『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月05日(Sat) 高田勝巳 (株式会社アクアビジネスコンサルティング代表)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6276
上海の不動産が大変なことになってます!
2月半ばの春節の休暇明けから、上海の不動産が暴騰を始めた。
1週間で30%以上上昇した物件もあるようだが、上海の仲介会社によると今年に入ってから概ね10%〜30%程度上昇しているイメージだそう。
■上海バブルは終わらない?
はっきりしているきっかけは、2月19日に交付された不動産取引税軽減策と言われている。
といっても、軽減されるのは、上海市の場合でも一時取得のケースで140平方メートル以上(この面積は共有部分も入って建築面積といわれるものなので、日本流の占有面積で言えば100平方メートル程度)の物件の取引税3%が1.5%になった程度であるが、これでも、買替え需要を随分と刺激しているようだ。
最近話をした上海の不動産デベロッパーの友人も、にわかに、新規開発用地の取得の動きが出始めて忙しくなってきたという一方で、あまりにも急な値上がりとその背景に心配もしているとのことであった。
中国のネットメディアをみても、今回の暴騰は異常であり、その危険性を指摘する声もでている(http://www.chinabgao.com/info/86670.html)。
昨年のコラムで、中国崩壊はありえないとの考えを表明した自分ではあるが、この程度の相場の暴騰、暴落はあり得るのが中国であると認識している。
ただ、この友人の話を聞いていて、私もさすがに少し心配になってきたので、今回聞いた話を読者と共有したいと思う。
彼の話を少し補足して整理すると以下のとおり。
★.⒈ 不動産の価格の上昇は、昨年深センから始まった。
今年1月までに半年間で価格が約50%程度の上昇となった。
★.⒉ 上海は、春節明けから始まった。
不動産取引税の軽減は確かに一つのきっかけであることは間違いないが、大きな背景としては、地方財政の問題があるのではないかと睨んでる。
★.⒊ 中国の地方財政を支えている一つの柱はなんといっても国有土地使用権の払い下げによる現金収入だ。
しかしながら、最近の経済の減速、外資の進出の減少、投資用不動産の投資規制などの影響により、土地の払い下げが減少しており、当然、地方財政を圧迫している。
こうしたなか、確認できる地方債務の総額は30兆元に達するといわれている。
そうなると、政府としては、何としても、不動産取引を活性化し、新たな物件の開発につながる環境を作りたいと思っても不思議ではない。
■官製バブルの懸念も
★.⒋ 以下の 諸点は、あるネットメディア(http://mt.sohu.com/20160227/n438727687.shtml)の分析であるが、現在の不動産関連政策は、不動産市場の活性化のために、最近10年ないし、少なくとも2008年以来最も緩和された状況と分析している。
こうしてみると国を挙げて不動産市場を下支えしようとする政府の意図が見て取れる。
(1):一戸目の住宅ローンの自己資金の下限がこれまでの30%から、地域によって20〜25%に引き下げられている。
二戸目以降は30%。
(2):住宅ローンの金利は08年以来最低レベル。
(3):2線都市は営業税が免除。
(4):不動産取引税の減税。
(5):上場不動産企業は、昨年3000億元の社債を発行したが、この金額は14年の18倍。
その他、別の上海の友人の話によると、二戸目の購入時で、かつ中古物件の購入の場合の自己資金の比率が70%から40%に引き下げられた影響が大きいと考えている。
これまで二戸目を買えず、うずうずしていた人たちが一気に買いに入ったと。
★.⒌ もしそうだとすると、昨年の株式市場のように、もともとは市場の活性化を意図した中での、経済実態を反映しない株価の暴騰が、最終的には株価の暴落で治ったと同じことになるのではないかと心配している。
もちろん、不動産は、株式と違って、実際に居住のための実需があるので一概にはいえないが、これまでの不動産開発に頼りすぎた経済成長政策のために、市場に供給しすぎて在庫になっている不動産があるなかでの話なので、こうした懸念が出ている。
■大学生は自己資金ゼロで住宅ローンが組める
★.⒍ もっと心配しているのは、遼寧省の瀋陽市で出された大学生は自己資金0でも住宅ローンを借りて住宅を買えるという政策。
いずれ学生が住宅ローンを払えなくなり、中国版サブプライムになり、最終的に銀行にそのしわ寄せが行くのではないかと心配している。
★.⒎ 自分も不動産を複数所有しそれが資産形成になっているが、一方で、中国経済の健全な発展を考えると、不動産価格ばかりが上がる状況に対する疑念も強くもっている。
これは中国でよく聞かれる笑い話であるが、本当の話である。
中国はこれから産業の高度化が必要であるのに、これではだれもまともな事業に投資しようとはしないのではないか。
(1):10年前に自分の唯一の資産であるマンションを80万元で売却しそれを元手に事業を始めた。
(2):身を粉にして働いて事業は一応成功し、10年後に400万元の貯金ができた。
(3):この金で10年前に売却したマンションを買い戻そうとしたら400万元だった。
全く、中国経済の矛盾、問題点が凝縮された話である。
中国では、全国の土地を実態的には全て政府が所有しているので、地方財政の問題も、日本、欧米をはじめとした土地の私有性を前提とした国と単純比較はできないと思う。
ただ、それにしても、財政の穴埋めをいつまでも土地使用権の払い下げによる収入に頼りすぎるのは、やりすぎればいつかは破綻することは間違いない。
そのバランスを中国政府はきちんと分析、管理できていることを、中国に投資している者として切に願いたい。
それ自体が悪いのではなく、度を越すことが危険なわけであるので。
』
JB Press 2016.3.22(火) 姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46388
焚きつけているのは誰?
