2016年3月5日土曜日

「人民よ!一日一度はイモを食え!」: 水戦争勃発「水を制する者は世界を制する」、様々な不安な中国環境

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ニューズウイーク 2016年3月4日(金)13時42分 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4630.php

「人民よ、いもを食べろ!」
中国じゃがいも主食化計画のワケ

 戦時下でもないのに「第四の主食にせよ」と政府が大号令。
 その裏には深刻な水不足があるが、SNSでの反応は芳しくなくて……


●作付面積を増やし、1日1回はじゃがいもを食え 生産だけでなく消費も増やすため、じゃがいもを主成分とした料理のレシピを募集したりもする予定だが、果たして…… George Clerk-iStock.

 2016年2月23日、中国農業部は「じゃがいも産業開発推進に関する指導意見」を公表した。
 小麦、米、トウモロコシに続く第四の主食としてじゃがいもを位置づけるというもの。
 2020年までにじゃがいもの作付面積を1億ムー(約667万ヘクタール)以上に拡大すること、その30%以上を主食に適した品種とすること、主食消費量の30%をじゃがいもにすること、といった数値目標を掲げている。

 つまり1日3食のうち1回はじゃがいもを食うべし」と政府が大号令をかけたのである。
 SNSやネット掲示板をのぞくと、「主食にじゃがいもは勘弁して欲しい」と嫌がる声が多数だ。
 政府が無理やりいもを食べさせる、とは。
 北朝鮮や戦後直後の日本を想起させる話だが、いったい中国政府の狙いは何なのだろうか。

【参考記事】北朝鮮の飢餓の元凶は国際援助?

■食料安全保障と耕地面積防衛ライン

 ペルーに本拠を置く非営利団体(NPO)「国際ポテトセンター」(CIP)は2010年、北京市に太平洋アジア地区センター(CCCIP)を開設した。
 中国各地の風土に適した品種を共同開発することが狙いだ。
 また、じゃがいもの作付面積を増やした農家への補助金支給も実施された。
 少なくとも6年前から、中国政府はじゃがいも主食化計画への取り組みを続けていたことになる。

 動機の一つとなったのは食料安全保障だ。
 13億人をいかに食わすかが政府にとっては最大の課題。
 「自由貿易の時代なのだから輸入すればいいではないか」派と「戦争や天災などの食糧危機に備えて自国での供給体制を整えておかなくては危険」派が対立する構図は中国も日本も変わらないが、図体が大きい分だけ中国のほうが危機感が強い。

【参考記事】商品化迫る、人工ハンバーガー

 中国政府は
 「18億ムー(約1億1200万ヘクタール)の耕地面積防衛ライン絶対死守」
を大原則とし、農地を潰しての住宅地・工業用地開発に歯止めをかけている。
 開発を進めたい地方政府は、山を切り開いて畑を作ったり、農村部に集合住宅を作って空いた住宅用地を畑にしたりするなどして新たな耕地を捻出。
 そのバーターとして都市近郊の畑を潰すといった苦肉の策を続けている。

 もっとも耕地面積絶対死守というだけならば、他の作物でもいいはずだ。
 なぜ「じゃがいも」なのだろうか。

■戦争並みの「水不足」

 「じゃがいも産業開発推進に関する指導意見」を読むと、「全面的な小康社会建設という目標の実現には"腹いっぱい食べる"から"よい食生活をおくる"への転換が必要。
 じゃがいもは栄養豊富である。
 小康社会主食文化を打ち立てよ」といった美辞麗句もあるが、率直に具体的な問題を表明している個所もある。

【参考記事】「農村=貧困」では本当の中国を理解できない

 一つはトウモロコシの問題だ。
 華北、西南、西北の荒涼地ではトウモロコシが主要作物となっているが、輸入品との価格競争が深刻だ。
 政府による買い上げで農民の収入確保をはかっているが、在庫増加も問題となっている。
 そこで一部をじゃがいも生産に切り替えようという発想だ。

