アジアでドンパチが起こりうるもっとも確率の高い場所は朝鮮半島だろう。
なぜなら、北朝鮮からソウルまで40キロしか離れていない。
たった40km(直線だと30kmほど)である。
ソウルで「ヨーイドン」でスタートしたマラソンランナーのゴールは国境で2時間後には着いてしまうような距離である(マラソン距離は42km)。
北朝鮮は何も韓国全土を標的にする必要はない。
ここだけ抑えればいい。
こいうより、ここを焦土化してしまえばいい。
彼らは焦土化した後の勝利など考えてもいないだろう。
ソウルを焼け野原にすること、それだけであろう。
そのくらいの軍事力は北朝鮮にはある。
つまり、「韓国対北朝鮮」ではなく、「北朝鮮対ソウル」が朝鮮半島の攻防
なのである。
「歴史の言葉遊び」に邁進するパク・クネの治世は北朝鮮にとっては絶好のチャンス
と踏んでいる可能性は高い。
なを戦争確率の最も低いのが尖閣である。
日本にとって尖閣諸島とは中国を引っ張りだすために鼻先にぶら下げたエサ
である。
軍事力比較でいうと、陸軍は対象にならないから、海空軍になる。
その比較から見ると、大人と中学生くらいの差がある。
日本の軍事力は敗戦という屈辱的な戦争キャリアから生まれた「戦う兵器」である。
中国はパクリ・コピーで形と仕様だけ似せた「カタログ兵器」である。
もし、中国が尖閣に手を出せば、一瞬のうちに東シナ海の制空権と制海権は日本に握られる。
海上船舶ならびに海中船舶の多くが忍者潜水艦の餌食となる。
また防空識別圏を設定したが、それを守るための
スクランブルすらできないのが解放軍空軍である。
尖閣では出撃の機会すら与えれないかもしれない。
出撃出来ても、数回の出撃でパクリ兵器の悲しさで品質不良から、みなガタガタになってしまう。
となれば、これが国内に波及し、共産党政権が社会の批判にさらされることになる。
尖閣への手出しは共産党政権の滅亡につながる。
その程度のことは幼稚園並みの論理で中国もわかっている。
中国には自前の武器で戦った戦争経験がない。
いまのところ戦えない空軍・海軍である。
中国共産党は自分のクビをかけたそんな危険なゲームをするはずがない。
自暴自棄にならない冷静さが共産党の取り柄である。
日本は尖閣を操って、中国の侵略を許すな、
という論理で防衛力強化に励んでいる。
戦争経験十分は日本にとって、あらゆる兵器はいつも戦うための兵器である。
数と見てくれさをアピールすることによって威嚇するためのパクリ兵器ではない。
正確さと殺傷能力がべらぼうに高い抜群の実戦兵器なのである。
尖閣とは日本にとって、中国を翻弄するためのお宝なのである。
いまのところ中国自らの
「10年後には中国軍の総合力が日本を追い越す」
という判断からして、中国軍が自衛隊に相当な差を付けられていることは十分に自覚している。
中国は建前上、
中国の軍事力は日本を上回っているが、
「日本の後ろにはアメリカがいるので、尖閣作戦は実行できない」
という言い訳をもって国内をなだめている。
日本はタイマンでいまの中国に十分勝利できるが、そういうことは決して言わずに
中国の軍事力は巨大で、アメリカがいないと日本は存亡の危機にひんしてしまう
という中国の論理をそのまま借用して、それをいいことにせっせと防衛力増強の名分にしている。
つまり、
「日本はアメリカという虎の威を借りるキツネ」
を演じ、
「日本は中国という空気風船の大きさに恐れおののくキツネ」
と、二通りキツネを華麗に演じている。
まさに狡猾にして言わばサギに近い。
中国が日本と事を構えるときは、全面戦争をもくろむときだろう。
その時はちゃちな尖閣など狙いはしない。
抗日パレードでみせたミサイル群が雨あられと日本の国土にふりそそぐことになる。
共産党がそれをやるときは切羽詰まったときである。
このときは何が起きても驚かないような状態が中国国内に出現しているときである。
しかしそれとて、台湾問題がこじれたときであろう。
