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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月23日(Wed) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6362
南シナ海覇権獲得への“飛び石”か
中国西沙諸島ミサイル配備の狙い
2月18日付のForbesで、米シンクタンクAEIのマイケル・オースリン部長が、西沙諸島におけるミサイル配備は、中国が南シナ海一帯に軍用基地のネットワークを構築するための一歩であるとして、警鐘を鳴らしています。
要旨は以下の通りです。
●中国がミサイルを配備した西沙諸島の永興島(Getty Images)
■中国にとってもってこいの飛び石である永興島
中国が西沙諸島の最大の島、永興島(Woody Island)に地対空ミサイルを配備した。
米国やアジア諸国は中国を非難しているが、中国がこの種のミサイルの最初の配備先として永興島を選んだのには理由がある。
永興島は潜水艦基地を抱える海南島の南東250マイルに位置する。
この島は台湾とベトナムも領有権を主張しているが、中国が1956年以来支配している。
この島は自然に任された地域ではなく、昔から港があり、中国は1990年に滑走路を建設した。
昨年遅くには、中国はJ-11戦闘機を配備し、西沙諸島周辺の空域をコントロールし得ることとなり、また、海南島の戦闘機の支援も得て200マイル先の南シナ海奥深くまでコントロールし得ることとなった。
中国に言わせれば、HQ-9ミサイルは島の航空機や船舶を守るための防御措置、ということになる。
中国の狙いは、全ての領有地に、先進の防御措置を施すことをゆっくりと常態化していくことにある。
中国は、東南アジアでの軍事競争をエスカレートさせることに平気な様子である。
「航行の自由」作戦のような米国の行動に引き下がることは拒否している。
永興島のミサイルは100マイルの空域の米軍用機の脅威となり得る。
中国は米艦船を狙った地対艦ミサイルを配備することもできる。
永興島は、南シナ海一帯に軍用基地のネットワークを広げていくために、もってこいの最初の飛び石である。
もし、南沙諸島に地対空ミサイルを配備し、大きめの島にジェット戦闘機を配備すれば、中国は南シナ海全域をカバーできることとなり、飛行の自由が危険に晒される。近隣諸国には中国を駆逐する力はない。
中国の目標は、域内諸国にその卓越した地位を認めさせることにある。
地域の力のバランスは急速に変化している。
ある一国が、共有の水路と航空路に対する自己の権利を主張する力を持つ状況となりつつある。
これは大戦以来、アジアにおける圧倒的な力の出現の阻止に努めてきた米国の戦略に対する打撃である。
中国がその目標を達成したとしても、必ずしも戦争を意味しない。
むしろ、力は権利になり、ルールは最強の国によって作られる、ということの暗黙の了解を意味しよう。
それは自由主義的な国際秩序を脅かす世界的無秩序のもう一つの証拠である。
出 典:Michael Auslin ‘Asian Escalation: Why China Picked Woody Island For Its First South China Sea Missiles’(Forbes, February 18, 2016)
http://www.forbes.com/sites/michaelauslin/2016/02/18/asian-escalation-why-china-picked-woody-island-for-its-first-south-china-sea-missiles/#368460ad4147
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■西太平洋からの米軍駆逐狙う中国
この論説は、南シナ海で覇権を求める中国の良く知られた戦略的な行動を、西沙諸島へのミサイル配備という新たな展開を踏まえて、改めて記述し、警告を発するものです。
中国が西太平洋から米軍を駆逐することを狙っていることに疑いはありません。
問題は、どう対応するかにありますが、少なくとも南シナ海における力のバランスが致命的に悪化しないよう努力する必要があります。
そのためには、米軍のプレゼンスを目に見える形で強化すること、すなわち、米国が「航行の自由」作戦の回数を増やすとともに、そのビジビリティを高めることが必要と思います。
ビジビリティを高めることが、中国とこの地域の諸国に、米国の決意を知らしめることになります。
過去2回の「航行の自由」作戦では、米国はその態様と目的を公に説明することに及び腰でした。
