2016年3月1日火曜日

適正人口への長い道のり(1):「人口は増えれば増えるほどいいものではない」という当たり前なことが理解されない!

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 過剰人口に苦しむ日本は生態的に対応している。
 少子化である。
 生物本能は「無限に増えれば万々歳」などといった幻想に惑わされることはない。
 経済的評価から人間を単純に「馬力」に換算してしまう論理からは何も生まれない。
 人間は民族は「馬力の数値」ではない。
 増えすぎたものは減り、減りすぎたものは増える。
 生物の絶対的第一法則は「種の保存」である。
 馬力数値ではない。
 不要な増殖は種の滅亡を招く。
 少子化は日本民族の生態的な自己保存の発現
とみていいだろう。
 いまのところの目標は「2050年に一億人」だろう。
 ただ増えればいいといった、安易は発想はやめるべきである。
 減りすぎたと生態系が感じたら必ず増加に転じる。
 「種の保存」とはそういうものである。


サーチナニュース 2016-03-01 08:13
http://news.searchina.net/id/1603657?page=1

人口が減少する日本、
国力は今後も低下を続ける可能性=中国報道

 少子高齢化社会を迎えた日本で人口減少が始まっている。
 人口減少がもたらす危機はかねてより指摘されていたが、今なお歯止めをかけることができていない。
 このままの状況が続けば、社会を支える側の人口よりも社会によって支えられる側の人口のほうが圧倒的に多くなり、社会を維持することは困難になるだろう。

 人口をめぐる難題に直面しているのは日本だけではない。
 これまで人口抑制策として一人っ子政策を実施してきた中国は、日本よりも速いペースで高齢化社会を迎えると予測されている。
 中国メディアの中国日報はこのほど、中国より一足早く高齢化社会を迎えた日本の状況を解説し、
 「子どもの数を増やすことが国を救うことにつながることは知られていても、それを実施するのは簡単ではない」
と論じた。

 記事は日本で人口減少が進んでいることについて、
 「もしこのままのペースで人口が減少すれば200年後には日本の人口は1400万人となり、300年後には450万人以下になる」
と指摘。
 日本の人口は2008年の1億2800万人をピークに年々減少しており、15年9月1日時点で1億2687万人となっている。

 人口減少がもたらす最も大きな問題は「労働力不足」だ。
 国力を表す1つの指標である国内総生産(GDP)も、働き手が減少すれば維持不可能であることは容易に想像がつく。
 記事はさらに、日本政府も人口減少を食い止めようとしているとし、安倍晋三首相が希望出生率1.8を目標としたことを紹介。
 だが、出生率が2.07と劇的に回復しなければ、50年後に人口1億人を維持できないとの報告も存在する。

 ほかにも日本が抱える問題として、女性にとって育児環境が理想的でないこと、人口が大都市に集中していることなどを挙げ、日本が人口を維持することは相当難しいと指摘。
 人口減少によって日本の国力は今後も低下を続ける可能性があるとの見方を示している。

 記事が指摘するように、日本という国の将来を考えれば多くの子どもが生まれてくる必要がある。
 しかし1人の親、1人の子どもの将来を考えた時、果たして明るい未来は待っているのだろうか。
 誰もが安心して子育てできる社会を築くにはどうすればよいのか、早急に答えを出さなければならない問題と言える。



現代ビジネス 2016年03月01日(火) 舛添 要一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48051

ついに日本の「人口」が減少し始めた
〜週休3日も視野に、
抜本的な発想の転換を

■これからの日本が直面する問題

 2月26日、2015年国勢調査の人口速報値が公表された。

 2015年10月1日時点で、日本の総人口(外国人を含む)は1億2711万47人であり、5年前に比べて94万7305人(0.7%)減少した。
 日本の人口が減るのは、1920年の調査開始以来、初のことである。
 世界での順位は10位と変わっていないが、これまでの予想通り、人口減少局面に突入したことが数字で明確に知らされることになった。

 私は、いわゆる「団塊の世代」、つまりベビーブーマーであるが、兄弟の数が5人以上というのは普通のことであった。
 学校では、1クラス60人などといった状態で、いつも競争を強いられていたような記憶がある。
 人口減少社会が到来したというのは、その時代を生きてきた者にとって、まさに隔世の感がする。

 戦後の日本は、1億人が生きていくために、懸命に経済成長を追求した。
 パイを増やし、富を増やすことに明け暮れたと言ってもよい。
 頑張って働いて豊かになり、マイホームを購入することが皆の夢であった。
 住宅の供給が需要に追いつかなかった時代に、「多摩ニュータウン」のような巨大な団地が誕生したのである。

 ところが、今や人口が減少する時代となった。
 少子化で、出生数よりも死亡数の方が多くなり、人口の自然減が拡大していく。
 住宅が不足するどころか、過剰な状態になっていく。
 たとえば、一人っ子どうしが結婚し、あらたにマイホームを作るとすると、双方の親が死んだときには、親の家二軒が余ることになる。

 全国の「空き家」は今や820万戸にのぼり、その1割の82万戸が東京にある。
 東京都も、空き家対策に本格的に取り組む体制を整えたが、これこそ、人口減少社会が直面する象徴的な問題である。

 空き家を地域社会の重要な資源と考えて、コミュニティの活性化に役立てる視点が必要である。
 行政が関与して、民間と共同で、公共の利益のために使う道を模索すべきである。

 都では、介護や保育に携わる職員用の住居として借り上げることを考えている。
 また、介護用のグループホームにリフォームするのも一案である。

 先日、小池百合子会長に率いられる日本ウエイトリフティング協会の代表の方々が都庁に来られ、三宅義信、三宅義行、三宅宏美さんたちが、練習場が不足している現実を説明してくれた。ウエイトリフティングに限らず、様々なスポーツの練習場として空き家を活用することも一案ではなかろうか。

 いずれにせよ、空き家という貴重な資源を、朽ち果てるままに放置する手はない。

■人口減少社会への対応を誤らないために

 国勢調査の速報値に戻ると、人口増となったのは、沖縄県(3.0%)、東京都(2.7%)、愛知県(1.0%)、埼玉県(0.9%)、神奈川県(0.9%)、福岡県(0.6%)、滋賀県(0.2%)、千葉県(0.1%)の8都県である。

 東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口は3613万人で、全国の28.4%、つまり4分の1以上を占めている。

 逆に、39道府県では人口が減少しており、減少数は、北海道(約12万3千人)、福島県(約11万5千人)、新潟県(約6万9千人)の順に多い。
 減少率で見ると、秋田県(−5.8%)、福島県(−5.7%)、青森県及び高知県(−4.7%)の順である。
 大阪府は、前回と比べて0.3%減の約884万人となり、68年ぶりに減少となっている。

