2016年3月17日木曜日

南シナ海人工島による軍事化の危機(3):アメリカなしでは「中国の強硬な行為を止められない」

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レコードチャイナ 配信日時:2016年3月17日(木) 1時10分
http://www.recordchina.co.jp/a131169.html

マレーシアが南シナ海問題でオーストラリア国防相と会談へ、
「単独では強硬な行為を止められない」―米メディア

 2016年3月15日、ロイター通信によると、マレーシアのヒシャムディン国防相は、オーストラリアのペイン国防相と来週に会談し、南シナ海で中国が軍事拠点を構築していることについて協議することを明らかにした。

 マレーシアのヒシャムディン国防相は14日、オーストラリアのペイン国防相と来週に会談し、南シナ海を軍事拠点化しないという約束を中国が守るための対応を協議すると述べた。
 また、フィリピンとベトナムとも会談することを明らかにした。
 ヒシャムディン国防相は、
 「中国がスプラトリー(南沙)諸島などで軍事関連施設を建設しているとの報道が相次いでいるが、
 それが本当なら、中国に反発せざるを得ない」
と述べた。
 また、マレーシアが単独で中国の強硬な行動を止めることはできないと述べ、フィリピンとベトナムとも会談し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の支持を得て、大国の行動を抑制するとの考えを示した。



レコードチャイナ 配信日時:2016年3月18日(金) 10時10分
http://www.recordchina.co.jp/a131221.html

米国が「ソ連時代の鉄クズ」と見下す中国の空母、
ペンタゴンはその真の脅威に気付いていない―米誌


●14日、米カリフォルニア大学のピーター・ナバロ教授は、米誌ナショナル・インタレストに掲載した記事の中で「中国の空母・遼寧号の太平洋での真の脅威」について論じている。写真は遼寧号。

  2016年3月14日、米カリフォルニア大学のピーター・ナバロ教授は、米誌ナショナル・インタレストに掲載した記事の中で
 「中国の空母・遼寧号の太平洋での真の脅威」
について論じている。
 16日付で環球時報が伝えた。

 記事は、中国唯一の空母である遼寧号について、
 「中国の誇りの大きな源であるが、米国の国防界ではこの小さな訓練艦を『ソ連時代の鉄クズだ』と見下す向きがある」
と指摘。
 遼寧号が米国のニミッツ級空母と比較して甲板の長さが100フィート(約30メートル)短いことや、先進的な電子・武器システムを有していないことを指摘し、
 「東シナ海や南シナ海を巡視する米国のいかなる空母にとっても直接的な脅威にはならないし、
 米国の当該地域のいかなる前線基地にも現実的な脅威はない」
とする。

 一方で、別の角度からその脅威に警鐘を鳴らす。
 記事は、遼寧号や中国の護衛艦が、南シナ海の中国の隣国、
 特にフィリピンやベトナムにとって脅威になっていると指摘。
 米ヘリテージ財団の中国専門家、ディーン・チェン研究員は
 「南シナ海の多くの地域は陸地から離れている。
 もし、1隻の空母がそこにいればどうなるか。
 中国は過去20年間に起きた戦争から、現代戦争に勝つためには制空権が欠かせないという教訓を得た」
と述べており、これは
 「ペンタゴンが気付いていない問題の本質」
だという。

 記事は、
 「米国の指導者は今日や明日のことにしか関心がないが、中国は21世紀全体を考えている。
 ペンタゴンは一つの事実を理解していない。
 それは、遼寧号のフィリピン・ベトナムへの脅威は、米国のアジア太平洋での力に対する脅威でもあるということだ」
と指摘
 「遼寧号を軽視してはならなず、中国の空母派遣の第一歩と見るべき。
 これは、ペルシャ湾からインド洋、南シナ海、東シナ海、そしてグアム、ハワイといった太平洋にとって、ますます大きな脅威となるだろう」と警鐘を鳴らしている。



ニューズウイーク 2016年3月17日(木)17時00分 楊海英(本誌コラムニスト)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4700.php

中国が南シナ海に造る「万里の長城」の意外なもろさ
イナゴのような大群と大建造物に怯える東南アジア、
中国のお家芸に日米はどう対抗すべきか


●一つ覚え 人海戦術に中国数千年の歴史あり(ロシア国境の人民解放軍) China Daily-REUTERS

 米軍原子力空母ジョン・C・ステニスを旗艦とする空母打撃群が、イージス駆逐艦のストックデールとチャン・フー、それにミサイル巡洋艦モービル・ベイを随伴して南シナ海で警戒監視活動を行った。
 同海域の軍事拠点化を強引に進める中国を牽制するためだという。