 そして、もう一つの問題が水不足。
 むやみやたらな耕地拡大と工業用水の需要増加、さらに水質汚染によって、中国北部では水資源が枯渇している。
 中華文明を育んできた大河である黄河も下流域では干上がってしまっている時期が多い。
 ならばと地下水の利用が進められてきた。
 華北では水使用量の75%以上を地下水に依存しているが、その影響で大規模な地盤沈下が起きている。
 北京市では地下水の水位が年13メートルのペースで低下しているとの報告もあるほか、華北平原の半分以上で地盤沈下が確認されているという。

 だったら水が豊富な南部から運んでこようと、巨大土木プロジェクト「南水北調」計画が実施された。
 長江の水を北部まで運ぶ用水路を作る壮大な計画だが、5000億元(約8兆7000億円)という巨額の建設費を考えるとペットボトルの水よりも高くつくとの試算まである。
 それでも作ったのならば使うしかないが、際限なく使い続ければ、南部の水資源まで危うくしてしまう。

 そこで栽培にあまり水を必要としないじゃがいもを栽培すれば、「農業用水逼迫の圧力を軽減し、農業生態環境を改善し、永続的な水資源利用を実現しうる」(指導意見)というわけだ。
 まるで戦時を思わせる「じゃがいも主食化」計画だが、水不足の深刻さはまさに戦争並みと言えるかもしれない。

■中国共産党は人民の胃袋を支配できるか

 水不足対策という中国政府の思いはよく分かるのだが、問題は国民がじゃがいもを主食としてくれるかどうかにかかっている。
 千切り炒めをはじめ中華料理にはさまざまなじゃがいも料理があるが、あくまで「野菜の一種」というのが大多数の中国人の感覚だ。
 主食としていもをもりもり食べろと言われると抵抗感は強い。

 SNSをのぞくと
 「じゃがいもは好きだけど毎日はちょっと」
 「米食わないと食事した気にならないんよ」
 「やっぱり米が好き」
 「2020年にはじゃがいも生産過剰のニュースで持ちきりになってるだろうな」
といった否定的な反応が目立つ。

 そこで、じゃがいもの生産量を増やすだけではなく、消費量を増やす取り組みも始まっている。
 中国農業部は2015年にじゃがいも入りマントウ(蒸しパン)の開発成功を発表した。
 じゃがいも30%、小麦粉70%という配合なのだとか。
 一般販売を開始したというが、まったく普及してはいないようだ。

 そこで今年6月に雲南省昆明市で開催される中国国際イモ業博覧会では「じゃがいも美食百選」なるコンテストが開催される。
 じゃがいもを主成分とした麺や餃子、パンなどの主食、さらに飲料やデザートなどのレシピを募集するというもの。
 果たして中国人の胃袋を満足させるメニューは登場するのだろうか。

 絶大な権力を誇る中国共産党だが、
 果たして人民の胃袋をもコントロールする力を持っているのだろうか。
 わずか4年後にはその成否が明らかになる。
 もしじゃがいも主食化計画が成功したならば......。
 2020年には私たちが想像するものとはまったく別の中華料理が誕生しているかもしれない。


人民網日本語版配信日時:2016年6月21日(火) 22時30分
http://www.recordchina.co.jp/a142191.html

中国農業部、じゃがいも主食化を推進―中国メディア

 中国農業部(省)はこのほど、じゃがいも主食製品の開発において、コストや政策支援などの問題の解決が待たれると報告した。
 昨年1月にじゃがいも主食化戦略がスタートしてから現在までに、中国のじゃがいも主食製品は150種以上に達している
 2020年には、中国の5割以上のじゃがいもが主食として消費される見通しだ。
 中国放送網が伝えた。

 中国農業部の余欣栄副部長は、
 「主食に加工できるじゃがいもの専用品種が少なく、製品の品質検査基準が不足している
 主食に加工するための原材料コストが高く、政策支援が依然として十分でない」
と話した。

