2016年3月15日火曜日

習近平は中国共産党「最後の指導者」になるのか(1):『中国の夢』新幹線事件に継ぐ、第二弾!

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 先日の『中国の夢』の新幹線事件といい、今回の
 『習近平 最後の指導者』説といい、なにか中国がおかしい。
 続けて2回も発生するとは、何か意図的に行われたのだろうかと勘ぐってしまう。
 メデイアへの締め付けが厳しくなるなか、逆にこういう事件が発生するというのはどうにも解せない。
 それにこれだけの重大ミスを訂正するのに「1時間」もかかるというのも不思議だ。
 誰にもわかることがすぐに訂正されずに1時間も放置されたということは、周囲が
 「もしかしたらそうなのかもしれない」
と判断した可能性がないとはいえない。


フジテレビ系(FNN) 3月15日(火)5時2分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160315-00000856-fnn-int

中国・新華社、
習近平国家主席を「最後の指導者」と誤記



 国営通信社が、重大ミスをした。
 中国の新華社は13日、習近平国家主席について、
 「最高指導者」とすべきところを、「最後の指導者」と間違え、
訂正していたことがわかった。

 これは、香港メディアが伝えたもので、新華社が13日、習主席について、「最高指導者」とすべきところを間違って、「最後の指導者」とした記事を配信し、
 およそ1時間後に訂正したという。
 このミスで、編集担当者2人と記者1人が停職処分になったという。
 また、中国で習主席への権力集中と報道機関への言論統制が強まる中、さらには全人代の期間中に、このようなミスが起きたことで、さまざまな臆測を呼ぶことは避けられないとしている。



2016年3月15日 7時0分配信 遠藤誉  | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
http://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20160315-00055437/

新華社が「中国最後の指導者習近平」と報道
――ハッカーにやられたか?


●中国政府メディアに「最後の指導者」と報道された<紅い皇帝>習近平(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 3月13日、中国時間の午後5時、中国政府の通信社「新華社」のウェブサイトに「中国最後の指導者、習近平」という報道が現れた。
 すぐに削除されたが、一部の中文メディアがPDFでダウンロード。
 中文世界に衝撃が走っている。

◆「中国最後領導者習近平」――スクープは博訊(Boxun)

 「中宣部、超級ハッカー? 新華社が“中国最後の指導者、習近平”と報道」
という見出しで、最初に報道したのは博訊というウェブサイトだ。
 博訊のサーバーはアメリカのカロライナ州にある。

 新華社は中国政府の通信社で、中宣部(中国共産党中央委員会宣伝部)の直轄でもある。
 博訊は以下のように報道している。
――3月13日、劉奇葆・中宣部長は早目に仕事を引き上げるという某報道があり、中宣部システムは言論制御上、手がゆるむのではないかとされた。

 すると北京時間の13日午後5時頃、新華社のウェブサイトに突然「記者の手記」の形で、
 「昆泰酒店(ホテル) の内と外から中国経済の自信を探し求める」
という記事を載せた。
 その記事の中には
 「中国最後の指導者、習近平は
 今日、両会で、中国の発展は一時的な波乱こそあるが、
 長期的にはやはり前途洋洋であると、発表した」
とある。
 博訊の記者は、14日の未明にこの記事を見つけたが、新浪網などでは、まだ修正をしていなかった。
 これは書き違いである可能性は否定できないが、
 多くの官方(正式の)ウェブサイトでは今のところ修正していない。
 何かしらの内幕があるのか、この時点では分からない。
(筆者注:「両会」とは、現在北京で開催されている全国政治協商会議(3月3日~3月14日)と全人代(3月5日~16日)のこと)

 このように書いて、リンク先にあるページに、ダウンロードした新華網の報道内容が掲載してある。
 その画面は、なぜか「繁体字」。
 香港や台湾で使われている中国文字で、大陸で使われている「簡体字」ではない。
 なお、博訊のページの最後には、
 「これは博訊が初めて見つけた第一報なので、
 転載するときには必ず情報源を明示すること」
と書いてある。
 その通りだ。
 スクープする人は、日夜アンテナを張りながら特定の精神性を以て網にかかってくる情報を見つけている。
 その人の努力は尊重されなければならない。
 筆者は忠実に守っているが、他は「自分が独自に見つけたのだ」と言ってしまえばそれで済むので、スクープしたのが誰であるかはお構いなしに、中文ネット空間は、その後、一気に燃え上がっていった。

