2016年3月8日火曜日

中国経済のハードランディングリスクが高まっている(3):習近平政権初の五カ年計画発表

_


ニューズウイーク 2016年3月7日(月)17時00分 遠藤誉
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4639_4.php

習近平政権初の五カ年計画発表
――中国の苦悩にじむ全人代

5日、年一回開かれる全人代が始まり、習近平政権になってから初めての五カ年計画(2016~2020年)が発表された。
政府活動報告を中心として、新五カ年計画および今年のGDP成長率(6.5~7%増)や軍事費7.6%増などを読み解く。
そこには経済の低迷と徹底した構造改革には踏み切れない中国の苦悩がにじみでている。

■2015年度の活動報告

3月5日、日本時間午前9時から人民大会堂で全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)が開幕し、約3000人の代表(国会議員に相当)が出席した。
冒頭、李克強首相による「政府活動報告」が約2時間にわたり発表された。

【参考記事】中国の成長率は本当は何パーセントなのか?

報告は
 「1.2105年の活動報告」
 「2.第13次五カ年計画」
 「3.2016年の重点活動」
の3本から成り立っている。
ただし、これらは会期期間(3月5日~3月15日)まで審議され、閉幕される前に投票議決して、初めて発効する。

まずは、1番目の「2015年の活動報告」から見てみよう。
概略を示す。

1].2015年における国内総生産(GDP)は67.7兆元(3月5日のレートに基づけば日本円で1180.7兆円)で、成長率は6.9%。
2].構造調整の結果、サービス業のGDP比が50.5%に上昇。
消費の対GDP貢献度は66.4%。
3].新しく登記した企業数の増加率は21.6%で、毎日1.2万社が新設された。
4].現在のGDP成長率1%は、5年前の1.5%に、10年前の2.5%に相当する。
5]. 過剰生産問題を改善するため過去3年において後進的な錬鉄9000万トン、セメント2.3億トンなどを淘汰した。

6].農民工など貧困層に772万棟の低所得者向け住居を提供し、バラック住宅601万棟を改築した。
7].生産現場の大事故や食品安全などを改善するため、問責制度を設けた。
8].やるべきことをやらず、やってはならないことをやる者(幹部の腐敗など)が多いため、許認可制度などを含め、取締りを強化した。
9].第12次五カ年計画(2011年3月~2016年3月)期間内における年平均のGDP成長率は7.8%で、世界第二位のGDPを維持した。

■第13次五カ年計画 (2016年~2021年)――10年連続で低くなる目標値

習近平政権になってから初めての五カ年計画が発表された。
習近平政権は2023年に終わる(中国共産党総書記としては2022年が最後の年となる)。

したがって、今般の五カ年計画は、実質上、習近平政権期間、唯一の習近平が国家主席として打ち出す五カ年計画となる。
全文は8万字あるということなので、その骨子のみを示そう。

【参考記事】五中全会、成長優先で後回しになる国有企業改革

1].中高速度の経済成長を目指す。
2020年までに1人当たりの平均収入を2010年の2倍にする。
GDP成長率は平均6.5%を目指す。
産業の構造転換を推進し、2020年までにGDP90兆円(1570兆円)に達する。
(筆者注:2006年の第11次五カ年計画ではGDP成長率を7.5%に設定し、2011年の第12次五カ年計画では7.0%に設定した。それが今回は6.5%となり、0.5%ずつ減少している。11年目で、目標値は一段と低くなった。)

2].イノベーションを重視。
国際的競争力のあるフロントランナーを育成し、2020年まえに経済成長に対する科学技術の貢献度が60%に達するようにする。

3].国家新型城鎮化(都市化)計画(2014年~2020年)の推進と完成。
定住人口の都市化率60%および戸籍人口の都市化率45%を目指す。

4].環境保護。
生態文明建設。
今後5年間で、用水量、エネルギー消費量および二酸化炭素放出量をそれぞれ23%、15%、18%減少させる。
空気汚染に関して良好状態の日数が80%を越えるようにする。

5].改革開放を深化させ、構造改革して新体制を構築する。
(筆者注:内容が複雑で達成目標が明確でないので省略するが、ひとことで言えば、中国の一党支配体制が内包している構造的矛盾から抜け出せない中国の姿が浮き彫りになっていると言える。
李克強首相の演説だけでは解読できないが、真に改革開放を深化させ構造改革を断行して新体制を作れば、それは一党支配体制の崩壊へと行きつくので、本当の意味での構造改革も新体制構築も、実はできない。
そこには根本的内部矛盾と中国の限界がある。)

6].民生福祉問題を改善する。
労働年齢が受けている教育年数を、現在の10.23年から10.8年まで引き上げる。
平均寿命を1歳引き上げる。
5000万人を貧困から脱却させる。
中国は現在、9億の労働人口のうち、約1億人が高等教育あるいは(職業学校などの)専門教育を受けているので、人材において強い原動力を持っている。

■2016年の重点活動――実際は6.5%の目標値と構造改革の矛盾

3月4日付けの本コラム<「神曲」ラップと「ギャップ萌え」で党宣伝をする中国――若者に迎合し>で説明した「四つの全面」を国家基本戦略として、以下の目標を立てるとした。

1].GDP成長率は6.5%~7%、
国民消費価格の上げ幅は3%前後とする。
都市における新規雇用者数1000万人以上、失業率4.5%以内を目指す
(筆者注:辛うじて区間を示す形で7%に引っかかってはいるが、これはほぼ気分の問題で、実際はこのたびの新五カ年計画と同じように、下限の6.5%を目標としていると解釈していいだろう)。

【参考記事】中国の成長率は本当は何パーセントなのか?