中国にとって台湾は一義的な問題であるが、日本は二義的な問題でしかない。
日本にミサイルの雨を降らす前に、台湾強奪の方が名分がたつ。
つまり、台湾問題が片付かない限り日中戦争はない、とみていい。
日本に手をだせば共産党が潰れる程度のことは自明で理解されている。
『
ハンギョレ新聞 3月24日(木)7時14分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160324-00023685-hankyoreh-kr
北朝鮮「大統領と大統領府を焦土化」
韓国空軍の敵核心打撃シナリオに反発
北朝鮮が23日、朴槿恵(パククネ)大統領と大統領府を「焦土化する激動状態にある」と威嚇した。
北朝鮮の対南機構、祖国平和統一委員会(祖平統)はこの日午前、「重大報道」
「大口径ロケット砲が朴槿恵が隠れている大統領府をあっという間に焦土化する激動状態にある」
として
「今をもって革命武力は朴槿恵逆賊一味を除去するための正義の報復戦を指向するだろう」
と明らかにした。
「祖平統重大報道」は今回初めて登場する形式だ。
北朝鮮が反発したのは、21日に行われた空軍による大規模攻撃編隊軍訓練だ。
空軍はこの訓練にF15K、F16、軽攻撃機FA50からなる戦闘機16機と、攻撃編隊軍訓練としては初のC130H輸送機2機を投じた。
空軍は報道資料を出して
「敵の核心軍事施設打撃シナリオを仮定して敵の作戦を混乱させ、
戦争遂行意志を弱化させる実戦的な空中作戦」
を行ったと明らかにした。
』
コリア・レポート 2016年3月23日 15時0分配信 辺真一
http://bylines.news.yahoo.co.jp/pyonjiniru/20160323-00055750/
米韓は北朝鮮と戦い、本当に勝てるのか!
米韓連合軍の合同軍事演習に北朝鮮軍が対抗する形で上陸訓練やミサイル発射などで威嚇していることから朝鮮半島の緊張は日増しに高まっている。
一部では偶発的な衝突による局地戦、全面戦の危険性も囁かれ始めている。
仮に第二次朝鮮戦争が勃発した場合、米韓連合軍の圧勝に終わるのだろうか。
昨年秋に就任したジョゼフ・ダンフォード統合参謀本部議長(海兵隊大将)は3月17日に米上院軍事委員会が開催した聴聞会で
「朝鮮半島で戦争が勃発した場合、北朝鮮が主導権を握ることもあり得る」
と唐突に発言し、出席していた軍事委員らを驚かせた。
国防予算を多く勝ち取るため北朝鮮の脅威を意図的に誇張した面も否めないが、それにしても制服組トップの「北朝鮮が主導権を握る」との証言は予想外だった。
詳しく紹介すると、ダンフォード統合参謀本部議長は
「米軍は北朝鮮に対して軍事的に優位に立っているが、朝鮮半島で戦争が起きれば、
北朝鮮は特殊部隊の投入や大規模の長距離ミサイルの発射などで主導権を握るかもしれず、
多くの人的被害は避けられない」
と語ったのだ。
さらに、
「北朝鮮は核兵器や弾道ミサイルだけでなくサイバー攻撃まで準備しており米本土のみならず北東アジアの同盟国(日本)まで威嚇している」
として、
「抗戦的な北朝鮮指導部と世界第4位規模の在来式軍事力、
さらには年々強化されている核・ミサイル能力は同盟国の脅威になっているばかりか、米本土への脅威も増している」
と述べ、北朝鮮の能力を過小評価はしなかった。
この日、同じく証言に立ったマーク・ミレー陸軍参謀総長に至っては
「北朝鮮とは戦争できない」とまで述べ、
その理由について
「我が軍隊は満足できるような、戦争を実行する水準でない。
犠牲者、死傷者が相当出てくる」
と証言したと言うからこれが本当なら驚きだ。
確か、カーティス・スカパロッティ駐韓米軍司令官も先月(2月24日)開かれた米下院軍事委員会聴聞会で「現在の朝鮮半島の状況は過去20年間で最も高い緊張状態にある」と述べたうえで