当然のことを当然のように行うのですから、ことさら説明はしないという立場なのかも知れませんが、米国の弱腰振りを印象づけることになっているように思います。
日本もできることをやる必要があるでしょう。
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レコードチャイナ 配信日時:2016年3月23日(水) 4時20分
http://www.recordchina.co.jp/a131415.html
中国人民解放軍、35年までに「アジア太平洋での優位」目指す
=海・空・宇宙で米国に対抗も、「世界一」は狙わず―ボーン・上田記者賞受賞者
「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した塩沢英一・共同通信社外信部次長が記念講演。
中国が海、空、宇宙各分野で積極的に軍事力を強化している実態を示した上で、
「35年までにアジア太平洋地域での優位確保」を目指している、
と指摘した。
2016年3月18日、国際報道で優れた業績を残したジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」(新聞通信調査会)の2015年度受賞者である塩沢英一・共同通信社外信部次長が、「中国が進める軍事改革〜積極防御とは何か」と題して、日本記者クラブで記念講演した。中国人民解放軍が、海、空、宇宙各分野で積極的に軍事力を強化している実態を指摘。
「2020年までにアジアで優位な地位を確立」
「35年までにアジア太平洋地域での大きな優位を確保」
「49年までには世界の平和維持に大きな影響力を持つ」
―という3段階プロセスを展開していると強調した。
塩沢氏は計約8年に及ぶ北京での特派員経験で培った人脈を基に、情報統制の厳しい中国の軍事動向を丹念に追い続け、13年11月には中国軍が東シナ海上空に防空識別圏の設定を検討していることを、中国政府の発表に先駆けて報じた。
講演での発言要旨は次の通り。
宇宙分野で中国は世界で先頭グループにあり、米国に対抗。
2010年と13年にミサイル迎撃実験を成功させている。
★.ブースト(発射)、中間、最終の3段階防衛をすべて構築しているのは米中両国だけだ。
従来、海洋を重視してこなかったが、2012年に海軍の「強軍戦略」で、海軍の役割として、東経165度以西、南緯35度以北の海域で「国家利益を効果的に守る」と規定された。
(1):2020年までにアジアで優位な地位を確立、
(2):35年までにアジア太平洋地域での大きな優位を確保、
(3):49年までには「世界の平和維持に大きな影響力」を持つ
―という3段階プロセスを展開している。
空軍についても、2015年の『空軍戦略』報告で、航空圏の確保に向け、偵察力や攻撃力を西太平洋まで拡大。
新型の戦略爆撃機、高高度防衛ミサイル、高速空中発射巡航ミサイル、大型輸送機、飛行船などの「戦略装備」により米軍の介入を阻止することを狙っている。
東シナ海上空の防空識別圏では、空軍内や海軍と連携強化を図る。
南シナ海では、7カ所を埋め立て滑走路を造成、レーダー施設や西沙・永興島にはミサイルを配備し軍事拠点化している。
南シナ海でも防空識別圏設置の動きもある。
中国は既成の米国主導の秩序に強い不満を抱いているが、同国には課題が山積しており、米国を倒して世界一になろうとは考えていない。
米中両国は争わず共存共栄の道を探ることになろう。(八牧浩行)
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現代ビジネス 2016年04月04日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48340
米中両軍、南シナ海で激しく攻防中!?
オバマ・習近平会談も完全な物別れに…
大揺れの東アジア安保体制
■大国同士のプライドがぶつかり合う首脳会談
ワシントン時間3月31日午後2時24分、核安全サミットが開かれていた国際会議場で、この2年で6回目となるオバマ大統領と習近平主席の米中首脳会談が開かれた。
過去を振り返れば、2013年6月、国家主席になって3ヵ月足らずの習近平主席が訪米し、カリフォルニア州サニーランドのアンナバーグ庄園で、1泊2日8時間半にわたる首脳会談を開いたのが始まりだった。
その時、習近平主席は「新型の大国関係」を初めて提案した。
オバマ大統領は、
「平和的に台頭し、安定し、繁栄した中国を歓迎する」
とした、胡錦濤時代から言い続けている台詞を口にした。
2回目は、その3ヵ月後の9月、ロシアのサンクトペテルブルクG20の席だった。
この時は直前にアメリカがシリアへの参戦(空爆)を宣言した直後で、中東問題が主な議題となった。
3回目は、2014年3月のハーグでの核安全サミットの時である。
この時、習近平主席は、