(提供/人民網日本語版・編集/YF)



ニューズウイーク 2016年4月15日(金)15時07分 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4916.php

庶民の物価ジョークから考える中国経済改革の行方
野菜や豚肉の価格が高騰する中国
投機マネーを取り締まるはずだった李克強首相の「リコノミクス」はどこへ消えてしまったのか

  「リコノミクス」という言葉を覚えているだろうか。
 中国語で書くと「李克強経済学」。
 李克強首相が主導する経済改革につけられた名称だ。
 しかし李克強の首相就任から3年、すっかり死語となってしまった。
 習近平政権は総書記に権力を集中する体制改革を断行し、李克強首相は経済運営の責任者ではあっても、経済改革の担当者という役割からは外されたかのように見える。
 リコノミクスでぶちあげられた改革プランも停滞し、忘れ去られてしまったものも少なくない。

 今回は庶民の食卓、市場(いちば)の異変から中国の改革の行方を考えたい。

■「炒め物が貴族の料理」
 「コーヒーにニンニク」

 「葱爆肉(ネギと豚肉の炒め物)は今や貴族の料理だよ!」
 いきなりこんなことを言われてもさっぱり意味が分からないと思うが、天津市に住む中年女性に聞いたところ、野菜市場で人気のジョークなのだとか。
 今年2月以来、中国各地で野菜と豚肉の価格が急騰している。
 ネギと豚肉の炒め物などというお手軽料理ですら高根の花になってしまったという意味だ。

【参考記事】「人民よ、いもを食べろ!」中国じゃがいも主食化計画のワケ

 物価ジョークはこれだけではない。

 「今時の金持ちはコーヒーにニンニクを入れるんだよ」
 (お茶じゃなくてコーヒーを飲むようなハイカラな人たちは、わざわざ値段が高くなったニンニクを入れることで財力を誇示している)

 「向前葱」
 (向前冲〔突撃せよ〕のかけことば。突撃するようにネギの価格が上がるという意味)

 「蒜你狠」
 (算你狠〔おまえのほうがすごい〕のかけことば。"
 ニンニク様"の値段が力強く上昇しているとの意味)

 正直、日本人が聞いてもさっぱり面白さが分からないジョークだが、天津市の市場ではこれで爆笑間違いなし、なのだとか。
 食材価格の高騰がそれだけ庶民の関心事になっている証しだ。
 中国の地元紙にも
 「息子の大好物の角煮を週1回から月2回に減らしました」
 「野菜を買う時はいつも量り売りでどっさり買っていたのに、今じゃネギ1本、茄子1個とちまちま購入するように」
といった「物価高騰で庶民が悲鳴」系のニュースがあふれている。

【参考記事】「農村=貧困」では本当の中国を理解できない

 中国国家統計局発表の消費者物価指数でも食品価格高騰は裏付けられている。
 2月期の野菜価格は前月比29.9%、前年同月比30.6%と急騰している。
 豚肉価格は前月比6.3%、前年同月比25.4%の上昇だ。3月期の統計ではやや下がったものの、依然として高水準で推移している。

■価格上昇に中国ならではの2つの要因

 中国政府は天候不順が価格上昇の要因だと説明している。
 中国に限らず、天候によって生鮮食品価格が上下するのはごくごく当たり前の話だが、実際には中国ならではの要因がある。

★.第一に生産量のミスマッチだ。
 「価格高騰
→農家が生産を増やす
→供給過剰で価格下落
→農家が供給を減らす
→価格高騰......」
という構図がえんえんと繰り返されている。
 特に子ブタの生産から肥育までタイムサイクルが長い豚の場合は、ほぼ3年周期で価格が高騰する。
 同じことを繰り返しているのだから農家も対策が立てられそうなものだが、同じ失敗が繰り返されている。

