外部から冷静に見ると
中国の人工島建設はアメリカを南シナ海、というよりアジアに引き入れる最良の口実をアメリカに与えている
ようにしか見えない。
問題は
「中国にとってアメリカをアジアに引っ込んで何の得があるのか」
ということである。
人工島建設は周辺国から見ると「大国の小国いじめ」にしか見えないし、それによって「中国正義」というレッテルが剥がれつつあるようにも思える。
中国の経済力に周辺国は見て見ぬふりをして甘い汁を吸おうと思っているので、正面切っての非難は避けているが、今後中国経済が零落するようなことになると、ガラリと態度を翻すかもしれない。
今後何が起こるかわからない。
アメリカという国はチャンプの国である。
相手を叩きのめすことにすこぶるの快感を感じる国民性の国である。
そしてベトナムを除けば勝ち続けてきた国である。
それだけのパワーとキャリアを持った国である。
永遠に勝ち続けることがおのが使命と心得ている国民である。
中国のように「戦わずして勝つ」といった孫子の兵法を基本に置く国ではない。
戦うことにエクスタシーを感じる国である。
これまでアメリカは中東に軸足を置いてきた。
それは、石油という利権というよりエネルギー確保を再優先課題にしてきたからである。
しかしシェール革命によって、アメリカは世界最大の産油国になった。
とすれば、もはや中東に深く介入する理由がなくなってきた。
蜜月だったイスラエルやサウジアラビアとも一線を画すようになってきた。
アメリカの撤退ムードに影響され、これまで
「イスラエル対アラブ」という戦争公式は崩れ、「イスラム覇権抗争」へと変わりつつある。
そして、このイスラム覇権抗争は大量の難民をヨーロッパに送り出すことになってきている。
ヨーロッパはアメリカに代わって中東と対峙せざるを得なくなってしまった。
それはEUの瓦解すらも誘発する可能性があるものになってきている。
そして、
アメリカは中東から手を引く分、アジアにシフトする余裕を得つつある、
ということになる。
そのシフトの最大の大義名分を与えているのが中国である。
人工島建設がそれである。
外交からいえば、アメリカのアジアへの進出を抑え、その間にできるだけ十分は国力を養い、周辺国を手なずけて、中国アジア同盟を構築するのが常道だろう。
しかし、いまの中国にはそれがない。
バカなことをやったものである。
海戦経験のない中学生レベルの海軍力と、防空識別圏は設定したものの侵入機にスクランブルを駆けられるほどの空軍力もない。
言葉だけが勇躍する、カタログ兵器があるだけである。
上層部はその程度のことは十分わかっている。
ではなぜわかっていながら、人口島建設という国際的波風の立つような行為に走ったのか。
外から見る限りにおいては、どうも共産党は解放軍海軍を掌握しきれていないように思える。
解放軍はもともと陸軍主体の軍隊である。
よって、共産党の陸軍把握はうまく行っている。
しかし、海軍は別の文化に属する専門集団である。
共産党はこの専門集団をコントロールできるだけの力はないように思える。
そのため、艦船というオモチャを与えられた海軍は独自の発想で好き勝手な行動をなしているような雰囲気がある。
共産党はそれを止められない。
止められないからそれをいいことにさらに増長する。
海軍の行う好き勝手を、中国政府はいやいやながらも後から追認するという形をとっている。
いまの中国は、海軍にその鼻先を引っ張られて、引きずり回されているような形になっている。
ちなみに、空軍とロケット軍は独立しているように見えるが基本的に陸軍に付随する。
航空機は陸地から飛び立ち、陸地に帰ってこざるを得ない。
ロケットは特殊なものを除いて基本的に陸地から発射されことになる。
ならば、それは陸軍の一部隊に過ぎない。
情報だと6艦によって構成されたアメリカ空母打撃群が南シナ海に展開し、これを囲むように多数の中国の艦船が偵察に入っているという。
さて、これからどうなるのか。
どちらかがしびれを切らすことになるのか。
共産党政府のコントロールが効かなくなっていると見られる解放軍海軍が、手にした拳銃をぶっ放したい衝動に駆られることもある。
とすれば、中国艦船はアットいうまに空母群の餌食になってしまうだろう。
戦争キャリアのまったぐ違うこの二国の衝突はあっけなく終わってしまうことになるだろう。
共産党上層部としてはそこが頭の痛いところだろう。
これにより、おそらくは半数に近い艦船が海の底に消えるとなると、中国はもはや手も足も出なくなる。
中国の戦法はどこまで行っても孫子の兵法でなければならない。
つまり「戦わずして勝つ」である。
