網はこのほど、香港メディアの報道を引用し、
 「中国はまだ戦争の準備はできていない」
と主張し、むしろ中国は日本の軍需工業から学ばなければならない点があると論じている。

 記事は米国艦隊が南シナ海で警戒監視活動を展開したことに言及、「中国にとって大きな脅威」だと指摘したうえで、
 米国艦隊の活動は中国にとって「狼が来た」という嘘で済まされるものではなく、
 実際に狼が来て自分の家の玄関口で吠えている状態
だと説明。
 武器を持たない少年と狼とでは、その力に圧倒的な差があるが、この関係は現在の中国と米国の軍事力に当てはまるという見方を示している。

 南シナ海に派遣された米国艦隊を中国艦隊が一時包囲するという出来事が生じたが、それでも記事は「中国はまだ戦争の準備ができていない」と主張。
 その根拠として記事は中国の戦闘機のエンジンが国産技術によるものでないことを事例として取り上げ、
 中国の軍事工業はいまだ他国に依存している状態であるため
だと論じた。
 もし他国が中国へのエンジン提供をやめれば、中国は制空権を取る重要な手段を失ってしまうと警戒している。

 さらに記事は全国人民政治協商会議のある委員が「中国政府は軍事力を強化するために日本の軍需工業から学ぶべきだ」と中国政府に呼びかけたと紹介。
 全国人民政治協商会議は一般的に中国政府の諮問機関と言われている。
 全国人民政治協商会議の同委員は、日本は第二次世界大戦終了時に軍需工業は崩壊したが、それでも日本には優秀な民間企業が育ち、これらの企業は自衛隊のために必要な製品を研究開発する優れた能力を有していると指摘している。

 中国の兵器開発は国営企業によるものであり、民間企業の潜在能力を活用していない状態であるとし、中国が日本に見倣い、民間企業の潜在能力を引き出し、それを活用するよう努力するなら、今後10年間で優秀な民間企業が必ず生まれると分析している。
 記事は「中国はまだ戦争の準備はできていない」と主張しているが、中国は優秀な民間企業が生まれ、準備が整えば戦争を行うつもりなのだろうか。



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年06月09日(Thu)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6920

増大する世界のプルトニウム量 
警戒される日中韓

 米不拡散政策教育センターのソコルスキー事務局長が、5月8日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説において、世界のプルトニウム保有量が増大しているとして、日本、韓国、中国の間でプルトニウム製造停止をすべきであり、米国はこの「プルトニウム・ポーズ構想」を支援すべきである、と述べています。
 論旨、次の通り。

 5月6日、金正恩は水爆核実験と衛星発射を革命の勝利として誇示した。
 北朝鮮の核開発の進展と対米同盟に対する信頼の揺らぎは日本の反核タブーを侵食している。
 4月1日、安倍総理は核の保有が憲法上禁止されているわけではないと述べた。

 他方、韓国与党の指導者達は朴大統領にプルトニウムの蓄積を軍事的なヘッジ政策として行うよう求めた。
 2月19日の朝鮮日報は如何にして現存の民生原子力施設を利用して18カ月で原爆を作るかにつき詳述している。

 日韓国は共にNPTの締約国であるが、それは必ずしも両国の核保有を阻止することにはならない。
 日本は原発から出た11トンのプルトニウムを保有している。
 5キロのプルトニウムで原爆一個ができる。
 日本は年間8トンのプルトニウムをつくる大規模再処理工場を建設している。
 2011年の福島事故後の原発停止により今これらのプルトニウムを燃料に使う原発は稼働していない。
 しかし日本は高速増殖炉のための再処理計画は不変だとしている。

 日米原子力協定により日本は再処理を認められているが、韓国は再処理を許されておらず、日本と平等であるべきだとして不満に思っている。
 18年に日本の六ヶ所村施設が稼働すれば韓国を政治的に抑えることはできなくなるだろう。

 中国は日本と同様の再処理施設の建設につき仏と交渉している。
 これができれば中国の核兵器製造能力は拡大する。
 中国はまた民生用原子炉の軍事上の意味合いについて問題提起をしている。
 中国は日本によるプルトニウム保有につき声高な対日批判を繰り返している。

 アジアでの高速増殖炉のための再処理推進を支持する者は西欧にもいる。
 しかし、増殖炉は経済的なものではない。
 日中韓にも経済性の問題とプルトニウム商業化の安全保障上のリスクにつき懸念する声がある。
 しかしプルトニウム技術で後れを取るなという強いナショナリズムの声に負けている。

 日中韓三国にとって経済的に最も有益な解決方法は、三国の間で性急な民生用プルトニウム開発を共同で停止することである。
 米国がこの構想を推進していくためには、サウスカロライナのプルトニウム工場建設を中止するというエネルギー省の2月の決定を議会が支持することが必要だ。
 この「アジア=米プルトニウム・ポーズ構想」については米政権と議会にも支持がある。

 東アジアの国々が共同でプルトニウム製造を停止すれば東アジア地域は平穏になるし、アジアの同盟国、中国、米にとって何千億ドルを節約できる。
 オバマ政権は残り少ないがこの提案を支持することによって核不拡散に末永い貢献をすることができる。

出典:Henry Sokolski,‘Japan and South Korea May Soon Go Nuclear’(Wall Street Journal, May 8, 2016)
http://www.wsj.com/articles/japan-and-south-korea-may-soon-go-nuclear-1462738914

 プルトニウム保有量の増加が核不拡散の観点から国際的な関心を呼んでいます。
 韓国は昨年漸く妥結した米韓原子力協定改定交渉で日本と同様の再処理活動につき米国の同意を執拗に要求しましたが、米国は認めませんでした。
 中国は自ら日本のような再処理工場建設を仏と交渉しつつ、日本は大量のプルトニウムを保有しているとして、対日批判と宣伝を強めています。

 この記事は、プルトニウムは民生用原発に使用するには経済的でないとして、核不拡散の観点から、日本、中国、韓国が共同してプルトニウム製造停止を決めるべきだと提案しています(アジア=米プルトニウム・ポーズ構想)。
 この構想を仲介、支援するため、米は自国のプルトニウム工場の建設中断を実行すべきだとしています。

■日中韓の思惑の違い

 しかし、ことはそう簡単ではありません。
 関係国がプルトニウムに置く重要性がそれぞれ違うからです。
 我が国は専ら原子力エネルギー確保の観点からプルトニウムを捉えていますが、韓国はナショナリズムと対北朝鮮対応など防衛政策の観点からそれを捉えています。
  中国は、核兵器保有国としてその能力強化に努めており、国防政策上の考慮が強いでしょう。
 米国は核不拡散からの考慮に重きを置いています。
 それゆえ、日中、日韓を同列に議論するのは困難です。
 また、やるとしても地域規模ではなく世界的規模でやるべきものではないでしょうか。
 そうであれば、世界のプルトニウムの保有量の最小にするため、それぞれの立場から、できることを注意深く実施していくべきでしょう。

 その意味で、我が国が一定量のプルトニウムを米国に移動していることは意味のあることです。
 2014年のハーグ核セキュリティ・サミットの際、日本は米国との間で日本原子力研究開発機構のプルトニウムの撤去に合意し、今年4月のワシントンでの会合に際しては京都大学の実験装置の高濃縮燃料を米国に撤去することに合意しました。

 米議会は核不拡散問題に敏感です。
 現在の日米原子力協定は2018年7月に30年の有効期間を満了するので、改定交渉をしなければなりません。
 プルトニウム問題につき米議会の動向を注視していく必要があります。
 』


ロイター 【共同通信】  2016年 06月 24日 11:12 JST
http://jp.reuters.com/article/idJP2016062401001173

「日本は一夜で核開発可能」

 【ワシントン共同】
 バイデン米副大統領が中国の習近平国家主席に対して
 「日本が明日にでも核を保有したらどうするのか。
 彼らは一夜で核を開発する能力がある」
と発言、北朝鮮の核開発阻止に向け影響力を行使するよう求めていたことが23日、分かった。
 米公共放送(PBS)のインタビューで語った。

 バイデン氏は習氏との会話の時期については言及していない。
 米政府が日本を含むアジアでの核拡散を懸念していることが裏付けられた。

 バイデン氏は、中国は北朝鮮に影響を与えることができる「唯一最大の能力」を持つ国家だと指摘したという。



産経新聞 2016.6.24 13:34
http://www.sankei.com/politics/news/160624/plt1606240020-n1.html

世耕弘成官房副長官
「核兵器を保有することはありえない」 
バイデン氏発言に  

 世耕弘成官房副長官は24日午前の記者会見で、バイデン米副大統領が中国の習近平国家主席に対し、日本が核兵器開発が可能だとの認識を示したとされることに関し
 「(日本が)核兵器を保有することはありえないことだ」
と述べ、否定した。

 世耕氏は非核三原則について「日本政府の重要かつ基本的な政策として今後も堅持していく」と強調。
 その上で、核に関する法制度として「国内法上は原子力基本法によって、日本の原子力利用は平和目的に極めて厳しく限定されている」と説明した。
 また
 「国際的にも核兵器不拡散条約(NPT)の非核兵器保有国として、核兵器の製造や取得などを行わない義務を負っている」
と指摘した。