「中米両国は共に、第二次世界大戦の戦勝国であるが、この戦後秩序に逆行する動きがある」
として、日本の安倍晋三政権を牽制した。
だがオバマ大統領は、ウクライナ問題で頭が一杯だったため、そちらの議題が優先された。
4回目は、同年11月の北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)の時に、オバマ大統領を国賓待遇で中南海に招待した。
この時も習近平主席は、「新型の大国関係」の構築を説いた。
一方、中間選挙で大敗北した上に、ウクライナやシリア問題で精一杯だったオバマ大統領は、
「アジアのことは中国に任せたいが、その代わり周辺諸国とうまくやってくれ」
と注文をつけた。
5回目の米中首脳会談は、昨年9月、今度は習近平主席が国賓としてワシントンを訪問して行われた。
だがこの時は、南シナ海の埋め立て問題とサイバーテロ問題で、両首脳が真っ向から対立。
習近平主席としては、「屈辱の訪米」となった。
それから半年あまりを経て、6回目の米中首脳会談となった。
着席したオバマ大統領と習近平主席は、まるで土俵上の力士のように、テーブルを挟んで睨み合った。
そこには緊張とプライドがぶつかり合う、大国外交独特の雰囲気が漂っていた。
■言葉とは裏腹に……
両首脳の冒頭の発言は、以下の通りだ。
オバマ:
「習近平主席のワシントン再訪を歓迎する。
私は前に、アメリカは平和的に台頭し、安定し、繁栄した中国を歓迎すると言った。
そして両国の協力関係を押し広げ、互いの差異を縮めてきた。
核安全に関しても協力関係は進み、それは新たな核安全センター(3月18日に北京にオープンした核安全保障モデルセンター)も含まれる。
非常に重要なことは、地域の安全と安定を脅かす北朝鮮の核開発に関してだ。
米中両国は、朝鮮半島の非核化と、国連による制裁の完全な履行を実施していく。
核やミサイル実験をエスカレートしていく北朝鮮にどう対処していくかを話し合う。
気候変動問題に関する歴史的なパリ合意の履行を加速化させる新たなステップにも、米中両国は到達する。
グローバル・エコノミーに関しても同様に、習近平主席とともに取り組んでいく。
世界の2大経済大国として、両国は協力していく義務を負っている。
中国は今年のG20のホスト国であり、ぜひとも成功に導きたい。
その他、人権問題やサイバーテロ問題、それに海洋の問題など、両国の見解に大きな差異が横たわる問題に関しても、話し合う。
中国や他の国と同様、アメリカもアジア太平洋地域において、重要な国益を有している。
アメリカ企業の知的財産権を守らなければならない。
人権にも注意を払う。
その点、対話を重ねようという習近平主席の意思を評価する」
習近平:
「総統先生(オバマ大統領への呼称)、第4回核安全サミットのさなかにこうして首脳会談を行えたことを嬉しく思う。
これまで二人の首脳会談によって、多くの成果が得られてきた。
例を挙げれば、パリ機構会議での歴史的な合意、イランの核合意などだ。
双方の貿易、双方の投資、双方の観光は新記録を更新し続けている。
そして朝鮮の核問題、シリアやアフガニスタン問題においても、協調と協力を続けている。
これらは、『新型の大国関係』を構築するにあたって、多くの潜在的余地があることを示している。
世界経済の成長は鈍化し、地域の問題は複雑化し、長きにわたっている。
テロの脅威も増している。
世界最大の発展途上国と、世界最大の発展国として、また世界2大経済大国として、われわれには世界を平和にし、安定させ、繁栄に導く責任がある。
中米両国が協力して取り組むエリアは広いのだ。
その一方で、総統先生が述べたように、いくつかの領域において、争点や不一致が存在する。
双方の核心的利益を尊重した上で、対話と交渉を通じて、能動的な解決方法を探っていこうではないか。
またそれが困難な時も、それらの問題を建設的にコントロールし、誤解によって問題がエスカレートしたり、両国のこれまで築き上げてきた協力関係が粉砕されるような事態に陥るのを避けていこうではないか。
気候変動問題に関して、4月22日に両国がパリ合意に署名できる見通しとなったことは、喜ばしいことだ。
他にも、軍事交流や人文交流、テロとの戦い、法の支配、サイバーセキュリティなど、中米両国は関係を深めていける。
朝鮮の核問題においても、協調していきたい。
その他の、地域とグローバルな問題においても同様だ。
私は繰り返し言うが、中国の外交政策において、アメリカと『新型の大国関係』を築くことは、優先的事項なのだ。
それによって、摩擦や争点なく、互いに敬意を持ってダブルウィンの関係を築いていきたいのだ」
このように、米中両首脳は互いに4分間ずつ、カメラの前で冒頭のコメントを述べ合ったのだった。
オバマ大統領の発言中、習近平主席は疑心暗鬼の様子で唇をピクピク動かしていた。
また、習近平主席の発言中は、オバマ大統領はやや苛立った様子で、カメラの前では珍しく厳しい表情を保っていた。