2].今年わが国の発展が直面している困難は非常に多いため、直面している挑戦はさらに厳しくなる。
そのため、われわれは激戦を戦うという十分な用意をしなくてはならない。
国内外の影響により経済の下振れ圧力は大きくなるが、マクロコントロールと人民の知恵で克服できる(筆者注:ここも苦しい言い訳で、精神論では克服できないはず)。
3].今年の財政赤字は2.18兆元(38兆円)となり、昨年より5600億元増える可能性がある。
(以下、人民元を日本円に換算するには17.44倍すればいいが、日本円表示は省略する)。
赤字率は3%増となる。
そのうち、中央財政赤字は1.4兆元で、地方財政赤字は7800億元となる。
地方債務に関しては、4000億元分を地方政府が引き続き債券を発行することによって置き換える。
4].財政体制改革を加速させる(長すぎるので省略)。
5].金融体制改革を深化させる(長すぎるので省略)。

6]供給サイドの構造改革を強化する。
7].イノベーションを進めるために知的財産保護の強化。
8].過剰生産問題の解決。
ゾンビ企業を淘汰するため、1000億元の資金を投じて(失業者急増などの)リスクを回避する。
(筆者注:「ゾンビ企業」とは、すでに休業状態に入っている地方の不良国有企業を閉鎖せずに、地方政府が財政輸血をし続けている企業のこと)
9].国有企業改革を強力に推し進める。
効率の悪い国有企業を再編淘汰する。
特に所有権に関する民間との混合制を推進し、ハイレベルの人材を経営に当てる。
一方、電力、電信、交通、石油、天然ガスなど骨幹となる国有企業に関してはその価値を高めるべく努力する。
(筆者注:国有企業の構造改革を謳いながら、一方では国有企業の価値を高める努力もするという、抜けきれない一党支配体制の矛盾が、ここにも表れている。)
10].消費者の権限を守り、消費けん引型の経済を目指す。

11].今年は第13次5カ年計画の最初の1年に当たるので、構造調整を行いながら有効な投資を行う。
たとえば鉄道投資8000億元以上、高速道路投資1.65兆元などの中央財政支出を行なう。
12]農業人口の市民化を加速させるために、すでに既存の都市に流れてきた外来人口問題を解決するため「人・地・銭」政策を進める。
そのためには(都市にいる2.67億人の農民工)に(ゴーストタウン化した)空きマンションを低所得者向け住宅としてあてがう。
(筆者注:長いので省略するが、「国家新型城鎮化(都市化)計画」に関しては拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.250などを参照していただきたい)
13.].需が低迷しているが、「一帯一路(陸と海の新シルクロード)」構想により、国際協力を深める。(筆者注:過剰生産問題のはけ口のため)
14.].資導入の基準を緩和し、自由貿易区戦略を加速させる。
中日韓自由貿易区を推進させ投資の自由化を図る。

以上、書ききれないが、一応の骨子を列挙してみた。

中国経済の苦悩がにじみ出ているような2016年活動計画だ。

■国防費7.6%増――過去5年で最低の伸び率

具体的な国家予算の全貌は、閉幕前までに審議され、投票して議決してからでないと公表してはならないことになっている。
予算案は、3月4日の午後、国家財政部や発展改革員会などの関連中央行政省庁が全人代の代表(議員)に配布して、3月5日に中国政府の通信社である新華社が、一部を公開した。
これは決定ではなく、「全人代で審議するために配布された草案」である。

それによれば、2016年の国防予算は9543.54億元(ここだけ日本円に換算すると、16兆6440億円)で、2015年度比では7.6%増となる。
中国の軍事費は2011年から2015年まで連続5年間二桁の伸び率(12.7%、11.2%、10.7%、12.2%、10.1%)を示しており、今回初めて一桁台となった。

全人代の代表であり、軍事科学院国防政策研究センターの陳舟主任は5日、
「ここ10年来、中国の国防費がGDPに占める割合は1.33%で、アメリカなど世界主要国における国防費のGDP比を遥かに下回るだけでなく、世界平均であるGDP比2.6%よりも低い水準を続けてきた」
と語っている。

今回の一桁台への減少は中国経済全体の減速と深く関係しており、中国が軍事大国になることを放棄しているわけではない。
それどころか、本コラムでも何度も取り上げた軍事大改革を行って、軍事強国化している。
ただ少なくとも30万人の兵士を削減したので、その分だけは給料支給額が減り、軍事費削減に貢献してはいるだろう。

それにしても、上述した「2016年の重点活動」に見たように、中国経済の低迷が如実に現れた政治活動報告だった。
中国はいま、これまでの本コラムで取り上げてきたように、精神面(イデオロギー的な側面)においてだけでなく、経済的にも、苦境に立たされていることが見えてくる。
一党支配体制が続く限り、克服は困難だろう。



現代ビジネス 2016年03月08日(火) 町田 徹
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48118

リーマンショック以上の危機!?
〜中国の外貨準備高3兆ドル割れ目前

■市場の信頼回復に失敗した李克強首相

世界の金融・資本市場は先週、ようやく小康状態を取り戻した。
とりあえず、G20(20ヵ国)財務大臣・中央銀行総裁会議が先月(2月)27日、「あらゆる政策手段を導入する」「通貨の競争的な切り下げを回避する」といった言葉を連ねた共同声明をまとめたことを評価した格好だ。
主要株式市場の先週末の終値は、日経平均株価が1万7014円、NYダウが1万7006ドルとそろって大台を回復した。

しかし、これで危機が去ったと安堵するのは大きな間違いだろう。
G20の声明は経済協調の一般論を記しただけで、経済危機の患部に対する処方箋になっていない。
換言すれば、目先の時間稼ぎに成功したに過ぎないのだ。

一方、世界的な経済危機の元凶になっている中国では、外貨準備高の減少が今なおハイペースで続いている。
近く外貨準備高が3兆ドルの節目を割り込むのは確実で、そうなれば昨年夏や今年初めを上回る国際的な信用不安を誘発しかねない危機である。