★.第二に投機マネーの流入だ。
 2010年に中国で話題となったのが「ニンニク・バブル」だった。
 鳥インフルエンザに効果があるとのデマが広がったことをきっかけに、ニンニク価格が急騰。
 まだまだ値上がりするはずだと買い占め・売り惜しみを横行し、さらなる価格高騰の要因となった。
 中国ではさまざまな商品が投機の対象となり、プチバブルが繰り返されてきた。
 ワイン、白酒、切手、プーアル茶、唐木などなど。保存が利かない葉物野菜は別として、ニンニクや豚肉とて例外ではない。

 リコノミクスの改革はこうした中国的要因の解消を目的としていた。
 例えば農業企業、大農場の解禁だ。
 零細農家はどうしても短期的な利益から生産量を変化させてしまうが、企業や大農場などの大規模な経営体ならば長期的視野で生産量の管理が可能となる。
 そのお手本が日本だ。
 かつては零細養豚業者が主体で「ピッグ・サイクル」と呼ばれる周期的な価格上昇があったが、大規模農家が主流となったことで価格が安定した。

 しかし"一応"共産主義の中国において、農業企業や大規模農家の奨励は政治的に敏感なテーマであり、反対派も少なくない。
 プランそのものはすばらしいものだったが、気づけばたいした前進もなく忘れられようとしている。

 野菜先物市場を開設することで価格の乱高下を抑制するとの提言もあるが、無知でか弱い農民を資本主義マーケットに放り込むのはいかがなものかとの反対意見が強く、遅々として進まない。

 リコノミクスの目玉は投機マネーの取り締まり。
 中小企業を中心に実体経済へとマネーを誘導すると高らかに宣言したが、現実はニンニク・バブル再び、だ。

【参考記事】「李克強指数」が使えないわけ

 13億人の大国で改革を断行するには大変なエネルギーが必要となる。
 習近平国家主席に権力が集中するなか、李克強首相にはその力が失われてしまったかのようだ。
 一方、絶大な権力を手にした習近平国家主席はというと、経済よりも政治権力闘争のほうに力点を置いている。
 これでは経済改革が進まないのも仕方がない。
 繰り返されるジェットコースター物価を前に、庶民にできるのはジョークとダジャレで皮肉を言うことしかないようだ。

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。


サーチナニュース 2016-03-09 20:18
http://biz.searchina.net/id/1604452?page=1

日本が水ビジネスに邁進、
「水を制する者は世界を制する」=中国

 現代の日本は飽食の時代とも言われる。
 日本で食糧難に直面することはあまり考えにくいものの、食糧は人が生きていくうえで必要不可欠な存在だ。
 深刻な食糧難によって飢餓が発生すれば、国家の運営そのものにも大きな影響をもたらすと考えられるが、この原則は水にもあてはまる。
 水も食糧と同様に人にとって必要不可欠なものだからだ。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、水を制する者は世界を制すると指摘、日本が水インフラの輸出という巨大な潜在力を秘めた水ビジネスに力を注ぎ込んでいると伝えている。

 日本では日常生活で水に困ることは少ないが、水不足にあえぐ国は多く、世界的に見れば水は非常に大きなビジネスになる。
 例えば、海水を淡水化する事業の市場規模は現在約80億ドル(約9000億円)であり、そして10年後には1000億ドル(約11兆2511億円)を超える可能性もある。
 しかしなぜこれほどの需要があるのだろうか。

 記事は、国連の予測を引用し、現在73億の世界人口が2050年には95億に達する見込みと伝え、アジア太平洋地域の発展、さらには工業化に伴って、同地域で使用される淡水資源の量は急増すると指摘した。
 さらに米国航空宇宙局の調査によれば、世界の半分以上の地下水は枯渇に向かっており、淡水資源を確保することは急務だという見方を示している。

