2016年3月17日木曜日

求む:お掃除ロボを家庭最強の兵器に変身させるアイデア、アメリカの研究機関が募集中

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●お掃除ロボを家庭最強の兵器に変身させるアイデア募集中


ITmedia ビジネスオンライン 3月17日(木)8時48分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160317-00000035-zdn_mkt-bus_all’

アメリカの研究機関が、家電を兵器に変えるアイデアを募集するワケ


●DARPAのプロジェクトは米国民でなくても応募できる

 3月11日、米サイエンス誌で、中国が停滞する経済を盛り上げる目的で「中国版DARPA(ダーパ)」を設立するというニュースが報じられた。
 DARPAとは、Defense Advanced Research Projects Agency(米国防高等研究計画局)の略だ。
 米バージニア州でテクノロジーを軍事などに利用する目的でR&D(研究開発)を行う米国防総省の研究機関である。

 私たちがこの瞬間まさに使っているインターネットも、もともとはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授などのアイデアをベースにDARPAが開発したものだ。
 そのほかにも例えば、ステルス技術やGPS(衛星利用測位システム)、無人戦闘機などもDARPAが作った。
 またiPhoneに搭載されているSiriも、もともとはDARPA関連のプロジェクトから生まれている(現在さらなる知能アシスタントを開発中)。
 とにかく米軍などの枠を超えて先の世界を見据え、現代のテクノロジーに大きな貢献をしている組織だ。

 そんな研究所を自分たちでも作りたい――世界第二の経済大国になった中国がそう思うのも分からなくはない。
 国の英知を集め、国のために生かせる技術を開発する。
 この考えは何も中国に限ったことではなく、最近では韓国も同様の研究所の立ち上げを計画している。
 また日本も、2014年に「武器輸出三原則」を見直して武器輸出や共同開発などが可能になり、「日本版DARPA」が動き始めているとの話もある。

 そんな一目置かれるDARPAが最近、興味深いプロジェクトを立ち上げた。
 「Improv」というプロジェクトだが、このプロジェクトからは私たちが今後どんな時代に突入していくのか垣間見れる。

 そもそもDARPAは、1957年にソビエト連邦が人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した際に、欧米が抱いた危機感から誕生した。
 当時、米国をはじめとする西側諸国には大きな衝撃が走り、ソビエトの偉業は「真珠湾攻撃」にも匹敵する屈辱だと言われた。
 それをきっかけに、テクノロジー開発戦争に勝つため、1958年にDARPAは設立された。それからの実績はすでに述べた通りだ。

●電化製品を「兵器」につくり変える

 ではDARAPが3月11日に発表した新しいプロジェクト「Improv」とはどんなものなのか。
 簡単に言うと、Improvは、誰でも電気屋さんやオンラインショッピングで簡単に手に入れられるような既成の電化製品などを、兵器につくり変えるというプロジェクトだ。
 家にある家電や、電化製品に含まれるコンピュータなどを使って、安全保障の脅威となりえるようなモノを作れないか探るのである。
 それは実社会でもいいし、サイバー空間の脅威でもいい。
 実際に兵器化できるアイデアを広く募集しているのだ。

 DARPAの公式リリース文にはこう書かれている。
 Improvは、電化製品や部品、さらには公開されたプログラムコードなど一般的に手に入る製品を、「改造したり合体させる方法を検討するものである」。
 さらに
 「DARPAは、広い視点を得るため、専門性のある全領域から、エンジニアや生物学者、情報技術者や資格のあるエンジニア、さらに技術をもつ愛好家まで、
 アイデアを募る。そして、簡単にアクセスできるハードウェアやソフトウェア、プロセスや方法が、いかに未来の脅威となりうる道具やシステムとして利用出来るかを明らかにしてほしい」

 少し堅苦しい説明だが、つまりDARPAは、さまざまな分野の人たちに、それぞれの目線で今のテクノロジー市場を観察して、兵器などに転用できる製品やアイデア、プログラムコードなどのアイデアを提供してほしいのである。
 このプログラムに参加したければ、DARPAが用意した提案書などでアイデアを提出する。
 しかもこのプロジェクトは米国民に限定しておらず、基本的に日本人でも応募できる。
 ただし、守秘義務や法律の問題などさまざまな条件を満たす必要があり、面接など頻繁に米国に行けなければならないので、気楽に応募できるものではない。

 そして実際にアイデアが採用されれば、脅威を現実につくり出すための研究費が“賞金”という形で提供される。
 採用後、プロジェクトは3フェーズに分けられる。
 まず第1フェーズは、兵器作りが実現可能かどうかを研究する準備期間で、4万ドルが支給される。
 第2フェーズはプロトタイプの製作過程で、7万ドルが支払われる。
 最後は評価段階で、2万ドルを受け取ることができる。
 合計すると13万ドルが支払われることになる。