肝心の中国当局は、先週土曜日(5日)に開幕した全国人民代表大会(国会に相当)で李克強首相が市場の不信を買った。
具体策がないまま、過剰生産の象徴であるゾンビ企業の整理と、6.5%を超す高めの成長という相反する目標を両立させると強弁し、市場の信頼回復に失敗したのだ。

残された時間は少ない。
国際社会は、経済政策で後手に回る中国当局に軌道修正を迫り、信用不安を払しょくするための処方箋を示させることができるのか――。
世界経済は歴史的な岐路に直面している。

中国の外貨準備高は2014年6月末に3兆9900億ドルとピークに達した。
が、その後、減少に転じ、今年1月末には3兆2309億ドル(約378兆円)と、ピークから2割も減少した。
特に最近は減少が顕著で、昨年12月に前月比1079億ドル減と過去最大の減少を記録、今年1月も同995億ドル減と、月1000億ドルペースの減少が続いている。

■市場に蔓延する「甘い考え」

もちろん、絶対額を見れば、中国の1月末の外貨準備高は、依然として世界最大の規模を誇る。
世界2位の日本のおよそ2.6倍だ。
中国当局は、十分な外貨準備を保有しているとし、この主張を支持する向きがあるのは事実である。

しかし、中国は、そもそも輸入の規模が大きく対外債務も多いため、巨額の外貨準備高を確保する必要がある。

加えて、万事に秘密主義の中国は、外貨準備の構成を国家機密とし公表していない。
このため、流動性の低い資産で保有している外貨準備が多く、必要な流動性を確保するには、他国とは比べ物にならない規模の外貨準備高を維持する必要があるのではないかとの見方も根強い。

その中には、中国主導で設立した新たな国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への出資金や、日本などと競合したインフラ輸出案件の獲得の際に公約した国際援助が含まれるとの指摘もある。

結果として、中国の外貨準備高の安全水準として「2兆8000億ドル以上が必要ではないか」と分析する外銀もあるのだ。

外貨準備高の急減の背景にあるのは、海外からの投機売りや中国国内からの資本逃避の膨張だ。
市場の中国への信用不安の表れであり、憂慮すべき問題と言わざるを得ない。
こうした“中国売り”への対策として、中国人民銀行が多額の人民元買い介入を行い、外貨準備高の減少に拍車がかかっているのだ。

中国のエコノミストの間では、外貨準備高が3兆ドルを割れば、当局が資本流出規制に乗り出すので、問題は生じないと楽観視する向きがある。

だが、こうした見方こそ、資本主義の経験が乏しい中国ならではの甘い考えではないだろうか。
すでに信用不安が起きているところへ規制を導入すれば、経済の深刻さを裏付ける証拠と受け止められて、信用不安が増幅するリスクが高まりかねない。
そうした信用不安のメカニズムを、中国の当局やエコノミストたちは理解できていないのである。

■リーマンショック以上の危機が待っている

現状では、不安の払しょくが最優先だ。
外貨準備高の構成を機密にせず、きちんと詳細を開示したうえで、万が一にも不足する場合に備えて、日本を含むG7諸国やIMF(国際通貨基金)などの国際機関との間で、緊急時に外貨を融通してもらう体制をあらかじめ作り、その体制ができたことを内外に周知することこそ重要なのだ。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが今月2日のタイミングで、
中国の長期債務格付けの見通しを従来の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた
ことは、そうした対応の必要性を裏付けている。
見通し変更の理由として、ムーディーズは、
 「政府債務の増加」などと並んで、「資本流出に対応するための外貨準備高などの減少」
を理由に挙げているのである。

だが、外貨準備高の問題に限らず、中国の経済政策には、透明性の確保を通じて市場の信頼を得るという哲学が根本的に欠如している。
信頼性が乏しいとされるGDP統計の改善を放置していること、過剰生産設備や不良債権の処理についてタイムスケジュールを含む明確な道筋を示していないことは、その典型例だ。

折しも、5日から始まった全人代で、
透明性の確保を打ち出さなかったことは、中国当局が危機管理能力を欠いている証左
と受けとめざるを得ない。

5月下旬のG7の伊勢志摩サミットへ向けて、安倍晋三首相は今月(3月)1日の衆院予算委員会で、日本が主導して世界経済の安定化策を話し合うため、国内外の有識者から話を聞く協議会を立ち上げる方針を表明した。
海外からはノーベル経済学賞受賞者級の学者を招き、来週にも初会合を開催して、具体策を探っていくという。

本コラムで何度も指摘してきたように、日本が、世界的な経済危機の克服に指導力を発揮しようとするのは、G7議長国としての使命であり、正しい判断だ。

最大の問題が、世界的な信用不安に対する中国の透明性を欠いた対応にあることはすでにはっきりしている。

安倍政権には、この問題に切り込んで、中国に方針転換を促すため、有識者協議会や伊勢志摩サミットをしっかりとリードしてもらいたい。
さもないと、世界経済はリーマン・ショック以上の危機に陥りかねない。



済龍 China Press 3月8日(火)10時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160308-00010000-cnpress-cn

中国:外貨準備額引き続き縮小(2016年2月)

 2016年3月8日、中国人民銀行が2016年2月の外貨保有状況を発表した。

 2016年2月、中国は外貨準備額を285億7200万ドル(約3兆2312億円)引き下げた。
 これにより、中国2016年2月末時点での外貨準備額は、3兆2023億ドル(約362兆円)にまで減少した。
 中国2016年にはいってから、外貨準備額を1280億4100万ドル(約14兆4802億円)引き下げたことになる