 「開発能力がある」というのと
 「保有している」というのは全く別の次元の話である。
 「一晩で」というのは少々オーバーだが、1年もあれば十分に可能だろう。
 だからといって、それを実行する、ということにはならない。
 先進国ならそこそこ皆、開発能力は有している。
 ドイツだって、イタリアだって能力はある。
 イランや北朝鮮に開発能力があるとなれば、日本にないわけがない。
 ただ「やらない」だけである。
 この「やらない」というのが大事であろう。
 「所有による抑止力」か、「能力による抑止力」か
ということである。
 中国による日本侵攻でもあれば、当然能力が所有に変わるだろう。
 それがないなら、能力だけに終わるということでもある。


サーチナニュース 2016-07-03 14:35
http://news.searchina.net/id/1613359?page=1

日本に「実質的に一夜で核武装する能力」? 
中国「危険と危害もたらす」

 米国のバイデン副大統領は6月20日、米メディアに対して「日本は実質的に一夜で核武装する能力がある」という認識を示したが、中国メディアの今日頭条はこのほど、バイデン副大統領の発言の意図と、またこの発言が国際社会に与えた影響について説明している。

 記事はバイデン副大統領の発言の意図について、北朝鮮の核問題を積極的に扱おうとしないオバマ政府に対する国内外からの圧力を和らげる目的があったと指摘。

 つまりバイデン副大統領と習近平国家主席との会談の席で、米国としてはすでに北朝鮮の核問題解決に協力するよう中国に働きかけたという事実をバイデン副大統領は示したかったのであり、日本の核武装能力に対する言及はあくまでも中国の協力をとりつけるための材料の1つに過ぎないということだ。

 しかし記事は
 「バイデン副大統領の発言は日本の核武装問題の現実を直視すべきこと、
 またこの問題に首尾よく対処すべきことを国際社会に気づかせた」
と説明。
 さらに
 「日本の核武装の問題はいつでも国際社会や地域の平和に巨大な危険と危害をもたらすものになる」
と非常に大きな警戒感を示した。

 世耕弘成官房副長官は6月24日の記者会見でバイデン副大統領の発言を取り上げ、日本が将来核兵器を保有する可能性について完全に否定している。
 日本国内には核武装に賛成する意見もあるようだが、多くの日本人は核武装に反対するのではないだろうか。
 別の言い方をすれば、日本の核武装問題は日本人にとってまるで現実味のない問題だと言える。

 しかし記事から伝わるのは、こうした日本国民の考え方とは異なる反応、つまり日本が核武装する可能性に対する強烈な危機感だ。
 1960年代に日本がひそかに核兵器を開発していたとも記事は説明している。
 つまり「非核三原則」の堅持などは日本政府の表向きの姿勢に過ぎないと見ており、政治判断でまさに「一夜にして」日本は核武装すると指摘、中国にとっては現実的な脅威であるという見方を示している。






●核兵器を日本は保有するのか?バイデン米副大統領の意味深発言に韓国人ビビる!韓国の反応【中韓日報 大福CH】
2016/06/24 に公開






【2016 異態の国家:明日への展望】


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2016年3月30日水曜日

中国経済のハードランディングリスクが高まっている(7): 中国政治のもろさが経済リスクに、「中国にミンスキーモーメントが迫っている」

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ウォールストリートジャーナル 2016 年 3 月 30 日 14:59 JST 更新 By ANDREW BROWNE
http://jp.wsj.com/articles/SB12111607311925493378004581630061964543964?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst

中国政治のもろさ、経済を損なうリスク
指導部には痛みを伴う産業改革を断行する決意が欠けている

 【上海】中国経済はもはや崩壊が差し迫っているようには見えない。
 人民元の下落に賭けたウォール街のヘッジファンドは大きな損失を抱え、暴落した株式市場は安定化しつつある。
 実のところ、中国経済が崩壊する可能性は少しもなかった。
 中国政府が言明してきた通り、中国は短期間のうちに安定性に対する脅威を撃退し、経済の失速を防ぐために十分な財政力を発揮した。

 今はそれよりもっと可能性の高そうな何か、
 つまり政治の失敗を心配すべき時だ。
 中国指導部は自ら約束した経済の大改革に覚悟を決めて着手することに二の足を踏んでおり、それが問題の根っこになっている。
 経済の大改革は赤字続きの、「ゾンビ」と呼ばれる国有企業の閉鎖から始められるはずだった。
 ここにきて、長く先送りされてきた改革を一気に始める機会が訪れた。
 だが、当てにしてはいけない。

 そこに欠けているのは政治的決意だ。
 国有企業の損失が銀行業の健全性を脅かしていた1990年代に、国有企業の改革に踏み切った当時の指導部が見せたのと同様な強い政治的決意が今の指導部には必要だ。
 90年代の指導部はその後、再び自己満足感が覆い始めた2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟することで、国有企業を世界の優良企業と正面から競争する環境に置き、国内経済に衝撃を与えた。
 現在の指導部は政治的決意の代わりにスローガンを打ち出した。
 その一つが「新常態(ニューノーマル)」だ。
 過剰な生産能力と企業利益の縮小、急速に膨らむ赤字を主因とする成長の減速を釈明する自己防衛の常套句(じょうとうく)である。
 それに、指導部はレーガン米大統領とサッチャー英首相時代に流行した経済理論を焼き直した。
 「サプライサイド経済学」だ。

 習近平政権による重要な成果は反汚職キャンペーンだ。
 もっと早くにやっておくべきだったという点ではほとんど異論はないだろうが、疑問も残る。
 次はどういう展開になるか、という疑問だ。
 「これはとても価値のある質問だ」
と胡祖六(フレッド・フー)氏は言う。
 胡氏はプライベートエクイティ(PE=未公開株)投資会社の春華資本集団(プリマベーラ・キャピタル・グループ)の創業者で、過去に何度か政府の非公式経済アドバイザーを務めたこともある。

  習氏が政権に就いて間もなく、共産党内部の腐敗に総攻撃を始めた際、これは目的を達成するための手段だと大半の人が考えた。
  家をきれいにした上で、産業構造の転換という本来の仕事を始めるだろうとの見方だ。
  ところが、まるで反汚職運動それ自体が目的であるかのような様相が強まっている。
  大勢の政府関係者を引きずり下ろすことで、
 習氏は政敵を排除し、
 権力を掌握し、
 一般大衆の間での人気を確固たるものにしてきた

  胡氏は中国指導部が自ら約束した改革を断行する「政治的決意と手腕」を併せ持っているか疑問を呈しているものの、望みを捨ててはいない。
  今後が期待できる兆候の一つは、同氏によると、国有企業の破綻件数が急増していることだ。
  これは指導部がとうとう改革を始めた証しだという。
  しかし、フィルターにかけられた上で各地方から戻ってくる報告は、政権が国有企業の大量の閉鎖ではなく、再編を考えているらしいことを示唆している。
  国家の政策立案者は恒常的に過剰生産が続いている業界――セメント、鉄鋼、石炭、ガラス――の大手企業に対し、同じ地域にある体力の劣る同業他社を乗っ取るよう指示を出している。
  換言すれば、政治的には競争の拡大ではなく、さらなる独占が指向されているということだ。

  一方、個人消費がけん引する経済への転換という難事業を進めるために、個人の創造性と社会的な活力へのテコ入れを必要としているまさにその時に、国の政治システムが閉鎖性を増している。
 また習氏の権勢と政治的弾圧は切っても切れない関係にある。

 こうしたことすべてが共産党内部の対立を先鋭化させ始めている。
 その証拠に、習氏の辞任を要求する謎の書簡が今月、中国のニュースサイトに掲載された。
 現在、犯人捜しが行われているが、このサイト運営会社と関連会社の従業員が十数人、行方不明になっている。

 政治的なもろさが経済的なリスクになりつつある。
 広範な産業構造転換を断行すれば、
 最終的に失業と社会不安をもたらすことになるのは避けられず、
 政権は確信を持って産業の改革を行う必要がある。
 経済が急激に減速しているため、中国政府は政治的に難しい改革の断行を余儀なくされ、それが以前よりさらに抑圧を強める可能性もあると指摘するエコノミストもいる。

 ドイツのガウク大統領は先週、上海にある中国有数の同済大学で講演し、中国が独裁色を強めていることに対して、中国と交易のある西側諸国が懸念していると話した。
 中国を訪問する欧米諸国の首脳は政治的な論争を敬遠しがちだが、ガウク大統領は珍しく、丁寧ではあるものの率直な言い方で、共産党が支配した旧東独の人々のみじめな暮らしについて語った。
 ガウク大統領は旧東独の「大半の人は幸せでも自由でもなかった」と述べた。
 大統領は学問的な自由や、市民が自発的に参加する社会、人権、労働組合を擁護した。こ
 れらはすべて、現在の中国政府の弾圧により危険にさらされている。
 ガウク大統領は学生たちに向けて、「中国の安定と繁栄はドイツにとって重要だ」と語りかけた。
  ドイツに限らす、世界中にとっても重要だ。
 世界経済は中国の成長に依存している。中国の政治的な失敗は、株式市場の乱高下や通貨危機よりも破滅的な影響をもたらし得る。

(筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト)



フィナンシャル・タイムズ 2016.4.5(火)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46511
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年3月30日付)

中国経済が世界に突きつける難題
突然の投資減少と急激な人民元安は現実的なリスク

  中国が試みている経済的な移行は、中国自身のみならず世界のほかの国々にも大きな影響を及ぼす。
 短期的には、中国の経済活動の急減速かもしれない現象からの波及を管理することが課題になる。
 長期的には、中国という金融大国の世界経済への統合にいかに対処するかが課題になる。
 だが実際には、短期的な出来事が長期的に何が起こるかも決めることになるだろう。

 インドがまとめた最新の「エコノミック・サーベイ」には、示唆に富んだ危機の分類法が提示されている。
 これによれば、危機が外国にもたらす衝撃は、
1):その危機はシステム上重要な国で起こっているのかどうか、
2):政府の借り入れの結果なのか、それとも民間の借り入れの結果なのか、
3):危機が発生した国の通貨は上昇しているのか、それとも下落しているのか、
という3点によって決まる。

 この分析と中国との間にどんな関係があるのか。
 その答えは、中国はシステム上重要な国であり、すでに額が大きく、なお急増する企業部門の債務に頭を悩ませている国だからだ、というものになる。
 この状況は、突然の投資急減と急激な人民元安につながっていくかもしれない。

 そのような急減速があり得ないということは全くない。
 究極的には持続しえない企業債務の増加と、極めて高い投資率に需要が依存している状況とが重なれば、そこに生じるのは脆弱性だ。
経済成長率が低下して年率7%を下回るようになった以上、国内総生産(GDP)の45%を投資が占める状況は、もはや経済の理にかなわない。
 また、この投資の3分の2近くは民間セクターによるものだ。
 このため、市場の力によって痛みを伴う調整を強いられるかもしれない。

 政府の対応は2種類考えられるだろう。
★.1つは、西側諸国の金融危機の際に見られたような財政赤字の大幅拡大。
★.もう1つは、より積極的な金融政策だ。
 しかし、為替レートの下落は、国内のデフレ圧力を打ち消す要因としても歓迎されるかもしれない。

 北京で3月に開催された中国発展ハイレベルフォーラムで中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、
 莫大な(かつ計画外の)規模に積み上げられた外貨準備高を減らすこと
は理にかなっていると語った。
 とはいえ、それにも限度があるに違いない。
 中国の資本勘定開放計画には逆行するものの、資本流出の規制が強化される可能性もあるだろう。

 中国の景気は弱ってきており、金融政策と信用政策は緩和されて為替レートも下落しているが、そのような危機はまだ見られない。
 資本流出の主たる原動力も、外貨建て債務の前倒し返済と「キャリートレード」の巻き戻しであるようだ。
 部分的には、これは人民元安のリスクが大きくなったとの見方がきっかけになっている。
 だが、需要の伸びは弱まってはいるものの、腰折れしたわけではない。
 今のところは、まず良好だ。
 ただ、この話はここで終わらない。

 世界経済は今、巨大なデフレショックを再度吸収できる状況にはない。
 そして、そのようなショックが中国で今後数年のうちに発生する可能性は現実にある。
 しかし、もっと長期的な問題も1つ浮上している。
 中国をグローバル金融システムにどのように統合させるのかという問題だ。

 過去の経験を見る限り、自由化と脆弱な金融システムの開放を同時に行うと、大きな危機に至ることが多い。
 また、その国がシステム上重要な国である場合、そうした危機は世界規模のものになる。
 変動相場制が打撃を和らげてくれる可能性もあるが、たとえそうだとしても、システム上重要な国の危機は多大な影響をもたらす。

 従って、中国が金融システムを世界に開放することは、世界全体が関心を払うべき事柄だと見なさなければならない。
 これについては、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が先日公表した論文で、いくつかのリスクを説明してくれている。
 重要なのは、証券投資資金の流入と流出がそろって激増する可能性があることだ(中国では、まだどちらもさほど多くないレベルにとどまっている)。

 現在、資金の流出は厳しく規制されている。だが、その規模を考えてみよう。
 中国の2015年の総貯蓄は約5兆2000億ドルで、米国のそれは3兆4000億ドルだった。
 また、中国のマネーサプライ指標でカバーする範囲が最も広い「広義のマネーストック」は昨年末時点で15兆3000億ドルあり、総信用供与残高は同じく昨年末時点で約30兆ドルだった。
 つまり、中国は貯蓄超大国なわけだ。

資金流出の規制が解除されれば、資産分散と資本逃避のために総額ベースで大規模な資金流出が生じることは想像に難くない。
 もしそのような巨額の流出に見舞われれば、3兆2000億ドルに達する現在の外貨準備でもすぐに枯渇してしまうだろう。

 外国の証券投資資金による中国の資産への投資需要も恐らくあるだろうが、それを現実化するのに必要な国内政策と制度改革は、普通では考えられないくらいほどハードルの高いものになりそうだ。
 従って、中国の資本勘定自由化は、中国からの多額の資金純流出、人民元安、そして経常収支黒字の拡大をもたらす可能性は高い。
 投資の減少もこれに拍車をかけるだろう。

 このような変化をどうすれば受け止められるのか、想像するのは難しい。
 なぜ難しいのかは、中国以外の国々の資産市場、為替レート、および経常収支にどのような打撃が及びうるかを考えればすぐ分かる。

 3月の中国発展フォーラムで演台に上った国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、次のように的を射た発言をしていた。

 「世界経済の統合が進めば、貿易や金融、あるいはマインドの変化を通じて影響が波及していく可能性も高まる。
 統合が続く中、効果的に協力することが国際金融システムを機能させる上で非常に重要になっている。
 これには、すべての国々が一致協力して行動することが必要だ」

 目下、中国経済における目下のストレスと、中国を金融面で統合するという長期的な難題とに協力して対応・管理することほど重要なことはない。

 もしどちらかで対応を誤れば、統合されたグローバル経済システムには耐えがたい圧力がもたらされる恐れがある。
 世界経済はまだ、西側の金融危機の余震への対応に苦慮している段階にある。
 世界は中国の危機への対応に完全に失敗するかもしれない。
 新たな金融覇権国が前回台頭したときに、世界経済は大恐慌に苦しんだ。
 今度はもっと上手に対応しなければならない。

By Martin Wolf
© The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
 』


中央日報日本語版 4月12日(火)13時56分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160412-00000022-cnippou-kr

韓経:【社説】中国金融危機 2、3年以内に現実化する可能性に対応を

 中国の銀行の不良債権増加が普通でない。2013年まで銀行の貸出全体の1%にすぎなかった不良債権規模が急速に増加し、最近は2%を超えたことが分かった。
 不良債権規模だけでも1兆4000億元にのぼる。
 不良債権の急増は米サブプライム住宅ローン危機で見られたように、金融システム全般の危機に拡大する可能性があるという点で注目される。

 不良債権が急増した理由は大きく2つある。金融危機後に中国政府が景気浮揚のために貸し出しを乱発したのが一つだ。
 その結果、中国の国家債務はGDPの300%に迫っている。
 成長率の低下も不良債権の規模を膨らませている。
 昨年6.9%まで落ちた中国の成長率は今年さらに下がる見通しだ。
 ブルームバーグ通信によると、海外投資銀行の今年1-3月期の中国成長率予測値は平均6.7%だ。
 4-6月期、7-9月期はそれぞれ6.5%、
 10-12月期は6.4%
と、年末に近づくほど低下すると予想される。

 問題は成長鈍化と不良債権の増加が重なれば、
 ある瞬間に突然、中国に金融危機が発生する可能性があるという点だ。
 米リサーチ会社ガベカルは最近、
 「中国にミンスキーモーメントが迫っている」
という報告書を出した。
 過度な借金をした債務者が
 健全な資産まで売ることになり金融システムが崩壊する時点をいう、いわゆる「ミンスキーモーメント」
が遠くないということだ。
 ガベカルは2020年以前にこうした危機が訪れる可能性があると警告している。

 年初にジョージ・ソロスなどのヘッジファンドが人民元の下落にベッティングしたのもこうした状況と無関係ではない。
 ヘッジファンドは不良貸出比率が2%を超えて増え続ければ、救済金融が避けられず、結局、人民元が暴落すると見ている。
 サブプライム危機を予想して大金を稼いだことで有名なヘッジファンドの
 ヘイマン・キャピタル・マネジメントは人民元が3年以内に40%ほど落ちると予想する
ほどだ。
 極端な予想だが、無視することはできない。

