2016年3月3日木曜日

南シナ海人工島による軍事化の危機(1):小国いじめに走る成金大国の幼さ、信用急落にも怯まない中国の傲慢さ

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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月03日(Thu)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6221

日米印協力で中国覇権主義に対抗せよ

自国中心のアジアの新秩序構築を目指す中国の戦略に対抗するためには、日米印の結束が必要であると在ニューデリー政策研究センターのチェラニー教授が、1月22日付のProject Syndicateで論じています。
要旨は次の通りです。

中国がアジアの秩序を作り変えようとしている。「一帯一路」からアジアインフラ投資銀行に至るまで、中国は自国中心のアジアの構築を着実に推進している。
地域諸国は、中国の野心を阻止するための戦略を調整出来ていない。

■中国修正主義抑制の主導権はどの国が執るべきか

米国のアジア回帰政策の鍵は、TPPだが、米国の同盟国であるインドや韓国が入っていない。
TPPは発効までに時間を要し、その効果も大きなものではない。
参加国のうち6カ国は既に米国と自由貿易協定を締結しているので、
TPPの主たる効果は、日米間の自由貿易地域ができることにある。
一方、ASEANが推進しているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)には、米国が入っていない

中国の「一帯一路」構想は、中国が資金力を梃子に影響力を強化することやインド洋に中国のプレゼンスを築くことなどを目指している。
習近平主席がこの構想の半分でも実現できれば、アジアの地政学は深刻な影響を受ける。

アジアの未来は極めて不確定である。
地政学的安定を確保するためには、地域の主要諸国の利害の均衡が必要である。
しかし、中国がこの数十年間に蓄えて来た政治的、財政的、軍事的な影響力を行使しようとしている中で、そのような均衡を維持することは容易でない。

現状では、一国だけでは、米国でも、中国の国力と影響力に対抗できない。
安定した勢力均衡を維持するためには、有志国が結束してルールに基づく地域秩序を守る必要がある。

中国の修正主義的野心を抑制する為の主導権は、どの国が執るべきであろうか。
米国は他の戦略的課題を抱えており大統領選もあるので、米国に期待することは出来ない。
アジア諸国、特に経済が伸びているインド、政治的自己主張を強める日本が役割を果たすべきである。
2014年に訪日したインドのモディ首相は、「18世紀の膨張主義的思考様式」が「我々の周りに蔓延」していると述べ、中国の膨張主義を間接的に批判した。
昨年12月、日印首脳は、全ての諸国に対し「一方的行動を避ける」よう共同で呼びかけ、中国による人工島建設を暗に批判した。

中国の野望が実現すれば、日印両国にとって不利な地域秩序が出来てしまうことは明らかである。
日印両国は、ミャンマーやスリランカのように中国の圧力に脆弱な国に対する政策や投資につき調整すべきである。

アジアの主要国は、安定した地域のパワーバランスを維持するために協力すべきである。
日米印の「マラバール訓練」は軍事面での協力強化と海洋の安全強化のために有益である。

如何なる戦略も経済抜きでは完全ではない。アジアの主要国は、自由貿易地域を超えて、小国の核心的経済利益に資する地理経済学的な共同プロジェクトに着手すべきである。
それが出来れば、小国が中国の投資やイニシアティブに頼る必要はなくなる。安定した規則に基づく秩序が維持出来れば、より多くの国がその秩序の中で繁栄できる。

出 典:Brahma Chellaney‘Upholding the Asian Order’(Project Syndicate、January, 22、2016)
http://www.project-syndicate.org/commentary/asian-powers-cooperation-for-regional-order-by-brahma-chellaney-2016-01

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■日米印関係が中国覇権主義への協力な対抗に

筆者のチェラニー教授は、ジャーナリスト出身の著名なインドの戦略専門家です。
中国の膨張主義に対抗するためには、日米印の三か国の協力が必要であり、また、弱小国が中国の経済的圧力に屈することのないように、経済面で大型の共同プロジェクトを立ち上げる必要があると論じています。
インドの置かれている戦略環境が良く解る論調と言えます。

2015年12月、安倍総理が訪印し、モディ首相との首脳会談の後、「日印新時代」の道しるべとなる共同声明「日印ビジョン2025特別戦略的グローバル・パートナーシップ、インド太平洋地域と世界の平和と繁栄のための協働」に両首脳が署名しています。
この共同声明を読むと、日印間で極めて多様な分野に亘り、協力関係が進みつつあることが理解できます。

首脳会談の冒頭、モディ首相は、
日印関係は一段上のレベルに上がっている、強いインドと日本はお互いにとって重要であり、その友好関係はアジア全体に大きな影響を及ぼす
と述べたのに対し、安倍総理は、
 日印関係は「世界で最も可能性を秘めた二国間関係」であり、モディ首相と協力して、日印関係を可能性のつぼみから、現実に開花させて咲き誇る関係にして、日印新時代の幕開けを迎えたい、
強いインドは日本のためになる、強い日本はインドのためになる、強固な日印関係でインド・太平洋地域、さらには国際社会の平和と繁栄を牽引していきたい
と述べたと発表されています。