サーチナニュース 2016-03-08 15:14
http://biz.searchina.net/id/1604307

中国の輸出「減り幅が急拡大」  
2月は人民元ベースで前年同月比20.6%減

 中国海関総署(中国税関)は8日、中国の2月における貿易総額は前年同月比で15.7%の1兆4300億元(約24兆8713億円)だったと発表した。

 輸出は20.6%減の8218億元(約14兆2932億円円)、輸入は8%減の6123億元(約10兆6494億円)だったとした。
 2月の貿易黒字は前年同月比43.3%減の2095億元(約3兆6437億円)だった。

 1-2月の累計では貿易総額は12.6%減の3兆3100億元で、輸出は13.1%減の1兆9600億元、輸入は11.8%減の1兆3500億元だった。
 2月になって、輸出の前年同月比の減り幅が急拡大したことになる。



TBS系(JNN) 3月8日(火)21時18分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160308-00000081-jnn-int

中国2月貿易 輸出入とも2桁の大幅減



 中国の今年2月の輸出額が前の年の同じ月と比べ、25.4%減ったことが明らかになりました。
 輸出と輸入をあわせた貿易総額も2割減と、12か月連続の減少となるなど、中国の景気減速が一段と鮮明となっています。

 中国税関総署が8日に発表した貿易統計によりますと、中国の2月の輸出総額は、去年の同じ月と比べて25.4%少ない1261億ドル、日本円でおよそ14兆2300億円となりました。

 減少率は1月より拡大していて、中国の成長を支えてきた輸出の減速が鮮明となっています。
 人件費の上昇で輸出競争力が低下していることなどから、衣料品や靴類などの労働集約型の商品の輸出の減少が目立っています。

 また輸入額も13.8%減っていて、輸出と輸入をあわせた貿易総額は20.8%減と12か月連続で前年割れとなっています。

 地域別にみると、日本との貿易総額が11.9%減ったほか、
 最大の貿易相手国であるEUとの貿易総額が14.3%とともに2桁の落ち込みとなりました。
 経済が減速するなか、外需、内需ともに振るわない状況が続いていて、今後、さらに落ち込む可能性もあります。



フジテレビ系(FNN) 3月8日(火)22時17分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160308-00000328-fnn-int

中国の貿易不振続く 
総額では20.8%減、
6年9カ月ぶりの大幅下落

 中国の税関当局によると、2月の輸出は、1,261億4,500万ドルと、前の年の同じ月に比べ、25.4%減少、輸入も内需の低迷から、13.8%減少し、輸出、輸入ともに2カ月連続で2桁の大幅な落ち込みとなった。
 また、輸出と輸入を合わせた貿易総額も、20.8%の減少となり、この下落率は、リーマンショックなどの影響を受けた、2009年5月以来、6年9カ月ぶりの大幅なものとなった。
 中国の景気の減速が一段と深刻化し、世界経済に与える影響が懸念される。



ロイター 2016年 03月 8日 13:05 JST
http://jp.reuters.com/article/china-trade-instantview-idJPKCN0WA0CC?sp=true

中国貿易統計、輸出が大幅減少:識者はこうみる

[東京 8日 ロイター] -
 中国税関総署が公表したデータによると、2月の輸出はドル建てで前年同月比25.4%減、輸入は13.8%減だった。
 輸出は2009年5月以降で最大の落ち込みとなった。
 市場関係者のコメントは以下の通り。

■<キャピタル・セキュリティーズ(北京)のエコノミスト、 WANG JIANHUI氏>

2月の貿易統計が1月より悪化したのは事実だ。
ただ、中国経済が悪化しているということではなく、季節性の影響だ。
第1に、2月の半分は春節の休暇でビジネスがストップしたことが挙げられる。
また、中国の主要貿易相手国も2月は貿易統計の内容が悪かった。
今回の統計は市場にとってショックな内容だったが、経済の鈍化を示すものではないことをじきに理解するだろう。
ただ、それには時間が必要だ。
われわれが通常不安視するのは、貿易統計が3カ月連続で悪化した場合や、5月や10月といった通常の月に悪化した場合だ。

■<国都証券(北京)のアナリスト、肖世俊氏>

2月の貿易統計は非常に悪い内容で、人民元に対し下方圧力となるだろう。
ただ、最近ドルは世界の市場でさえない動きを見せており、中国人民銀行(中央銀行)が相対的に元を安定的に維持しようとしていることもあって、元が短期的に急落する可能性は低い。
中期的な不透明感はいっそう強い。

■<アジアコメルツ銀行AG(シンガポール)のシニアエコノミスト、ZHOU HAO氏>

1─2月の北アジアの貿易データが特に失望を誘う数字だったことから、この地域の通貨は下押し圧力にさらされるだろう。
輸出は2009年5月以降で最大の落ち込みとなったが、これは、過度に強い人民元相場が対外セクターの障害となっていることを示唆している。
一方、輸入が大幅に減少したことから、政府がコモディティー需要を底上げする刺激策を打ち出すとの期待は打ち砕かれた。
これを踏まえると、最近の鉄鉱石を中心としたコモディティー価格の上昇は短期に終わるだろう。
2月の貿易黒字は前月の633億ドルから326億ドルに縮小した。
通常、さえない貿易統計は、一段の人民元安が不可避であることを示唆している。
人民銀行は、今後も外貨準備を取り崩して人民元相場の安定や金融システム防衛を続けることが可能だが、一方で、中国の貿易競争力はいずれ損なわれることになる。



ロイター 2016年 03月 8日 14:11 JST 斉藤洋二
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoji-saito-idJPKCN0WA08W?sp=true

コラム:中国の夢、第一関門は「ゾンビ淘汰」か

[東京 8日] -
  空前の利益をたたき出してきた著名投資家ジョージ・ソロス氏は第一線を退いた現在でも、国際金融資本市場に絶大な影響力を有している。
 1月21日のダボス会議での発言はまさに同氏の面目躍如だった。