中国はアメリカに明らかに負けることがわかっている。
突っ込んでいうと、中国と日本が戦うことになったら、同じように中国は負ける。
それもわかっている。
よって、中国はこの二国とは開戦できないというジレンマに陥っている。
戦ってはならないのである。
しかし、オモチャ兵器を持たされた海軍はウズウズしている。
なぜなら、本当の海戦を知らないからである。
ピストルをはじめてもったヤクザの三下が引き金を引きたくてたまらない
という心理と同じで」ある。
『
CNNニュース 2016.03.05 Sat posted at 13:28 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35078993.html
米空母打撃群、南シナ海に展開 周囲に中国艦船
●ニミッツ級空母「ジョン・C・ステニス」
(CNN) 米海軍は5日までに、空母打撃群を南シナ海に展開したことを明らかにした。
中国海軍はこの動きを注視しているとみられる。
米第7艦隊は4日、声明を発表。
ニミッツ級空母「ジョン・ステニス」や
誘導ミサイル駆逐艦「チャン・フー」、
同じく「ストックデール」
のほか、
誘導ミサイル巡洋艦「モービルベイ」、
補給艦「レーニア」
が1日から南シナ海東部に展開していると明かした。
また、中国海軍の艦船も「近距離」に展開しているとしている。
空母ステニスのグレッグ・ハフマン艦長は、空母打撃群の近くで中国の活動が増えていることを指摘。
「中国の艦船が周囲にいる。
私の過去の経験ではあまり目にしなかった」
と述べた。
ハフマン氏は2007年にも南シナ海に配置されていた。
米海軍は南シナ海への空母打撃群の展開について、通常の派遣だとしている。
1月には、米イージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が南シナ海を航行。
中国、台湾、ベトナムが領有権を争う西沙(パラセル)諸島のトリトン島から12カイリ以内を航行した。
米国防総省はこれについて、「米国や他国の権利と自由を制限する行き過ぎた海洋権益の主張」に対抗する狙いだとしていた。
一方、中国の全国人民代表会議(全人代、国会に相当)の傅瑩報道官は4日、南シナ海の「軍事化」を激化させているのは中国政府ではなく米国政府だと指摘した。
』
『
読売新聞 2016年03月04日 23時48分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160304-OYT1T50152.html
米が南シナ海に空母派遣、中国をけん制か…米紙
【ワシントン=大木聖馬、ニューデリー=田尾茂樹】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は3日、米海軍が原子力空母「ジョン・C・ステニス」を南シナ海に派遣したと報じた。
米太平洋軍のハリー・ハリス司令官は2日、今年の日米印の海上共同訓練「マラバール」を、南シナ海に近いフィリピン北方海域で行うと表明。南シナ海の人工島などで軍事拠点化を加速させている中国をけん制する狙いがあるとみられる。
ステニスのほか、米海軍横須賀基地を母港としているイージス巡洋艦「アンティータム」も現在、南シナ海で巡視活動を実施しているという。
ロイター通信などによると、ハリス司令官はインドの首都ニューデリーで2日行われた安全保障関連の会合で、「自由で開放された海上交通路の確保は世界の繁栄に不可欠だ」と暗に中国を批判。今年のマラバールは、南シナ海に近い太平洋のフィリピン北方海域で行うことを明らかにした。
マラバールはインド近海と太平洋で交互に開かれており、日本の海上自衛隊も計4回参加。昨年12月の日印首脳会談で、定期的に参加することを確認している。
』
『
スプートニク 2016年03月04日 15:06(アップデート 2016年03月04日 15:19) 短縮 URL
http://jp.sputniknews.com/asia/20160304/1722095.html
米国 南シナ海へ空母打撃群派遣
● © AP Photo/ Ronen Zilberman
3日米国防総省が伝えたところでは、米国は、南シナ海に米海軍の戦闘部隊の一つ、空母打撃群(CSG)を移動させる決定を下した。
発表によれば、全体で南シナ海には、
空母「ジョン・ステニス」、
巡洋艦「アンティタム」
及び「モバイル・ベイ」、
駆逐艦「チョン・ヒョン」
及び「ストックデール」
さらに、米海軍第7艦隊の旗艦「ブルーリッジ」、
以上6隻の艦船が派遣された。