このように、良好な日印関係が、中国の覇権主義に対抗する方策を、米国と共に構築していく上で、強力な基盤となることは確かです。



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月02日(Wed)  小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6232

南シナ海 さらなる軍事化を防げるか
ウッディ島にミサイル、戦闘機を配備

中国が南シナ海で実効支配する拠点の軍事化を進めている。
米メディアによって、パラセル(西沙)諸島最大のウッディ(永興)島にHQ-9地対空ミサイルが配備された衛星写真が公開され、世界の注目を集めている。
同ミサイルはロシアのS-300のコピーだが、射程距離は100キロほどとみられ、近くを飛行する航空機には脅威となる。
米軍によれば、ウッディ島には、HQ-9の他、監視レーダーや最新鋭のJ-11戦闘機やJH-7戦闘爆撃機の配備も確認されている。
中国はパラセル諸島を拠点に南シナ海北部の防空能力を高め、これによって戦略ミサイル原子力潜水艦の基地がある海南島の防衛を固めようとしているのだろう。

■南シナ海を「中国の湖」とする

また、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)はアジア海洋情勢透明化プログラム(AMTI)のウェブサイトで、中国がスプラトリー(南沙)諸島で造成中の人工島に高周波レーダーらしきものを設置している衛星写真を公開した。
中国はすでに人工島に建設した3000メートルの滑走路で民間機のテスト飛行を行っており、いずれは軍用機の運用や対空ミサイルの配備も開始するとみられる。
スプラトリー諸島に軍事拠点を持つことで、中国は南シナ海南部の防空能力を高めることができる。

中国がこのままパラセル・スプラトリー諸島で軍事化を進め、制空権を固めれば、南シナ海上空に防空識別圏を設定し、アメリカ海軍が行っている空からの偵察活動を妨害するだろう。
その上で、南シナ海を「中国の湖」とするために、外国艦船の航行の権利を制限し、独自のルールを押しつけると考えられる。
民間の船舶や航空機の運航にも影響が出るだろう。

米国は中国が南シナ海を軍事化していると非難したが、中国は米国が「航行の自由作戦」によって南シナ海問題を「軍事化」していると反論し、ミサイルの配備は「自衛」措置であり、「軍事化」ではないと自らの立場を正当化している。
米太平洋軍のハリス司令官は、中国が南シナ海で軍事拠点を拡大していることに対抗するため、今後「航行の自由作戦」をより強化すると述べているが、中国はこれを逆手にとってさらに軍事化を進めると考えられる。

一方、中国の周辺諸国では南シナ海の軍事化に対する足並みがそろっていない。
パラセル諸島へのミサイルの配備は、米国がアジア重視政策の一環として、初めて東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を主催するタイミングを見計らうように行われた。

■中国の一方的な現状変更に対するコストを高める

オバマ大統領は、会議で南シナ海における中国の活動を牽制することを提起したとみられる。
しかし、同会議の共同声明文では「航行の自由」や「非軍事化と自制を促す」という表現は明記されたが、肝心の「南シナ海」への言及はなかった。
非公式にカンボジアやラオスなど中国と緊密な関係にある国々の抵抗があったからだろう。
その後ラオスで開かれたASEAN外相会議では、議長声明で南シナ海情勢への懸念が表明されたが、「中国」への言及はやはりなかった。

現状では、中国が南シナ海の軍事拠点化をあきらめる見込みは少ない。
国際社会は、外交、軍事など様々な手段を講じて、中国の一方的な現状変更に対するコストを高めなければならない。

そのためには、フィリピンが進めてきた南シナ海問題の仲裁裁判の結果をどのように有効活用するか検討すべきだ。
フィリピンは、2013年に始めた仲裁手続きで、九段線に基づく中国の南シナ海での主張と国連海洋法条約の整合性の有無と、中国が占拠する岩礁の法的な地位の明確化などを求めてきた。
中国は、裁判所に管轄権はないと仲裁手続きへの参加を拒否しているが、岩礁の法的な地位について仲裁裁判所が今年の6月にも最終判断を下す見込みだ。

中国が占拠し、人工島を建設している岩礁が、満潮時に水没する低潮高地だと裁判所が判断すれば、中国の南シナ海での行動は法的根拠を失う。
低潮高地は国際法上領有が認められないからだ。領有もできない岩礁の上に人工島を造成し、それを軍事拠点とすることは国際法違反ということになる。

この仲裁裁判の結果は法廷拘束力を持つが、中国にそれを受け入れさせる強制手段はないため、中国は裁判の結果を受け入れることはないだろう。
しかし、このような法的な手段が中国の行動に変化を与えないわけではない。
たとえば、仲裁裁判所が岩礁の法的地位についての検討を始めた後に開かれた東アジアサミットで、中国の李国強首相は九段線に基づいて中国の主張を正当化しなかった。

また、インドネシア政府が同国領であるナトゥナ島付近での中国船の活動をやめさせるために国際裁判を検討していることが明らかになると、中国外交部は同島の主権がインドネシアにあることを確認する異例の声明を出した。
司法的な手段によって、中国の行動に一定の影響をもたらすことは可能だ。