「(双方の)軍事力と武器のレベルなどを考慮すれば北朝鮮との戦争は非常に複雑な形態で展開されるだろう」
と証言し、
「朝鮮半島での北朝鮮との衝突は第2次大戦に匹敵し、おそらく多くの死傷者が出るだろう」
と予測していた。
ちなみに第2次大戦での米軍死亡者は約40万5千人、朝鮮戦争では約3万6千人が戦死している。
北朝鮮との一戦がそう簡単ではないこと、苦戦を強いられるかもしれないとの予想、予測は今に始まったことではない。
北朝鮮がまだ核兵器も、中・長距離ミサイルを保有してなかった1990年初からすでに囁かれていた。
米国では1990年以降、ペンタゴンが中心となって朝鮮戦争のウォーゲーム(シミュレーション)を毎年行ってきた。
これはコンピューター上の模擬戦争で、戦争の可能性の高い双方の兵力、装備、地形、軍事戦 略などを入力し、その結果を具体的に予測するものだ。
今から23年前の1993年に「ニューズウィーク」(12月2日号)が朝鮮半島で戦争が勃発した場合
「ソウルの防衛線は一、二週間で崩れる」
という国防総省の秘密報告書(1991年作成)をすっぱ抜いて大騒ぎになったことがある。
この報道に米韓連合司令部が反発したのは言うまでもない。
米韓連合司令部と韓国国防部はこの報告書を「全く根拠がない」と否定し、
「戦争になっても韓国が勝つ」と反論した。
反論理由として
▲:所詮コンピューターによるシミュレーションに過ぎない
▲:インプットされたデーターが不正確である
▲:使用された軍事力に関するデーターは不公平で、韓国は古いもの、北朝鮮は新しいものが使われている
ことなどを挙げた。
「ニューズウィーク」のスッパ抜きにより波紋が広がったためチャールズ・ラーソン米太平洋軍総司令官(当時)は記者会見を開き、
「韓国軍の近代化と駐韓米軍の支援能力で、北朝鮮の脅威には十分に対応できる。
戦争になっても、韓国が勝ち、北朝鮮が勝つ見込みはない」
と打ち消しに躍起となった。
また、韓国国防部もその後、合同参謀本部が実施したウォーゲーム(1993年6月)の結果を明らかにしたが、それによると、開戦初期は一進一退の接戦を繰り広げるが、韓国軍が北進し、最終的に韓国が勝利を収めるとの結果が出ている。
しかし、当時はそれでも著名な軍事専門家として知られる池萬元氏のように
「シミュレーションを行ったところ、韓国は3日で陥落する」
と大胆な予想をする人が後を絶たず、韓国国内での波紋は中々収まらなかった。
翌年の1994年、米朝核交渉が決裂したことで北朝鮮への軍事攻撃を検討したクリントン大統領はホワイトハウスで安全保障会議(6月16日)を招集したが、シュリガシュビリ統合参謀本部議長の
「戦争が勃発すれば、 開戦90日間で
▲:5万2千人の米軍が被害を受ける
▲:韓国軍は49万人の死者を出す
▲:戦争費用は610億ドルを超える。
最終的に戦費は1千億ドルを越える」
というブリーフィングにホワイトハウスは震撼した。
それもそのはずで当時、在日米軍は3万3千4百人、在韓米軍2万8千5百人で併せて約6万2千人だから僅か3か月間で5万2千人の被害とは俄かに信じ難いからだ。
また、韓国軍は65万人のうち3か月間で約50万が戦死するというのもこれまた想像に絶する被害だった。
会議に同席していたラック駐韓米軍司令官も
「南北間の隣接性と大都市戦争の特殊性からして米国人8万~10万人を含む100万人の死者が出る」
と報告していた。
それでもクリントン大統領は
「いつかは米国に向け発射されるかもしれない核を北朝鮮が持つことを放置するか、
戦争のリスクを冒してでも、今、北朝鮮の核保有を阻止するか、
どちらかを選択するよう」
求めたペリー国防長官の二者択一提案に後者、即ち、先制攻撃による戦争の手段を選んだというから米国の安保意識も半端ではない。
この時から22年経った今では北朝鮮は核で武装化され、中・長距離弾道ミサイルまで手にしている。
米韓連合軍は果たして本当に北朝鮮と戦えるだろうか?