 ますます稀少化する淡水資源だが、海水は豊富に存在するため、海水を淡水化する技術がますます注目されるようになっている。
 地球の水資源全体のうち淡水資源はごくわずかであるが、海水は実に97.5%を占める。
 では日本はどのように水インフラ輸出に取り組んでいるのだろうか。

 インフラ輸出は安倍政権の成長戦略のけん引役だが、例えば2015年に日本企業はサウジアラビア企業と日本の海水淡水化プラントを導入する覚書に調印した。
 このプラントは従来の設備に比べて20%ものエネルギーを節約しながらも、供給量は従来の2倍に相当する約500万人分の飲料水を提供できる。

 記事は、サウジアラビアは今後も海水淡水化プラントの建設に向けて多額の投資を行う予定であると説明、従って15年に日本企業が覚書を調印したことはさらに大きなビジネスにつながる可能性を秘めている。
 また海水の淡水化市場が大きいのはサウジアラビアだけでなく、米国のカリフォルニア州やインドや中東の砂漠地域もこの技術を必要としている。

 人間は水を飲まなければ生きられないだけに、海水の淡水化技術を制することはビジネス、外交などさまざまな面において想像をはるかに超えた価値を持ち、
 「水を制する者は世界を制する」
という言葉はあながち誇張とも言えない状況にある。



JB Press 2016.3.10(木)  茂木 寿
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46292

桁外れの犠牲者が出る中国の自然災害

 中国におけるビジネス上のリスクについての5回目は、中国の自然災害を取り上げる。

 一般的に大国と言われる国では、自然災害が多いという傾向がある。
 中国は自然災害リスクのランキング(2015年)では世界171カ国中80位であるが、洪水、地震、台風等の風害、干ばつ、土砂崩れ、ひょう害等、多種多様な災害が発生している。

 その中でも発生件数、経済的損失額共に突出しているのが洪水である。
 洪水に次いで経済的損失額が大きいのが地震だ。
 一般的に世界の大陸性地震の3分の1が中国で発生すると言われている。
 また、洪水に次いで発生件数、被災者数が多いのが風害である。
 この他、ひょう害も全土で頻発しており、人的被害の他、農作物、家畜等への被害の他、工場等の生産設備にも被害をもたらしている。
 さらに、最近ではPM2.5などの大気汚染の問題も深刻であり、健康被害への懸念が増大している。

 今回は災害ごとに被害の内容や傾向などを中心に俯瞰してみたい。

■長江、黄河でたびたび大規模な洪水が発生

 洪水は中国における自然災害のうちで最も発生頻度が高く、また被害も大きい。
 過去には、長江・黄河等の大河川の氾濫による大規模な洪水がたびたび発生している。
 特に長江の中・下流域は、6~7月の梅雨、7~9月の台風による大雨により、洪水が発生している。
 また、黄河は夏から秋にかけて発生する豪雨、2~3月の解氷が原因となり、洪水が発生している。

 河川長が世界第3位の長江(青海省の高原から約6300km下流の上海で東海に注ぎ込む)は、中国の11の省・自治区・直轄市を流域(流域面積は約180万km2)におさめ、およそ10年に1回の割合で大洪水が発生している(1954年には3万3000人が死亡した長江大洪水が発生している)。

 1954年以来の大洪水と言われた1998年の長江大洪水では、8月に流域各地で堤防が決壊し、農村地帯を中心に大きな被害が発生した。
 また、少なくとも3000人以上が死亡し、被災人口2億4000万人、避難人口1400万人に達した。

 湖北省監利県三洲鎮(人口約4万人)では1998年8月9日、長江の水位の上昇に伴い、約200km下流の省都・武漢を洪水から守るために、堤防を爆破し、人為的に洪水を誘発した。同様の堤防の人為的決壊は、同県内で大規模なものだけでも4カ所で行われた。
 その結果、約330km2が水没し、9万6000人が避難を余儀なくされた(中国では過去にいく度か、下流の大都市を洪水から守るため、上流の堤防を破壊し、人為的洪水を発生させている)。