 東京の人口は1351万4千人であるが、日本の人口の3割近くが東京圏に集まっている現実に対して、今後、東京への一極集中がますます問題視されそうである。
 しかし、どこに住むかは憲法で定められた個人の権利であり、個々人が自由に決めるものである。

 都市の利便性が人々を惹き付けることは言うまでもないが、都市にはまた、環境問題をはじめ様々な課題がある。
 それぞれの地方には、自然をはじめ食文化など優れた点が多々あり、その魅力にとりつかれる人々も多い。
 東京と地方に2つの住処を持つという選択肢もありえよう。

 多様な生き方、住所の選び方を可能にするような政策を考えないと人口減少社会への対応を誤ることになってしまう。

 地方創生政策の一環として、政府は消費者庁、文化庁などの地方移転を提案しているが、それが地方の活性化という目的に沿うかどうかは疑わしい。
 政府機関が地方へ移転することによって、行政効率が低下したり、国際社会への発信能力が落ちたりすれば、日本全体にとってマイナスである。

 陸海空の交通網を整備し、人々が自由に、しかも広範囲に移動できるような国にしていけば、別荘を持つことが普通のような時代がくるかもしれない。
 しかし、そのためには、仕事の生産性をあげ、効率よく富を生み出し、仕事以外の時間を大幅に増やすしかない。

 私が、「ワークライフバランス」を強調し、週休三日制を提唱しているのは、理由のないことではない。
 人口減少社会には、抜本的な発想の転換で対応するしかあるまい。



現代ビジネス 2016年03月02日(水)  週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48046

「長生き」がリスクになる社会
〜すぐそこにある「老後破産」の危機
100歳まで生きると、お金はこんなにかかります

 長生きすることが、逆に人生のリスクになる
 ――なんとも皮肉な話だが、それが現実だ。
 おカネの知識をきちんと身につけ、ことあるごとに資産内容を見直さないと、「老後破産」は他人事ではなくなる。

■2000万円では足りない

 神奈川県川崎市に住む寺島健三さん(83歳、仮名)が、生活資金について深刻に悩み出したのは1年前のことである。

 「退職後は取り立てて贅沢をしてこなかったし、定年時にはそれまでの貯えと退職金で2400万円はあったので、それを切り崩していけば老後の生活資金としては十分だと考えていました。
 ところが昨年来、妻の認知症が進んでこれまでいた施設を出なければならなくなった。
 結局、より料金の高い施設に入ることになり、年金だけでは入居費が払えないので毎年の赤字額は100万円近くになっている。
 幸いにして私はまだ健康ですが、このままいくとあと5年もすれば貯金が底をつく。
 たいした稼ぎもなかったが40年間まじめに働いてきた末に、こんな老後が待っているとは思ってもみなかった」

 65歳まで生きた女性の半数、男性の3割近くが90歳以上生きる時代。
 今後の医療の進歩を考えると近いうちに高齢男性の4割、女性の6割が90歳以上、100歳近くまで生きる日が来る。

 長生きがリスクになる。
 本来、幸せなはずの長寿が、不安の材料になってしまうのはとても悲しいことだ。
 冒頭の寺島さんのような辛い状況に陥らないためには、まずは自分の人生でこれからどれくらいの出費が待っているかを確かめておく必要がある。

 「月々20万円程度の年金と2000万円の貯金では100歳まで生きることなど、とても不可能」と言い切るのは平賀ファイナンシャルサービシズの平賀初惠氏だ。

 「長く生活していく上で、どうしてもおカネは出ていく。
 たとえ3000万円、4000万円の貯蓄があっても、赤字家計であれば、いつか貯えが底をつくに決まっている」

 一体どれくらいのカネが老後資金として必要なのか。
 ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏が解説する。

 「夫婦二人の生活であれば、切り詰めれば月に12万〜13万円の出費でも最低限の生活は営めます。
 ただ、それだけですと海外旅行はもちろん、おカネのかかる趣味を楽しむことはできません。
 少しは余裕のある生活がしたければ25万〜26万円くらいの出費を覚悟しなければなりません」

■90歳で貯金がなくなる

 一方で、収入となる年金の受給額はどうだろうか。

 「厚生労働省が1月29日に発表した平成28年度の年金額を見ると、夫が元サラリーマンで妻が専業主婦という平均的な世帯は、厚生年金が月額22万1507円となっています」(紀平氏)

 仮に毎月の出費が26万円、受け取る年金が22万円として計算してみよう。
 毎月の赤字額は4万円。年額にして48万円だ。
 年金が満額支給される65歳から100歳まで生きるとして、35年間、毎年この額の赤字が出れば、合計で1680万円の赤字になる。

 ただし、これは病気で入院したり、想定外のアクシデントが起きたりしなかった場合。
 30年もの長い老後生活、不測の事態が起きずに、寿命を全うすることのほうがむしろ稀だろう。
 例えば足腰が弱ってきても自宅に住み続けることになれば、バリアフリーにするためのリフォームが必要になる。
 一般的な改修費用は約300万円だ。

 加えていざというときの介護費用として、少なくとも500万円の予備費を用意しておきたい。
 合計すると赤字の総額は2480万円—。

 80歳で死ぬなら、足りていたかもしれない。
 しかし、100歳まで生きるには足りない。
 そんな人は、この国にゴマンといるはずだ。
 いやむしろ、足りないほうが、多数派だろう。

 サラリーマンであれば、退職金が大きな老後の資産となる。
 従業員が100人以上の企業に勤務していた人の退職金と企業年金の合計金額の平均は、約2200万円。
 実際は税金もかかってくるので、受け取る額が2000万円だと考えると、100歳まで生きる場合の収支は、やはりマイナス480万円にも上る。

 このケースだと仮に85歳に亡くなっていれば、240万円の遺産を遺せるはずだった。
 長生きしたばかりに破産してしまう典型的なパターンだ。

■小金持ちが危ない

 年金の支給額が多い「小金持ち」家庭こそが、老後破産の予備軍と言われているのをご存知だろうか。

 渡辺健司さん(77歳、仮名)は現役時代は大手メーカーに勤め、年収は700万円あった。
 夫婦合わせた年金も32万円と、それなりの生活を送るのに十分な額を受け取っている。

 「それでも、家計は火の車ですよ。
 中途半端に余裕があるから、妻は友達としょっちゅう韓国や台湾に旅行に出かけていますし、私もしばしば息子の家族が住む九州へ遊びに行く。
 最近は孫の教育資金として100万円を譲渡しました。

 そうこうするうちに、退職時には3000万円あった貯金も、気づいてみたら700万円くらいになっている。

 夫婦ともに健康なのはいいのですが、このままお互い100歳まで生きるとなると、どこかで破産することは目に見えています。
  いざ、老人ホームなどの施設に入るということになっても、妻がそれなりのグレードのところでないと納得しないでしょう。財布の紐を締めようと思うのですが、長年の浪費癖はなかなか直せなくて……」