■国際社会はさらなる法廷手段を検討するべき

中国の行動を改めさせるため、国際社会はさらなる法廷手段を検討するべきだ。
特に、中国による岩礁の埋め立てと人工島の建設は、南シナ海の海洋環境を破壊している。
国連海洋法条約の下で、中国には海洋環境を保護する義務を負っているため、海洋環境の保護を中国に求めるとともに、司法手続きを検討することで中国による南シナ海の軍事化を牽制することができるだろう。 

2003年に、マレーシアはシンガポールが両国の海洋境界付近で行っていた埋め立てが、航行の安全や海洋環境への悪影響を与えている、と国際海洋法裁判所に埋め立ての中止と環境に関する情報の提供を求めて提訴し、裁判所が一部の埋め立ての中止を命令したという前例もある。

加えて、国際裁判所が中国の行っている人工島の建設に法的根拠がないとう結論を下せば、米軍が行っている「航行の自由作戦」に日豪なども参加し、国際的な活動にするのが望ましい。
仲裁裁判の判決の受け入れを中国に受け入れさる強制手段はないため、各国の軍が中国の人工島周辺に敢えて入り、そこで訓練や演習、偵察活動を行うことで、国際裁判所の判決を軍事的に裏づけることが必要だ。

国際法を通じて中国の行動を返すには、国際社会が十分連携する必要がある。
日米や豪州、ヨーロッパ諸国はフィリピンによる仲裁手続きを平和的手段として歓迎しているが、ASEANの中にはまだこれを支持していない国がある。
このため、ASEANが一丸となってフィリピンの平和的な解決を目指す努力を支持するよう、2国間や多国間の協議を通じて働きかける必要がある。

ただし、この仲裁裁判の結論は、日本にとって諸刃の剣となる可能性がある。
国際司法の場で岩に関する判断基準ができれば、沖ノ鳥島の法的地位についてもその基準が当てはまるかもしれない。
中韓は沖ノ鳥島が排他的経済水域や大陸棚の基点になり得る島ではなく、岩であると主張している。
このため、日本は沖ノ鳥島の法的地位を守るための理論武装を一層行う必要がある。



JB Press 2016.3.3(木)  北村 淳
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46214

オーストラリアへの潜水艦売り込みに目をつけた米国
「そうりゅう」を米国が推す本当の理由とは?


●そうりゅう型潜水艦(写真:防衛省)

アメリカ軍関係者たちとの間で、近ごろ“解禁”になった日本の武器輸出が話題になった。
その際、日本の状況に通じている海兵隊将校が“素朴”な疑問を口にした。

「安倍政権が武器輸出を解禁したとはいっても、たとえば海兵隊が使っているような装甲戦闘車や戦車などを海外に売り込もうとすると、いまだに日本のメディアや多くの世論が拒絶反応を示すと聞いている。

 しかし、日本政府主導のオーストラリアに対する潜水艦の売り込みに関しては、ドイツやフランスとの競争に打ち勝って日本の売り込みが成功してほしいと言っている。

 装甲戦闘車程度の“チャチな”武器に目くじらを立てて、新鋭潜水艦という“強力な殺人マシン”には無頓着なのは、なぜなのだろうか?」

たしかに、戦車や装甲戦闘車からは火砲が突き出しているから誰の目にも“殺人マシン”に映り、何をするのか分からない潜水艦は「どんどん輸出しろ」というのでは、まさに平和ボケここに極まれるということになるかもしれない。

そして、日本政府やメディアが積極的になっているオーストラリアとの潜水艦共同開発も、その裏ではアメリカ軍需メーカーの思惑が動き始めていることを忘れてはならない。

■かつての脅威は日本軍、現在は人民解放軍

人工島の建設をはじめとする中国による南シナ海への露骨な侵攻戦略の進展に大きな危機感を抱いているオーストラリアは、防衛力の強化に邁進している。

第2次世界大戦中、当時オーストラリアの宗主国であったイギリスの軍事拠点であるシンガポールが日本軍の手に落ちた。
そして、開戦からしばらくの期間とはいえ、日本海軍が南シナ海、西太平洋それにインド洋を軍事的にコントロールすることになった。
そのため、オーストラリアはシンガポール、インドそれにアフリカ方面からのイギリスとのシーレーンを断たれてしまうことになった。

また、もし日本海軍の作戦が功を奏した場合には、アメリカからのシーレーンをも強力な日本海軍によって遮断されかねなかった。
このように、オーストラリアは常に孤立化してしまう恐怖にさいなまされていた。

今回は日本軍ではなく中国人民解放軍により、オーストラリアのシーレーンが脅かされ始めたのだ。

南シナ海は中国による軍事的優勢が決定的となりつつあるが、南シナ海自体にオーストラリアの死命を制するようなシーレーンが横たわっているわけではない。
しかし、南沙諸島に人民解放軍が前進拠点を確保することにより、フィリピンやインドネシアの島嶼海域を含んだ西太平洋や東部インド洋にかけての広大な海域で、中国海洋戦力が優勢的立場を確保する可能性が出てきた。

すなわち、オーストラリアの周辺海域が中国によってコントロールされかねないという、かつてのような恐怖心が再浮上してきているのが、オーストラリアの国防状況ということができる。