辺真一
コリア・レポート 編集長
東京生まれ。明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者を経て、フリージャーナリストへ。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~2015年3月)を歴任
』
『
朝鮮日報日本語版 3月24日(木)8時40分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160324-00000645-chosun-kr
「爆風作戦」「稲妻作戦」
で朴槿恵除去
…北が韓国を脅迫
北朝鮮が23日「朴槿恵(パク・クンへ)除去」を掲げ、そのために特殊部隊特殊部隊も動員できると脅した。
北朝鮮の対南(韓国)工作機関「祖国平和統一委員会(祖平統)」はこの日「重大報道」を通じ
「今このときから、正規部隊をはじめとする革命武力は、
朴槿恵一味を除去するための報復戦を志向していく」
と発表した。
その上で
「南半部(韓国)作戦に投入されるわが国の部隊は、任意の時間に青瓦台(韓国大統領府)をはじめとする主な対象を一気に組み敷き、
朴槿恵と好戦狂どもをせん滅する爆風作戦と稲妻作戦に突入する準備態勢ができている」
と主張した。
韓国政府の消息筋は「爆風作戦と稲妻作戦という言葉に注目する必要がある。
北朝鮮が運用している特殊部隊の名称が『爆風軍団』であるだけに、爆風作戦とは、特殊部隊を動員した韓国への挑発を意味するものと考えられる」と述べた。
韓国の特殊戦司令部(特戦司)に相当する
北朝鮮軍第11軍団(別名:爆風軍団)は、隷下の
稲妻部隊、ウレ部隊、チョンドゥン部隊(いずれも雷の意)など
の名を持つ十数個旅団を保有している。
韓国に対する奇襲や浸透などがその主な任務となっている。
祖平統はまた
「わが国の報復戦は、青瓦台の中だけで始まることも、青瓦台の近くで展開されることもあり得る」
「わが国の砲兵の放射砲(ロケット砲)も、朴槿恵が隠れる青瓦台を瞬時に焦土化できる」
として、青瓦台に対する脅迫も続けた。
北朝鮮は先月23日にも、最高司令部による「重大声明」で
「第1の攻撃対象は青瓦台だ」
と主張していた。
韓国統一部(省に相当)はこの日、報道官による論評を通じ「北朝鮮がわが国の国家元首に対する低劣な非難を繰り広げ、青瓦台を直接名指しして報復戦などにうんぬんし、テロをちらつかせる脅迫行為に出たことに対し、強く警告する」と発表した。
その上で
「北朝鮮がいかなる挑発を敢行しようとも、わが軍は容赦なく懲らしめる。
それに伴う全ての責任は北朝鮮にある」
と述べた。
』
『
中央日報日本語版 3月24日(木)8時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160324-00000005-cnippou-kr
朴大統領「北が変化なしに生存できない環境作る」
朴槿恵(パク・クネ)大統領は23日、
「今回こそ北が変化しなければ生存できない環境を作る」
と述べた。
朴大統領はソウル中区の新羅ホテルで開かれた毎日経済50周年記念式で、
「北の核開発と絶えない挑発に対応して現在、
歴代最高レベルの安保理制裁案が世界各国で施行されていて、
多くの国で独自制裁案も同時に履行されている」
と話しながら、このように明らかにした。
朴大統領は
「世界経済の沈滞が長期化し、我々の経済も多くの困難に直面し、北の4回目の核実験と繰り返されるミサイル挑発で安保の不安も高まっている」
とし
「こういう時であるほど重要なのが国民の団結した力であり、国民の革新DNAを生かして大韓民国をさらに創意的な国に変えていかなければいけない」
と述べた。
続いて
「我々が持つICT(情報通信技術)分野の強みと文化力をうまく発展させていけば、第4次産業革命は大韓民国にとって最高の機会にすることができる」
とし
「現在進行している世界的な第4次産業革命時代を迎え、政府は韓国が技術競争力で後れをとらないよう積極的に後押ししていく」
と強調した。
朴大統領は