 こういうことが現実化すれば、韓国には災難だ。
 モルガン・スタンレーは中国の成長率が5%台に落ちれば韓国成長率は1%まで落ちる
と予想した。
 もしかするとそれ以上の緊迫した事態が発生するかもしれない。
 我々は十分に備えているのだろうか。

※本記事の原文著作権は「韓国経済新聞社」にあり、中央日報日本語版で翻訳しサービスします。


レコードチャイナ 配信日時:2016年4月13日(水) 8時10分  

「匠の精神」を追い求め過ぎて衰退した日本の製造業―中国メディア

 2016年4月12日、ここ数カ月、中国では供給側の構造改革と関係がある「匠の精神」という言葉が大きな話題となり、政治家や学者、メディアなどが頻繁にこの言葉に言及している。
 中国の製造業は、「高品質」へと舵を切り、そのためには「匠の精神」が必ず必要という見方で一致している。
 しかし、日本の製造業の衰退を見ると、「匠の精神」も適度な位置にとどめておかなければならないという教訓も得られる。
 (文:蘇清涛[スー・チンタオ]新華網掲載)

 20年ほど前、世界の家電市場では、日本のブランドがほぼ独占状態となっていた。
 そして、日本の「匠の精神」を、中国の企業の研究者が模範としてきた。
 しかし、ここ数年、日本の老舗ブランドの製品は、再起不能の状態に陥っている。

 日本最大の総合電機メーカー・日立製作所で16年働き、現在、京都大学原子核工学、東北大学工学部などの非常勤講師を務める湯之上隆氏は、著書「日本型モノづくりの敗北」の中で、日本のIT製造業の数十年の栄誉と恥辱を振り返り、日本の製造業から4つの教訓を導き出している
 うち、
▽:職人的な精神や技術者の技能に頼りすぎ、
 製品の標準化と汎用化をおろそかにし、
 低コストで大量生産する能力が圧倒的に不足していた
▽:性能と指標を過酷なまでに追求した結果、
 市場の実際のニーズのレベルを軽視し、
 必要のないコストを投入し、
 市場に変化が起きた時に研究開発の中で速やかに製品の調整を行えなかった
―この2つは、「匠の精神」と関係がある。

 経済学者の宋清輝氏は取材に対して、
 「中国の製造業は『高品質』へと舵を切る際、値上がりもするということに注意しなければならない。
 人々の消費能力は確かに向上したものの、全ての人が高価なものを買うとは限らず、最終的には高品質で高価となると、供給が需要を上回る可能性が高い。
 企業がイノベーションを追求しすぎて、市場の実際の状況や消費者の受け入れ能力に留意せずに、一気に先端技術を発展させようとすると、最終的に製品の値段があがるだけで、買い手はつかないという状況になる可能性が高い」
と指摘した。

 そのため、中国の製造業が高級化への転換を図る際には、「匠の精神」を発揮すると同時に、度を過ぎるというリスクにも注意しなければならない。

(提供/人民網日本語版・翻訳/KN・編集/武藤)


サーチナニュース 2016-04-16 14:13
http://news.searchina.net/id/1607556?page=1

品質重視を向いた日本人の思考ベクトル、
中国人のベクトルは・・・

 日本の消費者は「メード・イン・チャイナ」という言葉を聞いて、何を連想するだろうか。
 高級で上質な、人びとが憧れるような製品を連想できる人はほとんどいないはずだ。
 中国メディアの今日頭条はこのほど、「メード・イン・チャイナ」という言葉が世界の人びとの心を捉える魅力的なフレーズになるために、中国は人びとの思考ベクトルの方向を変化させることが必要だと主張している。

 記事は福建省晋江市のある皮革工場の事例を紹介。
 春節の時期になる工員たちは一斉に故郷に帰省するが、春節明けに戻ってきた工員はそのうちのわずか3分の1にとどまり、工場は人員募集せざるを得なかったという事例だ。
 人材が流出するこのような事例は福建省ではよくあることだ。

 記事はこのような人材流出が日常的に生じれば、安定した生産ができないのはもとより、匠の精神を培うことは到底不可能であると指摘。
 そして中国製品の品質を向上させるためには、製造業の発展のために喜んで打ち込もうとする技能型の人材を育成することが何にもまして必要だと論じている。

 記事が指摘するように優れた製品は生み出すのは優れた人材であり、日常的な人材の流出は中国製造業の発展力を削ぐものになるだろう。
 ここで問題なのはなぜ頻繁に人材が流出するのかということだ。
 なぜ製造の特定の分野に喜んで打ち込もうとする人々が少ないのだろうか。

 記事は1つの原因として
★.「できるだけ早くお金を儲ける」という精神が中国に広く浸透していること
を指摘している。
 人びとの思考ベクトルは「転職」、つまり仕事を変えることによってお金を儲けることに向けられており、仕事を質の良いものに向上させるほうには向いていないと記事は分析している。

 そうであれば中国に浸透しているこの思考ベクトルの「方向を変化」させればよいわけだが、かなり大きな力が必要なことは明白だ。
 しかし記事はこの点で日本に見倣えると説明。
 日本は1960年代に政府が品質を重視するよう率先して指導、またトヨタのような模範的企業の存在により、日本の思考ベクトルは品質重視に向いた。
 記事はこの2つの強力な力、すなわち
★.政府指導と模範的な企業の影響力は、
 中国人の思考ベクトルの方向を変化させることも可能である
という見方を示している。



済龍 China Press 4月18日(月)11時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160418-00010007-cnpress-cn

中国:2016年第1四半期GDP6.7%増に鈍化

 2016年4月15日、中国国家統計局が2016年第1四半期の経済統計データを発表した。

 初歩的統計によると、中国2015年第1四半期(1月―3月)の中国国内総生産(GDP)は、2015年同期と比較して6.7%増加し、15兆8526億元(約264兆円)となった。
 
 第1四半期GDPの内訳は、第3産業生産高が、前年同期比7.6%増の9兆214億元。第2産業生産高が、前年同期比5.8%増の5兆9510億元。第1産業生産高が、前年同期比2.9%増の8803億元となっている。



Record china 配信日時:2016年4月29日(金) 14時10分
http://www.recordchina.co.jp/a132884.html

「100年企業」中国は10数社、
日本は2万2000社の差はどこに?―中国メディア

 2016年4月27日、中国におけるグループ企業の平均寿命は7〜8年で、中小企業の平均寿命は3年を超えない。
  統計によると、
★.世界にある100年を超える長寿企業は、
 日本が2万2000社余り、
 米国は歴史こそ短いが1100社ある。
 これに対して
★.中国はたったの10社余りで、
 最も古い企業は明代の嘉靖9年(西暦1530年)に創業された六必居だ。

 無数の企業家が生まれ、同じように会社を興し経営をする。
 それにかかわらず、なぜ日米中三カ国でかくも大きな差が生じるのだろうか。
 社会的環境要素を除き、筆者は次のいくつかの点から分析を試みたい。

★.1つ目は、本業への専念という観点だ。
 100年もの間続く企業は、その本業だけに専念してきた企業だ。
 1837年から日用品だけを販売するP&G、
 1886年に創業したコカ・コーラ
などがその例で、他の分野に目移りすることなく本業に専念している。
★.西暦578年創業の世界最古の企業、
 日本の株式会社金剛組は、40代以上にわたり寺院の建築だけに専念してきた。
 それに対し中国の企業はどうか。
 起業して間もなく不動産を始めたかと思えば金融に手をだし、儲かることなら何でもやるといった様だ。

★.2つ目は、極めるという観点だ。
 小米(シャオミー)の創設者・雷軍(レイ・ジュン)氏は、創設当初
 「究極、専念、口コミ、スピード」という理念
を打ち出していたが、小米の「スピード」感のある発展に伴い、
 「究極」は捨てられ、「専念」は忘れ去られ、今では「口コミ」もユーザーから消えようとしている。
 中国の企業は常に追い越されることを恐れ、スピーディーな発展や拡大ばかりを求め、質の追求を忘れる。
 スティーブ・ジョブズ氏の「究極の普通」という理念がいかに偉大かが証明される。

★.3つ目は信用だ。
 日本の帝国データバンクが4000社を対象に行った調査によると、漢字一字で「長寿の秘訣」を表した場合、最も多かったのが「信」で、次が「誠」であった。

★.4つ目は、コア競争力だ。
 長らく栄える企業は、いずれもコア競争力を絶えず向上させている。
 華為(ファーウェイ)を例に挙げると、2015年に1000億元(約1兆7000億円)を研究開発に投じている。
 一方、アップルが同年81億5000万ドル(約9100億円)、グーグルが99億ドル(約1兆1000億円)を研究開発に投じたのと比べると、その規模の大きさが分かる。
 かつて世界最大のソーラー発電企業であった無錫尚徳は、創業12年で破綻。
 その重要な原因は、同社が精力を製品開発に注がず、低価格の製品を大量製造して価格競争に走ったことにあり、その後業界全体の衰退に繋がった。