 最近では2013年8月、ロシアとの国境を流れる黒竜江で洪水が発生し、少なくとも85人が死亡し、105人が行方不明となった。
 この洪水では520万人が被災し、33万1000人が避難した。
 また、1万8300戸が倒壊し、被害金額は191億元に上る甚大な被害が発生した。

 また、2015年6月上旬から下旬にかけ、豪雨等により、江蘇省南京市を含め20の省が洪水等の甚大な水害に見舞われ、被災者数は2079万人に上り、100人を超える犠牲者が発生した。
 倒壊した家屋は4万4000戸に上り、農作物への影響も甚大で、この一連の豪雨・洪水による経済損失は、353億元(約7000億円)に達したとされている。

■巨大地震で数十万人が死亡

世界の大陸性地震の33%が中国に集中していると言われる。
 中国では過去にも数多くの大地震が発生し、被害の規模も甚大である。大地震は陝西省・河北省・甘粛省・雲南省・新疆ウィグル自治区・チベット自治区・四川省などで発生頻度が高い。
 歴史的には浙江省・貴州省以外の全地域でマグニチュード(M)6以上の地震が発生した記録がある。

 米国地質調査所(USGS)によれば、
 歴史上の地震の中で犠牲者数の1番目と2番目は中国で発生
している。
 1556年1月23日に陝西省で発生した華県地震(M8.0)では83万人が死亡、
 また、1976年7月28日に河北省で発生した唐山地震(M7.5)では少なくとも65万5000人が死亡したとされている(中国政府の公式発表で24万2769人が死亡とされているが、80万人に達するとの報告もある)。

 最近では、2008年5月12日に発生した四川大地震(M7.9)で甚大な被害が発生した。
 民政部が2008年7月22日に発表した被害概要は以下の通りである。

・死亡者数:6万9197人
・行方不明者数:1万8222人
・負傷者数:37万4176人
・家屋倒壊数:21万6000戸
・損壊家屋数:415万戸

 その他、
 2010年4月14日に発生した青海地震(M6.9)では死者2698人(行方不明270人)、
 2014年8月3日に雲南省で発生した魯甸地震(M6.5)では死者617人(行方不明112人)
等の地震も発生している。

■台風の上陸が増えている

 中国においては7月から9月にかけて、華中・華南地方を中心に台風が到来し、大きな被害をもたらすことがある。
 特に近年、台風が中国に上陸するケースが増えており、日本企業でも被害が発生している。

 台風の多くは豪雨を伴い、中国の1日最大降水量の記録の多くが台風によってもたらされている。
 中国付近に発生する台風は毎年27~28個で、そのうち7~8個が上陸している。
 過去には12個が上陸した年もある(日本での上陸台風は年平均2~3個である)。

 最近では、2013年9月22日の台風19号(Usagi)が広東省に上陸し、被災者数796万5000人、死者27人、避難者46万6000人に達した。
 また、2015年7月上旬には台風9号(Chan-hom)および10号(Linfa)が相次いで中国に上陸し、被災者数は300万人を超える事態となった。

■2014年の干ばつでは400万人以上が危機的状況に

 中国では1900年以降少なくとも36回の干ばつが発生している。
 地域的には華北地方から内陸部にかけての広い範囲に及んでいる。
 原因としては、近年の温暖化等に伴う降雨量の減少の他、過伐採に伴なう保水力の低下、水資源利用の拡大と水不足、さらには西部を中心とした砂漠化等と密接な関係があるとされている。

 2014年8月に遼寧省、河南省、湖北省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区等を中心に発生した干ばつでは、計2750万人以上が影響を受けたとされ、400万人以上が危機的状況となった。
 また、2015年にも寧夏回族自治区で干ばつが発生し、100万人以上が影響を受けている。