「韓国社会の革新と飛躍、そして創造経済の成功は、創意性と企業家精神で武装した企業にかかっている」
とし
「韓国企業が自らの革新でさらに拍車を加え、創意的な投資と雇用拡大に乗り出し、大韓民国の経済の新たな飛躍を導くことを期待する」
と述べた。
』
『
新潮社 フォーサイト 3月31日(木)14時4分配信 平井久志
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160331-00010000-fsight-int
一触即発の朝鮮半島(上)
止まらぬ「チキンゲーム」
北朝鮮は1月6日に4回目の核実験、2月7日に事実上の長距離弾道ミサイルである人工衛星を打ち上げたが、その後も金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の挑発・暴走が止まらない。
北朝鮮は300ミリ多連装砲、スカッドミサイル、ノドンミサイルなどの発射を繰り返し、韓国の青瓦台(大統領官邸)や政府機関を攻撃すると威嚇している。
また、韓国政府も、これに対して強硬路線で対応している。
米韓両国も先制攻撃や最高指導者を除去する「斬首作戦」を隠さず、最新鋭装備を動員して史上最大規模の合同軍事演習を実施している。
南北間では、これまであった軍事当局者間の通信ラインや板門店の連絡ルートも断絶したままだ。
韓国軍は北朝鮮の軍事挑発があった場合は「3倍返し」をするとの方針を示しており、偶発的な軍事衝突が起きれば、それがどのように展開するか予想のつかない状況だ。
さらに、韓国は4月13日の国会議員選挙に向け、国内は選挙政局になっており、南北間の緊張激化に気を遣う余裕はない。
朴槿恵(パク・クネ)政権は緊張を高めて与党有利の状況をつくろうとしているようにも見える。
30歳を過ぎたばかりで経験不足の金正恩第1書記の対応が予測不能なだけに、この緊張状況が無事緩和されるのかどうか不透明だ。
北朝鮮の核・ミサイル問題の現状とチキンゲームのようになっている朝鮮半島情勢を検証する。
■エスカレートする金正恩第1書記の発言
「今日の極端な状況の下で、わが民族の自主権と生存権を守るための唯一の方途は今後も、核戦力を質量共により強化して力の均衡を取ることだけである」
「国家防衛のために実戦配備した核弾頭を任意の瞬間に発射できるように恒常的に準備しなければならない」(3月4日付「労働新聞」
「敬愛する金正恩同志が新型大口径放射砲試験射撃を現地指導」)
「核戦力を質量共に磐石のごとく打ち固めるのがわが祖国の領土に浴びせかけられる核戦争の惨禍を防ぐことのできる最も正当かつ頼もしい道だ」
「核先制打撃権は決して米国の独占物ではないとし、米帝がわれわれの自主権と生存権を、核をもって奪おうとする時には躊躇することなく、核をもって先に痛打を加える」(3月9日付「労働新聞」
「敬愛する金正恩同志が核兵器研究部門の科学者・技術者たちと会い、核兵器兵器化事業を現地指導」)
「敵が目の前でいかなる危険極まりない火遊びをしても決して眉一つ動かさないわれわれだが、神聖なわが祖国の一木一草に少しでも手出しするなら、核手段を含むすべての軍事的打撃手段に即時の攻撃命令を下し、朴槿恵政権とかいらい軍部ゴロの群れに生存不可能な殲滅的火の洗礼を浴びせかけるであろう」(3月11日付「労働新聞」
「敬愛する金正恩同志が朝鮮人民軍戦略軍の弾頭ロケット発射訓練をご覧になった」)
「核攻撃能力の信頼性をより高めるために、早いうちに核弾頭の爆発試験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケットの試射を断行する」
「当該部門ではこのための事前準備を抜かりなくすること」(3月15日付「労働新聞」
「主体的国防科学技術の新たな先端成果、弾頭ロケット大気圏再投入環境模擬試験に成功・敬愛する金正恩同志が弾頭ロケット大気圏再突入環境模擬試験を指導された」)
「勇敢な前線砲兵たちが目標を容赦なく打撃するのを見て、胸がすっとするように本当に上手に撃つ。
打撃がとても正確だ」
「いったん、攻撃命令が下されれば敵が巣くっている悪の巣窟であるソウル市内の反動統治機関を無慈悲に打撃しながら進軍して、祖国統一の歴史的偉業を成し遂げなければならない」(3月25日付労働新聞
