数年前に「中国のバブル崩壊は2015年にはじまる」と予言したのはソロスであった。
彼は自己のこの判断に沿って動いてきた。
2015年には中国の株式市場が部分的に崩壊した。
それが事のはじまりとなり、元安が進行しはじめた。
ソロスは今「中国はハードランデイングする」という見通しをしている。
ハードランデイングすればその時点で中国経済の成長は止まる。
中国経済自体が崩壊することはないが、外資は逃げていき、成長エンジンはストップして、中国への成長の期待はなくなる。
成長の期待がなくなるとどうなるのか。
外資が逃げ、国内資本は海外へ流失する。
問題はそれよりも国内不安が一気に高まることだろう。
明日への期待で耐えてきた民衆が動き出したらどうなる。
国有企業の石炭鉄鋼部門でいよいよリストラが始まった。
その数「180万人」。
驚くべき数値である。
まさにハードランデイングが始まった、とみても大きく間違いではないだろう。
さらにはこの部門をとりまく下部の企業産業にも影響が出るだろう。
倍と見込んでも、350万人になる。
そのとき中国共産党はどういう道を進むのか。
解放軍と同等の予算をもって維持されている公安武装警察で強行に抑えこむのか。
それとも、国外侵攻を行ってナショナリズムを煽り、南シナ海で事を起こして民衆不満のはけ口をつくるのか。
中国が今後のアジアの地雷原になる可能性は大きい。
急激成長によるGDP廃棄物が自然発火するかもしれないのだ。
これからの数年間は中国からは目が離せないことになってきている。
『
ロイター 2016年 02月 24日 14:38 JST
http://jp.reuters.com/article/analysis-china-foreign-reserves-idJPKCN0VX0BY?sp=true
焦点:急減する中国外貨準備、いつ限界水準に達するか
[北京 24日 ロイター] -
中国の外貨準備はなお世界最大規模を誇るが、資本流出に伴い急スピードで減少しており、
中国政府は遠くない将来に人民元の切り下げ、あるいは資本統制への逆戻りを強いられるとの見方が一部で浮上している。
中国の外貨準備は1月に995億ドル減って3兆2300億ドルとなった。
2014年半ばに比べると7620億ドル減と、スイスの国内総生産(GDP)を上回る規模で減っている。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は先週、「財新」のインタビューで資本流出について、ドル高を背景とした国内企業によるドル建債務の返済と対外投資による部分が大きいと指摘。
債務返済は間もなく底を打つし、対外投資は歓迎すべき動きだと擁護してみせた。
大半のエコノミストは、中国の外貨準備にはまだ大きな余裕があるとの見方に同意しているが、一部には数年後と言わず数カ月後にはブレーキを踏む必要が出てくるとの見方もある。
外貨準備の減少ペースが加速したのは、人民銀行が海外の投機売りや国内の資本逃避に対処し、人民元買い介入を行ったためだ。
外貨準備はなお巨額だが、中国ほどの規模の経済だと、輸入や対外債務の返済に多額の準備が必要になる。
その上、外貨準備の内訳が流動性の低い資産であれば、その要請にすぐには答えられない。
中国の外貨準備の構成は国家機密だが、複数の当局者は、ドル以外の通貨の価値がドル建てで減少していることも、準備高減少の一因だと話している。
ソシエテ・ジェネラルは、
国際通貨基金(IMF)の指針では中国にとって
安全といえる外貨準備の最少額は「2兆8000億ドル」
で、現在のペースで減少を続ければ間もなく到達するとみる。
同社は
「向こう数カ月中に到達すれば、投機的な売りが押し寄せ、人民銀行は降参して人民元レートを市場に委ねるしかなくなる」
としている。
これに比べ、G20(20カ国・地域)のある中央銀行副総裁はもっと楽天的で
「(安心できる最少額が)どのくらいか分からないが、2兆8000億ドルよりずっと少ないことは確かだ」
と述べた。
■<魔法の数字は存在せず>
HSBCのアナリストチームは「理論上2兆ドルで十分」だと見ているが、
減少を続ければ国内投資家が脅えて海外への資金移動を加速させる恐れがあるため、中国当局が手をこまねいているとは考えにくいという。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の新興国市場通貨ストラテジー・グローバル統括、ウィン・シン氏によると、
「中国の外貨準備は1年5カ月分の輸入をカバーできる水準」
であり、短期対外債務の外貨準備に対する比率は25%にとどまる。
新興国として安全な水準と考えられる3カ月と55%よりもはるかに良好だという。
シン氏は
「われわれが新興国に適用しているどんな尺度で見ても、中国の外貨準備は十分すぎるほどだ」
と話した。
中国のシンクタンクのあるエコノミストも
「3兆3000億ドルもあって何を心配する必要があるのか」
と同意する。
「中国の対外純債権は1兆5000億ドル、貿易黒字もまだ6000億ドル程度ある」
外貨準備が2025年までに2兆ドルに減ったとしても、「まだ安全、健全だ」
とこのエコノミストは語った。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシン氏は、安全な水準は、究極的には特定の比率というよりも市場心理で決まると指摘する。
「魔法の数字は存在しない。
大きな部分を占めるのは信頼感だと思っているが、中国の政策担当者は信頼感の回復につとめて力を入れている」
という。
人民元売りを公言しているヘッジファンド、オムニのポートフォリオマネジャー、クリス・モリソン氏は
「このゲームは期待と信頼感がすべてだ。
市場が底をのぞいたが最後、信頼感は総崩れになる。
3兆ドルを下回った時がその分岐点だと私は考えている」
と話した。
(Kevin Yao記者)
』
『
JB Press 2016.2.26(金) 藤 和彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46161
人民元SDR入りは幻に?