すなわち、両首脳は互いの抑揚の効いた冒頭発言とは裏腹に、互いの信頼関係など無きに等しいのである。
そもそも両首脳とも「孤独な指導者」と言われていて、猜疑心が強い性格だ。
■核心的議題は平行線に終わった
そこからはクローズドな会談となったが、中国国営新華社通信が伝えた習近平主席の発言を、項目別にピックアップしてみよう。
ただし新華社通信は、決してウソは書かないが、中国に都合のいい部分を強調したり、逆に都合の悪い部分を省略したりということは、日常茶飯事である。
▼<新型の大国関係>
「『新型の大国関係』は、米中両国が提携し、ダブルウインとなることを核心として構築するものであり、人類を運命共同体とし、国連を中心とした現行の国際秩序を維持、保護し、改善していくためのものなのだ。
中米両国の利益は、互いの相違点よりもはるかに大きい。
両国の協調は、両国だけでなく、世界にとって有益なのだ」
▼<軍事交流>
「両国の軍事交流を広げ、交渉の場となる機構を作っていくべきだ。
それによって、両軍の関係が改善するだろう。
軍事交流に関してアメリカ側も、中国と同様に積極的になってほしい。
昨年12月に行った『中米インターネット犯罪高位相互対話』は、大きな成果を挙げた。
インターネット・セキュリティの問題で両国が協力していこうという共通認識に達した。
両国が中心となって、国連でインターネット空間における国際規則を定めていきたい」
▼<北朝鮮問題>
「中国は一貫して、朝鮮半島の非核化、朝鮮半島の平和と安定、対話と交渉を通した問題解決を主張してきた。
中国は、国連安保理の朝鮮に対する決議を、厳格に執行する。
同時に緊張を増すような言行を避けるようにする。
そして他の国の安全や利益に影響を与えたり、地域の戦略的平衡が損なわれるようなことがあってはならない」
▼<南シナ海問題>
「中国は、南シナ海における主権及び関連する権利を固く維持し保護する。
同時に、南シナ海地域の平和と安定も、維持し保護していく。
また、当事者同士の直接の協商と交渉を通じて争議を解決していく。
中国は、各国が国際法に則って航行し飛行する自由を尊重し、維持・保護する。
だが同時に、航行の自由を口実として、中国の国家主権及び安全の利益を損害する行為は受け入れない」
▼<台湾問題>
「台湾は、中国の切り離すことのできない固有の領土である。
アメリカが『一つの中国』政策を堅持することを要求する。
両岸関係を平和的に発展させることもまた、中米関係を長期的に発展させるのに有利に働くのだ」
この米中首脳会談の核心部分は、
1].中国による南シナ海の埋め立て問題と、
2].アメリカが韓国にTHAAD(高高度迎撃システム)を配備する問題
である。
伝わってくる雰囲気や、各国のマスコミ報道を見ると、この二つの問題に関しては、平行線に終わったものと推測される。
すなわちアメリカ側は、
「直ちに南シナ海の埋め立てを中止せよ。
南シナ海の軍事要塞化も認めない」
と主張。対して中国側は、
「南シナ海の埋め立てはあくまでも内政問題であり、
内政干渉は認めない」
と突っぱねたというわけだ。
その代わり中国は、アメリカの機嫌を損ねないよう、他の分野で目一杯気を遣った。
オバマ大統領の肝煎りで始めた核安全サミットに最大限協力し、地球温暖化問題でもアメリカに譲歩した。
イランの核開発問題でもアメリカに協力して友好国イランを説得した。
もう一つのTHAAD配備問題については、中国は北朝鮮に対する制裁を完全に履行すると宣言することで、何とかアメリカに配備を断念させようとしている。
だが今度はアメリカが、
「これはあくまでも北朝鮮の脅威から同盟国の韓国を守る措置であって中国とは無関係だ」
として、突っぱねたのだろう。
つまり、南シナ海問題も、THAAD配備問題も、何一つ進展はなかったということだ。
■南シナ海を巡る米中両軍の攻防
南シナ海の問題に関しては、習近平主席に代わって、別の人物が中国の立場を明らかにしている。
この米中首脳会談と同日の15時から16時15分まで、北京の中国国防部国際軍事提携弁公室で、楊宇軍国防部スポークスマンによる定例記者会見が開かれたのだ。
国防部は5年前から、毎月1回をめどに記者会見を行っている。
この時の1時間15分に及んだ会見の中で、南シナ海に関する部分をピックアップしてみよう。
記者:
「3月28日に、日本国防衛省が与那国島に沿岸関心部隊を設置し、29日には新たな安保法を施行した。これら日本の行為をどう受けとめているか?」
楊宇軍:
「それは非常によい質問だ。
われわれは最近の日本が、軍事領域において活発な行動が目立つと感じている。
日本は大声をあげて、中国が南シナ海の岩礁を軍事化していると非難する。
だが、中国の領土である台湾からわずか100㎞あまりしか離れていない与那国島で何をやっているのか?