「敬愛する金正恩同志が青瓦台とソウル市内の反動統治機関を撃滅、掃討するための朝鮮人民軍前線大連合部隊の長距離砲兵大集中火力打撃演習を指導された」)
これらは3月に入っての金正恩第1書記の核やミサイルなどに関する発言だ。
「実戦配備した核兵器の恒常的な発射準備」
→「核兵器による先制攻撃の用意」
→「核手段を含む軍事的打撃の用意」
→「早期の核実験と多様なミサイル発射」
→「ソウル市内の反動統治機関を無慈悲に打撃し、祖国統一の歴史的偉業達成」
とエスカレートしている。
■米韓合同軍事演習の「変質」
この3月に入っての朝鮮半島をめぐる動きは尋常ではない。
どこかで歯車がひとつ狂えば、南北の軍事衝突に発展してもおかしくない危険な状況が次々に演じられている。
北朝鮮の挑発を「想定の範囲内」と訳知り顔で解説するにはあまりに危険な状況だ。
北朝鮮の挑発・暴走路線はもちろんだが、米韓合同軍事演習の質的な変化にも注目せざるを得ない。
米韓両国は米韓合同軍事演習「チームスピリット」(1976年から91年まで実施されたが92年に南北基本合意書の採択などで中断、93年に復活したが94年に再び中断)時代は、この訓練は定期訓練で、どこまでも防衛のための訓練としてきた。
しかし、今年の米韓合同軍事演習は明確に質的に転換したものだった。
今回の演習は米韓両国が昨年策定した「作戦計画5015」が反映された訓練だ。
米韓両国は昨年6月に「作戦計画5015」に署名した。
米韓両国当局はこの内容を明らかにすることは避けているが、韓国メディアによると、北朝鮮の核・ミサイル・化学兵器などの大量殺傷兵器の除去に力点が置かれた作戦計画とされる。
これが韓国メディアに報道されると、米韓連合軍司令官は情報が漏れ報道された経緯を調査するよう韓国側に要請した。
韓国国防部は国会の国防委員会で国会議員から「作戦計画5015」について説明するよう求められたが、これを拒否した。
しかし、韓民求(ハン・ミング)国防相とカーター国防長官は昨年11月2日の第47回米韓定例安保協議(SCM)で共同声明を発表し、米韓両国は北朝鮮の核・ミサイル・化学兵器への4D作戦を承認した。
「4D作戦」とは
「Detect」(探知)、
「Disrupt」(攪乱)、
「Destroy」(破壊)、
「Defense」(防御)
だった。
そして、この「4D作戦」は「作戦計画5015」に反映されているとされた。
今年の米韓合同演習は、北朝鮮が核やミサイル、化学兵器などを使用する兆候が確認されれば、先制攻撃や北朝鮮への進攻、4D作戦を実践に移す訓練もなされているという。
■北を刺激した「斬首作戦」
また、韓国軍幹部は昨年8月にソウル市内で行われた安保関係のセミナーで
「わが軍はわれわれの主導で北韓軍より優位な非対称戦略概念を発展させる」とし
「心理戦、斬首作戦、情報優位、精密打撃能力などを活用する
と述べた。
この発言で「斬首作戦」が一気に注目された。
「斬首作戦」とは「
有事に敵軍が核兵器を使用する兆候があれば、
核兵器の使用承認権者を除去して核兵器を使用できなくする作戦概念」
と説明された。
北朝鮮は2013年4月の最高人民会議第12期第7回会議で「自衛的核保有国の地位を一層強化することについて」という法律を採択した。
この法律では
「朝鮮民主主義人民共和国の核兵器は(中略)朝鮮人民軍最高司令官の最終命令によってのみ使用できる」
と規定している。
つまり、
「斬首作戦」というのは、核兵器の使用を決定できるのは最高司令官、すなわち金正恩第1書記だけなので、核を使用する前に金正恩第1書記を除去することで核兵器の使用を防ごうという考え方だ。
しかし、北朝鮮は金正恩第1書記を「最高尊厳」として重視する国である。
韓国国防部当局者は今年の米韓合同軍事演習で「斬首作戦」の訓練が行われたのかという記者の質問に対して
「過去にセミナーで理論的な言葉として使われたもので、わが軍に斬首作戦という言葉はない」
と述べた。
しかし、これはそういう言葉を使っていないということであり、最高司令官を除去する訓練をしていないということではないように見える。