資金流出が止まらない中国
改革が裏目に、いまや窮地の人民銀行総裁
中国からの資金流出が止まらない。
中国の公式統計によれば昨年の資金流出額は5170億ドルである。
だが、1月25日付ブルームバーグは、「昨年全体の資金流出額は前年(1343億ドル)の約7倍の1兆ドルに達した」と報じている。
2月11日付フィナンシャル・タイムズによれば、2016年1月だけで1100億ドル以上の資金が国外に流出したという。
資金流出は非公式なチャンネルでも起きており(海外との貿易額の数字を粉飾するなど)、実際の流出額はさらに大きいようだ。
■「中国経済のハードランディングは不可避」とソロス氏
その主な要因は中国経済の低迷である。
中国の富裕層は、国内の不動産価格の低迷や株安の状況の中、利回りの高い投資商品(米ドル資産など)を求めて資産を海外に移し始めている(2月18日付ロイター)。
中国企業が昨年(2015年)1年間に海外企業の買収に投じた金額も、約680億ドルと史上空前の規模に達した。
今年1月の新規融資額は過去最大の約2.5兆元(約43.5兆円)となったが、増加分の大半は外貨建て債務返済のためである。
昨年8月の中国政府の人民元切り下げによる通貨の先安感も資金流出に拍車をかけており、「人民元が紙くずになる前の駆け込み的な資金流出」との観測が高まっている。
その矢先の今年1月に「世界経済フォーラム」年次総会(ダボス会議)で著名な投資家であるジョージ・ソロス氏から「中国売り」発言が飛び出した。
ソロス氏と言えば、1992年の「ポンド危機」、1997年の「アジア通貨危機」の仕掛け人と言われている人物である。
ソロス氏は
「私は予測を口にしているのではない。
今それを目撃しているのだ」
と発言し、
「中国経済のハードランディングは不可避だ」
と述べた。
昨年秋から投機筋が人民元売りを仕掛けている最中の発言だけに、中国側は悪意ある挑戦と受けとめ、国営メデイアを総動員して反論に出た。
メディアは
「人民元の空売りは袋小路に陥る」(新華社)、
「単純な経済的衝撃をもって中国を覆すことは不可能だ」(人民日報)
と必死の主張を繰り返した。
しかし「資本流出は始まったばかり」と鼻息が荒い投機筋の勢いが衰える気配はない。
■人民元のSDR入りが重い十字架に
中国政府にとって最後の砦は、世界の約3分の1を誇る外貨準備(昨年末時点で3.3兆ドル)である。
だが、その外貨準備は昨年1年間で約5130億ドルも減少した。
3.3兆ドルあるといっても、
「使える外貨準備はせいぜい1兆ドルにすぎない」
という見立てがある。
「中国政府高官の持ち出しで約1兆ドルの資金が消え、
アフリカや中米諸国への融資で約1兆ドルが焦げ付いている」(中前忠中前国際経済研究所代表)
からだ。
仮に今年1月のように毎月1000億ドルのペースで減少すると、年内にも外貨準備が底をつき中国政府は人民元を支えられなくなってしまう。
中国政府としては資本規制を強化したいところだが、「人民元のSDR入り」という決定が重い十字架としてのしかかっている。
昨年11月、国際通貨基金(IMF)理事会は、特別引き出し権(SDR)の算定基準となる通貨に中国・人民元を今年10月から組み入れることを決定した。
中国政府は人民元をSDR入りさせるために、昨年夏から人民元相場を従来よりも市場実勢に従って変動させるなど一連の改革を行った。
これによりIMFから「人民元はSDRの基準を満たした」というお墨付きをもらうことができた。
しかし、一連の改革によって、8月に人民元が急落した。
合法的に海外に資金を移せるようになったため、
国内企業や個人投資家がかつてない規模で海外へ資金を流出させたからである。
そこで、人民元の下支えのために中国政府は、約4000億ドルもの外貨準備を費やすことを余儀なくされた(昨年の外貨準備減少分の約8割)。
「人民元のSDR入り」に尽力し、「中国の最も偉大な改革者の1人」とまで評価されていた周小川人民銀行総裁は、いまや窮地に追い込まれている。
周氏は、中国誌「財新」のインタビュー記事の中で、海外のヘッジファンドをはじめとする投資家が人民元の売り持ちに殺到している現状を批判すると同時に、人民元の底堅さをアピールして「元安が続く根拠はない」と主張した。
人民銀行は2月15日に、2005年7月以来最大となる人民元切り上げを行った。
しかし、市場関係者にとっては「人民銀行は外貨準備の減少を懸念している」というマイナスのメッセージになってしまった。
周氏はこれほど緊迫した状況でも「資本規制を引き締めるつもりはない」としているが、その対応には疑問を感じざるを得ない。
筆者が以前のコラム(「人民元のSDR採用に潜む落とし穴」)で「人民元のSDR入りの代償は極めて大きい」と懸念したとおり、そのリスクが早くも顕在化してしまったようである。
■危機対応能力がない中国の指導者
ソロス氏は中国政府の無策ぶりを指摘していたが、昨年後半以降、
「中国政府の指導者たちは危機対応能力がない」
との認識が世界中に広まってしまっている。
中国共産党はもともと市場との対話の重要性をあまり認識してこなかった。
中でも習近平体制は有無を言わさず強権で、すべての問題を抑え込む姿勢が強い。
2月18日、人民銀行は1月分の月次報告を行ったが、外貨購入の残高など資金流出の目安となるデータの公表を取りやめた。
2月20日、中国政府は証券監督管理委員会(証監会)の肖鋼主席を解任した。
中国の株式市場は、昨年、約5兆ドルの時価総額が失われ、証監会は今年1月に株価が一定の値幅を超えた場合に取引を止める「サーキットブレーカー制度」を導入した。
だが、市場を安定させることができず、わずか4日で停止した。