●米国の「防衛」に生かしたい

 米IT系Webサイト『Ars Technica』は、Improvについて、
 「掃除機を簡易兵器に作り変えられるなら、DARPAはあなたの力が必要かもしれない」
と報じている。
 英IT系Webサイト『The Register』は、
 「これは、米国のために食パンのトースターを兵器化せよ! 
というDARPAからオタクに対するメッセージだ。
 『Improv』プロジェクトは、愛国的な行為として、IoT(モノのインターネット)をハッキングしろということだ」
と報じ、また米ポピュラーサイエンス誌は
 「新しいDARPAのプログラムは、あなたにホバーボードや、スターウォーズのドロイドBB-8を兵器にしてほしいらしい」
と書いている。

 単純にインターネット上でハッキングを行い、コンピュータを兵器化するというアイデアもその基本的な例と言えるだろう。
 さらに2013年4月に米マサチューセッツ州で起こったボストンマラソン・爆破テロ事件では、釘や金属片が入った圧力鍋で爆弾が作られたが、それも一例ではある。
 だが、もっと驚くようなアイデアが求められているのは言うまでもない。
 事実、このプロジェクトの担当者であるジョン・メイン氏は、
 「DARPAの使命は戦略的な驚きをつくり出すことで、
 徹底して革新的で不可能とさえ思われるテクノロジーを追求することに主眼を置いている」
と述べている。

 実はこのプロジェクト、単に米軍が電化製品を兵器に転用するためのアイデアを募集しているのではない。
 そのアイデアや技術を、米国の「防衛」に生かしたいということなのだ。
 リリースによれば、
 「輸送や建築、農業、そのほかの商業部門のために開発された一般に手に入る製品は、非常に複雑な部品が組み込まれている。
 賢い敵は、改造や製品をつなぎ合わせたりして、奇抜で思いがけない安全保障の脅威をつくり出すのだ」
という。

 そこでアイデアを募集し、敵国によるどんな脅威が存在するのかを学ぼうとしている。
 基本的に小さなグループでさまざまな研究を行い、数限りないリスクの想定をすでにしているはずのDARPA自身も思いつかなかったような、また想像もつかなかったような幅広い分野からの視点で脅威を知りたいのだ。
 また受け身で敵からどんな攻撃が来るのかを待ちながら対策をするよりも、先に事前に問題を見つけて対策する「プロアクティブ」な防衛を行いたいとも主張している。

●米国の軍事的技術力がトップを走り続ける理由

 このImprovプロジェクトは、これまでDARPAが独自プロジェクトでテクノロジー分野を牽引してきたことを考えれば、これから世界が進む1つの方向を示していると言えなくもない。
 つまり、いま手元にあるような身近な電気機器が思いがけず兵器に転用されてしまう世界だ。

 それがサイバー空間ともなれば、近年話題となっている家電などがインターネットなどでつながっていく、いわゆるIoTの時代に、そうした脅威が個人の生活に直接及ぶことを意味する。
 ますます自動化と遠隔操作が進んで行く世界では、それを悪用できるリスクも高まっていく。
 「サイバーテロ」ならぬ「IoTテロ」の世界を想定しているのかもしれない。

 米国が軍事的技術力において世界でぶっちぎりのトップを走り続けている理由は、膨大な軍事費もさることながら、DARPAのような研究にも力を入れていることが挙げられる。
 DARPAだけでもその予算は2017年度に29億7000万ドル(前年比1億ドル増)だが、DARPAは国防総省が誇るいくつもの優秀な研究施設の1つに過ぎない(米海軍調査研究所やリンカーン研究所などが有名だ)。

 DARPAの強みは、民間企業や研究所、大学などとの連携にある。
 提携関係にあるプロジェクトは現在、2000件を超すという。
 とにかく規模が大きく幅広いため、今回のImprovプロジェクトも、実はDARPAで現在進行している250のプログラムのひとつに過ぎない。
 同じような研究が多く進められているのだ。

 このように世界最強の軍を抱える米国の
 中国は近年、軍事力の強化を続け、さらに軍備の近代化を進めている。
 ただ2016年に中国は防衛に1470億ドルの予算を配分しているが、そのうちどれほどがR&Dに充てられるのかは不明である。

 ただ中国と言えば、軍事においてもパクリだらけだ。
 著者の知る元国防省関係者は何度も、サイバー攻撃で米軍から兵器の設計図など莫大な機密情報を盗んでパクっている中国が、独自に何かを作りたいと考えるのは勘違いだと主張している。
 事実、サイバー攻撃で米軍の機密情報を大量に盗んでいるのは米政府関係者の間でもよく知られている。

 中国の軍部がパクリ文化から抜け出すためには、DARPAのような研究機関を作るのが急務だということだろう。





【2016 異態の国家:明日への展望】


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