 実は渡辺さんのような比較的恵まれた家庭でも、老後資金が底をつくケースは多い。
 自分が長生きするかもしれないとぼんやりとはイメージしていても、実際に自分が100歳まで生きた場合の収支を試算している家庭は意外に少ないのだ。

 千葉県勝浦市に住む水口靖さん(71歳、仮名)とその妻は、「月12万〜13万円もあれば十分」だという。
 水口家は自営業だったので、基本の年金は国民年金の13万円。
 これに共済年金の5万円を加えて月18万円だが、毎月貯金ができるという。

 「10日分の献立を考えてまとめて食材を買うので無駄もなく、食費は一日1000円くらい。
 出ていくおカネで大きいのは自動車の維持費くらいのものですかね」

 年金の受給額が少なくても水口さんのように赤字を出さない生活をしていれば、長寿はリスクにならない。
 むしろ預金額は増えていくので、病気になったときの不安も軽くなっていく。

 気をつけさえすれば、老後の生活は現役時代よりおカネがかからないものだ。
 100歳まで生きることを前提に、夫婦で老後のマネープランを見直してみよう。
 そうすれば長生きすることへの不安は薄らいでいく。

■思わぬ出費、認知症にどう対応するか

 認知症保険に入るべき?

 予想外の出費は老後の収支を大きく狂わせる。
 なかでも最も予想しにくいのが介護費用だ。
 とりわけ認知症の場合は金銭面・精神面共に負担が大きい。

 もし親や配偶者が認知症になった場合、どうするか。
 認知症の患者をいちばん安く介護する方法は、もちろん在宅での介護だ。
 民間の見守りサービスなどを利用しても月額3万〜5万円で収まるので、年金で賄える。

 ただし言うまでもなく、介護する側の負担はとてつもなく大きい。
 息子や娘夫婦など、近くに手伝ってくれる人手があればまだいい。
 しかし周りに助けてくれる人もおらず、介護の負担で共倒れになってしまえば、元も子もない。

 では、介護施設を利用する場合はどうか。
 高齢者住宅・老人ホームに詳しい経営コンサルタントの濱田孝一氏が語る。

 「入居一時金のない介護付き有料老人ホームに入った場合、毎月の支払額は20万円を超えるケースが多い。
 さらに介護食などを頼むと月1万5000円程度の追加料金を取られる。
 他にも個別の外出や指定回数以上の入浴を希望すれば、追加料金が発生します」

 前章で見た通り平均的な年金の受給額は22万円程度。
 介護付き有料老人ホームに配偶者を入れたら、追加料金を支払わないとしてもそれだけで年金が吹っ飛ぶことになる。
 濱田氏が続ける。

 「一方、入居一時金を払う有料老人ホームの場合、入居時に保証金と一緒に償却期間分の家賃を前払いすることになります。
 もし長生きをして、償却期間が過ぎてもその施設に住み続ける場合、家賃は払わなくて構わないので結果としてお得だとはいえる」

 ただし、入居後3ヵ月以上経ってからホームが気に入らなくなって退去した場合、一時金の保証金部分は戻ってこないから注意したい。
 また一概には言えないが、入居一時金を払う施設は比較的高級な施設が多い。
 さらに認知症の問題行動が目立つようになると退去させられる場合もある。

 認知症の親や妻を抱えて長生きしても比較的安心できる施設が、特別養護老人ホームだ。
 だが、こちらは全国で50万人もの高齢者が入居待ちをしている「狭き門」。
 介護保険料の自己負担と家賃を合わせて実質負担は7万〜15万円くらいで有料老人ホームよりは割安だが、入居待ちしているあいだにも、認知症は進行していく。

 そしてもちろん、「自分自身が認知症になる」という可能性も、考えなければならない。
 そこで登場したのが、認知症保険である。
 これは民間の介護保険の一種で、所定の要介護状態になった場合に給付金が下りたり、1ヵ月の介護サービス費が一定額を超えるとおカネが戻ったりする仕組みである。

 認知症患者の介護費用は、同じ要介護度でも非認知症患者のそれと比べて高額になる傾向がある。
 そのような高額負担に耐えられないのではないか、という不安に応える保険だが、加入する価値はあるのだろうか?
 ファイナンシャル・アソシエイツ代表の藤井泰輔氏が解説する。

 「最近やたらとテレビや新聞で、シニア世代に狙いを定めた保険商品を宣伝していますが、私は入る必要はないと考えています。
 親や周囲に認知症の人がいると心配になる気持ちもわかりますが、そもそも公的な介護保険の条件も頻繁に変更されているような状況で、保険会社も介護保険に関しては試行錯誤の段階です。
 それならば、払うことになる保険料を現金で貯金しておいて、できるだけ健康的な生活を送るよう心がけるほうが現実的でしょう」

 ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏も認知症保険の加入には反対の立場だ。

 「保険料が割高なうえ、介護認定の基準が官民で異なっており、公的な介護認定を受けていても保険金がもらえないケースがあります。
 そんな保険に入る意味はない」

 今後、ますます認知症患者の増加が見込まれる日本で、患者にとってお得な認知症保険が発売されれば、保険会社のほうが潰れるのが道理だ。

 高齢化社会では、もはや避けられない病、認知症—この病に備えるには、気休めに保険に入るよりも、いざというときのために資金を確保しておくことが肝要なのだ。

■年金だけではど貧乏に!
 持ってる資産どうするか
  国債はリスクが少ない

 年金の不足を補うための貯金や退職金は、老後生活の大切な虎の子。
 それをどのように扱うかによって、晩年の資金計画は変わってくる。
 平賀ファイナンシャルサービシズの平賀初惠氏が語る。

 「大きな貯蓄を持っていなくても、100歳まで安心して生きるための工夫はできる。
 リスクを取りすぎず、うまく運用すれば資産は『枯渇しない財布』になります」

 定年退職するまで大きな資産を運用したことがなかったという人も多いだろう。
 そういう人が一番に気をつけたいのは、証券会社の「無料相談」に近づかないことだ。
 経済評論家の山崎元氏が忠告する。

 「退職後の高齢者に近づいてくる証券マンには必ず下心があります。
 彼らにとって大切なのは客にいかに儲けを上げさせるかではなく、客からどれだけ手数料をむしりとれるか。
 高齢者にありがちな落とし穴は、暇で寂しいから話し相手になってくれる証券会社の相談員を、『この人はいい人だ』と信頼してしまうケースです。

 しかし金融商品を買うときは、購入窓口と相談相手は別にするというのが鉄則。退
 職金が振り込まれた銀行の窓口で資産運用を相談するなんて、もっての外です」

 現役時代にバリバリと働いていた人ほど、「自分はメーカー出身だから、シャープの技術力はわかっている。底値で株を買ってみせるよ」などと相談相手に見栄をはって、大損をする場合も多い。
 くれぐれも金融商品を買うときには、金融業界に詳しい親戚や友人など、売り主ではない人の意見を聞くようにしよう。