あるメディアは、島には2名の警官と10発の弾しかないと報じていたが、それが一気に150名の自衛隊員の増派だ。
続いて歩兵部隊を配置するということも言われている。
日本は他国を非難していながら、自国の行動はどう考えるのか?
このほか、日本はずっと『航行の自由』を喜々として掲げ、中国が自国の島嶼で必要な防衛設備に対しては、『航行の自由を破壊するものだ』と非難する。
ならば日本こそ狭い与西水道で、東シナ海と西太平洋を結ぶ国際水道周辺で軍事を増強させているその行為は、何と呼ぶのか?
さらに言うなら、新たな安保法は、日本国内外で一貫して疑義と反対を受けていたものだ。
歴史上、日本軍国主義は国際社会、特にアジアの国家と国民に多大な災難を与えてきた。
最近、再び平和憲法を無視して軍拡に向かい、歴史の徹を踏むつもりなのか?
各国が注視していく必要がある」
記者:
「ウォーク米国防副長官が3月30日、談話を発表し、中国に警告した。
もし中国が南シナ海に防空識別圏を設置するならば、アメリカはその防空識別圏を承認しないと。
この発言をどう受けとめているか?」
楊宇軍:
「南シナ海の防空識別圏設置の問題は、これまで何度も中国の立場を表明してきた。
もう一度言えというなら言うが、防空識別圏の設置は、主権国家に与えられた権利だ。
そのことで他国に指図はさせない」
記者:
「最近フィリピンは、アメリカと協定を結んだ。
すなわちアメリカ軍は今後、フィリピンの5ヵ所の軍事基地を使用するというものだ。
そのうち1ヵ所は空軍基地で、南沙諸島のバラワン島に近い。
これをどう見ているか?」
楊宇軍:
「前世紀90年代の初め、アメリカはフィリピンの軍事基地から撤退した。
その原因(反米感情の高まり)は周知の通りで、フィリピン人が一番よく分かっている。
いまやそのアメリカ軍が帰ってきて、フィリピンの軍事化を進め、南シナ海の軍事化を進める。
軍事同盟の強化は冷戦的思考であり、今日の平和、発展、提携、ダブルウインという時代の潮流に反したものだ。
われわれは、このような冷戦的思考を放棄するよう要求する。
かつ両国の軍事提携が、第三国を向かず、第三国の利益を損なわず、地域の平和と安定に悪影響を及ぼさないことを要求するものだ」
記者:
「台湾では馬英九指導者と担当部門が、南沙諸島の太平島(台湾が実効支配)への外国記者訪問を認めた。
中国は実効支配している南沙諸島もしくは西沙諸島への外国記者訪問を認めないのか?」
楊宇軍:
「もし外国記者が訪問を望むなら、外交部に申請すればよい。
もしくは、西沙諸島も南沙諸島も、中国海南省三沙市の一部なので、三沙市役所に申請すればよい」
記者:
「アメリカの国防副長官の発言だが、国際法廷は数週間後に、フィリピンが提出した南シナ海の主権に関する裁決を出すという。
この裁決が出たら、中国は2013年に東シナ海に設置したような防空識別圏を、南シナ海にも設置するつもりなのか?」
楊宇軍:
「防空識別圏に関しては、また同じことの繰り返しになるが、国家の主権の範囲内のことだ。
領空の安全が脅かされているか、またその程度によって総合的に判断して決める。
記者:
「30日付のニューヨークタイムズが、アメリカ軍の巡洋艦が南シナ海を巡航中、中国の軍艦の追尾と監視を受けたことを、『危険な挨拶』と報じていた。これをどう見るか?」
楊宇軍:
「その報道を見ていないのではっきりしたことは言えないが、はっきり言えるのは、中国海軍の自国の海域での行動は一貫して合法的で、専門的だということだ。
遠くからわざわざやって来たアメリカ海軍の軍艦には、『よく考えて行動したまえ』というアドバイスしか思いつかない」