こうした決定について、米海軍太平洋艦隊スポークスマンのクレイ・ドス中佐は「何も異常な事など無い」とコメントしている。
しかし米海軍のジェリー・ヘンドリックス退役大尉は、米軍の今回の南シナ海での新たな行動について
「中国政府に対する力の誇示であり、明らかなシグナルだ」
と見ている。
彼の見方によれば、南シナ海に一まとまりとなった米海軍の戦闘部隊、つまり空母打撃群と旗艦が存在するという事は、米国がこの海域の状況に並々ならぬ関心を抱いている事を示している、との事だ。
●米国 係争海域の島々の軍事化は「結果なしには済まない」と中国に警告
』
毎日新聞2016年3月5日 10時33分(最終更新 3月5日 10時33分)
http://mainichi.jp/articles/20160305/k00/00e/030/208000c
米空母が監視 周囲に多数の中国軍艦
米国防総省と第7艦隊は4日、原子力空母ジョン・ステニスを中心とする艦隊が南シナ海で警戒監視活動に入ったことを明らかにした。
空母艦載機も運用。ステニスの周囲には多数の中国軍艦が集まったという。
国防総省は
「南シナ海を含め、西太平洋全域で艦船を定期的に運用している」
とした上で、警戒監視活動は「国際法と合致している」と強調した。
南シナ海で地対空ミサイルやレーダーなどの配備を進める中国に対抗する狙いもありそうだ。
ステニスのハフマン艦長は空母の周囲に集まった中国軍艦の数の多さについて
「過去の経験では見たことがない」
と説明した。
ステニスを中心とした艦隊には、イージス巡洋艦やイージス駆逐艦も含まれる。
第7艦隊の拠点である米軍横須賀基地(神奈川県)に配備されているイージス巡洋艦アンティータムも警戒監視活動に参加した。
ステニスは1月15日に米西部ワシントン州の母港を出港し、2月4日に西太平洋海域に入った。
4回目の核実験に踏み切った北朝鮮への対抗措置ともみられていた。(共同)
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月08日(Tue) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6266
二度目の“航行の自由作戦”
敢行した米国の真意は
Diplomat誌のティエッツィ編集長が、1月30日に行われた米国によるトリトン島への航行の自由作戦は昨年10月の作戦とは違う法的意味を持ち、それゆえ中国の強硬な反応を惹起している、と指摘しています。
論旨は次の通り。
1月30日、米駆逐艦カーティス・ウィルバーは、航行の自由作戦(FONOP)の一環として、中国が実効支配するパラセル諸島のトリトン島(ベトナム、台湾も領有を主張)の12カイリ内を航行した(「航行の自由作戦FONOP」)。
これは事前の通報が必要とされない無害通航として計画されたものだった。
中国外務省は、中国の法律を犯し中国の承認なくしてその領海に侵入したとして厳しい反応を示すとともに、中国の領海接続水域法により外国の軍船は領海に入る際は中国の承認を必要とする旨を述べた。
米国の狙いは、無害通航について事前の承認を要求する正にこの国内法に対抗することにあった。
アシュトン・カーター国防長官は声明の中で、
「この作戦は、領海を通過する際に事前の承認ないし通告を要求し自由航行の権利と自由を制限しようとする中国、ベトナム、台湾の試みに挑戦したものである。
過剰な主張は海洋法条約に具現される国際法と整合しない」
と述べた。
■一層強まる中国の反発
2月1日、中国外務省は米国のこの説明を拒否した。
さらに、
「米国は航行の自由の名のもとに海洋覇権を追求しており、米国による力の示威が南シナ海の軍事化の最大の原因である」
と主張した。
同省報道官は中国の艦艇や航空機は直ちに対応したと述べたが、米国防省は中国艦艇による米艦の追尾はなかったと述べた。
10月の作戦と今回の作戦はいずれもFONOPと分類されているが、法的な理由は明確に違う。
★.10月の作戦は中国が建設した人工島は法的には低潮高地であり島とは見なされないことを突き付けるものだった。
中国は怒ったが人工島にも領海があると主張することは避け、非難は曖昧だった。
しかし今回は違う。
★.中国はパラセル諸島の領海を明示的に主張するのに対して、
米国は、中国の主張の二つの点(事前の承認と領海の基線の引き方)について対抗している。
米国は、中国の主張は過剰であり国際法に整合しないと拒絶する。
中国の反発は一層強いものになる可能性がある。
米国のFONOPはこれで終わりではない。
ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、
FONOPはこれから増える、「挑戦水域」での複雑さと範囲も拡大していくだろう
と述べている。
出典:Shannon Tiezzi,‘China Rejects Latest US FONOP in the South China Sea’(Diplomat, February 2, 2016)
http://thediplomat.com/2016/02/china-rejects-latest-us-fonop-in-the-south-china-sea/
* * *
1月30日の第二回目の航行の自由作戦は、領海の有無ではなく領海の中味に関する中国の立場)に真っ向から挑戦するという点で、第一回目より法的意味合いはより直截である、との論説の指摘はその通りでしょう。
■今回の作戦の背景に透ける歴史的経緯
しかし、問題は領海の線引きと無害通航だけに限られません。
この記事は言及していませんが、中国がこの島を実効支配するようになった歴史的経緯にも注意が必要です。
トリトン島は、元来、南ベトナムが実行支配していました。
しかし、1974年に中国が銃撃戦により同島を含むパラセル諸島の全島を自らの支配下に置きました。
その後統一されたベトナムが中国にこの件を提起してきましたが問題は解決されず今日に至っています。
米国は領土紛争については判断を明らかにしないとの原則論を維持していますが、今回の作戦の実施決断にはこのような歴史的背景もあるかもしれません。
ここ数十年の中国の一貫した「振る舞い」が問題なのです。
1月に公表されたCSISの『アジア太平洋リバランス報告』も、2030年までに南シナ海が事実上中国の湖になる危険がある旨を警告しています。
今回作戦への中国の反応が厳しかったと見るか、抑制的だったと見るか、見方は分かれます。
筆者は厳しかったと見ており、一層厳しくなる可能性があると指摘します。
他方、中国の言明にもかかわらず、中国による追尾はなかったと米国防省は明らかにしています。
対中警戒心が高まる国際政治状況や上記の歴史的経緯などを考えれば、中国の立場は完全ではありません。
中国としては、公的立場は強く維持しつつも、現状を既成事実化し問題がこれ以上大きくなることは当面避けることが有利と考えているかもしれません。
米国が航行の自由作戦を継続していくことが、妥当かつ必要なことです。
ハリス太平洋軍司令官の「作戦の複雑さと範囲は今後増大するだろう」との発言は示唆的です。
二回目の作戦はもっと早く行われるべきだった、との批判があります。
バラク・オバマ大統領が軍部による計画を抑えていたとも報じられています。
米議会ではジョン・マケイン議員などが早期に実施すべきとオバマを批判していました。
2月15-16日の米ASEAN首脳会議の開催がオバマの決断を促したと見方もあります。
ともあれ、二回目の作戦が実施されたことには意味があります。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月07日(Mon) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6245
中露からの防衛
中小国のみでの対応は無理?
■中小国防衛に求められる4つの戦略とは
小国は大国の圧力、特に軍事侵略に至らないレベルの強要に晒されやすいが、対抗する手段はある。
それは、限定的目的を持った競争的戦略と称すべきもので、4つの戦略が考えられる。
★:1)拒否:敵に受け入れ可能なコストで侵略させない戦略である。
最近の精密兵器の発達で、小国が拒否戦略を実施しやすくなっている。
対戦車誘導兵器(ATGM)、精密ロケット、無人偵察機、地対空ミサイルなどで、バルト3国に少数のATGMを供与すれば、ロシア軍に対する拒否戦略となる。
★:2)対決の継続または紛争のコストを耐えがたいほど高くすること:
冷戦中、米国はソ連に対して、この戦略を実施した。
★:3)敵の戦略に対する攻撃:
たとえばウクライナやバルト3国でのロシアの行動を、ソーシャルメディアで取り上げ、ロシア国民に知らせる。
また南シナ海における中国の行動を知らしめるのに、商業メディアが使われた。
★:4)敵の政治システムに対する攻撃:
敵が政治的に崩壊するか、譲歩するかを迫る。
もっともプーチンに対する国内の支持は高いようだし、南シナ海における中国の強要は、民族主義的誇りに支えられている。
しかし以上の4つの戦略を打ち立て、実施すれば、時間とともに敵の指導層の分裂を招くこともあり得る。