◆党宣伝部の無界新聞が「習近平は辞職せよ」という公開状――博聞社がスクープ

 実は全人代が始まる前日の3月4日、「無界新聞」が
 「習近平同志が党と国家指導の職務を辞職することを要求する」
という公開状をウェブサイトに載せたことを「博聞社」がスクープした。
 これもハッカーの仕業だとされており、もちろんすぐに削除されている。
 しかし既に遅し。
 全世界に転載されてしまった。

 「無界新聞」というのは、2015年3月、財訊メディアグループと新疆ウィグル自治区およびアリババグループの三者によって創立された新メディアだ。
 CEOは欧陽洪亮という、まだ若い男性で、彼はもともと雑誌『財経』の記者をしていた。
 『財経』の親会社が財訊メディアグループだ。
 したがって無界新聞は欧陽洪亮が中心となって起こした新メディアということになる。
 が、なぜ新疆ウィグル自治区と提携したかというと、新疆ウィグル自治区の書記・張春賢の妻で中央テレビ局のキャスターであった李修平氏と欧陽洪亮は親しい関係にあったからだ。
 そこで新疆ウィグル自治区に白羽の矢が当たったのだが、ここは「一帯一路」の拠点の一つ。
 昔から新シルクロード経済ベルトの石油パイプラインの拠点として、中央アジア五カ国を結んでいる。

 アリババのCEO馬雲氏は、習近平国家主席と微妙な関係にあることを、2015年12月13日付けの「アリババが香港英字紙買収――馬雲と習近平の絶妙な関係」に書いた。
 微妙なというのは、令計画が「西山会」で逮捕されたように、馬雲も実は「江南会」を結成していた。
 しかし、窮地に追いやられ危機を感じ取った馬雲は、変わり身早く、「江南会」を「湖畔大学」に変身させ、私立の「創業者のための大学(専科)」を設立し、習近平の望む方向にネット業界、特に言論業界を動かし始めた。
 だから、「一帯一路」に関しても習近平が喜ぶように新疆ウィグル自治区を拠点にウェブサイトを立ち上げようとしたわけである。

 ところが、その「無界新聞」でこのような公開状が出たということは、習近平にとっては、「絶対に!」許されないことである。
 おまけに3月8日、新聞記者の
 「習近平政権を支持しますか?」
という質問に対して、新疆ウィグル自治区の張春賢書記
 「その話は、又にしましょう」
と回答している。
 前代未聞の回答だ。

 新疆ウィグル自治区は石油王だった周永康の地盤だった。
 果たしてこれら一連の動きは、単なる「ハッカー」の問題とみなしていいのだろうか?
 中宣部の中に何かがあるのか、あるいはネットユーザーの中に「習近平政権打倒」あるいは「共産党一党支配体制打倒」を狙う勢力があるのか?

 中国国内にも、この二つの「ハッカーが起こした記事」を見てしまったネットユーザーが少なくない。
 不穏な動きの中、3月14日、両会の一つの全国政治協商会議は閉幕され、16日には全人代も閉幕して、2016年の両会が終わる。
 張春賢書記の運命や、いかに――?
 真犯人はいったい誰なのか――?
 そして何よりも、習近平政権のゆくえはどうなるのか。
 目が離せない。


時事通信 3月15日(火)7時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160315-00000014-jij-cn

習主席「最後の指導者」と誤記
=国営新華社、「最高」に訂正―中国

 【北京時事】
 中国国営通信・新華社が、全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(政協)が開催中の13日の配信記事で、習近平国家主席について、「最高指導者」と記すべきところを「最後の指導者」と誤記した。
 約1時間後に「最高指導者」と訂正した。
 香港メディアなどが伝えた。
 習国家主席は全人代開幕前の2月、新華社や国営中央テレビなどを視察。
 「官製メディアは宣伝の陣地であり、共産党を代弁しなければならない」
と指示。
 全人代期間中、メディアへの統制が一段と強まる中、こうした重大なミスは異例で、波紋を広げている。 




●【中国崩壊】中国政府がついに内部崩壊でクー◯ター寸前か!!!? 
ヤバすぎる事態に陥ってるぞ!!! 