 ソロス氏は米系メディアのインタビューに答え
 中国経済がハードランディングし、世界的なデフレにつながる恐れがある
と発言。
 「これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」
とも語り、中国情勢などを考慮して、自らは米S&P総合500種をショートに、米長期国債をロングにしていることを明らかにした。

 それに対して、中国の人民日報(海外版)は1月26日付の1面で、ソロス氏の人民元と香港ドルに対する挑戦は成功しない、とする中国商務省調査担当者の意見記事を掲載。
 中国政府はその後も不安打ち消しに躍起になっている。

 ただ、中国が資本流出による人民元下落に対し元買い(ドル売り)介入を続けている結果、外貨準備高は大幅に減少。
 不安心理がかえって高まる結果となっており、上海株価指数も低迷したままだ。

 ともかく1992年にソロス氏の英ポンド売りにより英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)からの脱退を余儀なくされたように、今回は中国がどのように危機を乗り切るのか注目される。
 どちらにしても
 市場の萎縮は回避し難く、中国の正念場はしばらく続く
ことになるだろう。

■<「国退民進」が急務>

 ソロス氏の指摘に見られる通り経済の先行き不安が高まる中国・北京において3月5日から15日までの予定で、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕した。
 今回は今後5年間の成長目標を年平均6.5%以上とする第13次5カ年計画案を正式決定する重要な大会と位置づけられている。

 すでに習近平指導部が発足して3年半近くが経過し、その権力は政府、共産党、そして軍の最高機関・中央軍事委員会と3部門に及ぶ。
 この間、「反腐敗」の名の下に繰り広げられた薄熙来氏や周永康氏らとの権力闘争に打ち勝ち、李克強首相との力の差を見せつけて今や習氏は特別の地位に立ったようである

 孫政才氏や胡春華氏らがポスト習体制の第6世代トップ候補として語られたりすることがあるものの、その権力集中ぶりから、
 習氏が国家主席の任期(最大で2期10年)満了後も事実上の院政を敷く
との憶測も飛び交う。
 このように習氏は故・毛沢東氏以来の権力を手中に収めたようにも映るが、経済環境を見ると2015年は天安門事件の影響を受けた1990年以来25年ぶりの低成長となった。
 したがって、ハードランディングの恐れが拭えない中で、「供給側改革」が唱道されており国有企業改革は待ったなしとなっている。

 リーマンショック後の2008年11月に発動された総額4兆元の景気刺激策により国有企業が需要を無視した生産を行ったが、現在でも実需より3―4割は多いと言われる生産力を抱えているのが実情だ。
 特に赤字の垂れ流しを続ける「ゾンビ企業」の整理は喫緊の課題となっている。

 実際、中国政府はこのところ、石炭・鉄鋼セクターを中心に大胆な構造改革を断行する意向を公に示しているが、地方政府と銀行による支援を受けて生き延びる「ゾンビ企業」についてその改革を進めた場合、百万人規模の失業者が発生するとも言われる。

 それでなくとも民族問題、過激派の脅威など様々な治安問題が指摘される中での失業者増加は国内の社会的緊張を高める原因となるのは明らかだ。
 しかし、「国退民進」、つまり国有企業の効率化そして国有企業の民間企業による代替は不可欠であり、改革の先延ばしは難しくなりつつあると言えよう。

 一方、政府は「新常態」、つまり投資から消費主導経済への移行を打ち出し、既存体制にメスを入れるとともに、成長産業育成に向け国民に起業を勧めている。
 しかし、諸外国のキャラクターが不法に横行するように、知的財産権が確立していないことは、起業インセンティブの阻害原因となる。

 アリババ、テンセント、バイドゥなどIT関連企業の成功物語は全くの例外にとどまるのか、それとも今後同様の起業家が陸続するのか、中国はその分かれ道に立っていると言えよう。

■<鄧小平体制以来の「矛盾」>

 中国は1921年の共産党設立から100年を迎えるにあたり、2020年には2010年に比べて国内総生産(GDP)を2倍にすることを目標としてきた。
 また、建国100周年の2049年には「中国の夢」である中華民族の偉大な復興を成し遂げ、「富強・民主・文明・和諧的な社会主義現代国家」を実現するとしている。

 この「中国の夢」を実現するための最大の関門の1つは故・鄧小平氏が1978年12月に舵を切った改革開放政策による高度成長が37年にわたり積み上げた「矛盾」である。

 中国経済はこれまで共産党一党独裁下において社会主義市場経済を進めてきたが、その結果、非効率な国有企業が存続し民間の活力が阻害された。
 さらに共産党・国有企業を巻き込んだ腐敗が蔓延したことから現状を変革しなければ社会の安定も担保されず、次の発展が実現しないということだ。

 すでに中国における労働人口は、開発経済学に言う「ルイスの転換点」を超えたと指摘されるように農村部からの供給が枯渇し始めた。
 したがって、「世界の工場」として安い労働力で安価な製品を輸出して稼ぐ成長モデルは、労働コストも急上昇する中で、持続不可能だろう。

 中国の1人当たり国民総所得(GNI)はすでに8000ドルに達し、1万2000ドル超が目途とも言われる先進国への仲間入りを目前にしている。
 しかし、中南米の多くの国がその陥穽に落ちたように、中国も「中進国の罠」を抜けて先進国の仲間入りを果たせるかどうかは構造改革と技術革新により成長産業を育成できるかどうかにかかっている。

 その関門を突破するために、経済減速下において財政出動と構造改革をどのようにポリシーミックスさせるのか。
 習指導部の手腕が問われるところとなる。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。



ロイター 2016年 03月 11日 12:43 JST Rachel Morarjee
http://jp.reuters.com/article/china-banks-breakingviews-idJPKCN0WD097?sp=true