 

■島国の国防の大原則とは

軍事理論的に考えると、国土面積はケタ違いであるが、オーストラリアもイギリスや日本と同じ島国である。
陸上国境を接するカナダとメキシコとの軍事衝突の可能性が99.9%は考えらえないアメリカも、このような意味合いでは島国ということができる。

古今東西の戦例や外交史の経験からは、これらの“軍事的な島国”の理想とすべき国防の大原則は、
「外敵は海洋上で撃退して、国土には敵侵攻軍を一歩たりとも上陸させない」
ことである。
現在に至るまで、この原則発祥のイギリスはもちろんのこと、アメリカもこの大原則に忠実であろうとしている。

現在アメリカは精強な海兵隊(常備兵力およそ18万)と巨大な陸軍(兵力およそ48万)という陸上戦力を擁しているが、それらの地上軍はアメリカ領内に攻め込んだ敵侵攻軍との防衛戦を前提としているわけではない。
いずれも、海外に送り出されて外国の領域で戦闘することが前提となっており、その原則に従った訓練が実施されている。

世界最大の海軍力と航空戦力によって、敵がアメリカの領域に接近する以前に殲滅してしまうのがアメリカ国防の大原則である。

同様にイギリスも、狭小なグレートブリテン島内での“本土決戦”など想定していない。
イギリス陸軍(常備兵力およそ9万)や王立海兵隊(常備兵力およそ8000)といった地上戦力は、NATO軍や多国籍軍の一員として中東などの海外での戦闘が前提となって編成されている。
そして、イギリスの防衛とは、伝統的に王立海軍や王立空軍によりイギリス本土に敵が上陸してくる以前に海洋上で撃退することを意味しているのだ。

巨大な国土を要するとはいえ、軍事的には島国であるオーストラリアも、「外敵は海洋上で撃退して、国土には敵侵攻軍を一歩たりとも上陸させない」というイギリスの伝統的国防方針を受け継いでいる。
そのため、西太平洋やインド洋に支配力を拡大しつつある中国海洋戦力から、少なくともオーストラリアの周辺海域での軍事的優勢を奪われないように、海洋戦力の強化に力を注ぎ始めているのである。

■なぜ潜水艦が必要なのか?

現在のオーストラリア海軍は、人民解放軍海軍や海上自衛隊に比べると取るに足りない程度の弱小海軍と言うことができる。
オーストラリア海軍将兵の数はおよそ1万5000名、
 保有艦艇数はおよそ65隻、
 保有航空機数はおよそ50機
である。

そして、
主力水上戦闘艦は、8隻のアンザック級ヘリコプター搭載フリゲート(3600トン)であり、
潜水艦はコリンズ級攻撃潜水艦を6隻
を保有している。

(注:アンザック級フリゲートは、ドイツのMEKO-200型フリゲートを基本として、ドイツとオーストラリアが共同建造。
最終選考段階ではドイツ、オランダ、イギリスが競合した。
コリンズ級攻撃潜水艦はスウェーデンのコムックス社が設計しオーストラリアで建造。
兵装などはアメリカ製やイギリス製のものが採用されている。)

オーストラリア国防当局は強襲揚陸艦など水上艦艇の建造にも軍事予算を投入しているが、なんといっても海洋戦力強化の目玉は潜水艦戦力の大増強である。

現在保有しているコリンズ級潜水艦は、1番艦が20年前に就役し最新の6番艦が就役したのも2003年である。
就役年数でも古くなってきているだけではなく、この潜水艦の原型となっているスウェーデンのヴェステルイェトランド級潜水艦は1980年代初期に設計されたものであり、すでに旧式潜水艦となってしまったのだ。


●コリンズ級潜水艦(写真:NavalTechnology)

そこで、オーストラリア国防当局は、莫大な予算を投入して12隻もの新型潜水艦を建造する方針を打ち出した。
なぜ、水上戦闘艦艇に優先させて潜水艦戦力を大増強するのかというと、
 潜水艦こそ最強の海軍兵器であるとオースオラリア政府が判断したからに他ならない

とりわけ、中国海洋戦力によってオーストラリア周辺の西太平洋やインド洋での軍事的優勢を奪われないようにするためには、人民解放軍が力を注いでいる対艦ミサイル戦力に対抗しなければならない。
人民解放軍は駆逐艦やフリゲートといった水上艦艇からも、攻撃原潜からも、戦闘機やミサイル爆撃機からも、そして南沙諸島の人工島に展開される地上発射装置からも、多種多様の対艦ミサイルを発射することができる。
そのため、いくらオーストラリア海軍が現在保有していない駆逐艦を含む強力な水上戦闘艦を増強しても、中国対艦ミサイルの脅威に打ち勝つことは至難の技である。

したがって、オーストラリア海軍としては、西太平洋やインド洋に潜水艦を展開させて中国海軍の行動を牽制し、オーストラリアのシーレーンの安全を確保しようと考えているのである。
そのためには、コリンズ級潜水艦のような旧式艦では話にならず、長時間の隠密行動が可能な最新鋭で大型の潜水艦をできるだけ多数手にする必要があるのだ。