■中小国防衛のための米国の支援とは
米国は最前線の小国を以下のように支援することができる。
★:1).中・東欧のいくつかの国はA2/AD能力の構築を考えており、米国はATGMなどの拒否の戦略手段を提供する。
★:2).米国は相手のコストを増大させる戦略を、新兵器を展開するなど独自に実施するか、技術や情報を同盟国や友邦国と共有することにより進める。
★:3).米国は、同盟国や友好国と情報を共有することなどにより、相手の強要の試みを世に広く知らしめる。
★:4).潜在的侵略者の政策決定をよく知ることにより、平和時に潜在的侵略者にゆさぶりをかける。
出 典:Thomas Mahnken‘Small States Have Options Too: Competitive Strategies Against Aggressors’(War on the Rocks, January 27, 2016)
http://warontherocks.com/2016/01/small-states-have-options-too-competitive-strategies-against-aggressors/
* * *
■中小国戦略には米国の支援が不可欠か
上記論説は、大国の侵略を防ぐ中小国の戦略と言っていますが、アカデミック・エクササイズとしては有用であっても、現実の世界では中小国だけでできることは限られています。
拒否戦略一つをとっても、有効といわれるATGMは米国が提供することになります。
また、対決の継続または紛争のコストを耐えがたいほど高くすることも、中小国だけではできません。
バルト3国や中・東欧諸国がロシアの強要に対抗するためには、NATOの傘、特に米国との協力が不可欠です。
論説も、中小国の戦略と言いながら、米国の支援の重要性を指摘しています。
同じ強要と言っても、ロシアと中国ではその態様が異なります。
中国は、いずれ南シナ海を中国の内海とし、東南アジア諸国を中国の勢力圏に組み入れようと考えているとみられますが、相手、国際社会、特に米国の出方を見極めながら、サラミ戦術的に進みます。
フィリピンやベトナムを侵略することは考えていませんが、南シナ海での領有権争いでは、強要もします。
したがって、同じく野心を持った大国とはいえ、ロシアに対する戦略と中国に対する戦略は異ならざるを得ません。
論説の戦略は主としてロシアを念頭に置いたものと言えます。
4つの戦略のうち、敵の戦略に対する攻撃と敵の政治システムに対する攻撃は、ロシア、中国とも国内の情報を徹底的に管理しているので、なかなか効果は上げられないでしょう。
しかし、ロシアも中国も、実はこのような戦略を最も恐れていると思われます。
情報を管理しているだけに、その管理体制に少しでも隙間ができた場合の影響は大きいです。
そして、この2つの戦略も中小国だけで実施できる問題ではなく、西側が一体となって推進すべきものです。
』
JB Press 2016.3.9(水) 部谷 直亮
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46258
「5日で日本が敗北」を中国、台湾はどう報じたか
ウォーシミュレーションの目的を勘違いしてはいけない
以前のコラム(「衝撃のシミュレーション『中国は5日で日本に勝利』」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45849)で、ランド研究所のシラパク氏と外交専門誌「フォーリンポリシー(FP)」の記者らが行った尖閣諸島をめぐる日中紛争のシミュレーションを紹介しました。
シミュレーションによると日本は5日で尖閣諸島を奪取され、シラパク氏は「米国は尖閣問題に関わるべきではない」と結論づけていました。
これは中国や台湾でも議論になったようです。
■台湾独立派の新聞は「最後に日本が反撃」に注目
まず、台湾独立派の大手新聞「自由時報」の報道です。
1月28日の自由時報は、
「米国シンクタンク:『中国はわずか5日で釣魚台を攻め取るも、割に合わない勝利に』」
とのタイトルで、筆者のコラムの概要を紹介しました。
同記事はシラパク氏について、「ランド研究所におけるベテランのウォーゲームの専門家」として評価し、シラパク氏が去年9月に「米中軍事力スコアカード」という430ページにわたる報告書の編著に携わったこと、その報告書が
「2年後にアジア太平洋地域に戦争が発生した場合、米国は中国に勝利するであろう」
と結論づけていたことを紹介しています。
そして記事は最後の部分で