 ステニスの指揮官は
 「わが艦艇は見たこともないほどの中国人民解放軍の艦船に囲まれていた」
と、波高き「戦場」を振り返った。古来中国が得意とする人海戦術に遭遇したわけだ。

【参考記事】中国を牽制したい米国の切り札は「 同盟国」のインド

 同じような戦術は紀元前の中国北部でも見られた。
 モンゴル高原から南進してきた遊牧民の匈奴軍は、いつも「イナゴよりも多い漢の軍隊」に包囲されては撤退を余儀なくされていた。
 人命を尊重するか否かで匈奴と漢は価値観が異なる、と司馬遷の『史記』は伝える。

 近現代では日中戦争と国共内戦、1950~53年の朝鮮戦争と79年の「ベトナム懲罰戦(中越戦争)」の際も、中国共産党側は常に相手より何倍、何十倍もの兵士を投入。
 彼らが言うところの「勝利」を手に入れていた。
 「まるで無用となった兵(つわもの)どもを消耗するのが目的であるかのように、人間の塊を次から次へと砲火の中に放り込んでいた」、
と対戦した日本軍や国民党軍だけでなく、さらには米軍やベトナム軍側にも驚くほど同種の証言がある。

 「中国は『孫子の兵法』にたけている」と知略に富んだイメージがある。
 だがそれは「中国は孔子が『論語』の中で理想として唱える高潔な仁徳の実践者である」と同じような空論にすぎない。
 実際は、人海戦術しか知らないのだ。

■戦下手な東南アジア諸国

 南シナ海での人工島建設をどう理解すべきか。
 こちらは万里の長城を例に考えれば分かりやすい。
 中国政府は南シナ海での軍事拠点を「海上の万里の長城」と呼んで自慢しているので、両者を歴史的に比較してみる必要がある。

【参考記事】中国が西沙諸島に配備するミサイルの意味
http://www.newsweekjapan.jp/ohara/2016/02/post.php

 万里の長城は紀元前の春秋戦国時代に各地で建設が始まり、中国本土を統一した秦の始皇帝がつなぎ合わせたことで長くなった。
 東の渤海湾から西の嘉峪関まで連綿と続くが、現在の形として残っているものは明朝による補強工事の結果だ。

 中国本土に侵入する遊牧民を阻止するためとの説が一般的だが、
 国土を塀で守るという中国の国防戦略は一度も成功したことはない。
 華やかな国際文化を築いた隋や唐の始祖は鮮(せん)卑(ぴ)拓跋(たくばつ)系の民族だったし、世界帝国の元と清を建設したのはモンゴル人と満州人。
 いずれも長城を馬で乗り越えて中国本土を支配下に置いた遊牧民だ。
 東アジアにおける王朝交代の歴史が、万里の長城の建築は功を奏すことはなかったという事実を雄弁に物語っている。

 「万里の長城は草原の遊牧民を威嚇するための装置だった」
 「中国国内の不満分子が遊牧民の自由世界に亡命するのを阻止する目的で建てた」
 「長期かつ大規模な工事を通して社会基盤を整えようとした」
──長城の建設をめぐる諸説は尽きない。

 ただどちらにしても、中国人が誇張するほど軍事的な役割を果たさなかったのは事実だ。
 そして、長大な建築物を造り上げるのに周辺の樹木はすっかり伐採し尽くされ、長城に沿って砂漠地帯が横たわっているのもまた事実である。

【参考記事】南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4060.php

 万里の長城はまさに「負の遺産」そのもの。
 騎馬弓射によって合理的に武装した遊牧民に徒歩の中国兵が太刀打ちできなかったのも、長城が役に立たなかった敗因の1つだろう。

 しかし、南シナ海の「万里の長城」は事情が異なる。
 人工島に最新鋭のミサイルとレーダーが配備されているだけではない。
 これに対抗する東南アジア諸国は遊牧民に比べると戦が下手な善良な民族からなる。