そうした状況に対して、個人投資家が「投資家らの財産権を保護する職責を怠った」として肖氏を提訴するなど、証監会に対する国民の不満が高まっていた。
政府は肖氏の首を生け贄に差し出した格好である。
習近平政権は金融業界に対して、全面的な反腐敗キャンペーンを加速させている。
同時に、金融業界を監督管理する3つの委員会である証監会、銀監会、保監会、そして人民銀行、いわゆる1行3会に対しても、整理・合併を加速させようとしている(2月18日付大紀元)。
早ければ3月の全人代等で議論されるようだが、事態をますます混乱させてしまうだけではないだろうか。
■米中間の緊張はさらに高まっている
国際金融当局者も中国の現状に憂慮し始めている。
2月26~27日、中国上海で開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、中国からの資本流出を段階的に止めるための議論が焦点の1つとなっている。
2月4日付ロイターによれば、中国からの資金流出を加速させている投機的な動きをおさめるため、
「人民元の一度限りの大幅切り下げ(中国版プラザ合意)が必要」
との声が高まっているという。
国際的な協調介入を実施するには米国政府の協力が不可欠である。
だが、中国軍の東アジア、特に南シナ海でのプレゼンス拡大によって、米中間の緊張はさらに高まっている。
2月16日、米FOXニュースは衛星写真の分析をもとに、中国による南シナ海の西沙諸島へのミサイル配備を伝えた。
地対空ミサイル配備となれば、滑走路整備などとは次元が違う。
これまで習近平国家主席はオバマ大統領に対し「南シナ海の軍事化は行わない」との方針を伝えていた。
米太平洋軍のハリス司令官は、
「習近平主席が約束を守れないことの表れである」
と中国への不信感を露わにしている。
一方、中国側にも言い分がある。
米軍は1月30日、西沙諸島の12海里内でイージス駆逐艦を航行させた。
西沙諸島は南シナ海の中で最も中国本土に近く(海南島から約300キロメートル)、中国軍は42年間にわたり実効支配している。
このため中国は、米軍が西沙諸島の領海に侵入したことに対して、「紅旗9号」長距離地対空ミサイルを急遽配備したというわけだ。
その後も中国が南沙諸島に高周波レーダー施設を建設していることや西沙諸島に戦闘機と戦闘爆撃機を展開していることが明らかになってきている。
中国と軍事的な緊張が高まっている状況下で、米国が中国の資金流出を防ぐための協調介入に賛同する可能性は極めて低いと言わざるを得ない。
■経済成長がなくなると国民の不満は爆発
協調介入が不可能であれば、IMFとの約束を反故にしてでも資本規制を強化するしかない。
前述のダボス会議で、黒田日銀総裁は中国政府に資本規制を強化することを求めた。
IMF専務理事のラガルド氏も暗に同意したようだが、一度緩めた資本取引規制を強化することは副作用が大きい。
中国企業の海外での債務の借り換えが困難となるとともに新規の資金調達にも支障をきたすため、経済のハードランディングリスクが高まってしまう。
毎年18万件の暴動・抗議集会が起きている中国において、
共産党の執政の正統性は「経済成長」しかない
と言われている。
経済のハードランディングが起きれば、
抑圧された国民の不満は爆発し、中国共産党は結党以来の危機に直面するだろう。
国際政治経済が専門の瀬戸岡紘駒澤大学教授は、
「すべての戦争は国内矛盾の対外転嫁として引き起こされる」
と指摘している。
習近平指導部は、
国内の矛盾を南シナ海での軍事紛争に振り向ける可能性
がこれまでになく高まっている
のではないだろうか。
「人民元のSDR入り」の失敗が東アジアの地政学的リスクを高めないことを祈るばかりである。
』
『
産経新聞 2月28日(日)13時20分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160228-00000521-san-bus_all
GDP世界一は幻想か
米国に引き離された中国
●米中の名目GDP増大の差額と実質成長率(写真:産経新聞)
早ければ2020年にも中国の国内総生産(GDP)がドルベースの名目で米国を追い抜き、規模で世界一の経済大国になるという「米中GDP逆転劇」の予測に黄信号がともり始めた。
GDPを年間いくら積み増したかとの金額からみて、中国は07年から8年連続で米国を上回って追い上げてきたが、15年は再び米国に引き離されたからだ。
このままなら、中国に楽観的なエコノミストらが描いた米中逆転劇は幻想に終わる恐れもある。
米中のGDP増大額の差は07年から14年まで中国が優勢だった=グラフ参照。
リーマン・ショックの影響で米国がマイナス成長に陥った08年や09年に加え、中国が巨額の財政出動を行った結果、バブル化した11年には、中国の増大額が米国より8千億ドル以上も上回った。
「チャイナ・アズ・ナンバーワン」と世界にもてはやされた時期だった。
米中逆転は遠くないとの予測もなお根強い。
米中GDPの規模を比較すれば、05年に中国の名目GDPは、米国の17・3%でしかなかったが、日本を追い越して世界第2位の経済大国にのし上がった10年には39・8%に伸び、15年には米国の62・4%まで接近した。
10年前には米国の5分の1にも満たなかった中国のGDPは、気がつけば3分の2近くまで拡大したのだ。
中国は習近平指導部が「新常態(ニューノーマル)」と名付けた成長鈍化時代に入った。
それでも、世界的にみればなお高水準だ。
GDP成長率が6・9%だった15年、米国より少なかったとはいえ4390億ドル増えた。
これはマレーシアの14年の名目GDPの3383億ドルを大きく上回っている。