■アメリカが「そうりゅう」を推す理由

オーストラリアには、このような目的に合致した潜水艦を作り出す技術がない。
そこで、オーストラリア政府は海外の潜水艦メーカーとの共同開発計画を打ち出し、日本(三菱重工業、川崎重工業)の「そうりゅう」、フランス(DCNS:造船役務局、フランス政府が64%の株を保有する企業)の「ショートフィン・バラクーダ」、ドイツ(ティッセンクルップ・マリン・システムズ)の「タイプ216」が最終候補に残っている。

日本政府が主導している最新潜水艦技術売り込みに関して、日本の多くのメディアは「日本がフランスやドイツを退けて、共同開発契約を勝ち取ることができるかどうか」に関心を寄せて報道しているようである。
また、アメリカが日本を後押し始めたために、「オーストラリアへの“潜水艦売り込み競争”で日本がますます有利になっている」といった競馬の予想のような取り上げ方をしている。

たしかに最近、アメリカのシンクタンクや政府高官から、「アメリカは第三国間の兵器取引には中立であるが」としつつも「アメリカ軍関係者は『そうりゅう』級潜水艦が極めて高性能であると評価している」との声が聞かれる。
「もしオーストラリア海軍が日本と共同開発した新型潜水艦にアメリカ製の兵器や戦闘制御システムを導入することになれば、
 アメリカ~日本~オーストラリアの軍事提携が飛躍的に強化される」
と「そうりゅう」を後押しするような発言もし始めた。

しかし、政府高官やシンクタンク(アメリカの軍需産業から資金が出ている)から「そうりゅう」を後押しするような声が上がっているのは、米海軍関係者たちによると
「当然のことながら、日本のためではなくアメリカの軍需産業のため」
である。

オーストラリアがフランスやドイツと共同開発した場合、兵装や戦闘指揮システムなどは、おそらくはヨーロッパ勢が持ち込むことになってしまう。
一方、
「日本との共同開発となれば、兵装やコントロール装置の分野でアメリカが入り込める可能性が高くなる。
というよりは、日本とオーストラリアが相手ならば間違いなく入り込める。
したがって、アメリカの軍需メーカーに取ってもビックビジネスとなるのだ」

それだけではない。
最新の通常動力潜水艦は原子力潜水艦と違った役割を果たす。
だが、現在アメリカは原子力潜水艦を建造することはできても通常動力潜水艦を建造することはできない。
それだけに、是が非でもアメリカ海軍も手に入れたいと願っている。
そこで、日本とオーストラリアによる通常動力潜水艦の共同開発を突破口として、日本の通常動力潜水艦建造技術を手に入れるチャンスに大きな期待をかけているのである。



サーチナニュース 2016-03-04 07:49
http://news.searchina.net/id/1603985?page=1

「そうりゅう」など日本の潜水艦は常に、わが軍艦を追尾 
開戦時には待ち伏せ攻撃を受ける=中国メディア

中国メディアの新浪網は2日、日本の潜水艦は極めて優秀であり、配備数も増やしていると紹介する記事を掲載した。
警戒の対象は中国の軍艦で、常に追尾・監視・データ収集をしているので、
仮に日中が開戦すれば、日本の潜水艦は中国軍の艦船を、ただちに攻撃してくる
と論じた。

記事は、海上自衛隊が最近、記者団を訓練中の「そうりゅう」に乗り組ませ、取材させたと紹介。
秘密保持が極めて重要な潜水艦への取材許可としては「異例」と評した。

軍事評論家として有名な尹卓氏は
「そうりゅう」について、大気に依頼しない推進方式のAIPを採用しているので、連続して20日間の潜航が可能
と説明。
隠密性に優れているので攻撃を受けにくく、船体が大きいので多様な武器を多く搭載できる。
つまり、作戦能力が高いと高く評価した。

記事は、「そうりゅう」を通常動力の潜水艦としては、現在のところ世界で最も先進的な艦のひとつと紹介。
さらに、安倍政権が、潜水艦の保有数を従来の16隻から22隻に増やすことを決めたと指摘。
念頭にあるのは中国への対抗だと論じた。

尹氏は、日本の潜水艦は東シナ海方面に頻繁に出動していると説明。
中国の海軍基地、港、航路、水上艦の活動の法則性などについて、偵察と記録を続けていると論じた。
また、日本の潜水艦は中国の潜水艦のスクリュー音を収集しており、音で艦の種類が識別できる状況になっているとの見方を示した。

尹氏によると、日本の潜水艦は、東シナ海の主要な海峡でも活動しており、中国の艦体が東シナ海から太平洋に出る際には、追尾しているという。
さらに、潜望鏡を利用しての撮影もしており
「日本側のこのような行為は、戦闘状態になれば中国側にとって大きな脅威だ」
と論じた。

また、日本は潜水艦と水上艦を組み合わせた、「対潜水艦防御網」も構築しており、
両国が戦争状態になった際に中国の潜水艦が第一列島線を突破しようとすれば、待ち伏せ攻撃を受ける
だろうという。



TBS系(JNN) 3月4日(金)17時58分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160304-00000055-jnn-pol