上海で住宅バブル再燃の怪
もはや“ぼったくり”、日ごとに吊り上げられるマンション価格
●1億円を超える値段で売り出されている上海のマンション(筆者撮影、以下同)
上海で終わったはずの住宅バブルが再燃している。
2015年春以降、住宅市場が息を吹き返し、今年に入ってどんどん価格を上げているのだ。
「いまだかつてないバブルだ」(地元紙)との声も聞こえてくる。
「中国ではもう住宅バブルはないだろうと思っていました。
また、こんなことになるなんて信じられない」
こう語るのは上海在住の会社員だ。
上海では誰もが「住宅価格は天井に達した」と思っていた。
しかし昨年(2015年)、住宅価格が再び上昇局面に入る。上
海で販売された住宅面積(新築・中古含む)は前年比55%増の1500万平米。
1平米当たりの平均価格も3万元(1元=17.5円として約52万5000円)を超えてしまった(「捜房網」による統計)。
●上海の不動産バブルが再燃している
■慌てて値段を書き直す不動産仲介業者
1990年代に外国人向けに開発された区画である。
ある老朽マンションでは、この2月、2LDKの物件に630万元の値がついた。
日本円にしたら1億円超だ。
2000年代前半の住宅バブル前夜には140万元だったから、実に4.5倍の値上がりである。
このマンションは、2015年春から強気の価格をつけるようになった。
注目すべきは昨年後半から今年にかけての値動きだ。
4月に400万元だったのが、9月には480万元にまで上がり、さらに春節明けの2月には630万元にまで上昇した。過去最高の価格といっていい。
古北新区の中古マンションの価格は日々更新される。
歩道にせり出す黒板広告(写真)には、不動産仲介業者が慌てて「2」を「3」に書き直した跡が見受けられる。
欲を出した売主が「まだまだ行ける」と価格を吊り上げているのだろう。
驚くのは、こんな“ぼったくり価格”でも購入者がいることだ。
同エリアの不動産仲介会社のセールスマンは「1日で2戸も売れた」と顔をほころばせる。
■マンションの購入者はほとんどが投資目的
住宅バブル再燃の背景にあるのは、
政府の景気刺激策だ。
中国政府は景気の冷え込みを防ぐため、2009年の「4兆元の財政出動」に代わる景気刺激策を打ち続けている。
不動産業界でも住宅在庫の削減に向けて、規制を緩和させる方向にある。
上海では税金面での優遇策、住宅ローンの融資条件緩和、住宅積立金の預金利率を引き上げなどが導入された。
また昨年の夏以来、株式市場に見切りをつけた投機資金が不動産に向かうようになったことも一因だ。
特に最近は海外への資金移転が困難になったことから、資金が不動産市場に集中する傾向が見られる。
一級都市では、不動産購入を抑制するために導入された「限購令」が完全に解除されたわけではない。
政府は投機行為を抑制するスタンスを崩していない。
それにもかかわらず、目の前で起きているのは「投機行為」だ。
上海の中心街ではごく普通のマンションに600万元、700万元、800万元という“豪邸”級の値段がつけられるようになった(冒頭の写真)。
「購入時の10倍になった」と明かす住民もいる。
前述した古北新区の老朽マンションについて言えば、「購入者はほとんどが投資目的」(前出の営業マン)である。
自分が住むための買い替えはほとんどない。
不動産神話はまだまだ健在で、多くの人が「いずれまた売却益を出せる」(同)と信じている。
地元紙「東方早報」は「市場は理性を失った」と報じ、空前のバブルの到来を懸念する。
地元の主婦は「狂気じみている」と肩をすくめる。
上海だけではない。
上海以外の北京、広州、深センの一級都市と一部の二級都市でも、不動産は異常に値上がりしている。
今年1月、深センでは新築住宅の1平米当たりの販売価格が4万6500元を超えた。
前年比で74%の増加である。
またしても不動産投機と価格の暴騰が始まったのだ。
■三級、四級都市では住宅在庫が山積み
再燃した住宅バブル。
だが、それは習近平政権が掲げる経済の「新常態」(ニューノーマル)とは明らかに相容れない。
中国政府は緩やかで着実な経済成長を目指す政策に転換した。
だが、中国人は再び一攫千金の夢を追い求めようとしている。
前出の会社員も投機熱の高まりを懸念し、こう語る。
「昨年の株式投資ブームと同じ現象が起きている。
あのとき、800万元、1000万元という大金を株で儲ける者が続出した。
株式市場が暴落したら、投資家が不動産市場になだれ込んできた。
政府の政策で金回りがよくなっていることは間違いないが、民衆心理につけ込むやり方には賛成できない」