毎年、東南アジアの1つの国に相当する分のGDPを生み出しているとの見方もできるだろう。
ただ、習氏が中国共産党総書記に就任した12年、中国に異変の兆しがみえた。
GDP成長率は物価変動の影響を除いた実質で11年までの10%前後から一気に7%台まで下降。
習氏が国家主席に就いた13年には横ばいだったが、14年、15年とジリジリ成長鈍化が続いている。
米国を追い上げるパワーも息切れし始めたようだ。
このまま米国に引き離されるのか、それとも中国が成長スピードを取り戻すのか。
16年から始まる中国の「第13次5カ年計画」にカギがある。
習指導部が初めて独自策定する経済政策で、3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)で20年までの5年間の成長率目標を設定する。
すでに、李克強首相らが国際会議などで示唆しているように、16年から20年まで「年6・5%以上」、あるいは「6・5%から7・0%」と幅を持たせる目標値になりそうだ。
目標が正しく達成できれば、逆転シナリオも再始動するかもしれない。
習指導部が誕生した際、中国共産党は「20年に10年比で名目GDPを2倍にし、国民所得も倍増させる」との目標を打ち出した。
人民に向けたスローガンでもあるが、実現には「年6・5%以上」が必要と試算されており、経済実勢よりもまず、スローガンありきの成長目標といういびつな数字だ。
このことが習指導部にとって呪縛ともなり、計画経済時代のような管理型の政策を続けざるを得ない。
ところが、規模ばかり追い求めてきた中国のGDPは、深刻な構造問題を抱えていることが明らかになっている。
鉄鋼など素材産業や自動車など製造業のほとんどが、需要に基づかない過剰な生産規模、過剰な在庫の山を抱えて青息吐息だ。
そこに野放図に融資を繰り返した国有商業銀行も不良債権がいつ顕在化するかおびえる。
高度成長を続ける最大の原動力となった貿易は、今年1月まで連続11カ月、前年同月を下回った。
貿易に代わる成長エンジンとなるべき個人消費は国内で伸び悩み、訪日観光など海外で消費されるばかりだ。
「第13次5カ年計画」で公式統計を信じるとして、本当に6・5%以上の経済成長を保とうとすれば、
★:抜本的な構造改革を短期に行って国内消費を急拡大させるか、
★:周辺国に余剰在庫を半強制的に輸出する形で不自然な貿易収入を得るか、
★:乗客がいるかどうか不明な高速鉄道の路線をさらに建設するなど財政出動を増やす
といった、いずれも手荒な方法を使うしかない。
最大の課題は、規模よりも成長の質にあることは疑う余地がない。
20年までの5カ年計画でいかに構造問題を克服し、安定的な成長路線にソフトランディング(軟着陸)するシナリオを描けるか。
米国を追いかける前に実行すべき経済政策は山積している。
』
『
JB Press 2016.3.4(金) 柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46231
崩壊しそうでしない中国経済の不思議
改革を先送りにして不良債権は積み上がるが・・・
●中国・北京の道路。中国経済の不合理性と非効率性は明白だが、なぜか中国経済は崩壊しない
日本では、ここしばらく中国経済崩壊論を唱える論者が少なくない。
だが、中国経済はいまだに崩壊していない。
中国政府は自国の経済システムを「社会主義市場経済」と定義している。
社会主義と市場経済はいわば水と油の関係にある。
そのなかで中国経済は成長を続けてきた。
2010年までの30年間で中国経済は年平均10%も成長し、2010年にその経済規模は日本を追い抜いて世界第2位となった。
「中国経済は言われているほど順調に発展していない」と言う論者もいる。
中国のマクロ経済統計が信用できないというのだ。
しかし時系列でみた場合、中国経済が発展していることは確かだ。
もし中国経済が発展していなければ、主要国に対して中国経済の減速はここまで影響を及ぼさないはずである。
国際社会が注意しなければならないのは、
中国はその全体の規模が大きいため、周辺諸国に及ぼす影響はその実力以上に大きい
ということである。
今、国際社会は中国の台頭を脅威と受け止めているが、中国の経済発展が挫折した場合の影響も大きい。
中国経済と世界経済の相互依存関係は、国際貿易と国際投資を通じて予想以上に強化されている。
中国経済の減速は世界経済の発展を押し下げていく可能性が大きい。
■中国経済はなぜ崩壊しないのか
ただし、中国は経済大国になったものの経済の強国ではない。
中国は「世界の工場」の役割を果たしているが、「メイドインチャイナ」は決してブランドにはなっていない。
中国発のオリジナルの科学技術はほとんどないし、中国本土でノーベル賞を受賞した科学者は1人のみである(薬学)。
では、なぜ中国は脅威とみなされるのか。
一党独裁の政治においては、政府はあらゆる資源を動員する強い権限を持っている。
したがって、国中の資源を動員して、例えば宇宙開発やミサイル開発に注ぎ込むことができる。
その一分野のみ考えれば脅威とみなされても不思議ではない。
だが、一国の国力をみる際は、ある一分野の実力ではなく、その国の総合的国力を測るべきである。
今、中国国内では「総合的国力」に関する議論が盛んになっている。
中国の総合的国力をみると、ぎりぎり“中進国”といえる程度であろう。
中国経済の不合理性と非効率性は明白である。
だが、なぜ中国経済は崩壊しないのだろうか。
実は今の中国経済はいわば「メタボリックシンドローム」の状態にある。
安い人件費と割安の為替レートを頼りにキャッチアップしてきた中国経済は、政府の財政出動によりその規模が年々拡大している。