「中国の海洋進出で東アジア秩序が一変する可能性」



防衛省のシンクタンク「防衛研究所」が中国についての年次報告書を発表し、中国の海洋進出によって東アジアの秩序が一変する可能性があると指摘しました。

報告書は、中国が領土問題などで有利な立場に立つために、中国本土から遠く離れた地域での作戦能力向上を図っていると分析。新型の潜水艦や国産空母などで装備の充実を図るとともに、南シナ海に加え、西太平洋やインド洋でも活動を活発化させているとしました。

また、中国はアメリカのグアムを射程に入れた最新型の弾道ミサイルを開発するなど、アメリカ軍の介入を防ぐ態勢を整えつつあると指摘しました。



時事通信 3月4日(金)17時11分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160304-00000119-jij-pol

中国軍、海洋進出の拡大狙う
=米中緊張も予想―防衛研報告書

防衛省のシンクタンク、防衛研究所は4日、中国の軍事動向に関する2016年版の報告書を公表した。
中国海・空軍が自国の海洋権益を拡大するため、活動範囲を西太平洋からインド洋まで広げつつあると指摘。こうした中国軍の強引な活動を黙認し続ければ、東アジア地域での安全保障環境が激変する可能性があると分析している。
中国は近年、東シナ海の沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、南シナ海でも軍事拠点化を進め周辺国との摩擦が高まっている。報告書は東・南シナ海を念頭に、中国が「50余りの島しょが外国に占領され、海域は分割され、資源は略奪される状況にあると認識」していることが背景にあると指摘した。
実際、中国海軍は基本戦略に「遠海防衛」を新たに加え、西太平洋やインド洋で実戦想定の演習を実施。新型駆逐艦や潜水艦の配備を進め、中国本土から離れた海域での作戦能力を高めるとともに、「上空援護の必要性」から、空軍も戦闘機の新型化を推進しているとした。
報告書は、中国軍が広範囲での戦力向上を図る狙いについて「(海洋進出を阻む)米国の軍事介入をちゅうちょさせるため」とみている。さらに、中国の意図が達成されれば、「東アジアの既存の安全保障秩序が一変する可能性がある」と警告し、米国がこれに対抗した場合は「米中間の緊張は高まらざるを得ない」と懸念を強めている。 



テレビ朝日系(ANN) 3月4日(金)17時50分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20160304-00000050-ann-int

中国の国防費「16兆円」 今年は1桁の伸びに

中国の今年の国防予算が6年ぶりに1桁の伸びとなります。
今年の国防予算は、前の年に比べて7%から8%の伸びとなることが明らかになりました。
5日から始まる全人代で正式に発表されます。今年の国防費は約16兆円に上る見通しです。
1989年以降、ほぼ毎年続いた2桁の伸びが今年は6年ぶりに1桁となりますが、必要な国防費と経済発展などの状況から決定したとしています。



レコードチャイナ 配信日時:2016年3月5日(土) 13時40分
http://www.recordchina.co.jp/a130478.html

中国が南シナ海に2つの防空識別圏を設定へ、
人工島の軍事化必至―米議会報告書

2016年3月4日、環球時報は記事「米議会報告書:中国は南シナ海に防空識別圏2個所を設定へ」を掲載した。

米議会の米中経済安全保障委員会は2日、報告書を発表。
中国が西沙諸島、南沙諸島の2個所に防空識別圏を設定する可能性が高いと分析した。
外交や国際関係に与える影響を考慮しつつ、発表のタイミングをうかがっているという。

交通の要衝である南シナ海に防空識別圏が設定されれば影響は大きい。
中国と関係国の関係が悪化が予想されるほか、中国は建設した人工島を軍事利用することが予想される。
アクシデントに備え、レーダーの強化など南シナ海における米軍の情報収集能力を高めることが必要だと報告書は提言している。



読売新聞 2016年03月05日
http://toyokeizai.net/articles/-/108173

中国軍事費は日本の3.2倍、「強軍路線」を堅持
16年予算は前年比7.6%増、全人代で明らかに

【北京=蒔田一彦】
5日に開幕した中国の全国人民代表大会(国会)で発表された2016年の軍事予算は、前年実績比7.6%増の9543億元(約16.2兆円)で、過去最高を更新した。



伸び率は6年ぶりに1けたとなったが、日本の防衛予算(16年度予算)の約3.2倍に達する。
景気減速が鮮明になった中でも、習近平(シージンピン)政権は「強軍路線」を堅持する構えだ。 
習政権が軍の機構改革を本格始動させて以降、初の予算編成となる。
全人代会場となる北京の人民大会堂では5日、真新しいバッジを付けた軍代表の姿があった。
習政権は2月、陸軍主体だった7大軍区を廃止し、五つの「戦区」に再編。
首都防衛を担う「中部戦区」の韓衛国・司令官はメディアの取材に「中国軍の強化にとって非常に有益なものだ」と述べ、習氏が主導する改革を高く評価した。

この日の政府活動報告で李克強(リークォーチャン)首相は「改革による軍の強化」を進め、「国家の安全を断固守る」と宣言。
習政権が進める30万人の削減で浮いた予算を海空軍の最新装備などに充てるとみられる。
昨年末に新設した戦略ミサイル部隊である「ロケット軍」と、宇宙やサイバー分野などを担うとみられる「戦略支援部隊」にも重点的に配分されるとの見方がある。