★.5つ目は、人材の安易な選抜だ。
 中国には「富は三代続かず」という古い言葉があるが、日本では子孫の不孝による企業の衰退を防ぐため、多くの家族企業が徳と才能のある養子を選んで継承しているのだ。
 海●鋼鉄(森の木部が金)の倒産は継承と人選の失敗にその要因がある。
 創始者李海倉(リー・ハイツァン)氏が逝去し、息子が学業を辞めて帰国、会社を継承した。
 しかし、彼の関心事は資本市場だけに集まり、社内に顔を出す事はなく、資産100億元(約1700億円)の海●鋼鉄は2003年から2014年のたった12年間で破産宣告に至った。
 当時もし総経理(社長)で、人望の厚い5番目の弟が継承していれば、企業の運命は書き換えられていただろうと巷で囁かれた。

★.6つ目は資本の慎重な運用だ。
 上場は企業の知名度を高め、企業規模を拡大させるため、多くの起業家が上場をひとつの目標に掲げる。
 しかし、日本では長寿企業のほとんどが非上場企業なのだ。
 中国の新東方の創設者である◆敏洪(ユー・ミンホン、◆=諭のごんべんなし)氏は、
 「上場と同時に株主への責任が生じ、規模と利益ばかりを追求することになり、物事のゆとりを失ってしまった」
と上場を悔いている。
 華為の任正非(レン・ジョンフェイ)氏は、
 「資本市場には入らない。
 大量の資本が華為に流れ込めば、企業は多元化し、華為の20年余りの秩序ある管理が崩れてしまうだろう」
と強調している。
 飲料水大手の娃哈哈も上場していない。
 宗慶後(ゾン・チンホウ)社長の理由は「上場して融資を受ける必要はない」だ。
 老干媽創始者の陶華碧(タオ・ホアビー)氏も
 「上場すれば倒産のリスクを負う」
 「上場は人様のお金を騙すようなもの」
と上場には反対している。

 「小企業は社長に頼り、中企業は制度に頼り、大企業は文化に頼る」。
 企業の発展は制度のデザインと文化の創造と切っても切り離せない。
 しかし、企業が速い発展を目標とし、お金儲けを唯一の目標としたとき、深い企業文化の蓄積が望めないだろう。
 当然100年企業にもなりえないだろう。

(提供/人民網日本語版・翻訳/MI・編集/武藤)




【動画】


●【中国経済崩壊 最新 2016年4月5日】 中国・韓国が間もなくデフォルト危機に突入する模様!! -YouTube
2016/04/05 に公開




【2016 異態の国家:明日への展望】


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最新鋭護衛艦 てるづきの全て
2015/11/12 に公開





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アメリカの近未来戦争兵器(1):ハイテクすぎて?

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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月30日(Wed)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6422

米国のハイテクすぎる近未来戦の全容



ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、国防副長官と統合参謀本部議長を取材し、米国のハイテクにおける優位を最大限に活かす「第三の相殺戦略」についてのペンタゴンの見解を報告しています。
 要旨は次の通り。

■先進的“超強力兵士”製作に奔走する米国

 ほとんど注目されていないが、
 米国防総省は、ロシアや中国を抑止し得る、新奇な武器を追求している。
 国防総省の当局者は、
 ロボット兵器、
 ヒューマン・マシン・チーム、
 先進的「超強力兵士」
を作るための、
 人工知能や機械学習の最新ツールの利用を公然と語り始めている。
 当局者たちは、こうしたハイテクシステムがロシア軍や中国軍の急速な発展に対抗する最善策であると言う。

 ワーク国防副長官とセルヴァ統合参謀本部副議長へのインタビューで、これらの革命的な米兵器システムについて説明を受けた。
 数か月前までは軍の最高度の秘密研究だった内容である。

 ワークは
 「ハイテクは我々の戦闘ネットワークを強化する。
 ロシアと中国に十分な不確実性を与え、両国が米軍と戦うことになった場合に、核を使わずに打ち負かすことができるだろう」
と言っている。

■超ハイテク技術が対中露抑止力回復に資する

 国防総省内では、このアプローチは、「第三の相殺戦略」として知られている。
 それは冷戦中にソ連の軍事的進歩に対抗した
 二つの相殺戦略(第一は戦術核、第二は精密誘導通常兵器)に倣うものである。
 同省は、
 第三の相殺戦略は、高性能のロボット兵器が、ロシアと中国の技術発展により損なわれている抑止の回復に資する
としている。

 国防総省の2017年度予算には、
★.米海軍への中国の長距離攻撃に対抗する先進的兵器に30億ドル、
★.潜水システムの向上に30億ドル、
★.ヒューマン・マシン・チーム及びドローンの「群れ」による作戦に30億ドル、
★.人工知能を用いるサイバー及び電子システムに17億ドル、
★.ウォーゲームその他の新たなコンセプトに基づく実験に5000万ドル
などが含まれている。
 オバマ政権は、
 米国の最善の戦略は技術という最大の長所を用いることだと結論付けたようである。

 ロシアと中国にメッセージを送る意味もある。
 ワークは
★.ロシアを「甦る大国」
★.中国を「長い戦略的チャレンジとなり得る潜在的な技術力を持った台頭国」
と表現している。


 カーター国防長官は、予算教書において、「戦略的戦力室」による、小型カメラとセンサーを用いたスマート兵器、超高速発射体を用いたミサイル防衛システム、高速で抗堪性の高いドローンの群れ、などの研究を紹介した。

 ワークは、インタビューで、長さ1フィートに満たないマイクロ・ドローンPerdixを見せてくれた。
 ペンタゴンは、将来はこうしたドローンを組織的に用いる戦闘を考えている。

 ウクライナとシリアの戦場で、ロシアの能力が明らかになっている。
 今回のインタビューやその他の公開の発言で、ワークは、自動化された戦闘ネットワーク、先進的センサー、ドローン、対人兵器、電波妨害機器を含む、ロシアの軍事的前進ぶりを挙げている。
 ワークは
 「我々の敵は高度なヒューマン・オペレーションを追求しており、それは我々を大いに震いあがらせる」
と警告している。

出典:David Ignatius,‘The exotic new weapons the Pentagon wants to deter Russia and China’(Washington Post, February 23, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-exotic-new-weapons-the-pentagon-wants-to-deter-russia-and-china/2016/02/23/b2621602-da7a-11e5-925f-1d10062cc82d_story.html

*   *   *

 第二次大戦後の米国の軍事的優位を支えたのは、米国の技術の優位でした。
 技術の優位は競争相手国の努力により、次第に弱まります。
 近年ロシアの軍事技術が著しく高まり、また、中国は20年にわたる軍事予算の大幅な拡大により軍事力を飛躍的に高めました。
 このように米国の軍事的優位が脅かされるに至ったので、「第三の相殺戦略」でその優位を再確立しようとしているのです。

■最先端のハイテク技術でも技術優位には限界

 「第三の相殺戦略」の柱はハイテクです。
 ハイテクは湾岸戦争で明らかなように「第二の相殺戦略」の柱でもありましたが、さらに最先端のハイテクを駆使しようというのが「第三の相殺戦略」です。
 具体的には、
★.統制された多数のロボットの編隊(陸上及び海上)、
★.小型レールガン(電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)、
★.より小型の高性能爆弾、
などです。
 レールガンは従来の高価な迎撃ミサイルに代わって、敵のミサイルの迎撃にも有効とされます。
 「第三の相殺戦略」は、中国に関しては、A2/ADに対抗するものとしても考えられているといいます。

 「第三の相殺戦略」は、中ロに対する米国の軍事的優位を再確立する重要な戦略であり、米国にとってのみならず、日本を含め同盟国の安全保障にとっても肝要です。

 しかし、「第三の相殺戦略」による米国の軍事的優位がどのくらい続くかという問題があります。
 中ロはこれに対抗するため必死の努力をするでしょう。
 技術優位はいずれ弱まるものですが、とりわけ、最近ではサイバー攻撃による技術の窃取があります。
 特に「第三の相殺戦略」の柱である最先端のハイテク技術の一部は軍・民両用のいわゆるデュアル・テクノロジーであると言われます。
 米国は国防省のみならず、民間企業もサイバー攻撃に対する備えを万全にする必要があります。



ニューズウイーク 2016年4月10日(日)14時37分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4871.php

自動運転の米「ロボット軍艦」が試験運航へ、
中ロに対抗
5年以内には西太平洋やペルシャ湾で無人艦隊が活動か


●4月7日、米軍は、敵の潜水艦を探知する目的で試作された自動運転による軍艦の進水式を行った。米オレゴン州で撮影(2016年 ロイター/Steve Dipaola)

 米軍は7日、敵の潜水艦を探知する目的で試作された自動運転による軍艦の進水式を行った。
 中国とロシアの海軍増強に対抗する米軍戦略の中核である無人戦の大きな進歩を示すものだ。

 「シーハンター」と呼ばれるこのプロトタイプは、全長約40メートルで武器は装備していない。
 グーグルの自動運転車の軍艦バージョンのようなもので、
 搭乗員や遠隔操作なしで1度に数カ月間、海上を巡航できるよう設計されている。