また、中国でもっとも盛んな製造業は「外包」と呼ばれるアウトソーシングだ。
最近の製造業はモジュール化し、企画・開発・設計を手掛ける企業は自ら製造工場を構える必要がない。
例えばアップルはiPhoneを設計するが、製造のほとんどはアウトソーシングしている。
キーコンポーネントと呼ばれるハイテク部品は日本企業に製造を委託し、組み立ては中国の企業に行わせる。
アップルはパテントなどの知財権を握り、売上の68%を得ると言われている。
それに対して、中国企業は1台のiPhoneを製造して売上の6%しかもらえない。
結局のところ、中国はいまだに低付加価値製造業の規模をどんどん拡大させている。
こうした構造が一旦できてしまうとストップさせるのは難しい。
なぜならば、低付加価値の製造業ほど多くの労働者を雇用しているからだ。
これらの工場を閉鎖すると、失業が深刻化し、社会不安が高まる。
だから政府は工場や企業の閉鎖について慎重な姿勢を崩さない。
逆の見方をすれば、こうしたゾンビ企業は政府を虜にしているのである。
■口先だけで行われない「改革」
ここ十数年来、中国政府はほとんどの改革を先送りしてきた。
毎年の政府活動報告では、「穏やかな成長を続けている」という陳腐な表現が繰り返されている。
今までの経済成長はかなりの部分において朱鎔基元首相が進めた改革の結果と言えるが、その恩恵はすでになくなりつつある。
李克強首相は就任当初、
「人口ボーナスこそなくなるだろうが、これからは“改革ボーナス”が経済成長を牽引する」
と豪語した。
しかし、改革らしい改革はいまだになされていない。
政府、企業、家計のバランスシートをみると支出のほうが多く、新たに蓄積される富が急減している。
地方政府はこれまで中央政府が進めた経済政策に呼応するために、巨額の債務を借り入れた。
これらの有利子負債の返済は延滞しており、国有銀行の不良債権となっている。
しかし、国有銀行は地方政府の債務を取り立てることができない。
これはいわば政策的不良債権である。
地方政府が破綻処理されることは考えにくいが、最終的に国有銀行は不良債権を処理することになる。
結局、そのコストを払うのは納税者か預金者のいずれかである。
中国が民主主義の国であれば、おそらくとっくに経済危機に突入しているだろう。
民主主義の国において政策運営の失敗は、まずその責任が追及されてから問題の処理に着手する。
一方、社会主義の国においては、責任を追及する前に問題を処理してしまう。
題処理の際は往々にして一部の者の利益を犠牲にする。大部分の人にとっては、自分とは関係ないので無関心である。
結果的に経済危機が起きにくい体質ができてしまっている。
■まず社会の根本的な価値観を明らかに
中国政治においてもっとも重要とされる言葉は「国益」である。
それを分かりやすく示す言葉として、よく使われるのが「大河没水、小河干」(大河に水がなければ、支流の小河は乾いてしまう)だ。
本当はこの表現は自然に反している。
自然界においては、支流の小河から大河に水が流れ込む。
したがって、大河よりも小河のほうが重要である。
なのに、中国では国益の重要性を強調するために、自然の摂理に反する表現が作られてしまっている。
中国では、国益に反する者は売国奴と罵られる。
これはもっとも恐ろしい罪と言えるかもしれない。
国益のために犠牲になった子どもは「光栄なことだ」とも教えられる。
だが子どもの幸福を犠牲にする国に国益など存在するまい。
中国は、社会主義を建設するか市場経済を構築するかという議論の前に、まず社会の根本的な価値観を明らかにし、国民の間で共有できるようにすべきであろう。
』
『
現代ビジネス 2016年03月04日(金) 長谷川 幸洋
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48092
G20もサジを投げた「ヤバすぎる中国経済」
~選択肢は三つ。
ただし、どれを選んでも崩壊の可能性
■G20が出した結論
いったい中国はどうなるのか。
いま世界中の企業や家計がこの1点を心配している。
ところが、先に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の結論はあいまいで、矛盾を孕んだ態度に終始した。
あらためて問題の核心に迫ろう。
マスコミは「中国についてG20がどんな姿勢を示すかが焦点」と連日のように事前報道した。
ところが、会議の後の報道ぶりを一言で言えば「結論はよく分からない」だった。
たとえば、2月28日付の朝日新聞は「G20『政策を総動員』 共同声明採択 市場安定化図る」という見出しを掲げて「G20の合意が市場の安定化につながるかは見通せない」と書いた。
なんのことはない「どうなるか、分かりません」という記事である。
G20の声明には、景気回復のために「すべての政策手段(金融、財政および構造政策)を個別にまた総合的に用いる」と書いてある(http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g20/g20_160227.htm)。だがそれは、何もいまさら大げさに言わなくても、当たり前の話にすぎない。
あえて書き込んだのは、マスコミ向けに「見出しになるような文言を加えたほうがインパクトがある」と大臣たちが考えたからだろう。
マスコミがそれに調子を合わせて、上っ面の言葉を見出しにするようでは、なめられたも同然だ。
肝心なのは政策の中身である。
ちなみに「金融、財政および構造政策」というのは「アベノミクス3本の矢」でもある。
ということは、アベノミクスは経済政策の世界標準を並べてみせただけで、安倍晋三首相のオリジナルでもなんでもない。