コラム:中国シャドーバンキング熱、「ゾンビ企業」の温床に

[北京 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 中国の影の銀行(シャドーバンキング)セクターは、金融システムの中心にリスクを蓄積しつつ、市場から退出すべき「ゾンビ企業」を生き永らえさせている。
 いわゆる「理財商品」への投資総額は昨年、57%増加して3兆6000億ドルにも達した。
 この伸びの大きさだけで十分心配に値するが、それだけでなく調達された資金の大半が、問題のある借り手を支えていることが最新のデータからうかがえる。

 中国において理財商品は短期の投資先だ。
 通常は銀行を通じて販売され、現金のほかに国債や社債、デリバティブ(金融派生商品)が裏付け資産となる。 
 銀行にお金を預けるよりも良いリターンが得られるとして、長らく個人投資家の間で人気になってきた。
 中国政府証券預託信託清算会社が最近公表したリポートは、理財商品セクターがいかに巨大化したかを物語っている。
 このセクターの運用資産は過去2年で倍増し、中国の銀行預金量の約17%に達した。

 こうした活況は幾つかのリスクをはらんでいる。
1].最初の問題は、理財商品の償還期限が裏付け資産よりも短い傾向にあることだ。
 昨年の理財商品の平均償還期間は3カ月半で、投資総額のおよそ半分弱に相当する1兆5800億ドルが早々に期限を迎える可能性がある。

 次に、多くの個人投資家は理財商品の販売元の銀行と契約する際に
2].免責条項にサインさせられたとしても、銀行が元本を保証していると信じている点が挙げられる。
 実際これまでのところは、大半の投資は全額償還されており、こうした見方が正しいことが証明されている。

 だからこそ、理財商品は信頼が突然失われる事態に対する脆弱性が非常に大きい。
 それが起きれば、最近の理財商品セクターを主に拡大させてきた中堅銀行の流動性がひっ迫する恐れがある。
 フィッチの試算では、中堅銀行が販売した理財商品の昨年の残高は預金量の40%を占めている。
 国有銀行はこの比率が15%だ。

 中国の影の銀行に関しては、急成長している民間企業に資金を提供する不可欠の存在だという擁護論が聞かれるが、データでは違った実態が示されている。
 理財商品で調達された資金を最も借り入れているのは不動産関連企業なのだ。
 重工業や道路・鉄道などの長期プロジェクトにも多くが流入している。

 中国政府が経済成長の目標達成に向けて貸し出しを促進している中で、理財商品は増加が続く可能性が大きい。
 しかし付随するさまざまなリスクを踏まえると、いつまでも「影」の存在にとどまりそうにはないだろう。

●背景となるニュース

*中国政府証券預託信託清算会社が2月25日に公表したリポートによると、理財商品の販売額は57%増加して昨年末までに23兆5000億元(3兆6000億ドル)に達した。2年連続の2桁増で、伸び率は2014年の47%を上回った。

*毎週3500本前後の理財商品が新たに登場する。投資される資金の60%超は個人投資家からで、銀行預金よりも高い利回りが魅力になっている。ただ理財商品の約75%は元本を保証していない。

*リポートによると、理財商品で調達された資金のおよそ38%は不動産関連産業に、10%前後は石炭や鉄鋼、石油精製などの重工業に向けられている。

*昨年の理財商品の残高のうち中堅銀行による販売の比率は42.2%で、大手国有銀行分(36.9%)を初めて上回った。

*フィッチの試算では、理財商品に投じられた資産の総額は昨年末時点で中国の銀行預金量の16.8%で、昨年6月の13.6%から上昇した。また中堅銀行が販売した理財商品の昨年末の残高は預金量の40%、国有銀行はこの比率が15%。フィッチは理財商品セクターの伸びが中小銀行にとって「重大なリスク」だと指摘した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。
本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



JB Press 2016.3.17(木)  柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46354

一掃できるのか?
中国でうごめく「ゾンビ」
過剰設備の削減に着手するも
抜本的な改革には至らず

 中国で年に一度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開かれた。
 今年の全人代の中心課題は経済改革と景気対策である。李克強首相は政府活動報告のなかでゾンビ企業を整理、統合するとの決意を表明した。

 中原地方と呼ばれる河南省と山西省は、歴史的に炭鉱が密集する地方である。
 昨今の石炭の需要減少と価格低下によってこれらの炭鉱の多くは経営を続けられなくなった。
 また地方政府は不動産バブルに便乗して各地に小さな製鉄所を設立したが、鉄鋼価格の急落を受けて経営難に陥っている。
 こうした炭鉱や製鉄所は経営的には存続が難しいが、大量の雇用と生産設備を抱えているため閉鎖することができない。

 2016年の全人代の目玉の1つは、こうしたゾンビ企業の整理、統合である。中国政府が過剰設備の削減に本気で取り組むことを決意したのだ。政府は、鉄鋼と石炭関連のゾンビ企業の閉鎖によって失業すると見られる約180万人の手当として1000億元(約1兆7500億円)を用意すると表明した。

■なぜゾンビ企業が生まれたのか

 では、これで過剰設備の問題が解決するのだろうか。
 答えはノーである。

 そもそもなぜゾンビ企業が表れたのだろうか。
 通常、企業は市場の需給関係を見て投資と生産を調整する。
 もしも市場メカニズムのシグナルを読み間違えて赤字に転落し、経営を続けられなくなれば、裁判所に破たん申請を行う。
 一方、中小の国有企業は本当は経営を続けられないにもかかわらず、
 政府に“輸血”されることで生きながらえ、ゾンビとなった。
 要するにゾンビ企業は、政府、とりわけ地方政府が主導して作り出したものである。

 ここで、新たな問題が出てくる。
 政府は1000億元(1兆7千億円)の資金を用意し、ゾンビ企業の閉鎖が社会不安を引き起こさないように手当している。
 しかし政府は、ゾンビ企業の閉鎖によって失業する人だけではなく、すべての失業者を救済すべきではないのか。