 中国における干ばつの被害は、黄河流域等の華北地方等に多いが、長江流域についても、三峡ダムの完成に伴ない、下流域を中心に干ばつに見舞われるケースが増えている。
 さらに、南部雲南省でも近年干ばつが発生する等、中国の非常に広い範囲で干ばつが頻発していることに留意が必要である。

 なお現状では抜本的な対策は極めて限定的であることから、今後も干ばつ、水不足、砂漠化等の被害は継続・拡大する可能性が高いと思われる。

■内モンゴル自治区の激しい「ひょう」では死亡者も

 中国での企業活動に大きな影響を与える自然災害として、ひょう害を挙げることができる。
 中国におけるひょう害は、ほぼ全土にわたって発生しており、被害は企業の施設、車のボンネット・窓ガラスの破損等の他、農作物・家畜にも大きな被害を与えている。

 ひょうは暴風雨の際に降ることが多い。
 暴風雨により、電気・通信・交通・給水等のインフラが大きな被害を受けるケースも多く、留意が必要である。

 最近では、貴州省で2012年4月、直径5cmのひょうが降り、穀物4500ha、家屋2800棟以上が被害を受けている。
 また、2015年8月には、内モンゴル自治区で激しいひょうが降り、少なくとも6人が死亡、4万3000人以上が被害を受け、約9000haの農地が被害を受けている。

■大気汚染で在留邦人数が減少

 最近、中国ではPM2.5等の大気汚染の問題がクローズアップされている。

 一般的に中国では冬期を中心に、各地でPM2.5等の深刻な大気汚染が発生している。 
 最近では2015年11月6日から10日にかけて瀋陽等の東北地方、11月30日から12月1日にかけて北京・天津等の華北地方において極めて深刻な汚染が発生した。

 PM2.5は粒子の大きさが非常に小さいため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、ぜんそく・気管支炎等の呼吸器系疾患、循環器系疾患等のリスクを上昇させる。
 特に呼吸器系・循環器系の病気をもつ人、高齢者、子供等は影響を受けやすいとされている。

 中国環境保護部は大気汚染物質濃度について、人体への影響リスクを表す空気質指数(AQI)を用いて公表しており、大気中濃度(μg/m3)300以上は「厳重汚染」で最大値は500とされている。

 ちなみに、在北京米国大使館は同大使館内の観測施設で2008年以降、PM2.5の大気中濃度を1時間ごとに計測し、ウェブ上に公開しているが、2015年11月30日から12月1日の数値では両日共、終日500を超え、最大666に達している。
 また、2015年12月25日にも、終日500を超え、最大620を記録している。
 今年(2016年)に入ってからも2月8日に500を超えている状況である。

 在北京日本大使館は、汚染の激しい日(環境省暫定指針:70μg/m3以上)は下記のような措置を取ることを在留邦人に推奨している。

・不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす
 (呼吸器・循環器に疾患のある人および高齢者・子供は体調に応じ、より慎重な行動が望まれる)。
・外出する場合はマスクを着用する。
・帰宅後は手洗いやうがいを徹底する。
・室内には空気清浄機を設置する。
・ドアや窓を閉め、風が通る隙間もふさぐ。
・たばこ等、他の汚染源・過労にも注意する。

 ちなみに日本の外務省が発表した2014年10月1日時点の中国における在留邦人数は、前年比0.9%減少しているが、北京では9.6%、瀋陽では10.9%減少しており、大気汚染の影響に伴ない、減少幅が拡大していることが分かる。

(本文中の意見に関する事項については筆者の私見であり、筆者の属する法人等の公式な見解ではありません)



サーチナニュース 2016-04-06 07:25
http://news.searchina.net/id/1606607?page=1

日本はなぜできたのか
・・・環境破壊が進む中国、
日本の環境保護を評価

 日本はかつて高度経済成長を遂げる代償として、自然環境を破壊した。
 イタイイタイ病や四日市ぜんそくといった疾病は自然環境の破壊に伴って生じた公害によるものだ。

 だが日本は環境破壊を教訓とし、環境を回復させる取り組みを続けてきたことで、今日では失われた自然は随分と回復した。
 こうした日本の環境保護への取り組みは、現在進行形で環境破壊が進む中国でも高く評価されているようだ。