レコードチャイナ 配信日時:2016年3月27日(日) 6時50分
http://www.recordchina.co.jp/a131801.html

中国の汚職摘発は危険な賭け?
腐敗あからさま、民衆の不満に火、
手緩めれば反発も

  2016年3月25日、中国で汚職摘発の勢いが止まらない。
 習近平共産党総書記が主導する「虎もハエもたたく」運動の成果で、指導部は綱紀粛正、国有企業改革、政敵排除の「一石三鳥」の効果を狙っている。
 しかし、
 腐敗の実態があまりにもあからさまになっては、民衆の不満に火を付けかねない。
 その一方で、手を緩めれば反発を招く。
 「危険な賭け」でもある。

 中国メディアなどによると、中国最高人民検察院の曹建明検察長(検事総長)は13日、全国人民代表大会(全人代)で活動報告を行い、
 全国の検察機関が15年に収賄や横領などの汚職で摘発した公務員が5万4249人に上ったと公表した。

 さらに、中国共産党系の環球時報(電子版)は
 「15年に中央・地方政府の官僚約30万人を汚職や収賄など『重大な党規律違反の疑い』で処分した」
と報道。
 内訳は
 「軽度の党規律違反」が約20万人、
 「重度の処分」が約8万2000人で、

 党籍剥奪や実刑判決などの処分は1567人
に上ったという。

 摘発強化は、中国の人気歴史小説「三国志演義」にも“飛び火”。
 中国人民解放軍機関紙の解放軍報は、この中に登場する劉備、関羽、張飛の絆を
 「小さなサークルを重視する姿勢が及ぼした害は大きかった」
 「サークル内の利益を重視するあまり、汚職や贈収賄を招く結果となっている」
と批判した。

 汚職事件の大規模化も鮮明になった。
 新京報によると、胡錦濤政権時代の最高指導部の党政治局常務委員で15年6月に無期懲役判決が出た周永康氏は、長らく石油産業の中心人物だった立場を利用して、油田・ガス田の開発をめぐり、開発権を民間企業に安く払い下げる見返りに、7億6000万元(約140億円)も得ていた。

 賄賂の収受や蓄財の手口も巧妙化。
 京華時報は公務員になって10年たつという匿名希望の情報提供者からの
 「職場や自宅は監視の目があるため、人気のない場所で落ち合う。
 双方が同時に現れることはせず、賄賂を渡す方が車に賄賂を置きそのまま立ち去り、後に来た方が車の中に置かれた賄賂を受け取るという方法も用いられている」
との話を紹介している。

 環球網も
 「IT技術を駆使した金融サービス、いわゆる『フィンテック』の普及によって、現金よりもさらに秘匿性の高い送金サービスが次々と開発されている」
と指摘。
 「偽名口座を使った送金、
 ゲームのバーチャルコインでの受け渡し、
 海外口座への移動などさまざまな手口があり、
 専門家は『ほとんど追跡不可能だ」
と頭を抱えている』と伝えた。

 今年1月、甘利明経済再生担当相が
 「100万円の政治献金を受け取ったことや秘書が300万円を受け取り個人的に使用したことを認め、辞任を表明した」
と中国で報じられると、ネットユーザーからは
 「これを中国で適用したら、中国は瞬時に無政府状態になる」
 「これは地方の小役人にも笑われる額だな」
などのコメントが相次いだ。

 それだけ汚職がまん延して庶民の怒りが高まっていることの表れでもあり、いったん走り出した「摘発」の車をどう制御していくのか。
 中国指導部は難しいかじ取りを迫られている。


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年03月29日(Tue)  西本紫乃 (北海道大学公共政策大学院専任講師)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6439

まるで文革時代!不気味すぎる 
習近平ソングが大人気のワケ

 3月16日に中国の政治のビックイベントである全人代が終わったが、今年の全人代はPM2.5でかすむ北京の空同様に、政治的閉塞感が漂う大会だと中国国外メディアは評している。
 全人代が終わり、中国では今こんな風刺言葉が流行っているそうだ。