 現在、農村から2億人ぐらいの農民が沿海部を中心に出稼ぎに出ている。
 だが、沿海部で稼働していたアパレル、シューズ、玩具などの低付加価値製造業の工場は相次いで中国を離れ、ベトナムなど人件費の安い国に移転している。
 それに伴い1000万人以上の出稼ぎ労働者が失業しているといわれている。
 だが、これらの失業者は救済されていない。
 実は政府にとって、出稼ぎ労働者よりも炭鉱労働者や製鉄所の従業員の方が「やっかい」な相手である。

 一般的に出稼ぎ労働者は忍耐力が強く、不利な立場に置かれても反発しない。
 また、都市部に親戚や友人がいないので、徒党を組んで企業に歯向かうこともない。
 それに対して、炭鉱労働者や製鉄所の従業員はその街で育ってきたため、自分の権利を守る意識が強い。
 親戚や友人も多い。
 1人の労働者には20~30人の親戚、友人がいることだろう。
 もしもこれらの労働者や従業員が抗議活動を繰り出した場合、その波及効果は20倍以上になる。
 だからこそ政府はゾンビ企業の整理には気を遣い、手当をしようとする。

■過剰設備は政府の失敗によるもの

 中国の製造業の設備の稼働状況を見ると、重厚長大産業のほとんどは軒並み40%以上の過剰設備が生じている。
 自動車産業の場合は約50%の設備が遊んでいるといわれている。

 中国では政府がトップダウンで過剰設備の削減に乗り出そうとしている。
 だが、政府が過剰設備の削減に取り組んでも、経済は回復しにくい。
 そもそも過剰設備を作り出したのは国有企業の非効率な投資だった。
 政府が恣意的に市場介入を行ったから、需要と供給が均衡水準から大きくかい離し、過剰設備が生まれているのだ。
 政府の保護を受ける国有企業は市場メカニズムのシグナルを無視して投資の拡大を続けてきた。

 過剰設備が生まれる背景の1つに、2009年に発動された4兆元(当時の為替レートでは約56兆円)の財政出動がある。
 ゾンビ企業も過剰設備も、市場の失敗ではなく政府の失敗によるものである。

過剰設備を削減する最善な方法は、政府のトップダウンではなく、市場メカニズムが機能する市場環境を整備し、企業が自ら過剰設備の削減に取り組むことだ。
 過剰設備を削減するかどうかは政府の指令に基づくものではなく、あくまでも企業の自主判断によるものでなければならない。

■ゾンビでない国有企業は温存するのか

 今年の全人代で、李克強首相は政府活動報告の冒頭で「構造改革が着実に進展している」と豪語した。
 だが、中国経済の実態をいくら検証しても、
 構造改革が着実に進展しているという結論にはたどりつかない。
 習近平政権が誕生して3年経ってようやくゾンビ企業の処理に乗り出そうとしているのでは、 "Too late" (遅すぎる)と言わざるを得ない。

 ゾンビ企業の処理が順調に進むかどうかも不透明である。
 そもそもどの会社がゾンビかという判断を、誰が下すのだろうか。
 政府が、ゾンビかそうでないかを選別するならば、地方政府おおよびゾンビ企業と中央政府の間で、必ず駆け引きが始まることになる。

 地方政府とゾンビ企業は中央政府から補助金を引き出すために、失業者の人数を水増しして報告するだろう。
 閉鎖が決まったゾンビ企業が看板を取り換えて再び開業される可能性もある。
 結局のところ、中央政府のトップダウンで過剰設備が削減できたとしても、市場の需給がリバランスする可能性は低い。

 また、今回の政府活動報告では、ゾンビではない国有企業をどのように改革するかが一切言及されていない。
 現在、市場を独占する国有企業の膨張によって民営企業が圧迫されている。
 大型国有企業を資産で評価すると世界のトップ企業と肩を並べられるが、ROE(収益率)を見ると競争力が強いとはいえない。
 大型国有企業がゾンビになる前に一刻も早く民営化して、国有資産を有効利用すべきである。

 大胆に改革しなければ、一握りの巨大国有企業が市場を独占支配する国有財閥に変身する可能性が高い。
 そうなれば、中国経済はますます活性化しにくく停滞することになるだろう。

 

サーチナニュース 2016-03-17 18:46
http://biz.searchina.net/id/1605163?page=1

中国新五か年計画に現れた習国家主席の政治姿勢

■中国経済はまさに転換を迫られている

 2016年3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代=国会)で、中国政府は中期的な経済社会政策目標「第3次五カ年計画」(2016-20年)として、年平均6.5%以上の経済成長を目指すことを盛り込んだ。

 中国経済の動向は今や世界経済リスクの要因の1つと見なされているが、中国経済の不振は単なる景気の下降局面というよりも、これまでの経済構造が行き詰まっていると見るべきであり、中国経済はまさに転換機を迫られているというべきであろう。

■再び重厚長大の国有企業群が膨張することとなった

 これまでの中国経済を支えてきたのはインフラ投資や設備投資であった。
 これらの投資を担ってきたのが重厚長大産業に属する各地の国有企業であった。
 国有企業改革によって地方の中小国有企業の整理は進んで、ある程度の民間重視政策が進められたが、2008年のリーマンショックによって大規模な景気対策が講じられ、再び重厚長大の国有企業群が膨張することになった。

 その結果、国有企業は、政府とのつながりや補助金、有利な融資条件などで量的拡大に走り、多額の借金と過剰設備、過剰在庫を残すに至ったのである。

■「ゾンビ企業」の整理は果たして可能か?