「(シミュレーションの結論は)日本は必ずアジア諸国と連携して反撃するであろう」
との見出しを掲げ、シラパク氏による「米国は尖閣を無視するべき」という主張や、筆者の「最悪の可能性を直視して対策を実行すべき」との提言を紹介して終わっています。
自由時報は、シラパク氏がランド研究所の「米中軍事力スコアカード」の著者の1人であることから、その分析に信頼を置いていることが読み取れます。
その上で
「中国が尖閣諸島を奪い取ったとしても、その結果、
日本がアジア諸国との軍事的な連携を強化し反撃に転じる」
との分析結果にかなり注目しているようです。
この背景には、
短距離弾道ミサイルだけでも1200発が台湾を狙っているという現実への認識、
そして、台湾軍はそうした飽和攻撃を受けても継戦能力を維持するべく、「沱江」級コルベット艦の投入
等に象徴されるように、日本よりも進んだ対A2/ADへの努力や改革を継続していることへの自信があるものと思われます。
■中国側は「米国の偏ったシミュレーション」と反論
次はシンガポール最大の華字紙「星洲日報」です。
星洲日報は、ハリス太平洋軍司令官による尖閣防衛宣言を紹介した上で、筆者のコラムを取り上げ、内容を要約して紹介しました。
そして、人民解放軍の李杰海軍少将に以下のようなコメントをさせています。
「このシミュレーションには、米政府の魂胆がある。
故意に中国脅威論を喧伝する一方で、
日本人に不断の軍拡、集団的自衛権容認、憲法改正を実行せねばと仕向けるものだ。
そうしなければ、米国は短期間でこの厄介な事態を収拾することがまったくできないからである。
そもそも、釣魚島は米日軍事同盟に関わるものであり、
もし失えば、米軍の『第一列島線』に大きな風穴が空くことになる。
ゆえに米国が介入しないということはあり得ない」
李杰海軍少将は、海軍軍事学術研究所研究員で、解放軍報などで多数の論文を書いている著名な人物ですが、なかなか興味深いコメントでしょう。
つまり、FPの記事は日本の軍拡を助長するための米国流の「三戦」であり、
米軍は尖閣諸島の軍事的重要性に鑑みて必ず参戦してくる、油断してはならない、
と言っているのです。
中国最大の軍事ニュースサイト「西陸網」も、シミュレーションの内容には米国人の偏見が表れているという記事を公開しました。
「中国が米国の民生目標をサイバー攻撃し、
米国経済を破壊し、
最終的には米空母がDF-21対艦弾道ミサイルにより撃沈されるという内容は、
中国が米国をサイバー攻撃していると根拠もなく非難する最近の現状に一致している。
対艦弾道ミサイルが脅威になるという批判も一方的だ」
と書かれています。
日本ではシミュレーションの結果に対して「ランドが中国に買収された」との陰謀論
が散見されましたが、台湾や中国側はまったく正反対の見方をしているというわけです。
そして、先月、シラパク氏はロシア軍は60時間以内にバルト三国を制圧可能であり、NATO軍は7個旅団を増強すべきとの提言書をランド報告書から共著で提出しましたが、これについて日本の一部と同様の反応はほとんど見られません。
■シミュレーションで重要なのは極限状態の想定
日本のメディアや識者、台湾独立派の新聞、中国の専門家と、シミュレーションに対する反応はさまざまですが、ここで私たちが何よりも理解しておかなければならないのはシミュレーションの前提です。
この種の演習とは、政治家、軍人、官僚などに戦略的な極限状態を体験させ、その中でどのような戦争および外交指導ができるのか、どう行うべきかを検討するのが大きな目的です。
その目的からすれば、極限状態にいかにして至るかは、言ってみれば瑣事にすぎません。
筆者の知る範囲では、10年以上前から米国の某シンクタンクで実施される複数の演習は、日本の右翼団体が尖閣諸島に上陸するものでした。
しかし、それは実際に起こりうることとしては扱われていません。
日米同盟が究極的に、現在の政治的・軍事的戦略環境において試される状況を再現するためには、そうしたシナリオが適切というだけの話なのです。
これは作戦演習なので少し違いますが、2009年に実施された日米共同実働演習「ヤマサクラ」は、朝鮮半島を出撃した敵対勢力が何個師団も北九州や山口県に大挙上陸したところからスタートしました。
これも、日米軍の、特に地上戦力の連携を図るという「目的」から逆算して、そのために必要な「設定」を詰め込んだだけの話です。
ゆえにシミュレーションは、細部や設定の適否ではなく、その企図するところや彼らが下した評価をまず虚心に見つめるべきなのです。
■最悪の「可能性」も直視せよ