 有人の艦船にかかる費用の何分の1かで、このような運航期間と自律性を備えた潜水艦探知の軍艦を造れるというのはかなり効率的である。

 「これは転換点となる」とワーク米国防副長官はインタビューで述べ、
 「われわれが初めて建造した完全なロボットによる、海洋横断可能な艦船だ」
と語った。
 また、5年以内にこのような軍艦を西太平洋に派遣できることを期待していると述べた。

 ワーク副長官のような国防総省の政策立案者にとって、シーハンターは、ますます自律性の高まる無人機を、従来の陸海空軍力に組み込むという戦略と合致するものだ。

 米政府内ではちょうどこの時期、潜水艦隊を含む中国の海軍増強をめぐり、西太平洋で米軍の優位を保つうえで決定的に重要な空母戦闘群と潜水艦の脆弱(ぜいじゃく)性に関する懸念が高まっていた。

 「対潜水艦(技術)に取り組んでいるのは、中国とロシアがこの分野で進歩を遂げていることを大いに懸念しているからだ」
と、米シンクタンク、ニューアメリカ財団の無人戦専門家で作家のピーター・シンガー氏は指摘する。

 ワーク副長官は、シーハンターが安全だと証明されれば、日本に駐留する米海軍第7艦隊に派遣し、試験を続ける可能性に触れた。

 ワーク副長官の目標は、人による監視を制限した状況下で、シーハンターのような艦船を対地雷作戦のような任務をも含むさまざまな作戦につかせることだという。
 「5年以内に、西太平洋やペルシャ湾で無人艦隊が活動するのを見たい」
と同副長官は語った。

 シーハンターの価格は約2000万ドル(約21億7600万円)で、
 1日当たりのコストは1万5000─2万ドルとなる見通しだが、これは米軍にとっては比較的安い水準だという。

 「有人の場合にかかる費用のほんのわずかな額で、このような資産を今では持つことができる」
と、米海軍の無人戦システムの責任者であるロバート・ギリア少将は語った。

■交通ルール

 米国防総省高等研究計画局(DARPA)が開発したシーハンターは、海上における国際的な基準を安全に守ることができるかを確認するなど2年にわたり試験される。

 何よりもまず、他の艦船を避けるためにレーダーとカメラを確実に使えるかをチェックする。
 2つのディーゼルエンジンを搭載したシーハンターは、最高速度27ノット(時速50キロ)のスピードを出すことが可能だという。

 自律性の高まる艦船や航空機の出現によって、一部の専門家や活動家の間では、人を脅威と認識し殺害しかねない武装したロボットシステムについて懸念する声が高まっている。

 オレゴン州ポートランドで行われたシーハンターの進水式で、ワーク国防副長官は今後、同艦に兵器を搭載する可能性について明らかにした。
 ただし、たとえ米国がシーハンターのような海軍ロボットシステムに武器を配置する決定を下したとしても、殺傷力の高い攻撃の決定は人が行うと強調した。

 「このような艦船を恐れる理由は何もない」
と、ワーク副長官は記者団に語った。

 (Phil Stewart記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



東洋経済オンライン Reuters 2016年04月14日
http://toyokeizai.net/articles/-/113473

米軍「歩兵ハイテク化戦略」の気になる中身
失敗続きの情報武装、三度目の正直なるか

 米軍は最前線の兵士に最新装備を支給する新戦略「スクワッドX」を発動した。
 陸軍や海兵隊の部隊を、電子制御された新兵器やスマートフォン式の通信機器、簡単に使えるロボットで支援しようというものだ。

 国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)でスクワッドXを担当しているクリストファー・オルロウスキー陸軍少佐によると、このプログラムは索敵の強化や、迅速かつ正確な反撃を可能にするのが目的だ。

 スクワッドは12人前後で構成される最小単位の部隊を指す。
 徒歩で移動する際はライフルや手榴弾のほか、機関銃や無線機を携行。
 複数が集まって大部隊になると、輸送車両や重火器、長距離の通信機などを装備する。

■巨費をつぎ込んで2度失敗

 2013年発動のスクワッドXは現在、構想の段階であり、具体的にどういった技術や機器を使うかは今後決める。
 米軍が1990年代以降に数十億ドルもの税金をつぎ込んだ
 歩兵のハイテク化は、技術的な問題から2度にわたり失敗
した。
 DARPAは過去との違いを強調しているが、今回成功するかどうかについて、米国民は懐疑的にならざるを得ない。

★.第1弾として1993年に発動された陸軍の「ランドウォーリアー」プログラムの装備は、
 無線機やウェアラブルコンピューター、そして頭部に装着するディスプレイなどで構成されていた。
 ディスプレイが表示する位置情報は、地上や空中だけでなく、宇宙にまで展開している敵と味方の戦力をリアルタイムで教えてくれるため、兵士は戦闘の状況を完全に把握できる、はずだった。
 陸軍はランドウォーリアーの装備を数セット開発するのに15年の月日と約5億ドルを費やした。
 そして2007年、この装備を支給された歩兵部隊が、戦闘でのテスト運用目的でイラクに派遣された。
 しかし、この装備は不評だった。16ポンド(約7.3キロ)の重量があったのに加え、1990年代に開発されたプロセッサーとソフトウエアは、2007年時点の水準からすると処理が遅すぎたのだ。
 「こんなものをつけたら動きが鈍くなり、格好の的になる」との声も出た。

 国防総省は2007年になってようやくランドウォーリアーを事実上撤回して
★.「ネットウォーリアー」というプログラムを2010年に発動
 ウェアラブルコンピューターなどをスマホに切り替えた。
 今度はスマホ画面に各人の位置が表示され、戦友にテキストメッセージも送れるというものだった。
 しかし、ランドウォーリアー同様、無線通信の遅延により戦友などの位置は正しく表示されなかった。
 それは耐え難いレベルだった。
 この装備の調達に数百万ドルを費やした陸軍は今もなお、ネットウォーリアーの欠陥を修正する努力を続けている。
  国防総省がスクワッドXで使用する機器などは未定だが、同省公表のコンセプトを見れば、どのような装備を求めているのか推測はできる。

 想像図では、兵士が従来と変わらないように見える自動小銃から、目的を追尾する小型の誘導弾を発射している。
 自動運転の軍用車や低空で監視を行うドローン、
 兵士の前方を偵察するヒト型ロボットなども登場する。
 ただ、これらの兵器は実験が始まったばかり。
 戦場への配備が可能になるには、あと数年はかかりそうだ。

 こうした想像図はまるでSFのようだが、まったく非現実的というわけでもない。
★.第一の課題は装備の軽量化だが、民生用の電話やカメラや無線機やドローンの小型軽量化は日々進んでいるので、少なくともこの点は解決可能だろう。
★.次の課題はネットウォーリアーでも改善されなかったデータ通信遅延の回避だ。
 この点については、カバー範囲は狭いものの電力消費は少ないなどの長所を持つ通信機器を採用する方針だ。

■ドローンを衛星の代わりに

 スクワッドXは、従来とは違い、全地球測位システム(GPS)使用を前提としていない。
 ロシアや中国、イランなどの各国がすでに、GPSの電波を妨害する技術を持っているため、戦場で無効になる可能性があるからだ。
 その代わり、ドローンに無線の中継機能を持たせることで兵士やロボットの間の局地的な通信を可能にして、部隊内の連携を強化するとしている。

 歩兵のハイテク化で失敗の悲運を重ねた国防総省が「3度目の正直」を望んでいるのは明白だ。
 DARPAは4月下旬にバージニア州で、スクワッドX向け機器を製造する企業を選定するための会合を開く。
 前線の部隊に実用性のある新技術を今度こそ配備できるかどうかは、そのうち明らかになる。

デービッド・アックス氏:
 軍事関連メディア「War Is Boring」の編集者で、ニュースメデイアの「Daily Beast」にも定期的に寄稿している。この記事は同氏個人の見解に基づいている。
 』


ロイター  2016年 05月 11日 11:53  David Axe
http://jp.reuters.com/article/pentagon-aircraft-idJPKCN0Y202I?sp=true

コラム:米国は「Xプレーン計画」で空の覇者に返り咲くか


●5月6日、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)のアーティストが考案した新たな垂直離着陸機(VTOL)Xプレーン・フェイズ2のデザイン。DARPA提供(2016年 ロイター)

[6日 ロイター] -
 あたかも空中で何十年も行方不明の状態だった米政府は、ようやく最新鋭の実験航空機を建造するビジネスに復帰した。
 これは最先端航空機の境界線を広げるものだ。
 これにより、米国はハイテク航空宇宙開発において長らく輝いてきた世界のリーダーとしての称号を取り戻すことができる。
 この肩書きをめぐっては、ロシアと中国が現在、猛烈に競り合っている。

 次世代の実験航空機「Xプレーン」は、民間と軍の航空技術を大きく進展させる可能性があり、ひいては米国の軍事力だけでなく、米経済を押し上げるものとなるだろう。
 これは航空宇宙分野での科学実験に相当する。
 新たなアイデアやハードウエアを試すための「Xプレーン」飛行が多ければ多いほど、軍と業界は、より早く量産型の航空機についての詳細な計画を練ることができる。
 また、「プログラム・オブ・レコード」として知られる、軍や民間の大きな飛行機計画と関連する必要さえない。