この中国国防部の答弁を聞いても分かるように、南シナ海を巡って米中両軍の間で、すでに水面下で相当激しい攻防が起こっていることが推測できるのである。
■1時間20分に及んだ中韓首脳会談
さて、もう一つの東アジアの安保体制を一変させる韓国へのTHAAD配備の問題についても見てみよう。
前述のように習近平主席は今回、「北朝鮮に対する制裁は完全に履行するから、THAAD配備だけはやめてくれ」という戦術で、オバマ大統領との首脳会談に臨んだ。
だが、南シナ海の埋め立て問題で怒り心頭のアメリカは、これを拒絶した。
そこで習近平主席は、THAAD配備のもう一方の当事者である韓国の朴槿恵大統領との中韓首脳会談に、望みを託した。
両首脳の会談は、今回が7回目だった。
これまでの両首脳の会談の特徴は、非常に和気藹々としていて、時に予定時間より早く終わることだった。
一般に首脳会談というのは、戦争の当事国同士のように双方険悪で完全決裂した場合も早く終わるが、この3年間の中韓首脳会談のように、何もかもトントン拍子に進んだ場合も、あっさり終わってしまうのである。
なにせ朴槿恵大統領は中国語の学習に熱心で、西側諸国で唯一、習近平主席が主催する軍事パレードに参加してしまうほどの蜜月関係を誇っていた。
ところが昨年9月の軍事パレードの時以来の会談となった今回に限っては、1時間の予定が20分もオーバーした。
これは珍しく、両首脳の間で激論が交わされたに違いないのである。
新華社通信によれば、
習近平主席はこう述べたという。
「国交を結んでから24年間で、両国関係は快速の発展を遂げてきた。
中国は韓国との関係を、周辺外交の中でも特に重要と位置づけてきた。
中国が進める『一帯一路』への参与を歓迎するし、自由貿易を発効させ、金融提携を深化させ、2018年の平昌冬季五輪を支持してきた。
両国は年間1000万人が交流する時代を迎えつつあるのだ。
朝鮮半島情勢に関しては、半島の非核化、半島の平和と安定の維持と保護、対話と交渉による問題解決と3原則を、わが国は一貫して主張している。
国連安保理による決議も完全に履行する。関係諸国は、局面を緊張させるようなことは避けるべきだ。
この地域の国家の安全に関する国益と、戦略の平衡を損ねてはならない」
新華社通信の表現は非常に抑制されたものだが、要は習近平主席が、
「これまで韓国を大事にしてきたのだから、THAAD配備だけはやめてくれ」
と、朴槿恵大統領に切々と訴えているのである。
だが、アメリカの軍事同盟国である韓国の大統領としては、「では配備をやめます」とは言えない。
そもそも4月13日に大事な総選挙を控えた朴槿恵大統領としては、「北朝鮮に対する毅然とした態度」が集票の要だ。
これだけ北朝鮮が暴れ出すと、中国との経済関係よりも、アメリカとの軍事関係の方が優先されるのである。
かくして、結論を言えば、南シナ海問題とTHAAD配備問題が、どちらも非常に深刻な問題であることが、より一層浮き彫りになった核安全サミットだった。
2010年に核安全サミットを提唱したオバマ大統領は、イランの核問題を一時的にせよ解決に導き、長年敵対していたキューバとの国交を樹立した。
だが東アジアに関しては、何事も解決していない。
それどころか、アメリカの不作為のせいで、どんどん不安定化していくばかりだ。
その意味でも、次期アメリカ大統領には、責任感ある指導者に就いてもらいたいものである。
』
【2016 異態の国家:明日への展望】
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