FP誌の内容は、どこからどこまでが「設定」なのか、何人で実施したのかなどが不明であり、そういう意味では多くの疑問点があります。
また、シラパク氏と記者2人中心によるものというのも事実のようです。
とはいえ、シラパク氏も関与した「米中軍事スコアカード」に代表されるランド研究所の過去の具体的な分析、この演習からの教訓から逆算した演習の目的から推察するに、中国のミサイル戦力やサイバー戦力に対する評価は基本的に正しいと思われます。その意味で、日本も台湾を見習って、中国のA2/AD戦力への対策を進めるべきでしょう。
日本には「滑走路が沢山あるので気にする必要はない」との説もありますが、果たしてそうでしょうか。
現状では純民間空港における弾薬の備蓄、燃料の補給体制、車両等による 移動体制等の有事転用の準備は整っていません。
ゲリコマに対しても脆弱です。
滑走路に異物を置かれれば飛べません。
そもそも、那覇基地の滑走路が先に叩かれたら、どこにどうやって40機もの空自のF-15を移動させ発進させるのでしょうか。
西方の空自基地の バンカーは不足していますし、弾薬は高蔵寺にほとんど集中しています。
そもそも航空機は、滑走路だけでなくパイロット、レーダー、燃料、弾薬、管制、通信、格納庫の機体、整備員のどれを叩かれても機能しない脆弱性を持っています。
そして、地下化や警備強化等の対策は進んでいません。
「滑走路」ばかりを日本各地や太平洋にいくつも建設し、その他の要素を軽視した結果、無残な結果に終わった旧日本軍の先例を忘れてはなりません。
無論、滑走路が現状で日本中にあることはアドバンテージであり大事なことですが、それを生かす体制・装備がなければ何の意味もありません。
「最善の可能性」ばかりを見るのではなく、安全保障の鉄則である「最悪の可能性」の検証と備えが今こそ求められています。
』
『
ニュースソクラ 3月9日(水)12時10分配信 桜井 宏之 (軍事問題研究会 代表 )
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160309-00010000-socra-pol
南シナ海での海自の役割は中国原潜の恒常監視
■米国の対中封じ込めに協力、課題は拠点づくり
中谷防衛相は2月17日、来日中のハリス米太平洋軍司令官と会談し、緊迫する南シナ海問題について、日米が共同訓練などを通じて連携することを確認した。
このことは米国が本腰を入れ始めた南シナ海での「対中封じ込め」に日本も組み込まれることを意味する。
では海上自衛隊は南シナ海での対中封じ込めでどんな貢献ができるのか?
それはスバリ中国戦略原潜の恒常監視である。
中国は従来、南シナ海を巡って国際法上無理としか言いようのない領有権の主張とその実効支配を積み重ねてきた。
軍事的観点に絞れば、その最大の狙いは
「ソ連がオホーツク海をミサイル原潜の聖域とし、
アメリカに対する核攻撃の切り札としたことと同様に、
南シナ海をミサイル原潜の聖域とし、
地上発射戦略核ミサイルに加えた核の切り札とする」(空自隊内誌『鵬友』2015年3月号掲載「海洋における中国の強硬姿勢」)
ことにある。
つまり固定サイロに収められた地上発射戦略核ミサイル(ICBM)は、米国に位置を把握されているため、その先制攻撃で破壊される恐れがある。
このため報復力(第2撃能力)を担保するため、先制攻撃を回避できる戦略ミサイル原潜とその活動海域が必要となるのだ。
このうち東シナ海や黄海は水深が浅く、日本や韓国に近いことから潜水艦の活動が困難であるために(同上)、南シナ海が重要となるのである。
既に中国は海南島に地下式潜水艦基地を整備し、そこに新型の「晋」級戦略ミサイル原潜を配備して、その行動の秘匿に傾注している。
海自は冷戦期、恒常的にソ連潜水艦の動向把握を行っており、
その蓄積とノウハウを生かして南シナ海での中国戦略ミサイル原潜の行動を恒常的に監視し、米国に貢献する。
それが尖閣防衛での米国のコミットメントにもつながる・・・・・・というのが、とある研究会で制服幹部が筆者に披露してくれた「私見」である。
この「私見」を筆者なりに読み解くと以下の通りだ。
南シナ海という限られた海域で平時に戦略ミサイル原潜が行動する場合、複数の航路を設けたとしてもおそらく一定の行動パターンが形成されるものと思われる。
海自が恒常的な監視(主に対潜哨戒機による上空監視)からそのパターンを解析できれば、米国が有事に際して先制して中国戦略ミサイル原潜を捕捉・破壊する上で有益な情報となることは間違いない。
これが結果的に日本の戦略的価値を高め、尖閣有事に際して米国の介入が期待できる根拠となる。