 「それはもっと柔軟だ。
 所定のシステムや成果にこだわる必要なく、実験によって様々な状況を調査することができる」
と米空軍の退役空軍中佐のダン・ワード氏は指摘する。
 「独立した試作機には大きな計画に必要となる諸経費が要らないため、より安上がりで、納期までの必要時間を短縮できる」
と語る。
 ワード氏は「The Simplify Cycle: A Field Guide to Making Things Better Without Making Them Worse(原題)」の著者でもある。

 Xプレーン計画で主導的な役割を担うのが、米航空宇宙局(NASA)と米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)だ。
 共通する目標は、早急に比較的安価な実験機を多く製作することと、それらをテストして、軍や民間航空セクターが採用すべきを新技術を決めることだ。

 米航空大手ノースロップ・グラマンのケビン・ミッキー副社長は1月、「パラダイム・シフトについて聞いている」と米防衛専門誌ナショナル・ディフェンスに語った。
 「DARPAがXプレーンについて話し、米海軍が緊急能力について話しているのを聞いたことがある」
 DARPAだけで、少なくとも2機のXプレーンに従事している。

★.1つは「ライトニングストライク」と呼ばれるハイブリッド機で、回転翼と、太くて特大の翼内部に搭載した24の小型エンジンによって、ヘリコプターのように離着陸し、飛行機のように巡航することができる。
★.もう1機は、XS─1「スペースプレーン」で、強力なエンジンと先端的な構造材料によって、少なくとも音速の5倍の速さで飛行できる。
 小型人工衛星を軌道に載せるため、大気圏上層部の端にまで上昇することも可能だ。

 これらのXプレーンはどちらも軍事用に転換できる。
 米国防総省は、滑走路を必要としない、
 垂直離着陸が可能な新型の回転翼機を求めている。
 通常機同様に敏速で長い飛行が必須となる一方で、耐久性や操縦の安全性も必要だ。
 国防総省が現在保有している唯一のハイブリッド機は、
 ティルトローター機「V─22オスプレイ」
で、ヘリコプターと飛行機の要素を兼ねる。
 しかし同機は過去30年の開発期間中、信頼性と安全性の問題で悩まされてきた。
 例えば昨年5月、V22が着陸する際に、エンジンが砂を吸引したため、ハワイで墜落事故を起こしている。
 乗員2人が死亡し、20人が負傷した。

 DARPAは最近「ライトニングストライク」Xプレーンの小型ロボット版を建造するため、バージニア州の航空宇宙会社オーロラ・フライト・サイエンシズと契約した。
 機体の長さが13.4メートルとなる試作機は、2018年に初飛行が予定されている。
 DARPAの航空部門を率いるアシシュ・バガイ氏は、設計者にとって、実験機は困難だがやりがいのあるものになると予想する。
 「その他にも重要なリスクがある。
 統合された翼や小型ロケットエンジン、電子飛行、回転翼、過作動コントロールシステムのそれぞれのパフォーマンスなど、これらはすべて、新技術が新たな能力を発揮するために極めて重要だ」
と同氏は語る。
 「私たちは、すでにある飛行機の焼き直しを設計・開発するためにいるのではない」

 遠隔操作のXS─1「スペースプレーン」によって、軍は多くの人工衛星を速く、そして安く打ち上げることが可能となる。
 各機を何度も宇宙に飛ばすことができるので、宇宙船を軌道に載せるために使用する一回限りのロケットにかかる法外な費用を削減することができる。
 DARPAは4月、ボーイング、ノースロップ・グラマン、マステン・スペース・システムズという業界大手がそれぞれ主導する3つの業界チームに声を掛けて、「技術的な実現可能性と方法を評価」した。
 DARPAは少なくとも1つのチームを選定して、試作機を製作し、2020年までに試験飛行をする予定だ。

 NASAのXプレーンは、さらに幅広い用途を対象にしている。
 こうした新型機向けの年間予算が10億ドル(1090億円)増えることを期待して、NASAは2月、Xプレーンを少なくとも3機建造する10カ年計画を提案した。
 その1つが「ブレンデッドウィング」の設計で、米空軍のB─2ステルス戦略爆撃機によく似た「空飛ぶ翼」だ。
 NASAは、従来機よりも、その翼が静かで燃費が良いと推定。
 商業用旅客機向けに提案されたジェット機は、航空業界にとって年間何億ドルもの燃料費削減を可能とする一方で、二酸化炭素排出量や騒音も大幅に削減できる。

 NASAはまた、超低燃費の亜音速機をテストするためのXプレーン1機を設計している。
 つまり、音速よりも遅く飛行するが、現在の機よりも低コストで低排出だ。
 開発中の3機目のXプレーンは、超音速の商業用ジェット機で、現在の社用ジェット機と同じ大きさと快適さを誇り、速さは2倍になる可能性がある。
 「航空の変革を加速するこの10カ年計画によって、米国は今後何年間も航空分野で世界のリーダーとしてのステータスを維持できる」
とNASA航空部門のジャイウォン・シン副長官は声明で述べた。

 ある意味では、こうしたXプレーンは、米国がかつて放棄した、航空界での支配的な立場を回復するのに役立つ可能性がある。
 Xプレーンの専門家で、「The Big Book of X-Bombers and X-Fighters(原題)」を執筆したスティーブ・ペース氏は、こうした動きの背景を説明する。
 「1950年から53年の朝鮮戦争は、米空軍のリソースを枯渇させた。
 そして大規模な補給が重要となった。
 この空白状態を埋めるために、多くの新たな最先端の軍用機が設計され、建造されなくてはいけなくなった」
とペース氏は述べた。

 冷戦時代に国防総省とNASAは、数多くのXプレーンを建造。
 それらは、ロケットエンジンを搭載した超高速機や、数え切れぬほどの小さな違いを有する従来型ジェット戦闘機や爆撃機、そして1950年代に進められた事実上の空飛ぶ円盤、つまり、垂直離着陸式の「プロジェクト1974」もあった。
 しかし、1990年代初頭のソ連崩壊と冷戦終結が、米政府を安全保障に関する誤った意識へと導いたようにみえる。
 Xプレーン開発はほとんど急停止に追い込まれた。

 NASAはいくつかの実験用の宇宙飛行機の応用研究をしたが、最後の試みは、1980年代に開発された、珍しい前進翼のデザインを持ったX─29だった。
 先端技術の翼設計は、より強力な操縦可能性をもたらすものだったが、安定性に欠けていた。
 NASAは飛行制御を改良したが、1991年に試験を止めた。

 一方、米軍はB─2やF─22、F─35などのステルス戦闘機を含む、少数の実戦用軍用機を、大量生産をにらんで選択し、Xプレーン計画をほぼ放棄した。
 その間、ロシアと中国は独自の先端的な宇宙航空計画を進めていた。
 ロシアは、独自のステルス戦闘機を生産し、B─22に似たレーダー回避型爆撃機の開発を始めた。
 そして、極超音速に資金を投入した。

 中国は過去5年にわたり、2つの新型ステルス戦闘機の試作機をデビューさせ、少なくとも、もう1つの試作機開発にも取り組んでいると報じられている。
 中国もまた、DARPAの宇宙往還機に似た、少なくとも2つの極超音速機の実験を行っている。
 中国製J─20戦闘機の試作機が西側に公開された数週間後の2011年1月、当時の米海軍中将で、海軍情報局局長だったデビッド・ドーセット氏は、中国の開発は特に米国防総省を驚かせたと認めている。

 前述のペース氏は
 「2000年代初頭から、中国とロシアの航空機メーカーがもたらした進歩は、文字通り、米軍機構を覚醒させた」
と語る。
 「非友好的な空軍に対処するには、新型で先端的な戦闘機を急いで築かないといけない。
 それは、そう遠くない未来に必要になるだろう」

 しかし、米政府は現在のXプレーン計画を、ただ単にロシアと中国の開発に対する直接的な反撃とはとらえていない。
 むしろそれは、米国の宇宙航空業全体に新たな息吹を注入する、幅広い試みの一環と考えられている。

 過去に起きたように、より革新的な宇宙航空セクターが、必然的により先端的な旅客機や戦闘機へとつながることを、米政府は期待している。
 米政府の視点からみれば、ロシアと中国に先んじることは、1つの副作用だ。
 それがたとえ重要なことであっても。

*筆者は軍事情報サイト「War Is Boring」の編集者で、ニュースサイト「Daily Beast」に定期的に寄稿。またWIREDのウェブサイト「Danger Room」や雑誌「Popular Science」にも執筆している。最新のグラフィックノベルは「Army of God: Joseph Kony’s War in Central Africa(原題)」。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。