中国は2隻目の空母建造を明らかにしており、更に「空母戦闘群」を構成する駆逐艦やフリゲート艦も量産している。
日本の防衛研究所が4日に公表した報告書によると、08年に初就役した新型ミサイル・フリゲート艦「054A型」は、14年までに約20隻に増加した。
海軍力の増強を急ぐ背景には、日本や米国などと領土主権や海洋権益を巡って対立を抱える東シナ海、南シナ海での軍事的優位性を確保する狙いがある。


日本テレビ系(NNN) 3月7日(月)14時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160307-00000025-nnn-pol

新型潜水艦「じんりゅう」 海自に引き渡し



 海上自衛隊の新たな潜水艦「じんりゅう」が完成し、自衛隊への引き渡し式が行われた。
 「じんりゅう」はオーストラリアの次期潜水艦の導入計画で日本が受注を目指している「そうりゅう型」の最新艦で、防衛省は優れた性能や安定した製造技術をアピールしたい考え。

 「じんりゅう」は全長約84メートル、幅は約9メートルで、毎年1つずつ製造されている「そうりゅう型」潜水艦では7番目のもの。
 側面には、音を吸収して敵のソナーから探知されにくくするための特殊なタイルが敷き詰められている。

 オーストラリア政府は潜水艦の共同開発国を日本、ドイツ、フランスの中から今年中に決定する方針。
 防衛省は「そうりゅう型」を毎年製造してきた安定した技術力や性能の高さをアピールし、受注につなげたい考え。



TBS系(JNN) 3月7日(月)19時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160307-00000040-jnn-pol

海自に潜水艦「じんりゅう」引き渡し、配備数17隻に

 中国の海洋進出を受けて、海上自衛隊が潜水艦の数を増やし始めました。
 東シナ海などでの警戒監視態勢を強化する狙いです。

 海上自衛隊に新たに配備される潜水艦「じんりゅう」が製造元の三菱重工業から海上自衛隊に引き渡され、母港となる広島県・呉基地に向けて出港しました。

 防衛省は、中国の海洋進出などを受け、潜水艦の態勢強化を図っていて、
 今回の「じんりゅう」で配備数は17隻に増加しました。
 将来は22隻態勢にする計画です。

 「厳しさを増す安全保障環境において、防衛省・自衛隊は、いざというときには、ありとあらゆる事態に真っ先に対応していかなければなりません」(若宮健嗣 防衛副大臣)

 「じんりゅう」は世界最高レベルの隠密性を持つとも評される「そうりゅう型」の潜水艦で、今後、自衛隊が東シナ海などで行っている警戒監視活動の一翼を担うほか、有事の際には敵の艦船への攻撃も任務になります。


サーチナニュース 2016年 03月 7日 10:06 JST
http://jp.reuters.com/article/philippines-idJPKCN0W902N

日本の潜水艦がフィリピン寄港へ、
ベトナムにも護衛艦=関係者

[東京 7日 ロイター] -
 海上自衛隊が今年4月、フィリピンのスービック湾に潜水艦と護衛艦の寄港を計画していることが分かった。
 防衛省関係者が明らかにした。護衛艦はベトナムのカムラン湾にも立ち寄る。
 米国が「航行の自由作戦」で中国けん制に動く中、日本は周辺諸国への寄港などを通じて南シナ海への関与を強める。

 関係者によると、3月中旬以降に日本を出港し、4月にスービック湾に入港する方向で調整している。
 練習用の潜水艦を使用し、訓練航海という位置づけだが、中国が南シナ海への進出を一段と強める中、「日本なりのメッセージになる」と同関係者は話す。
 海自の潜水艦がフィリピンの港に立ち寄るのは15年ぶり。

 潜水艦に同行する護衛艦2隻はその後、ベトナムのカムラン港にも寄港する。同湾は中国がベトナムなどと領有権を争う海域に近く、ベトナムは抑止力として外国艦艇を受け入れる新たな港湾を建設中。
 日本とベトナムは昨年11月、海自艦が新港湾に立ち寄ることで合意していた。

 中国が南シナ海で造成した人工島に対し、米国は12カイリの内側に艦艇を派遣する「航行の自由作戦」をこれまでに2度実施した。
 自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は今月1日に都内で行った講演で、自衛隊が同作戦に参加する計画はないとあらためて説明。
 一方で、
 「日本も南シナ海でプレゼンス(存在)を示す必要がある」
と強調した。

 フィリピンやベトナムなど南シナ海周辺国への寄港や、共同訓練を通じて
 「われわれなりの関与のやり方をしている」
と述べた。

 日本は今春に中谷元防衛相がフィリピンを訪問し、海自の航空機「TC-90」の供与でフィリピンと合意することも検討している。
 海自は同機を訓練用に使用しているが、フィリピンは海上監視に使う。