しかし南シナ海で海自が監視活動を行う際にネックとなるのが、海自には活動の拠点が現在存在しないことだ。
南シナ海で十分な監視活動を行うには、その近傍に補給・支援を担う活動の拠点が必要となる。
つまり周辺国に海自の航空機や護衛艦の常時寄港を受け入れてもらう必要が生じてくるのである。
例えば、米国はフィリピンから基地を撤去したが、1998年に訪問米兵協定(Visiting Forces Agreement)を締結して同国を活動の拠点にすることを可能にしている。
日本も同様な協定を周辺国と結ぶ必要がある。
これから日本は、拠点作りのための周辺国との協定の締結に奔走することになるだろう。
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TBS系(JNN) 3月10日(木)12時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160310-00000024-jnn-int
米軍、B2戦略爆撃機をアジア太平洋地域に配備
アメリカ軍は、核兵器を搭載できるB2ステルス戦略爆撃機を8日にアジア太平洋地域に配備したと発表しました。
アメリカ戦略軍は発表で、核兵器を搭載できる「B2ステルス戦略爆撃機 3機」をアジア太平洋地域に配備し、同盟国との演習やアメリカ空軍作戦センターとの無線通信のチェックを行うとしています。
7日から始まった米韓合同軍事演習に参加するものとみられます。
戦略軍のヘイニー司令官は、
「即応体制を確保するとともに、アメリカが地球規模の安全と安定に責任を持つことを示す手段の1つだ」
と強調しました。
今回の配備は、米韓軍事演習に対して核による先制攻撃を警告する北朝鮮をけん制する狙いがあるものとみられます。
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朝日新聞デジタル 3月10日(木)13時36分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160310-00000035-asahi-int
米軍、アジア太平洋にステルス爆撃機配備
北朝鮮を牽制
米戦略軍は9日、核兵器を搭載できるB2ステルス爆撃機を3機、米太平洋軍が管轄するアジア太平洋地域に配備したことを明らかにした。
北朝鮮の核実験などをうけて「引き続き信頼できる空軍力の展開が必要」としており、北朝鮮を牽制(けんせい)する狙いがある。
B2はレーダーに映りにくい形状で、敵の防空網をかいくぐり、核攻撃を加えることを目的に開発された戦略爆撃機。
同軍によると、米ミズーリ州の空軍基地から8日、米太平洋軍管内に配備された。
恒久的な配備ではない。
具体的な場所は明らかにしておらず、同盟国との訓練に参加するという。
米太平洋空軍のロビンソン司令官は、「最近起きた事例」がB2の配備につながったと指摘。
北朝鮮による核実験や事実上のミサイル発射、さらに金正恩(キムジョンウン)第1書記が「核弾頭の準備」や「先制攻撃」に触れたことが念頭にあるとみられる。
米戦略軍のヘイニー司令官は「将来にわたって抑止力を維持し、地球規模で安全保障に関与していくための手段の一つだ」としている。
B2は2013年の米韓合同軍事演習に参加し、爆弾投下訓練を実施。
これに北朝鮮が強く反発し、中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射即応体制を取るなど緊張が高まった。
米軍当局者によると、B2は当面、アジア太平洋地域でオーストラリア軍と合同演習をするという。
ただ北朝鮮情勢を意識した配備でもあり、今後、朝鮮半島周辺にも展開した場合、北朝鮮が強く反発するのは必至だ。
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「THAADミサイル」にしても「B戦略爆撃機」にしても名目は「対北朝鮮」ということになっている。
しかし、真意が「対中国」であることは明白である。
TARRDミサイルは韓国の親中姿勢をあからさまに変更させてしまった。
蜜月だった中韓はこのところギクシャクが続いている。
パク・クネのコウモリ外交はこのところ親米に傾きつつある。
「B戦略爆撃機」はどんな動きをして南シナ海問題の中国にゆさぶりをかけてくるのか、注目である。
【2016 異態の国家:明日への展望】
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