 では、定期預金、外貨預金、株、投資信託、終身年金保険、金、不動産など金融商品は無数にあるが、どのような基準で選べばいいのだろうか。

 「なにか一つの商品やサービスで老後の不安を解消できると考えてはいけません。
 一ヵ所に資金を集中させてしまえば、不測の事態が起きた場合、取り返しのつかないことになります」(山崎氏)

 老後の資産運用で大切なのはリスクをできるだけ抑えること。
 マイナス金利で定期金利にしてもほとんど利子がつかない時代には、個人向け国債の「変動10」がオススメ。

 「1万円から購入でき、半年ごとに利息が受け取れる。
 金利は変動しますが、下限が0・05%に設定されているので銀行の定期預金よりおトクです。
 しかも元本割れがないので、こんなに安全な商品はない」(山崎氏)

 当面使う予定の資金は普通預金で銀行に入れておき、
 残りの資産の大半は国債にして持っておくのが得策だ

■堅実に長期投資を

 まだ75歳以下で10年以上運用する時間的余裕がある人は、資産の一部をリスクのある商品にしてリターンを追求するという選択肢もある。

 「オススメできる商品は主に2つです。
 日経平均に連動するインデックス・ファンドと
 先進国の株価に連動するインデックス・ファンド
の2本です。
 国債を買った残りの資産を半分ずつにして、これらの投資信託を買えばいい。
 インデックス・ファンドは購入手数料や信託報酬が低く抑えられているので、長期投資に向いています」(山崎氏)

 年金生活者にとって怖いのは円安やそれに伴うインフレである。
 現役世代であればインフレになると給料が上がるが、年金の上昇スピードは比較的遅いからだ。

 しかし日本株やドル建ての投資信託を持っていれば、円安にも対応できる。
 円安になれば日本企業の業績が上がるし、外貨建ての先進国株の価値も上がる。
 為替リスクをヘッジする上でも上記のインデックス・ファンドはオススメだ。
 これらの金融商品は証券会社の窓口で扱っている。

 持ち家がある人は、それを資金に換える方法もある。
 家を担保に融資を受ける「リバース・モーゲッジ」という仕組みだ。
 住み慣れた家に住みながら、現金を得られるので、家を遺す必要のない人にはうってつけだが、融資を受けられる年齢制限があるので確認が必要。
 最悪の場合、家を取り上げられ、住むところを失う可能性もある。

 100歳まで生きると考えるなら、
 むしろ家は売ってしまい、
 コストのかからない小さなマンションに引っ越して、残りのおカネは投資に回すほうが賢明
かもしれない。

 100歳まで生きるとなると、投資の複利効果も大きなものになる。
 資産が枯渇するリスクを回避するためには、堅実に長期投資するのが、ベストの選択だろう。

「週刊現代」2016年3月5日号より



JB Press 2016.3.2(水)  末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46189

周回遅れがお好きな日本、密かに移民政策を実施
お手本となったシンガポールはすでに移民を制限へ

 「いらっしゃいませ。冬は日本酒が一番!身体もポカポカ、温まりますよ」
 お正月、関西空港の免税店でそう声をかけられた。
 日本酒は海外でも大人気だが、筆者はお酒は、からっきしダメで買う気も飲む気も、さらさらなかったが、その客引きのスタッフの屈託のない笑顔に足を止めた。
 名札には「出口」と書かれており、もう1つ、「実習生」とも書かれていた。
 出口メリーさんの出身はフィリピン。
 日本人男性と結婚して20年以上経つという。

 陽気で天真爛漫なラテン系気質で知られるフィリピン人らしく、その笑顔は一際目立ち、長年の日本在住で日本語も流暢だ。
 関西空港ではこれまで、中国人や韓国人観光客対応の外国人スタッフが勤務していたが、接客の東南アジア出身のスタッフは初めて。

■外国人メイド、大阪府でも

 これも、爆買いの中国や韓国以上に“親日”で急増するASEAN(東南アジア諸国連合)地域からの観光客への対応とも取れるが、国家戦略特区の大阪は、「外国人メイド特区」に指定されており、今夏にも3月の神奈川県に次いで、外国人による家事代行サービス業がスタートする。

 「外国人技能実習制度」拡大による今年から本格開始の観光業分野での外国人実習生登用の関連もあるが、さらに外国人メイドサービス実施の地ならしとも取れる日本流接客サービスやおもてなしの「日本流儀の実地訓練」を内外にアピールするものだ。

 現在、日本の総人口は、1億2681万人(総務省、2016年2月1日現在の概算値=同年2月22日発表。前年同月比で18万人減)。

 一方、在留外国人は約213万人(法務省、2015年3月発表=2014年確定数)で、
 トップは中国人(約65万人)で、
 韓国・朝鮮人(約51万人)、
 フィリピン人(約22万人)
と続き、
 日本の総人口に占める在留外国人の割合は1.6%。

 人口に占める外国人の割合は、OECD(経済協力開発機構)主要加盟国中、トップはルクセンブルク(44%)、スイス(22%)と続き、ドイツは8位(9%)で米国は13位(7%)、日本は約2%で25位とほぼ最下位だ。

 日本の場合、在留外国人数の在留資格等別では、
★.「永住者」(特別永住者含=サンフランシスコ講和条約に基づき、朝鮮半島、台湾から戦前・戦中に日本に移住するが、日本国籍を剥奪された人に対し、平成3(1991)年に与えられた資格。
 同取得権は子孫に至るまで無期限に供与される)
 約104万人で最も多く、
全体の約半数を占め、在留資格を得た外国人の2人に1人が永住権を保持していることになる。

 通常、国際的には長期にわたる居住は「移住」と見なされ、1年以内居住する出稼ぎ労働者も「移民」として扱う場合が多く、
 国連でも「1年以上にわたり外国に在留する者」を移民と定義している。

 今回解禁する外国人メイド(フィリピン人)の雇用期間は最長3年で、さらには、日本の在留資格の中で永住者以外で、日本人と同様の就労資格の自由など幅広い権利が与えられる
 「日本人の配偶者等」
 「永住者の配偶者等」
 「定住者等」
を考慮すれば、日本政府はこれまで移民政策は存在しないと表向きには主張してきたものの、国際基準からすれば、彼らはれっきとした「移民」に相当する。

日本政府の移民の定義は、「移民政策を敷かない」という前提の下、これまで国内外に明確にされてきていないが、
 移民とは将来的に日本国籍を得ようとする「永住を前提とし受け入れる外国人」(法務省関係者)
とされており、これらの認識からも、日本では実質、移民政策が存在してきたと言えるだろう。