地方都市の惨状を指摘する学者もいる。
「大量の住宅在庫を抱える地方都市の財政は“火の車”だ。
政府はせめて一級都市でバブルを再燃させて、財政を潤わせようというのだろう。
最近の住宅バブルには、そんな政府の思惑が見え隠れする」
確かに不動産市場が活況なのは一級都市と一部の二級都市のみだ。
それ以外の三級、四級都市は、積み上がる住宅在庫の消化に四苦八苦している。
中国の専門家の間では「すでに2013年に不動産の黄金期は終わった」という認識が定着している。
都市部における20~45歳の人口は2013年をピークに減少に転じ、今後は住宅の販売面積も比例して減少するとみられる。
2013年に新たに着工した不動産は20億平米だったが、2020年には10億平米を下回るといわれている。
おそらく、上海の住宅バブルも長くは続かないだろう。
すでに下半期には、政府が引き締めに乗り出すという観測もある。
株式市場と同様、一過性の政策がもたらす暴騰は中国の先行きをますます不透明なものにしている。
』
『
TBS系(JNN) 3月29日(火)19時29分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160329-00000049-jnn-int
中国都市部で「住宅バブル」再燃か、
地方では余剰在庫も
中国経済は減速しているはずですが、なぜか大都市の住宅の価格が高騰しています。
住宅バブルの再燃と言えるこの活況。
取材を進めると、危険な販売実態が見えてきました。
上海では今、新築マンションが販売開始と同時にほぼ完売するという状態が続いています。
上海市内にある取引センターには、連日、早朝から大勢の市民らが訪れ、窓口は混雑しています。
上海の新築住宅価格は、2月までの1年間で25%上昇。
深センでは57%も値上がりしました。
「確かに高いですけど、長期的にみれば価格はまだ上がると思います」(購入者)
この女性は去年4月、上海市内のマンションをおよそ5000万円で購入。
この1年で、価格は3000万円近く値上がりしたといいます。
「1年でこんなに値上がりして驚いています。
不動産市場が良ければお金は不動産に、悪ければ株式市場に流れていきます」(購入者)
価格急騰の背景には、何があるのでしょうか?国内消費が冷え込んでいる中国では、2014年から金利や不動産取引税が段階的に引き下げられたことで、投機マネーが大都市の不動産市場に流れ込んでいるのです。
住宅の専門家は、さらに「違法な貸し付け」の実態を指摘します。
「購入資金として頭金のお金のかたまりのない人には一部デベロッパーでその分を工面したり、事実上の販売促進策として、ローンがなされている」(不動研上海投資諮詢・御旅屋徹社長)
中国での一軒目の住宅購入には、少なくとも20%以上の頭金の支払いが義務付けられています。
しかし、その頭金を払えない人に対してデベロッパーや仲介会社が高金利で貸し出し、購入を煽っているというのです。
実際、仲介業者を訪ねてみると・・・
「デベロッパーと貸金契約を結べば、頭金も借りられます。頭金はデベロッパーに返済し、銀行ローンは銀行に返済すればいい」(不動産仲介業者)
しかし、地方では、状況は一変します。
江蘇省・常州市では、かつて大規模な住宅開発が進められました。
ところが、常州市では住宅の在庫をあまりにも多く抱えてしまったため、土地の供給を数年前からストップしています。
ところが、住宅の販売状況は改善していないということです。
「売れない住宅が本当に多いです。
たとえ投資しても、値上がりする可能性は低いです」(不動産仲介業者)
多くの地方都市では住宅の在庫がだぶついていて、不動産市場の2極化が加速しているのです。
「不動産市場の安定と健全な発展のために、各都市の実情に即し、対策を取り、在庫を消化する」(李克強首相)
中国の国会にあたる全人代でも、住宅問題が議論されました。
ただ、住宅投資はGDPのけん引役となっているだけに、問題解決には慎重な対応が問われています。
「不動産が動かなくなると、経済が立ちゆかなくなる。
そのバランスをどう取っていくか」(不動研上海投資諮詢・御旅屋徹社長)
暴落すれば、社会不安を招く恐れもある不動産市場。
上海市などはようやく規制策を打ち出しましたが、住宅問題は沈静化するのでしょうか。
』
『
サーチナニュース 2016-03-31 10:35
http://news.searchina.net/id/1606182?page=1
恐ろしい!