 日本の安倍政権はフィリピンやベトナムなどに自衛隊の中古武器類を提供する方向だという。
 これも米軍の警戒監視活動と並んで、「万里の長城」に対する次善の策になるだろう。

[2016年3月22日号掲載]



毎日新聞 3月19日(土)10時57分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160319-00000018-mai-int

 <フィリピン>5基地、米軍が共同使用で合意 戦略協議
 中国けん制の意図


●米比が共同使用で合意した基地

 【ワシントン和田浩明】
 米国とフィリピンの外交、国防担当高官は17、18日にワシントンで戦略協議を行い、フィリピン国内の5基地を米軍が共同使用することで合意した。
 米側はフィリピンの海洋安全保障能力向上のための資金拠出を米議会に求める。
 南シナ海の軍事化反対や紛争の平和的解決でも一致した。
 海洋進出を続ける中国をけん制する意図がある。

 米側はラッセル国務次官補とシアー国防次官補、フィリピン側はガルシア外務次官とバティノ国防次官が出席した。

 米国務省によると、米軍が使用可能になるのは、中国が領有権を主張する南沙(英語名スプラトリー)諸島に近いアントニオ・バウティスタ空軍基地(フィリピン西部パラワン島)やマニラ郊外の空軍基地など。

 米軍によるフィリピン国内基地の使用は2014年に両国が結んだ軍事協定に盛り込まれ、1992年までに一度は撤退した米軍が回帰する方向が決まっていた。

 カービー国務省報道官は18日の会見で
 「米比両国の同盟の強力さを示すものだ。
 他国はそれ以外の意図を読み取るべきでない」
と述べた。

 協議では、米国によるフィリピン軍の近代化支援や、海洋安保と状況把握能力の向上も検討。
 南シナ海での領有権問題では、米比両国は「航行・飛行の自由」の支持を確認した。

 フィリピンは、国連海洋法条約に基づいて、中国の領有権主張について常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の仲裁を求めている。
 米比両国は、仲裁裁の決定は、フィリピンと中国の双方を法的に拘束するとの認識を確認した。
 中国は当事国間での解決を主張している。




ハンギョレ新聞 3月22日(火)12時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160322-00023658-hankyoreh-kr

米軍が24年ぶりフィリピンに再駐留 南シナ海で中国牽制

 
●米軍のフィリピン再駐留が決まった5カ所

■空軍基地など5カ所、10年間の使用に合意

 米国が南シナ海で中国と領有権紛争を続けるフィリピンに、近いうちに軍を再駐留させる。
 米国とフィリピンは18日(現地時間)、ワシントンで高位級戦略会談を開き、今後10年間、米軍がフィリピンの空軍基地4か所と海軍基地1か所を使用することに合意したと発表した。
 米国がフィリピンに軍を駐留させるのは、1991年にフィリピン議会が米軍駐留延長案を否決したことを受け、翌年に米軍が撤収して以来、24年ぶりのことだ。

 米軍の今回の決定は、2014年に両国が締結した防衛協力拡大協定に基づくものだが、中国の南シナ海掌握を牽制し、オバマ政権の「アジア再均衡」戦略を支えるための軍事的措置とみられている。
 特にパラワン島のアントニオ・バウティスタ空軍基地は、フィリピンと中国との間で領有権紛争が生じているスプラトリー諸島(南沙諸島)と非常に近い距離に位置しており、軍事的緊張が高まる恐れがある。

 アシュトン・カーター米国防長官は、具体的な実施案を協議するために来月フィリピンを訪問する。
 フィリピン駐在のフィリップ・ゴールドバーグ米国大使は、米軍の現地配置の日程は特定できないとしながらも、「人材と物資の輸送が非常に迅速に開始されると思う」と述べたとAP通信が報じた。

 これに先立ち、中国の王毅・外交部長は先月、ジョン・ケリー米国務長官との会談で、中国が南シナ海で軍事力を展開することは、米国がハワイに軍事力を配備するようなものだとして、南シナ海に対する軍事的統制の意図を明らかにした。


サーチナニュース 2016-03-26 14:31
http://news.searchina.net/id/1605813?page=1

日本は中国を挟み撃ちにする気だ 
海自潜水艦がフィリピンに、
護衛艦はベトナムへ(編者解説付)