 北京に来なければ、文革をまだやっているなんて知らなかった。
 南シナ海について語らなければ、中国にとっての友人がこんなに少ないなんて知らなかった。
 全人代を開かなければ、習近平と李克強の仲がこれほど悪いとは思わなかった。

 政治空間と言論空間の統制がますます強まり、この先どこまで党と政府の締め付けが強まるのか見通しが立たないなか、庶民はひねりの効いた風刺で世相を皮肉っている。

■文革時代に逆戻り? 今年の全人代

 実際に「文革をまだやっているなんて知らなかった」と思わず言いたくなるような、50年ほど時代を巻き戻したようなことが、最近の中国では増えている。
 先日閉幕した全人代ではチベットの人民代表18人がそろって国家指導者の顔写真がついたバッチを胸に付けて人民大会堂に現れた。
 彼ら自身の政治的な正しさを表わすためのパフォーマンスなのか、あるいは本気で、父親を慕うかのように国家指導者個人を敬慕する家族主義が色濃い地方の政治意識の後進性か、いずれにしても時代錯誤な感じは否めない。


●全人代に出席したチベット自治区代表者が身につけていた国家指導者バッジ(出所:Caixin Online)

 今年の全人代では湖南省の代表団の政治工作報告では、湖南省の代表者から習近平主席に対し、省内の極貧地区の一つである十八洞村の村民の平均収入が、2年で倍以上になったことが報告された。
 中国の貧しい農村では嫁不足も深刻で、湖南省の代表者と国家主席とのあいだでは、こんなやりとりもあった。

 習近平;
  「去年は何人が嫁を娶れたのか?」
 代表:
  「7人です。中年男性7人が所帯持ちになれました」

 十八洞村は2013年11月に習近平主席が視察に訪れたことを契機に、農産品生産や観光開発など重点的に脱貧困に向けた取り組みが行われた村だ。
 習近平が視察に訪れたことで村の136戸の生活が劇的に変化した地区で、まさに「習近平さまさま」である。
 今年2月には村人の習近平に対するあふれんばかりの感謝の気持ちを表現する歌
 『あなたを何とお呼びすべきか』
が湖南省の肝入りで制作されていて、この歌についても全人代で報告された。

 この『あなたを何とお呼びすべきか(不知該怎麼称呼你)』の歌詞には習近平の名前こそ入っていないが、ミュージックビデオ(MV)には習近平主席が十八洞村が訪れた際に村民たちに「貧困地区の支援には地道な取り組みが必要だ」と語りかける場面の映像も付いている。
 湖南省の地方幹部の習近平個人へのゴマすり感たっぷりのこの歌は、中国国内では概ね不評でネット上では
 「気味悪い」、
 「吐き気がする」
といった率直な感想があふれている。

■習近平個人崇拝ソングの登場



●『あなたを何とお呼びすべきか(不知該怎麼称呼你)』MVの豪華な演出(出所:動画サイト芒果TV)

 習近平主席への権力集中、専制化が顕著になってくる中で、今年に入ってからバッジだとか歌だとか「まるで文革時代」な個人崇拝の傾向が取りざたされることが多くなった。
 しかし、習近平個人崇拝ソングは習近平政権一年目の2013年から既に作られている。
 『習近平のメッセージ(習主席寄語)』
と題された曲は、

 「♪能力がある時は小さなことも喜んでやろう。
 お金に余裕があれば善いことをしよう
 権力がある時は実務に尽力しよう。
 動ける時は少しでも多くのことをしよう」

 と道徳教育のような歌詞で、習近平自らの作詞だとされている。
 MVは200人の高校生を動員し中国中央電視台が撮影しており、かなりのハイクオリティに仕上がっている。
 いわば、党のお墨付きの歌だ。