 さらに、日本ではこれらの外国人以外に、
★.「技能実習生(技能実習1号、2号)」という在留資格がある。
 日本の製造業や農漁業、繊維業分野で発展途上国の若年労働者に技能と経験を研鑽してもらい、ひいては祖国の産業発展に一役買ってもらうという途上国支援だ。

■失踪者は年間1000人以上

 しかし、本音のところは、日本人が敬遠する3Kの仕事を彼らに“肩代わり”してもらう、いわば「人手不足対策」の一環。

 四半世紀も続く国策だが、国際的には、米国や国連、アムネスティ・インターナショナルなどから、「強制労働や人身売買に相当する」と非難され、年間1000人以上の失踪者が出ていることもあって、その廃止が求められてきた。

 そうしたなか、安倍晋三政権はアベノミクス第3の矢として「日本再興戦略」を策定し、改訂版で「外国人材の活用」を盛り込み、認定要件の緩和などを含め、いわゆる3K分野を中心に対象職種拡大を行うとともに、このほど、実習期間(現行最長3年)の延長(5年)を決め、外国人技能実習制度の見直しを決めた。

 現在、日本で就労する外国人は約80万人で(法務省調べ)、
(技能実習生など以外)外国人労働者は高度技能人材に制限されているが、
政府は毎年、20万人の移民受け入れを画策しており、
 「高度人材だけでは、間に合わない」(政府関係者)ことから、これまで事実上、禁止していた単純労働者も受け入れる態勢を整えていく方針だ。

 背景には、世界一の超少子高齢社会の日本が抱える総労働力人口の減少に伴う経済成長鈍化に加え、社会保障費拡大や税収減、さらには財政健全化への悪影響への懸念があり、移民受け入れ拡大の切羽詰った挙句の歴史的な“国策転換”になる。

外国人技能実習生は現在、国内に約17万人(法務省調べ。中国、ベトナムが全体の8割強。ほかインドネシア、フィリピン、バングラデシュ、ネパールなど)おり、もともと途上国支援だった同制度はいつしか、“先進国・日本支援制度”として、日本社会存続の労働力の要になろうとしている。

 2020年の東京夏季五輪開幕に(2022年の北京冬季五輪を見据え)国家威信を懸ける中、懸念される建築分野での人手不足解消にも実習生が一役買う。

 五輪開幕に間に合うように制度を見直すことで今後5年間(最長)建設作業員の雇用不足の穴埋めを担うことになっただけでなく、惣菜製造業や牛豚食肉処理加工業への登用も新規に決まり、今年度から人員が派遣される予定だ。

 さらに今後は、皆さんの身近な街の人気のコンビニ店長さんにも登用される方向で、日本の至る所で外国人お助けマンがお目見え、五輪開催も、日常生活も、もう今では外国人なくしては始まらず、その争奪戦もすでに始まっている。

 さらに外国人登用は、超高齢社会の日本で最も人材不足が深刻化する労働市場にも参入することになった。

■介護実習生、4月に第1陣

 他の業界と同様に、介護福祉の分野で外国人技能実習制度見直しによる対象職種拡大により、この4月から、同制度を使った新規システムの下、外国人介護士が派遣される見込みだ。

 雇用期間は最長5年で、「ある程度の日本語能力」が資格条件。
 4月には介護実習生の第1陣が来日予定で、中国やベトナムなどから、数百人が見込まれている。

 福祉人材センター・バンクの調べでは、介護市場での有効求人倍率は、約3倍。他業界で雇用状況が年々、少しずつ改善する一方、介護分野では人材不足が慢性化しており、今後は、出入国管理法の改正を行い、介護分野関連の在留資格も拡充する見込みだ。

 具体的には、日本の大学など介護福祉分野の養成機関で学んだ介護福祉士資格者には、資格の更新回数にかかわらず、専門人材としての在留資格を新たに認める方向で今後検討され、実現すれば、日本で長年にわたり就労が可能にもなる。

外国人介護士は現在、EPA(経済連携協定)下で、インドネシア、フィリピン、ベトナムから、約1500人の介護士候補生の研修生を受け入れているが、介護福祉士の国家試験に合格すれば、期限の制限なく継続して就労できる。

 しかし、高いハードルの国家試験などへの躊躇もあり、フィリピンなどからの研修生希望者は目標就労人数に達しないという現実にも直面。
 「人材不足解消には程遠い。今後、大幅に人員が拡大することも望めない」(介護福祉関係者)と人材不足はかなり深刻だ。

 その最大の理由は、低賃金。
 そのため、日本人で介護士の資格や経験があっても、介護分野で働かない「隠れ介護士」がかなりいると言われ、この隠れ介護士を職場に戻すことを考えなければ、根本的な人手不足の解決にもならない。


そんな現状下で実際、2025年前後、団塊の世代が75歳になると、現行制度維持で介護士を雇用しても、「30万人あるいはそれ以上の介護士が不足する」(前述の関係者)ことから、「将来的には介護士の半分、あるいはそれ以上を外国人が担うことを想定している」(厚生労働官僚)というから、驚きだ。

 国民の知らないところで、労働力不足の解消という大命題を公明正大に掲げる国策を背景に、実は進められているのが、外国人労働者雇用拡大による移民国家の創生である。

 そのモデルになっているのが、移民先進国のシンガポールや香港。
 今回の「外国人メイド解禁」も建前は、家事や育児などの過重労働負担から女性を支援し、就労を促す狙いと言うが、現存の家事代行サービスの需要はほんの2%。

■内閣官房参与が本音をポロリ

 利用料金が高額で、しかも日本人が消極的な外国人メイド解禁に踏み切ったのは、就労や子育て支援を最も必要な日本の中産階級の共働き世帯の救済ではなく、米国企業の要請で、ホワイトカラー族の駐在員への外国人メイド派遣を余儀なくされたからだ。

 国内への説明とは裏腹に、昨年、安倍首相の経済政策アドバイザーで内閣官房参与の本田悦朗氏がシンガポールに出向き、地元財界人を前に、外国人メイド解禁は「高度人材の外国人家庭支援」と言い切っていることからも明らかだ(参照)。

 日本人家庭でも(海外駐在経験者含)一部の富裕層の中で、今後、その利便性などで利用者は増えるかもしれないが、
 結局のところ日本政府は自国民の雇用環境の改善のためではなく、対日直接投資を促進するため、これまで厳しく統制してきた外国人単純労働者受け入れを急ぎ、“開国”に踏み切ったというわけだ。

 エクスパット(外国企業駐在員)に快適な環境を作り出すことで、経済を大きく成長させたシンガポールをモデルにしようというのだ。

 さらに、日本政府が外国人メイド解禁に踏み切った最大の理由は、高齢者介護の担い手を作り出すということ。
 以前、当コラムでも連載した(1、2、3)が、アジア諸国で突出して日本以上の超ハイスピードで少子高齢化が進んでいるのがシンガポール。