 中国メディアの環球網は24日、
 「日本の潜水艦が新安保法でフィリピン訪問、
 東シナ海と南シナ海で中国を挟撃」
と題する記事を発表した。
 海上自衛隊の潜水艦・護衛艦のフィリピンやベトナムへの派遣は、安倍政権が新安保法の施行をアピールするために実施との見方を紹介した。

 海上自衛隊は練習潜水艦「おやしお」を3月下旬から4月にかけて、フィリピンに派遣する。
 フィリピンではスービック湾(解説参照)に寄港する。
 フィリピンでは親善交流や共同訓練を行う予定だ。

 「おやしお」には護衛艦の「ありあけ」と「せとぎり」も同行。
 2隻フィリピンの次に、ベトナムのカムラン湾にも初寄港する予定だ。

 中国人民解放軍国防大学の李莉教授は海自の潜水艦と護衛艦のフィリピン、ベトナムへの派遣について、安倍政権が新安保法の施行をアピールする「シンボル的事件」と主張。
 日本は自衛隊を国外に出して防衛面で他国と協力させると同時に、米国との安全分野における新たな協力モデルを構築したいと考えていると主張。

 新たな協力モデルとは、(尖閣諸島など)シナ海の問題と(南沙諸島、西沙諸島など)南シナ海の問題を連動させ、両方面から中国に圧力をかけ、同時に「海における中国の脅威論」との世論を煽ることによっても中国に圧力をかけることと説明した。

 李教授は「おやしお」について、
 「アジアでは排水量で最大クラスの通常動力の潜水艦であり、性能も先進的」
と説明。
 フィリピンとどのような共同訓練を実施するかにもメッセージが込められるはずと考え、注視しているという。

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◆解説◆
 スービック湾はマニラから北に約100キロメートルの、ルソン島中西部にある湾。
 米国は1884年から、第二次世界大戦中に日本に占領された時期を除き、1992年までスービック湾に築いた海軍基地を利用した。
 同基地はアジア最大の米海軍基地だった。

 カムラン湾は、南シナ海に面し、戦前のフランス植民地時代から軍事拠点として利用された。
 ソ連(ロシア)は1979年から2002年まで、カムラン湾を太平洋艦隊の基地としていた。
 カムラン湾は良港として古くから評価されており、日露戦争時には日本に向ったバルチック艦隊も、同港に帰港している。

 冷戦時代、スービック湾の米軍基地もカムラン湾のソ連軍基地も、中国を「締め上げる」存在だった。
 特にカムラン湾の場合については、中国が「ソ連軍やベトナム軍の攻撃対象になる」として広西チワン族自治区のインフラ建設にブレーキをかけるなど、改革開放の経済政策に相当に大きな影響が出た。

 中国の国防関係者にとって、スービック湾とカムラン湾は、「敵側軍事拠点」として強い印象を持つ地名だ。
 それだけに、海自の艦船派遣については、ことさらに神経質になると考えられる。



TBS系(JNN) 4月3日(日)18時54分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160403-00000025-jnn-int

海自潜水艦が15年ぶりフィリピン寄港、中国けん制
 
 海上自衛隊の潜水艦が15年ぶりにフィリピンに寄港しました。
 南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いもあるとみられます。

 3日、フィリピンのスービック湾に寄港したのは、海上自衛隊の練習潜水艦「おやしお」です。
 海上自衛隊の潜水艦がフィリピンを訪れるのは、2001年以来、15年ぶりです。
 若手幹部自衛官が乗り込む練習航海の一環で、フィリピンに続き、ベトナムのカムラン湾にも初めて寄港する予定です。

 フィリピンとベトナムは、南シナ海の南沙諸島などの領有権をめぐり、中国と激しく対立しています。
 海上自衛隊には今回の寄港を通じて両国との連携を強化することで、南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いもあるとみられます。(03日19:46)



レコードチャイナ 配信日時:2016年4月8日(金) 0時10分
http://www.recordchina.co.jp/a132829.html

日本の護衛艦「いせ」がフィリピンへ寄港、南シナ海でけん制

 2016年4月6日、中国紙・光明日報は日本メディアの報道を引用し、海上自衛隊の大型ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」がフィリピンへ寄港すると伝えた。

 海上幕僚監部によると、インドネシア海軍が今月中旬に主催する多国間共同訓練に参加するため、海上自衛隊の大型ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」が今月中旬にもフィリピンのスービック港に寄港する予定だ。
 これには南シナ海での存在感を高め、中国をけん制する狙いがあるという。