わが不動産バブルが崩壊すれば日本より悲惨なことに=中国
中国ではかつての日本のようにバブルが崩壊するのではないかと懸念が高まっている。
中国メディアの和訊網はこのほど、
「中国の不動産市場がバブル崩壊したら、日本より悲惨なことになる」
と題する記事を掲載した。
中国の主要都市における不動産価格の暴騰にともない、中国不動産が日本と同じ轍を踏むかという議論が増えている。
記事は、バブル当時の日本を例に挙げ、「日本全体の不動産価値が米国の5倍」になるほど高騰したが、当時は日本人の多くが
「日本は土地が少なく人口密度が高いので、日本の不動産は永遠に上昇し続ける」
と真剣に考えていたと紹介した。
その上で、中国の不動産もバブルだと言われてはいるものの、少なからぬ中国人は中国と日本の不動産を比較したがらず、中国が日本と同じ轍を踏むことも認めたがらないと指摘。
その理由についで
★.「中国の都市化はまだ終わっていないこと」と
★.「中国の不動産価格は当時の日本ほど高くないこと」
を挙げ、
中国バブルはまだまだ終わらないと考えている人も少なくないと論じた。
しかし記事は、現在の中国の状況はバブル崩壊前の日本とよく似ていると指摘。
特に、
★.巨額の貿易黒字によって人民元高となっていること、
★.高齢化が進んでいること、
★.量的緩和政策と投資先のない流動性、
★.住宅の大量供給
が類似しているという。
いつどのようにバブルが崩壊するかを予見するのは難しいものの、
★.バブル崩壊の前には必ず、価格の上昇に懐疑的だった人も疑うことをやめ、
★.新物件があっという間に売れ、価格が急速に上昇するという状況が見られる
と指摘。
「中国の市場でこのような状況が見られるなら、注意した方が良い」
と呼びかけ、
「多くの人が不動産価格はさらに上昇すると考えている時が一番危険だ」
と警鐘を鳴らした。
最後に記事は、中国経済の競争力と国民の所得水準の現状を考えると、
バブルがひとたび崩壊したら、まず間違いなく
「当時の日本よりもずっと悲惨なことになる」
と予測。
この災難にうまく対処できるかどうかは決して楽観視できないと危機感を示した。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2016年4月2日(土) 8時50分
http://www.recordchina.co.jp/a131746.html
中国の不動産市場、
日本の二の舞になることはない―中国紙
2016年4月1日、中国の一部都市で不動産価格が急上昇するたびに、日中両国では「中国バブル経済崩壊論」がささやかれ、中国の不動産市場とバブル崩壊前の日本経済を同一視するような文章が次々と出現する。
環球時報が伝えた。
(文:安田明宏・三井住友トラスト基礎研究所 海外市場調査部副主任研究員)
確かに、今の中国は以下の方面において、不動産バブル崩壊前の日本とある程度の相似性がある。
(1):為替介入による過剰流動性
1985年、プラザ合意によって円高が進み、景気回復のため米ドルを大量に購入したことで流動性が過剰になり、バブルがもたらされた。
中国も2005年の人民元為替改革後、貨幣価値の安定を保つために米ドルを購入したほか、2008年に実施された「4兆元の経済刺激策」により、過剰流動性の問題がある程度存在する。
(2):労働力の減少
日本は90年代前半に労働人口がピークを迎え、その後は減少しており、住宅ニーズにも影響が出ている。
中国も人口ボーナスが減少するという問題に直面している。
(3):物価の変動
バブル崩壊前は日本の物価は相対的に安定していたが、崩壊後は長期的なデフレに陥った。
中国は現在は物価が相対的に安定しているが、金融政策は効果が遅れて出るため、デフレリスクにはやはり警戒が必要だ。
生産者物価指数(PPI)が数年連続で低下していることはその一例だ。
(4):シャドーバンキングの存在
日本では住宅金融に従事する企業が非銀行機関を通じて融資を行い、バブル崩壊後に資金を回収できず、不良債権の処理に時間がかかった。
中国でも、信託資金あるいは銀行の金融商品資金の一部が地方の融資プラットフォームから不動産市場に流入している。
(5):金融の自由化
日本で80年代に始まった金融自由化により、日本企業の資金調達手段が多様化したが、海外資金は資産バブルを助長することとなった。
中国でも自由貿易区の建設、預金金利の上限・下限の撤廃、人民元オフショア市場の創設といった措置は、中国の金融自由化を加速する一方で、バブル助長のリスクももたらしている。
こうした状況ではあるが、中国は日本の経験を参考にし、バブル崩壊および長期的な経済低迷を回避することができる。
まず、日中両国は発展の段階が異なる。
★.日本はバブルが崩壊したとき、経済成長の潜在力が不足していた。
中国も高度成長期は終わっているが、依然として中高速の経済成長を維持しており、まだ潜在力を発掘できる。
★.次に、両国は経済体制が異なる。日本は自由主義経済だが、中国は社会主義市場経済であり、政府のマクロコントロール能力が強い。
自由主義経済の日本では、政府が政策実施のスピード、タイミング、適時性のバランスをとりにくい。
一方、中国はこの面において柔軟性と実行力を兼ねそろえている。別な角度から見ると、中国の国民は政府の経済政策に自信を持っており、政府は救済措置を打ち出す能力があると考えている。
★.さらに、両国は都市化のレベルにも違いがある。
経済が成熟期に入った日本では都市化が完了しており、住宅ニーズはそれほどない。
一方中国の都市化は依然として高度発展中であり、住宅ニーズは大きい。
このほか、
★.中国は日本よりも国土が大きく物が豊富で、地域間の経済発展の格差も大きい。
局地的な動向が全国的な発展の流れと一致しないことは正常な現象だ。
不動産価格を例にとると、急上昇しているのは一部の大中都市に限られている。
中国経済は新常態に入った。
不動産市場も同様だ。
一部都市の不動産価格の変動は、バブルの膨張と崩壊とも言えるが、
中国は日本のように「失われた20年」に突入することはないだろう。
中国経済の中高速成長率が不動産市場を支え、政府が打ち出す不動産政策が往々にして速やかに功を奏するからだ。
(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/武藤)
』
『
サーチナニュース 2016-04-14 11:22
http://biz.searchina.net/id/1607370?page=1
北京の不動産価格が下落するはずない!