それを「アベノミクス」というキャッチフレーズに包んで、印象深く打ち出しただけだ。
いわば当たり前の政策なのに、マスコミはあたかも新しい政策パッケージであるかのように報じてきた。
言葉と中身の虚実をマスコミはきちんと分かっているのだろうか。
本論に戻す。
G20が打ち出した政策の中身を見ると、目新しさはほとんどない。
機動的な財政政策と緊密な為替協議、通貨の切り下げ競争回避、それに資本流出の監視強化である。
あえて言えば、資本規制の検討が加わった程度だ。
■激減する中国の「外貨準備高」
1つずつ順に評価しよう。
まず「機動的な財政政策の実施」を打ち出したのは、世界経済の下方リスクに対応するのに、金融政策だけでは十分でないと認識したからである。
現状認識はなかなか厳しい。声明はずばり「世界経済の見通しがさらに下方修正されるリスクへの懸念が増大している」と書き込んだ。
日本にあてはめれば「追加の景気対策で財政支出を増やしてくださいね」という話になる。
これを見ただけでも、消費税の再増税がありえないのは明らかである。
G20が財政出動を求めているのに、日本が増税では政策ベクトルが完全に逆行してしまう。
増税どころか減税を考えるべき局面なのだ。
日本のマスコミではG20が打ち出した方向と消費増税がいかに相反しているか、といった解説にほとんどお目にかからなかった。
経済記者たちは財務省の言い分を垂れ流しているだけなのだ。
次が「緊密な為替協議と通貨の切り下げ競争回避」。
これは中国の人民元下落を念頭に置いている。
人民元が下がり過ぎると、中国の輸出が有利になる。
それは他のメンバー国にとって不利だから「為替安定のために連絡をとりあって、必要なら介入しましょうね」という話である。
ずばり言えば、中国に対して人民元下落を阻止するために「しっかり介入してくれ」と要求したのだ。
中国はいまでも強烈なドル売り・人民元買い介入をしている。
それは当局が発表しなくても、外貨準備の急落になって表面化している。
2月12日公開コラムで指摘したように、中国の外貨準備はいま毎月1000億ドルペースで減っているのだ(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47855)。
中国人民銀行が人民元買い介入をすると、実質的に金融引き締めになってしまう。
経済社会に出回る通貨量を吸収するからだ。
いま中国は景気崩壊の淵に立っているのだから、本来なら引き締めでなく、逆に金融緩和しなければならない。
そこへ金融引き締めなら、中国は一段と景気が悪くなる。
いわばG20は中国の景気悪化を犠牲にしても、人民元相場の維持を求めた形である。
短期的には自国の輸出を不利にしないために正解だったとしても、中期的には中国の崩壊が巡り巡って世界経済と自国の景気悪化を招くのだから、自分で自分の首を締めるようなものだ。
■外貨制限のウワサも漂う
当の中国はどう認識しているかといえば、中国人民銀行がG20閉幕直後の2月29日、預金準備率を引き下げたところに本心がにじみ出ている。
預金準備率の引き下げは銀行が中央銀行に強制的に預ける預金を減らして融資に回せる資金が増えるから、金融緩和になる。
つまり中国当局は緩和が必要と分かっている。
G20は為替介入して人民元相場を維持せよと求めたが、緩和は逆に人民元下落に働く。
実際、預金準備率引き下げ発表後、人民元は一段と下落した。
これをみても、G20と中国の行動がちぐはぐなのは明らかだ。
3つ目の資本規制強化となると、何をか言わんやという話である。
国際通貨基金(IMF)を軸にした世界経済は本来、自由な資本移動が大原則だ。もともとIMFは自由な資本移動を促した結果、貿易代金の支払いに窮する国が出てくれば、危機を脱出するために緊急資金を貸し出すのが役割の国際機関である。
G20が大真面目に資本規制を検討するとは、裏返せば、それほど中国が危機一歩手前に追い込まれている証拠である。
まして、中国はIMFの特別引出権(SDR)通貨入りを果たしたばかりだ。
中国はSDR通貨として人民元を危機国に貸し出すどころか、自分自身が危機一歩手前の状態に陥ってしまったのだから、ほとんどお笑いと言っていい。
他国に貸すどころか、自分が借りるかもしれないはめになっている。
いくらなんでもSDR通貨国が借りるとは恥ずかしいから、その前に資本規制して流出を止めようという話になっている。
資本規制すれば、市場のドル買い人民元売り圧力が和らぐので、為替の安定効果がある。
だが一方、中国に投資した海外企業は人民元で得た利益をドルやユーロに転換して本国に送金しにくくなるから、投資を冷やす結果になる。
企業は「これ以上、中国に投資しても利益を送金できないなら意味はない」と考える。
これがまた中国経済にダメージを与える。
中国人による爆買いもやがて終わるだろう。
当局にしてみれば
「外貨準備が急落しているのに、中国人が日本で買い物して貴重な外貨を消費するのはとんでもない」
という話になる。
すでに中国人が使える外貨に制限を加える話も飛び交っている。
■結局、有効な対策は何もない
以上が、G20の描いた危機への処方箋だ。
総じて評価すれば、G20は自分たちの目先の損得を優先して、中国経済の崩壊については何の有効な対策も講じられなかった。
供給過剰が顕在化している中国に一段の財政出動を求めても、ゴーストタウンが広がるだけだ。
為替介入の要求は金融を引き締め、経済を収縮させる。
そして資本規制は外資の中国離れを加速するのだ。
原理的に言えば、どうやったところで他国が中国を救うことはできない。
それは中国自身の問題である。
中国人自身が人民元を売り払って中国から脱出しかかっている。