東洋経済オンライン  2016年05月24日 ギャレス・エヴァンス :元オーストラリア外相
http://toyokeizai.net/articles/-/118366

中国の南シナ海進出が招いた豪州の政策転換
「国際的なルール」は全関係国を拘束すべきだ

 南シナ海で中国が人工島を造成し、軍事拠点化を進めていることで、豪州は政策変更を余儀なくされた。
 同国の新防衛白書で、「ルールに基づく国際秩序」の維持が優先事項の中核に据えられたのだ。

 一国の防衛関係の綱領にこうした文言が記載されるのは異例だ。
 しかも、これまで米国の政策を後追いしてきた豪保守政権の手によって書かれたのだから、驚きに値する。

 豪州は米国という戦略的パートナー、中国という経済的パートナーとの間でゼロサムに陥る選択だけは避けたいと考えている。
 そのため防衛白書の文言の選び方には、かなり工夫が凝らされている。

 特徴は、すべての関係国・地域に対して拘束力を発揮するというものだ。
 米国の政策立案者は他の多くの国とは異なり、こうした点に本質的な魅力を感じない。
 口ではこうした概念を褒めそやすが、国際的なルールに縛られようという発想は、米国当局のDNAには含まれていないのだ。
 その最たる例は2003年のイラク侵攻だ。
 さらに米国は、南シナ海で非常に重要な意味を持つ、海洋法に関する国際連合条約 (UNCLOS)にも加盟していない。

■中国は4つの方向転換を迫られる

 とはいえ、豪州の防衛白書が直接的に牽制しているのは中国だ。
 南シナ海で起きていることが何であれ、ルールに基づく国際秩序が尊重されているとは断じて言えない。
 この方針により、中国は以下の4点で方向転換を迫られそうだ。

★.1点目は
 南シナ海の西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島などで領有権を主張している島々について、中国は個別に切り分けて対処する必要が生じそうなことだ。
 さらに領有権の主張が他国と重なった際、国際的な仲裁機関を通じた解決が望まれることになる。

★.2点目は
 中国が独自の基準線として、その内側の領有権を主張している「九段線」の放棄を迫られることだ。
 また放棄のみならず、
 「歴史的水域」「伝統的な漁場」といった確たる根拠のない主張
も撤回する必要が出るだろう。

★.3点目は
 中国が岩礁や砂州で実施している埋め立てについて、自制を求められることだ。中国はこれらの場所に、滑走路など軍事利用が可能な施設を建設し、隣接する水域や空域から他国を閉め出そうとしている。
 今後その推進にも、一定の制約がかかる可能性がある。
 国際法でそうした建造物が認められることはあったが、小規模の施設ばかりだった。
 しかもこれまで軍事利用が認められたことはない。

★.4点目は
 外国の航空機や船舶による情報収集活動を認める姿勢が中国に求められることだ。
 中国は今それを禁止しているが、その根拠は希薄といわざるをえない。

 中国が一般に受け入れられている国際ルールに従って行動することを拒み続けるかぎり、
 他国には中国を押し返す大義名分があることになる。
 米国が実施している航空機の通過や、「航行の自由作戦」のような船舶による演習はこれに当たる。

 豪州など他国も個別にこうした行動に出ることが考えられる。
 中国は商船の航路や民間航空会社の航路を妨げる意図はないと主張しているが、これは信じるべきだろう。
 というのは、その約束を違えると、自らの顔に自らの手で泥を塗ることになるからだ。
 しかし中国の態度は、地域や世界の国々に我慢の限界を強いていると言える。

■豪州自身も態度を変えねば

 「ルールに基づく国際秩序」を政策の中心に据えれば、豪州自体もその方針を実行する責任を負う。
 これまで豪州は、国際司法裁判所や国際的な紛争解決機関の場に出ることを極力避けてきたが、そうした姿勢を見直す必要が生じるだろう。

 この不完全な世界では、いい加減な行動を取ったとしてもかなりの部分が許容されてしまう。
 だが、偽善というものは必ず自身に跳ね返ってくる。
 他国に「ルールに基づく国際秩序」を説教しておきながら、そうしたルールの一部を自国が守らないようでは、みっともないと言わざるを得ない。

(週刊東洋経済5月21日号)





【2016 異態の国家:明日への展望】


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