【2016 異態の国家:明日への展望】


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2016年3月29日火曜日

中国解放軍の天皇批判:韓国の李明博はこれで日韓をダメにした、天皇批判は日本のタブー

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 天皇批判は日本民族にとってタブーである。
 韓国の李明博はこれで日韓関係を修復不能な状態にしてしまった。
 中国の天皇批判は解放軍組織の発言であるので、日中関係は日韓関係のようにはならないと思うが。
 しかし、日本人の中国嫌いが更に強くなることは避けられないだろう。
 このへんのところが中国の外交シロウトといえよう。
★.中国共産党が解放軍をコントロールできていないのか、
★.それとも日本の反応を見るため共産党が解放軍に意図的にやらせたのか
は定かではないが、どちらであっても中国嫌いを増進させることになることは明確だろう。
 これによって、新安保法制施行や与那国島自衛隊配備に対する日本国内での反対が小さくなってしまうことになるだろう。


サーチナニュース 2016-03-29 14:57
http://news.searchina.net/id/1605994?page=1

昭和天皇の天皇責任」に言及、
中国軍関係組織が文章発表  
内容はお粗末、異
説ある主張の「いいとこ取り」で構成(編者解説付)

 中国軍の機関紙「解放軍報」を発行する解放軍報社が運営する情報サイト「中国軍網」はこのほど、「日本のファシストの勃興と発展は、天皇の大きな支持を得た」と題する文章を掲載した。
 中国の公的組織が昭和天皇の戦争責任を指摘することは珍しい。
 なを、同文章は有力な異説がある主張について、自らの論旨に都合のよい部分を“いいとこ取り”しているなど、かなりお粗末な内容だ。

 文章は冒頭で、福沢諭吉こそ、脱亜入欧論を提唱することにより、
 「朝鮮を侵略し、中国(の一部である)台湾を併呑し、中国の東北三省をさらに占領し、最終的に北京に日本国旗を打ち立てる構想を立てた」
人物と論じた。

 また、1921年10月に欧州にいた陸軍士官学校16期の岡村寧次、永田鉄山、小畑敏四郎がドイツの保養地であるバーデンバーデンで会合し、軍における長州閥の打倒及び諸般の改革、国家総動員体制の確立、満蒙問題の早期解決を誓い合った「バーデンバーデン」の密約について、「全力で日本が軍国主義を歩む道を広げた」、「日本の軍におけるファシズム運動の出発点になった」と論じ、
 同会合や結論は「裕仁皇太子の奨励によるもの」と決めつけた。

 文章は、大正天皇の摂政であり、後に天皇に即位した昭和天皇の「大きな支持」もので、日本のファシズムは勃興し、発展したと主張。

 さらに、日本による中国侵略の意図は、田中義一首相兼外相が天皇に提出した「田中上奏文」に露骨に示されていると主張。
 同文書については
 「日本は一貫して存在を否定しているが、その種の否定は無駄である。
 最も重要なのは、日本が侵略政策を実行した歩みは、『田中上奏文』の既定の線路に沿って進んだからである。
 『田中上奏文』は日本による中国侵略の陰謀の自供書であり、世界大戦を発動するスケジュール表でもあった」
と決めつけた。

 文章は、日本の戦争発動について、1929年に米国で発生した経済危機が全世界を席巻したことで、経済の基盤が弱かった日本は大打撃を受け、日本の統治集団は襲いで対外侵略の拡張を準備し、苦境を脱出しようとしたと論じた。

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◆解説◆
 冒頭に書かれた福沢諭吉のアジア観に対して、日本でも批判があることは事実だ。
 ただ、代表的著作あるいは考え方のエッセンスとされる「脱亜論」を読みさえすれば、福沢が中国や朝鮮の侵略を目指したわけではないことが分かる。

 福沢がまず、。西洋文明の流入を防ぐことはできず、受け入れた方が利益が大きいのは明らかである以上、積極的に受け入れねばならないと強調。

 しかるに、中国や朝鮮は「昔のまま変わらず、国家の独立を維持する方法を持たない」と指摘。さらに、日本が西洋から中国や朝鮮と同一視されるのは「日本の一大不幸」と説いた。

 福沢は、朝鮮の理不尽さや残虐さ、中国の腐敗などを具体的に指摘し、日本が同一視されるという「実害」が出ていると強調した。
 そして、近隣のよしみで両国を「特別扱い」する必要はなく、日本は西洋諸国と同じように両国に対すればよいと主張した。

 なお福沢は、中国・朝鮮について「志士が出て明治維新のように政治体制を変革できれば」よい状況になる可能性はあると、両国を頭ごなしに「見込みなし」と決めつけているわけではない。

 文章は、1921年10月のバーデンバーデンの密約について、「ファシズム運動の出発点」と決めつけた。
 しかし、当時の欧州は第一次世界大戦の直後といってよい時代だった。
 欧州諸国にとっての第一次大戦は、現在でも第二次世界大戦以上に悲惨な戦争体験とされる。3人はむしろ「日本が経験したことのない総力戦の実態を知り、危機感を高めた」と理解すべきだろう。
 軍の将来をになう若き将官として、総力戦に備えた「動員」などを考えるのは、むしろ当然だろう。

 なお、イタリアのムソリーニが率いる政党「戦闘的ファッショ(ファシスト党)が、選挙で初めて議席を獲得したのが同年だった(35人)。
 後に、ファシズムやナチズムに心酔した日本軍人が存在したのは事実だが、解放軍報掲載の文章によると、日本の若手将校は「世界に先駆けて、ファシズムの道を歩んだグループのひとつ」ということになる。

 田中上奏文は昭和初期に米国で「発見」されたとされる文章だが、日本では一般的に偽書とされている。
 1927年の作成とされる文章だが、すでに死去していた山県有朋が登場するなど、
 事実と矛盾する内容が多いためだ。
 中国で広く流布したが、日本が抗議したところ、中国政府は機関紙で「真実の文章ではない」と表明。
 ただしその後改めて、プロバガンダに用いるようになった。

 なお、その後の経緯が類似していることを、田中上奏文の「真実性」の証拠と見なすのは、
 「ユダヤ人は世界で大きな勢力を持っている。
 このことは、ユダヤ人には古くからの世界征服計画があることを意味する」
と同様のレベルのロジックだ。




● FNNニュース



レコードチャイナ 配信日時:2016年3月29日(火) 18時10分
http://www.recordchina.co.jp/a132079.html

自衛隊の配備で「与那国島が日中の新たな軍事的な火種に」、
住民は安全を懸念―中国メディア

 2016年3月29日、日本が尖閣諸島に近い与那国島に陸上自衛隊の部隊を配備しレーダーで周辺の動きを監視することに、中国側は「地域の平和や安定に貢献できるような行動を」と述べ一貫した主権を主張するなど、互いに譲らない様相を呈している。
 これに関して環球時報は、「与那国島が日中の新たな軍事的な火種に、住民は安全を懸念」と伝えた。

 16世紀の与那国島は当時の琉球王国に統治されており、19世紀に琉球王国とともに日本に帰属した。当時、琉球王国および同王国が統治する島の帰属をめぐって当時の清朝から強い反発があり、日本は与那国島を清朝に割譲することを提案し清朝も同意したが、琉球側の激しい抗議があり実行されることはなかったという。

 香港紙は今年初めの報道で、
 「尖閣諸島問題が激化する中で、一度は忘れ去られた与那国島の重要性を日本首脳陣は近年再認識した。
 これに対し与那国島の住民は複雑な心情。
 自衛隊の配備は島の基本的な施設建設に役立つ一方で、日中の軍事的な争いの最前線にさらされることになる。
 住民の中には日中間で軍事的な衝突があった際に与那国島が攻撃の対象になることを懸念している」
と伝えている。
 このほか、韓国メディアは、
 「日本が与那国島を軍事化することで、今後同島が日中の新たな軍事的な火種になる可能性がある」
と指摘している。



レコードチャイナ 配信日時:2016年4月1日(金) 4時30分  
http://www.recordchina.co.jp/a132285.html

中国の一挙一動が日本を不安にさせている―ロシア紙

 2016年3月30日、中国新聞社によると、ロシア紙・コンサルタントは29日、
 「中国の一挙一動が日本を不安にさせている」
との記事を掲載した。
 日本は28日、中国をけん制する目的で与那国島に配備した陸上自衛隊レーダー施設の運用を開始した。

 日本が新たにレーダーを配備し、軍事的存在感を高めつつある中国に対する監視活動を行うことについて、中国は「地域の平和と安定を損なう」として反対したが
 日本政府は
 「東シナ海情勢は中国が悪化させている」
と譲らない姿勢をとっている。
 米カーネギー国際平和財団のジェイムズ・L・ショフ上級研究員は、
★.「レーダーは武装配備ではない。
 中国が活動を活発にさせている中、日本にできる最低限の行動だ」
と指摘している。

 一方、ロシアはこの問題については中立的な姿勢を維持しており、日米の軍事的圧力に対してのみ懸念を示すにとどめているが、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は25日、千島列島に新型地対艦ミサイル「バル」と「バスチオン」、軍用無人機「エレロン3」を配備して軍備を増強することを明らかにしている。




【2016 異態の国家:明日への展望】


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