 公的な介護施設が少ないうえ、日本と同様、家族が介護の中心の担い手である現状から、「加速する高齢化への対応で、2030年には30万人以上のメイド(家政婦)が必要」(シンガポール首相府)と推測するほか、年金暮らしの高齢者単身世帯が外国人メイドを雇用する社会現象が顕著化。

 今では、10年以上前の2倍以上に相当する同世帯の約15%が1人以上のメイドを雇用しているという実態も浮き彫りになっているほどだ。


 さらに、日本政府はこのような外国からの単純労働者の受け入れだけでなく、シンガポールに見習い、外国からの高度人材登用拡大も視野に入れている。

 高度人材の要件に関する基準緩和が実施され、東京や大阪などの国家戦略特区での外国人起業促進や高度人材の積極活用のための新基準設定、さらには永住権取得要件の居住期間を5年から3年に短縮するなど、外国人高度人材の移民を促していこうと考えている。

 しかし、日本がお手本とする移民先進国のシンガポールは今、移民政策の修正を余儀なくされ、外国人受け入れの抑制政策を次々に打ち出すという、移民推進の国策転換を迫られている。

 次回はその実態を中心にリポートする。



JB Press 2016.3.10(木)  末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46249

自らの強みを否定するシンガポールの深い悩み
成長の原動力だった移民を排斥へ、日本は何を学ぶ?

 海外からメイドを受け入れるという形で始まった日本の実質的な移民受け入れ政策について前回はお伝えした。
 しかし、メイドを使うことすらほとんど経験のない日本にとって、移民の受け入れはハードルが高い。
 今回は移民によって国を発展させてきたとも言えるシンガポールの例を中心に、移民受け入れの課題を浮き彫りにしてみたいと思う。

 移民によって成長してきたシンガポールが、その政策を転換し始めたきっかけは、2011年の総選挙だった。
 与党・人民行動党(PAP)が史上最低の得票率に甘んじ、現職の閣僚が落選したうえ、さらに集団選挙区で史上初めて野党に敗北するという、“屈辱的な歴史的後退”を強いられたことが背景にある。

■与党の移民政策に国民が猛反発

 シンガポール国民が野党に支持を打ち出した最大の理由は、政府が進める「外国人移民政策」への反発と不満からだった。
 2006年から2011年の間、シンガポール人の増加率が約5%だった一方、外国人は63%まで急増し、2013年には外国人の割合が約43%までに膨れ上がった。
 この外国人の大幅増加と並行して、住宅や物価の急騰、さらには子供の教育機会の不公平性から、「外国人に職と所得、教育の機会が奪われている」といった長年の鬱憤と不満が与党への批判票に結びついたというわけだ。

 実際、シンガポールのタクシーに乗るたびに
 「こんな国があるか。
 国の統計は怪しい。
 実際は、外国人と自国民の数は今では同じ。
 不法滞在者を含めればいやそれ以上だ。
 MRT(地下鉄)に乗ると、中国人はあふれているし、バングラデシュに、フィリピン人。
 白人も我が物顔で、わけの分からない言葉が飛び交っている」
と年々、ドライバーの怒りは瞬間湯沸かし器を“沸騰”させているかのように上昇中だ。
 国民の怒りが爆発するなか、シンガポール政府は移民受け入れ規模縮小という移民政策の見直しを強いられた。

 2013年1月発表の人口白書で総人口の伸び率が縮小傾向のなか、「2030年までの人口想定値を690万人、外国人割合を45%に拡大見込み」とし物議を醸したが、同年2月の予算演説では一転して、2018年までの見通しとして、外国人労働者の急増抑制政策を発表したうえ、外国人雇用税の一層の引き上げと外国人雇用上限率の引き下げも追加抑制策として発表。
 さらに、各種ビザなど在留資格の認可、発給条件の引き上げも実施し、新規国籍取得や永住権の認定件数は減少。

 永住権の場合、2008年には新規永住権取得が約8万件だったのが、半分以下の3万件までに激減し、新規国籍取得も減少傾向にあり、2015年10月に発表された(同年6月現在)総人口数554万人のうち、シンガポール人が338万人、外国人が216万人で外国人が占める割合は約39%にまで減少している。

 シンガポール政府は国民の不満の頂点に達している不動産価格急騰の抑制にも着手した。
 購入後1年以内の転売には取引価格の16%の印紙税を新たに課すことで、投資目的の不動産売買を抑制し、不動産価格の上昇を食い止める措置を講じた。
 加えて、外国人の住宅取得では、現行の印紙税3%に加え、取引額の10%を新たに追加印紙税として支払うことを義務づけた結果、2011年には外国人の民間住宅保有率が約20%から6%にまで激減したとされる。

 また、シンガポール人の約80%が住むといわれる公営集合住宅(HDBフラット)購入でも、永住権取得者らが殺到したことで、販売価格が上昇。
 国民の怒りを買っていたが、月収などの制限を設定することで価格上昇に歯止めをかけた。

 「少子高齢化国家が外国人の移住を否定すれば、経済だけでなく、国家そのものが衰退する」(建国の父、リー・クアンユー元首相)
と説き、法人税を大幅に下げ、グローバル企業を誘致し、優秀な外国人を高給で登用する一方、低賃金で建設現場労働者や外国人メイドを厳格な管理のもと多く受け入れ、飛躍的な経済成長を続けてきたシンガポール。

 しかし、経済成長を成し遂げても、
 資産や所得の格差を示す指標のジニ係数で、「0.44(2014年)」(OECD調べ)
 日本の「0.32」より高く、
 先進国の中でも突出して貧富の格差が大きく拡大している。

 そうしたなか、当然、シンガポールの国民の不満は単純労働者に対してだけでなく、永住権を保有する高度技能者にも向けられている。
 彼らによって、大学入学や大企業への就職機会が阻害され、彼らへの政府優遇策を不公平と感じ、さらには彼らが永住権を保持しながら、兵役を回避するため国籍取得を拒んでいることへ怒りを爆発させているのだ。

 しかし、シンガポール政府が移民政策修正の舵を切り始めた本当の理由は、恩恵を受けるはずの国民全体の所得や生活水準が良くならなければ、外国人一辺倒の移民政策の批判の矛先が、政府に向けられるという危機感だけではない。

 出生率が日本より低く人口減少傾向にある自国民に反して、フィリピン、インドネシアなど多産の外国人と結婚し産まれた“新シンガポール人”の増加で、シンガポール人としてのアイデンティが消滅するとともに、
 中華系を中心とする純血シンガポール人による国家が、滅びるという恐怖心に苛まれている
からである。