総楽観の現在はまるでかつての日本のよう=中国
中国で不動産バブルが生じていると言われて久しい。
バブル崩壊を警戒する声はかねてから根強く存在するが、現時点ではまだ不動産バブルは崩壊していない。
しかし、中国の不動産市場が不健全であることは否定のしようがない事実だ。
中国各地には誰も住んでいないマンションやテナントの入っていない商業施設が数多く存在するほか、内モンゴル自治区オルドス市をはじめ、マンション群全体が廃墟と化したゴーストタウンのような街も存在する。
中国メディアの投資者網はこのほど、
中国でも「北京や上海の不動産価格が下落するはずがない」
などと、まことしやかに囁かれていることを指摘し、まるで往年の日本のようだと警戒する記事を掲載した。
記事は、日本でもかつて「東京の地価やマンションの価格が下落するはずがない」と言われていたことを紹介しつつ、バブル崩壊直前まで地価が上昇し続けていたことを指摘。
現在の中国はまさにかつての日本のような「強気」な言葉が蔓延していることを指摘したうえで、総楽観の状況に警戒心を示した。
日本もかつて資産バブルを経験した。
株価や不動産価格が上昇し、土地が限られている東京において、地価が下落するはずがないなどとする「土地神話」もあった。
しかし、こうした土地神話は見事に崩壊し、バブル崩壊とともに地価や不動産価格は暴落、銀行から資金を借りて投資を行っていた企業や人は巨額の負債を抱え込むこととなり、日本経済にも大きな爪痕が残った。
中国の不動産バブルはまだ弾けていないが、在庫は着実に積み上がっており、外部から見る限りではとても楽観視できない状況にある。
』
ロイター 2016年 03月 31日 12:02 JST
http://jp.reuters.com/article/china-economy-property-idJPKCN0WX04B?sp=true
アングル:中国不動産価格は地域格差拡大、
経済対策の障害に
[唐山(中国)/香港 31日 ロイター] -
中国の不動産価格は、上海や北京など第1級都市で高騰する一方、都市部人口の大半を占める中小ではなおも下落が続く。
このような状況は、貧富の是正や経済成長減速の阻止に向けた政府の取り組みを難しくしている。
中国の投資家にとって、不動産は、資金運用手段として株式や債券とは比べ物にならないほど特別な資産。
したがって不動産価格の下落が個人資産や国内消費の動向に及ぼす影響は非常に大きい。
不動産会社サビルス・チャイナのアルバート・ラウ最高経営責任者(CEO)は
「不動産市場は多くの包括的産業ラインや消費と結び付いており、中国経済を支えるための基幹産業の1つだ」
と指摘する。
中国の成長率は昨年、25年ぶりの低い伸びにとどまったが、国内総生産(GDP)の2割を占める不動産とその関連セクターの弱さが成長の足を引っ張り続けている。
不動産市況が全体として持ち直せば、政府が2020年までに5000万人を貧困から救い出すという公約を達成する上でも重要な役割を果たすだろう。
しかし、足元では地域格差が鮮明だ。
2月の第1級都市の不動産価格は約2年ぶりの高い伸びとなり、深セン、上海、北京の前年比上昇率はそれぞれ56.9%、20.6%、12.9%だった。
しかし第2級以下の都市に目を移せば、依然として過剰在庫に苦しんでいる地域が多い。
2005年ごろに始まって14年に終えんを迎えた直近の不動産ブームが、大量の売れ残りや未完成の開発物件を生み出したからだ。
鉄鋼生産が盛んな河北省の唐山市では、不動産ブーム当時の熱狂的な開発がたたって、アナリストの推計では解消までに最大13年もかかるような過剰住宅在庫が生じている。
■<未完成物件>
公式統計によると、2月の唐山市の住宅価格は18カ月連続で前年割れを記録した。
ロイターが先週、同市を見て回っただけでも少なくとも10件の未完成物件があった。
それぞれのプロジェクト打ち切りとともに業者に頭金を持ち逃げされた被害者の不幸は計り知れない。
開発が放棄された物件の1つでは、建物のドアに「私の家を返せ」と落書きされていた。
ある50歳の女性は、数年かけて貯めた12万元(1万8400ドル)を新築マンションの頭金として支払った直後に、開発が中止されて業者が頭金を持って姿を消したと話した。
ただ業界第7位の開発会社、碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)のMo Bin社長は楽観的で、政府の税制や各種刺激策の後押しによって中小都市の住宅投資が再び活発化すると期待している。
同社長は
「われわれは第3級や第4級の都市では名の通った売り手で、解消に長年かかるほどの在庫も持っていない。
だから今後は販売価格を下げのではなく、上げていく」
と語った。
■<まずは経済再生>
もっともそうした楽観論ばかりではない。
主に河南省で開発を手掛けていた建業地産(0832.HK)のHu Baosen社長は、同社を不動産開発業から不動産関連サービス業を主軸にする企業へと衣替えを進めていると述べた。
同氏は
「第3級、第4級の都市における住宅市場の先行きには期待が持てない。
河南省の在庫解消にはあと5年かかるかもしれない」
と厳しい見方をしている。
地方政府も手をこまねいているわけではなく、新たな手法を駆使して不動産市場を上向かせようとしている。
開発業者への土地売却に財源を頼っている地方当局にとって、不動産の活性化は特に緊急の課題と言える。
だが中国国家発展改革委員会(NDRC)幹部のChen Yajun氏によると、地方当局の中には農村から労働者に過剰状態の住宅を買わせようとしているものの、うまくいっていない。
中国の戸籍制度とそれに付随する福祉給付が、こうした買いを阻む要因になっているという。
サビルスのラウ氏は、小規模都市で住宅への実需を生み出すには、まず経済自体を再生させる必要があると訴えている。
(Xiaoyi Shao、Clare Jim記者)
』
ダイヤモンドオンライン 2016年3月31日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/88786
政府の気まぐれ政策に翻弄される?