過去の米韓合同軍事演習は徹底的に防御演習という建前を堅持してきたが、
今年の演習は先制攻撃や最高指導者の除去までも視野に入れた「作戦計画5015」を適用した訓練であった。
その意味で、北朝鮮がこの演習が「平壌解放」「斬首作戦」を目指したものだと非難するのも理由のないことではない。
問題は、
★.なぜ米韓側が従来の「建前」を捨てて、
北朝鮮を刺激することが分かり切っているのに、
こうした作戦概念を前面に押し立てて訓練をするのか
という点にある。
しかも、今年の米韓合同軍事演習は史上最大規模で行われた。
演習には韓国軍約30万人と沖縄駐留の海兵隊を含む米軍約1万7000人が参加し、
原子力空母「ジョン・ステニス」、
原子力潜水艦、
F22ステルス戦闘機、
B2爆撃機
などが投入された。
★.北朝鮮を軍事制圧できる戦力を動員して、
北朝鮮の挑発に対応しようとする「目には目」の対応だ。
米韓軍の「先制攻撃」や「斬首作戦」が強調される中で、最新鋭装備が投入された史上最大規模の訓練が実施されたことが、北朝鮮にとっては大きな脅威になったことは間違いない。
■300ミリ多連装砲の脅威
国連安保理が北朝鮮へのさらなる制裁決議案を3月2日(日本時間3日未明)に決議すると、北朝鮮が最初に示した反発が3月3日に行った300ミリ多連装砲6発の発射だった。
元山付近から同日午前に発射された放射砲は100キロから150キロ先の日本海に落ちた。
北朝鮮メディアは4日に、金正恩第1書記が「新型大口径放射砲」の試験射撃を指導したと報じた。
金正恩第1書記は
「実戦配備した核弾頭を任意の瞬間に発射できるように恒常的に準備しなければならない」とし、
「もはや敵たちに対するわれわれの軍事的対応方式を先制攻撃的な方式にすべて転換しなければならない」
と述べた。
また、この発言が本当なら、北朝鮮は既に核兵器を実戦配備していることになる。
金正恩第1書記は6回にわたり朴槿恵大統領を呼び捨てにし「朴槿恵逆徒」と非難した。
金正恩第1書記が朴槿恵大統領の固有名詞を挙げて語るのは2014年7月以来で、極めて異例だ。
これは朴槿恵大統領が2月22日に、青瓦台の首席秘書官会議で金正恩第1書記を呼び捨てにして北朝鮮のテロへの警戒を語ったことへの反発とみられた。
北朝鮮が「新型大口径放射砲」と呼ぶ300ミリ多連装砲が姿を現したのは、昨年10月の党創建70周年の軍事パレードが最初だった。
北朝鮮は3月4日に続いて、21日にも咸鏡南道咸興付近から300ミリ多連装砲5発を発射したが、この時は最大200キロ飛行した。
このため、韓国側はこの300ミリ放射砲の射距離は最大200キロとみている。
北朝鮮がこれまで保有していた放射砲は107ミリ、122ミリ、240ミリで射距離は最大90キロだった。
新たに登場した300ミリ放射砲の射距離が200キロだとすれば、軍事境界線の近くから発射すれば、在韓米軍が2017年までに移転することになっている京畿道・平沢や韓国陸海空軍の本部がある忠清南道鶏龍台まで届く。ソウルなど首都圏が射程に入るのはもちろんだ。
しかも、この新型300ミリ放射砲はGPS機能を持ち、ロケット砲というよりは誘導弾に近く、正確に攻撃目標を狙える能力があるとみられている。
北朝鮮メディアは、金正恩第1書記がこの300ミリ多連装砲開発のために過去3年間に14回にわたり直接指導に当たったと報じ、金正恩第1書記がその開発を重視してきたとした。
300ミリ放射砲は高度が低く、ミサイル迎撃システムでも対応できない。
現時点では、韓国側には防御手段がないのが実情だ。
この放射砲の原型とみられる中国の302ミリ放射砲は150キロの高性能爆弾が約2万5000個の破片として炸裂し、殺傷半径は約70メートルに達するため、これ以上の殺傷能力を持っている可能性がある。
3月22日の「労働新聞」は
「大口径放射砲の実戦配備を控え、最終試験射撃を再び行った」
と報じており、3月21日の試験発射で300ミリ多連装砲が実戦配備されるとみられる。
北朝鮮はこの後に、韓国の青瓦台に照準を合わせた映像を放映したが、