サーチナニュース 2016-03-10 13:07
http://news.searchina.net/id/1604505?page=1

フィリピンが日本から自衛隊機借り受けて、南シナ海をパトロール 
アキノ大統領が公式の場で表明=中国メディア

 中国メディアの中国新聞社によると、フィリピンのアキノ大統領は9日、日本の自衛隊から航空機5機を借り受け、南シナ海を中心とする海洋における「パトロール任務」に使用すると述べた。

 バタンガス州フェルナンド空軍基地で行われた、空軍司令官の交代儀式に出席した際の発言。
  日本の自衛隊が保有するTC-90練習機5機を借り受け、フィリピン海軍が南シナ海を中心にパトロール任務を実施する際に使用するという。
 ただし、アキノ大統領は借り受けを始める時期については言及しなかった。

 アキノ大統領は、フィリピンが米国から購入したC-130輸送機も今年中に到着すると説明。
 1期目は3月13日から19日にかけての週、残る1期は9月中に到着するという。

 中国新聞社は日本の石川和秀駐フィリピン大使とフィリピンのヴォルテア・ガズミン国防大臣が29日、マニラ市内で「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とフィリピン共和国政府との間の協定」に署名したことや、海上自衛隊が4月にフィリピンのスービック湾に潜水艦と護衛艦の寄港する計画でフィリピン側との協議が続いていると指摘。

 中国は日本とフィリピンが軍事面での提携を強化しているとして、警戒を強めている。

**********

◆解説◆
 TC-90の原型となったのは、「ビーチクラフト キングエア(C-90)」だ。
 同機はターボプロップ双発のビジネス機で、軍用としても人員輸送によく使われている。

 C-90を連絡輸送機用に改造したのがLC-90で、さらに練習機に改造したのがTC-90。
 LC-90の場合、最高速度は220ノット(時速407キロメートル)で、巡航速度は196ノット(時速363キロメートル)。
 航続距離は2150キロメートルだ。

 TC-90は特に高度な電子機器などは装備していないと考えられるため、フィリピン海軍は同機を目視によるパトロールに用いると思われる。



サーチナニュース 2016-03-11 10:23
http://news.searchina.net/id/1604583?page=1

中国政府「日本は言動を慎め」 
自衛隊機をフィリピンに貸し出しで「いらだち」強まる

 中国政府外交部の洪磊報道官は10日の定例記者会見で、日本がフィリピンに自衛隊機5機を貸し出すことについて、
   「われわれは日本側に、言動を慎むよう促す」
と述べた。
 王毅外交部部長(外相)も8日に
 「日本は絶え間なく中国に面倒を与え続けている」
と発言するなど、中国政府は日本の外交攻勢にいらだちを強めている。

 日本は自衛隊保有のTC-90練習機5機をフィリピンに貸し出す。
 フィリピン海軍は借り受けた5機を、南シナ海のパトロール任務などに投入する。
 アキノ大統領も9日、空軍司令官の交代式で、自衛隊機借り受けを明言した。
 ただし、時期については明らかにしなかった。

 洪報道官は10日の記者会見で、中国も同問題に関連する報道に注目していると説明。
 「もしもフィリピンの関連行動が中国の主権、安全と利益を挑発するものであるなら、中国側は堅く反対する」
と述べた。

 洪報道官はさらに、
 「この場を借りて、改めて申し上げる。
 日本な南シナ海に関連する争議の当事者ではない。
 われわれは日本の行動に強い警戒を持ち続けている。
 われわれは日本に言動を慎み、情勢を複雑化せず、地域の平和と安定を損ねることをしなうよう促す」
と述べた。

 日本が南シナ海の問題を始めとして、中国に対して外交攻勢をかけていることに、中国政府はいらだちを強めている。
 王外相も8日に開催された全国人民代表大会(全人代)にともなう記者会見で、
 「日本政府と指導者は、中日関係を改善する必要があると絶えず言いながら、いたるところで中国に絶え間なく面倒を与え続けている」
と日本を批判した。

 王外相はさらに
 「中国の発展を目の当たりにして、結局のところ中国を友とするのか敵とするのか」
と述べた。

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◆解説◆
 王外相の最後の「友とするのか敵とするのか」との表現は、日中関係に詳しい中国人ならば、蒋介石が自らの対日観を示したとされる(署名は別人)「敵か? 友か? 中日関係の検討(反省)」を思い起こすはずだ(1934年発表)。

 同論文は日中が全面戦争に突入した1937年の盧溝橋事件の前に、
 「中国は弱いがゆえに、決戦により戦争が終わることはなく、日本が中国全土を占領し、中国を徹底的に消滅し尽くさない限り、戦争終結はない」
と指摘。
 日本側の対中観には多くの誤りがあると指摘した上で、中国側の日本認識にも間違いが多かったと認めた。
 そして日中間の問題を解決するには最終的に
 「必要なことは、ただ日本の考え方の転換だけだ」
と結論を出した。
 王外相は、この部分を踏まえて発言した可能性が高い。

 「敵か? 友か?」
は、中国を愛するがゆえに日本との戦争を避けたい信条がつづられており、
 「理を知る中国人はすべて、究極的には日本人を敵としてはならないということを知っているし、中国は日本と手を携える必要があることを知っている」
などの記述がある。
 そのため現在の中国では「対日妥協論」などとして、批判されることも多い。




【2016 明日への展望】


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