中国で巻き起こる土地の財産権問題
住宅コミュニティを中国では「小区」と呼ぶ。
時々「新区」と呼ぶ場合もある。
たとえば、上海の古北新区だ。
上海市長寧区の古北新区は改革・開放時代を迎えてからできた上海初の大型高級住宅街である。
日本人をはじめ韓国人や台湾出身者などもこの街に住むのが好きだ。
そのため、日本人村または台湾人村と呼ばれる場合もある。
構内を歩いていると、前や後ろを行く人々が日本語や英語、ドイツ語、韓国語などを話しているのが聞こえる。
南方訛りの共通語をしゃべっている台湾人にもよく出会う。
国際的な雰囲気が色濃く漂っており、海外からきた人々は親近感を覚える。
レストランを見ても、日本料理屋や台湾人が好む「小吃(中華風スナック)」をメニューにしている店やイタリアンレストランが多く、クリーニング店の看板にかかれている料金案内が日本語によるものであったりする。
構内には英語を常用語とするインターナショナルスクールもある。
古北新区の入口の横にあるカルフールは、数百店舗をもつ同社の中国販売ネットワークの中で売り上げが一位という不動の地位を誇っている。
以前、このコラムで古北の魅力に触れたことがある。
「古北新区に住んでいると上海の人に言えば、青山、白金台、広尾に住んでいる、と聞かされた東京人のように相手は目を見張る。
……古北新区が持っているリッチかつ開放的な雰囲気は、それを求めている海外から来た多くの人を虜にした。
私もそのなかの一人だ。
古北にある優雅な喫茶店でウィンナーコーヒーを啜りながら、ここに自分の家もほしいものだと思った。」
詳しくは「高島屋、ヤマダ電機……中国進出失敗の原因は本当に「反日」か」をご参照いただきたい。
この古北の魅力について、かなり前に中国事情に詳しいある日本人ビジネスマンに確かめたことがある。
彼の見方によれば、塀のない古北の一帯はリッチかつオープンだ。
そのことで町の魅力が倍増したという。
■増えてきた街の塀を撤去する都市計画に住民の反応は?
しかし、実際には、そのあと、この塀のない古北はだんだん塀だらけの隔離された生活の空間となってしまった。
この街を語る際、確かに高級、リッチというキーワードが依然として生きているが、この街がもともともっていた開放的な魅力は次第に消えかかっている。
人々もこの開放的な魅力が次第に感じられなくなったこの古北から遠ざかっていった。
私もその中の一人だと言えよう。
そのためか、しばらく前に、中国で新しく発表された都市計画建設規定を見て、一瞬、机を叩くほど興奮した。
その規定には、
「今後、新築住宅には街区制(塀を設けないブロック方式)を採用し、既存の社区(コミュニティ)や集合住宅の塀は段階的に撤去する」
という条文が盛り込まれているからだ。
街区制とは世界での都市計画の経験を総括したものであり、欧米などの国々で広く行われているやり方となっている。
さらに重要なのは、中国の塀で囲まれた社区は確かに問題があるということである。
T字路や行き止まりを生むなど道路のレイアウトに影響し、交通渋滞の主な原因となっており、社区居住者の移動にも影響が出る。
北京などの大都市ではこうした問題が特に深刻で、社区が社会に与えるマイナス影響は言わずもがなである。
だから、私は塀の撤去という規定を熱烈に支持する側の人間と見ていいだろうと思う。
しかし、興奮はすぐに冷めた。
土地の私有ではないにしても、住宅コミュニティになった以上、その土地などの用途についてはそこに住む住民の了解を得ないと、いくら政府であっても勝手に口を出せないはずだ。
■あくまで住民たちの私有財産と一部の法律学者は指摘
案の定、ほどなく住民から強い疑問の声が上がった。
ネットでの調査によると、調査対象の7割の人が社区の塀の撤去に反対しており、この規定は独りよがりだと痛烈に批判する学者もいる。
塀の撤去は財産権・契約・法律などの問題にかかわっており、一部の法律学者が指摘するとおり、中国の物権法の定めによれば社区はそこを購入したオーナーの私有財産であって、敷地内の道路使用権はすべてのオーナーに帰属し、法の保護を受ける。
オーナー以外の者に開放する義務はなく、政府も関与する権利はない。
住民、所有者の了解と理解を得ないままで、いきなり社区の塀撤去という極端な措置に踏み切ることは、長年に渡って公私のラインをあいまいにしたまま、私有財産保護に尽力しようとしない政府の従来通りの考え方が映されている。
法律などよりも上の言うことだけ聞くという中国の政治文化を考えると、一部の地方政府がまた以前のように一斉に強権を振りかざして塀の強制撤去を行う可能性は否めない。
こんなことを心配しているから、学者を含む一部の人々は、地方政府に対する不信感の強さから塀の撤去に反対する住民者の列に加わっている。