実際に300ミリ多連装砲で青瓦台を狙えば、韓国側に適切な防御方法はない。
北朝鮮は3月29日午後5時40分ごろ、元山付近から北東の内陸部に向けて飛翔体を発射、この飛翔体は約200キロ飛行し、両江道金亨権郡の内陸部に落下した。
韓国軍はこれも300ミリ放射砲とみている。
北朝鮮は3月に入り、ミサイルや多連装砲の発射を続けているが、すべて海上に向けた発射だった。
陸上への発射は住民などに被害が出る可能性があり異例のことだ。
北朝鮮は3月21日に300ミリ放射砲を発射した際に「最終試験射撃」としていた。
その上で、また発射したことを考えれば、21日の発射は「海上への発射」として最終だったということか、29日の発射は追加の威嚇を仕掛けたのかもしれない。
内陸部への落下を失敗とする見方もあるが、この放射砲が最大飛距離の200キロを飛んでいることから失敗ではないだろう。
むしろ、地上の標的を設置し、GPS機能を使った誘導システムで、精密攻撃ができることを韓国に誇示した可能性が高い。
米韓側も衛星などで落下地点の情報を収集しているようだ。
一部では落下地点が中朝国境から約60キロということをとらえ、中国への牽制という見方もあるようだ。
そうした要素を排除はできないが、主な狙いは韓国への威嚇であろう。
北朝鮮は元山から北東に200キロ先の内陸部を攻撃目標にしたが、この真反対の南西200キロはソウルである。
元山から攻撃してもソウルの青瓦台を攻撃できるというデモストレーションと考えられる。
青瓦台攻撃が空言ではないという威嚇攻勢の可能性が高い。
(つづく)
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新潮社 フォーサイト 3月31日(木) 平井久志
http://www.fsight.jp/articles/-/41071
一触即発の朝鮮半島(中)
「核」「ミサイル」の実態は?
北朝鮮の連日の軍事的な挑発や動きをみていると、北朝鮮の行動が国際社会の視線を意識した動きであることが分かる。
北朝鮮は米東部に到達する核兵器を保有することを目標としている。
筆者がこれまでに指摘したように、北朝鮮が米東部を攻撃できる大陸間弾道弾(ICBM)を保有するためには
(1):制御技術
(2):射距離1万2000キロ以上
(3):弾頭の小型化・軽量化
(4):大気圏再突入技術
――が必要とみられる。
国際社会は、北朝鮮が既にこの(1)と(2)は保有しているが(3)と(4)はまだ無理だとみている。
■国際社会の視線を意識した「小型化成功」
しかし、北朝鮮はこの見方に対して異議を申し立てた。
党機関紙「労働新聞」は3月9日付で、金正恩第1書記が核兵器研究部門の科学者、技術者たちと会って核兵器の兵器化事業を指導したと報じた。
金正恩第1書記はここで
「核爆弾を軽量化し弾道ロケットに合わせて標準化、基準化を実現した」
と述べた。
北朝鮮は2013年2月に3回目の核実験をした時に
「爆発力が大きいながらも、小型化、軽量化された原子爆弾の実験」に成功した
としているが、金正恩第1書記が核弾頭の小型化成功に直接言及したのは初めてだ。
さらに労働新聞は同日付1面に、長距離弾道ミサイルKN08の弾頭に装備するとみられる起爆装置のような円形物体の前で金正恩第1書記が幹部たちに指示をするところなど9枚の写真を掲載した。
写真の1枚には、金正恩第1書記の後ろに、モザイク処理されて詳細は不明だが、KN08の弾頭部分の設計図とみられる図面もあった。
写真にはKN08も4~5基が写っている。
韓国軍は、北朝鮮の核弾頭小型化は相当な水準に達しているとみてきた。
しかし、韓国国防部は今回、
「北韓が小型化された核弾頭とKN08実戦能力を確保できていないと評価する」
とし、北朝鮮は依然として核弾頭小型化の技術を確保していないとした。
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【2016 異態の国家:明日への展望】
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