 中国メディアの緑色中国網絡電視はこのほど、「日本の森林文化」について紹介する記事を掲載し、日本人の自然観と緑化への取り組みを紹介している。

 記事は、日本人は昔から「人と自然は1つ」と考えてきたと紹介し、高度経済成長期後の「公害の泥沼」から抜け出すことに成功し、破壊しつくされた環境がほんの数十年で緑のじゅうたんを敷いたような豊かな自然環境に回復させたことを高く評価。
 現在では国土面積の約7割が緑で覆われている、と日本の緑化の成果を伝えた。

 日本が自然環境を回復させることができた秘訣について、日本人が自然を崇めてきた民族で、
 「木や森が日本人の精神価値観に大きな影響を与えてきたため」
と主張しているが、
 「木や森が日本人の精神価値観に大きな影響を与えてきた」とは、いったいどういう意味なのだろうか。

 日本は自然災害の多い国であるが、記事は地震や台風、津波など、日本人は自然の脅威に晒されながら生き抜いてきた民族であるとし、日本人は自然の変化に敏感で、自然を愛する気持ちが強く、
 「自然に逆らうのではなく、愛して従う」
ことを学んだと主張。
 さらに、日本人は環境に関する教育に熱心で、子どもたちは休みを利用して森林などの野外へ遊びに出かけ、自然と触れ合う機会が中国の子どもよりも多いと説明。
 子どもたちに自然と接する機会を与えることで、子どもたちは自然との共存の価値を学ぶことができ、こうした要素があったからこそ、破壊された環境を回復させることができたと論じている。

 日本は現在、環境保護技術やエコ技術で世界をリードする立場にある。
 世界的に環境保護基準が厳格化するなか、こうした技術を持つ日本企業にとっては強い追い風が吹いていると言える。
 日本が競争力のある環境保護技術を持つことができたのは、確かに「自然に逆らうのではなく、愛して従う」という精神があり、自然の尊さを知っているからかもしれない。



Record china  配信日時:2016年6月18日(土) 11時0分
http://www.recordchina.co.jp/a141937.html

地下水くみ上げで首都・北京の地盤沈下加速!
高速鉄道の安全運行に影響は?―中国

 2016年6月17日、環球時報は、「中国北京の地盤沈下が加速している」と伝える米メディアの記事を紹介した。

 水不足が問題となっている北京では、地下水をくみ上げて2000万人余りに供給している。
 しかし、これによって引き起こされる地盤沈下や土地のゆがみで鉄道や建物がリスクにさらされることも多い。
 北京と天津、上海を結ぶ高速鉄道は北京東部の地盤沈下地域を通っており、専門家の間からは状況が悪化すれば鉄道の安全運行に深刻な影響を来たすとの指摘が出ている。

 北京の地盤沈下の加速は人工衛星の画像で示されている。
 北京で使用される水の3分の2は地下水をくみ上げたものだ。
 2003年から11年にかけて中心エリアの地盤は年平均10ミリのスピードで沈んだが、
 北西部の昌平区や北東の順義区、南東の通州区ではその6〜8倍の速さで沈下が起きた地域もある。
 さらに朝陽区では年110ミリに上った場所も見られた。

 この問題に関し、スペイン・アリカンテ大学の工学部教授は
 「最大の問題はスピード
 の加速ではない」と述べ、不均衡な沈下によってより大きな危険がもたらされるとの見解を示した。同教授は
 「建物を支える地盤の一部で沈下が起きた場合、ゆがみが生じて建物が破損する恐れもある」
と述べ、北京の主要施設を対象に行っている影響度調査の結果を来年発表すると語った。




【2016 異態の国家:明日への展望】


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