■移民の子供急増でアイデンティティ崩壊の危機に

 実際、今のシンガポール人の結婚率の30%以上が国際結婚で
 「国家の安定発展には自国民同士の結婚を促す必要がある」(政府関係者)
と警戒している。

 一方、日本では人口減による労働人口縮小に伴う経済失速の打開策として移民政策を敷いて来たシンガポールをお手本に、今後、外国人メイド解禁や介護分野への外国人介護士登用拡大などで家事や育児、さらには介護の重圧で就労困難な女性の社会進出や復帰を促し、ひいては少子高齢化に歯止めをつけたいと考えているが、そう簡単にいくだろうか。

 シンガポールや香港の場合、女性の社会進出は拡大したが、肝心な少子高齢化は深刻化を増す一方だ。
 両国ともメイドの給与は国の最低賃金より低く設定され、仕事をしないよりは女性が仕事を持つことでメイドの給与を払った方が家計が潤う上、自分の自由時間が増え、さらに子供との時間も過ごす時間が拡大すると“一挙三得”だからこそ、外国人メイド雇用が飛躍的に伸びた背景がある。
 料金設定が低いということでごく普通の一般家庭で雇用できる利便性が女性の社会進出を後押ししたと言えるだろう。

 しかし、日本のように、住み込みで月額15万円から20万円、パートタイムで1時間2000円から4000円の高額な出費をしてまで、家を留守にして、他人に家の中の家事や育児を任せられる日本人女性がどれだけいるだろうか。
 日本の女性の家事レベルや潔癖・完璧主義は外国人に真似できるものではない。
 外国人メイドは日本で就労するのだから、日本語がある程度理解でき、日本流でしかも、日本人の顧客を満足させるだけのレベルの家事をこなせる高い教育レベルと学習能力を持った人材を連れてこないと斡旋企業の立場からいっても、長続きする収益可能なビジネス展開はできないだろう。

 インドネシア人とフィリピン人のメイド(住み込み)を雇用してきた経験から言わせてもらうと、家事を他人に任せるのは、相当な忍耐と努力、さらには妥協が伴う。
 人を教育して使う難しさはビジネスをしている人には理解できるかもしれないが、大きく違うことは仕事場はオフィスではなく、家の中だということだ。
 通常、日本人にとっては自分の家庭に入って仕事をしてもらうのは日本人家政婦に任せるのであっても一大決心だろうから、文化も習慣も、さらには宗教も違う外国人を雇用するのは、非常に難しいことだと思う。

■メイドが来る前に家を掃除する日本人

 海外でメイドを雇っている日本人の中には、「メイドが来る前に掃除し、きれいにする」(筆者の知人の米国人は反対にメイドが来る前に、あえて家の中を片づけないで、あえてちらかしっぱなしにする)といった人もいるように、日本人特有の完璧主義と羞恥心を取っ払わないといけない。

 家の中に入って家事や育児をしてもらうからといって、日本人のように人情や義理、恩義といった感情を共有したいと期待することは、双方がかえってストレスや誤解を招くことにつながる。
 彼らは、出稼ぎ労働者であるということだ。
 当初は、筆者も失敗の連続だった。
 「マダム、私はお金のためにここで働いている」
ときっぱり主張するフィリピン人メイドもいた。彼女らの主張は極めて実利的だ。

 そうでなければ、家族と離れて犠牲を払ってまで海外へ出稼ぎする必要はないのだから、当然だ。
 この点は、雇用主と使用人としてビジネスライクにメイドに接する経験豊富な英国人の友人が、しゃくだが、手馴れたもので上をいっていた。
 当然、メリットもある。
 最大のメリットは、仕事や自分、さらには家族との時間を十分に持つことができ、病気をしたときなどでも、家のことを心配しないで済む場合が多い。
 簡単に言えば、着かず離れずの微妙な力関係を持ちながら、ビジネスライクにつき合っていくことができれば、こんなに利便性のある助け人はいないかもしれない。

 要は、人間関係なので、相性の問題もある。
 最終的には、個人の資質や、経験、性格によると感じている。
 他人が家の中に入ることに馴れていない日本でメイド制度がうまく言ったら日本はきっと変貌するだろう。
 言い換えれば、今の日本社会にとっては、それほど、チャレンジングなものだということだ。
 それは日本が異質だと言っているのではなく、多くの筆者の友人が国籍にかかわらず
 「残念ながら、メイドで運が良かったことはない」
と口を揃えるように、”家庭内に他人が入る”ということの難しさを物語っているのだ。

 介護の分野でも課題は多い。メイドや外国人技能実習生の多くは、介護の専門知識や技能が身についていないだけでなく、母国で介護福祉サービスの公的な枠組みや概念が根づいていない場合も多く、出稼ぎ目的の人がほとんどなので、介護に対する意識が日本人介護士と比較し低い。

 そのため、どのようにして実習生の技量を高めるかが大きなハードルとなり、日本語や介護の能力が低い技能実習生を教育する日本人スタッフの負担を増やすことから、かえって、介護の質が落ち、結果的に利用者を追いやることにもなる。

 このように、外国人技能実習制度の介護分野への拡大には、現時点で課題が多く山積されているなか、真に議論すべきは、日本人介護士の賃金問題だ。
 賃金が低いため、介護士の資格や経験があっても、介護 施設で働く事を希望しないいわゆる「隠れ介護士」が多い。
 介護現場の人材不足は、外国人登用ありきで議論されるのではなく、そうした「隠れ介護士」を職場に呼び戻すことから始めるのが先決で、それが実行されない限り、人材不足の根本的な問題解決にはならない。

■安易な外国人活用は逆効果

 それどころか、人材不足解消で、外国人技能実習制度を拡大することは、かえって日本人介護士の賃金や待遇改善を先送りし、 結果的には日本人介護士の待遇がさらに低下し、人材不足を皮肉にも拡大する危険性をもはらんでいる。

 そもそも、外国人登用導入論の発端は、
 労働人口の減少で、人手不足に陥るからということからだが、本当にそうなのだろうか?