 他にも、2014年1月に習近平主席が真冬の内蒙古の国境警備隊視察を歌った
 『主席が私の傍まで来られた』
という歌がある。

 「♪白い衣に包まれた興安嶺で、
 銃を握りしめて辺境を守る、四方が見渡せる歩哨の拠点に、
 主席がやって来られた」

 と歌うこの歌も、内蒙古の権威のある音楽家が制作した歌で官制のプロパガンダ・ソングだ。

 こうした国家指導者個人を称賛する歌は鄧小平時代、江沢民時代、胡錦濤時代にも無くはなかった。
 しかし、何といっても思い起こされるのは毛沢東時代の
 『毛主席、あなたは私たちの心の真っ赤な太陽です(毛主席、您是我們心中的紅太陽)』
とか、
 『偉大なリーダー毛沢東(偉大的領袖毛沢東)』
などの毛沢東崇拝ソングだ。

 21世紀の今日、再び国家主席個人を賛美する歌が次々につくられていく風潮は、かつての毛沢東に習近平を重ねようとする意図がどことなく透けて見える感じがする。

■民間ミュージシャンの便乗

 「『まるで毛沢東』のように習近平主席を称賛してOK」な世間の空気を、庶民も敏感に感じ取って、これに乗っかろうとする者も現われた。
 最も注目を集めたのは2014年11月にネット上で話題になった
 『習ターターは彭マーマを愛している(習大大愛着彭麻麻)』
だ。

 河南省出身の4人組が作ったカントリーソング風の歌は、習近平主席と彭麗媛夫人のフラッシュアニメの動画が付いたものがネット上に広まった。
 民間に既に広まっていた「習ターター」という習近平主席の愛称を歌のタイトルに大胆につけたことが、人々の心をくすぐった。

 この歌のヒットは新華社や人民日報でも紹介され、国家に対する「草の根の人たちの信頼と理性」が感じられると評価されたことで、民間の「習ターター」ソングは市民権を得て、二匹目のドジョウを狙う全国の音楽のセミプロや素人によって似たような歌が作られていく。

 なかでも秀逸なのは、『習ターター、人々が称賛(習大大、人人誇)』だ。
 「♪彼はみんなの幸せのために働いてくれる
 /みんなが彼を愛している
 /正義心があって肝っ玉が大きくて、虎もハエもみな叩く」
と習近平ベタ褒めな歌詞に加え、
 ♪習ターター、エィッ、習ターター」
と高らかに歌い上げるサビの部分が印象的な歌で、中国のあちこちの街角で早朝や夕方によく見る、派手な扇子を持って踊るおばちゃんたちの集団ダンス「広場舞」にぴったりだ。

 この他にも
 『習ターターVSビクビクの腐敗役人(習大大VS貪怕怕)』、
 『全国国民のアイドル習ターター(全民偶像習大大)』
など、習近平主席が国内で推し進める反腐敗運動や積極的な外交を称賛する歌など、「習ターター」をタイトルに掲げる数々の曲が登場した。


●『我々は習近平を支持する(擁護咱們的習近平)』のMV 赤い服のおじさん (出所:Youtube)

■どこまでが本気で、どこからが風刺なのか

 従来、中国では情報だけでなく、歌や芝居といった演芸もプロパガンダの一環として、社会主義国家建設を国民に意識づけるための道具とみなされてきた。
 ファーストレディの彭麗媛も解放軍の歌舞団の歌手としてプロパガンダの先鋒を担ってきた人材だ。
 これまでは特殊な装置や選ばれた人材が必要だった文化の政治宣伝も、インターネットがここまで普及した今日、誰でもその気になればクリエーターになれる。
 今やスマートフォンが一台あれば民間人でも歌や芝居を制作できるようになった。

 ただ、そうした時代の空気に便乗して民間人が作るコンテンツの多くは単なる娯楽性の追求や、注目を集めたいといった動機によるものが多い。
 そうすると、揶揄や風刺が効いていた方が、より世間の話題になりやすい。

 次々に登場する「習ターター」ソングには、陳腐さ、クオリティの低さが逆に面白がられる作品も多い。
 替え歌グループとして有名な「歪歌社団」が作った『主席の定食(主席套餐)』はまさにヘタウマな感じを売りにした曲だ。
 この曲は、2013年12月に習近平主席が北京の肉まん屋「慶豊包子舗」を訪れ、庶民が食べるランチセットを注文して食事をしたというエピソードを題材にしているが、映画『上海灘』の主題歌のメロディーに歌詞をつけただけの簡素な歌だ。