 中国政府はいま、破綻しかけている鉄鋼や石炭関連の国有企業を整理しようとしている。
 いわゆる「ゾンビ企業」だ。しかしながら、共産党政権の基盤そのものに関わっている国有企業体制の改革は容易なことではない。

 金融、エネルギー、素材、大型機械といった産業の命脈を握るこれらの分野で寡占体制を崩して競争を促し、高生産性を可能にする民間企業の発展を促進することこそが本来あるべき改革として期待されているのである。

■「国家・主権の安全保障」に関する方針が提示された

 1978年に提唱され、90年代前半から本格化した改革開放によって中国は豊かになった。
 しかしながら1人当たりのGDPは約8000ドルの中進国水準にとどまっている。
 2020年代に入ると、生産年齢人口ばかりか総人口も減少に転じるなど、成長余力、財政余力が低下する可能性が高まるばかりか、高齢化で社会保障コストの増大も見込まれる。

 経済構造を転換する方向に踏み出さないと中期計画目標の達成は実現不可能となるであろう。
 しかしながら国有企業改革に伴う大量の失業者の出現は社会不安を招きかねない。

 そこで今回の社会政策目標には胡錦濤前政権時代の11年に公表された第12次五カ年計画には見られなかった「国家・主権の安全保障」に関する方針が提示された。

■習近平国家主席の政治姿勢が表れた内容

 「国家・主権の安全保障」は、「インターネット空間で敵対勢力やテロリストが破壊活動を浸透させることを抑止する」方針を示した。
 また、「反スパイ工作を強化する」、「イデオロギーの安全を切実に守り抜く」とも明記した。
 習近平指導部として、今後も、ネット管理や思想・言論統制を強め、体制安定を最優先する意向を示したものである。

 胡錦濤政権時代の五カ年計画には、「民主制度を健全にし、民主ルートを広くし、民主選挙を実行する」などと明記されていたが、今回の習近平五カ年計画は「社会主義政治制度の優位性を十分に発揮する」と強調しており、習近平国家主席の政治姿勢が表れた内容になっている。
(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張)



TBS系(JNN) 3月17日(木)19時40分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160317-00000100-jnn-int

中国「ゾンビ企業」の実態、全人代で“整理”を表明



 16日閉幕した中国の全人代(全国人民代表大会)で、処理する方針が打ち出されたのが、事実上、経営破綻しながらその影響の大きさからつぶせなかったいわゆる「ゾンビ企業」です。
 その実態を取材しました。

 河北省・唐山市。中国の鉄鋼生産の10%以上を占める「鉄の街」です。
 中国経済の屋台骨を支えてきたこの街が今、悲鳴をあげています。
 「この製鉄所もすでに生産を停止しています。私の後ろに見えるタンクも、さびついてしまっています」(記者)
 街では、生産を停止した工場が無残な姿をさらしていました。
 残った守衛は・・・
 「昔はすごくにぎやかだったよ。働いている人が多くて、みんなが出入りしてご飯を食べたり・・・」(残った守衛)
 工場前の商店街は、シャッターを下ろした店がほとんどで、人気がありません。
 「街の経済は鉄鋼業に頼っているから、景気が悪くなるとみんな生活が大変だよ」(街の人)

 中国鉄鋼業界の最大の課題が「過剰生産」です。
 景気の減速で鉄の需要は激減。
 生産設備が余り、去年は鉄鋼メーカーの実に47%が赤字となったのです。
 「(給料は)以前と比べものに ならないほど低いです」(製鉄所の工員)
 「今、鉄鋼業界はもうかりません」(製鉄所の工員)
 こうした企業は、赤字を垂れ流し続けながらも、政府や金融機関の救済によって生き続けています。
 いわゆる「ゾンビ企業」です。

 この工場も去年、80億円以上の赤字を計上し、11月に生産を停止しました。
 5か月間も賃金が支払われない事態に、工員たちが抗議活動を行いました。
 それでもこの企業はまだ倒産しておらず、近々生産を再開させる計画すらあります。
 「ゾンビ企業」が生き続けられるのは、「地元経済への影響が大きい」、さらには「国や地方政府幹部の利権が絡み合い、簡単には潰せない」という、この国特有の理由もあるといいます。

 「鉄鋼の過剰生産能力の解消に重点的に取り組みます。『ゾンビ企業』に積極的かつ、適切に取り組みます」(中国 李克強 首相)
 中国政府は、今年の全人代(全国人民代表大会)で、GDP成長率の目標を今後5年間で6.5%以上に設定。その中で上場企業の1割ともいわれるゾンビ企業を整理する方針を打ち出しました。
 ですが、大きな課題が立ちはだかります。
 失業者です。
 この街に住む王さんも、働いていた製鉄所を解雇され、家族の収入は妻が営む商店の売り上げだけです。
 「生活への影響は大きいです。収入がすごく減りました。仕事がなくてどう生きていけばいいのですか?」(製鉄所を解雇された王さん)
 工員たちが去った今、1日の売り上げは100元(約1730円)に満たない日が多く、生活は苦しいといいます。
 「家賃も払えないです。この店もやめようと考えています」(王さんの妻)

 「ゾンビ企業」の整理に伴う失業者は、今後5年間で600万人に上るとされています。
 中国政府は、1000億元(約1兆7300億円)をリストラ対策に充てる方針を打ち出しました。
 失業が、政府や中国共産党への不満につながり、社会不安に発展するおそれもあるからです。
 (Q.街は昔のようなにぎやかさを取り戻せますか?)
 「不可能です。それは無理です」(製鉄所を解雇された王さん)

 痛みを和らげながら、膿を出し切れるのか。
 中国は今、待ったなしの改革を迫られています。(17日17:25)




●中国経済崩壊最新2016年3月7日 中国が天文学的な大損害を出す模様!米投機資本が弱みにつけ込む気満々
2016/03/06 に公開





【2016 異態の国家:明日への展望】


_