人口変動が経済成長の有無を決める最大の要因ではない。 
 イノベーションにより、労働力需要量を抑えることが可能になれば、
 当然、労働力供給量が減少した場合でも、人手不足を引き起こすとはいえない。

 その証拠に、日本の高度経済成長時代の総労働力は、年平均約1%しか上昇しなかった。
 言い換えれば、
 超少子高齢社会の日本は介護や医療、さらには都市設計や行政サービスなどにおいて、
 技術開発やイノベーションにより、これからも経済成長する期待がある
とも言える。

 さらに、労働人口が減っても女性や高齢者の労働力率が向上すれば、労働力人口減少を抑制することにもなり、まずは、ワークライフバランスのあり方や女性の再就職の環境整備、スキーム形成を進める革新的な意識改革と労働市場構造の変化が望まれる。

 日本は国際的に諸外国に比べ、家事・育児時間が長時間で、OECDの調べでは1日当たり、女性が299分で先進国の中ではダントツ。
 一方、男性は62分で最低レベル。
 非正規雇用が増え、経済的負担が大きくなっただけでなく、家事のほとんどを女性が担っており、仕事と家庭の両立を阻む負担が、晩婚化、未婚化を助長し、出産率を大きく下げている要因の1つになっている。

 もし、少子化が改善すれば、言葉や文化の支障もなく、高い教育水準にある女性の社会進出をさらに促進させることにもつながり、外国人雇用ありきでなく、自国民の生産性を上げることで経済成長を後押しすることも可能だ。

 シンガポールの場合、政府が外国人高度技能者への依存軽減のため2016年から、シンガポール国民の「高技能化推進策」に着手。
 25歳以上のすべての国民を対象に、国が再教育や職業訓練研修などの費用を負担する「Skills Future Credit」を導入させ、
 外国人依存から自国民の高技能化へと国益強化のための政策転換
を果たした。

 このように、シンガポール政府は自国民の生産性や所得向上のため、外国人を区別し、外国人の権利をシンガポール人と比べて制限するという移民修正策の国策転換の舵を取り始めたが、それは国家主権維持や伝統文化、価値、慣習を次世代に継承する国家としての責任であり、決して差別ではない。

 一方で、少子高齢化の改善がされず、労働力低下の事態に陥ったことも想定して、反対、賛成の感情論から抜け出し、様々な考察やデータに基づいた移民政策の議論も活発化する必要もある。
 外国人受け入れには確立した制度設計が必須で、実際の実施までに相当な時間を要する。
 日本への留学生は増加しているものの、世界中から学生が集まる米国に比べると、その出身国は限られている。
 米国の成功の裏には、そこで学べば、アメリカンドリームを実現できるという、「夢が抱ける国家」としての魅力で、文化や人種を超え、優秀な人材を引き寄せている背景がそこにある。

 「選ぶ立場であり、選ばれる立場でもある」ことを認識した上で、日本も開国への議論とその制度設計を進める時が迫っている。
 移民受け入れは、日本の文化、価値、伝統を変えることにほかならない。

日本らしさや日本の良さを失っては始まらない。
 移民先進国・シンガポールの国策の大転換を、まさに反面教師として教訓として、大いに学ぶべきだろう――。



サーチナニュース 2016-03-09 18:52 坂本晃(日本経営管理教育協会)
http://biz.searchina.net/id/1604443?page=1

日本の人口・世界の人口、
日本の経済・世界の経済  
2015年、国勢調査の結果など

■ 初めて人口減少の結果がでた

 総務省統計局は2016年2月26日(金)、5年に1度行われる国勢調査、2015年10月1日現在を調査対象とした人口速報集計結果を発表した。

 第1回の国勢調査は1920年(大正9年)に第1回の国勢調査が行われたが、第19回目なった2015年の調査で人口が初めて減少し、1億2711万人になった。
 国勢調査での人口ピークは前回調査2010年で1億2805万人であった。1980年調査までは、戦後1945年の減少を除いて年平均1%前後の増加をしていたのに、である。

 鬼頭宏著「図説人口に見る日本史」によると、日本の人口は大まかには
  弥生時代の西暦200年に59万人、
 鎌倉時代の1200年には600万人、
 江戸時代の1600年には1200万人、
 明治維新の1886年には3330万人
だった。
 それから急増し、
 2008年1億2808万人のピーク
を迎えた。
 これからは2015年版高齢社会白書によると今から34年後の
 2050年には、9708万人
と1億人を割り込み、さらに減少することがが見込まれている。

■ 世界の人口のなかで

 世界の人口を見てみよう。
 国連のまとめによると西暦元年には3億人、約500年前の
 西暦1500年には9.6億人、
それ以降順調に増加して
 2005年には64.6億人、
 2050年には90.5億人
と推計されている。

 前記2015年の日本の国勢調査報告に記載されている
 世界各国の2015年の人口では、世界全体で73.49億人、国別では
 中国の13.76億人がトップ、
 続いてインドが13.11億人
 アメリカが3.22億人で、以下は
 インドネシア、ブラジル、パキスタン、ナイジェリア、バングラディッシュ、ロシア、日本1.27億人
の順である。
 1億人以上でメキシコ、フィリッピンが続く。
 20位以内にEUで入っているのはドイツだけである。

 この順序を肌で感じておられる日本人は少ないかと思われる。
 私も調べてみて初めて知った次第で、通常話題になる国別の経済規模、DGPや一人当たりDGPの順序とはかなり異なる。

 人類全体が現在の先進国並の経済水準に達したとして、世界政府議会を構成する議員を人口割りで選出するのが民主社会とすれば、中国14人、インド13人、アメリカ3人、日本1名の割合になる。
 100年先に実現できるか人類の知恵の見せ所であろう。

■経済から見ると

 「金持ち喧嘩せず」という諺が日本にはあるが、個人が感じる豊かさにつながるのは、1人当たりDGPであろう。
 先進国といわれるのは1人当たりGDPが米ドル換算で3万米ドル以上とされている。

 ネットに掲載されている「世界経済のネタ帳2014」によると人口の多い順でいずれも米ドル換算で、
 中国が7571ドル、
 インドが1607ドル、
 アメリカが5万4411ドル、
 インドネシアは3524ドル、
 ブラジルは1万1572ドル、
 パキスタンは1325ドル、
 ナイジェリアは3300ドル、
 バングラディシュは1161ドル、
 ロシアは1万2717ドル、
 日本は3万6221ドル
とかなり格差がある。

 ちなみに
 韓国は人口5022万人で、1人当たりGDPが2万7970ドル、
 北朝鮮は人口が2490万人で、1人当たりDGPは掲載がない。

 日本の雇用者報酬、つまりサラリーマンの全収入は、日本のDGPや内閣府による国民経済計算にもとづけば、2014年には251兆円で日本経済全体の約半分である。
 この数字は
 1990年以降、1997年の272兆円をピークに、2009年の243兆円
を底にした範囲で推移している。

 日本のDGPの第2次大戦後の推移では、
 1956-73年の高度成長期には年間平均9.1%で成長。
 1974-90年の安定成長期には平均4.2%、
 1991-2013年は低成長期で、平均で0.9%
で伸びた。

 簡単に言えば戦後の復興期は物がなかった時代で作れば売れた時代、技術革新による新製品が売れた時代もあったが、2011年3月11日東日本大震災で被災された家屋で見られたように、世界的にみれば日本全体が豊かな家庭で飽和しているとも言える。

 人口減少の時代に入り、数の上では内需が減少するのは当然で、経済全体を増加させるのは技術革新、とくに人間最後の欲望である古来からの不老長寿、健康長寿に関することであろう。





【2016 明日への展望】


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