 ロシアで2002年に『嫁に行くならプーチンのような人がいい』という歌が話題になったが、その習近平バージョン『嫁に行くなら習近平のような人がいい(要嫁就嫁習大大这様的人)』も登場した。
 さらにこの男性バージョン『人として生きるなら習近平のような人がいい(要做就做習大大这样的人)』という歌も作られた。
 この二曲はほぼ同じで、サビの部分の「嫁に行くなら」と「人として生きるなら」という意味の漢字一文字を入れ替えただけだ。

 『陝北が習ターターを生み出した(陝北走出个习大大)』は
 「♪習ターター、国を愛し、
 身体を動かし
 を流し、
 習ターター、民を愛し、多忙を極めて休まず働く」
とラップ調で歌っている。

 これまで数々の国家礼賛「赤い歌」を作曲して歌ってきた素人歌手の「赤い服のおじさん」こと江西省の李磊さんも『我々は習近平を支持する(擁護咱們的習近平)』は人気を集めて、動画をネット上にアップしてから48時間で1万7000件の閲覧があった。
 しかし、李磊さんはかつて、2011年にアラブの春が起きた際にエジプトの市民革命を支持する歌を公開した「前科」があるため、習近平を「♪ひるむことない優れた船長だ」と高らかに歌い上げるこの曲も中国国内では閲覧禁止になってしまっている。

 そして、極めつけは『習総書記は彼の悪い習慣を改めさせた(習総書記譲他改変壊習慣)』だろう。
 湖北省で中国琴の先生をしている自称歌手の羅秋紅さんのこの曲は、

 「♪これまで私の友人はレストランで私をおごってくれる時に
 野生のカモや魚など高価な食材を使ったメニューを注文していた
 /今では、モヤシや大根の料理を注文するようになった」

 と反腐敗運動の成果が下々の人々まで及んでいることを実感を込めて歌った歌だ。
 羅さんの素人っぽい歌声と、素朴な歌詞がなんともいえない味わいを醸し出している。

■コンテンツの大衆化政策に潜むリスク

 「習ターター」ソング流行について、良識のある一般の中国人は概ね、「気味悪ぅ」、「最悪ぅ」という反応だが、歌の作り手の時代遅れの純粋さや、あるいは目立ちたい欲求を感じ取って、歌の作者や歌い手を「わぁ、香ばしい」と面白がっている側面もある。
 いずれにしても、国家指導者個人を称賛という歌の本来の意図とは真逆の結果だ。

 近年、中国政府はインターネットに対する規制強化をする一方で、より大衆目線に立ったソフトな情報発信に取り組んでいる。
 例えば、若者言葉を多用してネット上で党の宣伝を繰り広げる80年代生まれの周小平を重用したり、「朝陽工作室」、「復興路上工作室」といったベールに包まれた謎の組織名義で、フラッシュアニメを使った政治宣伝のコンテンツを製作して次々に公開している。

 中国では今日、既に6億2000万人がスマートフォンで日常的に情報に接するようになっている。
 スマートフォンの小さい画面では、より短くて分かりやすい情報が好まれる。
 情報は音声や画像であったり、単純化し、記号化されたものの方が人々に受け入れられやすくなる。
 そうした情報環境の変化を考えると、中国政府が新たに始めた庶民にも分かりやすい政治宣伝も環境の変化にいち早く順応した政策だといえる。

 ただ、単純化された情報は読み手の理解の自由度も高まる。
 受け手が記号に別の意味を持たせて、さらに拡散させることもある。
 人々が記号から読み解く意味が政治的に白か黒かを判断するのもより困難になる。

 時代錯誤の国家指導者に対する個人崇拝も、一見「まるで文革時代」のように見えるが、
 50年前と違うのは、人々のその意味の取り方、読み解き方が違っているという点だ。
 かつてのように、情報に意味付けをする主導権は党と政府の側にはもはやないのだ。
 この点を読み誤ると、習近平主席は裸の王様になってしまうかもしれない。





【2016 異態の国家:明日への展望】


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