キャピタルフライト(資本逃避)が始まってしまったのだ。
資本流出が続けば、中国は結局、
1].人民元の下落を容認するか、
2].資本規制を導入するか、
3].あるいは猛烈な介入を続けるか、
の3つしか選択肢はない。
そのどれもが崩壊への道につながっている。
著名投資家のジョージ・ソロスは事態の本質を見抜いて「中国のハードランディング(強制着陸)はもう始まっている」と語っている。
ソロスは人民元下落に賭けるつもりなのだろう。
中国の通貨危機というドラマの幕開け
が近づいている。
』
『
現代ビジネス 2016年03月07日(月) 真壁 昭夫
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48115
中国政府が乗り出した景気対策のための「危険なバクチ」
■バブルの後始末をはじめる中国政府
3月5日、中国政府は2020年までの経済成長率の目標を公表し、今後5年間の成長率を平均で6.5%以上とした。
中国政府は輸出・投資主導から国内消費型への経済構造の改革を進め、安定した経済成長を目指そうとしている。
政府は経済構造の改革とともに、過剰設備に悩む鉄鋼業界などの「ゾンビ企業」の淘汰を進めていくという。
ゾンビ企業の淘汰を進めることは企業の倒産件数や失業者を増加させ、景気減速懸念を高める。
問題は、過去の景気刺激策の後遺症が大きく、
大規模な景気刺激策が打ちづらいことだ。
そのため、今後も、中国政府は金融緩和策を中心に、景気の下支えを進めることになるだろう。
問題は、金融緩和策だけで景気を支えることができるか否かだ。
現在、中国政府は、2009年の大規模な景気対策の後始末を進めている。
リーマンショック後、中国は4兆元(当時の邦貨換算額で約60兆円)の景気刺激策を打ち出し、景気の減速を食い止めようとした。
その結果、大規模に公共投資などのインフラ開発などが進められ需要が急速に高まった。
需要の高まりに合わせて、中国は鉄鉱石、原油など多くの資源を世界中から買いあさり、これを受けて世界各国が資源開発を急速に進め、資源バブルによる景気拡大が発生した。
問題は、景気対策の効果は永久に続かないことだ。
景気刺激策が一巡し、需要が伸びづらくなった結果、中国の成長率は低下した。
そして、過剰な供給能力の存在が明らかとなった。
それと同時に、不良債権の増加懸念などを高め、2014年後半には世界的な資源バブルが崩壊した。
バブルが崩壊すると、過剰な人員、設備、負債のリストラが必要になる。
すでに中国政府は鉄鋼や造船、セメント業界で経営難に陥ったゾンビ企業のリストラを進めている。
ゾンビ企業の存在は、4兆元に上る景気刺激策の“後遺症”だ。
その後遺症が治癒しない限り、積極的な財政支出は打ち出しづらいだろう。
さらに苦しいのは、失業者や企業倒産の増加という、経済の基礎的条件=ファンダメンタルズの悪化を支えられる経済基盤が見当たらないことだ。
中国の個人消費はGDPの40%に満たない。
都市部と農村部の格差や戸籍の問題もあり、消費のすそ野を広げることには時間がかかる。
当面、景気の減速懸念は高まりやすいと考えた方がよいだろう。
■残るカードは「金融緩和策」のみだが…
5日に開幕した全人代(第12期全国人民代表大会、わが国の国会に相当する)では、
今後5年間の実質経済成長率を1年あたり6.5%以上と定めた。
2016年の目標は6.5~7%で、昨年の7%前後から引き下げられた。
これは中国政府が景気減速のリスクを認識していることを示している。
財政支出を進めづらい中で経済の減速を食い止めるために、金融政策への依存度が高まることは避けられない。
特に注目されるのは株式、不動産などの資産価格の下支えだ。
すでに中国の短期金融市場では、国内の信用リスクの上昇を懸念して短期金利の上昇圧力が高まっている。
これが2月後半の中国株の下落の要因とみられる。
2月29日、中国人民銀行は預金準備率を引き下げた。
これは、短期金利の低下を促し、株式などのリスク資産の価格の安定が景気回復に不可欠との考え方だろう。
このような金融緩和は今後も続けざるを得ない。
これまでのところ、金融緩和の影響もあり、不動産価格は再度上昇している。
それなりの効果が顕在化しているということだ。
しかし、バブルの崩壊を金融政策で食い止めることは困難だ。
問題は、中国政府の経済政策のカードに金融緩和策しか残っていないことだ。
その結果、短期間で、株式と不動産の間でリスクマネーの行き来が生じ、投機的な動きが市場を不安定にさせやすい。
それは、まさにマネーゲームだ。
バブル崩壊の影響が懸念される中、投機的な動きが引き起こす相場の急落は、想定以上に金融市場を混乱させ、実体経済に悪影響を与える可能性がある。
そうなると、中国経済のハードランディングのリスクも無視できないだろう。
米国の経済指標の上振れによって、一時的に市場は楽観的な雰囲気を醸し出しているが、先行きの中国の金融市場の動向には注意が必要だ。
』
『
ロイター 2016年 03月 5日 11:43 JST
http://jp.reuters.com/article/idJP2016030501001500
中国、成長率目標を「年平均6・5%以上」に引き下げ
【北京共同】中国の第12期全国人民代表大会(全人代=国会)第4回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕した。
李克強首相は政府活動報告で、2016年から20年までの新たな中期経済目標「第13次5カ年計画」で国内総生産(GDP)成長率目標を引き下げ、「年平均6・5%以上」と表明。
16年の成長率目標も事実上引き下げた。