この頃、中国政府が制定した政策は安定を欠いている。
事前調査が足りないためか、どことなく思いつきで政策の強硬実施に踏み切る傾向がある。
今回のこの塀の撤去に対する反対の声は熱くなりやすい政府役人の頭を冷やすいい薬だと思う。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2016年4月8日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/89285
「パナマ文書」騒動が水を差す
反腐敗運動への中国庶民の期待感
パナマの法律事務所で作成されたタックスヘイブン(租税回避地)関連文書に、習近平国家主席の親族の名前が発覚したことが物議を醸している。
反腐敗を政権の錦の御旗に掲げてきた習近平自身が“腐敗していた可能性”が出てきたからだ。
もともと習近平政権の支持をめぐっては、中国でその賛否は大きく分かれていた。
エリート層は毛沢東路線を彷彿とさせる政治闘争や言論の統制を理由に批判的だが、
官僚の腐敗撲滅の大鉈を振るったという点では、庶民のウケはかなりよかったのだ。
この一件で習政権への民衆の支持は相当落ち込むかもしれない。
反腐敗運動そのものが失速する可能性もある。
だがその一方で、反腐敗運動は地方都市で支持を得ており、むしろ期待感が高まっている一面を見逃すことはできない。
政権支持のカギを握るのは「改革の実現」である。
海外メディアは否定的だが、中国の一部の人々の間には「改革は目に見えて進んでいる」という評価が存在するのだ。
地方政府における“下級役人”たちの眼には少なくともそう映っているようだ。
■接待漬けの日常は去り今はもっぱら20元の食堂
地方でも熱が入る反腐敗運動だが、地方政府の内部ではいったいどんな変化が起きているのだろうか。
筆者は沿海部のX市の政府機関に勤務する男性・王偉さん(仮名)と面会した。
四級都市に分類される300万人のX市は、町工場と田畑だけの地味な地方都市だ。
けれども、街の中心部を占拠するのはそれとは不釣り合いな高級マンション群、この街もつい数年前まではバブル経済の真っただ中にあったのだ。
ステーキハウスやワインショップの数の多さからも、接待漬けの享楽三昧が当たり前の日常になっていたことが伺える。
そんなX市も今では反腐敗運動に力が入る。
反腐敗運動がもたらした最も大きな変化とは何だろう。
王さんに尋ねると、間髪入れずしてこんなコメントが返ってきた。
「接待がなくなったことです。
今では食事はもっぱら食堂で食べています」
かつては1回の飲食につき3万元(当時で約50万円程度)は消費した接待だったが、これが一切なくなったというのだ。
仮に上層部が当地に出張してきたとしても、「食堂を利用してもらう」(同)。
職場の中だろうが外だろうが、使うのは食堂。
ちなみに食堂の食事とは、プラスチックのトレイに乗せられたごはんとスープと3つの“菜(おかず)”という、一人20元(1元=約17円)程度のエコノミーな食事だ。
「自分の財布を開くことない贅沢な飲食」は、本当に過去のものとなったようだ。
「どうしても」というケースもある。
やむを得ず、高級な場所で接待しなければならないときはどうするのか。
王さんは「そのときも関連の下属機関を巻き込み支払わせる」(同)。
「自分たちの組織では絶対に払わない」という徹底ぶりだ。
「民間企業からの接待もなくなった」
という。
かつてはプロジェクトの受注をめぐって、官は民の接待を受けたものだったが、これがすっかり姿を消した。
公務員はゴルフや飲み食いの接待に応じることができなくなり、かつて身近だったKTV(高級クラブ)にも行かなくなった。
公務員が民間のビジネスに関わることも固く禁じられた。
頻繁にあった出張もなくなった。地方政府の公務員は出張に行かない代わりに、必要な打ち合わせは電話会議で済ませるようになった。
「数年前までは、出張のたびに宿泊代や食費にかなりの金額を使った。
特にかさんだのは手土産の出費。上級政府(省レベルの政府)に持っていく贈答品にはかなり出費したものでした」
と王さんは話す。
■鳴りを潜めた高級消費
接待禁止が景気低迷に
王さんのこの話からは“官官接待”でも多額の金が使われていたことが伺える。
ましてやこれが“官民”となるとさらに露骨だ。
つい最近まで、欧州の高級ブランドの時計や宝飾品、スーツなどは、高級幹部に贈るうってつけの贈答品だといわれた。
日本の質屋同様、それらを買い取り現金化するしくみまで構築されていた。
市民とは無関係の、贅を尽くした高級飲食店や派手なナイトクラブの林立は、まさに「官を動かすためのもの」だった。
街の美容院やエステサロンでさえ高級化し、接待の場に使われた。
ところが、2013年1月に、習近平総書記が号令をかける。
「大トラもハエも一緒に叩け」――。
この反腐敗運動をきっかけに、「高級」をうたった商品やサービスの消費は影を潜めたのだ。
この年、中国では高級ブランドショップの業績が一斉に停滞し始めた。
現地紙は
「二級都市の高級ブランド店では利益が出なくなった」
「2店に1店が閉鎖となる事態に陥っている」
などと報じた。
一級都市の上海でも「在庫一掃セール」が目を引くようになった。
香港のブランド街から行列が消えたのもちょうどこの頃。
大陸での贈答品需要の低下は香港経済を直撃した。
「中国の景気が悪いと言われるのは、公務員の消費がなくなったためです」
と王さんも指摘するように、これまで
中国全体の消費を動かしていたのは、ほかならぬ公務員たちだった。
公費による海外出張(実際は旅行)、車の購入、飲食を指す「三公消費」だけでも、毎年9000億元にも上るとささやかれてきた。
目下、これをなくす取り組みが国を挙げて行われているが、その結果、飲食、娯楽、高級品の消費低迷をもたらすことになった。
王さんはこう続ける。
「今までが“アブノーマル”だったんです、
三公消費で経済が成り立つなんてどう考えてもおかしい。
今は、たとえ成長率が落ちたとしても正常化に向かっている。
私は現政権の政策方針である『新常態』を支持していますよ」
習近平政権の政策方針である新常態(ニューノーマル)とは、これまでの高い経済成長の追及よりも内容重視への転換を意味する。
2015年は反腐敗運動のみならず、この「三公消費」への圧力も一段と高まった一年だった。
一方、こんな変化もある。
王さんによれば
「(地方政府の)高官の執務室がぐっと小さくなった」
というのだ。
以前は100平米を上回るだだっぴろい空間に、豪華なベッドやシャワー室までついていた。
「ついてない設備は台所だけ」(同)
だったという。
そんなホテルのスイートルーム級の仕様も今はなく、面積も15平米に縮小された。
このように、高級幹部は職権を乱用し好き放題を極めた
同じ公務員といえども高級幹部とは天と地の差の“下級役人”、彼らからすれば「いい気味」というわけだ。
また、高級幹部が“下級役人”の恨みを買った例に、ボーナスがある。
中央政府から地方政府にボーナスが割り振られると、まずは地方の高級幹部が自分の懐に入れる習わしがあった。
残りを部下に配分するのだが、それはほんの“スズメの涙”程度のもの。
このやり方が“下級役人”の積年の不満となっていたのだが、反腐敗運動はこうした不正も糾弾できるという機会をもたらした。
“下級役人”が中国共産党中央規律検査委員会に直訴した結果、一部の政府機関で下級の公務員の待遇が大きく見直されることになったのである。
悲願の「ボーナス支給の正常化」である。
中国全土に広がる反腐敗運動は、上層部の権力闘争と関連付けて報道されることが多いが、その一方で、“下級役人”たちの職場環境の改善をもたらしていることも確かである。
■アブノーマルからニューノーマルへ
正常化に向かい始めた地方政府
一方で、王さんは
「反腐敗運動を通して、職員がまともに働き出した」
とも明かす。
これは大きな変化だ。
少なくとも接待で潤っている限りはまじめに働く必要もなかっただろう。
そんな公務員たちがついに「本業に目覚めた」わけである。
目下力を入れているのは、不動産開発業者に売却した土地代金の回収だ。
経済の好循環が止まり、土地売却がもたらす収入への依存が困難になった今、財政破綻への危機感はますます募る。
ようやく重い腰を上げたのはこうしたことが背景にある。
ちなみに、当局の幹部には職権を乱用し個人的な関係で土地を譲渡したケースが非常に多い。
税金も同じだ。
これまで個人的なつながりで見逃された脱税行為もしっかりと督促されるようになった。
今、地方政府の内部では
「公務員が不正に蓄えてきたものをすべて吐き出させる」
という改革が進行中だ。
その先に見えてくるのは、
人治から法治へ、そして“アブノーマル経済”から新常態(ニューノーマル)経済へ
の移行である。
「時間はかかるが、これが中国経済の正常化をもたらすはず」と王さんは前向きだ。
「習政権の改革は期待薄」と消極的な評価も多いが、一方で、こうした実質的な変化も見逃すことはできない。
その矢先の“パナマ文書”である。
筆者は改めてこの王さんにパナマ文書の件を尋ねた。
彼は慎重に言葉を選びこう語った。
「気にしてないとしか言えない」。
せっかく浸透し始めた改革も再び逆戻りしてしまうのだろうか。
』
【2016 異態の国家:明日への展望】
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