経済の減速を容認しながら構造改革に取り組む。
米国に次ぐ第2の経済大国として、世界経済の成長に貢献できるかが問われることになる。
軍備拡大は続ける。
15年までの旧5カ年計画の成長率目標は年平均7%だった。
』
『
ロイター 2016年 03月 7日 08:07 JST
http://jp.reuters.com/article/china-parliament-xu-idJPKCN0W8128
中国、ハードランディングはあり得ない=発改委主任
中国国家発展改革委員会(発改委、NDRC)の徐紹史主任は6日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)期間中の記者会見で、中国経済はハードランディングに向かっておらず、世界経済の足を引っ張ってもいないと述べた。
ただ、不透明かつ不安定な世界経済が中国の経済成長にとってリスクになっているとした。
徐主任は「中国がハードランディングに至ることはあり得ない」と指摘した。
また、中国は政府支出の「効率性」改善に向けて努力すると強調した。
■<新常態>
徐主任は
「総じて言えば、中国経済のパフォーマンスは(2015年以降)合理的なレンジにとどまっていると思う」
と指摘。
従来の見方で中国経済を眺めるべきではないと付け加えた。
その上で
「第一に、中国経済が『新常態(ニューノーマル)』に入ったとの視点が必要だ」
と説明。
経済の成長エンジンが投資からサービスにシフトしているとの認識を示した。
工業部門における過剰設備の解消計画が大規模なレイオフをもたらす可能性はなさそうだと指摘。
経済成長が雇用を創出し、過剰設備解消の影響を相殺することにつながるとの見方を示した。
一方、世界経済の状況が今年の中国のリスクになっていると指摘。
「まず、われわれは世界経済の緩慢な回復状況や低成長率が一定期間続くとみている」
としたほか、
「不安定な(世界の)金融市場、コモディティ(商品)価格の下落がもたらすリスクや地政学的リスクを見過ごすことはできない」
と述べた。
徐主任はまた、石油や天然ガス、鉄道分野でいわゆる混合所有に関する複数の試行プログラムを打ち出す方針を示した。
中国は昨年9月に混合所有の導入を含む国有企業改革の指針を発表している。
』
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ロイター 2016年 03月 7日 16:38 JST Rachel Morarjee
http://jp.reuters.com/article/breakingviews-china-growth-goal-idJPKCN0W90K5?sp=true
コラム:中国の非現実的な成長目標、
「改革の痛み」先送り
[北京 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
中国が今回発表した5カ年計画は、中央の政策立案者が依然として国内経済の舵取りを担っていることを明確にした。
指導部は2020年まで、年間の経済成長率を少なくとも6.5%とすることを定めた。過去の成長率を下回るものの、相変わらず高水準だ。
非現実的な目標はリバランス(再均衡)の遅れや債務拡大を通じて経済をゆがめるだろう。
中国の国内総生産(GDP)統計には長らく疑惑の目が向けられている。
内部告発サイトのウィキリークスによると、5日に始まった全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の冒頭で経済目標を示した李克強首相ですら、2007年に米国の外交官に対し、鉄道貨物量、電力消費量といった指標をより重視していると漏らしたほどだ。
とはいえ、経済目標の重要性に変わりはない。
地方の指導者は地元の経済基盤が何であれ、その目標を達成できるかどうかに昇進がかかっているからだ。
ロシアに接している北東部の黒竜江省をみてみよう。
同省の公式発表では2015年の経済成長率は約5.6%となっているが、国内最大の産油量を誇る大慶では域内総生産が約4分の1も減少するなど、省内の複数の都市は省全体の成長率を大幅に下回る数字を発表している。
それにもかかわらず、同省の指導部は今年、少なくとも6%の成長率を目指している。
都市部の失業率も4.5%以下が目標だという。
李首相は、16年に中国全体の成長率が目標の6.5─7%を下回った場合、20年までの10年間でGDPを倍増する計画を達成するために、17年以降はさらにGDPを拡大する必要が出てくると述べた。
こうした目標は石炭・鉄鋼業界で数百万人の労働者を解雇したり、大気汚染を解消したりしようとしていることと矛盾しているように思える。
長期目標はまた、外部ショックのリスクも無視している。
世界の経済成長率は鈍化し、欧州連合(EU)は難民危機を抱えているほか、米国では貿易保護主義者の大統領が選出される可能性がある。
しかし、中国は対外貿易に関する具体的な数値目標を示さないことで、こうしたリスクに目を配っている姿勢を示しただけだ。
成長鈍化か債務拡大か。
どちらを受け入れるかという選択肢に直面し、中国の官僚らは後者を選んだ。
このことが意味するのは、意義ある改革の痛みをさらに5年間先送りするということだ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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【2016 異態の国家:明日への展望】
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